本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、解錠コードの設定をシリンダ錠組み立て完了後の好みの時に容易に行うことができるようにして自動車の組み立て作業性等の向上が図れるシリンダ錠の提供を目的とする。
本発明によれば上記目的は、
ロータ3に挿入されるキープレート1の挿入方向に直交する面内に主移動方向(DM)を有し、挿入されたキープレート1のコード形成部1aに対応して主移動方向(DM)に移動してロータ3内の所定位置まで移動するキー対応タンブラ15と、
前記キー対応タンブラ15に主移動方向(DM)の適宜位置で噛合嵌合可能なロックタンブラ14と、
前記主移動方向(DM)に交差する方向に移動してシリンダケース4側のロック用凹部25に進退し、キー対応タンブラ15との噛合によってキープレート1のコード形成部1aに対応して移動するロックタンブラ14の主移動方向(DM)上の位置によりロック用凹部25への侵入位置からの退避が禁止、または許可されてロータ3とシリンダケース4との回転境界面を閉塞、開放するロック体17とを有し、
前記ロックタンブラ14との噛合解除が許可されたキー対応タンブラ15を、挿入されたキープレート1のコード形成部1aに対応して主移動方向(DM)に移動させた後、ロック体17のロータ3内への退避を許可する主移動方向(DM)上の位置を保持するロックタンブラ14に対して噛合解除不能に噛合させて挿入キープレート1のキー側解錠コードに合致する錠側解錠コードを形成するシリンダ錠であって、
前記キー対応タンブラ15とロックタンブラ14との噛合解除を許可する噛合解除許可位置から前記噛合解除を禁止する噛合解除禁止位置へと移動するコード設定体21と、
前記コード設定体21に噛合解除許可位置において係止するストッパ23と、
前記キープレート1に形成された識別部5を検知可能で、識別部5が検知された際に前記ストッパ23を係止解除してコード設定体21を初期状態において仮保持されている噛合解除許可位置から噛合解除禁止位置へと前記噛合解除許可位置に復帰不能に駆動する検知部20とを有するシリンダ錠を提供することにより達成される。
ロータ3に装着されるタンブラ2は、キープレート1毎に設定された解錠コードに対して1対1対応する錠側解錠コードを形成し、錠側解錠コードが形成された状態で、該錠側解錠コードに合致する解錠コードを有するキープレート1での回転操作を許容する。このタンブラ2は、解錠コード形成前の状態を維持することが可能であり、識別部5を有するキープレート1のロータ3への挿入操作をトリガとして錠側解錠コードが形成(解錠コード設定)が可能な状態に遷移する。解錠コード設定前においてロータ3は識別部5を備えたキープレート1に対して1対1対応していなければ足り、例えば、全てのキープレート1による回転操作が可能であっても、あるいは特定の解錠コードを備えたキープレート1に対して1対1対応し、該キープレート1による回転操作のみが可能なものであってもよく、さらには、例えば図3(c)に示すように、コード形成部1aが一直線状で、実質的に解錠コードを構成するとはいえない解錠コードが付与されたキープレート1に合致するものであってもよい。キープレート1のコード形成部1aは、キープレート1の外周切断端面に形成することも、あるいは側面に形成することもでき、タンブラ2はピン状のいわゆるピンタンブラであっても、板状のディスクタンブラであってもよい。
解錠コード形成前の状態で識別部5を備えたキープレート1を挿入すると、タンブラ2は識別部5に応動して解錠コードが形成可能な状態となり、直ちに、あるいはその後の必要な操作を経てタンブラ2はキープレート1のコード形成部1aを倣って挿入されたキープレート1の解錠コードに合致する錠側解錠コードを形成する。錠側解錠コードが設定された後では、該キープレート1に形成されている解錠コードを有するキープレート1でのみ回転操作が可能になるために、例えば、以後、錠側解錠コードを設定する際に使用したキープレート1を解錠用キープレートとしてそのまま使用することができる。
挿入されたキープレート1に形成されたコード形成部1aを倣ってコード形成部1aにより構成されるキー側解錠コードに合致する錠側解錠コードを形成するためには、例えば、
ロータ3に挿入されるキープレート1の挿入方向に直交する面内に主移動方向(DM)を有し、挿入されたキープレート1のコード形成部1aに対応して主移動方向(DM)に移動してロータ3内の所定位置まで移動するキー対応タンブラ15と、
前記キー対応タンブラ15に主移動方向(DM)の適宜位置で噛合嵌合可能なロックタンブラ14と、
前記主移動方向(DM)に交差する方向に移動してシリンダケース4側のロック用凹部25に進退し、ロックタンブラ14の主移動方向(DM)上の位置によりロック用凹部25への侵入位置からの退避が禁止、または許可されるロック体17と、
ロックタンブラ14とキー対応タンブラ15とを噛合解除不能状態に維持するコード設定体21とを有し、
キープレート1を挿入した際に、ロック体17のロータ3内への退避を許可するロックタンブラ14の主移動方向(DM)上の位置を保持してコード設定体21を作動させることにより達成できる。
したがってこの発明において、錠側解錠コードの設定時期をシリンダ錠の組み立て作業完了後にずらすことができるために、以下の効果を発揮できる。まず、シリンダ錠の製造時に複数種のタンブラから錠側解錠コードを形成するために必要なタンブラを選択して所定の配列で配置する必要がなくなる。この結果、同一のシリンダ錠を製造すれば足りるために、シリンダ錠の製造効率が向上する。また、錠側解錠コードを設定するまでは、各シリンダ錠は解錠コードという個性を有しないために、特定の解錠コードを有するキープレート1とセット管理する必要がなくなり、管理工数が減少する。さらに、錠側解錠コードの設定は、キープレート1を挿入するだけで可能になるために、設定操作が簡単で使い勝手が高い。加えて、ロータ3の回転許可、禁止、および解錠コードの設定はキープレート1とタンブラ2との機械的作動により決定されるために、電子的認証、設定手段に比して、誤動作のおそれがなく、信頼性が高くなる。
また、シリンダ錠は、
挿入されたキープレート1に形成されたコード形成部1aを倣って該コード形成部1aにより構成されるキー側解錠コードに合致する錠側解錠コードを形成可能なタンブラ2を装着したロータ3をシリンダケース4に回転自在に挿入してなり、
前記ロータ3は錠側解錠コード形成前においてシリンダケース4に対して空転自在に構成することができる。
タンブラ2が錠側解錠コードを形成するまでは、キープレート1のコード形成部1aに対して1対1対応していないために、例えば自動車用施錠装置等として利用する場合には、セット管理の必要がなく、管理工数が低減できる。また、シリンダ錠製造時も、従来のように、異なった種類のタンブラを予め決定された順序でロータ内に配置する必要がないために、製造効率も向上する。
さらに、錠側解錠コード設定前において、全てのキープレート1によりロータ3を回転させることができるために、誤って施錠状態に移行させても、任意のキープレート1、あるいはキープレート状の平板を使用して解錠位置までロータ3を回転させることができるために、自動車の製造ラインにおける作業性が向上する。
加えて、錠側解錠コード設定前でのロータ3の回転が許容されることから、例えば、建築中の家屋に使用した場合には、ロータ3を施錠状態に移行させておけば、扉を操作しただけでは扉の開放はできないために、防犯性も向上させることができる。
また、前記タンブラ2はロータ3の回転に応動して錠側解錠コードを形成するシリンダ錠を構成することができる。錠側解錠コードの形成(設定)は、識別部5を備えたキープレート1を挿入した後、ロータ3を回転させることにより行われ、ロータ3への回転操作が錠側解錠コードの設定に必要なために、誤ってキープレート1を挿入しただけで錠側解錠コードが設定されることがなくなる。
また、識別部5を備えないキープレート1によって錠側解錠コードの形成をすることも可能であり、錠側解錠コードの設定は、解錠コード形成用のキープレート1をロータ3に挿入した後、該キープレート1によりロータ3を回転させることにより行われる。この場合、シリンダ錠は、最初に挿入されて回転操作が加えられたキープレート1を錠側解錠コード設定用のキープレート1と認識して錠側解錠コードを形成する。
さらに、前記タンブラ2が解錠コード形成状態から形成前の状態に復帰操作可能なシリンダ錠を構成した場合には、一旦設定した錠側解錠コードを新たなキープレート1の解錠コードに設定し直すことが可能となるために、例えば、キープレート1を紛失した場合にも錠側解錠コードの再設定をするだけで、交換の必要がない。
上述した発明において、タンブラ2はキー対応タンブラ15とロックタンブラ14とに分割され、キー対応タンブラ15はロータ3内に挿入されるキープレート1に形成されるコード形成部1aを倣うようにしてキープレート1の挿入方向に直交する面内で所定方向(主移動方向(DM))に移動する。ロックタンブラ14は、このキー対応タンブラ15に対して、主移動方向(DM)に設定された適数箇所の一を選択して噛合可能であり、噛合状態においてキー対応タンブラ15に追随して主移動方向(DM)に移動できる。
また、ロック体17はシリンダケース4側に形成されるロック用凹部25に進退可能にロータ3に収容され、適宜の付勢手段によりロック用凹部25への侵入方向に付勢することも可能である。ロック体17のロック用凹部25への侵入位置からロータ3内への退避移動が許可されるか否かはロックタンブラ14の主移動方向(DM)での位置により決定され、ロック体17は、ロック用凹部25内に侵入し、かつロックタンブラ14によりロータ3内への退避が許可されない状態でロータ3の回転境界面を閉じてロータ3への回転操作を禁止する。
錠側解錠コードの形成後、キー対応タンブラ15は例えば付勢力によりロックタンブラ14を引き連れて所定位置まで移動し、ロック体17も例えば付勢力によりロック用凹部25に侵入してロータ3の回転は禁止される。この後、ロックタンブラ14は真正の解錠コードに対応した場合のみロック体17のロータ3内への退避を許容する位置まで移動することができ、それ以外ではロック体17はロック用凹部25に嵌合して回転境界面を閉塞するために、異種のキープレート1でのロータ3への回転操作が禁止されることとなる。
ロックタンブラ14とロック体17との相対位置は、少なくとも、錠側コード形成時にロック体17がロータ3内への退避を許可する主移動方向(DM)上の位置にあれば足りるが、初期状態にこの状態を維持しておくと、キープレート1側の解錠コードの如何にかかわらず、ロータ3を回転操作することができる。
さらに、キー対応タンブラ15とロックタンブラ14とは初期状態で既に噛合状態にすることも可能で、初期状態でロックタンブラ14の噛合解除方向への移動を許容し、ロックタンブラ14の噛合解除方向への移動を禁止することにより錠側解錠コードが設定される。
すなわち、キー対応タンブラ15はロータ3にガイドされて主移動方向(DM)に移動自在とされるとともに、主移動方向(DM)に付勢されて上述したキープレート1の使用を可能にする。ロックタンブラ14はロック体17により押動されてキー対応タンブラ15との噛合状態を維持し、主移動方向(DM)の所定位置に保持される。初期状態においてロックタンブラ14は噛合解除方向に移動することができ、キープレート1を挿入すると、ロックタンブラ14は噛合解除方向に移動し、キー対応タンブラ15との噛合位置を変更しながら初期位置に保持される。この後、錠側解錠コードを設定すると、ロックタンブラ14は噛合解除方向への移動が禁止され、以降、非真正キーに対しては、ロック体17のロータ3内への移動を禁止することによりロータ3の回転境界面を閉塞する。
この場合には、ロックタンブラ14、ロック体17、およびロックタンブラ14の噛合解除方向への移動を規制する例えばコード設定体21等を接近した位置に配置することができる。可動部を接近配置することにより、相互の寸法関係を正確に設定することが可能になり、作動信頼性を向上させることができる上に、製造効率も向上する。
また、錠側解錠コードの形成操作はキープレート1の挿入方向にコード設定体21を移動させることにより行うことができる。錠側解錠コードの形成を、ロックタンブラ14、あるいはキー対応タンブラ15のいずれか一方の噛合解除側への移動を阻止することにより行う場合、移動側のタンブラ2の噛合解除方向への移動の阻止、あるいは許可は、例えば、コード設定体21の移動位置と、上記移動側のタンブラ2の退出路の閉塞、開放とを対応させることにより簡単に実現することできる。この結果、構造が簡単で、故障の発生もなくなって信頼性が向上する。さらに、コード設定体21はキープレート1の挿入方向、すなわち、シリンダケース4の長手方向に移動するように構成することにより、シリンダケース4の長手方向寸法をコード設定体21の移動スペースとして利用することができるために、シリンダ錠を小型化することができる。
この場合、コード設定体21は手動により直接操作することも可能であるが、
コード設定体21を噛合解除禁止位置側に付勢する作動スプリング22と、
コード設定体21を噛合解除許可位置に係止、維持するストッパ23とを有し、
該ストッパ23を解除して前記作動スプリング22の復元力によりコード設定体21を噛合解除禁止位置側に移動させるように構成すると、ストッパ23の解除操作だけで自動的に錠側解錠コードの形成が行われるために、操作性が極めて良好になる。
ストッパ23の操作は例えば、シリンダケース4からストッパ23先端を露出させておき、手動によりこれを押し下げ、あるいは引き上げることにより行うことができるが、
ストッパ23は、上記ストッパ23はロータ3からの飛び出し方向に付勢されて主移動方向(DM)に移動自在にロータ3内に収容され、
キープレート1の挿入によりロータ3内に退避してコード設定体21との係止が解除されるように構成すると、キープレート1の挿入操作だけで自動的に錠側解錠コードが形成されるために、より操作性が向上する。
この場合、前記ストッパ23はロータ3からの飛び出し方向に付勢されて主移動方向(DM)に移動自在にロータ3内に収容されるとともに、キープレート1の挿入によりロータ3内方に移動可能であり、
キープレート1挿入後、ロータ3を所定角度回転させた後にコード設定体21との係止が解除されるように構成すると、キープレート1を挿入した後、所定角度回転させなければ錠側解錠コードが形成されないために、初期状態にあることを知らずに誤ってキープレート1を挿入して、錠側解錠コードを設定してしまうことがなくなる。
また、前記ストッパ23が、キープレート1に形成された識別部5により作動するように構成すると、予め決定されたキープレート1によってのみ錠側解錠コードの設定が可能となるために、錠側解錠コードの形成に対する信頼性がより向上し、さらに、例えば識別部5を有しない作業用の暫定キープレート1を使用することにより、初期状態を維持したまま、ロータ3の回転操作を行うことができる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、解錠コードの設定がシリンダ錠組み立て完了後の好みの時に行うことができ、しかも、解錠コード設定前においては、ロータへの回転操作が可能なために、自動車の組み立て作業性等の向上を図ることができる。さらに、シリンダ錠の製造に際しては、同一のタンブラ構成を有するものを複数製造することができるために、製造効率も向上する。
図1、2に自動車のドア錠として構成された実施の形態を示す。この実施の形態において、シリンダ錠は、シリンダケース4内にロータ3を回転自在に挿入して形成される。ロータ3の終端部にはレバー6がクリップ7により固定され、ロータ3を回転操作することにより、例えば、レバー6に連結されるロッドを経由して自動車のドア体内に収容されるドアロックを操作できる。また、ロータ3はシリンダケース4に係止されるリターンスプリング8により後述する初期回転位置に付勢される。
シリンダケース4の頭部はキー操作穴9aを備えたカバー9により覆われており、キー操作穴9aをロータ3の先端に装着されるシャッタ部10により閉塞する。シャッタ部10は中央にキー挿通孔11aを開設したシャッタカバー11と、キー挿通孔11aを閉塞するためのシャッタプレート12と、シャッタプレート12およびシャッタカバー11を前方に付勢するシャッタスプリング13とを有し、部品境界部での隙間発生が防止される。
図4に示すように、ロータ3は長手方向に貫通するキー挿入溝3aを備え、キー挿入溝3aに沿って複数のタンブラ2、2・・をキープレート1の挿入軸線c1に直交する面内の所定方向(主移動方向DM)に移動自在に保持するタンブラ溝3bが形成される。各タンブラ2は、ロックタンブラ14とキー対応タンブラ15に分割されており、図4に示すように、キープレート1の挿入軸線c1方向に多数組を収容するために、後述するガイド突部2aの形成面と反対面同士を接触させた状態の2対を1組としてロータ3に収容される。
ロックタンブラ14は、図4に示すように、表裏いずれかの面にガイド突部2aを備えており、ガイド突部2aをロータ3側のガイド溝3cに嵌合させることにより、主移動方法(DM)への移動のみが許容される。また、ロックタンブラ14の上端面には解錠許可切欠14aが形成される。
一方、キー対応タンブラ15には、一側縁中央部を切り欠いてキープレート1の挿通凹部15aが形成され、挿通凹部15aの底壁にはキープレート1のコード形成溝(コード形成部1a)に嵌合可能な係合突起15bが突設される。このキー対応タンブラ15は表裏いずれかの面にガイド突部2aを備えており、ガイド突部2aがタンブラ保持ブロック16のガイド溝16aに嵌合される。タンブラ保持ブロック16はロータ内に主移動方向(DM)に直交する方向に移動自在に装着され、ガイド溝16aは主移動方向(DM)にキー対応タンブラ15をガイドする。
これらキー対応タンブラ15とロックタンブラ14とは、1枚のタンブラプレートをキープレート1の板厚方向に分割した形状とされ、図5に示すように、分割面には、鋸歯状の噛合突起2bが所定ピッチで形成される。図8に示すように、キー対応タンブラ15とロックタンブラ14は、噛合突起2bの噛み合い位置を変更することができ、噛み合い位置を変更することにより、キー対応タンブラ15の係合突起15bと、ロックタンブラ14の解錠許可切欠14aとの相対位置を変更できる。噛合突起2bのピッチは、キープレート1のコード形成溝1aの種類に対応する。噛合突起2bは両側辺が傾斜辺により形成されており、傾斜辺同士を当接させる状態で噛合状態を維持し、該噛合状態においていずれかを側方に強制移動させた際には、一方が傾斜辺を乗り上げて一旦噛合を解除した後、隣接する他の噛合突起2bに噛合することができる。
また、ロータ3の上部にはサイドバー収容部3dが形成され、サイドバー(ロック体17)が主移動方向(DM)に対して直交方向に移動自在に装着される。図2に示すように、サイドバー17はロータ3のタンブラ2装着領域のほぼ全長に渡るキープレート1の挿通軸線c1方向に長い部材であり、底面には長手通しにストッパ突条17aを備える。ストッパ突条17aはサイドバー収容部3dの開口からロックタンブラ14の摺動領域まで侵入してロックタンブラ14の解錠許可切欠14aに係合可能できる(図5(a)参照)。また、サイドバー17とロータ3の間には板スプリング18が介装され、サイドバー17をロータ3からの飛び出し方向に付勢する。
さらに、シリンダ錠は、コード設定部19と、後述するキープレート1の識別部5を検知し、コード設定部19を駆動する検知部20とを備える。コード設定部19は、サイドバー17、およびタンブラ保持ブロック16に対峙してシリンダケース4側に配置されるコード設定体21、21’と、上記サイドバー17に設けられるロック突部17b、およびタンブラ保持ブロック16に形成される乗り上げ突部16bとから構成される。各コード設定体21、21’は対向するサイドバー17、あるいはタンブラ保持ブロック16の突部17b、16bが嵌合可能な凹部21a、21a’を備えてシリンダケース4に設けられた設定体収容部4aに収容され、サイドバー17側の凹部21aは設定体収容部4aと共働してロック用凹部25を構成する。設定体収容部4aの開口端側側壁4cは、内周に行くに従って漸次幅方向寸法が大きくなる斜面により形成され、サイドバー17、あるいはタンブラ保持ブロック16がロータ3から飛び出して設定体収容部4a内に嵌合されていても、ロータ3に回転操作力を与えると、斜面からの分力によりロータ3内に没入し、シリンダケース4との間の回転境界面を開放することができる。また、図5に示すように、タンブラ保持ブロック16の乗り上げ突部16bの側壁16cは該突部16bが先端に行くに従って幅方向寸法が小さくなるような傾斜面とされ、サイドバー17のロック突部17bも先端に行くに従って傾斜面とされるためロータ3への回転操作力から効率よく没入方向の分力が得られるようにされる。
上記各コード設定体21、21’は設定体収容部4a内でキープレート1の挿入軸線c1方向に移動自在であり、圧縮バネからなる作動スプリング22により後方に付勢され、コード設定体21、21’の後端部に装着されるストッパピン(ストッパ23)をロータ3の外周全周に形成されるストッパ溝3eに係止させて後方への移動が規制される。ストッパピン23は圧縮スプリングからなるストッパスプリング23aによりロータ3側に付勢され、ストッパ溝3eの後方壁面は後述する検知タンブラ2の進退範囲を含む所定角度範囲で拡径されてストッパ壁3fとされる。
以上のように構成されるシリンダ錠は、シリンダ錠の組み立て作業完了時の状態(初期状態)と、後述する解錠コード設定状態の2種類の状態を維持することが可能であり、図4ないし6に示す初期状態において、各コード設定体21、21’はストッパピン23により後方への移動が規制され、サイドバー17のロック突部17bはコード設定体21の凹部21a間に配置される押し込み突部21bに乗り上げている。この状態で、図5(a)に示すように、サイドバー17はロータ3からの突出が押さえ込まれてロータ3とシリンダケース4との回転境界面が開放され、さらに、サイドバー17のストッパ突条17aはロックタンブラ14の解錠許可切欠14aに係合してロックタンブラ14の側方への移動を規制する。
また、初期状態において、タンブラ保持ブロック16の乗り上げ突部16bはコード設定体21’の凹部21a’に対峙しており、図5(a)に示すように、タンブラ保持ブロック16は乗り上げ突部16bをコード設定体21’の凹部21a’に嵌合することによりロータ3とシリンダケース4との回転境界面を越えてシリンダケース4側に移動することができる。タンブラ保持ブロック16のロータ3からの飛び出し方向の移動寸法はキー対応タンブラ15とロックタンブラ14との噛合深さより大きく設定され、タンブラ保持ブロック16の乗り上げ突部16bがコード設定体21’の凹部21a’に嵌合すると、キー対応タンブラ15はタンブラ保持ブロック16に連動して噛合解除方向に移動し、ロックタンブラ14との噛合を解除する。
任意の解錠コードを有するキープレート1をロータ3に挿入すると、まず、先頭に配置されたキー対応タンブラ15の係合突起15bがキープレート1のコード形成溝1aに係合し、順次コード形成溝1aの先端開放部が各キー対応タンブラ15の係合突起15bを拾うようにして該係合突起15bをコード形成溝1a内に受容しながら所定深さまで挿入される。上述した初期状態において、キー対応タンブラ15は解錠許可切欠14aがサイドバー17のストッパ突条17aに係合して側方への移動が規制されるロックタンブラ14に対して噛合解除状態にあるために、キープレート1のコード形成溝1aを倣うようにして移動面を移動しながらキープレート1の通過を許容する。また、キー対応タンブラ15がロックタンブラ14に噛合している状態でも、キープレート1の挿入力によりキー対応タンブラ15に側方への移動力が付与されると、移動を拘束されているロックタンブラ14との接触部に発生する分力によりタンブラ保持ブロック16はコード設定体21’の凹部21a’との嵌合方向に押しやられてキー対応タンブラ15とロックタンブラ14との噛合は解除されるために、キー対応タンブラ15はロックタンブラ14に対して独立に移動でき、キープレート1の挿入操作に支障はない。
また、上述したように初期状態ではサイドバー17側の回転境界面は常に開放され、さらに、タンブラ保持ブロック16はロータ3内方への移動が許容され、乗り上げ突部16bがコード設定体21’の凹部21a’に嵌合して回転境界面を閉塞しても、ロータ3の回転操作によりロータ3内に没入して回転境界面を開放するために、キープレート1に形成された解錠コードがどのようなものであっても、常にロータ3を回転させることができる。
初期状態からコード設定状態への移行操作は、識別部5を備えたキープレート1をロータ3に挿入し、さらに、該キープレート1を使用してロータ3を回転させることにより行われる。この実施の形態において識別部5は、図3(b)に示すように、キープレート1の先端の板厚を利用して形成され、ロータ3には検知部20を構成する検知タンブラが配置される。図4に示すように、検知タンブラ20は正面側端部にガイド斜面20aを備えて上記各コード設定体21、21’のストッパピン23に対峙して設けられ、識別部5によりロータ3からの飛び出し方向に押し出されてストッパピン23をストッパ溝3eとの係止解除方向に移動させる。
この後、ロータ3を回転させると、図7に示すように、タンブラ保持ブロック16はシリンダケース4の内壁により強制的にロータ3内に没入させられ、ロータ3内の没入とともに、キー対応タンブラ15はロックタンブラ14に噛合する。この状態において、ロックタンブラ14は解錠許可切欠14aがサイドバー17のストッパ突条17aに嵌合し、さらに、各キー対応タンブラ15は挿入されたキープレート1のコード形成溝1aに係合してロータ3内の移動面内での所定位置まで移動しており、各タンブラ2は挿入されたキープレート1の解錠コードに1対1対応する錠側解錠コードを形成する。さらにロータ3を所定の回転角度(θ)まで回転させると、ストッパピン23とストッパ壁3fとの係止が解除され、コード設定体21、21’は作動スプリング22に押されて後方に移動する。図7、9に示すように、コード設定体21、21’の後端に設けられたストッパ切欠21c、21c’がシリンダケース4に設けたストッパ部4bに衝接する移動ストローク終端において、サイドバー17のロック突部17bはコード設定体21の凹部21aに正対し、板スプリング18の弾性復元力によりコード設定体21の凹部21a、すなわちロック用凹部25に嵌合する。サイドバー17がシリンダケース4側に移動することによって、図8(a)に示すように、ストッパ突条17aとロックタンブラ14の解錠許可切欠14aの係合が解除され、ロックタンブラ14の拘束が解除される。
また、コード設定体21、21’が後方に移動した状態で、各ストッパピン23は図9(a)に示すように、ロータ3のクリック凹部3gに落ち込んでキープレート1の抜き差し位置までロータ3を回転させた際のクリック感を付与する。
一方、ロータ3の回転に伴うタンブラ保持ブロック16側のコード設定体21’の移動により、タンブラ保持ブロック16の乗り上げ突部16bはコード設定体21’の凹部21a’間に形成される押し込み突部21b’に乗り上げた状態となり、以後、タンブラ保持ブロック16のロータ3からの飛び出し方向への移動を禁止してキー対応タンブラ15とロックタンブラ14との噛合状態を維持する。
これに対し、図3(c)、(d)に示すように、先端が面取りされていたり、あるいは図3(e)、(f)に示すように、検知タンブラ20の設置位置まで届かない短寸のキープレート1を挿入しても、検知タンブラ20は作動せず、シリンダ錠は初期状態から移行しない。また、ロータ3の回転操作をストッパピン23がストッパ壁3fを越える前に停止して初期回転位置に復帰させた場合にも、コード設定体21、21’が後方に移動しないために初期状態から移行することがない。
解錠コード設定状態においてキープレート1を正規位置まで挿入すると、キー対応タンブラ15はキープレート1のコード形成溝1aにより移動面上を側方に所定位置まで移動し、キー対応タンブラ15に噛合しているロックタンブラ14もキー対応タンブラ15に追随動して移動面を側方に移動する。キープレート1の解錠コードがタンブラ2により形成される錠側解錠コードに合致している際には、図8(a)に示すように、ロックタンブラ14の解錠許可切欠14aはサイドバー17のストッパ突条17aに正対する。この状態でロータ3に回転操作力を与えると、サイドバー17は設定体収容部4aの開口端側側壁4cからロータ3内方への分力を付与されるために、ストッパ突条17aがロックタンブラ14の解錠許可切欠14aに嵌合しながらロータ3内に没入し、ロータ3の回転が許容される。
これに対し、真正キー以外のキープレート1が挿入された際には、キー対応タンブラ15は予め設定された位置以外の位置まで移動するために、ロックタンブラ14の解錠許可切欠14aとサイドバー17のストッパ突条17aは正対することはなく、ロック用凹部25に侵入してロータ3の回転境界面を閉塞しているサイドバー17のロータ3内への没入はストッパ突条17aがロックタンブラ14に干渉して禁止され、ロータ3を回転操作することができない。
さらに、この実施の形態は初期状態復帰手段24を備える。初期状態復帰手段24は、各コード設定体21、21’に設けられた孔状の被操作部24aと、シリンダケース4に開設されたアクセスホール24bから構成される。アクセスホール24bは、図4、図7に示すように、コード設定体21、21’の移動ストローク両端においてコード設定体21、21’の被操作部24aに臨むことができる程度のキープレート1の挿入軸線c1方向に長い長孔からなる。
コード設定状態において、まず、ロータ3を回転させてストッパ壁3fにより閉鎖されているストッパピン23の移動経路を開放し、次いで、アクセスホール24bからピン状のジグによりコード設定体21、21’の被操作部24aを操作してコード設定体21、21’を前方に移動させ、さらに、ロータ3を初期回転位置に復帰させると、各コード設定体21、21’は初期位置に保持され、以後、シリンダ錠は初期状態に維持される。
なお、以上の説明において、キープレート1のコード形成部1aはキープレート1の側面に溝状に形成されている場合を示したが、これに限られず、切断端面に切欠状に形成したものであってもよい。また、コード設定体21、21’はサイドバー17とタンブラ保持ブロック16に対応する2個が配置されているが、一体に形成することもでき、さらに、コード設定時の移動方向、すなわち、作動スプリング22による付勢方向も逆に設定することができる。
加えて、上述した実施の形態において解錠コード設定を行うためには、識別部5を備えたキープレート1を使用する必要があるが、識別部5の有無に関わらず、ロータ3を回転させることにより挿入されたキープレート1の解錠コードに合致する錠側解錠コードを形成することもできる。このように構成するためには、例えば、上述した実施の形態において、キープレート1の挿入によりストッパピン23のストッパ溝3eとの係止が解除されるように変更するだけで足り、ストッパピン23はキープレート1の完全挿入を検出するための検出部として機能する。
図10ないし16に本発明の第2の実施の形態を示す。なお、この実施の形態、およびこの実施の形態以降の実施の形態の説明において、上述した実施の形態と実質的に同一の構成要素は、図中に同一符号を付して説明を省略する。
この実施の形態において、キープレート1の側面には、図13(a)に示すように、切り込み深さの異なる複数のコード形成用切欠がロータ3内のタンブラ2の配置ピッチに一致したピッチで設けられてコード形成部1aとされる。
ロックタンブラ14は表面にガイド溝14bを、側壁部に解錠許可切欠14aと噛合突起2bとを備え、ロータ3のタンブラ溝3bに挿入される。該ロックタンブラ14を主移動方向(DM)にのみ移動自在に保持するために、ロータ3のタンブラ溝3bには、上記ガイド溝14bに摺動自在に嵌合するガイド突条3hが設けられる。また、ロータ3の終端にはストッパ23と検知部20を兼ねるストッパタンブラ28が装着される。ストッパタンブラ28は中央部に細長矩形形状のキー挿通穴28aを有し、ストッパスプリング23aによりロータ3からの飛び出し方向に付勢される。
キー対応タンブラ15には、中央部にキープレート1が挿通可能な細長矩形形状のキー挿通穴15cが、その側方にスプリング収容孔15dがそれぞれ開口される。また、キー対応タンブラ15の側壁部にはロックタンブラ14の噛合突起2bに噛合可能な噛合突起2bが設けられ、さらに、表面には長手通しにガイド溝15eが設けられる。
26はタンブラガイドブロックであり、主移動方向(DM)に対して直交方向に移動自在にロータ3に装着され、ブロック付勢スプリング29によりロータ3からの飛び出し方向に付勢される。このタンブラガイドブロック26には、上記ロータ3のタンブラ溝3bの形成ピッチに合致するピッチで複数のタンブラ保持溝26a、26a・・・が設けられる。このタンブラ保持溝26aの壁面には、上記キー対応タンブラ15のガイド溝15eに嵌合可能なガイド突条26bが設けられ、ロータ3に装着された状態でキー対応タンブラ15を主移動方向(DM)に摺動自在に保持する。
また、タンブラガイドブロック26にはタンブラ保持溝26aに重合する位置に有底のスプリング保持孔26cが設けられ、圧縮スプリングからなるタンブラスプリング27が収納される。タンブラスプリング27は上記キー対応タンブラ15のスプリング収容孔15dにはめ込まれる状態で一端がスプリング保持孔26cの底壁に、他端がスプリング収容孔15dの周壁に当接してキー対応タンブラ15をロータ3外方に付勢する。上記スプリング保持孔26cは、開放方向が交互に逆転するように形成され、結果、キー対応タンブラ15は交互に逆方向に付勢される。
さらに、タンブラガイドブロック26には、上述したタンブラ保持ブロック16と同様に、先端に行くに従って幅狭となる乗り上げ突部26dが形成される。
以上のようにしてタンブラガイドブロック26、およびタンブラガイドブロック26に対して対向位置に装着されるサイドバー17を保持したロータ3は可動スリーブ(コード設定体21)に挿入される。この可動スリーブ21は筒状に形成されて、外周壁に形成されるガイド突部21dをガイド凹部4dに嵌合させてシリンダケース4内に長手方向に摺動自在に収容される。シリンダケース4内には作動スプリング22が挿入され、可動スリーブ21を前方に付勢する。可動スリーブ21には、長手方向適宜箇所に上記タンブラガイドブロック26の乗り上げ突部26dとサイドバー17のロック突部17bが嵌合可能な嵌合開口21eが設けられ、ロック突部17bに対応する嵌合開口21eはロック用凹部25を構成する。ロック突部17b、および乗り上げ突部26dと嵌合開口21eは、タンブラガイドブロック26側、あるいはサイドバー17側のいずれか一方が嵌合状態にある際には、他方が非嵌合状態となる位置関係に設定される。
したがってこの実施の形態において、初期状態では、図11、12に示すように、可動スリーブ21は、該可動スリーブ21側に形成されるストッパ壁3fをロータ3のストッパタンブラ28に当接させることにより、後方位置に維持されるとともに、タンブラガイドブロック26はブロック付勢スプリング29によりロータ3外方に付勢されて、乗り上げ突部26dが嵌合開口21eに嵌合する。この状態でタンブラガイドブロック26に保持されるキー対応タンブラ15とロータ3側に保持されるロックタンブラ14とは噛合解除状態に維持される(図11(b)参照)。一方、サイドバー17側のロック突部17bは嵌合開口21eに対応することなく可動スリーブ21の内周壁に当接してロータ3内方に押し込まれており、この状態で、サイドバー17のストッパ突条17aはロックタンブラ14の解錠許可切欠14aに嵌合してロックタンブラ14の移動を規制する。
キー対応タンブラ15のキー挿通穴15cは図示の状態、すなわち、キープレート1の挿入軸線c1に対して乗り上げ突部26dの嵌合代だけずれた位置においてもキープレート1を挿入可能な幅寸法(w)を有しており、上述した実施の形態と同様にキープレート1に形成されたコード形成部1aの種類にかかわらず、ロータ3に回転操作を与えることができる。
この実施の形態において、図13(a)に示すように、キープレート1終端に形成された導入斜面が識別部5として使用される。識別部5を有したキープレート1をロータ3に挿入すると、各キー対応タンブラ15はキープレート1のコード形成切欠1aの切り込み深さに対応する位置まで移動し、タンブラスプリング27の復元力により当該位置を維持する。また、キープレート1を挿入ストローク終端まで挿入することにより、ストッパタンブラ28は図14(a)に示す状態から、キー挿入穴28aの周壁がキープレート1の導入斜面5により押しつけられてロータ3内に移動し、可動スリーブ21のストッパ壁3fとの係止寸法を減少させる。
次いで、キープレート1によりロータ3を回転させると、タンブラガイドブロック26の乗り上げ突部26dは嵌合開口21eから脱離して可動スリーブ21の内周壁面に押され、タンブラガイドブロック26、およびキー対応タンブラ15はロータ3中央側に移動し、キー対応タンブラ15はロックタンブラ14に噛み合って、ロックタンブラ14とキー対応タンブラ15は一体として作動する。
一方、上記ストッパ壁3fとストッパタンブラ28との係止状態は、ロータ3、すなわち、ストッパタンブラ28が所定角度回転するまで維持され、その後、図14(b)に示すように、係止が解除する。ストッパタンブラ28との係止解除により支えを失った可動スリーブ21は、作動スプリング22の復元力によって前方方向のストローク終端位置まで移動する。
次いで、キープレート1によりロータ3を原位置まで回転させると、前方ストローク終端位置に移動したサイドバー17のロック突部17bは可動スリーブ21の嵌合開口21eに対峙し、図15(b)に示すように、ロック突部17bは可動スリーブ21の嵌合開口21eに嵌合する。この状態でサイドバー17のストッパ突条17aとロックタンブラ14の解錠許可切欠14aとの嵌合状態が解除されるために、ロックタンブラ14の移動が可能になり、以降、ロックタンブラ14は噛合突起2bを介して一体化されたキー対応タンブラ15とともに移動可能になる。この後、キープレート1をロータ3から抜去すると、サイドバー17のロック突部17bが嵌合開口21eに対応する位置においてはタンブラガイドブロック26の乗り上げ突部26dは可動スリーブ21の内周壁に対応してキー対応タンブラ15の噛合解除方向への移動が禁止されるために、各キー対応タンブラ15はキープレート1のコード形成切欠1aに対応した位置でロックタンブラ14に噛合解除不能に噛合し、以降、一体として動作する。
この後、異種の解錠コードを有するキープレート1を挿入した場合には、切り込み深さが異なるコード形成切欠1aに対応するキー対応タンブラ15はロックタンブラ14とともに、ロータ3内での位置が所定位置からずれるために、ロックタンブラ14の解錠許可切欠14aは、サイドバー17のストッパ突条17aとの対峙位置から移動し、結果、サイドバー17のロータ3内への退避が不能となるために、ロータ3への回転操作が禁止される。
一方、図13(b)に示すような識別部5を有しないキープレート1を初期状態にあるロータ3に挿入しても、ストッパタンブラ28がロータ3内方に移動しないために、可動スリーブ21が前方に移動することはなく、そのまま初期状態が維持される。
また、この実施の形態においても、真正のキープレート1によって、ストッパタンブラ28が可動スリーブ21のストッパ壁3fとの干渉が生じない位置までロータ3を回転させた後、適宜の治具を使用して可動スリーブ21を後方ストローク終端まで移動させることにより、一旦設定したコードを初期状態に復帰させることができる。
図17ないし20に本発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態において、キー対応タンブラ15はコ字状の挿通凹部15aを備え、タンブラスプリング27によりロータ3からの飛び出し方向に付勢されてロータ3内に移動自在に収容される。また、ロータ3に装着されるロックタンブラ14は対向する一対の傾斜辺14c、14cを備えるVノッチ状の解錠許可切欠14aを備え、主移動方向(DM)に直交する方向にガイドされる。
一方、サイドバー17は一端縁に上記解錠許可切欠14aの傾斜辺14cに嵌合可能なV次状のストッパ突条17aを有する。このサイドバー17はシリンダケース4の長手方向に移動可能なコード設定体21に保持され、主移動方向(DM)に直交する方向に移動自在とされる。サイドバー17とコード設定体21との間には、圧縮スプリングからなるサイドバー駆動スプリング30が介装され、サイドバー17をロータ3中央方向に付勢する。サイドバー17のロータ3内への突出寸法を規制するためにサイドバー17とコード設定体21にはサイドバーストッパ31が設けられ、サイドバー17のロータ3からの飛び出し方向への移動を許容するために、シリンダケース4の内周壁にはロック用凹部25が設けられる。
コード設定体21は、主移動方向(DM)とこれに直交する方向に移動自在であり、ロータ3とコード設定体21との間に介装される作動スプリング22によりロータ3長手方向、後方に向けて付勢される。また、コード設定体21の外周壁面には、シリンダケース4の内周壁に形成される嵌合凹部4eの嵌合可能な乗り上げ突部21fが設けられる。
この実施の形態において、初期状態では図18(a)に示すように、コード設定体21はロータ3の終端に設けられるストッパ23と検知部20を兼用するストッパプレート32に終端が係止して前方位置を維持している。この状態でサイドバー17はサイドバー駆動スプリング30によりロータ3内方に押し付けられ、図17(a)に示すように、ストッパ突条17aが解錠許可切欠14aに嵌合したロックタンブラ14をキー対応タンブラ15側に付勢してロックタンブラ14とキー対応タンブラ15を噛合させる。同時に、上記サイドバー駆動スプリング30はコード設定体21をロータ3外方に付勢し、コード設定体21の乗り上げ突部21fを初期状態において対峙するシリンダケース4側の嵌合凹部4e内に嵌合する。
また、ロックタンブラ14は、コード設定体21がシリンダケース4側に飛び出しているために、キー対応タンブラ15との噛合解除方向に移動可能であり、例えば図13(b)に示すように、識別部5を備えない任意のキープレート1を挿入すると、各キー対応タンブラ15はロックタンブラ14との噛み合い位置を変更しながらキープレート1のコード形成切欠1aの切り込み深さに応じたロータ3内の位置に移動する。一方、コード設定体21は、サイドバー駆動スプリング30の付勢力に抗した操作力が与えられると、ロータ3内方に移動することができ、キープレート1を挿入した状態において、ロータ3に回転操作力を与えると、コード設定体21はシリンダケース4の嵌合凹部4eに設けた斜面4fによりロータ3内方への押圧力を受けてロータ3内方に没入するために、キープレート1の解錠コードに影響を受けることなく回転操作を行うことができる。
これに対し、識別部5を備えたキープレート1を挿入すると、まず、識別部5によりロータ3のストッパプレート32がストッパスプリング23aの反力に抗してロータ3内方に移動し、コード設定体21との係止寸法が減少し、この後、ロータ3を所定角度回転させると、ストッパプレート32とコード設定体21との係止が完全に解除される(図20参照)。図19に示すように、ストッパプレート32との係止解除により、コード設定体21は作動スプリング22の作用により後方に移動する。コード設定体21の移動によりコード設定体21の乗り上げ突部21fとシリンダケース4の嵌合凹部4eとの対応関係は崩れ、コード設定体21の乗り上げ突部21fはシリンダケース4の内周壁に乗り上げてロータ3内方側の位置に維持される。サイドバー駆動スプリング30の復元力により乗り上げ突部21fの移動が円滑になされるように、乗り上げ突部21f、および嵌合凹部4eのコード設定体21の移動方向の壁面は斜面にされる。
コード設定体21のロータ3内方への移動により、ロックタンブラ14はキー対応タンブラ15との噛合解除方向への移動が規制され、以後、ロックタンブラ14はキー対応タンブラ15の動作に追随する動作のみが許容される。
次いで、ロータ3を原位置に復帰させてキープレート1を抜去すると、図17(b)、および図18(b)に示すように、コード設定が完了する。この状態で異種キープレート1を挿入した場合には、キー対応タンブラ15の位置がコード設定時の位置と異なるために、サイドバー17はロックタンブラ14の傾斜辺14cによりロータ3外方に押し出される。この結果、サイドバー17の一端はシリンダケース4のロック用凹部25に嵌合して、ロータ3の回転境界面を閉塞し、ロータ3への回転操作が禁止される。一方、コード設定時のキープレート1を挿入した場合には、サイドバー17がロータ3内に収容されてロータ3の回転境界面を開放し、ロータ3への回転操作が許容される。