以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
実施の形態1の光ディスク装置で記録再生する光ディスクとして、DVD−RW(Digital Versatle Disk−Rewriterble)規格に準拠した光ディスクを例に挙げる。以下に、まず、DVD−RWについて説明する。
(DVD−RW)
図1は、DVD−RW規格に準拠した光ディスクの構成を示す構成図である。この光ディスクは、螺旋上に形成された記録溝(グルーブトラック)を持つ。この光ディスクへのデータの記録は、グルーブトラックに光ビームを照射し、相変化材料等で構成された記録膜の光学的特性を変化させた記録マークを形成することにより行う。
記録されるデータは、ECC(Error Correction Code)ブロックとよばれる誤り訂正の最小単位で構成されている。ECCブロックは16個のセクタで構成され、各セクタは26個のフレームで構成される。各フレームは、2バイトの同期信号と91バイトのデータとを8/16変調して得られるコード(すなわち、32Tのシンク部(SY)と1456Tのデータ部(DATA)との計1488Tのコード)で構成される。ここで1Tとは記録マークの単位時間長さのことを指し、DVD−RWの標準速度では38.2ns(1/(26.16MHz))に相当する。
シンク部は「14T幅の記録マークと4T幅のスペース(記録マークと記録マークに挟まれた領域)」あるいは「14T幅のスペースと4T幅の記録マーク」を含むコードで構成される。各セクタの先頭フレーム(フレーム0)には、データIDと呼ばれる4バイトの番地情報とIED(ID Error Detection code)と呼ばれる2バイトのID誤り検出コードとが設けられている。グルーブトラックは所定の周波数のうねり(ウォブル)を持たせている。このウォブルの周波数は標準速度では約140.6KHzであり、ウォブルの周波数を186逓倍(140.6KHz×186=26.16MHz)することにより、記録マークの単位時間長さのクロック信号を得ることができる。すなわち1ウォブルは186T周期であり、1フレーム(1488T)に8ウォブルある計算になる。
また、光ディスク上には記録の位置基準および物理番地情報として、グルーブトラックとグルーブトラックの間のランドトラックに、光ビームの照射面より見て凸形状を有するランドプリピット(LPP:Land Pre−Pit)と呼ばれるピットがあらかじめ製造過程において埋め込まれている。ランドプリピットは、内周側のグルーブトラックと対応づけられ、内周側グルーブトラックのウォブルの頂点に位置している。
セクタを構成する26個のフレームにおいて偶数フレームはEVENフレーム、奇数フレームはODDフレームと呼ばれる。特に、フレーム0はEVENシンクフレーム、フレーム1はODDシンクフレームと呼ばれる。基本的にはEVENフレームの8ウォブルのうち先頭3ウォブルの頂点位置に3ビットのLPPコードが配置されている。図2はLPPコードの意味を示す。ただし、グルーブトラックからみて内周側のLPPコードと外周側のLPPコードとが重なる場合は、互いのLPPコードが干渉(クロストーク)することを防ぐ為に、外周側のLPPコードをODDフレームにシフトして配置することになっている。1セクタにつき13個のLPPコードが定義されているので、各LPPコードを図2のテーブルを用いて逆変換することにより、1セクタにつきシンクコード1ビットとLPP情報12ビットとを得ることができる。
図3は、LPP情報の構成を示す構成図である。LPP情報はECCブロック(16セクタ)単位で1まとまりになっている。セクタごとに得られる12ビットのLPP情報のうち先頭4ビット(bit1〜bit4)はRA(Relative Address)と呼ばれ、ECCブロック内のセクタ番号を示す。残りの8ビット(bit5〜bit12)はDATAと呼ばれ、2対のエラー訂正コード(パリティ)と2対の物理番地情報(ECCブロックのアドレス)とを示す。
図4は、リンキング動作を示すタイミング図である。光ディスクにデータを記録する場合は、各フレームの先頭のランドプリピットと記録データのシンク部に含まれる14T幅の記録マークまたはスペースとが重なる周位置に記録していく。記録はECCブロックを最小単位として行い、記録の開始および終了はECCブロックの先頭セクタの先頭フレーム18バイト目である。既に記録したデータに対して結合して新たにデータを記録することをリンキングと呼ぶ。リンキングに失敗するとデータの不連続が発生する。図5Aは既に記録したデータと新たに記録するデータの間に隙間が生じてしまったためにデータの不連続が発生した例を示す。図5Bは、既に記録したデータの上に新たに記録するデータを重ね書きしてしまったためにデータの不連続が発生した例を示す。このようなデータの不連続が発生することを防止するために、リンキングには記録位置についての高い精度が要求される。
(光ディスク装置)
図6は、本発明の実施の形態1に係る光ディスク装置101の概略構成を示すブロック図である。
光ディスク装置101は、所定の変調則(例えば、8/16変調)に従ってデータを変調する変調部105と、その所定の変調則の少なくとも1つのパラメータ値を変更するパラメータ値変更部102と、その所定の変調則に従って変調されたデータを光ディスク100に記録する記録部127とを含む。このように、光ディスク装置101は、変調されたデータを光ディスク100に記録する記録装置として機能する。
例えば、パラメータ値変更部102は、新たなデータを光ディスク100に記録しようとするたびに少なくとも1つのパラメータ値を変更する。パラメータ値変更部102は、少なくとも1つのパラメータ値をランダムに変更してもよいし、所定の順序で変更してもよい。少なくとも1つのパラメータ値を変更することにより、同一のデータを異なる変調データに変換することが可能になる。これにより、同一のデータを同一の位置に繰り返し記録することが要求された場合には、同一のデータを同一の位置に繰り返し記録する代わりに、異なる変調データを同一の位置に繰り返し記録することになる。その結果、光ディスク100の記録薄膜の劣化を抑制し、光ディスク100の書換可能回数の低下を抑制することができる。
パラメータ値としては、その値を変更することにより同一のデータを異なる変調データに変換することが可能な任意の値を使用することができる。例えば、その所定の変調則がステート型変調である場合には、パラメータ値はステートの初期値であってもよい。あるいは、その所定の変調則がディジタル・サム・バリュー(DSV)を用いるものである場合には、パラメータ値はディジタル・サム・バリューの初期値であってもよいし、ディジタル・サム・バリューの目標値であってもよい。あるいは、少なくとも1つのパラメータ値として、ステートの初期値とディジタル・サム・バリューの初期値(もしくは目標値)とを組み合わせて用いてもよい。
光ディスク装置101の構成をさらに詳しく説明する。
図7は、光ディスク装置101の構成を示すブロック図である。
光ディスク装置101は、ヘッド112と、再生部113と、復調部114と、システム制御部115と、主変換部116と、副変換部117と、NRZI変換部118、119と、CDS演算部120、121と、DSV比較部122と、ラン長判定部123と、ステートセレクタ124と、コードワードセレクタ125と、パラレル−シリアル(P/S)変換部126と、記録部127とを含む。
光ディスク装置101は、図1に示したフォーマットで光ディスク100にデータを記録する。また、光ディスク装置101は、光ディスク100に記録されたデータ再生する。
ヘッド112は、光ディスク100に光ビームを照射し、光ディスク100からの反射光を検出することにより、光ディスク100に記録されたデータをアナログ変調信号として出力する。再生部113は、ヘッド112から出力されたアナログ変調信号をアナログ−ディジタル変換することにより再生信号を出力する。復調部114は、再生部113から出力された再生信号を復調することにより復調信号を出力する。復調信号は、システム制御部115に出力される。システム制御部115は、データパターン生成処理を制御するための制御信号(例えば、シンクゲート信号、データゲート信号)を出力する。シンクゲート信号、データゲート信号は、主変換部116と副変換部117とに出力される。
図8は、システム制御部115の概略構成を示すブロック図である。
システム制御部115は、DSVの初期値を変更するDSV初期値変更部103と、ステートの初期値を変更するステート初期値変更部104とを含む。例えば、DSV初期値変更部103は、新たなデータを光ディスク100に記録しようとするたびに、DSVの初期値をランダムに設定してもよい。例えば、DSV初期値変更部103は、0,1,−1などの所定数の候補値のなかから1つの値をランダムに選択してもよいし、所定の計算式でDSVの初期値を計算してもよい。また、ステート初期値変更部104は、新たなデータを光ディスク100に記録しようとするたびに、複数のステートのうちの1つをランダムに選択してもよい。
図7を再び参照して、主変換部116、副変換部117を説明する。
主変換部116は、その内部に複数の変換テーブルを持つ。これらの複数の変換テーブルには、図9Aに示される主変換テーブルと図10Bに示される主変換テーブルとが含まれる。
副変換部117は、その内部に複数の変換テーブルを持つ。これらの複数の変換テーブルには、図9Bに示される副変換テーブルと図10Cに示される副変換テーブルとが含まれる。
システム制御部115から出力されるシンクゲート信号がイネーブルである場合には、主変換部116は、図10Bに示される主変換テーブルを用いてシンク番号をシンクコードに変換し、副変換部117は、図10Cに示される副変換テーブルを用いてシンク番号をシンクコードに変換する。
システム制御部115から出力されるデータゲート信号がイネーブルである場合には、主変換部116は、図9Aに示される主変換テーブルを用いてデータシンボルをコードワードとネクストステートコードとに変換し、副変換部117は、図9Bに示される副変換テーブルを用いてデータシンボルをコードワードとネクストステートコードとに変換する。
図9Aは、データ部のための主変換テーブルの一例として8/16変調の主変換テーブルの構成を示す図である。図9Bは、データ部のための副変換テーブルの一例として8/16変調の副変換テーブルの構成を示す図である。
主変換テーブル(図9A)および副変換テーブル(図9B)のそれぞれは、ステート1からステート4までのステートをそれぞれ示す4つのテーブルを有している。4つのテーブルのそれぞれは、データシンボルごとにコードワードとネクストステートとを含む。コードワードは、現在のデータシンボル変換時に選択されるべきコードワードを示す。ネクストステートは、次のデータシンボル変換時に選択されるべきステートを示す。ネクストステートは、コードワード接続部のラン長制限を維持するために使用されるとともに、復調の際に使用されるステート情報ビットを指定するために使用される。
8/16変調では副変換テーブルは、0〜87のデータシンボルに対してしか準備されておらず、88以上のデータシンボルに対しては、副変換テーブルのステート1のテーブルの代わりに主変換デーブルのステート4のテーブルを使用し、副変換テーブルのステート2のテーブルの代わりに主変換テーブルのステート2のテーブルを使用し、副変換テーブルのステート3のテーブルの代わりに主変換テーブルのステート3のテーブルを使用し、副変換テーブルのステート4のテーブルの代わりに主変換テーブルのステート1のテーブルを使用することになっている。したがって、副変換テーブルを選択する場合は、ラン長制限を満たさない場合がある。ここで、ラン長制限とは、あるビット「1」と、その次に現れるビット「1」との間に存在するビット「0」の数の制限であり、そのビット「0」の数を、最小反転間隔以上、かつ最大反転間隔以下となるように制限することである。
各コードワードには、使用した変換テーブルのステートに基づくステート情報ビットが含まれている。このステート情報ビットはデータを復調する際に参照される。図9A、図9Bに示される例では、コードワードの0ビット目と12ビット目とがステート情報ビットに相当する。ステート1またはステート4の場合、ステート情報ビットは「0,0」、「0,1」、「1,0」または「1,1」となる。すなわち、この場合、ステート情報ビットはドントケアである。ステート2の場合、ステート情報ビットは「0,0」となる。ステート3の場合、ステート情報ビットは「0,1」、「1,0」または「1,1」となる。
図9A、図9Bにおいて、ネクストステートが1または4のコードワードは、対応するデータシンボルが一つしかなく、ステート情報ビットを参照しなくてもデータシンボルを特定できるようにテーブルが構成されている。一方、ネクストステートが2または3のコードワードは、対応するデータシンボルが複数存在する場合がある。したがって、コードワード(16ビット)と、その次のコードワードに含まれるステート情報ビット(2ビット)とによりデータシンボル(8ビット)を特定する。すなわち、あるコードワードに対して、その次のコードワードに含まれるステート情報ビットを参照して、そのコードワードに対するデータシンボルを得ることができる。
図10Aは、フレーム番号とシンク番号との対応関係を示すテーブルの構成を示す図である。図10Bは、シンク部のための主変換テーブルの構成の一例を示す図である。図10Cは、シンク部のための副変換テーブルの構成の一例を示す図である。
シンクコードは、図10Aに示される各フレーム番号ごとに指定されるシンク番号を用いて選択される。主変換テーブル(図10B)および副変換テーブル(図10C)のそれぞれは、ステート1/ステート2を示すテーブルと、ステート3/ステート4を示すテーブルとを有している。すなわち、ステート1とステート2とは同じテーブルを使用する。同様に、ステート3とステート4とは同じテーブルを使用する。シンク部の次のコードワードのステート(すなわち、ネクストステート)は常時1とする。
各シンクコードにはステート情報ビットが含まれている。このステート情報ビットは、そのシンクコードの直前に変調されたコードワードの復調の際に参照される。図10B、図10Cに示される例では、シンクコードの0ビット目と12ビット目とがステート情報ビットに相当する。ステート1またはステート2の場合、ステート情報ビットは「0,0」となる。ステート3またはステート4の場合、ステート情報ビットは「1,0」となる。シンク部のステートとステート情報ビットとの関係は、データ部のステートとステート情報ビットとの関係と同様である。
このように、光ディスク装置101は、ステートの初期値を変更することが可能なように構成されている。このため、新たなデータシンボルを光ディスク100に記録しようとするたびにステートの遷移のしかたを変化させることが可能である。その結果、同一のデータシンボルを光ディスク100の同一の位置に記録することを要求された場合でも、異なる記録パターンを光ディスク100の同一の位置に記録することができる。
つぎに、図7を再び参照して、光ディスク装置101の各部の説明を続ける。なお、以下の説明では、便宜上、主変換部116から出力されるシンクコードおよびコードワードを主変換コードと呼び、主変換部116から出力されるネクストステートを主変換ステートと呼ぶ。同様に、副変換部117から出力されるシンクコードおよびコードワードを副変換コードと呼び、副変換部117から出力されるネクストステートを副変換ステートと呼ぶ。
NRZI変換部118は、主変換コードをNRZI変換する。NRZI変換部119は、副変換コードをNRZI変換する。
CDS演算部120は、NRZI変換部118からの出力に基づいてCDSを計算し、その計算結果をCDSmainとして出力する。CDS演算部121は、NRZI変換部119からの出力に基づいてCDSを計算し、その計算結果をCDSsubとして出力する。
ラン長判定部123は、NRZI変換部119の出力とコードワードセレクタ125の出力とに基づいて、データ接続部分でのラン長が最小極性反転間隔10ビットのラン長制限を満たすか否かを判定する。ラン長判定部123は、ラン長制限を満たすと判定された場合には「H」(ハイレベル信号)を出力し、ラン長制限を満たさないと判定された場合には「L」(ローレベル信号)を出力する。
DSV比較部122は、現時点のDSVの合計をDSVtotalとする。ラン長判定部123の出力が「L」の場合には、DSV比較部122は「L」を出力するとともに、(DSVtotal+CDSmain)をDSVtotalに代入する。ラン長判定部123の出力が「H」の場合には、(DSVtotal+CDSmain)の絶対値が(DSVtotal+CDSsub)の絶対値以下である場合に限り、DSV比較部122は「L」を出力するとともに、(DSVtotal+CDSmain)をDSVtotalに代入する。それ以外の場合には、DSV比較部122は「H」を出力するとともに、(DSVtotal+CDSsub)をDSVtotalに代入する。DSVtotalの値は、DSV初期値変更部103によってリセットされる。リセットのタイミングは、例えば、新たなデータを光ディスク100に記録しようとする時である。リセットされる値は、例えば、ランダムな値である。
このように、光ディスク装置101は、DSVの初期値(DSVtotalがリセットされる値)を変更することが可能なように構成されている。このため、新たなデータシンボルを光ディスク100に記録しようとするたびに主変換テーブルおよび副変換テーブルの選択のしかたを変化させることが可能である。その結果、同一のデータシンボルを光ディスク100の同一の位置に記録することを要求された場合でも、異なる記録パターンを光ディスク100の同一の位置に記録することができる。ただし、DSVの初期値の絶対値が大きすぎると、同一のデータシンボルに対して同一の記録パターンしか選択されなくなる。DSV制御はDSVの絶対値を小さくするように動作するからである。このため、DSVの初期値は、±4以内(−4以上+4以下の範囲内)であることが好ましい。
ステートセレクタ124は、DSV比較部122からの出力が「L」の場合には、主変換ステートをネクストステートとして出力し、DSV比較部122からの出力が「H」の場合には、副変換ステートをネクストステートとして出力する。ステートセレクタ124から出力されたネクストステートは、主変換部116、副変換部117にそれぞれ入力され、次の変換テーブルを選択する際に使用される。
コードワードセレクタ125は、DSV比較部122の出力が「L」の場合にはNRZI変換部118からの出力を選択的に出力し、DSV比較部122の出力が「H」の場合にはNRZI変換部119からの出力を選択的に出力する。
すなわち、コードワードセレクタ125は、DSVの絶対値が小さくなる方の変換テーブルで変換されたシンクコードまたはコードワードを出力する。これにより、NRZI信号の直流成分を抑制することができる。
パラレル−シリアル変換部126は、コードワードセレクタ125からのパラレルデータをシリアルデータに変換し、そのシリアルデータを記録部127に出力する。記録部127は、パラレル−シリアル変換部126から出力されたシリアルデータに応じた光変換信号を生成し、ヘッド112を介して光ディスク100にデータを記録する。
このように、主変換部116と副変換部117とNRZI変換部118、119とCDS演算部120、121とDSV比較部122とラン長判定部123とステートセレクタ124とコードワードセレクタ125とパラレル−シリアル(P/S)変換部126とは、所定の変調則(例えば、8/16変調)に従ってデータを変調する変調部105(図6)として機能する。システム制御部115は、その所定の変調則の少なくとも1つのパラメータ値を変更するパラメータ値変更部102(図6)として機能する。
つぎに、光ディスク装置101の動作をフローチャートを参照して説明する。データ部およびシンク部の8/16変調において、主変換テーブルと副変換テーブルとは、DSVの値が所定値になるように使い分けられる。
図11は、光ディスク装置101における8/16変調の処理手順を示すフローチャートである。この処理では、まず、DSVの初期値およびステートの初期値をランダムに設定する(S1)。これにより、同じデータを繰り返し記録する場合も、記録のパターンを変更することができ、記録可能回数の低下を抑えることができる。
次に、シンク部に記録されるべきシンクコードまたはデータ部に記録されるべきコードワードを、主変換テーブルおよび副変換テーブルを用いて生成する(S3)。すなわち、シンク部にシンクコードを記録する場合は、図10Bに示した主変換テーブルおよび図10Cに示した副変換テーブルを用いて図10Aに示したフレーム番号に対応するシンク番号をシンクコードに変換する。また、データ部にコードワードを記録する場合は、図9Aに示した主変換テーブルおよび図9Bに示した副変換テーブルを用いてデータシンボルをコードワードに変換する。
何れの場合も、どのステートを用いるかは、その前の変換時に決定されるネクストステートに基づいて決定する。
主変換テーブルを用いた変換により得られたシンクコードまたはコードワードをNRZI変換したものに基づいてCDSを計算し、その結果をCDSmainとする。また、副変換テーブルを用いた変換により得られたシンクコードまたはコードワードをNRZI変換したものに基づいてCDSを計算し、その結果をCDSsubとする(S4)。
次に、副変換テーブルを用いた変換により得られたシンクコードまたはコードワードに対して、前に処理したシンクコードまたはコードワードとの接続部でのラン長を計算し、そのラン長が所定の制約を満たしているか否かを判定する(S5)。ラン長制限を満たしている場合にはステップS6に進み、ラン長制限を満たしていない場合にはステップS7に進む。このように、副変換テーブルを用いた変換により得られたシンクコードまたはコードワードに対してのみラン長制限を満たしているか否かを判定するのは、主変換テーブルを用いた変換ではラン長制限が常に満たされるのに対し、副変換テーブルを用いた変換ではラン長制限が満たされないことがあるためである。
したがって、ラン長制限を満たしているか否かの判定の結果、ラン長制限が満たされないと判定された場合は主変換テーブルを用いて変換を行うようにする。これにより、8/16変調のラン長制限を確実に満足することができる。ステップS6では、積算されたDSVにCDSmainを加算した値の絶対値と、積算されたDSVにCDSsubを加算した値の絶対値とを比較する。DSVにCDSmainを加算した値の絶対値が、DSVにCDSsubを加算した値の絶対値以下のときはステップS7に進む。一方、DSVにCDSmainを加算した値の絶対値が、DSVにCDSsubを加算した値の絶対値よりも大きいときはステップS9に進む。
ステップS7では、これまでのDSVにCDSmainを加算したものを、新たにDSVとする。その後、主変換テーブルを用いた変換により得られたシンクコードまたはコードワードを記録すべきコードとして選択する(S8)。
ステップS9では、これまでのDSVにCDSsubを加算したものを、新たにDSVとする。その後、副変換テーブルを用いた変換により得られたシンクコードまたはコードワードを記録すべきコードとして選択する(S10)。
つぎに、全データの記録が終了したか否かを判定し(S11)、記録が終了していれば処理を終え、記録が終了していなければステップS2に戻る。
このように、本発明の実施の形態1によれば、新たなデータを光ディスクに記録しようとするたびにDSVの初期値およびステートの初期値をランダムに変更することが可能になる。このため、同一のデータを繰り返し書き換える場合も、記録パターンを変更することが可能になる。その結果、書換可能回数の低下を抑えることができる。
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2に係る光ディスク装置201の概略構成を示すブロック図である。
光ディスク装置201は、所定の基準位置に対するデータの記録位置のずれ量の目標値を示すパラメータ値を変更するパラメータ値変更部203と、データの記録が進むにつれて所定の基準位置に対するデータの記録位置のずれ量が目標値に近づくように、所定の基準位置に対するデータの記録位置のずれ量を変化させるずれ量変化部202と、データの記録位置においてデータを光ディスク100に記録する記録部204とを含む。光ディスク装置201は、光ディスク100に記録されたデータの終端位置に基づいてデータの記録を開始する記録装置として機能する。
例えば、パラメータ値変更部203は、新たなデータを光ディスク100に記録しようとするたびにパラメータ値を変更する。パラメータ値変更部203は、パラメータ値をランダムに変更してもよいし、所定の順序で変更してもよい。パラメータ値を変更することにより、同一のデータを異なる位置に記録することが可能になる。これにより、同一のデータを同一の位置に繰り返し記録することが要求された場合には、同一のデータを同一の位置に繰り返し記録する代わりに、同一のデータを異なる位置に記録することになる。その結果、光ディスク100の記録薄膜の劣化を抑制し、光ディスク100の書換可能回数の低下を抑制することができる。
光ディスク装置201の構成をさらに詳しく説明する。
図13は、光ディスク装置201の構成を示すブロック図である。
光ディスク装置201は、スピンドルモータ212と、ピックアップ213と、モータドライバ214と、パワー制御回路215と、光ビーム駆動回路216と、再生増幅器217と、プリピット再生回路218と、ウォブル再生回路219と、データ再生回路220と、再生クロック生成回路221と、プリピットウインドウ保護回路222と、プリピットシンク検出回路223と、プリピット復調回路224と、プリピットアドレス抽出回路225と、データシンク検出回路226と、データシンクウィンドウ保護回路227と、8/16復調回路228と、データID抽出回路229と、記録クロック生成回路230と、ロック検出回路231と、システム制御部232と、記録制御回路233と、誤り訂正回路234と、8/16変調回路235とを含む。
スピンドルモータ212は、所定の回転周波数で光ディスク100を回転させる。スピンドルモータ212は、モータドライバ214によって駆動される。
ピックアップ213は、所定の再生パワーを有する光ビームを光ディスク100に照射する。ピックアップ213から出力される光ビームは、光ビーム駆動回路216から出力される駆動信号に基づいて制御される。光ビーム駆動回路216は、パワー制御回路215から出力される再生パワー制御信号に基づいて制御される。光ディスク100からの反射光は、光ビームが照射された光ディスク100の記録膜の光学的特性、物理的特性に応じたものとなる。光ディスク100からの反射光は、ピックアップ213に入射する。
ピックアップ213は、複数の受光回路(図示せず)を含む。複数の受光回路のそれぞれは、光ディスク100からの反射光の光量を電気信号に変換する。
再生増幅器217は、複数の受光回路から出力される電気信号を加算することにより和信号(RF(Radio Frequency)信号)を生成し、増幅したRF信号とトラックに対してほぼ平行に分割された受光回路から出力される電気信号とから差信号(プッシュプル信号)を生成する。RF信号は、データ再生回路220に出力される。プッシュプル信号は、プリピット再生回路218とウォブル再生回路219とに出力される。
プリピット再生回路218は、プッシュプル信号のレベルとスライスレベル(ランドプリピット部分の最大レベルとウォブルによる揺らぎ部分の最大レベルとの概ね中間値)とを比較するコンパレータ(図示せず)を含む。プリピット再生回路218は、プッシュプル信号のレベルがスライスレベルより大きい場合にはHレベルのプリピット信号を出力し、プッシュプル信号のレベルがスライスレベルより小さい場合にはLレベルのプリピット信号を出力する。
ウォブル再生回路219は、ウォブルの周波数(標準速度で140.6kHz近傍)成分が通過するBPF(Band Pass Filter)(図示せず)と、BPFから出力される信号のレベルとスライスレベル(ウォブル部分の振幅の概ね中間値)とを比較するコンパレータ(図示せず)とを含む。プッシュプル信号をBPFに通すことにより、プッシュプル信号からノイズ成分およびランドプリピット成分を除去することができる。ウォブル再生回路219は、BPFから出力される信号のレベルがスライスレベルより大きい場合にはHレベルのウォブル信号を出力し、BPFから出力される信号のレベルがスライスレベルより小さい場合はLレベルのウォブル信号を出力する。
データ再生回路220は、RF信号のレベルとスライスレベル(所定区間内のHレベルの積分値と所定区間内のLレベルの積分値が概ね等しくなるような値)とを比較するコンパレータ(図示せず)を含む。データ再生回路220は、RF信号のレベルがスライスレベルより大きい場合にはHレベルのデータ再生信号を出力し、RF信号のレベルがスライスレベルより小さい場合はLレベルのデータ再生信号を出力する。
再生クロック生成回路221は、データ再生信号のHレベルあるいはLレベルの最短幅(3T)が再生クロックの3周期に相当するように、かつ、データ再生信号のHレベルあるいはLレベルの最長幅(14T)が再生クロックの14周期に相当するように再生クロックの周波数を制御することにより、1Tの周波数を有する再生クロックを生成する。
プリピットウインドウ保護回路222は、以前に検出したプリピット信号の位置に基づいて次に検出すべきプリピット信号の位置を予測し、予測した位置以外で検出されたプリピット信号を除外する。これにより、プリピットの誤検出が低減される。
プリピットシンク検出回路223は、プリピットウィンドウ保護回路222から出力されるプリピット信号から、LPPコードの先頭のランドプリピットに相当するプリピットシンク信号を抽出する。
プリピット復調回路224は、プリピットシンク信号で同期をとり、図2に示されるテーブルに従ってプリピット信号をプリピット情報に変換する。
プリピットアドレス抽出回路225は、プリピット情報におけるEVENシンクあるいはODDシンクで同期をとり、RAとLPP情報とを取得し、RAに基づいてLPP情報をメモリに格納し、所定の誤り訂正を行い、プリピットアドレスを抽出する。
データシンク検出回路226は、データ再生信号を再生クロックのタイミングで同期化し、14T4T(14T幅の記録マークおよび4T幅のスペース、もしくは、14T幅のスペースおよび4T幅の記録マーク)を含むシンクコードを検出して、データシンク検出信号を出力する。
データシンクウィンドウ保護回路227は、以前に検出したデータシンク検出信号の位置に基づいて次に検出すべきデータシンク検出信号の位置を予測し、予測した位置以外で検出されたデータシンク検出信号を除外する。これにより、データシンクの誤検出が低減される。
8/16復調回路228は、データシンクウィンドウ保護回路227から出力されるデータシンク検出信号を基準に8/16復調を行い、復調データを出力する。
データID抽出回路229は、復調データからデータIDを抽出する。
記録クロック生成回路230は、記録クロックを生成する。記録クロックの周波数は、ウォブル信号とプリピット信号とによって制御される。記録クロック生成回路230の構成は、後述される。
ロック検出回路231は、記録クロックが所定周波数の範囲内にありかつ安定していることを検出し、ロック信号を出力する。
システム制御部232は、抽出されたプリピットアドレスあるいはデータIDを参照し、ピックアップ213がデータを記録すべき該当番地に到達し、かつ、記録クロックが安定したことを示すロック信号を検出すると、記録動作を開始するように記録制御回路233に指示する。
図14は、システム制御部232の概略構成を示すブロック図である。
システム制御部232は、所定の基準位置に対するデータの記録位置のずれ量の目標値を示すパラメータ値を変更するパラメータ値変更部203を含む。例えば、パラメータ値変更部203は、新たなデータを光ディスク100に記録しようとするたびにパラメータ値をランダムに設定するようにしてもよい。パラメータ値変更部203によって設定されたパラメータ値は、記録クロック生成回路230に出力される。
図13を再び参照して、記録制御回路233は、システム制御部232からの記録指示に応答して、記録開始点の直前にデータが記録されているか否かを判定する。記録開始点の直前にデータが記録されていない場合には、記録制御回路233は、プリピット信号に基づいて記録開始点を決定し記録ゲート信号を生成する。記録開始点の直前にデータが記録されている場合には、記録制御回路233は、データシンク検出信号に基づいて記録開始点を決定し記録ゲート信号を生成する。
誤り訂正回路234は、記録ゲート信号に応答して、記録すべきデータに誤り訂正コードを付加する。
8/16変調回路235は、誤り訂正回路234からの出力に対して8/16変調を行うことにより変調信号を生成し、その変調信号を記録クロックに同期化して出力する。
パワー制御回路215は、記録ゲート信号に応答して、記録パワー制御信号を光ビーム駆動回路216に出力する。
光ビーム駆動回路216は、所定のライトストラテジに基づいて変調信号をマルチパルス化し、記録パワー制御信号に応じた駆動信号を出力する。
ピックアップ213は、駆動信号を光ビームに変換し、その光ビームを光ディスク100の記録膜に照射する。光ビームが照射された記録膜の光学的特性は変化する。その結果、記録膜の上に記録マークが形成される。
記録クロック生成回路230は、第1のタイミング信号生成器236と、第2のタイミング信号生成器237と、位相差検出器238と、フィルタ239と、PLL(Phase Locked Loop)回路240とを含む。
第1のタイミング信号生成器236は、第1の矩形波を出力する。第1のタイミング信号生成器236は、記録クロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下りエッジ)の数をカウントするカウンタ(図示せず)と、カウンタのカウント値が所定値(B)に到達したときHレベルの信号を出力し、カウンタのカウント値が所定値(C)に到達したときLレベルの信号を出力する一致検出回路(図示せず)とを含む。カウンタのカウント値は、プリピットシンク信号に応答して所定値(A)にプリセットされる。プリピットシンク信号が第1のタイミング信号生成器236に入力されない場合には、第1のタイミング信号生成器236は、カウンタのカウント値が所定値(D)に到達した後、カウンタのカウント値を「0」にリセットする。このカウンタは、非記録(記録ゲート信号が非出力)、記録(記録ゲート信号が出力)に関係なくプリピットシンク信号に応答してプリセットされる。
第2のタイミング信号生成器237は、第2の矩形波を出力する。第2のタイミング信号生成器237は、記録クロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下りエッジ)の数をカウントするカウンタ(図示せず)と、カウンタのカウント値が所定値(B)に到達したときHレベルの信号を出力し、カウンタのカウント値が所定値(C)に到達したときLレベルの信号を出力する一致検出回路(図示せず)とを含む。カウンタのカウント値は、データシンク検出信号に応答して所定値(E)にプリセットされる。データシンク検出信号が第2のタイミング信号生成器237に入力されない場合には、第2のタイミング信号生成器236は、カウンタのカウント値が所定値(D)に到達した後、カウンタのカウント値を「0」にリセットする。このカウンタは、非記録(記録ゲート信号が非出力)の場合にのみ、データシンク検出信号に応答してプリセットされる。
なお、所定値(A)、(E)は、ランドプリピットとデータシンクの14T幅の記録マークまたはスペースの中心とが重なって記録された場合に、第1の矩形波の位相と第2の矩形波の位相との差が0になるような値として設計される。所定値(D)は、ウォブル1周期の長さの倍数である。
位相差検出器238は、記録(記録ゲート信号が出力)の場合にのみ動作し、第1の矩形波の位相と第2の矩形波の位相との差を示す第1の位相差信号を出力する。
フィルタ239は、第1の位相差信号の時間変化量に制限をつけた信号を補正量信号として出力する。フィルタ239は、例えば、LPFなどを用いて実現され得る。第1の位相差信号の時間変化量の制限は、本実施の形態における光ディスク装置で記録した光ディスクを再生する装置のデータ再生用PLLの応答速度を再生クロック生成が十分追従できるような応答速度とするために行われる。
ここで、このPLLの応答速度は一般的に9kHz以上が望ましいとされている。記録開始から記録位置のずれ量を変化させる速度、換言すれば、記録開始から記録位置をオフセットさせる速度が速すぎると、データ再生時のPLLが記録信号の時間軸変動に追従できずに再生エラーとなるおそれがある。一方、同じ位置への同じデータの書き込みを防ぐ効果を大きくするためには、記録開始から記録位置のずれ量を変化させる速度は速い方が望ましい。そのため、記録位置のずれ量を変化させる速度は、再生PLLの応答速度を超えない9kHz程度またはそれ以下であることが望ましい。
PLL回路240は、プリピット信号とウォブル信号とに基づいて記録クロックの周波数を制御するとともに、フィルタ239からの補正量信号(すなわち、第1の矩形波と第2の矩形波の位相差)がシステム制御部232からのパラメータ値に近づくように、記録クロックの周波数を制御する。
図15は、PLL回路240の構成の一例を示すブロック図である。
PLL回路240は、例えば、ノイズフィルタ241と、位相比較器242と、チャージポンプ243と、第1のLPF244と、VCO245と、分周器246と、位相差検出器247と、加算器248と、第2のLPF249と、位相シフト器250とを含む。
ノイズフィルタ241は、ウォブル信号に含まれる所定量以下のHパルスおよびLパルスをノイズとして除去する。
位相比較器242は、ノイズフィルタ241によりノイズが除去されたウォブル信号の位相と位相シフト器250から出力される移相分周クロックの位相とを比較し、その比較結果を示す第2の位相差信号を出力する。
チャージポンプ243は、位相比較器242から出力される第2の位相差信号を電圧レベル信号に変換する。
第1のLPF244は、チャージポンプ243から出力される電圧レベル信号から高域成分を除去する。
VCO245は、第1のLPF244により高域成分が除去された電圧レベル信号に応じた周波数で発振し、記録クロックを出力する。
分周器246は、記録クロックを186分周することにより分周クロックを出力する。
位相差検出器247は、プリピット信号が入力されるたびにプリピット信号の位相とウォブル信号の位相との差を検出し、その検出結果を示す第3の位相差信号を出力する。
第2のLPF249は、位相差検出器247から出力される第3の位相差信号から高域成分を除去し、第3の位相差信号の時間変化量に制限をつけて出力する。
加算器248は、第2のLPF249から出力される信号と補正量信号とインバータを通したパラメータ値とを加算し、加算補正量信号を生成する。
位相シフト器250は、分周クロックの位相を加算補正量信号に応じて移相し、移相分周クロックを出力する。
このように、システム制御部232は、所定の基準位置からのデータの記録位置のずれ量の目標値を示すパラメータ値を変更するパラメータ値変更部203(図12)として機能する。記録クロック生成回路230は、データの記録が進むにつれて所定の基準位置からのデータの記録位置のずれ量が目標値に近づくように、所定の基準位置からのデータの記録位置のずれ量を変化させるずれ量変化部202(図12)として機能する。パワー制御回路215と光ビーム駆動回路216とは、データの記録位置においてデータを光ディスク100に記録する記録部204(図12)として機能する。
光ディスク装置201は、光ディスク100に記録されたデータに基づいて得られる再生クロックの周波数あるいは位相に記録クロックの周波数あるいは位相を同期させ、データの記録を開始した後、所定の時定数をもって記録クロックの周波数あるいは位相を変化させる。これにより、データが本来記録されるべき位置(所定の基準位置)に対してデータを実際に記録する位置をずらすことが可能となり、記録が進むにつれてデータが本来記録されるべき位置(所定の基準位置)からのずれ量を変化させることが可能になる。データが本来記録されるべき位置(所定の基準位置)は、例えば、ランドプリピットとデータシンクの14T幅の記録マークまたはスペースの中心とが重なる位置である。データが本来記録されるべき位置(所定の基準位置)からのずれ量の許容範囲は、例えば、2Tである。
図16は、データの記録を開始した後、データの記録が進むにつれてデータが本来記録されるべき位置(所定の基準位置)からのずれ量が変化していく様子を示したものである。データの記録が進むにつれて最終的に到達するずれ量(ずれ量の目標値)は、本来記録されるべき位置(所定の基準位置)からのずれ量の許容範囲(例えば、2T)内となるようにパラメータ値変更部203によって設定される。
データの記録が進むにつれて最終的に到達するずれ量(ずれ量の目標値)は、例えば、2T、T、0、−T、−2Tなどの所定数の候補のなかからランダムに選択するようにしてもよいし、所定の順序で選択するようにしてもよい。あるいは、データの記録が進むにつれて最終的に到達するずれ量(ずれ量の目標値)を所定の計算式に従って計算してもよい。
図16において、実線Aは、ずれ量の目標値を2Tに設定した場合にずれ量が変化していく様子を示し、実線Bは、ずれ量の目標値をTに設定した場合にずれ量が変化していく様子を示し、実線Cは、ずれ量の目標値を−Tに設定した場合にずれ量が変化していく様子を示し、実線Dは、ずれ量の目標値を−2Tに設定した場合にずれ量が変化していく様子を示す。
図17Aは、第1のタイミング信号生成器236(図13)の動作を示すタイミング図である。
プリピットシンク検出回路223から出力されるプリピットシンク信号に応答して第1のタイミング信号生成器236に内蔵されるカウンタのカウント値が「24」にプリセットされる。そのカウンタは、記録クロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下りエッジ)の数をカウントする。第1のタイミング信号生成器236は、そのカウンタのカウント値が「46」に到達するとLレベルの信号を出力し、そのカウンタのカウント値が「139」に到達するとHレベルの信号を出力する。そのカウンタのカウント値が「185」に到達すると、そのカウンタのカウント値が「0」にリセットされる。このようにして、LレベルとHレベルとを交互に繰り返す周期186Tの第1の矩形波が第1のタイミング信号生成器236から出力される。
図17Bは、第2のタイミング信号生成器237(図13)の動作を示すタイミング図である。
データシンク検出回路226から出力されるデータシンク検出信号に応答して第2のタイミング信号生成器237に内蔵されるカウンタのカウント値が「32」にプリセットされる。そのカウンタは、記録クロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下りエッジ)の数をカウントする。第2のタイミング信号生成器237は、そのカウンタのカウント値が「46」に到達するとLレベルの信号を出力し、そのカウンタのカウント値が「139」に到達するとHレベルの信号を出力する。そのカウンタのカウント値が「185」に到達すると、そのカウンタのカウント値が「0」にリセットされる。このようにして、LレベルとHレベルとを交互に繰り返す周期186Tの第2の矩形波が第2のタイミング信号生成器237から出力される。
第1の矩形波と第2の矩形波とは、データの記録位置のずれがない場合においては、第1の矩形波の位相と第2の矩形波の位相との差が「0」になるように調整されている。したがって、データの記録位置が前方にずれている場合には、第1の矩形波の位相より進んだ位相を持つ第2の矩形波が出力され、データの記録位置が後方にずれている場合は、第1の矩形波の位相より遅れた位相を持つ第2の矩形波が出力される。
図18は、データの記録を開始するタイミングを示すタイミング図である。
記録制御回路233は、システム制御部232から出力される記録指示を受け取ると、記録クロックに応答して動作するタイマー(図示せず)に従って動作し、データシンク検出信号に応答して記録ゲート信号を出力する(立ち上げる)。
記録ゲート信号が出力されると、光ディスク装置201内の各回路は記録動作を開始するとともに、第2のタイミング信号生成器237に内蔵されるカウンタのカウンタ値がプリセットされることが禁止される。
データの記録位置が前方にずれている場合には、そのデータの記録を開始した直後では、第1の矩形波の位相より進んだ位相を持つ第2の矩形波が出力される。一方、データの記録位置が後方にずれている場合には、そのデータの記録を開始した直後では、第1の矩形波の位相より遅れた位相を持つ第2の矩形波が出力される。データの記録を開始した後は、記録ずれの制御に応じて第1の矩形波の位相と第2の矩形波の位相とが変化する。位相差検出器238は、第1の矩形波の位相と第2の矩形波の位相との差を検出し、その検出結果を示す第1の位相差信号を出力する。フィルタ239は、第1の位相差信号の時間変化量に制限をつけた信号を補正量信号として出力する。
PLL回路240は、データの記録を開始する前はプリピット信号とウォブル信号とに応じて記録クロックの周波数を制御する状態にある。データの記録を開始した後は、補正量信号とパラメータ値とをPLL回路240のループに加算することにより、記録クロックの周波数を制御する。具体的には、データの記録位置を後方にずらす場合には、第1の矩形波の位相より第2の矩形波の位相が遅れるように、記録クロックの周波数が低くしてやればよい。逆に、データの記録位置を前方にずらす場合には、第1の矩形波の位相より第2の矩形波の位相が進むように、記録クロックの周波数を高くしてやればよい。
この動作をデータの記録を開始した後、データが本来記録されるべき位置(所定の基準位置)からのずれ量が目標値(パラメータ値)に到達するまで繰り返し、そのずれ量が目標値(パラメータ値)に到達した時点でプリピット信号とウォブル信号とに応じて記録クロックの周波数を制御する状態に切り替える。これにより、以前に記録したデータと新たに記録するデータとの結合部においては、データシンク検出信号を基準にデータの記録を行うため、データの連続性を確保できるとともに、データの記録が進むにつれてデータの記録位置のずれ量を変化させていくことができる。
なお、PLL回路240の一例として、プリピット信号とウォブル信号とに応じて記録クロックの周波数を制御する構成を有するものを説明したが、PLL回路240の構成はこの構成に限定されない。PLL回路240は、別の構成を有していてもよい。また、補正量信号または第1の位相差信号から予めパラメータ値を差し引いておいてもよい。
例えば、補正量信号およびパラメータ値に応じて位相比較器242の一方の入力である移相分周クロックをさらにシフトする構成としたが、もう一方の入力であるノイズフィルタ241後のウォブル信号をさらにシフトする構成でも良い。また、インバータを通したパラメータ値および補正量信号を電圧レベル信号に変換した後、その電圧レベル信号をチャージポンプ243の出力にアナログ的に加算しても同様の効果が得られる。
このように、本発明の実施の形態2によれば、光ディスクに記録されているデータの終端位置に基づいて新たなデータの記録を開始し、新たなデータの記録が進むにつれて新たなデータの記録位置のずれ量が目標値に近づくように、そのずれ量を変化させることが可能になる。新たなデータを光ディスクに記録しようとするたびごとにその目標値を変更することが可能である。これにより、同一のデータを同一の位置に繰り返し記録することが要求された場合でも、同一のデータを異なる位置に記録することが可能になる。その結果、光ディスクの書換可能回数の低下を抑制することができる。
(実施の形態3)
図19は、本発明の実施の形態3に係る光ディスク装置301の構成を示すブロック図である。なお、上述した実施の形態2(図13)に示される構成要素と同一の構成要素に同一の参照番号を付している。
光ディスク装置301は、スピンドルモータ212と、ピックアップ213と、モータドライバ214と、パワー制御回路215と、光ビーム駆動回路216と、再生増幅器217と、プリピット再生回路218と、ウォブル再生回路219と、データ再生回路220と、再生クロック生成回路221と、プリピットウインドウ保護回路222と、プリピットシンク検出回路223と、プリピット復調回路224と、プリピットアドレス抽出回路225と、データシンク検出回路226と、データシンクウィンドウ保護回路227と、8/16復調回路228と、データID抽出回路229と、記録クロック生成回路250と、ロック検出回路231と、システム制御部232と、記録制御回路233と、誤り訂正回路234と、8/16変調回路235とを含む。
記録クロック生成回路250は、PLL回路240と、第1のタイマー251と、第2のタイマー252と、引き算器253と、フィルタ239とを含む。
第1のタイマー251は、タイムクロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下りエエッジ)の数をカウントし、そのカウント値を第1のタイマー値として出力するカウンタ(図示せず)を含む。このカウンタのカウント値は、プリピットシンク信号に応答して所定値にプリセットされる。プリピットシンク信号が第1のタイマー251に入力されない場合には、第1のタイマー251は、1フレーム(1488カウント)ごとにカウンタのカウント値を「0」にリセットする。このタイマーは、非記録(記録ゲート信号が非出力)、記録(記録ゲート信号が出力)に関係なくプリピットシンク信号に応答してプリセットされる。
第2のタイマー252は、タイムクロックのエッジ(立ち上がりエッジまたは立ち下りエエッジ)の数をカウントし、そのカウント値を第2のタイマー値として出力するカウンタ(図示せず)を含む。このカウンタのカウント値は、データシンク検出信号に応答して所定値にプリセットされる。データシンク検出信号が第2のタイマー252に入力されない場合には、第2のタイマー252は、1フレーム(1488カウント)ごとにカウンタのカウント値を「0」にリセットする。このタイマーは、非記録の場合にのみ、データシンク検出信号に応答してプリセットされる。
本実施の形態では、記録クロックをタイムクロックとしても用いている。
第1のタイマー251、第2のタイマー252のプリセット値は、ランドプリピットとデータシンクの14T幅の記録マークまたはスペースの中心とが重なって記録された場合に、第1のタイマー値と第2のタイマー値との差が0になるような値として設計される。
引き算器253は、記録(記録ゲート信号が出力)の場合にのみ動作し、第1のタイマー値と第2のタイマー値との差を示す差信号を出力する。
フィルタ239は、引き算器253から出力される差信号の時間変化量に制限をつけた信号を補正量信号として出力する。フィルタ239は、例えば、LPFなどを用いて実現され得る。差信号の時間変化量の制限は、本実施の形態における光ディスク装置で記録した光ディスクを再生する装置のデータ再生用PLLの応答速度を再生クロック生成が十分追従できるような応答速度とするために行われる。
PLL回路240は、プリピット信号とウォブル信号とに基づいて記録クロックの周波数を制御するとともに、フィルタ239からの補正量信号(すなわち、第1のタイマー値と第2のタイマー値との差)がシステム制御部232からのパラメータ値に近づくように、記録クロックの周波数を制御する。
PLL回路240は、例えば、実施の形態2で説明したPLL回路240(図15)と同様の構成を有していてもよい。これにより、以前に記録したデータと新たに記録するデータとの結合部においては、データシンク検出信号を基準にデータの記録を行うため、データの連続性を確保できるとともに、データの記録が進むにつれてデータの記録位置のずれ量を変化させていくことができる。
また、タイマー値を求めることにより補正量を導出することができるため、記録クロック生成回路250をディジタル回路のみで構成することができるという利点がある。特に、引き算器253、フィルタ239などの動作は、ソフトウェア処理により実現することも可能である。そうすることにより、記録クロック生成回路250の回路規模を縮小することができ、フィルタ特性を容易に変更することができる。
このように、実施の形態2、3では、データを記録しようとする位置の手前に記録済みのデータが存在する場合にはデータシンク検出信号を基準にデータの記録を行うため、以前に記録したデータに対して記録開始点がずれることがない。データの記録を開始した後に所定の時定数をもってデータの記録位置をずらす。この点において、実施の形態2、3の記録方法は、記録開始点自体をずらす従来のSPS(Start Position Shift)と異なる。このSPSでは、記録開始点自体をずらすため、リンキングで不連続が発生する。一方、実施の形態2、3の記録方法では、記録開始点のずれがないため、リンキングでの不連続を防ぐことができる。また、実施の形態2、3の記録方法では、最終的にはデータの記録位置をシフトするため、SPSと同様の効果を得ることができる。
(他の実施の形態)
前述した実施の形態では、記録媒体としてDVD−RWを例に挙げたが、DVD−RWに代えて、他の書き換え可能な光ディスクや光ディスク以外の記録媒体を用いてもよい。また、8/16変調に代えて他の変調則を用いてもよい。また、以前に使用したパラメータ値を記憶する記憶部を設けておき、パラメータ値変更部102、203ならびにDSV初期値変更部103およびステート初期値変更部104は、以前に使用したパラメータ値とは異なるパラメータ値のなかから設定すべきパラメータ値をランダムに選択してもよい。
また、パラメータ値変更部102、203ならびにDSV初期値変更部103およびステート初期値変更部104は、ステート1の次はステート3、その次はステート2というように、あるいは、DSV=0の次はDSV=1、その次はDSV=−1、あるいは、ずれ量0の次はずれ量2T、その次はずれ量−1Tというように、所定の順番を記憶しており、記録を開始するたびに所定の順番でパラメータ値を切り替えて設定してもよい。また、DSV初期値変更部103またはステート初期値変更部104のいずれかを省略してもよい。
また、実施の形態1を実施の形態2または3に適用してもよい。たとえば、実施の形態1のパラメータ値変更部102を実施の形態2または3の光ディスク装置201、301に設けてもよい。また、実施の形態1のDSV初期値変更部103およびステート初期値変更部104を実施の形態2または3のシステム制御部232に設け、DSVの初期値およびステートの初期値を変更するようにしてもよい。これにより、記録位置とともに記録されるパターンを変更することができるため、光ディスクの書換可能回数の低下をさらに抑えることができる。