JP4216403B2 - 弾性クローラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木、建設用、農業用等の無限軌道車等に用いられる弾性クローラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の弾性クローラとしては、例えば特開平8−169370号公報に開示されているように、ゴム等の弾性材によって無端帯状に形成されたクローラ本体を備え、該クローラ本体を駆動タイヤ及び従動タイヤよりなる複数の車輪に巻回して装着し、クローラ本体の内周に、脱輪防止用の幅方向一対のガイド突部を突出形成したタイヤ駆動式の弾性クローラが知られている。
この種の弾性クローラは、専らクローラ本体の内周面と駆動タイヤとの間の摩擦力によって回走駆動されるものとなっていたが、当該摩擦力だけでは両者間の滑りの発生は避けられず、駆動ロスを招く恐れがあった。
【0003】
そのため、近年では、駆動タイヤのトレッドのラグ等に係合する係合突部をクローラ本体の内周に所定ピッチで設けたものが開発され、この係合突部とラグ等との係合により両者間の滑り防止を図って確実な駆動力伝達を確保できるようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような従来の弾性クローラでは、係合突部がラグ等に確実に係合するように、係合突部の配設ピッチをラグ等の配設ピッチに対応させるようにしており、ガイド突部についても係合突部と同一ピッチで横並びにするのが普通であった。
そのため、弾性クローラの回走によりガイド突部はタイヤ側面の同じ部分に繰り返し接触することとなり、タイヤの局部摩耗による耐久性低下が問題となっていた。また、局部接触によってタイヤの側面に点状の接触痕を残し、外観を損なうという問題もあった。
【0005】
そして、係合突部の形成部分では、タイヤとの間の周方向の滑りが防止されていることから、これと横並びに配置されるガイド突部についても当然にタイヤとの周方向の滑りが防止されるものとなっており、タイヤに接触した状態でのガイド突部の動きがほとんど無いために局部的な摩耗を助長し、耐久性の低下等をより促すものとなっていた。
そこで、本発明は、係合突部によって車輪とクローラ本体内周との間の滑りを防止しながら、ガイド突部と車輪の側面との局部的な接触を極力防止して耐久性向上を図る弾性クローラを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、弾性材により無端帯状に形成されていて、複数の車輪2に亘って巻回されるクローラ本体4を備え、該クローラ本体4の内周に、車輪2の側部に対応して配置されるガイド突部6と、車輪2からクローラ本体4に駆動力を伝達するように車輪2の外周に係合する係合突部8とを、それぞれ周方向に所定の配設ピッチP1,P2で設けている弾性クローラにおいて、前述の目的を達成するために以下の技術的手段を講じている。
【0007】
すなわち、本発明に係る弾性クローラは、前記係合突部8の配設ピッチP2の整数倍が前記車輪2の周長と略一致し、且つ、前記ガイド突部6の配設ピッチP1の整数倍が前記車輪2の周長と一致しないように、前記ガイド突部6と係合突部8とを、互いに異なる配設ピッチP1,P2で設けたことを特徴とするものである。
この場合、ガイド突部6の配設ピッチP1を係合突部8の配設ピッチP2よりも大きく設定するのが好ましい。
【0008】
また、前記ガイド突部6の配設ピッチP1を係合突部8の配設ピッチP2の2倍未満とするのがよい。
前記各構成によれば、車輪2の外周と係合突部8との係合によって、クローラ本体4と車輪2との間の滑りを防止することで、駆動力ロスを防止しながら、ガイド突部6と係合突部8とが周方向全体的に又は部分的に位置ズレすることとなって、車輪2に対するガイド突部6の接触位置を分散させることが可能となる。 従って、車輪2の局部摩耗を防止して耐久性が向上でき、局部的な接触痕の発生も防止できるようになっている。
【0009】
また、ガイド突部6と車輪2との間では若干の周方向滑りも許容されるようになることから、この滑りによってもガイド突部6の局部的な接触を防止できるようになる。
そして、ガイド突部6の配設ピッチP1を係合突部8の配設ピッチP2よりも大きく設定することで、ガイド突部6に対して相対的に係合突部8の数量が増えることとなって車輪2との滑り防止性能を向上でき、これに対してガイド突部6の数量が相対的に減ることとなって車輪2との接触回数が減り、ピッチP1が広いことから接触箇所の分散効果も大となる。
【0010】
一方、上記のような手段を施したとしても、ガイド突部6と車輪2側面との間の摩擦力が大きいと、結局摩耗を招来する結果となる。そこで、本発明では、車輪2の側面又はこれに接触するガイド突部6の側面の少なくとも一方に、摩擦低減部材10を設けるようにしており、これによって摩耗の低減をより確実なものとしている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4は、空気入りタイヤで例示する前後の車輪2,2に巻回した本発明に係る弾性クローラ1を示しており、この弾性クローラ1は、例えば、図3に示すように、6輪トラック3の後側2輪(駆動タイヤ2A,従動タイヤ2B)に対して装着され、農地等の軟弱地や、雪上、砂上等における走破性を図るものとして利用される。
【0012】
前記弾性クローラ1は、ゴム等の弾性材により無端帯状に形成されていて、前後タイヤ2B,2Aに亘って巻回して装着されるクローラ本体4を備え、該クローラ本体4の外周には、牽引力発生用のラグ5が周方向に多数設けられている。
クローラ本体4の内周には、図1及び図2に示すように、クローラ本体4と一体に形成された幅方向一対のガイド突部6,6が周方向一定ピッチP1で突設されており、該ガイド突部6,6間にタイヤ2B,2Aが嵌合して左右方向の脱輪防止を図っている。
【0013】
また、クローラ本体4内には、幅方向に延びる芯金7がガイド突部6,6の形成位置に対応して埋入され、芯金7の外周側及び/又は内周側にはクローラ本体4の伸長を規制するスチールコード等の抗張体12が埋入されている。
なお、本発明において、前記芯金7及び抗張体12の存在は必須となるものではなく、また、芯金7の形状として、その両端を内周側に突出しガイド突部6内に埋入したものとしてもよい。また、芯金7を後述する係合突部8に対応させて設けても良い。
【0014】
前記ガイド突部6,6は、その幅方向外側に配置されるものが内側に配置されるものよりも高く形成されており、これによって旋回時等における左右外側へのタイヤ脱輪を好適に防止している。また、クローラ本体4の幅方向外側はガイド突部6よりも外側へ突出されており、よって、タイヤ2の中心位置がクローラ本体4が左右内側に偏心して配置されている。
本発明の弾性クローラ1が装着されるタイヤ2の外周には、ラグパターンやブロックパターン等を有するトレッドを備え、一方、クローラ本体4の内周には、タイヤトレッドのラグ等に係合する係合突部8を設けており、この係合突部8によってタイヤトレッドとの間の周方向の滑りを防止して駆動力の伝達を確実に行えるようにしている。また、前記係合突部8は、クローラ本体4に一体的に形成されており、剛性確保のため内部に芯材を埋設してもよい。
【0015】
前記係合突部8は、タイヤ2のラグ等のピッチに対応させた状態でクローラ周方向に所定ピッチP2で複数配設され、このピッチP2に対し、ガイド突部6の周方向ピッチP1が広くなるように設定されており、ガイド突部6と係合突部8とは部分的に左右横並びとなるものの、クローラ周方向の大部分においては周方向に位置ズレした状態となっている。
具体的には、前記ガイド突部6にピッチP1は、約40mm以上600mm未満の範囲で設定され、これに対して係合突部8のピッチP2は、約30mm以上500mm未満の範囲で設定されるようになっている。
【0016】
また、係合突部8のピッチP2は、タイヤ2のラグ等のピッチに対応していることから、前記ピッチP2でタイヤ2の周長を割り切れるように(ピッチP2の整数倍がタイヤ2の周長と略一致するように)設定され、これに対してガイド突部6は、そのピッチP1によりタイヤ2の周長を割り切れないように(ピッチP1の整数倍とタイヤ2の周長が一致しないように)設定されている。
そのため、タイヤ2に対するガイド突部6の接触箇所は、クローラ本体4の回走にしたがって一定とならずに周方向に分散されるようになり、タイヤ2への局部的な接触を防止して局部摩耗を防止しているのである。
【0017】
そして、ガイド突部6が分散して接触することによってタイヤ2側面に生じる接触痕が点状ではなく線状となり、見栄えの悪化も防止できるようになっている。
また、係合突部8の形成部分では、タイヤ2との間の周方向の滑りが防止されているのに対し、これと周方向にずれた位置では、クローラ本体4の弯曲による伸縮等に起因してタイヤ2との間に若干の周方向滑りが許容されるようになっており、当該位置にガイド突部6A、6Bを設けることによって、タイヤ2への局部接触が抑制され、摩耗も防止できるようになっている。
【0018】
なお、前記ガイド突部6と係合突部8とをクローラ本体4の全周に亘って位置ズレするように、そのピッチP1、P2を設定することも可能であり、これによって上記のような局部摩耗の発生を確実に防止できるようになる。
また、上記第1実施形態において、係合突部8の配設ピッチP2よりもガイド突部6の配設ピッチP1を小さく設定することも可能であるが、これでは、係合突部8に対して相対的にガイド突部6の数量が増え、タイヤ2の接触回数が増加してしまうため、上記実施形態のように、ガイド突部6の配設ピッチP1を係合突部8の配設ピッチP2よりも大きく設定し、ガイド突部6に相対して係合突部8の数量を増大してタイヤ2との滑りを確実に防止するとともに、ガイド突部6の接触回数を少なくし、タイヤ2に対する接触箇所をより分散できるようにするのが好ましい。
【0019】
また、ガイド突部6の配設ピッチP1が、係合突部8の配設ピッチP2の2倍以上であると、ガイド突部6の数量が相対的に極端に少なくなって脱輪防止性能の点で劣るものとなることから、2倍未満とするのが好ましい。
図5は、他の形態の弾性クローラ1を示すものであり、この形態の弾性クローラ1は、係合突部8の配設ピッチP2をガイド突部6,6の配設ピッチP1と略同じとし、且つ両者を周方向全周に亘って位置ずれさせて配設したものとしている。
【0020】
すなわち、ガイド突部6,6は、係合突部8と同じ配設ピッチであることから、タイヤ2の側面に対して同じ箇所に繰り返し接触するものの、係合突部8との周方向位置がずれていることから、タイヤ2との間で若干の滑りが許容され、これによってタイヤ2の局部摩耗が緩和されている。
なお、前記において、ガイド突部6をランダムな配設ピッチで設けることで、周方向全周に亘って係合突部8と位置ズレさせることも可能である。
図6及び図7は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、本実施形態の弾性クローラ1は、ガイド突部6をクローラ本体4の幅方向略中央に設け、係合突部8を左右両側に設け、ガイド突部6を挟む左右一対のタイヤに対して装着するようにしたものである。
【0021】
また、第1実施形態と同様に、ガイド突部6の配設ピッチP1を係合突部8の配設ピッチP2よりも大きく設定しており、第1実施形態と同様の作用効果が得られるものとしている。
図8及び図9は、本発明の第3の実施形態を示している。
本実施形態では、クローラ本体4として幅方向に3分割し、各分割体4A,4B,4Cを芯金7を介して連結したものとしている。また、両外側の分割体4A,4Cにガイド突部6をそれぞれ設けるとともに、中央の分割体4Bに係合突部8を設けたものとしており、各分割体4A,4B,4C間で芯金7間には、排土用の孔9が形成されるようになっている。
【0022】
また、本実施形態では、図9に示すように、ガイド突部6の内側面にゴム組成物よりなる摩擦低減部材10を一体に設けたものとしている。
すなわち、摩擦低減部材10は、ガイド突部6とタイヤ2の側面との間の摩擦力を小さくすることによりタイヤ2の摩耗を低減し、接触痕の発生も少なくしているのである。
本実施形態の摩擦低減部材10としては、例えば、ジエン系ゴムに超高分子ポリエチレン粉末を混入したシート状のゴム組成物を使用しており、このゴム組成物は、ガイド突部6の頂部から内側面の基部に略到る範囲で設けられ、ガイド突部6の剛性確保の観点から、ガイド突部6全体(摩擦低減部材10を含む)に対する摩擦低減部材10の体積比を50%以下とし、また、ガイド突部6の摩擦低減部材10以外の部分を、JISK6253によるSHORE−A硬度50°以上とするのが好ましい。
【0023】
そして、タイヤ2の側面には、摩擦低減部材との接触部分にナイロン織布11等を設けることでより摩擦をより小さくできるようにしている。
なお、上記ジエン系ゴム成分としては、特にその種類は限定しないが、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等が用いられる。また、その他、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤、老化防止材、ワックス、シリコーンオイル等の種々の添加物を加えても良い。
【0024】
また、摩擦低減部材10は、ガイド突部6の側面全体に設けてもよいし、ガイド突部6全体を摩擦低減部材10で形成してもよい。勿論、タイヤ2の側面に前記摩擦低減部材10を設けてもよい。
図10は、上記摩擦低減部材10において、ゴム成分100重量部に対する超高分子ポリエチレン粉末の含有量と摩擦係数μ(対ナイロン織布)との関係(図8中A)を示したものである。
同図から明らかなように、超高分子ポリエチレン粉末の含有量が増加すれば、摩擦係数μがより小さくなることがわかる。ここで、実用性の面から判断すれば、超高分子ポリエチレン粉末の含有量を摩擦係数μ=0.6以下となる40重量部以上とするのが好ましい。また、ゴム成分との結合力(練り込み加工性)から、超高分子ポリエチレン粉末の含有量を110重量部以下とするのが好ましい。
【0025】
なお、図8中Bは、鉄と摩擦低減部材10との摩擦係数μを示したものであり、ガイド突部6に摩擦低減部材10を設けることで、鉄製の車輪に本発明の弾性クローラを装着した場合でも、低摩擦が得られることがわかる。特に超高分子ポリエチレン粉末が40重量部以上で、摩擦係数μが約0.3以下という低い値になることがわかる。
また、本実施形態における摩擦低減部材10やナイロン織布11は、第1〜第3実施形態に対しても採用可能である。
【0026】
本発明は、上記実施形態に限ることなく適宜設計変更可能であり、例えばクローラ本体4、ガイド突部6、係合突部8及びタイヤ2の詳細構造は上記に限ることなく適宜変更可能であり、係合突部8としては、左右方向1直線状の配置とするに限らず、タイヤのトレッドパターンに合わせて周方向に傾斜させたりV字状、ハ字状等に配置できるものである。また、車輪としては、空気入りタイヤに限らず、中実タイヤ、鉄製の輪体、スプロケット等であってもよい。
弾性クローラが装着される車両についても図示例に限定されるものではない。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、係合突部によって車輪とクローラ本体内周との間の滑りを防止し、駆動力の伝達を確保しながら、ガイド突部と車輪側面との局部的な接触を抑えて耐久性向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態にかかる弾性クローラの内周側平面図である。
【図2】 同弾性クローラの側面断面図である。
【図3】 弾性クローラを装着した車両の側面図である。
【図4】 タイヤに装着した弾性クローラの全体側面図である。
【図5】 本発明の他の形態にかかる弾性クローラの内周側平面図である。
【図6】 本発明の第2の実施形態にかかる弾性クローラの内周側平面図である。
【図7】 同弾性クローラの側面断面図である。
【図8】 本発明の第3の実施形態に係る弾性クローラの内周側平面図である。
【図9】 同弾性クローラの側面断面図である。
【図10】 摩擦低減部材の摩擦係数と超高分子ポリエチレンの含有量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 弾性クローラ
2 タイヤ
4 クローラ本体
6 ガイド突部
8 係合突部
Claims (4)
- 弾性材により無端帯状に形成されていて複数の車輪(2)に亘って巻回されるクローラ本体(4)を備え、該クローラ本体(4)の内周に、前記車輪(2)の側部に対応して配置されるガイド突部(6)と、車輪(2)からクローラ本体(4)に駆動力を伝達するように車輪(2)の外周に係合する係合突部(8)とを、それぞれ周方向に所定の配設ピッチ(P1,P2)で設けている弾性クローラにおいて、
前記係合突部(8)の配設ピッチ(P2)の整数倍が前記車輪(2)の周長と略一致し、且つ、前記ガイド突部(6)の配設ピッチ(P1)の整数倍が前記車輪(2)の周長と一致しないように、前記ガイド突部(6)と係合突部(8)とを、互いに異なる配設ピッチ(P1,P2)で設けたことを特徴とする弾性クローラ。 - 前記ガイド突部(6)の配設ピッチ(P1)を前記係合突部(8)の配設ピッチ(P2)よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1に記載の弾性クローラ。
- 前記ガイド突部(6)の配設ピッチ(P1)を係合突部(8)の配設ピッチ(P2)の2倍未満としたことを特徴とする請求項2に記載の弾性クローラ。
- 前記車輪(2)の側面、又はこれに接触するガイド突部(6)の側面の少なくとも一方に、両者(2,6)間の摩擦力を低減する摩擦低減部材(10)を設けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性クローラ。
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