JP4216133B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウォーム減速機構を有する電動パワーステアリング装置に係り、詳しくは、アウトプットシャフトとウォームホイールとの固着強度や組立精度の向上等を図る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の操舵系では、外部動力源を用いて操舵アシストを行わせる、いわゆるパワーステアリング装置が広く採用されている。
【0003】
従来、パワーステアリング装置用の動力源としては、ベーン方式の油圧ポンプが一般に用いられており、この油圧ポンプをエンジンにより駆動するものが多かった。ところが、この種のパワーステアリング装置は、油圧ポンプを常時駆動することによるエンジンの駆動損失が大きい(最大負荷時において、数馬力〜十馬力程度)ため、小排気量の軽自動車等では走行燃費が低下することが避けられなかった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するものとして、電動モータを動力源とする電動パワーステアリング装置が近年注目されている。電動パワーステアリング装置では、電動モータの電源に車載バッテリを用いるために直接的なエンジンの駆動損失(油圧ポンプにかかるエンジンの駆動損失)が無く、電動モータが操舵アシスト時にのみに起動されるために走行燃費の低下も抑えられる他、走行速度等に応じた電子制御が極めて容易に行える等の特長を有している。
【0005】
電動パワーステアリング装置では、電動モータに比較的高回転・低トルクのものが使用されるため、電動モータとステアリングシャフトとの間に減速機構が組み込まれる。減速機構としては、一組で大きな減速比が得られること等から、ウォームとウォームホイールとからなるウォーム減速機構が用いられることが多い。ウォーム減速機構では、ウォームは電動モータの回転軸に連結される一方、ウォームに噛み合うウォームホイールはアウトプットシャフトに外嵌・圧入され、これらがギヤハウジング内に配置される。
【0006】
アウトプットシャフトとウォームホイールとは、据切り時や悪路走行時における回転トルクによる相対回転を防止するべく、強固に固着させる必要がある。そのため、アウトプットシャフトの外周に雄セレーションを形成する一方、ウォームホイールを比較的低硬度で真円断面の軸孔を有するものとし、ウォームホイールをアウトプットシャフトに外嵌・圧入させることで、ウォームホイールの軸孔に雄セレーションを食い込ませる(塑性変形させる)方法を採るものが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−95122号公報 (第4頁、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の電動パワーステアリング装置では、ウォームホイールとアウトプットシャフトとがトルク伝達に十分な圧入長をもって圧入され、かつ、アウトプットシャフトへの圧入時にウォームホイールの倒れ等が無いことが要求される。ところが、近年は減速機構として軽量・コンパクトなものが要求されていることから、ウォームホイールとしてプレス加工による芯金の外周に合成樹脂製ギヤリングを射出成形等により一体化させたものが採用されることが多く、また、ギヤハウジングの軸方向寸法をあまり大きくできない等の制約もあった。その結果、前述した圧入長が小さくなり、ウォームホイールとアウトプットシャフトとの結合力を確保することが難しくなると共に、アウトプットシャフトに対するウォームホイールの倒れも起きやすい等の問題があった。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みなされたもので、アウトプットシャフトとウォームホイールとの固着強度や組立精度の向上等を実現した電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明では、電動モータの駆動力をウォーム減速機構を介してアウトプットシャフトに伝達して操舵アシストを行わせる電動パワーステアリング装置であって、
前記アウトプットシャフトに外嵌・圧入されるウォームホイールを備え、
当該アウトプットシャフトの外周には、前記ウォームホイールの軸孔に食い込む雄セレーションと、当該ウォームホイールの圧入案内面とが形成され、
前記圧入案内面の外径をAとし、前記雄セレーションの外径および谷径をそれぞれFおよびBとし、前記軸孔の内径をCとしたとき、
B≦A<C<Fとなる寸法設定であって、
前記圧入案内面は、ハウジング側部材に前記アウトプットシャフトを支持する転がり軸受の嵌合面を兼ねるものを提案する。
【0011】
また、請求項の発明では、請求項1または2の電動パワーステアリング装置において、前記ウォームホイールは、前記圧入案内面に外嵌した際における傾きが所定角度以下に規制されるものを提案する。
【0012】
また、請求項の発明では、請求項1〜3の電動パワーステアリング装置において、前記ウォームホイールが、金属製ホイールと、当該金属製ホイールの外周に固着された合成樹脂製ギヤリングとから構成されたものを提案する。
【0013】
また、請求項の発明では、請求項の電動パワーステアリング装置において、前記金属製ホイールがプレス加工品であるものを提案する。
【0015】
また、請求項の発明では、請求項1〜の電動パワーステアリング装置において、前記雄セレーションが前記アウトプットシャフトに転造加工により形成されたものを提案する。
【0016】
また、請求項の発明では、請求項1〜の電動パワーステアリング装置において、前記雄セレーションが前記アウトプットシャフトに切削加工により形成されたものを提案する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、第1実施形態に係るステアリング装置の車室側部分を示す側面図であり、同図中の符号1はステアリングコラムを示す。ステアリングコラム1は、ピボットピン3とチルト調整機構5とを介して、車体側構造部材7,9に固定されている。ステアリングコラム1には、その内部にステアリングアッパシャフト11が回動自在に支持されると共に、下部に電動モータ13やギヤハウジング15,アウトプットシャフト17等からなる電動アシスト機構19が一体化されている。
【0019】
ステアリングアッパシャフト11の後端にはステアリングホイール21が取り付けられており、運転者がステアリングホイール21を回動させると、その回転力が電動アシスト機構19により増大されてアウトプットシャフト17に伝達される。図1中、符号25は自在継手27を介してアウトプットシャフト17の前端に連結されたロアステアリングシャフトを示す。また、符号29はステアリングコラム1を覆うコラムカバー、符号31は車室とエンジンルームとを区画するダッシュボード、符号33はチルトレバーをそれぞれ示す。
【0020】
図2に示したように、アウトプットシャフト17にはウォームホイール41が外嵌・圧入されている。ウォームホイール41は、電動モータ13に接続されたウォーム43と噛み合っており、電動モータ13の回転が減速されてアウトプットシャフト17に伝達される。本実施形態の場合、電動モータ13は、ウォームホイール41の後方に配置されたトルクセンサ45の出力信号に基づき駆動されるが、ここではその説明を省略する。
【0021】
図2に示すように、第1実施形態のウォームホイール41は、金属製ホイール(以下、単にホイールと記す)51の外周に合成樹脂製ギヤリング(以下、単にギヤリングと記す)53を固着させることにより形成されている。本実施形態の場合、ホイール51は、冷間鍛造や鋳造等による成形品でかつ熱処理が施されていない比較的硬度の低いものであり、軸芯には軸孔55が形成されている。
【0022】
一方、アウトプットシャフト17は、旋削等による成形品であるが比較的硬度の高いものであり、ウォームホイール41の前方(図2中左方)で一対の転がり軸受61,63により支持されている。図2中、符号65で示した部材はギヤハウジング15の前端に締結されたカバーであり、転がり軸受61,63はこのカバー65に外輪が内嵌すると共に、ナット67を介してアウトプットシャフト17の外周に形成された雌ねじ69に内輪が締結されている。
【0023】
第1実施形態の場合、図3,図4(図3中のA部拡大図)に示したように、アウトプットシャフト17におけるホイール51の嵌合部位には雄セレーション71が転造加工により形成される一方、雄セレーション71の前方(図3,図4中左方)は転がり軸受61,63の嵌合面を兼ねた圧入案内面73となっている。図4中、符号75はワイヤーリング溝であり、ウォームホイール圧入時はここにワイヤーリング79を嵌め、そのワイヤーリングに突き当てて軸方向の位置決めを行う。また、符号77は逃げ部を示している。
【0024】
第1実施形態では、圧入案内面73の外径をAとし、雄セレーション71の外径および谷径をそれぞれFおよびBとし、軸孔55の内径をCとしたとき、B≦A<C<Fとなるように寸法設定がなされている。圧入案内面73の外径Aとホイール51の軸孔55の内径Cとの寸法差は比較的小さく、圧入案内面73にウォームホイール41が外嵌した状態では、ウォームホイール41の傾きがごく小さくなる。また、雄セレーション71の谷径Bと軸孔55の内径Cとの寸法差は比較的大きい。この寸法差は、セレーション圧入時の圧入で芯金側の余肉が軸セレーション溝側に逃げ易くし圧入荷重が上がらないよう抑えるためである。軸孔55の内径Cは雄セレーションの外径Fより小さくされており、ウォームホイール41はアウトプットシャフト17にしっかり固定される。
【0025】
ウォームホイール41の軸孔55を雄セレーション71へ圧入嵌合する際、導入口角度(雄セレーション71の軸心に対するウォームホイールの軸孔55の傾き)が大きいと、圧入後に軸孔55の端部分に芯金の返りバリが発生する。本実施形態では、導入口角度20°以下にすれば返りバリの発生は少なく、15°以下にすると返りバリは完全になくなる。
【0026】
第1実施形態では、このような構成を採ったことにより、図5,図6(図5中のB部拡大図)に示したように、ウォームホイール41を図中右方に駆動してホイール51の軸孔55を雄セレーション71に圧入した際、ウォームホイール41が殆ど倒れることなく高精度な組み付けが実現される。また、図7(図6中のG−G断面図)に示したように、雄セレーション71がホイール51に深く食い込み、高い結合力が得られる。
【0027】
図8は第2実施形態に係るアウトプットシャフトの要部半裁縦断面図であり、図9は図8中のD−D拡大断面図であり、図10は図中のE−E拡大断面図である。本実施形態は、その全体構成においては上述した第1実施形態と略同様であるが、雄セレーション71が、転造成形ではなく、図11に示すようにセレーション形成用の刃81,83を有する円筒状のカッタ85により切削成形されている。そのため、圧入案内面73には、図10に示したように、カッタ85により比較的浅いツールマーク(V字溝)87が形成されるが、転がり軸受61,63の保持には殆ど影響は無い。雄セレーション71は、刃81,83の代わりにそれぞれセレーションを有する円筒状のプレス型によりプレス成形により形成しても良い。
【0028】
第2実施形態においても、図12に示したように、ウォームホイール41を図中右方に駆動してホイール51の軸孔55を雄セレーション71に圧入した際、ウォームホイール41が殆ど倒れることなく高精度な組み付けが実現され、雄セレーション71がホイール51に深く食い込み、高い結合力が得られる。
【0029】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ウォームホイールとして総金属製のものを採用してもよいし、セレーションを転造や切削以外の方法により形成するようにしてもよい。また、ウォームホイールやアウトプットシャフトの具体的形状を始め、電動パワーステアリング装置の具体的構成等についても、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば、適宜変更可能である。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、電動モータの駆動力をウォーム減速機構を介してアウトプットシャフトに伝達して操舵アシストを行わせる電動パワーステアリング装置であって、前記アウトプットシャフトに外嵌・圧入されるウォームホイールを備え、当該アウトプットシャフトの外周には、前記ウォームホイールの軸孔に食い込む雄セレーションと、当該ウォームホイールの圧入案内面とが形成され、前記圧入案内面の外径をAとし、前記雄セレーションの外径および谷径をそれぞれFおよびBとし、前記軸孔の内径をCとしたとき、B≦A<C<Fとなる寸法設定であって、前記圧入案内面は、ハウジング側部材に前記アウトプットシャフトを支持する転がり軸受の嵌合面を兼ねるものとしたため、アウトプットシャフトとウォームホイールとの圧入長が短い場合にも、アウトプットシャフトとウォームホイールとの固着強度や組立精度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るステアリング装置の車室側の構造を示す側面図である。
【図2】第1実施形態に係るステアリング装置の要部縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係るウォームホイールとアウトプットシャフトとの要部半裁縦断面図である。
【図4】図3中のA部拡大図である。
【図5】第1実施形態に係るウォームホイールとアウトプットシャフトとの圧入状態を示す要部半裁縦断面図である。
【図6】図5中のB部拡大図である。
【図7】 図6中のG−G断面図である。
【図8】第2実施形態に係るアウトプットシャフトの要部半裁縦断面図である。
【図9】図8中のD−D拡大断面図である。
【図10】図中のE−E拡大断面図である。
【図11】第2実施形態におけるセレーションの成形工程を示す図である。
【図12】第2実施形態に係るウォームホイールとアウトプットシャフトとの圧入状態を示す要部半裁縦断面図である。
【符号の説明】
1‥‥ステアリングコラム
13‥‥電動モータ
15‥‥ギヤハウジング
17‥‥アウトプットシャフト
19‥‥電動アシスト機構
41‥‥ウォームホイール
51‥‥金属製ホイール
55‥‥軸孔
61,63‥‥転がり軸受
71‥‥雄セレーション
73‥‥圧入案内面(軸受嵌合面)
A‥‥圧入案内面の外径
B‥‥雄セレーションの谷径
C‥‥ホイールの軸孔の内径

Claims (7)

  1. 電動モータの駆動力をウォーム減速機構を介してアウトプットシャフトに伝達して操舵アシストを行わせる電動パワーステアリング装置であって、
    前記アウトプットシャフトに外嵌・圧入されるウォームホイールを備え、
    当該アウトプットシャフトの外周には、前記ウォームホイールの軸孔に食い込む雄セレーションと、当該ウォームホイールの圧入案内面とが形成され、
    前記圧入案内面の外径をAとし、前記雄セレーションの外径および谷径をそれぞれFおよびBとし、前記軸孔の内径をCとしたとき、
    B≦A<C<Fとなる寸法設定であって、
    前記圧入案内面は、ハウジング側部材に前記アウトプットシャフトを支持する転がり軸受の嵌合面を兼ねることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記ウォームホイールを前記アウトプットシャフトに外嵌・圧入する際、前記ウォームホイールの前記軸孔の内周面が、前記圧入案内面に対向した状態から該圧入案内面上を案内されて前記雄セレーションに圧入固定されることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記ウォームホイールは、前記圧入案内面に外嵌した際における傾きが所定角度以下に規制されることを特徴とする、請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記ウォームホイールが、金属製ホイールと、当該金属製ホイールの外周に固着された合成樹脂製ギヤリングとから構成されたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記金属製ホイールがプレス加工品であることを特徴とする、請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記雄セレーションが前記アウトプットシャフトに転造加工により形成されたことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  7. 前記雄セレーションが前記アウトプットシャフトに切削加工により形成されたことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
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