JP4216046B2 - コアレス交流リニアモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアモータ、特に交流同期型で、実質上コアレスコイル型のリニアモータの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来斯種のコアレス交流多相リニアモータは、基本的には励磁する1次側の所謂コアレスコイルと、磁気ギャップを形成するように永久磁石片を配置した2次側のヨーク鉄心とを、相対的に直線に移動可能に組み合わせ結合してなるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来の技術につき説明すると、前記コアレスコイルとしては、図9〜図11に、移動方向に直角な方向から見た側断面図、図9のA−A線に沿う切断面図、及び同じくB−B線に沿う切断面図として示すように、単線を中空孔2を有せしめて所定数集中巻きにして略扁平ドーナツ板状に形成したコイル1によってU、V、W各相のコイルを構成し、該コイル1からなる多相のコイルを重ね巻きにしてモータの移動方向にU、V,Wの相順に配列するもので、このドーナツ板状に形成されたコイル集合体1を図示では可視状態に示してあるが、樹脂3等により一体にモールド成形すると共にコイルのベースプレート4に結合させるものである。そして、上記コアレスコイルの発熱を効率的に冷却して除去するために冷却管5をコアレスコイル内に内蔵する構成が採られるものである。その構造は、例えば、前記コイルのベースプレート4の移動方向のほぼ両端に垂下すると共に対向して一対のマニホルド6、7を設け、該マニホルド6、7間に板状に形成した非磁性材から成る冷却管を掛け渡して取り付け、該冷却管5をコイルの中空孔2に挿通して両者を密着させた状態で一体にモールド固定した構成配置とするものである。
【0004】
これに対しヨーク鉄心は、図12〜図14に、ヨーク鉄心側の平面図、図12のC−C線に沿う切断矢視図、及び同じくD−D線に沿う切断矢視図として示すように、サイドヨーク8、9に、移動方向に沿って永久磁石片8−1、8−2、・・8−i、・・8−n、9−1、9−2、・・9−i、・・9−nを順次に異極に列設したものの一対を前記板状のコアレスコイルを挿入する移動方向と平行な磁気ギャップ10を形成するように並設し、このサイドヨーク8、9の移動方向と直角方向の少なくとも一方の端縁間をセンタヨーク11で結合して成るものである。
【0005】
そして、前記コアレスコイルとヨーク鉄心間は、案内レールとボールまたはローラを用いた軸受けとの組み合わせから成る機械的直線案内装置の外に、気体または液体を用いる流体軸受けや磁気浮上軸受けなどの直線案内装置により相対移動可能に結合支持させるものである。
【0006】
上述コアレスコイル内に内蔵される冷却管5は、非磁性であることが必要なことから熱伝導などを考慮しアルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅合金が使用されるのが普通であるが、上記マニホルド6、7は機械的強度及び耐食性を必要とする場合には、オーステナイト組織の非磁性鋳鉄や、耐食性のステンレス鋼、そして好ましくは、オーステナイト系で極非磁性のステンレス鋼が用いられる。
【0007】
上記冷却管5がアルミニウムまたはアルミニウム合金製であると、冷却媒体として水系媒体が腐食の危険から使用できない場合があり、また電気抵抗が小さいので、発生渦電流が大きく、粘性抵抗が大きいと言う問題がある。また、銅または銅合金製の場合には、冷却媒体として水系及び油系とも使用し得るものの、前記アルミニウム合金製のもの以上に粘性抵抗が大きいと言う問題がある。
【0008】
前述コアレスコイルの一対のマニホルド6、7、さらにはベースブロック4には、強度や耐食性などの点から、オーステナイト系の耐蝕性で極非磁性のステンレス鋼等が用いられたとしても、マニホルド6、7に対するヨーク鉄心側の永久磁石片8−1、8−2、・・8−i、・・8−n;9−1、9−2、・・9−i、・・9−nによる吸着と反撥により発生しているコギングに、前記冷却管5で発生する粘性抵抗によりコギングが大きくなると言う問題があった。
【0009】
前記特許文献1のものには、上述した冷却管5に対するマニホルド6、7は設けられてなく、また図10や図11の冷却管5を採用した場合に両端にマニホルドを設けられたとしても、この設けられたマニホルド部が、ヨーク鉄心の磁気ギャップ内に入って行ってモータとしての相対移動をする構成となっていないので、このマニホルド部の材料として強磁性体等の磁性体を用いたとしても、磁気吸引の変化によるコギングの発生は少ないものと考えられる。これに対して、前述図9〜図14に図示説明した従来技術のコアレスリニアモータの場合には、コアレスコイルの進行方向両端に位置するマニホルド6、7は、ヨーク鉄心の磁気ギャップ10内を進行方向に相対移動する構成であるから、前記マニホルド6、7が磁性体から構成されていると、磁気吸引力により大きなコギングが発生することになるから、前記マニホルド6、7は前述のような非磁性体によって構成とすることが必要なものである。
【0010】
また、前述図9〜図14に示した従来技術のコアレスコイルの構成であると、冷却管5が、アルミニウムまたは銅合金製等の扁平な一体の板状体であるから、移動のための励磁により大きな渦電流が発生して流れると、より大きな粘性抵抗がモータの推力を妨げる方向に発生作用することになる。この場合前記冷却管5をステンレス鋼製、さらに好ましくは耐食性大きいオーステナイト系で極非磁性のステンレス鋼製とすると、アルミや銅に比べて電気抵抗が大きいことから発生する渦電流が小さく、前記粘性抵抗を小さくすることができ、耐蝕性の獲得と共に好ましいものである。
【0011】
【特許文献1】
特開平10−23735号公報(第4頁−第5頁、図2−図5、図10−図16)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述従来技術のものでは、コギング及び粘性抵抗の各発生及び大きさの何れの点においても改善は不充分で、位置決め作動において整定時間が伸びることから位置決め精度が低下し、稼動における電力損失も大きく効率が低いものであった。よって本発明は、斯種のコアレス交流多相リニアモータのコギング及び粘性抵抗の発生の抑制及び大きさの低減を計ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前述の本発明の目的は、(1)単線を中空孔を有せしめて所定数集中巻きして成る略扁平な多相のコイルを、重ね巻きにしてモータの移動方向に相順に配列するように、構成されるコアレスコイルであって、移動方向に伸びるベースブロックに一対のマニホルドを同方向に間隔を置き相対向して取り付け、該マニホルド間に連結して設ける扁平冷却配管を前記中空孔に通してコイルを密着させて板状体に形成して成るコアレスコイルと、
前記移動方向に沿って永久磁石片を順次に異極に列設して前記コアレスコイルを相対移動可能に挿設する磁気ギャップを形成する少なくとも一対のヨーク鉄心とから成り、コアレスコイルとヨーク鉄心とが相対的に移動するコアレス交流多相リニアモータにおいて、
前記一対のマニホルドと扁平冷却配管とが、極非磁性であるオーステナイト系のステンレス鋼から成るとともに前記マニホルドの移動方向の幅がヨーク鉄心に列設した永久磁石片の配設ピッチに等しく構成され、
さらに、前記扁平冷却配管が、所定複数本の小径の筒状冷却管を互いに非接触状態で並べて形成した集合体の冷却配管であるコアレス交流多相リニアモータとすることにより達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下図示実施例により本発明を説明するが、本発明のコアレス交流多相リニアモータの構成は、その構成を図示する限りに於いては、前述図9〜図14の従来技術のリニアモータと共通する部分が多いので、同一物または同等物には同一符号を付し、必要に応じ説明を加えることとする。
【0015】
図1〜図4は、コアレスコイル側の未モールドで、単線を中空孔2を有せしめて所定数集中巻きにして略扁平ドーナツ板状に形成した各相のコイル1が未装着のベースプレート4と、一対のマニホルド6、7及び該マニホルド6、7間に掛け渡して設けられた全体として扁平状の冷却配管5Aとからなるコアレスコイル側の裸の枠組体を示す側面図、平面図、正面図、及び冷却配管部の説明用E−E線断面図である。
【0016】
また、図5〜図7は、コアレスコイルとヨーク鉄心とを組み合わせて組み立てた状態を示す側断面図、上部横断平面図、及び正面図である。
【0017】
図において、単線を中空孔を有せしめて所定数集中巻きにして扁平乃至はドーナツ板状に形成した各相U、V,Wのコイル1は、例えば、φ0.44mmのエナメル焼付け銅線を前記中空孔2に相当する断面17×50mmの仮巻枠に、幅4ターン(約2mm幅)で、19層(全76ターン)にわたり集中巻きしたものを、前記仮巻枠から抜き取るなどして製作される。そして、該コイル1を各相少なくとも1個で1セット、通常例えば、図示9個の如く3セットを前述図9及び図5に示すように両端をマニホルド6、7にロー付け連結した全体として板状の扁平な冷却配管5Aを中空孔2に挿通し、移動方向に順に重ね巻き状となるように、コイル1を冷却配管5Aに密着させて配置し、各コイル1の給電リード線12は、ベースプレート4から外部へと引き出す。
【0018】
前記全体として板状の扁平な多孔の冷却配管5Aは、本発明においては、渦電流の発生を抑制すると共に発生した渦電流が流れるのを防止するために次のように構成される。先ず、前者の目的を達するために、その材料として良導電体のアルミニウム合金や銅、銅合金に代えて、電気抵抗の大きいステンレス鋼を用い、そして、それも各種の使用冷媒に対して耐蝕性が高く、かつ磁気吸引等の磁気の作用受けない極非磁性である、例えばJIS SUS316LやSUS316LNなどのオーステナイト系のステンレス鋼を用いるものである。
【0019】
そして前記後者の目的を達するために、前記板状で扁平な多孔の冷却管5Aを、前記多孔の寸法に応ずる細管5−1、5−2、・・5−i、・・5−nの所望本数の集合体により、細管相互間を発生渦電流がまたがって流れないように、電気的に絶縁、好ましくは接触を避け、隙間dを置いてほぼ平行状に並べることにより形成するものである。
【0020】
もちろん、細管5−1、5−2、・・5−i、・・5−nの1本1本は、両端において各マニホルド6、7内の冷媒通路6A、7Aに繋がるようにロー付けまたは溶接されるので、細管間をマニホルド6、7及びベースプレート4を介して誘起電圧による電流が流れて支障がある場合には、例えば、一方のマニホルド6、7をベースプレート4に電気的に絶縁して固定支持させるものとする。かくすることにより、コアレスコイル部の冷却配管部における粘性抵抗は充分小さくすることができ、推力の減殺が小さく、電力効率が向上する。
【0021】
そして、本発明の型式のコアレス交流多相リニアモータの構成によれば、コアレスコイル側のベースプレート4は常時ヨーク鉄心側の磁気ギャップ10の外にあるものの比較的近接位置にあるので、前述細管5−1、5−2、・・5−i、・・5−nから成る冷却配管5Aとほぼ同様、耐蝕特性は同等以下でも、磁性は極非磁性であるオーステナイト系の、例えば、SUS304系等のステンレス鋼などとすることが望ましいものである。
【0022】
そして、前記コアレスコイル側の一対のマニホルド6、7は、磁気ギャップ10内に在って移動するものであると共に、内部に冷媒の給排口6B、7Bへ繋がる通路6A、7Aを有しているので、その構成材料としては、前述細管の集合から成る冷却配管5Aと同等の耐蝕性及び極非磁性のオーステナイト系のステンレス鋼とすることが必要なものである。
【0023】
そして、従来前記各マニホルド6、7は、ベースプレート4への取付、冷媒通路6A、7Aと給排口6B、7Bの形成、冷却配管5Aの取付及びコイル1の樹脂モールド一体化等を考慮してその寸法、形状が決定されていた。しかる所前述材料選定の間に見出した所によれば、前記各マニホルド6、7のモータ移動方向の幅Bを、図5に示すように、ヨーク鉄心8、9に列設した永久磁石片8−1、8−2、・・8−i、・・8−n、9−1、9−2、・・9−i、・・9−nの配設ピッチ長さPに等しく設定すると、マニホルド6、7に対する磁気吸着と反撥とが旨く相殺され、図8に1測定例を示すように、コギングを可成り大幅に低減させることが出来、位置決め動作時の整定時間を大幅に短縮することが出来て、精度を向上させることが出来た。
【0024】
しかして、オースナイト系のステンレス鋼として例示のSUS316Lは、18%Cr−14%Ni−2.5%Mo−低C−残部Feの組成で、海水をはじめ各種媒質に前述SUS304より優れた耐蝕性があるSUS316の性質に、耐粒界腐食性を持たせた316の極低炭素鋼であって、他のSUS200番台(Cr−Ni−Mn系)やSUS300番台(Cr−Ni系)のオーステナイト系のステンレス鋼の多くのものと同様に不感磁性材料として使用可能な非磁性であって、電気抵抗(Ω・cm)がアルミニウム合金の10倍以上と大幅に大きいものである。
【0025】
もっとも、上述のオーステナイト系のステンレス鋼に代えて、重量を大きく増大させないで粘性抵抗を相当程度減少させ、非磁性でコギングを減少させ、高い耐蝕性が有って強度も相当程度高いチタンまたはチタン合金を使用することが出来る。又、前述マニホルドの幅の選定と共に、又は別個に、一対のマニホルド6、7間の間隔(位相)の選定如何によっても、前記コギング力の低減の可能性があるものである。
【0026】
また、細管5−1、5−2、・・5−i、・・5−nの集合から成る冷却配管5Aとしては、図4に細管を略平行に、かつ縦に微細間隔を置いて一列に並べたものを示したが、縦に二列など複数列設けるようにしても良い。そして、隣接細管5−1、5−2、・・5−i、・・5−n相互間の絶縁は、エポキシ樹脂等により所定の外形寸法に樹脂モールド3して固定することにより保たれるが、必要に応じ絶縁紙などを介設させて置くようにしても良い。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、コアレスコイル側の一対のマニホルド6、7と細管5−1、5−2、・・5−i、・・5−nの集合から成る冷却配管5Aとしてオーステナイト系の極非磁性のステンレス鋼製のものを使用すると、アルミニウム合金製の場合に比較して、重量で最大3倍弱以内と増大する可能性があるものの、その耐蝕性から水、油、空気、他等各種の冷媒を幅広く使用することが出来、また機械的強度特性の点からコイル1を保持する一種の巻枠及びコアレスコイル側の芯材として剛性が増大し、強度特性が改善される。そして、粘性抵抗及びコギングが小さく低減するところから、スムーズな駆動と停止作動が出来、位置決め精度が向上するだけでなく電力効率も改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコアレスコイル側の裸の枠組体を示す側面図。
【図2】同平面図。
【図3】同正面図。
【図4】同冷却配管の説明用E−E線断面図。
【図5】本発明のリニアモータの一実施例の組立てた状態を示す側断面図。
【図6】同上部横断平面図。
【図7】同正面図。
【図8】マニホルドの幅とコギング力との一測定曲線図。
【図9】従来例のリニアモータのコアレスコイルを側方から見た側面図。
【図10】同A−A線に沿う切断面図。
【図11】同B−B線に沿う切断面図。
【図12】同じくヨーク鉄心側の平面図。
【図13】同C−C線に沿う切断面図。
【図14】同D−D線に沿う切断面図。
【符号の説明】
1 コイル
2 中空孔
3 モールド樹脂
4 ベースプレート
5 冷却管
5A 冷却配管
5−1、5−2、・・5−i、・・5−n冷却管
6、7 マニホルド
6A、7A 冷媒通路
6B、7B 冷媒給排口
8、9 サイドヨーク
8−1、8−2、・・8−i、・・8−n永久磁石片
9−1、9−2、・・9−i、・・9−n永久磁石片
10 磁気ギャップ
11 センタヨーク
12 給電リード線
Claims (1)
- 単線を中空孔を有せしめて所定数集中巻きして成る略扁平な多相のコイルを、重ね巻きにしてモータの移動方向に相順に配列するように、構成されるコアレスコイルであって、移動方向に伸びるベースブロックに一対のマニホルドを同方向に間隔を置き相対向して取り付け、該マニホルド間に連結して設ける扁平冷却配管を前記中空孔に通してコイルを密着させて板状体に形成して成るコアレスコイルと、
前記移動方向に沿って永久磁石片を順次に異極に列設して前記コアレスコイルを相対移動可能に挿設する磁気ギャップを形成する少なくとも一対のヨーク鉄心とから成り、コアレスコイルとヨーク鉄心とが相対的に移動するコアレス交流多相リニアモータにおいて、
前記一対のマニホルドと扁平冷却配管とが、極非磁性であるオーステナイト系のステンレス鋼から成るとともに前記マニホルドの移動方向の幅がヨーク鉄心に列設した永久磁石片の配設ピッチに等しく構成され、
さらに、前記扁平冷却配管が、所定複数本の小径の筒状冷却管を互いに非接触状態で並べて形成した集合体の冷却配管であることを特徴とするコアレス交流リニアモータ。
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