JP4215977B2 - 成膜制御装置、成膜装置、成膜方法、膜厚流量係数算出方法、およびプログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜装置、成膜制御装置、成膜方法、膜厚流量係数算出方法、およびプログラムに関し、特に処理室内に複数のガス供給口を有する成膜装置、成膜制御装置、膜厚流量係数算出方法、およびプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造プロセスにおいて、半導体ウエハ(以下ウエハという)への成膜を行う装置の一つにバッチ処理を行う縦型熱処理装置がある。この装置はウエハボート等の保持具に多数枚のウエハを棚状に保持し、この保持具を縦型の熱処理炉の中に搬入して、シラン(モノシラン、ジシラン等)、酸素等の反応ガスを供給して成膜を行う。熱処理装置内に供給する反応ガスのガス種に応じて、ウエハ上にCVD(Chemical Vapor Deposition)膜、酸化膜(酸化処理)等種々の膜を形成できる。
複数のウエハへの成膜を行う場合には、異なるウエハ上に成長した膜が均質であること、即ち膜厚および膜質がウエハ間で一致することが好ましい。このため、熱処理装置内の複数の供給口から成膜用ガスを供給して、熱処理装置内へのガス供給の均一化を図っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複数の供給口から反応ガスを導入しただけでは熱処理装置内での膜の成長条件を完全に均一化することは困難である。ウエハ間で膜厚を均一となるように、それぞれの供給口からのガスの適正な供給量を求める必要がある。従来、適正な供給量の導出は、作業者の経験と勘によるところが大きく、また作業時間としても長時間を要していた。
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的はガスの供給量の適正化を容易に行える成膜装置、成膜方法、および成膜制御装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
(1)上記の課題を解決するために本発明に係る成膜制御装置は、基板を配置する処理室と、該処理室内に反応ガスを供給する供給口を有する複数の配管と、を有する成膜装置を制御する成膜制御装置であって、前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記基板上での膜の成長速度との関係を推定する膜厚流量関係推定部と、前記膜厚流量関係推定部による推定結果に基づき、前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を制御する流量制御部と、を具備することを特徴とする。
複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記基板上での膜の成長速度との関係を推定する膜厚流量関係推定部による推定結果を用いて、複数の配管から供給する反応ガスの流量を制御して成膜を行う。
この結果、膜厚を目標値に近づけることが容易に行えるようになる。
【0005】
▲1▼成膜制御装置が、前記複数の配管それぞれから前記処理室内に供給する反応ガスの流量と前記基板上での膜の成長速度との関係を線形的に近似した線形近似モデルを記憶するモデル記憶部をさらに具備してもよい。
線形近似モデルを用いることで、膜厚流量関係推定部による推定が容易に行える。
【0006】
▲2▼前記基板が複数であり、かつ前記供給口に対応して配置されていてもよい。
複数の供給口と一対一に配置された基板を用いることで、供給口からのガスの流量と基板上の膜の成長速度との関係のモデル化が容易になる。
但し、供給口に対応しない基板があっても差し支えない。また、供給口と基板との対応は、仮想的な供給口あるいは仮想的な基板を用いた仮想的な対応関係であっても差し支えない。
【0007】
▲3▼前記線形近似モデルが、マトリックスで表され、さらにこのマトリックスが対角成分以外がゼロの対角行列と非対角行列との積で表されてもよい。
モデルをマトリクスで表現することで、コンピュータ等による自動的な処理がより容易に行えるようになる。
また、マトリックスを対角行列と非対角行列との積で表すことで、モデルの適正化等の処理が容易になる。対角行列は要素の個数が非対角行列に比べて少ないので、対角行列を用いることでモデルの適正化が速やかに行える。
【0008】
ここで、前記非対角行列が、所定の複数の行列から選択されてもよい。
予め用意した複数の行列から使用する非対角化行列を選択することで、適切な非対角化行列に基づく膜厚流量関係の推定が容易に行える。
尚、この選択は、ガス種、成膜温度等の成膜条件に基づいて自動的に行うことができる。
【0009】
▲4▼成膜制御装置が、前記モデル近似部に記憶された線形近似モデルを、前記膜厚流量関係推定部による推定結果と実測結果との比較に基づき修正するモデル修正部をさらに具備してもよい。
モデル修正部によって線形近似モデルを修正することで、膜厚流量関係推定部による推定がより正確に行われるようになる。
【0010】
(2)上記の課題を解決するために本発明に係る成膜装置は、基板を配置する処理室と、前記処理室内に反応ガスを供給する供給口を有する複数の配管と、前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記基板上での膜の成長速度との関係を推定する膜厚流量関係推定部と、前記膜厚流量関係推定部による推定結果に基づき、前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を制御する流量制御部と、を具備することを特徴とする。
膜厚流量関係推定部による推定結果を用いて、複数の配管から供給する反応ガスの流量を制御して成膜を行うことで、膜厚を目標値に近づけることが容易に行えるようになる。
【0011】
(3)上記の課題を解決するために本発明に係る成膜方法は、基板を配置する処理室と、該処理室内に反応ガスを供給する複数の供給口をそれぞれ備える複数の配管と、を有する成膜装置を用いて該基板に成膜を行う成膜方法であって、前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記基板上での膜の成長速度との関係を表す膜厚流量関係モデルに基づき、前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を決定する第1の流量決定ステップと、前記第1の流量決定ステップで決定された反応ガスの流量に基づき、前記成膜装置による成膜を行う第1の成膜ステップと、を具備することを特徴とする。
膜厚流量関係モデルに基づき決定された反応ガスの流量に基づき成膜装置による成膜を行うことで、膜厚を目標値に近づけることが容易に行えるようになる。
【0012】
ここで、成膜方法が、前記成膜ステップで前記基板に成膜された膜の膜厚を測定する膜厚測定ステップと、前記膜厚測定ステップにより測定された膜厚に基づき、前記膜厚流量関係モデルを修正するモデル修正ステップと、前記モデル修正ステップで修正された膜厚流量関係モデルに基づき、前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を決定する第2の流量決定ステップと、前記第2の流量決定ステップで決定された反応ガスの流量に基づき、前記成膜装置による成膜を行う第2の成膜ステップと、を具備してもよい。
実測膜厚に基づき膜厚流量関係モデルを修正することで、膜厚を目標値に近づけることがより容易に行えるようになる。
【0013】
(4)上記の課題を解決するために本発明に係る膜厚流量係数算出方法は、基板を配置する処理室と、該処理室内に反応ガスを供給する第1、第2の供給口をそれぞれ備える第1、第2の配管と、を有する成膜装置について、該第1、第2の配管からの反応ガスの流量と該基板上での膜の成長速度の関係を表す膜厚流量係数を算出する膜厚流量係数算出方法であって、前記第1の配管から反応ガスを供給して、該第1の供給口に対応する基板への成膜を行う第1の成膜ステップと、前記第1の成膜ステップで成膜を行った基板の膜厚を測定する第1の測定ステップと、前記第1の配管から、前記第1の成膜ステップとは異なる流量の反応ガスを供給して、該第1の供給口に対応する基板への成膜を行う第2の成膜ステップと、前記第2の成膜ステップで成膜を行った基板の膜厚を測定する第2の測定ステップと、前記第1、第2の成膜ステップでの反応ガスの流量の差分と、前記第1、第2の測定ステップで測定された膜厚の差分とに基づき、前記膜厚流量係数を算出する係数算出ステップと、を具備することを特徴とする。
ここで算出される膜厚流量係数は、第1の供給口とこの供給口に対応する基板との関係における膜厚流量係数である。この膜厚流量係数は、反応ガスの流量と前記基板上での膜の成長速度との関係を線形的に近似した線形近似モデルの構成に利用でき、基板上への所望の膜厚の膜の形成に寄与する。
【0014】
ここで、前記第1の供給口が、前記第2の供給口に対してガスの流れの上流に配置されているのが好ましい。
下流に配置した供給口から供給したガスは、上流からのガスの供給が少ないと上流に向かって逆流する可能性がある。上流から供給されたガスの方がこのような逆流が生じる可能性が小さく、膜厚流量係数の代表値として採用し易い。
【0015】
(5)上記の課題を解決するために本発明に係る膜厚流量係数算出方法は、基板を配置する処理室と、該処理室内に反応ガスを供給する複数の供給口をそれぞれ備える複数の配管と、を有する成膜装置について、該複数の配管それぞれからの反応ガスの流量と該基板上での膜の成長速度の関係を表す膜厚流量係数を算出する膜厚流量係数算出方法であって、前記複数の配管のそれぞれから所定の流量の反応ガスを供給して、基板への成膜を行う第1の成膜ステップと、前記第1の成膜ステップで成膜を行った基板の膜厚を測定する第1の測定ステップと、前記複数の配管の一部から、前記所定の流量と異なる流量の反応ガスを供給して、基板への成膜を行う第2の成膜ステップと、前記第2の成膜ステップで成膜を行った基板の膜厚を測定する第2の測定ステップと、前記第1、第2の成膜ステップでの反応ガスの流量の差分と、前記第1、第2の測定ステップで測定された膜厚の差分とに基づき、前記膜厚流量係数を算出する係数算出ステップと、を具備することを特徴とする。
ここで算出される膜厚流量係数は、任意の供給口と任意の基板との関係における膜厚流量係数であり、供給口から供給されるガス同士の干渉を表す干渉項をも含む広義の膜厚流量係数である。この膜厚流量係数は、反応ガスの流量と基板上での膜の成長速度との関係を線形的に近似した線形近似モデルの構成に利用できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1の実施形態に係る成膜装置たる縦型熱処理装置について説明する。
図1、図2はそれぞれ、本発明に係る縦型熱処理装置の一部断面図および斜視図である。
本発明に係る縦型熱処理装置は、図1に示すように、例えば石英で作られた内管2a及び外管2bよりなる二重管構造の反応管2を備え、反応管2の下部側には金属製の筒状のマニホールド21が設けられている。
内管2aは上端が開口されており、マニホールド21の内側で支持されている。外管2bは上端が塞がれており、下端がべースプレート22の下側でマニホールド21の上端に気密に接合されている。
【0017】
前記反応管2内には、図2に示すように、多数枚例えば150枚の基板をなす半導体ウエハW(製品ウエハ)が各々水平な状態で上下に間隔をおいて保持具であるウエハボート23に棚状に載置されており、このウエハボート23は蓋体24の上に保温筒(断熱体)25を介して保持されている。
【0018】
前記ウエハボート23には、被処理基板である製品ウエハWをできるだけ均一な加熱雰囲気に置くために上端側と下端側とにサイドウエハと呼ばれる常時載置用のウエハが載置されると共に処理の状態をモニタ一するモニタウエハも散在して置かれる。このため、製品ウエハに加えてこれらウエハを見込んだ数の溝が設置され、例えば150枚の製品ウエハWを搭載するものにあっては、170枚分の保持溝が形成されている。
【0019】
前記蓋体24は、ウエハボート23を反応管2内に搬入、搬出するためのボートエレベータ26の上に搭載されており、上限位置にあるときにはマニホールド21の下端開口部、即ち反応管2とマニホールド21とで構成される処理容器の下端開口部を閉塞する役割を持つ。
【0020】
反応管2の周囲には例えば抵抗加熱体よりなるヒータ3が設けられ、電力コントローラ4により発熱量を制御される。
内管2aの内壁には、熱電対等の温度センサSが設置され(図示せず)、加熱炉内の温度が測定される。
マニホールド21には、内管2a内にガスを均一に供給するように複数のガス供給管51〜55が設けられている。ガス供給管51〜55はそれぞれ、ガス流量をそれぞれ調整するための例えばマスフローコントローラなどの流量調整部61〜65やバルブ(図示せず)などが介設され、内管2a内にガスを供給する供給口7(71〜75)が内管2aの上方から下方に向かってそれぞれ配置されている。この結果、内管2a内は便宜的に供給口71〜75それぞれに対応したゾーン1〜5に区分して考えることができる。
【0021】
前述のモニタウエハは、供給口71〜75それぞれに対応した位置にモニタウエハW1〜W5として載置されている。このモニタウエハW1〜W5は、通常は製品ウエハと同一のウエハ(半導体ウエハ)が用いられる。
【0022】
更にまたマニホールド21には、内管2aと外管2bとの隙間から排気するように排気管27が接続されており、この排気管27は図示しない真空ポンプに接続されている。排気管27の途中には反応管2内の圧力を調整するための例えばバタフライバルブやバルブ駆動部などを含む圧力調整部28が設けられている。
ガス供給管51〜55から内管2a内に流入したガスは、拡散することによって、内管2a内を下方から上方へと向かい、内管2aと外管2bとの隙間を通って排気管27から流出する。即ち、内管2a内の下方、上方それぞれがガスの流れの上流、および下流であり、供給口71〜75はガスの流れの下流から上流に向かって配置されている。
【0023】
この縦型熱処理装置は、反応管2内のガス流量、圧力、反応管2内の処理雰囲気の温度といった処理パラメータを制御するための成膜制御装置たるコントローラ100を備えている。このコントローラ100は、流量調整部61〜65、圧力調整部28、および電力コントロ一ラ4に制御信号を出カする。
【0024】
(コントローラ100の詳細)
次にコントローラ100の詳細について述べる。
コントローラ100は、処理目標記憶部101、膜厚流量関係モデル記憶部102、流量算出部103、処理装置制御部104、モデル修正部105を備え、処理結果DB(データベース)106が接続されている。
【0025】
処理目標記憶部101は、目標膜厚Thick0、処理温度T、ガス圧P、処理時間tを含む処理目標を記憶する。
膜厚流量関係モデル記憶部102は、供給口71〜75それぞれから供給するガスの流量とウエハW1〜W5上に形成される膜の膜厚(成膜速度)との関係を表す膜厚流量関係モデルが記憶されている。なお、膜厚流量関係モデルの詳細は後述する。
流量算出部103は、処理目標記憶部101に記憶された処理目標および膜厚流量関係モデル記憶部102に記憶された膜厚流量関係モデルに基づき、供給口71〜75から供給するガスの適正の流量を算出する。
処理装置制御部104は、流量算出部103によって算出されたガス流量、処理目標記憶部101に記憶された処理温度T、ガス圧P、処理時間tに基づいて、流量調整部61〜65、圧力調整部28、電力コントロ一ラ4を制御する。
モデル修正部105は、流量算出部103の算出したガス流量に基づいて処理されたウエハWk(k=1〜5)の膜厚が目標膜厚Thick0と一致しなかった場合に、膜厚流量関係モデル記憶部102に記憶された膜厚流量関係モデルを更新する。この結果、流量算出部103の算出したガス流量に基づいて処理されたウエハWの実測膜厚と目標膜厚Thick0との一致性が向上する。
【0026】
(膜厚流量関係モデルの詳細)
膜厚流量関係モデル記憶部102に記憶された膜厚流量関係モデルの詳細を説明する。以下は、処理温度T、ガス種、ガス圧P、処理時間tを一定として考える。
供給口71〜75それぞれから供給する供給流量Igas_k(k=1〜5)とウエハWk上に成長する膜厚Thick_kをそれぞれマトリックスで表すと、膜厚流量関係モデルは以下の式(1)で表現できる。
Mat_Thick = Mat_ Thick0 + Mat_ΔThick
Mat_ΔThick = Mat_S・Mat_WI・Mat_ΔIgas …… 式(1)
ここで、Mat_Thick等は以下の式(2)〜(7)のようなマトリクスである。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0027】
Mat_Thick([Thick_k])、Mat_Thick0([Thick0_k])、Mat_ΔThick([ΔThick_k])はそれぞれ、ウエハWk(k=1〜5)上に成長する膜の膜厚Thick_k、膜厚の基準値Thick0_k、基準値Thick0_kからの膜厚の変化量ΔThick_kを表す膜厚マトリックスである。また、Mat_ΔIgasは、ウエハWk(k=1〜5)と対応する供給口71〜75から供給されるガスの流量の変化量を表す流量マトリクスである。
即ち、供給口71〜75から供給するガスの流量をIgas_kからIgas_k+ΔIgas_kに変化したときに、ウエハWk上に成長する膜の膜厚がThick0_kからThick0_k+ΔThick_kに変化するとしている。
Mat_Sはガス流量と膜厚の関係を表す膜厚流量マトリクスであり、Mat_WIは供給口71〜75から供給されるガス間の干渉を表す干渉マトリクスである。
以上のように式(1)はガスの流量Igasと膜の膜厚Thick(処理時間tを一定としていることから、成膜速度に対応)との関係を一種の一次近似式で表したものといえる。
【0028】
式(1)は、次の式(8)と式(9)とから求めることができる。
Mat_ΔThick = Mat_S・Mat_ΔWgas …… 式(8)
Mat_ΔWgas = Mat_WI・Mat_ΔIgas …… 式(9)
ここで、Mat_ΔWgasは、ウエハWk(k=1〜5)の面近傍それぞれに供給されるガスのウエハ面流量Wgas_kの変化量ΔWgas_kを表すウエハ面流量マトリクスであり、以下の式(10)のように表される。
【数7】
【0029】
以下のA〜Cに、式(8)、(9)の意義の詳細を説明する。
A.式(8)では、Mat_Sが対角成分以外の要素が0の対角行列であることから、ウエハ面流量Wgas_k(正確にはその変化分ΔWgas_k)と膜厚Thick_k(正確にはその変化分ΔThick_k)が一対一の関係で結合されている。
これは、ウエハWkにおける膜の成長はその面近傍でのガス流量であるウエハ面流量Wgas_kに依存し、他のウエハWm(m≠k)の面近傍でのウエハ面流量Wgas_mには無関係と考えられることによっている。このウエハ面流量Wgas_kを何らかの方法で測定できれば、ウエハWkの膜の成長速度をより精密に制御することが可能になる。しかしながら、このウエハ面流量Wgas_kを精密に測定することは困難であることから、本願ではウエハWkの面近傍のウエハ面流量Wgas_kを仮想的な量(いわば隠れたパラメータ)として扱うこととする。
【0030】
B.式(8)ではウエハ面流量Wgas_k(正確にはその変化分ΔWgas_k)と膜厚Thick_k(正確にはその変化分ΔThick_k)が線形(比例)関係で結合されている。
現実にはウエハ面流量Wgas_kと膜厚Thick_kとの関係には非線形性があると考えられるが、以下のようにウエハ面流量Wgas_kの微小変化を考えることでこの線形化を近似の一種として是認できる。
【0031】
図3は、ウエハ面流量Wgas_kと膜厚Thick_k(膜の成長速度)との関係を表すグラフである。ここで、ラインAはウエハ面流量Wgas_kと膜厚Thick_kの関係を表す。
ウエハ面流量Wgas_kを増大すると膜の形成に必要な反応ガス成分の供給が増大することから、膜の膜厚Thick_kも増大すると考えられる。しかし、ウエハ面流量Wgas_kの増大と共に膜の膜厚Thick_k(成長速度)の伸びが低下、飽和してゆく。これは反応ガスの供給量はウエハW上での膜の成長速度を決める一要因にすぎず、その増加に伴い供給した反応ガスの一部のみが膜の成長に寄与するようになることを意味する。このように、広い範囲で考えるとウエハ面流量Wgas_kと膜厚Thick_k(膜の成長速度)の関係には非線形性がある。
【0032】
しかしながら、ウエハ面流量Wgas_kの基準値Wgas0_kを定め、この基準値Wgas0_kからの微小変化ΔWgas_kを考えると、ラインBに示すように、この微小範囲では線形性が成り立つと考えられる。これは、ウエハ面流量Wgas_kと膜厚Thick_k(膜の成長速度)の関係を一次関数で近似したことに相当する。
以上のように、式(8)はウエハ面流量Wgas_kと膜厚Thick_k(膜の成長速度)の関係を一次近似として表したものであり、膜厚流量係数Skはウエハ面流量Wgas_kと膜厚Thick_kとの比例関係を表す係数である。
【0033】
C.式(9)はウエハWkの面近傍でのウエハ面流量Wgas_kと供給口71〜75それぞれから供給される供給流量Igas_kの関係を表すが、ウエハ面流量Wgas_kはこれに対応する供給流量Igas_k以外の供給流量Igas_m(m≠k)とも干渉マトリクスMat_WIによって関係付けられている。
これは、既に述べたように下流から流入したガスが拡散によって上流まで流れて行くことと関連する。これを以下に示す。
【0034】
図4は内管2a内のガスの流れを模式的に表す模式図であり、供給口71〜75からガス流8(81〜85)が生じている。
ガスの流れの上流で流入したガス流8は下流に向かって流れ、下流で流入したガス流8と合流する。このように上流に流入したガスは、その供給口7近傍に限らずその下流におけるウエハ面流量Wgas_k、ひいてはウエハW上の成膜速度に影響を与える。干渉マトリクスMat_WIは、このようなガス流8の合流に基づく、供給流量Igas_kがウエハ面流量Wgas_kに与える影響を表すものであり、対角成分以外の成分を有している。
ここで、上流から下流に流れてきたガスは上流においてウエハWの成膜に利用されている。この結果、ガスの成分中成膜に寄与する成分は消費され、ガスの組成比が変化することから、ガス流8の合流が膜厚Thick_kに与える影響の解析は困難である。このとめ、干渉マトリクスMat_WIは後述するように実験的に求めることとする。
【0035】
以上のように式(1)は、式(8)、(9)から求められるが、膜厚流量マトリクスMat_Sと干渉マトリクスMat_WIの積を拡張膜厚流量マトリクスMat_Aと定義して、次の式(12)のように表すこともできる。
Mat_Thick = Mat_ Thick0 + Mat_ΔThick
Mat_ΔThick = Mat_A・Mat_ΔIgas …… 式(12)
ここで、
【数8】
である。
【0036】
以上から判るように、拡張膜厚流量マトリクスMat_Aの各要素が判れば、供給流量Igasと膜厚Thick_kの関係が求めることができる。
但し、後述するように拡張膜厚流量マトリクスMat_Aの要素を対角成分のみ(対角行列)の膜厚流量マトリクスMat_Sとそうではない(非対角行列)干渉マトリクスMat_WIに区分して記述するのが便宜であることから、以下では原則として拡張膜厚流量マトリクスMat_Aを顕わに用いることはしないこととする。
【0037】
(膜厚流量マトリクスMat_Sの導出)
膜厚流量マトリクスMat_Sを直接的に求めるのは困難である。これは、仮想流量マトリクスMat_Wgasが測定困難な量であることに起因する。しかし、膜厚流量マトリクスMat_Sを近似的に算出するのが、ガス流量と膜厚の関係を把握する上で便宜的であるので、近似的に導出することを考える。
【0038】
図5は、膜厚流量係数Skを簡便に算出する手順を表すフロー図である。以下、図5に基づき説明する。
(1)ウエハWk(k=1〜5)に対応する供給口7のみからガスを供給し(供給流量Igas_k=G1)、第1の成膜を行う(ステップS11)。
このとき、k=5として、ガスの流れの最上流に配置された供給口75を用いるのが好ましい。ガスの流れの下流に配置された供給口7のみからガスを供給すると、上流に向かって逆流が生じ、ガスの流れが本来(供給口71〜75の全てを用いてガスを供給したとき)と異なる可能性が大きいからである。
第1の成膜後にウエハWk上に形成された膜の膜厚を測定する(ステップS12)。このときの膜厚をT1とする。
【0039】
(2)ウエハWkに対応する開口を有するガス供給管5のみから第1の成膜のときと異なる流量のガスを供給し(供給流量Igas_k=G2)、第2の成膜を行う(ステップS13)。
第1の成膜後にウエハWk上に形成された膜の膜厚を測定する(ステップS14)。このときの膜厚をT2とする。
(3)式(31)に基づき、膜厚流量係数Skを算出する(ステップS15)。
Sk=(T2−T1)/(G2−G1) …… 式(21)
算出された膜厚流量係数Skが、膜厚流量マトリクスMAT_Sの要素S1〜S5の全てで等しいと仮定して、膜厚流量マトリクスMAT_Sを求める。
以上は、供給流量Igas_kがウエハ面流量Wgas_kに等しいとして、かつ膜厚流量係数S1〜S5が互いに等しいとする仮定の上で導き出された近似値である。しかしながら、供給流量Igas_kと膜厚変化量ΔThick_kとの関係を大まかに掴むことができる。
【0040】
(具体例)
具体例として、第1の成膜で供給管口75から500sccmを、第2の成膜で供給管口75から400sccmを供給した場合を考える。表1、2はそれぞれ第1、第2の成膜時の供給流量Igas_kと膜厚Thick_kの関係を表す表である。
【表1】
【表2】
ウエハW5の膜厚流量係数S5は、以下の式(32)のようにして算出される。
【0041】
(干渉マトリクスMat_WIの導出)
次に干渉マトリクスMat_WIの導出方法を説明する。図6は、干渉マトリクスMatWI(干渉係数WI_km)を導出する手順を表すフロー図である。
(1)供給流量Igas_k(k=1〜5)それぞれを基準値Igas0_kに設定して成膜を行い、それぞれのウエハWkの膜厚Thick_kを測定する(ステップS21)。このときの膜厚を膜厚Thick0_kとする。これらは以下の成膜および膜厚測定結果に対する基準値となる。即ち、供給流量Igas_kと膜厚Thick_kの関係を一次近似する際の基準となる。なお、基準値Igas0_kは互いに一致してもよいし、異なっても差し支えない。
【0042】
(2)以下は、ゾーンm(m=1〜5)毎に基準値から供給流量Igas_kを変化させ、成膜を行う。まず、ガスの供給量Igasを変化させるゾーンmを定める(ステップS22)。ここでは、一例としてm=1としているが、順番は特に問題とする必要はない。
(3)ゾーンmの供給流量Igas_mをIgas0_m+ΔIgas_mとして、第mの成膜を行う(ステップS23)。ここで、ゾーンm以外のゾーンk(k≠m)は、それぞれの基準値Igas0_kに保持したままとする。
(4)第mの成膜が終了したら、ウエハW1〜W5上に形成された膜の膜厚を測定する(ステップS24)。このときに測定された膜厚Thick_kをThick0_k+ΔThick_kとして、基準値Thick0_kからの差分ΔThick_kを用いて表すこととする。
【0043】
(5)干渉係数WI_km(k=1〜5)を算出する(ステップS25)。基準値と第mの成膜とを比較することにより干渉係数WI_kmを算出できる。
具体的には、式(1)から以下の式(31)、(32)が導き出せる。
式(31)、(32)は、ΔIgas_m以外ではΔIgas_k=0であることから導き出される。
(6)m=5でなければ、m=m+1として(ステップS26、S27)、全ゾーンそれぞれで供給流量Igas_kを変化させステップS43〜S45が繰り返し行われることで、干渉係数WI_kmの全てが算出される。
【0044】
(具体例)
以下の表3〜8に、具体例を示す。
表3が基準データであり、表4〜8はそれぞれ、ゾーン1〜5いずれかの供給流量Igas_kを100sccm変化させた場合の膜厚Thick_kと干渉係数WI_1k〜WI_5kを表している。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
表3〜8の結果から、干渉マトリクスMat_WIは以下の式(33)で示される。
【数9】
【0045】
(膜厚流量関係モデルの最適化)
以上のようにして、膜厚流量係数Skおよび干渉係数WI_kmを算出できる。膜厚Thick_kと供給流量Igas_kの関係が式(1)で表されることから、式(1)のパラメータの全てが定まる。一見すると、図5、図6の手順では、膜厚流量係数Skの全てが算出されていないようにも見える。しかし、実際には式(1)は式(10)のようにも表され、独立変数は5×5=25個である。即ち、式(1)の膜厚流量係数Skは、干渉係数WI_kmに対して独立ではないことから、膜厚Thick_kと供給流量Igas_kとを関係付けるに必要なパラメータは全て求められている。
この結果、式(1)または式(11)を用いて、目標膜厚を膜厚Thick_kに代入することで、適切な供給流量Igas_kを算出でき、算出された供給流量Igasに基づいて成膜を行うことで、所望の膜厚のウエハを得ることが可能となる。
【0046】
しかしながら、既に述べたように式(1)は一次近似である。このため供給流量Igas_kが、基準データとして用いた供給流量Igas0_kから遠ざかるほど、誤差が大きくなる傾向にある。このため、基準データをできるだけ実際の成膜に用いる値に近づけた場合の膜厚流量係数Skと干渉係数WI_kmを算出することが必要になる場合がある(モデルの最適化)。
【0047】
この最適化に、モデル修正部105が用いられる。以下、モデルの最適化について説明する。モデルの厳密な最適化には干渉係数WI_kmを修正する必要があるが、ここでは干渉係数WI_kmをそのまま用いて膜厚流量係数Skのみを修正することを考える。このように膜厚流量係数Skのみを修正することによって、モデルの最適化が速やかに行える。即ち、供給流量Igas_kと膜厚Thick_kとの関係を膜厚流量係数Skと干渉係数WI_kmの双方を用いて表すメリットがある。
【0048】
図7は、膜厚流量関係モデルの最適化を行う手順を表すフロー図である。
(1)第1回目の成膜(m=1)のために式(1)に目標膜厚Thick0を代入して、供給流量Igas_kmを算出する(ステップS31、S32)。
(2)算出された供給流量Igas_kmに基づき第1回目の成膜を行う(ステップS33)。
(3)ウエハWkに形成された膜の膜厚を測定し、目標膜厚Thick0との相違を求める(ステップS34)。
(4)膜厚の相違が許容範囲であるか否かを判断する(ステップS35)。ステップS35での判断がYesであれば、適正なモデルが設定されていると考えられるので、最適化は終了する。
【0049】
(5)ステップS34での判断がNo、であれば、次回の成膜のために(m=m+1)膜厚流量係数Skmを修正する(ステップS36、S37)。なお、この修正はm=2の場合には行われないので、後述する。
(6)次回の成膜のための供給流量Igas_kmを決定する(ステップS38)。この決定は、ゾーンの個数が1つのみ(k=1)のとき以下の式(41)に示すように、ステップS33で成膜されたウエハWkの実測膜厚Thick_k(m-1)と目標膜厚Thick0の相違を膜厚流量係数Skmで除算することにより行われる。なお、式(41)は干渉係数WIを省略して簡略化している。
Igas_km=Igas_k(m-1)+(Thick0−Thick_k(m-1))/Skm…(41)
【0050】
一般的には(ゾーンの個数が2以上の場合を含む)、式(41)は次の式(42)のようなマトリクスで表現される(式(1)に対応)。
Mat_Igas(m) = Mat_Igas(m-1)+ Inv_WI・Inv_S ・Mat_ΔThick(m-1)…(42)
ここで、Inv_WI、Inv_S はそれぞれMat_WI、Mat_S の逆行列であり、Mat_Igas(m)等は以下のように表される。
【数10】
【数11】
【0051】
(6)その後、ステップS33に戻って成膜を行い、ステップS34、S35の膜厚測定、許容範囲か否かの判断が行われる。第2回目以降の成膜では、ステップS35での判断がNoのときには、膜厚流量係数Skmの修正が行われる(ステップS35)。
この修正は、ゾーンの個数が1つのみ(k=1)のとき以下の式(45)、(46)のように前回第(m−1)回目の成膜時の供給流量Igas_k(m-1)、膜厚Thick_k(m-1)と前々回第(m−2)回目の成膜時の供給流量Igas_k(m-2)、膜厚Thick_k(m-2)から膜厚流量係数Skm0を算出し、前回第(m−1)回目の成膜時に用いた膜厚流量係数Sk(m-1)との平均を取ることで行われる。なお、式(45)は干渉係数WIを省略して簡略化している。
このように、前回用いた膜厚流量係数Sk(m-1)との平均をとるのは、最近の膜厚流量係数の方がより正確と考えられることによっている(過去に遡った膜厚流量係数を利用しない)。
【0052】
一般的には(ゾーンの個数が2以上の場合を含む)、式(45)、(46)は次の式(47)、(48)のようなマトリクスで表現される(式(1)に対応)。
Mat_S0(m) = Mat_ΔThick(m-1)・Inv_ΔIgas(m-1)・Inv_WI…(47)
Mat_S(m) = (Mat_S(m-1) + Mat_S0(m))/2 …(48)
ここで、Inv は逆行列を意味し、またMat_S0(m)等は以下の式(51)〜(54)のように表される。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
(7)さらに、修正された膜厚流量係数Skmを用いてステップS37、ステップS33〜S34が繰り返し行われる。ステップS35での判断がYesとなったときに膜厚流量関係モデルの適正化が行われたことになる。
【0053】
(その他の実施形態)
以上の発明の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で、拡張、変更が可能である。
(1)例えば、成膜装置は、縦型熱処理炉には限られない。反応ガスを複数箇所に供給して成膜を行う成膜装置一般に適用できる。また、基板は半導体ウエハには限られず、例えばガラス基板であってもよい。
【0054】
(2)本発明は、反応ガスの種類(ガス種)には限定されない。シラン系のガス(モノシラン、ジシラン等)を用いたCVDシリコン膜の生成、酸素を用いた酸化膜の形成等広く利用できる。
▲1▼本発明は、膜の成長速度が膜厚に依存しない成膜(例えばCVDのように、膜と反応ガスの境界で成膜速度が決定させるいわゆる界面律速型の成膜)方式に適用しやすい。しかし、膜の成長速度が膜厚に依存する成膜(例えば酸化のように、膜内での拡散反応が問題となるいわゆる拡散律速型の成膜)方式にも適用は可能である。膜の成長速度が膜厚に依存する場合には、膜厚値を基準値に加えることで、ガスの流量を成膜速度との関係の線形近似(膜厚流量係数の導出)が可能となる。但し、このときの膜厚流量係数は、膜厚で区分することが好ましい。
▲2▼反応ガスに複数種類の反応成分が混合され、反応成分が互いに反応する場合でも差し支えない。例えば、膜厚流量係数を反応成分の混合比毎に導出すればよい。
【0055】
(3)上記実施形態においては、各基板の温度条件を同一とし、反応ガスの流量を調節することで各基板上に成長する膜の膜厚(成長速度)を制御している。このことから、例えば基板上にポリシリコンを形成するような場合に、それぞれの膜でのグレインサイズを均一にすることが可能となる。成膜装置内で温度の傾斜を意図的に形成することで膜厚を制御することも可能であるが、基板同士で温度が異なると、結晶成長の速度が異なりグレインサイズを揃えにくくなる。
しかし、以上のことは必ずしも各基板の温度を絶対的に揃えなければならないことは意味するものではない。基板同士で多少の温度差があっても、本発明で示した線形近似を適用しうる。
【0056】
(4)上記実施形態においては、ガスの供給口と膜厚をモニタするモニタ基板の位置と個数が対応していたが、必ずしも供給口とモニタ基板とが対応しなくても差し支えない。この具体的な例を図8に示す。
図8(A)は、上記実施形態で示したように供給口とモニタ基板とが対応する場合であり、図8(B)、(C)はそれぞれ、モニタ基板W1A〜W5Aの個数が供給口71A〜73Aの個数より多い場合、供給口71B〜75Bの個数がモニタ基板W1B〜W3Bの個数より多い場合を表している。
いずれの場合でも、仮想的なモニタ基板W6A、W7Aまたは仮想的な供給口76B、77Bを想定することで、供給口とモニタ基板との対応付けを行える。
仮想的なモニタ基板W6A、W7Aは、例えばモニタ基板W1AとW2Aあるいはモニタ基板W3AとW4Aの膜厚の平均値をとるモニタ基板として定義しうる。また、仮想的な供給口76B、77Bは、例えば供給口71Bと72Bあるいは供給口74Bと75Bから供給される流量の総和供給する供給口として定義できる。
【0057】
(5)上記実施形態で膜厚流量関係モデルの最適化を行う際に(図7参照)、第1回目の成膜を省略することもできる。
例えば、第1回目の成膜を実際に行う代わりに、所定のデータ(ガス 流量とそのガス流量で作成された膜厚のデータ)があればそのデータを用いてステッ プS32、33を実行しても差し支えない。このデータは、例えば類似の成膜装置を用いて成膜することで作成可能である。
【0058】
(6)上記実施形態においては、式(46)、(48)で2つの膜厚流量係数を平均することで、膜厚流量係数の修正を行っているが、この平均化にはさらに過去に遡った膜厚流量係数を用いることも考えられる。但し、過去に遡るほど膜厚流量係数が適正値からずれている可能性が大きいことを考慮すると、最近の膜厚流量係数ほど重み付けを大きくした重み付き平均化が好ましい。
なお、上記実施形態においては、式(1)のように対角化行列と非対角化行列の積を用いて膜厚流量関係モデルを表現しているが、式(12)のように非対角化行列のみを用いて膜厚流量関係モデルを表現することも可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、複数の供給口から処理室内にガスを供給して成膜を行う成膜装置に関し、それぞれの供給口から供給するガスの供給量の適正化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る縦型熱処理装置を表す一部断面図である。
【図2】本発明に係る縦型熱処理装置を表す斜視図である。
【図3】ガスの流量と膜厚(膜の成長速度)との関係を表すグラフである。
【図4】内管内のガスの流れを模式的に表す模式図である。
【図5】膜厚流量係数を導出する手順を表すフロー図である。
【図6】干渉マトリクス(干渉係数)を導出する手順を表すフロー図である。
【図7】膜厚流量関係モデルの最適化を行う手順を表すフロー図である。
【図8】供給口とモニタ基板とが対応しない場合を対応する場合と対比して表した模式図である。
【符号の説明】
2…反応管、2a…内管、2b…外管、21…マニホールド、22…べースプレート、23…ウエハボート、24…蓋体、26…ボートエレベータ、27…排気管、28…圧力調整部、3…ヒータ、4…電力コントロ一ラ、5(51〜55)…ガス供給管、6(61〜65)…流量調整部、7(71〜75)…供給口、00…コントローラ、101…処理目標記憶部、102…膜厚流量関係モデル記憶部、103…流量算出部、104…処理装置制御部、105…モデル修正部、106…処理結果DB
Claims (10)
- 反応ガスを供給する供給口をそれぞれ有する複数の配管と,前記複数の配管の供給口それぞれに対応して,複数の基板を配置する処理室と,を有する成膜装置での前記複数の基板での膜の形成を制御する成膜制御装置であって,
対応する配管と基板間での流量と膜の成長速度の関係を表す対角行列と,反応ガス間の干渉を表す非対角行列と,の積を含むマトリクスによって,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記複数の基板上での膜の成長速度との線形関係を表す膜厚流量関係モデルを記憶するモデル記憶部と,
前記膜厚流量関係モデルに基づいて,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記複数の基板上での膜の成長速度との関係を推定する膜厚流量関係推定部と,
前記膜厚流量関係推定部による推定結果に基づき,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を制御する流量制御部と,
を具備することを特徴とする成膜制御装置。 - 前記非対角行列が,所定の複数の行列から選択される
ことを特徴とする請求項1記載の成膜制御装置。 - 前記膜厚流量関係モデルを,前記膜厚流量関係推定部による推定結果と実測結果との比較に基づき修正するモデル修正部,
をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の成膜制御装置。 - 複数の配管,複数の基板をそれぞれ,n本の配管P1〜Pn,n枚の基板S1〜Snとしたとき,前記膜厚流量関係モデルが次の式(1)で表される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成膜制御装置。
Mat_ Δ Thick = Mat_ S・ Mat_WI ・ Mat_ Δ Igas …… 式(1)
Mat_ Δ Thick : 基板Skでの,基準値 Thick0_ kからの膜厚の変化量Δ Thick_ kを表すマトリクス(k=1〜n)
Mat_ Δ Igas : 配管Pkの供給口から供給されるガスの流量 Igas_ kの変化量Δ Igas_ kを表すマトリクス
Mat_ S: 配管Pkでのガス流量と基板Skでの膜厚の関係を表す対角行列
Mat_WI : 配管P1〜Pnの供給口から供給される反応ガス間の干渉を表す非対角行列 - 反応ガスを供給する供給口をそれぞれ有する複数の配管と,
前記複数の配管の供給口それぞれに対応して,複数の基板を配置する処理室と,
対応する配管と基板間での流量と膜の成長速度の関係を表す対角行列と,反応ガス間の干渉を表す非対角行列と,の積を含むマトリクスによって,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記複数の基板上での膜の成長速度との線形関係を表す膜厚流量関係モデルを記憶するモデル記憶部と,
前記膜厚流量関係モデルに基づいて,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記複数の基板上での膜の成長速度との関係を推定する膜厚流量関係推定部と,
前記膜厚流量関係推定部による推定結果に基づき,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を制御する流量制御部と,
を具備することを特徴とする成膜装置。 - 複数の配管,複数の基板をそれぞれ,n本の配管P1〜Pn,n枚の基板S1〜Snとしたとき,前記膜厚流量関係モデルが次の式(1)で表される
ことを特徴とする請求項5項に記載の成膜装置。
Mat_ Δ Thick = Mat_ S・ Mat_WI ・ Mat_ Δ Igas …… 式(1)
Mat_ Δ Thick : 基板Skでの,基準値 Thick0_ kからの膜厚の変化量Δ Thick_ kを表す マトリクス(k=1〜n)
Mat_ Δ Igas : 配管Pkの供給口から供給されるガスの流量 Igas_ kの変化量Δ Igas_ kを表すマトリクス
Mat_ S: 配管Pkでのガス流量と基板Skでの膜厚の関係を表す対角行列
Mat_WI : 配管P1〜Pnの供給口から供給される反応ガス間の干渉を表す非対角行列 - 反応ガスを供給する供給口をそれぞれ有する複数の配管と,前記複数の配管の供給口それぞれに対応して,複数の基板を配置する処理室と,を有する成膜装置を用いて前記複数の基板に成膜を行う成膜方法であって,
対応する配管と基板間での流量と膜の成長速度の関係を表す対角行列と,反応ガス間の干渉を表す非対角行列と,の積を含むマトリクスによって,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量と前記複数の基板上での膜の成長速度との線形関係を表す膜厚流量関係モデルに基づき,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を決定する第1の流量決定ステップと,
前記第1の流量決定ステップで決定された反応ガスの流量に基づき,前記成膜装置による成膜を行う第1の成膜ステップと,
を具備することを特徴とする成膜方法。 - 前記成膜ステップで前記複数の基板それぞれに成膜された膜の膜厚を測定する膜厚測定ステップと,
前記膜厚測定ステップにより測定された膜厚に基づき,前記膜厚流量関係モデルを修正するモデル修正ステップと,
前記モデル修正ステップで修正された膜厚流量関係モデルに基づき,前記複数の配管から供給する反応ガスの流量を決定する第2の流量決定ステップと,
前記第2の流量決定ステップで決定された反応ガスの流量に基づき,前記成膜装置による成膜を行う第2の成膜ステップと,
を具備することを特徴とする請求項7記載の成膜方法。 - 複数の配管,複数の基板をそれぞれ,n本の配管P1〜Pn,n枚の基板S1〜Snとしたとき,前記膜厚流量関係モデルが次の式(1)で表される
ことを特徴とする請求項7または8に記載の成膜方法。
Mat_ Δ Thick = Mat_ S・ Mat_WI ・ Mat_ Δ Igas …… 式(1)
Mat_ Δ Thick : 基板Skでの,基準値 Thick0_ kからの膜厚の変化量Δ Thick_ kを表すマトリクス(k=1〜n)
Mat_ Δ Igas : 配管Pkの供給口から供給されるガスの流量 Igas_ kの変化量Δ Igas_ kを表すマトリクス
Mat_ S: 配管Pkでのガス流量と基板Skでの膜厚の関係を表す対角行列
Mat_WI : 配管P1〜Pnの供給口から供給される反応ガス間の干渉を表す非対角行列 - 請求項1乃至4に記載の成膜制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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