JP4215439B2 - ループスプリング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、端部にフックを有するループスプリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図11に示すように、ばねのコイル部51の端部を加工してフック52とした引張コイルばね50がある。これは一般にUフックと呼称し、コイル部51から引出した素線の端部を軸方向に起こし、曲げ加工してフック52としている。
【0003】
このようなUフックは加工が比較的容易で、例えば、事務機等の開閉部におけるリターンばねとして良く使用されている。また、引張コイルばね50には、Uフックの他、半丸フック、逆丸フック、角フック、Vフック等、用途や装着スペースによって各種の仕様があり、これらはフック52の形状によって呼称は変わるが、基本的には円筒状に巻回したコイル部51から引出した素線の端部を軸方向に起こし、前記した形状に曲げ加工してフック52を形成していることには変わりがなく、一般にフォーミングマシン等の自動成形機を用いて製造している。
【0004】
開閉部のリターンばねとして使用する引張コイルばね50は、通常、支点側のピン53と可動側のピン54の間に跨って引張荷重を付与した状態で張架しており、開閉の度に繰り返し荷重を受けている。こうした引張コイルばね50では、伸縮と同時にコイル部51には捩じり応力、フック52には曲げ応力、また、円筒状のコイル部51から素線を引出したP部付近には、捩じり応力と曲げ応力が生じている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、こうした従来形状の引張コイルばね50では、折損等の不具合モードを検証すると、一般的に円筒状のコイル部51から素線を引出したP部付近に集中することが明らかになった。そこで、本出願人はこうした不具合の発生原因について究明したところ、引張コイルばねの製品品質以外に、その形状にも原因があることに着眼した。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、薄型小スペースで、繰り返し荷重が加わっても疲労破損が起き難いようにばね形状を改良してその耐久性を向上したループスプリングを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、線材を円弧状に巻回して形成したコイル部と、このコイル部からそれぞれ接線方向に引出したアーム部と、このアーム部の端部にフックを有し、前記コイル部、アーム部およびフックを実質的に略同一平面上に形成すると共に、前記コイル部が、曲率半径が異なる複数の巻回部からなり、これらの巻回部の曲率中心がオフセットしているループスプリングとした。
【0008】
このように、コイル部から接線方向にアーム部を引出すことによって、薄型で小スペース化ができると共に、従来と同じばね特性で低コスト化を図ることができる。また、曲率半径の大きな巻回部に最大応力点が移行するため、繰り返し荷重においても耐久性を向上させることができる。さらに、コイル部を曲率半径が異なる複数の巻回部で構成し、これらの巻回部の曲率中心をオフセットすることにより、薄型で小スペースでありながら、ばねに生じる応力を軽減することができると共に、ばねの撓み量を拡大することも可能となる。また、非線形のばね特性を得ることができ、その使用用途の拡大が図れると共に、複数の巻回部を同じ巻き方向とすることにより、ばね自体の落ち着きを良好にし、ばねに発生するモーメント等のこじれを抑制することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係るループスプリングの第1の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0015】
図1は、ピアノ線、ばね用ステンレス鋼線等を断面円形の素線として巻回して形成したループスプリング1で、円弧状の単一の巻回部2aを有するコイル部2と、このコイル部2の接線方向に引出したアーム部3と、このアーム部3の端部にフック4を有している。これらのコイル部2、アーム部3およびフック4は、略同一平面上で形成し、フック4は、この平面上で、アーム部3から同一方向にカールして図示しない支点側ピン、可動側ピン等に係止して使用する。
【0016】
フック4の曲率半径r2は同一で、また巻回部2aの曲率半径r1に比べ小さく(r1>r2)形成している。これにより、ピン間に張架したループスプリング1は、ほぼアーム部3の軸線に沿って巻回部2aの曲率半径r1を次第に縮径させながら伸張する。ここで交叉部mの位置は変わらないため、ばねにモーメント等のこじれは発生しない。
【0017】
コイル部2からそれぞれ接線方向にアーム部3を引出すことによって、薄型で小スペース化ができると共に、従来と異なり、曲率半径の大きな巻回部2aの頂点n、すなわち、交叉部mと対向する位置に最大応力点が移行するため、繰り返し荷重においても耐久性を向上させることができる。
【0018】
本発明に係るループスプリングは、従来の捩じり応力を利用した引張コイルばねと異なり、ばねの曲げ応力を利用しているが、従来の引張コイルばねと比較し、本出願人が実施したばね特性に関する解析結果を以下に示す。
【0019】
本発明品のサンプルはSWPBからなる線径d=φ1.0の素線を使用し、巻回部2aの中心径Dは、D/d=16になるように成形している。また、比較した従来の引張コイルばねのサンプルは、同じく線径d=φ1.0、巻数5.5巻で、巻回部の中心径Dは、D/d=8のものを使用した。
【0020】
図2は、本発明品のサンプルの荷重と撓み線図、図3は比較例の荷重と撓み線図を示す。本発明品はほぼ計算通りのばね定数となり、ばね特性は線形をなしていることが判る。また、最大応力は材料引張強さ230kgf/mm2以下の185kgf/mm2となり、一般的な許容応力係数0.7を超えた位置でへたり現象が現れていることが判った。一方、比較例の最大応力は88kgf/mm2となり、一般的な許容応力係数0.45以下の0.4付近でへたり現象が発生した。
【0021】
このことから、本発明品は比較例に比べ撓み量が減少するも、線形のばね特性を有することが判った。なお、本発明品の巻回部2aの中心径Dを、D=φ16からφ25の略1.6倍に大きくすることによって、比較例と同等の撓み量になることが判った。したがって、従来の引張コイルばねに比べ、本実施形態のループスプリング1では、同一ばね特性になるように形成した場合、素線が略40%の削減となり、小型軽量化を図ることができると共に、加工が容易で量産性が良く、管理項目も少なくなるため、低コスト化が図れる。
【0022】
また、従来の引張コイルばねでは、コイル部からフックへの起し曲げ部があるため、特に撓み量が少ない時にはこの部位が影響して荷重が線形とならないが、本実施形態のループスプリングでは、コイル部2の接線方向にアーム部3を有しているため線形のばね特性を得ることができ、ばねの応答性を高めることができる。
【0023】
さらに、通常、この種の引張コイルばねでは、耐久性を向上させるためにばね成形後に低温焼鈍、所謂ブルーイングを施すが、この熱処理や特にメッキ等の表面処理において、従来の引張コイルばねでは、特にコイル部の内径側にムラが発生する恐れがあるが、本実施形態のように、実質的に同一平面上にコイル部2、アーム部3およびフック4を有しているため、均一に表面処理を施すことができ、品質的にも安定する。
【0024】
図4は、本発明に係るループスプリングの第2の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線に沿った断面図である。前述した第1の実施形態と異なる点は素線の断面形状が異なるのみで、その他同一部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0025】
図4において、矩形断面の素線を巻回して形成したループスプリング1で、円弧状の単一の巻回部2aを有するコイル部2と、このコイル部2の接線方向に引出したアーム部3と、このアーム部3の端部にフック4を有している。これらのコイル部2、アーム部3およびフック4は、略同一平面上で形成し、フック4は、この平面上で、アーム部3から同一方向にカールして形成している。この実施形態では、長辺をコイル部の平面と実質的に略平行になるようにすることによって、ばね定数を増大することができ、小スペースで剛性の高い仕様とすることができる。なお、素線の断面が長短軸を有する楕円状であっても良い。また、フック4も円弧状のものを例示したが、U字状やV字状等、適用形態に応じて適宜変更することができる。さらに、フック4の曲げ方向も同様である。
【0026】
図5は、本発明に係るループスプリングの第3の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。前述した第1、2の実施形態と異なる点はコイル部の構成のみで、その他同一部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0027】
図5のループスプリング5は、コイル部6が二つの巻回部2a、2bを有し、かつその曲率中心がアーム部3の軸線方向にオフセットしている。本出願人が実施した解析結果では、図5に示す荷重と撓み線図からも判るように、ほぼ計算値と同等のばね特性を有し、そのばね定数は単一の巻回部2aを有する第1の実施形態の1/2で、撓み量は2倍となっている。
【0028】
図6に示したループスプリング7は前述した第3の実施形態の変形例で、コイル部8が二つの巻回部2a、2b’を有し、かつその曲率中心がアーム部3の軸線方向にオフセットしている点では図4に示したものと同一であるが、一方の巻回部2aが右巻きに対し、他方の巻回部2b’が左巻きとなっている。このことにより、アーム部3、3を同一軸線上に配置することができ、ばねに発生するモーメント等のこじれをさらに抑制することができる。
【0029】
図7に示したループスプリング9は前述した第3の実施形態の変形例で、コイル部10が二つの巻回部2a、2bを有し、かつその曲率中心がアーム部3の軸線方向にオフセットしている点では図4に示したものと同一であるが、一方の巻回部2aの交叉部mと他方の巻回部2bの交叉部mとが接近し、巻回部2a、2bが一部重合している。こうすることにより、一層の小型軽量化を図ることができる。
【0030】
図8は、本発明に係るループスプリングの第4の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。前述した第3の実施形態と異なる点はコイル部の構成のみで、その他同一部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0031】
図8のループスプリング11は、コイル部12が同心上に三つの巻回部2a、2a、2aを有し、円筒状に形成している。このような構成にすれば、第2の実施形態と同様のばね特性と撓み量を得ることができ、かつ長手方向のスペースを小さくすることができる。
【0032】
図9は、本発明に係るループスプリングの第5の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。前述した第4の実施形態と異なる点はコイル部の構成のみで、その他同一部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
図9のループスプリング13は、コイル部14が複数の巻回部2a、2cを有している点では図8に示したものと同一であるが、その曲率半径r3を小さくした巻回部2cを交叉部mと対向する側に形成している。このような構成にすれば、非線形のばね特性を得ることができ、その使用用途を拡大することができる。
【0034】
また、図10に示したループスプリング15は図9の変形例で、双方2a、2c’共右巻きとなっている。このことにより、アーム部3、3は略同一軸線上に配置することができ、ばね自体の落ち着きを良好にし、ばねに発生するモーメント等のこじれを抑制することができる。
【0035】
本発明に係るループスプリングは薄型で小型軽量で、その巻回部の大きさ、位置および数等のコイル部の構成適宜変更し、用途や仕様に応じてばね特性や撓み量を変更することができるため、特に事務機等の小型軽量化が要求される用途に好適で適用範囲が広がる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係るループスプリングは、線材を円弧状に巻回して形成したコイル部と、このコイル部からそれぞれ接線方向に引出したアーム部と、このアーム部の端部にフックを有し、コイル部、アーム部およびフックを実質的に略同一平面上に形成すると共に、コイル部が、曲率半径が異なる複数の巻回部からなり、これらの巻回部の曲率中心がオフセットしているループスプリングとしたので、薄型で小スペース化ができると共に、従来と同じばね特性で低コスト化を図ることができる。また、曲率半径の大きな巻回部に最大応力点が移行するため、繰り返し荷重においても耐久性を向上させることができる。さらに、コイル部を曲率半径が異なる複数の巻回部で構成し、これらの巻回部の曲率中心をオフセットすることにより、薄型で小スペースでありながら、ばねに生じる応力を軽減することができると共に、ばねの撓み量を拡大することも可能となる。また、非線形のばね特性を得ることができ、その使用用途の拡大が図れると共に、複数の巻回部を同じ巻き方向とすることにより、ばね自体の落ち着きを良好にし、ばねに発生するモーメント等のこじれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係るループスプリングの第1の実施形態を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【図2】同上、荷重と撓み量を示すばね特性線図である。
【図3】従来の引張コイルばねの荷重と撓み量を示すばね特性線図である。
【図4】(a)は本発明に係るループスプリングの第2の実施形態を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
(c)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図5】(a)は本発明に係るループスプリングの第3の実施形態を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【図6】(a)は同上、変形例を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【図7】(a)は同上、変形例を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【図8】(a)は本発明に係るループスプリングの第4の実施形態を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【図9】(a)は本発明に係るループスプリングの第5の実施形態を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【図10】(a)は同上、変形例を示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【図11】(a)は従来の引張コイルばねを示す平面図である。
(b)は同上、正面図である。
【符号の説明】
1、5、7、9、11、13、15・・・ループスプリング
2、6、8、10、12、14、16・・・コイル部
2a、2a’、2b、2b’、2c、2c’・・巻回部
3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アーム部
4・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フック
50・・・・・・・・・・・・・・・・・・引張コイルばね
51・・・・・・・・・・・・・・・・・・コイル部
52・・・・・・・・・・・・・・・・・・フック
53・・・・・・・・・・・・・・・・・・支点側ピン
54・・・・・・・・・・・・・・・・・・可動側ピン
d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・素線の線径
D・・・・・・・・・・・・・・・・・・・巻回部の外径
m・・・・・・・・・・・・・・・・・・・交叉部
n・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頂点
P・・・・・・・・・・・・・・・・・・・引出し部
r1・・・・・・・・・・・・・・・・・・巻回部の曲率半径
r2、r3・・・・・・・・・・・・・・・フックの曲率半径
Claims (1)
- 線材を円弧状に巻回して形成したコイル部と、このコイル部からそれぞれ接線方向に引出したアーム部と、このアーム部の端部にフックを有し、前記コイル部、アーム部およびフックを実質的に略同一平面上に形成すると共に、前記コイル部が、曲率半径が異なる複数の巻回部からなり、これらの巻回部の曲率中心がオフセットしていることを特徴とするループスプリング。
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