JP4214354B2 - 遊星歯車装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、差動歯車機構等として用いられる遊星歯車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の遊星歯車装置としては、例えば特開平4−312247号公報に記載のものがある。この公報に記載の遊星歯車装置は、回転軸線を中心として回転駆動されるハウジングと、このハウジングの内周面に一体に設けられた内歯車と、ハウジング内にその回転軸線を中心として回転可能に設けられたキャリア及び太陽歯車と、キャリアに回転自在に、かつ位置固定して設けられた遊星歯車とを備えており、遊星歯車は内歯車及び太陽歯車と噛み合っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記遊星歯車装置を差動歯車装置として用いる場合、ハウジングはその回転軸線を中心としてデフキャリアに回転自在に支持される。したがって、内歯車は、ハウジングの回転軸線を中心として回転する。一方、太陽歯車はハウジングの回転軸線上に配置された出力軸によって支持される。この場合、ハウジングや出力軸の加工部分の軸線は回転軸線と設計上一致させられているが、実際には各種の誤差により若干ずれている。この結果、ハウジングに支持された内歯車と、出力軸に支持された太陽歯車とは、異なる軸線を中心として回転することになる。そのような状態では、差動回転時に内歯車、遊星歯車及び太陽歯車の各歯車が円滑に回転することができず、各歯車に無理な力が作用する。この結果、各歯車に局部的な摩耗が発生し易いという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、回転軸線を中心として回転可能なハウジングと、このハウジング内にそれぞれの軸線を上記回転軸線と一致させて回転自在に設けられた内歯車及び太陽歯車と、上記ハウジングに自転可能に、かつ位置固定して設けられ、上記内歯車及び上記太陽歯車と噛み合う3個以上の遊星歯車とを備え、上記ハウジングの内周面と上記内歯車の外周面との間に僅かの隙間が形成されていることを特徴としている。
この場合、上記隙間の大きさが、上記内歯車の外周面が上記ハウジングの内周面に接触することなく、上記内歯車が上記遊星歯車との噛み合いによって自動的に調芯されるのを許容する大きさに設定されていることが望ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1はこの発明に係る遊星歯車装置1を示す図2のX−X線に沿う断面図であり、図2は図1のX−X線に沿う断面図である。これらの図に示すように、遊星歯車装置1は、回転軸線Lを中心として回転駆動されるハウジング2を備えている。
【0006】
ハウジング2は、回転軸線L方向における中央部において図1の左右に二分されており、左半体2Aと右半体2Bとから構成されている。左半体2Aは、両端が開口した円筒状をなしており、その内周面の左側の端部には、スプライン孔部21が形成されている。このスプライン孔部21には、エンジンに連結された入力軸(いずれも図示せず)が回転不能に嵌合されている。したがって、エンジンが回転すると、ハウジング2が回転軸線Lを中心として回転駆動される。左半体2Aの右側(右半体2B側)の端部には、環状のフランジ部22が形成されている。このフランジ部22の右側の端面の外周部には、回転軸線Lを中心とする円形の環状凹部22aが形成されている。
【0007】
ハウジング2の他方の半体である右半体2Bは、有底円筒状をなしており、左半体2A側の端部が開口し、他方の端部には底部23が形成されている。右半体2Bの左端部には、環状のフランジ部24が形成されており、このフランジ部24の左端面の外周部には、回転軸線Lを中心とする円形の環状突出部24aが形成されている。この環状突出部24aが左半体2Aの環状凹部22aに嵌合されるとともに、フランジ部22を貫通してフランジ部24に螺合されたボルトB1を締め付けることにより、左右の半体2A,2Bが互いの軸線(回転軸線L)を一致させた状態で連結固定されている。ここで、ボルトB1は、複数(例えば6個)用いられており、各ボルトB1が配置されたピッチ円の直径は、環状凹部22aの内径(環状突出部24aの内径)とほぼ同一に設定されている。これにより、フランジ部22,24の外径をできる限り小さくなるようにしている。右半体2Bの底部23の中央部には、挿通孔23aが形成されている。
【0008】
左半体2Aのフランジ部22の右端面には、回転軸線Lを中心として環状に延びる保持突出部25が形成されている。この保持突出部25には、その先端面(右端面)から基端側(フランジ部22側)へ向かって回動軸線Lと平行に延びる三つ以上(この実施の形態では6つ)の収容孔25aが形成されている。各収容孔25aは、保持突出部25の周方向へ等間隔に又は不等間隔に配置されている。図2から明かなように、収容孔25aの内径は、保持突出部25の径方向の厚さより大きく設定されている。しかも、収容孔25aの中心は、保持突出部25の厚み方向(径方向)における中央部に配置されている。この結果、各収容孔25aの内周側及び外周側の側部は、保持突出部25から内周側及び外周側にそれぞれ開放されており、保持突出部25は各収容孔25aによってその数と同数に分断されている。
【0009】
収容孔25aには、遊星歯車3が回転可能(自転可能)に挿入されている。遊星歯車3は、平歯車であってもよく、ヘリカルギヤであってもよい。遊星歯車3の外径は、収容孔25aの内径とほぼ同一に設定されている。したがって、遊星歯車3の外周側及び内周側の側部は、収容孔25aから外周側及び内周側にそれぞれ突出している。遊星歯車3の長さは、収容孔25aの深さとほぼ同一に設定されている。
【0010】
保持突出部25の先端面には、ストッパリング26が同芯に、かつ接触状態で配置されている。このストッパリング26には、フランジ部22を貫通して保持突出部25の先端側へ向かって延びるボルト挿通孔27に挿通されたボルトB2のねじ部が螺合されており、このボルトB2を締め付けることにより、ストッパリング26が保持突出部25の先端面に押圧固定されている。これにより、収容孔25aの先端開口部が閉じられ、遊星歯車3が収容孔25a内に軸線方向へほとんど移動不能に収容されている。
【0011】
右半体2Bの内部には、内歯車4が回転可能に収容されている。内歯車4の長さは、フランジ部22と底部23との間隔とほぼ同一に設定されている。したがって、内歯車4は、回転軸線L方向へはほとんど移動不能になっている。内歯車4の内周面には、内歯車部41とスプライン孔部42とが形成されている。内歯車部41は、各遊星歯車3と噛み合っている。したがって、内歯車4は、各遊星歯車3が自転すると、遊星歯車3との噛み合いによる自動調芯作用により、その軸線が各遊星歯車3が配置された円周の中心、つまり回転軸線Lと一致するように変位させられる。ここで、内歯車4の外径は、右半体2Bの内径より若干小径に設定されており、その半径差の分だけ内歯車4の外周面と右半体2B(ハウジング2)の内周面との間に隙間Sが形成されている。この隙間Sの大きさは、遊星歯車3が回転していないときには内歯車4がその径方向へガタつくのをできる限り抑えることができ、しかも内歯車4の外周面が右半体2Bの内周面に接触することなく、内歯車4が各遊星歯車3との噛み合いによって自動的に調芯されるのを許容する大きさに設定されている。したがって、遊星歯車3が自転すると、内歯車4は、その外周面が右半体2Bの内周面に接触することなく回転する。なお、自動調芯にほとんど影響のない程度であれば内歯車4の外周面の一部が右半体2Bの内周面に接触するようになっていてもよい。
【0012】
内歯車4のスプライン孔部42には、出力部材5が回動不能に嵌合されている。この出力部材5の中央部には、軸線を回転軸線Lと一致させたスプライン孔部51が形成されている。このスプライン孔部51には、挿通孔23aを貫通した出力軸の一端部が回動不能に嵌合されている。なお、スプライン孔部42は、内歯車部41と異なる歯車諸元で形成してもよいが、同一の歯車諸元で構成するのが望ましい。そのようにすれば、スプライン孔部42を内歯車部41と同時に加工することができるからである。
【0013】
ハウジング2の内部には、太陽歯車6がその軸線を回転軸線Lと一致させて配置されている。この太陽歯車6は、全体が円筒状をなしており、左半体2A内に挿入された支持筒部61と、右半体2B内に挿入された外歯車部62とを有している。支持筒部61は、左半体2Aの内周面に軸受Jを介して回転可能に支持されている。支持筒部61の内周面の外側の端部には、スプライン孔63が形成されている。このスプライン孔63には、上記出力軸と異なる別の出力軸の一端部が回動不能に嵌合されている。この出力軸の他端部は、左半体2Aの左端開口部から外部に突出している。一方、太陽歯車6の外歯車部62は、遊星歯車3とほぼ全長にわたって噛み合っている。したがって、太陽歯車6は、遊星歯車3が自転しているときには、ハウジング2及び内歯車4に対して相対回転し、遊星歯車3が自転せずに停止しているときには、ハウジング2、遊星歯車3及び内歯車4と共に一体に回転する。
【0014】
上記構成の遊星歯車装置1においては、内歯車4の外周面がハウジング2の内周面に対して僅かの隙間をもって嵌合しているので、内歯車4はハウジング2によって回転中心が規制されることがなく、遊星歯車3が自転しているときには、内歯車4が遊星歯車3との噛み合いによって自動的に調芯される。したがって、ハウジング2の右半体2Bの内周面が回転軸線Lから若干ずれていたり、太陽歯車6の外歯車部62の軸線が回転軸線Lから若干ずれていたとしても、内歯車4、遊星歯車3及び太陽歯車4は円滑に回転することができ、各歯車3,4,6に無理な力が作用することがない。よって、各歯車3,4,6の一部が早期に摩耗するのを防止することができる。
【0015】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、ハウジング2(遊星歯車3)を回転駆動し、内歯車4及び太陽歯車6の回転を出力として取り出しているが、内歯車4又は太陽歯車6を回転駆動し、ハウジング2(遊星歯車3)の公転及び太陽歯車6又は内歯車4の回転を出力として取り出すようにしてもよい。
また、上記の実施の形態においては、一つの円周上に配置された1種類(3個)の遊星歯車3を内歯車4及び太陽歯車6と噛み合わせているが、特開平4−312247号公報に記載のもののように、直径の異なる2つの円周上に2種類の遊星歯車をそれぞれ3個以上ずつ配置し、2種類の遊星歯車を互いに噛み合わせるとともに、一方の種類の遊星歯車を内歯車に、他方の種類の遊星歯車を太陽歯車にそれぞれ噛み合わせるようにしてもよい。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、遊星歯車が自転する差動回転時には、内歯車の軸線を自動的に調芯して太陽歯車の軸線と一致させることができ、内歯車、太陽歯車及び遊星歯車を円滑に噛み合わせることができる。したがって、それらの歯車の一部が早期に摩耗するのを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態を示す図であって、図2のX−X線に沿う断面図である。
【図2】図1のX−X線に沿う断面図である。
【符号の説明】
L 回転軸線
1 遊星歯車装置
2 ハウジング
3 遊星歯車
4 内歯車
6 太陽歯車
Claims (2)
- 回転軸線を中心として回転駆動されるハウジングと、このハウジング内にそれぞれの軸線を上記回転軸線と一致させて回転自在に設けられた内歯車及び太陽歯車と、上記ハウジングに自転可能に、かつ位置固定して設けられ、上記内歯車及び上記太陽歯車と噛み合う3個以上の遊星歯車とを備え、上記ハウジングの内周面とこれに対向する上記内歯車の外周面との間に隙間が形成され、上記隙間の大きさが、上記内歯車が上記遊星歯車との噛み合いによって自動的に調芯されるのを許容する大きさに設定され、上記内歯車には軸線を上記回転軸線と一致させたスプライン孔部が設けられ、このスプライン孔部に出力部材がスプライン嵌合され、上記出力部材には軸線を上記回転軸線と一致させたスプライン孔部が設けられ、このスプライン孔部に出力軸がスプライン嵌合されていることを特徴とする遊星歯車装置。
- 上記隙間の大きさが、上記内歯車の外周面が上記ハウジングの内周面に接触することなく、上記内歯車が上記遊星歯車との噛み合いによって自動的に調芯されるのを許容する大きさに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置。
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