JP4213913B2 - 光記録媒体についての摩擦特性測定方法、および光記録媒体用の摩擦特性測定装置 - Google Patents

光記録媒体についての摩擦特性測定方法、および光記録媒体用の摩擦特性測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体における表面の摩擦特性を測定する光記録媒体についての摩擦特性測定方法、およびその摩擦特性測定方法を実施する際に使用される光記録媒体用の摩擦特性測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、大容量のディジタルデータを記録するための記録媒体として、CDファミリに属する各種記録媒体(CD−DA、CD−ROM、CD−RおよびCD−RW)や、各種規格のDVD(DVD−ROM、DVD−R、DVD−RWおよびDVD−RAM)が広く使用されている。以下、本明細書において、これらを「記録媒体」ともいう。
【0003】
これらの記録媒体はいずれも非接触型記録媒体であって、記録媒体の表面から所定距離だけ離間して配置されたドライブ装置の光ピックアップからレーザー光が照射されることによってデータの読出しや書込みが行われている。これらの記録媒体のうちの再生専用の記録媒体(CD−ROM等)は、一般的に、光入射面側から、光透過層(光透過性基板)、反射層、保護層の順に各層が積層されて構成されている。また、書き込み可能な記録媒体は、光入射面側から、光透過層(光透過性基板)、記録層、反射層、保護層の順に各層が積層されて構成されている。この場合、再生専用の記録媒体では、反射層がデータ記録層を構成し、これに対して、書き込み可能な記録媒体では、記録層がデータ記録層を構成する。いずれの記録媒体でも、データの読出し時に、光透過層側から再生用レーザー光が照射されてその反射光が検出される。また、書き込み可能な記録媒体では、データの書込み時において、記録すべきデータに基づいて光透過層側から記録用レーザー光が照射され、その熱エネルギーおよび/または光エネルギーによって記録層の化学的状態または物理的状態が変化させられる。
【0004】
ところで、これらの記録媒体では、光ピックアップのレーザー光が反射層または記録層において所定径のビームスポットとして集光されて初めてデータの正常な読出しや書込みが可能となる。したがって、光透過層の表面に生じた傷によってビームスポットが正しく形成されないときなどの場合には、読出しエラーや書込みエラーが発生することがある。この場合、光透過層の表面における傷は、その表面に付着したゴミや指紋を布等で拭き取る際に生じることがある。また、近年のさらなる記録媒体の大容量化に伴う光ピックアップの高NA化に起因して光ピックアップと記録媒体の表面との作動距離(ワーキング・ディスタンス)が短くなっているため、回転している記録媒体の表面に光ピックアップが接触する可能性が高くなり、この接触時に生じることもある。しかしながら、このような他の物体との接触に起因して生じる記録媒体の表面の傷は、記録媒体の表面にハードコート層を設けることによってある程度の抑制が可能である。
【0005】
一方、本発明者は、種々の実験により、記録媒体の表面に生じた傷を効果的に低減するためには、ハードコート層の硬度を高める手法以外にも、ハードコート層の表面における摩擦係数を低減するのが有効であることを見い出した。ところで、このようなハードコート層の表面の摩擦係数を低減した記録媒体を製造する際には、ハードコート層の摩擦特性(摩擦力および/または摩擦係数)を正確に測定して記録媒体を正しく評価する必要がある。しかしながら、このような記録媒体は、本来的には非接触でデータの読出しや書込みを行うタイプのものであるため、ハードコート層表面の摩擦特性を測定すること自体が行われておらず、この摩擦特性の測定方法を規定する規格が存在しないのは勿論である。
【0006】
そこで、本発明者は、測定対象体の表面の摩耗特性を測定(摩耗による破壊耐性を評価)する公知のボール(またはピン)オンディスク方式の測定方法を適用し、この測定方法を実施する測定装置を使用して(流用して)記録媒体におけるハードコート層表面の摩擦特性を定量的に測定した。この場合、ボールオンディスク方式の測定方法(装置)では、上記したように、摩耗による破壊耐性を評価することを目的としているため、ボールを測定対象体の表面に点接触させ、ボールの材質としてはできるだけ高硬度のものを使用し、印加する荷重はなるべく大きくして測定する。具体的には、ボールオンディスク方式の測定方法(装置)では、非常に硬い金属やセラミックスで形成した測定用部材としてのボール(またはピン)に一定の荷重(一般的には、例えば50g以上の大荷重)を加えて測定対象体としての記録媒体の表面(ハードコート層)に点接触させ、この状態で記録媒体とボールとを一定の相対速度で摺動させつつ、ボールに生じる引張り力を検出することによって記録媒体の表面の摩擦特性を測定する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、記録媒体におけるハードコート層の摩擦特性を測定するために上記した公知のボールオンディスク方式の測定方法を行った場合、記録媒体の表面に接触させるボールがハードコート層に比べて非常に硬い金属やセラミックスで形成されているのが一般的であるため、図5に示すように、潤滑剤が含まれていないハードコート層(同図中のA)は勿論のこと、潤滑剤(一例としてシリコーン系潤滑剤)が含まれているハードコート層(同図中のB)であったとしても、500秒程度の短時間で破壊に至ってしまう。このため、例えば、単位時間当りの摩擦係数の変化などの記録媒体における表面(つまりハードコート層)の摩擦特性を正確に測定するのに十分な測定時間を確保することができないという問題点がある。この場合、ボールに対する荷重を減らすことによってハードコート層が破壊に至るまでの時間を長時間化させる方法も考えられるが、摩耗特性を測定するために大荷重を印加することを前提として設計された測定装置において、印加する荷重を小荷重にした場合、ノイズが重畳し易く、測定対象体間の摩擦係数の差異が判別し難くなるという問題が生じる。一方、摩擦特性測定用として小荷重を前提とした測定装置を新たに設計・製造する方法も考えられるが、小荷重で測定可能な測定装置は部品製造や組立てに対して高精度が要求されるため、装置自体が高価になるという問題点がある。
【0008】
本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたものであり、光記録媒体における表面の摩擦特性を低コストで、かつ正確に測定し得る光記録媒体についての摩擦特性測定方法を提供することを主目的とする。また、光記録媒体における表面の摩擦特性を正確に測定し得る光記録媒体用の摩擦特性測定装置を提供することを他の主目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る光記録媒体についての摩擦特性測定方法は、紫外線硬化性樹脂でそれぞれ形成されたハードコート層および光透過層が表面側からその順序で設けられている光記録媒体当該表面に測定用部材を一定の荷重で接触させた状態で当該光記録媒体と当該測定用部材とを一定の相対速度で摺動させると共に当該測定用部材に生じる引張り力を検出することによって当該光記録媒体における表面の摩擦特性を測定する光記録媒体についての摩擦特性測定方法であって、前記測定用部材としてポリプロピレンまたはポリエチレンで形成した測定用部材を用いる。
【0010】
また、前記相対速度を0.1m/sec以上10m/sec以下の範囲内の一定値に設定するのが好ましい。
【0011】
さらに、前記荷重を250mg以上500g以下の範囲内の一定値に設定するのが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る光記録媒体用の摩擦特性測定装置は、紫外線硬化性樹脂でそれぞれ形成されたハードコート層および光透過層が表面側からその順序で設けられている光記録媒体を一定の回転数で回転させる回転機構と、前記光記録媒体前記表面に接触させる測定用部材と、当該測定用部材に一定の荷重を印加する印加手段と、前記回転機構によって前記光記録媒体が回転させられて当該光記録媒体と前記測定用部材とが一定の相対速度で摺動する際に当該測定用部材に生ずる引張り力を測定する測定手段とを備えた光記録媒体用摩擦特性測定装置であって、前記測定用部材は、ポリプロピレンまたはポリエチレンで形成されている。
【0013】
また、前記回転機構が、前記相対速度として、0.1m/sec以上10m/sec以下の範囲内の一定値で前記光記録媒体を回転させるのが好ましい。
【0014】
さらに、前記印加手段が、前記荷重として、250mg以上500g以下の範囲内の一定値を印加するのが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る光記録媒体についての摩擦特性測定方法および光記録媒体用の摩擦特性測定装置の好適な実施の形態について説明する。
【0016】
まず、測定対象体としての非接触型記録媒体(記録媒体)1の構成について図1を参照して説明する。
【0017】
記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体であって、同図に示すように、ハードコート層2、光透過層3、記録層4、反射層5および基板6を備え、データの書込みが可能に構成されている。この場合、各層や基板6の材質は特に限定されないが、ハードコート層2および光透過層3は、例えば、紫外線硬化性樹脂によってそれぞれ形成されている。記録層4は、例えば、データが記録される相変化膜の上下を誘電体膜で挟んだ多層構造に構成されている。反射層5は、例えば、Agを主成分とした合金によって形成されている。基板6は、ポリカーボネートによって形成されている。
【0018】
この記録媒体1では、図1に示すように、光ピックアップ(図示せず)から出射されたレーザー光がハードコート層2側から照射されることにより、記録層4に対するデータの書込みや、記録層4からのデータの読出しが行われる。したがって、この記録媒体1では、ハードコート層2側の表面が測定対象とされる。
【0019】
次に、非接触型記録媒体(光記録媒体)用の摩擦特性測定装置について、図2を参照して説明する。この摩擦特性測定装置(以下、「測定装置」ともいう)11は、回転機構12、測定用部材としてのボール13、保持器14、印加手段としての重り15、測定手段としてのトランスデューサ16、および測定手段としてのCPU17を備えている。この測定装置11は、従来の摩耗特性測定装置を流用したものであって、従来の摩耗特性測定装置とはボール13が相違する。この場合、回転機構12は、電動モータ12aと、記録媒体1を載置可能に構成されると共に電動モータ12aによって回転駆動されるターンテーブル12bとを備え、記録媒体1を所定の回転数で回転可能に構成されている。ボール13は、曲げ弾性率100MPa以上2500MPa以下、より好ましくは、曲げ弾性率500MPa以上2000MPa以下の樹脂で形成されている。この種の樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(例えば曲げ弾性率200MPa)、高密度ポリエチレン(例えば曲げ弾性率1000MPa)およびポリプロピレン(例えば曲げ弾性率1400MPa)があり、本実施の形態では一例としてポリプロピレンを使用してボール13が形成されている。保持器14は、下端部にボール13を回転不能に装着可能に構成されている。また、保持器14は、記録媒体1の回転平面に対して直角に配置され、上端部に載置された重り15の荷重をボール13を介して記録媒体1に対して直交する方向(鉛直方向)に印加可能に構成されている。重り15は、250mg以上500g以下の範囲内で変更可能に構成されている。トランスデューサ16は、保持器14に連結されている。この場合、トランスデューサ16は、ボール13に生じている引張り力Fを検出すると共に検出した引張り力Fの大きさを示すディジタルデータDfを生成してCPU17に出力する。CPU17は、入力したディジタルデータDfに基づいて記録媒体1とボール13との間の摩擦特性(摩擦力および/または摩擦係数、本実施の形態では一例として摩擦係数)をリアルタイムで算出する。また、CPU17は、算出した摩擦係数を測定開始からの累積時間(経過時間)に対応させてメモリ(図示せず)に記憶させる。また、CPU17は、摩擦係数および累積時間をメモリから読み出してモニタやプリンタ等の出力装置(図示せず)に出力する。
【0020】
続いて、測定装置11を用いた摩擦特性測定方法について、図2を参照して説明する。
【0021】
まず、ハードコート層2を上向きにした状態で記録媒体1をターンテーブル12b上に水平に載置する。次に、ボール13をハードコート層2の表面に当接させて保持器14を記録媒体1上に鉛直に載置する。次いで、保持器14に重り15を載置し、鉛直方向の荷重をボール13に印加する。この場合、ボール13に印加される荷重が、250mg以上500g以下の範囲内の一定値となるように重り15の重さを設定する。これにより、記録媒体1の摩耗量を適量に設定することができる。次いで、電動モータ12aを作動させて記録媒体1を矢印方向に一定の回転数で回転させる。例えば、ボール13と記録媒体1との相対速度が、0.1m/sec以上10m/sec以下の範囲内の一定値となるように電動モータ12aを一定回転数で回転させる。この場合、この範囲内で回転数を設定することにより、記録媒体1の摩耗量を適量に設定することができる。以上により、ボール13は、記録媒体1のハードコート層2の表面における同一円周上を摺動する。この際に、ボール13の表面と記録媒体1の表面(ハードコート層2)との間に生ずる摩擦力に起因して、ボール13および保持器14は記録媒体1の回転方向(具体的には、前述した円周に対する接線方向)に引っ張られる。一方、トランスデューサ16は、この際に保持器14に発生する引張り力Fを連続的に検出すると共にディジタルデータDfを連続的に生成して出力する。また、CPU17は、電動モータ12aの作動開始からの累積時間をカウントしつつ、トランスデューサ16によって出力されたディジタルデータDfに基づいて記録媒体1とボール13との間の摩擦係数をリアルタイムで算出し、その算出した摩擦係数を累積時間に対応させてメモリに順次記憶させる。また、CPU17は、オペレータの操作に従い、摩擦係数および累積時間をメモリから読み出してモニタやプリンタ等の出力装置(図示せず)に出力する。これにより、記録媒体1におけるハードコート層2の摩擦係数特性が測定される。
【0022】
以上の光記録媒体についての摩擦特性測定方法および測定装置では、曲げ弾性率100MPa以上2500MPa以下、より好ましくは、曲げ弾性率500MPa以上2000MPa以下の範囲内の樹脂で形成したボール13を測定用部材として使用したことにより、従来の摩耗測定装置を流用しつつ、測定用部材として金属製ボールを使用する従来の測定と比較して、記録媒体1のハードコート層2が破壊に至るまでの測定時間を十分に長く保つことができる。このため、ハードコート層2における表面の摩擦係数の変化を長時間に亘って測定することができる。しかも、ボール13に印加する荷重を小荷重にする必要がないため、ノイズの発生量を低減することができる。したがって、記録媒体1の表面、すなわちハードコート層2における表面の摩擦特性を正確に測定することができる結果、記録媒体1を適正に評価することができる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施例では、ハードコート層2の厚みを3.0μmで形成した記録媒体1を測定対象とした。また、測定に際しては、記録媒体1の中心から35mm離間した位置にボール13が接触するように保持器14を配置した。また、重り15は、その重さが100gのものを使用した。また、回転機構12による記録媒体1の回転数を120rpmに設定した。つまり、ボール13と記録媒体1との相対速度を約0.44m/secに設定した。
【0025】
(実施例1)
ハードコート層2にシリコーン系の潤滑剤を0.5重量%添加した記録媒体1Aを記録媒体1として作製すると共に、ポリプロピレン製のボール13を使用して、上記の方法に従い、記録媒体1Aについての摩擦係数の時間的変化を測定した。
(実施例2)
ハードコート層2に潤滑剤を全く添加しない記録媒体1Bを記録媒体1として作製すると共に、ポリプロピレン製のボール13を使用して、上記の方法に従い、記録媒体1Bについての摩擦係数の時間的変化を測定した。
(比較例3)
ハードコート層2にシリコーン系の潤滑剤を0.5重量%添加した記録媒体1Cを記録媒体1として作製すると共に、ナイロン(例えば曲げ弾性率2800MPa)製のボール13を使用して、上記の方法に従い、記録媒体1Cについての摩擦係数の時間的変化を測定した。
(比較例4)
ハードコート層2に潤滑剤を全く添加しない記録媒体1Dを記録媒体1として作製すると共に、ナイロン製のボール13を使用して、上記の方法に従い、記録媒体1Dについての摩擦係数の時間的変化を測定した。
【0026】
図3は、記録媒体1A,1Bについての各摩擦係数の測定結果を示し、図4は、記録媒体1C,1Dについての各摩擦係数の測定結果を示す。
【0027】
図3から明らかなように、ポリプロピレン製のボール13を使用して測定したときには、潤滑剤が添加されたハードコート層2を有する記録媒体1Aは勿論のこと、潤滑剤が添加されていないハードコート層2を有する記録媒体1Bであったとしても、金属製のボール13を使用したときのような急激な摩擦係数の低下が1200秒以上の測定時間を経過しても見られない。このため、1200秒以上の測定時間を経過したとしても、記録媒体1A,1Bの各ハードコート層2が共に破壊されていないと考えられる。したがって、ハードコート層2の摩擦係数を測定するのに十分な測定時間を確保することができるため、ハードコート層2の摩擦係数を適正に測定できる結果、記録媒体1を正しく評価することができる。
【0028】
一方、図4から明らかなように、ナイロン製のボール13を使用して測定したときにおいても、潤滑剤が添加されたハードコート層2を有する記録媒体1C、および潤滑剤が添加されていないハードコート層2を有する記録媒体1Dの両者に、1200秒以上の測定時間を経過しても摩擦係数の急激な低下は見られない。このため、1200秒以上の測定時間を経過したとしても、記録媒体1C,1Dの各ハードコート層2が破壊されていないと考えられる。したがって、ナイロン製のボール13を使用して測定したときであっても、ハードコート層2の摩擦係数を測定するのに十分な測定時間を確保することができる。
【0029】
しかしながら、ポリプロピレン製のボール13を使用したときとナイロン製のボール13を使用したときとでは、図4に示すように、ナイロン製のボール13を使用したときの方が、全体的に摩擦係数のバラツキが大きいため、摩擦係数の時間的変化を判別しにくい傾向がある。また、ナイロン製のボール13を使用したときには、特に、400秒の測定時間(累積時間)を超えた領域において、ハードコート層2に潤滑剤が添加されている記録媒体1Cの摩擦係数と、潤滑剤が添加されていない記録媒体1Dの摩擦係数とが接近してほぼ同様の時間的変化特性を示すようになる。このため、潤滑剤の有無の違いを判別しにくくなる。一方、ポリプロピレン製のボール13を使用したときには、図3に示すように、全体的に摩擦係数のバラツキが小さいため、摩擦係数の時間的変化を容易に判別することができる。この理由としては、ポリプロピレンの曲げ弾性率がナイロンの曲げ弾性率よりも小さいために、それ自体が弾性変形し易く、ポリプロピレン製のボール13が、徐々に摩耗して表面が荒れたハードコート層2上を摺動した際に生じる振動を吸収することができる結果、ボール13に生じる引張り力のバラツキを低減することができるからであると考えられる。
【0030】
さらに、ポリプロピレン製のボール13を使用したときには、累積時間が長い領域においても、ハードコート層2に潤滑剤が添加されている記録媒体1Aの摩擦係数と、潤滑剤が添加されていない記録媒体1Bの摩擦係数とが大きく異なっており、かつ互いに異なった傾向を示しているため、潤滑剤の有無の違いを確実かつ容易に判別することができる。この理由としては、ポリプロピレンを用いたときの摩擦係数がナイロンのときと比較して小さいため、弾性変形し易いポリプロピレンがナイロンと比べてハードコート層2の表面を摩耗させにくい結果、長時間に亘るハードコート層2についての摩擦係数の測定が可能になるものと考えられる。
【0031】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限らず、適宜変更が可能である。例えば、摩擦特性として摩擦係数を測定する例を挙げて説明したが、摩擦力を測定する際にも適用できるのは勿論である。また、重り15を用いてボール13に対して加重する構成に代えて、保持器14自体の重さで加重する構成を採用することもできるし、ボール13自体の重さで加重する構成を採用することもできる。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る光記録媒体についての摩擦特性測定方法および光記録媒体用の摩擦特性測定装置によれば、ポリプロピレンまたはポリエチレンで形成した測定用部材を用いて測定することにより、従来の摩耗測定装置を流用しつつ、金属で形成した測定用部材を用いるのと比較して、光記録媒体の表面を削り取る量が少ないために光記録媒体における表面の摩擦特性を測定するのに十分な時間だけ測定用部材を摺動させることができる。しかも、測定用部材に印加する荷重を小荷重にする必要がないため、ノイズの発生量を低減することができる。したがって、光記録媒体の表面の摩擦特性を低コストで、かつ正確に測定することができる。また、ポリプロピレンまたはポリエチレンで形成した測定用部材を用いることにより、例えばナイロン等の樹脂で形成した測定用部材を用いるのと比較して、それ自体が弾性変形し易いために、徐々に摩耗して荒れた表面を摺動する際に生じる振動を吸収することができ、これにより、測定用部材に発生する引張り力のバラツキを低減することができる。したがって、測定される摩擦係数のバラツキを小さくすることができる結果、摩擦係数の時間的変化を正確に判別することができる。
【0033】
また、本発明に係る光記録媒体についての摩擦特性測定方法および光記録媒体用の摩擦特性測定装置によれば、光記録媒体と測定用部材との相対速度を0.1m/sec以上10m/sec以下の範囲内の一定値に設定することにより、光記録媒体の摩耗量を適量にすることができ、長時間に亘って表面の摩擦特性を測定することができる結果、一層正確に光記録媒体の摩擦特性を測定することができる。
【0034】
また、本発明に係る光記録媒体についての摩擦特性測定方法および光記録媒体用の摩擦特性測定装置によれば、測定用部材に対する荷重を、250mg以上500g以下の範囲内の一定値に設定することにより、光記録媒体の摩耗量をさらに適量に設定することができ、より長時間に亘って表面の摩擦特性を測定することができる結果、より一層正確に光記録媒体の摩擦特性を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 記録媒体1の構成を示す断面図である。
【図2】 本発明に係る光記録媒体用の摩擦特性測定装置11の構成を示す構成図である。
【図3】 摩擦特性測定装置11のボール13にポリプロピレン製のボールを使用したときの摩擦係数の測定結果を示す測定結果図である。
【図4】 摩擦特性測定装置11のボール13にナイロン製のボールを使用したときの摩擦係数の測定結果を示す測定結果図である。
【図5】 摩擦特性測定装置のボールに金属製のボールを使用したときの摩擦係数の測定結果を示す測定結果図である。
【符号の説明】
1 記録媒体
2 ハードコート層
3 光透過層
4 記録層
5 反射層
6 基板
11 摩擦特性測定装置
12 回転機構
12a 電動モータ
12b ターンテーブル
13 ボール
14 保持器
15 重り
16 トランスデューサ
17 CPU
F 引っ張り力

Claims (6)

  1. 紫外線硬化性樹脂でそれぞれ形成されたハードコート層および光透過層が表面側からその順序で設けられている光記録媒体当該表面に測定用部材を一定の荷重で接触させた状態で当該光記録媒体と当該測定用部材とを一定の相対速度で摺動させると共に当該測定用部材に生じる引張り力を検出することによって当該光記録媒体における表面の摩擦特性を測定する光記録媒体についての摩擦特性測定方法であって、
    前記測定用部材としてポリプロピレンまたはポリエチレンで形成した測定用部材を用いる光記録媒体についての摩擦特性測定方法。
  2. 前記相対速度を0.1m/sec以上10m/sec以下の範囲内の一定値に設定する請求項1記載の光記録媒体についての摩擦特性測定方法。
  3. 前記荷重を250mg以上500g以下の範囲内の一定値に設定する請求項1または2記載の光記録媒体についての摩擦特性測定方法。
  4. 紫外線硬化性樹脂でそれぞれ形成されたハードコート層および光透過層が表面側からその順序で設けられている光記録媒体を一定の回転数で回転させる回転機構と、前記光記録媒体前記表面に接触させる測定用部材と、当該測定用部材に一定の荷重を印加する印加手段と、前記回転機構によって前記光記録媒体が回転させられて当該光記録媒体と前記測定用部材とが一定の相対速度で摺動する際に当該測定用部材に生ずる引張り力を測定する測定手段とを備えた光記録媒体用摩擦特性測定装置であって、
    前記測定用部材は、ポリプロピレンまたはポリエチレンで形成されている光記録媒体用の摩擦特性測定装置。
  5. 前記回転機構は、前記相対速度として、0.1m/sec以上10m/sec以下の範囲内の一定値で前記光記録媒体を回転させる請求項4記載の光記録媒体用の摩擦特性測定装置。
  6. 前記印加手段は、前記荷重として、250mg以上500g以下の範囲内の一定値を印加する請求項4または5記載の光記録媒体用の摩擦特性測定装置。
JP2002192318A 2002-07-01 2002-07-01 光記録媒体についての摩擦特性測定方法、および光記録媒体用の摩擦特性測定装置 Expired - Fee Related JP4213913B2 (ja)

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