JP4213847B2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射ポンプに関し、特に、プランジャ又は分配軸の摺動面からカム室へリークする燃料油の戻し経路の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、分配型に構成された燃料噴射ポンプには、例えば図4乃至図6に示すように、ハウジングに上下摺動自在に挿嵌されるプランジャ107、該プランジャ107と平行に配設される分配軸109、燃料噴射弁へ燃料を圧送するデリベリバルブ等が具備されている。そして、プランジャ107は下方のカム軸に設けられるカムにより上下駆動され、該プランジャ107が上下摺動範囲の下端部に達すると、高圧の燃料ギャラリ143へ圧送される燃料油がプランジャバレル108内へ圧送され、プランジャ107が上昇すると、プランジャバレル108内の燃料油が分配軸スリーブ110及び分配軸109を介してデリベリバルブ118へ圧送されて、燃料噴射弁から噴射されるように構成されている。この場合、燃料油は、カム軸と連動して回転する分配軸109により、複数のデリベリバルブ118へ分配される。
【0003】
また、プランジャ107はプランジャバレル108に対して上下摺動自在に挿嵌され、分配軸109は分配軸スリーブ110に対して回転自在に挿嵌されており、該プランジャ107とプランジャバレル108との間の摺動面や、分配軸109と分配軸スリーブ110との間の摺動面から、プランジャ107及び分配軸109を通じてデリベリバルブ118へ圧送される燃料油の、下方のカム室へのリークが発生する。そこで、プランジャバレル108及び分配軸109には、それぞれ燃料油戻し溝108a及び燃料油戻し溝109aを形成して、摺動面からリークする燃料油を該燃料油戻し溝108a・109aを通じて燃料ギャラリー143へ戻すように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如く、カム室へリークする燃料油を燃料油戻し溝108a・109aにより燃料ギャラリー143へ戻すように構成されていたが、例えばプランジャバレル108に形成される燃料油戻し溝108aからは、戻し通路108b及び連通溝108cを通じて高圧側の燃料ギャラリー143へ燃料油が戻され、分配軸109の燃料戻し溝109aからの燃料油も同様に高圧側の燃料ギャラリー143へ戻されるように構成されていた。しかし、燃料油戻し溝108a・109aから燃料油が戻される戻し通路108b等は、燃料ギャラリー143と連通する高圧側であるので、燃料油の戻し効果が少なく、該燃料油戻し溝108a・109aからもカム室側へリークが発生していた。特に、分配型燃料噴射ポンプの場合、各デリベリバルブ118へ十分に燃料油を供給するためには供給圧を大きくする必要があり、この燃料供給圧の増加により燃料油のリーク量も増加することとなっていた。このような問題を解決するために、燃料油戻し溝108a・109aと低圧側の燃料ギャラリーであるアキュムレータ119のバネ室119aとを外部配管で接続して、リークする燃料油を効率良く燃料ギャラリーへ戻す構成が考案されているが、外部配管により燃料噴射ポンプが複雑な構成となり、また燃料噴射ポンプのコンパクト化の妨げとなっていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
請求項1においては、プランジャ又は分配軸の摺動面から、カム室へリークする燃料油の戻し経路を有する燃料噴射ポンプにおいて、該燃料油戻し経路をハウジング内部に形成し、低圧側の燃料ギャラリーに連通し、前記プランジャ側の燃料戻し経路における低圧ギャラリーへの連通路と、分配軸側の燃料戻し経路における低圧ギャラリーへの連通路とを、共通の経路としたものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載の燃料噴射ポンプにおいて、該燃料油戻し経路を、ハウジングに付設されるアキュムレータのバネ室に連通させたものである。
【0008】
請求項3においては、請求項1記載の燃料噴射ポンプにおいて、前記燃料戻し経路のバネ室への連通路として、ハウジング内に形成されるタイマ室を用いたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の燃料噴射ポンプを示す側面断面図、図2は同じく正面断面図、図3は同じく後面断面図、図4は従来の燃料噴射ポンプを示す側面断面図、図5は同じく正面断面図、図6は同じく後面断面図である。
【0011】
まず、本発明の燃料噴射ポンプの概略構成について説明する。図1乃至図3に示す燃料噴射ポンプ1の下部にはカム5が固設されるカム軸4が横設され、該カム軸4の駆一端部は、カム軸受12を介して本体ハウジングHに回転自在に軸支されている。カム5の上方には、プランジャバレル8に上下摺動自在に嵌挿されたプランジャ7が配設され、該プランジャ7の下端にはタペット11が付設されている。プランジャ7及びタペット11はスプリング16等の付勢手段により下方へ付勢され、該タペット11がカム5に当接しており、該カム5の回転によりプランジャ7が上下動するように構成している。
【0012】
また、プランジャ7の側方には、分配軸9が該プランジャ7と軸心を平行に配設されており、該分配軸9は分配軸スリーブ10に回転自在に嵌挿されるとともに、該分配軸9の下端部に連結した分配駆動軸39により回転駆動される。該分配駆動軸39及び分配軸9はカム軸4と直交する方向に配置されている。
【0013】
ハウジングHには、カム軸4の回転により駆動されるトロコイドポンプ6を付設しており、燃料タンクに貯留される燃料油を、該トロコイドポンプ6の送出側ポート6aに接続される送出通路31、分配軸スリーブ10の外周に形成される環状溝32、及びハウジングHに形成される送出通路33を通じて、燃料ギャラリ43へ供給するようにしている。燃料ギャラリ43内へ圧送された燃料は、前記プランジャ7の上昇によって、燃料圧送通路21を通じて分配軸9へ圧送され、分配軸9へ圧送された燃料は、該分配軸9に形成される環状溝22及び分配用溝23を通過し、該分配用溝23とデリベリバルブ18とを接続する燃料分配通路24を通じて、該デリベリバルブ18へ供給される。デリベリバルブ18に供給された燃料は、噴射ノズルへ圧送されて噴射される。このように、デリベリバルブ18へ燃料油を圧送する経路である燃料ギャラリ43、燃料圧送通路21、環状溝22、分配用溝23、及び燃料分配通路24等は、高圧側に構成されている。
【0014】
次に、燃料油の戻し経路の構成について説明する。プランジャ7との摺動面であるプランジャバレル8の内周面下部には燃料油戻し溝8aが形成され、分配軸スリーブ10との摺動面である分配軸9の外周面下部には燃料油戻し溝9aが形成されており、該燃料油戻し溝8a及び燃料油戻し溝9aにより、それぞれ、プランジャ7とプランジャバレル8との間の摺動面からリークする燃料油、及び分配軸9と分配軸スリーブ10との間の摺動面からリークする燃料油を回収するようにしている。
【0015】
また、プランジャ7はプランジャバレル8に対して上下摺動自在に挿嵌され、分配軸9は分配軸スリーブ10に対して回転自在に挿嵌されており、該プランジャ7とプランジャバレル8との間の摺動面や、分配軸9と分配軸スリーブ10との間の摺動面から、プランジャ7及び分配軸9を通じてデリベリバルブ18へ圧送される燃料油の、下方のカム室へのリークが発生する。そこで、プランジャバレル8及び分配軸9には、それぞれ燃料油戻し溝8a及び燃料油戻し溝9aを形成して、摺動面からリークする燃料油を該燃料油戻し溝8a・9aを通じて燃料ギャラリーへ戻すように構成されている。
【0016】
分配軸スリーブ10には分配軸9の燃料油戻し溝9aと連通する分配軸側戻し孔51が形成され、ハウジングHには、分配軸スリーブ10の該戻し孔51と、プランジャバレル8の外周に形成される共通戻し溝8bとを連通する分配軸側戻し通路52が形成されている。一方、プランジャバレル8には燃料油戻し溝8aと連通するプランジャ側戻し孔53が形成され、該プランジャ側戻し孔53は、プランジャバレル8の外周面に形成される前記共通戻し溝8bと連通している。
【0017】
該共通戻し溝8bは共通戻し通路54により、ハウジングH内に構成され燃料噴射時期の制御を行うタイマ26内のタイマ室26aと接続されており、該タイマ室26aは、タイマピストン26cに設けた連通孔26b、タイマ側連通路55、プランジャバレル8上部の空隙56、及びアキュムレータ側連通路57を介して、アキュムレータ19内のバネ室19aと連通されている。
【0018】
そして、分配軸9側の摺動面からリークする燃料油は燃料油戻し溝9aにより回収され、分配軸側戻し孔51、分配軸側戻し通路52、共通戻し溝8b、共通戻し通路54、タイマ室26a、タイマピストン26cに設けた連通孔26b、タイマ側連通路55、プランジャバレル8上部の空隙56、及びアキュムレータ側連通路57を通じてアキュムレータ19内のバネ室19aに案内するようにしている。また、プランジャ7側の摺動面からリークする燃料油は、燃料油戻し溝8aにより回収され、プランジャ側戻し孔53、共通戻し溝8b、共通戻し通路54、タイマ室26a、タイマピストン26cに設けた連通孔26b、タイマ側連通路55、プランジャバレル8上部の空隙56、及びアキュムレータ側連通路57を通じてアキュムレータ19内のバネ室19aに案内するようにしている。
【0019】
アキュムレータ19のバネ室19aは、高圧側の燃料ギャラリー43と絞り孔19bを介して連通されており、該バネ室19a内は略大気圧程度の低圧側の燃料ギャラリーとなっており、バネ室19aと連通する前記アキュムレータ側連通路57、空隙56、タイマ側連通路55、タイマ室26a、共通戻し通路54、共通戻し溝8b、プランジャ側戻し孔53、分配軸側戻し通路52、及び分配軸側戻し孔51は、該バネ室19a内と同様に低圧側に構成されている。このように、分配軸9側からリークする燃料油及びプランジャ7側からリークする燃料油は、それぞれ燃料油戻し溝9a・8aにより回収されて低圧側燃料ギャラリーへ戻され、その後燃料タンクへ戻ることとなる。
【0020】
また、分配軸9の燃料戻し溝9aにより回収した燃料油を案内する前記分配軸側戻し孔51は、トロコイドポンプ6の吸入側ポート6aに接続される吸入通路34と連通しており、燃料戻し溝9aにより回収された燃料油は、吸入通路34及び吸入側ポート6aを通じても燃料タンクへ戻されるように構成されている。
【0021】
以上の如く、分配軸9の摺動面及びプランジャ7の摺動面からリークする燃料油を燃料油戻し溝9a・8aにより回収し、低圧側の燃料ギャラリーであるアキュムレータ19のバネ室19aに戻すように構成し、該燃料油戻し溝9a・8aからバネ室19aへ燃料油を案内する戻し経路である、分配軸側戻し孔51、分配軸側戻し通路52、プランジャ側戻し孔53、共通戻し溝8b、共通戻し通路54、タイマ室26a、タイマ側連通路55、空隙56、及びアキュムレータ側連通路57をハウジングH内に形成することで、該戻し経路として外部配管を設けることが必要でなくなり、燃料噴射ポンプ1をコンパクトに構成することができるとともに、構造の簡素化を図ることができる。また、リークする燃料油を低圧側の燃料ギャラリーに戻すことで、効率良くリークした燃料油を回収することが可能となる。
【0022】
また、リークする燃料油を、燃料噴射ポンプ1に元々備えられている低圧側の燃料ギャラリーであるアキュムレータ19のバネ室19aへ戻すように構成しているので、燃料油の回収部材を新たに設ける必要がなく、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0023】
さらに、燃料油を燃料油戻し溝8a・9aからアキュムレータ19のバネ室19aへ案内する戻し経路に、燃料噴射ポンプ1に元々備えられているタイマ26のタイマ室26aを利用することで、ハウジングHに戻し通路として形成するキリ孔の数を減少することができ、構造の簡素化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0024】
また、分配軸9側の燃料油の戻し経路と、プランジャ7側の燃料油の戻し経路とは、共通戻し溝8b、共通戻し通路54、タイマ室26a、タイマ側連通路55、空隙56、及びアキュムレータ側連通路57の如く、両者共通の戻し経路に構成されているため、ハウジングHに形成される戻し経路の数を減少することができ、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0025】
また、分配軸9側の燃料戻し溝9aにより回収された燃料油を、燃料噴射ポンプ1に元々備えられている低圧側の燃料ギャラリーであるトロコイドポンプ6の吸入側ポート6aを通じて燃料タンクへ戻すように構成しているので、燃料油の回収部材を新たに設ける必要がなく、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を奏するのである。
【0027】
請求項1記載の如く、プランジャ又は分配軸の摺動面からカム室へリークする燃料油の戻し経路を有する燃料噴射ポンプにおいて、該燃料油戻し経路をハウジング内部に形成し、低圧側の燃料ギャラリーに連通したので、リークする燃料油の戻し経路として外部配管を設けることが必要でなくなり、燃料噴射ポンプをコンパクトに構成することができるとともに、構造の簡素化を図ることができる。
また、リークする燃料油を低圧側の燃料ギャラリーに戻すことで、効率良くリークした燃料油を回収することが可能となる。
【0028】
更に、プランジャ側の燃料戻し経路における低圧ギャラリーへの連通路と、分配軸側の燃料戻し経路における低圧ギャラリーへの連通路とを共通の経路としたので、ハウジングに形成される戻し経路の数を減少することができ、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0029】
更に、請求項2記載の如く、前記燃料油戻し経路を、ハウジングに付設されるアキュムレータのバネ室に連通させたので、燃料油の回収部材を新たに設ける必要がなく、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0030】
更に、請求項3記載の如く、前記燃料戻し経路のバネ室への連通路として、ハウジング内に形成されるタイマ室を用いたので、ハウジングに戻し通路として形成するキリ孔の数を減少することができ、構造の簡素化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の燃料噴射ポンプを示す側面断面図である。
【図2】 同じく正面断面図である。
【図3】 同じく後面断面図である。
【図4】 従来の燃料噴射ポンプを示す側面断面図である。
【図5】 同じく正面断面図である。
【図6】 同じく後面断面図である。
【符号の説明】
H ハウジング
1 燃料噴射ポンプ
7 プランジャ
8 プランジャバレル
8a 燃料油戻し溝
8b 共通戻し溝
9 分配軸
9a 燃料油戻し溝
10 分配軸スリーブ
19 アキュムレータ
19a バネ室
26 タイマ
26a タイマ室
51 分配軸側戻し孔
52 分配軸側戻し通路
53 プランジャ側戻し孔
54 共通戻し通路
55 タイマ側連通路
56 空隙
57 アキュムレータ側連通路
Claims (3)
- プランジャ又は分配軸の摺動面から、カム室へリークする燃料油の戻し経路を有する燃料噴射ポンプにおいて、該燃料油戻し経路をハウジング内部に形成し、低圧側の燃料ギャラリーに連通し、前記プランジャ側の燃料戻し経路における低圧ギャラリーへの連通路と、分配軸側の燃料戻し経路における低圧ギャラリーへの連通路とを、共通の経路としたことを特徴とする燃料噴射ポンプ。
- 請求項1記載の燃料噴射ポンプにおいて、該燃料油戻し経路を、ハウジングに付設されるアキュムレータのバネ室に連通させたことを特徴とする燃料噴射ポンプ。
- 請求項1記載の燃料噴射ポンプにおいて、前記燃料戻し経路のバネ室への連通路として、ハウジング内に形成されるタイマ室を用いたことを特徴とする燃料噴射ポンプ。
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- 2000-05-16 JP JP2000143111A patent/JP4213847B2/ja not_active Expired - Lifetime
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