JP4213413B2 - 真空紫外光用高均質合成石英ガラス、その製造方法及びこれを用いた真空紫外光用マスク基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は波長200nm以下の真空紫外光照射に対して優れた透過率および均質性を有する、真空紫外光用合成石英ガラス、その製造方法及びこれを加工してなる真空紫外光用マスク基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、LSIの高集積化と共に、集積回路パターンも微細化の一途をたどり、0.25μm以下の超微細パターンが描画された超LSIの量産化が行われ始めている。このような超微細パターンを得るには、それを描画する露光光源を短波長化する必要があり、エキシマレーザー光を光源とするステッパーが開発され、既にKrFエキシマレーザー光(波長248nm)を光源とするステッパーが量産化され、より波長の短いArFエキシマレーザー光(波長193nm)や、F2エキシマレーザー光(波長157nm)など真空紫外光を光源とするステッパーが注目を集めている。
【0003】
この真空紫外域においても十分な透過率と均質性を示す光学材料としては、合成石英ガラスや螢石などが挙げられるが、中でも高純度のケイ素化合物を原料として製造した合成石英ガラスは、200nm以下の真空紫外領域でも高い透過率と均質性を示す事から、真空紫外光を光源とするリソグラフィー工程の光学材料として広く用いられている。
【0004】
しかしながら、従来の合成石英ガラスは真空紫外域の短波長光を照射すると、構造欠陥が誘起され、透過率及び均質性が低下する問題を有し、特にF2エキシマレーザーを光源とする超LSIのリソグラフィーに用いられる光学材料としては問題があった。
【0005】
真空紫外光照射耐性を改善する手段の一つとして、例えば特開平7−43891号公報あるいは特開平9−124337号公報においては、合成石英ガラス内のH2(水素分子)含有量を高め、真空紫外線照射によって生じた欠陥をH(水素原子)により修復し、照射耐性を向上される方法が提案されている。しかし、Hで修復された≡Si−H結合により均質性が悪化してしまう。また、≡Si−H結合に真空紫外光が照射される事で、いわゆるE’センター(≡Si・)などの新たな欠陥が生成する問題があった。さらに、H2を含浸させるための工程が必要となるなど製造コストが高くなるという問題点があった。
【0006】
合成石英ガラスの原料として、一般に四塩化ケイ素(SiCl4)が用いられるが、この場合、Clが合成石英ガラス中に≡Si−Clの形態で残留し、透過率及び均質性に悪影響を及ぼす事が知られている。この問題を解決するため、例えば特開平8−31723号公報ではアルコキシシランの様なClを含有しない原料を用いる方法が提案されている。この方法では、SiCl4を用いた場合に比べ原料コストが高くなる問題点と共に、原料中のCが合成石英ガラス中に残留する事で真空紫外光照射耐性に悪影響を及ぼす問題があった。また、金属不純物は透過率及び均質性を著しく低下させる事が知られているが、Clには合成雰囲気中に存在する金属不純物を塩化物として系外に除去する働きがある。そのためClを含まない原料を用いた場合、金属不純物が増加し透過率及び均質性の低下を招いてしまうことになる。
【0007】
近年、真空紫外光照射に対する耐性が優れた合成石英ガラスを得る方法として、特開平8−67530号公報、特開平8−75901号公報などに開示されている様に、高濃度のFを含有した合成石英ガラスが提案されている。本方法では製造時に生じた欠陥および、真空紫外光照射などによって生じた欠陥は≡Si−Hなどに比べて結合エネルギーの大きい≡Si−Fの形態で修復されるため、欠陥修復後さらに真空紫外光を照射しても新たな欠陥は生成せず、真空紫外光照射耐性に優れているとされている。しかし、石英ガラス中に≡Si−F結合が存在すると、石英ガラスの構造に歪みが生じ、均質性に悪影響を及ぼす。また、アニール、成型等の熱処理を行うと、Fが遊離して新たな構造欠陥を生成するため、透過率及び均質性が悪化する問題があった。
【0008】
このFを含有した合成石英ガラスを得る方法としては、SiCl4などを原料とする一般的方法で製造した合成石英ガラスに後からFを含浸させる方法(特開平13−19450号公報)および、SiF4などのF含有化合物を原料として合成石英ガラスを製造する方法(特開平12−264671号公報)などがある。しかし、工業化を図る場合、いずれの方法も高濃度のF化合物を取り扱うため、作業が煩雑となり危険性が高いと共に、原料コストが高く、また副生する弗酸に対して人体および環境への影響面から様々な対策が必要となるなど、製造コストが高くなる問題もあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、これまでは主として、H2及びF含浸処理などの後処理や、原料にClを含有しないアルコキシシランやF化合物を使用するなど、合成石英ガラスの基本構造や製造方法を大幅に変更する事で真空紫外光照射耐性向上を目指し開発が行われていた。その結果、透過率の改善には一応の効果が見られたものの、屈折率分布や複屈折量等の均質性に問題が生じていた。また、特殊で高価な原料を用いたり、製造設備の大規模な改造が必要になると共に製造工程が複雑となるなど、作業性および製造コストの面などで新たな課題が生じていた。超LSIの量産化に対して、真空紫外光用光学素材の開発は必要不可欠であり、真空紫外光照射特性に優れ、高品質でかつ経済的な光学材料とその製造方法が強く望まれている。
【0010】
本発明は、SiCl4等のガラス形成原料を用いたスート法(VAD法)で合成された合成石英ガラスに対して、過大で不必要な修飾を行う事なく、既存の汎用設備を使用して、安価でかつ均質性に優れた真空紫外光用合成石英ガラス及びその製造方法を提供し、さらにこの真空紫外光用合成石英ガラスを用いた真空紫外光用マスク基板を提供する事を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため合成石英ガラスの諸物性と、真空紫外光照射における透過率及び均質性との相関について鋭意検討を行った結果、合成石英ガラスに含有されるOH基含有量とF元素含有量が透過率及び均質性に対して特に重要であり、それぞれの値を特定の範囲に制限する事で、透過率及び均質性に優れた真空紫外光用合成石英ガラスを得る事が出来る事を見出した。さらに、この合成石英ガラスを真空紫外光用マスク基板として用いた場合、特に優れた性能を示す事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、波長163nmにおける透過率が厚さ10mmあたり70%以上で、直径200mmの領域における最大屈折率と最小屈折率の差(屈折率分布)が厚さ10mmあたり5×10-6以下かつ、複屈折量が5nm/cm以下である真空紫外光用合成石英ガラスである。さらにその中でも、OH基含有量が1〜20ppm、F元素含有量が10〜30ppmである事を特徴とする真空紫外光用合成石英ガラスである。
【0013】
また、ガラス形成原料を酸水素火炎中で火炎加水分解して得られたシリカ微粒子をターゲット上に堆積させスート体を合成し、その後の熱処理で透明ガラス化するいわゆるスート法において、スート体の熱処理を還元性ガス雰囲気で行った後、さらにF化合物ガス雰囲気で熱処理を行い、最後にO2含有雰囲気で透明ガラス化処理を行う事を特徴とする、前記物性の真空紫外光用合成石英ガラスの製造方法及び、前記物性の真空紫外光用合成石英ガラスを、真空紫外光用マスク基板として使用する用途も本願発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
以下本発明を詳細に説明する。
【0015】
OH基は真空紫外域で吸収を示すため、OH基含有量が少ない程真空紫外域での透過率は上昇する。従って、OH基濃度は20ppm以下にする必要がある。ただし、OH基には、SiO4四面体が連なって形成されている石英ガラスの網目構造を安定化させる作用があるため、OH基濃度が1ppm未満になると石英ガラスの構造が不安定になることがあり、熱処理等により容易に欠陥が生成して透過率及び均質性が悪化することがある。このため、石英ガラス中に1ppm以上のOH基を含有することが好ましい。
【0016】
酸水素火炎中で合成されたシリカ微粒子は、通常、数1000ppm程度のOH基を含有する。OH基は真空紫外域で吸収を示すため、スート体はH2ガス、F化合物ガス等の還元性ガス雰囲気で熱処理する事で、OH基濃度の低減化が行われる。しかし、F化合物ガスで脱OH基処理した場合、石英ガラスに対するF元素の反応性が高いめ、OH基濃度の制御が困難になると共に、過剰のFが石英ガラスを形成する≡Si―O―Si≡結合のO原子と反応して、≡Si―Si≡の酸素欠乏型欠陥を生成する。この欠陥は、163nmを中心とする真空紫外域に吸収を示すため、真空紫外域で透過率が低下する。また、酸素欠乏型欠陥により結合に歪みが生じるため、均質性が悪化する事が分かった。従って、スート体の脱OH基処理はH2ガス等のF化合物以外の還元性ガスで行うのが好ましい。
【0017】
F化合物以外の還元性ガスで処理した石英ガラスであっても、F化合物ガスで処理した場合に比べてはるかに低濃度ではあるが、脱OH基処理により酸素欠乏欠陥等が生成し、真空紫外域の透過率が低下すると共に、均質性も悪化することがある。脱OH基処理により生成したこの微量の欠陥は、脱OH基処理後、さらにF元素含有ガス雰囲気で熱処理する事で、≡Si−F結合の型で修復できる。この結合は真空紫外光照射に対して吸収を示さない。しかし、既に記述したように、欠陥修復のためのF元素含有ガス処理において、過剰なFが石英ガラス中に取り込まれると、≡Si−OHあるいは≡Si−O−Si≡と反応して、新たな欠陥を生成する。また、≡Si−F結合は構造に歪みを生じさせるため、多量に存在すると均質性が悪化する。このため、石英ガラス中に含有するF濃度は10〜30ppmが好ましい。F濃度を所望の範囲とするためには、脱OH基処理後、200℃〜700℃、0.01〜1vol%F化合物ガス含有雰囲気で処理する必要がある。脱OH基処理の前にF化合物ガスで処理を行うと、スート体中に多量に含まれるOH基と反応するため、F濃度の制御が困難となり過剰のFが含浸される。透明ガラス化処理後にF化合物ガスで処理しても、所望の濃度以下のFしか含浸できない。従って、F化合物ガスによる熱処理は、仮焼処理後に行う必要がある。
【0018】
真空紫外光照射に悪影響を及ぼす酸素過剰型欠陥生成を抑制するため、通常H2過剰の条件でスート合成が行われる。この時、H2の一部は石英ガラス中に取り込まれる。石英ガラス中のH2は熱処理や真空紫外光照射等により生じた欠陥と反応して、≡Si−H結合を生成する。≡Si−H結合は石英ガラスの網目構造に歪みを生じさせるため、均質性に悪影響を及ぼす。さらに、≡Si−H結合は通常の≡Si−O−Si≡結合と比べて結合エネルギーが小さく、そのため真空紫外光照射により比較的容易に解裂し欠陥生成の原因になると考えられる。また、H2過剰になるとその還元作用により、酸素欠乏型欠陥≡Si−Si≡が生成し、真空紫外光照射特性が悪化する。このため、H2及び≡Si−H結合の含有量は少ない方が好ましい。H2及び≡Si−H濃度が1×1017個/cm3以下であれば、真空紫外光照射特性の良好な石英ガラスが得られる事が分かった。
【0019】
金属不純物(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、その他の金属)は真空紫外域に吸収を示すため、その含有量は出来るだけ少ない方が望ましい。金属不純物含有量が多くなると、真空紫外域での透過率及び均質性が低下するだけでなく、真空紫外光照射により金属不純物に起因する欠陥が生成し、さらに透過率及び均質性を悪化させる原因となる。透過率および均質性に影響する金属不純物とその含有量について検討した。その結果、Li,Na,Kなどのアルカリ金属、Mg,Caなどのアルカリ土類金属、Ti,Cr,Fe,Ni,Cu,Zr,Moなどの遷移金属、その他Alなどの金属が真空紫外光照射特性に悪影響を及ぼす事が分った。その含有量と真空紫外特性との関係から、金属不純物の総量が30ppb以下のときに高い性能が得られる事が分かった。
【0020】
合成石英ガラスでは一般的に、取り扱いやすさ、価格の点などから原料にSiCl4が用いられる。このため、合成された石英ガラスには、Clが残存する可能性があり、このClはガラス内部で直接Siと結合して≡Si−Clの形態で存在していると考えられる。この≡Si−Cl結合は、真空紫外光照射により容易に解裂し欠陥の原因となるため、Cl含有量は出来るだけ低い方が好ましい。Cl含有量が10ppm以下であれば、真空紫外光用合成石英ガラスとして十分満足出来る性能が得られる。
【0021】
次に本発明の合成石英ガラスの製造方法について説明する。本発明の真空紫外光用合成石英ガラスの製造方法は、運転操作性、生産性、品質安定性、コスト等の点からスート法が好ましい。以下、スート法について具体的に説明する。
【0022】
スート法では、例えば、多重管構造の石英ガラス製バーナーの中心からSiCl4などの原料を供給し、その外側の管からH2およびO2を供給して原料を火炎加水分解してシリカ微粒子(スート)を合成する。このスートは多量のOH基を含有するため、第1の熱処理として、1100℃〜1350℃の温度範囲で、還元性ガス雰囲気で処理を行い、OH基濃度を適切な範囲まで低減させる。第1の熱処理の温度が1350℃より高いと、ガラス化が起こり、OH基濃度の低減が不充分となる。逆に温度が1100℃以下であると脱OH基速度が遅く、処理時間が長くなるため実用的でない。第1の熱処理を行った後、200℃〜700℃、0.01〜1vol%F化合物ガス雰囲気で、第1の熱処理により生成した欠陥修復のための第2の熱処理を行う。この処理を行う際の、F化合物ガスの濃度と処理温度の制御が重要である。F化合物ガス濃度が0.01%より低いと、F濃度が10ppmより低くなるため欠陥の修復が完全に行われない。濃度が1%より高いとF元素が過剰になり、石英ガラスの構造である≡Si−O−Si≡結合との反応が起こり新たな欠陥が生成する。処理温度が、200℃より低いと反応が進行しない。温度が700℃より高いと、F元素の反応性が高まり、≡Si−O−Si≡との反応が起こるため新たな欠陥が生成する。F化合物ガスとしては、取り扱いの点等から、SiF4等が挙げられるが、F元素を含むガスであれば特に限定しない。続いて、1350℃〜1550℃、O2含有雰囲気で第3の熱処理を行い、透明ガラス化する。第3の熱処理を、O2含有雰囲気で行うのは、この熱処理で酸素欠乏型欠陥が生成するのを抑制するためである。温度が1350℃より低いと透明ガラス化が起こらない。1550℃より高温だと、ガラス化速度が速過ぎるため、構造に歪み及び欠陥が生成してしまう。
【0023】
原料は、取り扱いおよび入手が容易で、かつ安価であるなどの点からSiCl4が望ましい。しかし、本発明は特にこれに限定されるものではなく、原料中にClを含有していれば、SiCl4以外の原料を用いても良い。原料にSiCl4などのCl含有ケイ素化合物を使用する事で、特別な処理を行う事なく金属不純物含有量を30ppb以下にする事ができる。
【0024】
原料にSiCl4の様なCl含有物を用いた場合、スート中にClが残留するが、この残留したClは、第1の熱処理の際、OH基と共に除去されるため特別な処理を行う事なく、Cl濃度を10ppm以下にする事ができる。
【0025】
以上記述した条件で合成石英ガラスを製造すれば、原料に高価で副生物の処理設備が必要なF化合物を使用したり、H2濃度を高めるための特別な処理設備を設置する必要がないため、汎用的な製造方法、製造設備により、安価で優れた真空紫外光照射特性を有する、真空紫外光用合成石英ガラスを得る事が可能である。
【0026】
このようにして合成した石英ガラスを、所定の形状に加工、研磨して真空紫外光用マスク基板として使用した場合、優れた均質性及び紫外線光照射特性を示し、真空紫外光用マスク基板としての使用に特に適している。
【0027】
【実施例】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何等限定されるものではない。尚、評価は以下の方法によった。
【0028】
163nmの透過率は、真空紫外分光光度計を用いて測定した。
【0029】
各試料の含有成分の定量方法は以下の通りである。
【0030】
OH基含有量は約2.7μmの吸収からIR測定法により定量した。仮想温度はIRスペクトルの約2260cm-1にあらわれる吸収の位置から計算により求めた。
【0031】
H2含及び≡Si−H含有量は、ラマン分光測定法で定量した。H2及び≡Si−H対応するピークは、それぞれ約4150cm-1及び約2250cm-1にあらわれ、このピークの面積強度と石英ガラスの基本構造による約800cm-1のピークの面積強度との比からH2及び≡Si−H含有量を算出した。
【0032】
F及びCl含有量は、得られた石英ガラスをアルカリ溶融してイオンクロマト法で求めた。
【0033】
金属不純物含有量はICP質量分析法で求めた。
【0034】
実施例1〜4
原料にSiCl4を使用して、スート法により合成石英ガラスインゴットを製造した。石英ガラス製バーナーの中心管から原料を供給し、バーナーの外管からH2およびO2を供給してスートを合成した。このスートを1vol%(容積%)H2ガス雰囲気、1200℃で5時間熱処理(第1の熱処理)して脱OH基処理を行った。その後、0.1%SiF4雰囲気、500℃で2時間熱処理(第2の熱処理)し、最後に、20%O2雰囲気、1400℃で5時間熱処理(第3の熱処理)して透明石英ガラスインゴットを得た。このインゴットからテストピースを切り出し、実施例1の評価用試料とした。
【0035】
実施例2、3及び4の試料も実施例1の試料と同様にして作製した。実施例1〜4の試料の製造条件を表1に示す。
【0036】
【表1】
表2に各試料の評価結果の一覧(OH基濃度、F濃度、H2濃度、≡Si−H濃度、Cl濃度、金属不純物濃度、透過率、屈折率分布、複屈折量)を示す。
【0037】
【表2】
表2に示すように、本発明の範囲の合成石英ガラスである実施例の試料は、真空紫外光用光学材料として優れた性能を持つ合成石英ガラスであった。
【0038】
さらに、実施例1で作製したインゴットの一部をさらに、400℃、100%H2雰囲気で処理して、試料を作製した。この試料のOH基濃度は12ppm、F濃度は25ppm、H2濃度は3.2×1017個/cm3、≡Si−H濃度は2.5×1017個/cm3、Cl濃度は<10ppm、金属不純物濃度20ppb、透過率は68%、屈折率分布は3.8×10-6、複屈折量は6.5nm/cmであり、真空紫外光用光学材料として適さないものであった。
【0039】
また、実施例2で作製したインゴットの一部をさらにOH基雰囲気で処理して、試料を作製した。この試料のOH基濃度は26ppm、F濃度は15ppm、H2濃度は<1×1017個/cm3、≡Si−H濃度は<1×1017個/cm3、Cl濃度は<10ppm、金属不純物濃度25ppb、透過率は63%、屈折率分布は4.5×10-6、複屈折量は3.9nm/cmであり、真空紫外光用光学材料として適さないものであった。
【0040】
比較例1
第1の熱処理を1000℃で行う以外は、実施例1と同様な条件で合成した石英ガラスインゴットからテストピースを切り出し、比較例1の試料とした。比較例1のOH基含有量は、35ppmであった。この試料の、初期透過率は53%と低く、真空紫外光用光学材料として適さないものであった。
【0041】
比較例2
第1の熱処理を1450℃とする以外は、実施例1と同様な条件で合成した石英ガラスインゴットからテストピースを切り出し、比較例2の試料とした。比較例2の条件では透明な石英ガラスが得られなかった。
【0042】
比較例3
第2の熱処理を5%SiF4ガス雰囲気で行う以外は、実施例1と同様な条件で合成した石英ガラスインゴットからテストピースを切り出し、比較例3の試料とした。この試料のF含有量は55ppmであった。この試料の複屈折料は、6.8nm/cmと大きく、真空紫外光用光学材料として適さないものであった。
【0043】
比較例4
第2の熱処理を100℃で行う以外は、実施例1と同様な条件で合成した石英ガラスインゴットからテストピースを切り出し、比較例4の試料とした。この試料のF濃度は10ppm未満であった。この試料の透過率は61%と低く、真空紫外光用光学材料として適さないものであった。
【0044】
比較例5
第2の熱処理を800℃で行う以外は、実施例1と同様な条件で合成した石英ガラスインゴットからテストピースを切り出し、比較例4の試料とした。この試料の透過率は77%と高透過率であったが、F濃度が特許請求の範囲外であるため、屈折率分布及び複屈折量が大きく均質性に劣り、真空紫外光用光学材料として適さないものであった。
【0045】
比較例6
第3の熱処理を1300℃で行う以外は、実施例1と同様な条件で合成した。比較例6の条件では透明な石英ガラスが得られなかった。
【0046】
比較例7
第3の熱処理を1600℃で行う以外は、実施例1と同様な条件で合成した。比較例7の条件では透明な石英ガラスが得られなかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、安価でかつ均質性に優れた真空紫外光用合成石英ガラス及びこれを用いた真空紫外光用マスク基板の提供が可能となった。
【0048】
本発明の方法によれば、石英ガラス中のOH基、F、H2及び≡Si−Hの各濃度を制御する事で構造を安定化するため、安価で取り扱いの容易なSiCl4などのClを含有した原料の使用が可能である。さらに、Clには金属不純物除去効果があるため金属不純物濃度低減のための特別な処理が不要となり製造コストが削減出来る。
Claims (6)
- 波長163nmにおける透過率が厚さ10mmあたり70%以上で、直径200mmの領域における最大屈折率と最小屈折率の差(屈折率分布)が厚さ10mmあたり5×10−6以下かつ、複屈折量が5nm/cm以下であり、OH基含有量が1〜20ppm、F元素の含有量が10〜30ppmである真空紫外光用合成石英ガラス。
- 請求項1記載の合成石英ガラスでかつ、H2含有量が1×1017個/cm3以下及び、≡Si−H含有量が1×1017個/cm3以下である真空紫外光用合成石英ガラス。
- 請求項1又は請求項2に記載の合成石英ガラスでかつ、Cl含有量が10ppm以下及び、金属不純物含有量が30ppb以下である真空紫外光用合成石英ガラス。
- 石英ガラス形成原料を酸水素火炎中で加水分解してシリカ微粒子(スート)を合成し、得られたスートをターゲット上に堆積させて多孔質シリカ母材(スート体)を形成し、さらにそのスート体を加熱して透明ガラス化する、いわゆるスート法による石英ガラスの製造方法であって、以下の工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の真空紫外光用合成石英ガラスの製造方法。
(a)Cl含有化合物を原料とし、酸水素火炎中でシリカ微粒子(スート)を合成し、得られたスートを堆積させてスート体を形成する工程
(b)得られたスート体を、温度1100〜1350℃、還元性ガス雰囲気で処理(仮焼)する工程(第1の熱処理)
(c)得られた仮焼体を、温度200〜700℃、0.01〜1vol%F化合物ガス雰囲気で処理する工程(第2の熱処理)
(d)処理した仮焼体を、温度1350〜1550℃、O2ガス含有雰囲気下で透明ガラス化する工程(第3の熱処理) - 還元性ガスがF化合物ガス以外のガスである請求項4記載の真空紫外光用合成石英ガラスの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の真空紫外光用合成石英ガラスを加工してなる真空紫外光用マスク基板。
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