JP4212715B2 - ヒートパイプの端部封止方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、作動流体の蒸発潜熱として熱輸送するヒートパイプの製造方法に関し、特にコンテナのうち作動流体の注入・排出を行う端部の封止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の通りヒートパイプは、脱気した状態の密閉金属パイプなどのコンテナの内部に純水あるいはアルコールなどの凝縮性流体を作動流体として封入したものである。したがってそのコンテナの端部は、空気の流入や作動流体の漏洩を生じないよう完全に密閉する必要がある。特に作動流体の注入・排出側の端部では、作動流体の封入手段として加熱追い出し法が採用された場合に、作動流体蒸気を継続的に排出させつつ封止が行われるから、より気密性の高い封止方法が要求される。
【0003】
そこで従来では、一例として予め一端部を密閉した銅製のパイプ材を用意し、そのパイプ材の開口端に対してスェージング加工(絞り加工)を施すなどしてパイプ材の中心軸線と同軸上に小径部を形成し、その小径部をポンチとダイスとによって半径方向に圧潰して、内壁面同士が互いに密着し合う平板状圧潰部を形成し、その後更に、先端の接合部分を溶接して一体に塞ぐ封止方法がある。この種の封止方法では、平板状圧潰部がコンテナの半径方向での外側に張り出さない寸法となるように小径部の外径を予め設定して絞り加工を行っている。
【0004】
すなわち平板状圧潰部の最大幅がコンテナの外径よりも大きい構造のヒートパイプでは、例えば多数本を一括して収容した状態において平板状圧潰部同士が引掛り合うなどして損傷するおそれがあるばかりか、コンテナとしての実質的な外径が大きくなり、それに伴って占有スペースが増すなどの不都合が生じるからである。換言すれば、上記従来の封止方法では、平板状圧潰部を張り出させない構造とするために、絞り加工を実施してコンテナの一部を小径化させる手段を採っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように上記従来の封止方法では、開口したパイプ材の端部を密閉する工程のみならず、パイプ材を小径化する工程が不可欠であり、そのために圧潰工程と溶接工程との他に更に1工程を要している。それに伴って上記従来の封止方法では、生産効率に劣る不都合があった。
【0006】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、生産効率の向上を図ることができるヒートパイプの端部封止方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、この発明は、内部から非凝縮性ガスを排気した後に凝縮性の作動流体が注入され、かつ外径が全長に亘りほぼ一定の金属製パイプ材を封止するにあたり、円弧状の凹受面上に前記パイプ材を配置するとともに、そのパイプ材をその先端から所定寸法の非圧潰部を残してポンチによって半径方向に圧潰して、前記ポンチの先端部における左右の側面部はそれぞれ傾斜面として形成し、下側に向けて横方向の寸法が減少するようなテーパを付け、かつ各傾斜面の長さはパイプ材の外径よりも長く形成し、前記凹受面に沿うような形状で、かつその被圧潰箇所における全周に亘り内壁面同士が密着した圧潰部を形成し、更にその圧潰部より先端側の前記非圧潰部を溶融接合することを特徴とするものである。
【0008】
したがってこの発明によれば、凹受面をパイプ材の外径に対して一致した構造とすることによって、コンテナの半径方向での外側に張り出さない構造の圧潰部を形成することが可能である。そのために絞り加工を行うことなくパイプ材の開口端を閉じることが可能であり、したがって生産性に優れている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一具体例を図1ないし図6を参照して説明する。まずヒートパイプ1のコンテナ2の素材として銅あるいはその合金、またはステンレス鋼、アルミニウムおよびその合金等からなるパイプ材3を用意する。具体的には、このパイプ材3としては、直線状を成していて、外径ならびに肉厚がその全長に亘って一定なものが採用されている。更にこのパイプ材3の一端部は、適宜手段によって予め密閉されており、これに対してパイプ材3における他端部(開口側端部4)は、その端面が平坦面を成していてパイプ材3の中心軸に対して直交した構造となっている。
【0010】
そして開口側端部4を介して内部から空気などの非凝縮性ガスを排気するとともに、所定の作動流体をパイプ材3の内部に注入してヒートパイプ化する。つぎにパイプ材3における開口側端部4から所定寸法の非圧潰部を残した部分に、圧潰加工を施して内壁面同士が圧着した圧潰部6を形成する。その加工は、図1に示すように、凹受面7を備えたダイス8に開口側端部4を設置するとともに、先端部が円弧面を成すポンチ9をパイプ材3に対して半径方向外側から押し付けることにより行う。
【0011】
ダイス8における凹受面7としては、対象とするパイプ材3の外径程度の深さを有するU字状断面の直線溝であって、円弧状を成している底面部10の曲率は、パイプ材3の外周面の外面の曲率と同じに設定されている。また凹受面7における一対の側面部11は、共に平坦面を成していて、それぞれ鉛直な姿勢となっている。この側面部11同士の間隔は、パイプ材3の外径とほぼ同じに設定されている。すなわちダイス8は、その上面部における開口部分からパイプ材3を半径方向に移動させて凹受面7の底面部10に密着状態に配設させることが可能な構造となっている。
【0012】
これに対してポンチ9としては、図1での奥行き方向にある程度の長さを有し、かつ左右の側面部が互いに平行な平坦面を成している角柱状ブロックであって、その先端部における図1での左右方向の断面が円弧状を成した構造となっている。その円弧面の曲率は、パイプ材3の外面の曲率よりも大きく設定されている。またポンチ9の先端部における図2での左右の側面部は、それぞれ傾斜面12として形成されていて、つまり図2での下側に向けて横方向の寸法が減少するようなテーパが付けられた構造となっている。なお各傾斜面12の長さは、パイプ材3の外径よりも長い設定となっている。
【0013】
そしてポンチ9は、図1に示すように、その幅方向での中心線をダイス8の幅方向での中心線に対して一致させた姿勢で鉛直に下降および上昇するように構成されており、その最下降位置におけるポンチ9の外面と凹受面7の外面との間隔が、パイプ材3の肉厚の2倍よりも若干狭い設定となっている。
【0014】
したがってパイプ材3の上面部にポンチ9の先端部を当接させた状態から、図3に示すように、更にポンチ9をダイス8に向けて押し進めれば、パイプ材3の上面部が左右に対向した2箇所で折れ曲がるようにして中心軸線側に窪み始め、ポンチ9の先端部が最下降位置に到達する直前においてパイプ材3の上面部の内壁面が下面部ならびに側面部の内壁面に対して密着する。その場合、パイプ材3における側面部から上面部に亘る境界部分近傍が、凹受面7の側面部11に当接することによって、パイプ材3の外径を超えた変形が規制される。
【0015】
前述の状態からポンチ9が最下降位置まで移動してダイス8との間隔が更に狭めれると、パイプ材3の上面部における変形箇所の内壁面全体が下面部および側面部の内壁面全体に対して圧着され、この部分が圧潰部6となる。圧潰部6は、ポンチ9の先端部形状に倣った内面とパイプ材3の外面形状に倣った外面とを備えていて、その最大幅(パイプ材3の半径方向での寸法)がパイプ材3の外径に対して実質的に等しい構造となっている。換言すれば、パイプ材3の半径方向での外側には張り出さない構造とはなっている。このようにパイプ材3は、その開口側端部4における圧潰部6で圧着されて密閉される。
【0016】
つぎに圧潰加工を施したパイプ材3に対して溶接を施す。具体的には、圧潰部6が備えられた端部を上側に向けた姿勢にパイプ材3を保持し、その状態で圧潰部6よりも先端側に残る非圧潰部を加熱溶融させて接合する。その手段としては、例えば母材をガス炎によって溶融させるガス溶接が挙げられる。その場合、非圧潰部がほぼ円筒状を成しているから、加熱することにより生じた溶融金属はその中空部を埋め、その中空部以上の溶融金属は圧潰部6の上側において半球状に凝固する。
【0017】
図5および図6は、上述のようにして圧潰および溶接を行った後の状態を示す図であって、ここに示すように圧着部はそのまま残り、その先端側で溶接した溶融金属が栓(プラグ)となった状態で凝固しており、この圧着部と溶接部分との両者によってパイプ材3は気密状態に封止される。その結果、圧潰部6の幅がコンテナ2の外径と実質的に等しい構造のヒートパイプ1が完成する。
【0018】
つぎに図7ないし図9を参照して、この発明の他の具体例について説明する。ここに示す例は、非圧潰部を備えない例である。なお上記具体例と同じ部材には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。上記具体例と同じ構造のパイプ材3を用意し、その開口側端部4に対してポンチ9とダイス8とによって圧潰加工を施して圧着させる。なおこのダイス8およびポンチ9としては、図1に示す具体例と同じ構造のものが採用される。
【0019】
ダイス8の凹受面7の内部に、パイプ材3の開口側端部4を設置する。その場合、パイプ材3の先端面をポンチ9の先端部と図2での右側の傾斜面12との境界部分に対して一致させて配置し、その状態からポンチ9を下降させて先端部によってパイプ材3を外面側から押し潰す。その結果、内壁面同士が互いに密着したU字状断面の圧潰部6がパイプ材3の端部に形成される。換言すれば、圧潰部6における内壁面同士の接合面がパイプ材3の端面に現れた構造となっていて、つまり図8に示すように、この圧潰部6では、ポンチ9の傾斜面12に倣う壁面のうちの一方が備えられていない構造となっている。
【0020】
つぎにパイプ材3における先端面の接合部分に沿って溶接を施す。その溶接手段としては、一例としてTIG(イナートガスタングステンアーク)溶接を採用する。そのTIG溶接機としては、従来知られたものが採用され、特には図示しないが、制御装置を備えた溶接機本体と、この溶接機本体に電力を供給する溶接電源と、フレキシブルチューブを介して溶接機本体に連結された溶接トーチを備えている。また溶接トーチは、その先端部に設けられたガスノズルから例えばアルゴン(Ar)などシールドガスを外部に向けて供給するように構成されていて、更に溶接トーチには、ガスノズルよりも突出したタングステン電極(共に図示せず)が備えられている。
【0021】
そして上記構成のTIG溶接機にを用いてパイプ材3に対して溶接を行う。まずパイプ材3を水平に保持するか、あるいは圧潰部6側の端部が下側となるように垂直に立てた姿勢に保持し、その状態で圧潰部6の端面との間に所定間隔をあけて溶接トーチのタングステン電極を配置する。更にこの両者の間に溶加材であるフィラワイヤを配置した状態で、ガスノズルから圧潰部6の端面に向けてシールドガスを供給しつつ、パイプ材3とタングステン電極との間にアークを発生させる。
【0022】
その状態のまま溶接トーチをU字状の接合面に沿って移動させる。するとフィラワイヤおよびパイプ材3の一部が溶かされて、接合面を覆った状態に溶滴が付着し、更にその溶滴を自然冷却させてそのまま凝固させる。その結果、接合面に沿った状態の溶接ビードが形成され、この溶接部分と圧潰部6とによってパイプ材3が気密状態に封止されてヒートパイプ1となる。
【0023】
この具体例によれば、パイプ材3の端部に非圧潰部を備えていない分だけ圧潰部6をより先端位置に形成することが可能であり、したがって同じパイプ材3を材料としていながら図1に示す具体例に比べて実質的な全長の長いヒートパイプ1を製造できる利点がある。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明によれば、ヒートパイプのコンテナとなるパイプ材を封止するにあたり、円弧状の凹受面上にパイプ材を配置するとともに、ポンチによって半径方向に圧潰して、凹受面に沿うような形状で、かつ被圧潰箇所における全周に亘り内壁面同士が密着した圧潰部を形成した後に、その先端部分を溶融接合する方法であり、パイプ材の半径方向での外側に張り出さない構造の圧潰部を形成することが可能であるから、絞り工程を行う必要がなく、したがって生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポンチとダイスとパイプ材との配置関係を示す概略図である。
【図2】 ポンチの構造を示す概略図である。
【図3】 ポンチを凹受面内に下降させた状態を示す概略図である。
【図4】 ポンチを凹受面内から上昇させた状態を示す概略図である。
【図5】 ヒートパイプの完成体を一部切り欠いて示す概略図である。
【図6】 図5に示す構造のヒートパイプの中心軸線に沿う断面図である。
【図7】 圧潰部を備えていない構造ヒートパイプの完成体を一部切り欠いて示す概略図である。
【図8】 図7に示す構造のヒートパイプの中心軸線に沿う断面図である。
【図9】 図7に示す構造のヒートパイプにおける圧潰部の端面を示す概略図である。
【符号の説明】
1…ヒートパイプ、 3…パイプ材、 4…開口側端部、 6…圧潰部、 7…凹受面、 8…ダイス、 9…ポンチ。
Claims (1)
- 内部から非凝縮性ガスを排気した後に凝縮性の作動流体が注入され、かつ外径が全長に亘りほぼ一定の金属製パイプ材を封止するにあたり、円弧状の凹受面上に前記パイプ材を配置するとともに、そのパイプ材をその先端から所定寸法の非圧潰部を残してポンチによって半径方向に圧潰して、前記ポンチの先端部における左右の側面部はそれぞれ傾斜面として形成し、下側に向けて横方向の寸法が減少するようなテーパを付け、かつ各傾斜面の長さはパイプ材の外径よりも長く形成し、前記凹受面に沿うような形状で、かつその被圧潰箇所における全周に亘り内壁面同士が密着した圧潰部を形成し、更にその圧潰部より先端側の前記非圧潰部を溶融接合することを特徴とするヒートパイプの端部封止方法。
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