JP4212247B2 - 感熱記録材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱記録材料に関し、さらに詳しくは背面層がフッ素原子を含む側鎖を有するポリウレタンからなり、熱溶融型熱転写方式や昇華型熱転写方式に有用である感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステルフィルムなどの基材シートの一方の面に染料または顔料をバインダー樹脂で担持させて感熱記録層(インク層)を形成し、その裏面からパターン状に加熱してインク層を被転写材に転写する熱溶融型感熱記録材料や、さらには染料として加熱昇華性の染料を使用し、同様に染料のみを被転写材に昇華転写する昇華型感熱記録材料が公知である。
このような方法は、いずれも基材シートの裏面からサーマルヘッドにより熱エネルギーを付与する方式であるため、使用する感熱記録材料の基材シートの裏面がサーマルヘッドに対して充分な滑り性、剥離性および非粘着性などを有し、サーマルヘッドが裏面に粘着(スティッキング現象)しないことが要求されている。そのために、例えば、感熱記録材料の基材シートの裏面に、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、変性セルロース樹脂あるいはこれらの混合物からなる背面層を形成する技術が提案されている(例えば、特開昭58−13359号公報など参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記感熱記録材料において耐熱性を有する背面層を形成するために、前記の樹脂を各種架橋剤を使用して熱架橋させたり、これらの樹脂に無機フィラーやフッ素樹脂の粉末などを添加することなどが試みられている。上記により、耐熱性を有する背面層は得られるが、これらの樹脂ではサーマルヘッドに対する滑り性や非粘着性が不十分である。唯一、シリコーン樹脂は滑り性と非粘着性とを具備しているが、該樹脂を完全に架橋させるための加熱工程は、薄膜(通常、2〜5μm厚)である基材シートに損傷を与えてしまうし、不完全な架橋では、感熱記録材料をロール状に巻いた場合には、背面層中の未反応の低分子のシリコーンが、該背面層に接しているインク層に移行し、その結果形成される画像を不鮮明にするなどの問題が生じる。
【0004】
本発明者らはこれらの諸問題を解決する方法を検討し、種々のシリコーン−ポリウレタン共重合樹脂を使用することにより、耐熱性、滑り性および非粘着性などを兼ね備えた優れた背面層を有する感熱記録材料が得られることを、特開昭61−227087号公報、特開昭62−202786号公報、特開平2−102096号公報などにおいて提案した。しかしながら、近年、印字の高速化に伴うサーマルヘッドの高温化や基材シートの薄膜化に伴い、背面層にはさらなる耐熱性、滑り性および非粘着性などが求められている。
【0005】
これらの要求に応えるためには、従来技術をさらに改良し、その製造工程が簡略で、かつ優れた性能を有する背面層を形成することができる材料が必要である。このような要求に基づき、本発明者らは、パーフルオロアルキル基含有ポリウレタン樹脂を背面層の形成に使用することを提案した(特開昭62−251192号公報、特開平1−11887号公報など)。ところで、従来のパーフルオロアルキル基(以下パーフルオロアルケニル基も含めてRf基と略記する)を有する片末端ジオール(分子の一方の末端に2個の水酸基を有する化合物)の製造方法としては、次のような反応式に従う方法が知られている。
【0006】
Figure 0004212247
【0007】
上記のように従来のRf基を有する片末端ジオールの製造方法は、いずれも多工程を要しており、従ってRf基を有する高純度品の片末端ジオールは高価であり、工業的規模での実用化には問題がある。さらに前記のような高性能が要求される分野では、Rf基の含有量を多くする必要性があるため、背面層形成用樹脂が高価なものとなってしまい実用に供し得ない。
従って本発明の目的は、従来技術の問題点が解消され、安価な材料で、滑り性、非粘着性および耐熱性などに優れた背面層を有する感熱記録材料を提供することである。
【0008】
本発明者は、Rf基を有する片末端ジオールの安価な製造方法を開発すべく検討を重ね、新規な製造方法を開発した。そして、この方法で得られるRf基を有する片末端ジオールを用いたフッ素含有ポリウレタンを使用することにより、上記目的が達せられることを見い出し、本発明を完成した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層および他の面に設けた背面層とからなる感熱記録材料において、該背面層が下記一般式(I)で表されるフッ素含有ジオールから誘導された側鎖を有するポリウレタンからなることを特徴とする感熱記録材料を提供する。
【0010】
Figure 0004212247
【0011】
背面層を、前記一般式(I)で表されるRf基を含有する側鎖を有するポリウレタンを用いて形成することによって、耐熱性、可撓性および基材に対する接着性などに優れ、かつサーマルヘッドに対する滑り性に優れ、サーマルヘッドが粘着しない感熱記録材料が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の感熱記録材料は、基材シートの一方の面に感熱記録層が、そして他方の面に背面層が形成され、上記背面層を構成するポリマーが、上記の一般式(I)で表されるフッ素含有ジオール、すなわち、Rf基を有する片末端ジオールから誘導された側鎖を有するポリウレタンからなることが特徴である。ここで、「ポリウレタン」とは、ポリウレタン、ポリウレアおよびポリウレタン−ポリウレアの総称である。かかるポリウレタンは、Rf基を有する片末端ジオールと、活性水素含有化合物と、ジイソシアネートとを、必要により鎖延長剤の存在下で反応させる通常のポリウレタンの製造方法によって得ることができる。
【0013】
本発明で使用するポリウレタンの製造に使用するRf基を有する片末端ジオールは、次の工程によって製造する。
イ)先ず、活性水素基(例えば、水酸基)を有するフッ素含有化合物(1)と、ジイソシアネート(2)とをNCO/OH≒2で反応させ、分子中に1個の遊離イソシアネート基を有するフッ素含有化合物(3)を得る。
ロ)次に上記のフッ素含有化合物(3)と、ジアルカノールアミン(4)とを50℃以下の温度で、イソシアネート基に対するアミノ基と水酸基との反応性の差を利用し、選択的にイソシアネート基とアミノ基とを反応させることにより、下記一般式(A)で表わされるRf基を有する片末端ジオールを得ることができる。
【0014】
Figure 0004212247
【0015】
本発明で使用するフッ素含有化合物としては、例えば、次の如き化合物が挙げられる。
【0016】
Figure 0004212247
【0017】
Figure 0004212247
【0018】
上記のエポキシ化合物はポリオール、ポリアミド、ポリカルボン酸などの活性水素含有化合物と反応させて末端水酸基を有するようにして使用する。
【0019】
Figure 0004212247
【0020】
Figure 0004212247
【0021】
以上列記した活性水素基を有するフッ素含有化合物は、本発明において使用する好ましい化合物の例示であって、本発明においてはこれらの例示に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他公知の現在市販されており市場から入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用できる。本発明において特に好ましいフッ素含有化合物は、前記例示のアルコールタイプのフッ素含有化合物である。
【0022】
本発明で使用するジイソシアネートとしては、従来公知のものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、好ましいものとして、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、あるいはこれらのジイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0023】
さらに、本発明で使用するジアルカノールアミンとしては、下記の一般式で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 0004212247
【0024】
好ましいものとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジヘキサノールアミン、1−アミノプロパングリコール、ジエタノールアミノメチルアミン、ジエタノールアミノエチルアミン、ジエタノールアミノプロピルアミンなどが挙げられる。
【0025】
前記の一般式(I)で表わされるRf基含有ジオールの製造方法についてさらに具体的に説明する。
先ず、前記活性水素基を有するフッ素含有化合物と前記ジイソシアネートとを、反応生成物が分子中に1個の遊離イソシアネート基を有する当量比(NCO/OH≒2)で、無溶剤下または有機溶剤下、通常のポリウレタン重合触媒(例えば、有機金属、第三級アミンなど)の存在下または不存在下で、0〜150℃、好ましくは20〜90℃で反応させる。
【0026】
次に、50℃以下、好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下の温度で、前記のジアルカノールアミン中に上記の1個の遊離イソシアネート基を有するフッ素含有化合物を滴下する。
この条件下では、イソシアネート基は、水酸基よりも先にアミノ基と選択的に反応し〔Ann.Chem.,562,205(1949)参照〕、前記の一般式(I)で表されるRf基を有する片末端ジオールが得られるとともに、低温下では反応の進行に伴い、生成物は有機溶剤中で一部結晶として析出してくる。反応終了後、反応混合液を水、トルエン、キシレン、n−ヘキサンなどの貧溶媒中に注入して反応生成物の結晶を析出させる。
【0027】
析出した結晶を常温で貧溶媒(芳香族・脂肪族炭化水素など)で洗浄することにより、未反応のジイソシアネートやジアルカノールアミンを除去することができ、前記一般式(I)で表されるRf基を有する高純度の片末端ジオールが得られる。
本発明で使用するフッ素含有ポリウレタンは、上記の反応で得られた一般式(I)で表わされるRf基含有ジオールと、前記のジイソシアネートとジオールおよび/またはジアミンとを反応させることにより得ることができる。
【0028】
ジオールとしては、ポリウレタンの製造に従来から使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールなどの低分子グリコール類;アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸などの二塩基酸とグリコール類とから得られるポリエステルジオール類;ラクトン類をグリコール類で開環重合させて得られるポリラクトン類のポリエステルジオール類;ポリカーボネートジオール類;ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルジオール類などが挙げられる。
【0029】
ジアミンとしては、ポリウレタンの製造に従来から使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン;シクロペンタジアミン、シクロヘキシルジアミンなどの脂環式ジアミンが挙げられる。鎖延長剤は、上記の低分子量ジオールまたはジアミンであり、ポリウレタンの製造に従来から使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。
【0030】
これらの成分を用い、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることによってフッ素含有ポリウレタンが得られる。本発明で使用するポリウレタンの製造方法は、前記の一般式(I)で表されるRf基含有ジオールと、ジイソシアネートと、ジオールおよび/またはジアミンとを、必要により鎖延長剤とともに反応させることにあり、製造方法は特に限定されない。また、反応形態も特に限定されず、塊状、溶液状、分散状などのいずれの反応形態でもよい。さらに、ジオール、ジアミン、およびジイソシアネートは、得られるフッ素含有ポリウレタンの使用目的や要求性能に適した組合せを選択すればよく、特に限定されない。
【0031】
f基含有ジオールを用いて得られるフッ素含有ポリウレタンは、前記のフッ素含有側鎖が、ポリウレタン分子にR1とR2を介してウレタン結合(−NH−CO−O−)および/またはウレア結合(−NH−CO−NH−)で結合したものであり、ジオールを使用した場合にはポリウレタンが、ジアミンを用いた場合にはポリウレアが、ジオールとジアミンとを併用する場合にはポリウレタン−ポリウレアが得られる。
【0032】
ポリウレタン分子中の上記のフッ素含有側鎖の含有量は、ポリウレタン分子中のRf基に基づくフッ素含有量として3〜80重量%を占めるものが好ましい。3重量%未満ではRf基に基づく表面エネルギーに伴う機能の発現が不十分となる。また、80重量%を超えるとポリウレタンの本来の耐磨耗性、機械的強度などの性能が不十分となるので好ましくない。好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは5〜25重量%である。
【0033】
さらに本発明の別の実施形態として、上記フッ素含有ポリウレタン中に、さらに少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサンから誘導されたポリシロキサンセグメントを、ポリウレタン分子中のポリシロキサンセグメント含有量として1〜75重量%となる量で含有するフッ素含有ポリウレタンを用いて背面層を形成する。
【0034】
本発明で使用するポリシロキサンは、分子中に少なくとも1個の活性水素基、例えば、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基やカルボキシル基などを有するポリシロキサンであり、その好ましい例としては、例えば、下記の如き化合物が挙げられる。
【0035】
Figure 0004212247
【0036】
Figure 0004212247
【0037】
Figure 0004212247
【0038】
Figure 0004212247
【0039】
Figure 0004212247
【0040】
以上列記した活性水素基を有するポリシロキサンは、本発明において使用する好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。本発明において特に好ましい化合物は、少なくとも1個の水酸基またはアミノ基を有するポリシロキサンである。
【0041】
f基を有する片末端ジオールと、分子中に少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサンと、前記の他のポリウレタン構成成分とを用いて得られるフッ素およびケイ素含有ポリウレタンは、主鎖中に従来のポリウレタンと同様のジイソシアネートから誘導されたセグメントと、ジオールおよび/またはジアミンとから誘導されたセグメントとともに、前記の一般式(I)で表わされるフッ素含有ジオールから誘導されたフッ素含有側鎖が、ポリウレタン分子にR1とR2を介してウレタン結合および/またはウレア結合で結合し、上記ポリシロキサンから誘導されたポリシロキサンセグメントが、主鎖にウレタン結合および/またはウレア結合で結合したポリウレタンである。
【0042】
また、ポリウレタン分子中のポリシロキサンセグメントの含有量は、分子中のシロキサン含有量が1〜75重量%となる量であることが好ましい。1重量%未満ではポリシロキサンセグメントに基づく表面エネルギーに伴う機能の発現が不十分となる。また、75重量%を超えるとポリウレタンの本来の耐磨耗性、機械的強度などの性能が不十分となるので好ましくない。好ましくは3〜50重量%であり、より好ましくは5〜20重量%である。
【0043】
また、以上の如き本発明で使用するフッ素含有ポリウレタン(以下、さらにポリシロキサンセグメントを含む場合も意味する)には、有機溶剤に溶解した溶液、水に分散させた状態のもの、固形分100重量%のペレット状などで使用することができる。
【0044】
本発明で使用するフッ素含有ポリウレタンは、その使用目的によって好ましいフッ素含有量およびポリシロキサン含有量は異なるので、使用目的に適したフッ素含有量およびポリシロキサン含有量とすることが望ましい。
【0045】
また、本発明で使用するフッ素含有ポリウレタンの重量平均分子量(GPCで測定し、標準ポリスチレン換算の)は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは30,000〜150,000である。
【0046】
本発明の感熱記録材料は、前記フッ素含有ポリウレタンを使用する以外は、従来公知の方法で製造され、製造方法自体は特に限定されない。また、基材シート、感熱記録層形成材料などの背面層形成材料以外の材料も特に限定されない。本発明における背面層は、上記のフッ素含有ポリウレタンの溶液を従来公知の塗布手段で基材シート上に、乾燥厚さが0.01〜1μm程度となるように塗布し、乾燥して被膜とすることにより形成される。本発明においては、上記のフッ素含有ポリウレタンからなる被膜は、そのままで使用することができるが、架橋剤を用いて架橋被膜として使用することもできる。
【0047】
架橋剤としては、ポリウレタンの架橋に使用されている従来公知の架橋剤が使用でき、特に限定されない。例えば、下記のような構造式のポリイソシアネートと他の化合物との付加体などが挙げられる。
【0048】
Figure 0004212247
【0049】
また、背面層の形成に際しては、基材シートに対するコーティング適性や、成膜性などを向上させるために、従来公知の各種バインター樹脂を混合して使用することができる。バインダー樹脂は上記のポリイソシアネート付加物などの架橋剤と化学的に反応し得るものが好ましいが、反応性を有していないものでも本発明では使用することができる。
【0050】
これらのバインダー樹脂としては、背面層の形成に従来から用いられているバインダー樹脂が使用でき、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂、変性セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂などを使用することができる。また、各種樹脂をシリコーンやフッ素で変性した樹脂なども使用することができる。これらのバインター樹脂を併用する場合、その使用量は本発明のフッ素含有ポリウレタンに対して5〜90重量%である。
【0051】
本発明の感熱記録材料における背面層には、フッ素原子(およびシロキサンセグメント)が表面に配向することから、フッ素原子(およびシロキサンセグメント)の持つ耐熱性、滑り性、サーマルヘッドへの非粘着性が付与されると共に、ポリウレタンの主鎖部分が基材シートと界面で強く相互作用することにより、背面層に、基材に対する優れた接着性や可撓性が付与され、本発明により優れた性能を兼ね備えた感熱記録材料が提供される。
【0052】
【実施例】
次に参考例、重合例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の各例における「部」および「%」は特に断りのない限り重量基準である。
【0053】
参考例1[フッ素含有ジオール(I−A)の合成]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流凝縮器を備え、窒素置換した反応容器中で、トルエン−2,4−ジイソシアネート17.4部を酢酸エチル50部に溶解し、60℃に加温してよく攪拌しながら、46.4部の粉末状の2−(パーフルオロオクチル)エタノールを徐々に添加し、添加終了後80℃で3時間反応させパーフルオロアルキル基含有片末端イソシアネート(A)を得た。
次に、ジエタノールアミン10.5部を酢酸エチル10部に10℃以下の温度で攪拌しながら混合し、この溶液中に上記化合物(A)の溶液を滴下する。(A)の溶液の滴下とともに発熱反応が見られるが、内温が20℃を越えないように徐々に滴下する。反応の進行とともに不均一溶液は均一となる。滴下終了後、室温(25℃)で2時間反応を続ける。
反応終了後、反応生成物を、反応液中にトルエンを加えて析出させた後乾燥させ、下記式で表わされるフッ素含有ジオール(I−A)の白色粉末を得た(収率95%、融点145℃、水酸基価148)。
【0054】
Figure 0004212247
【0055】
参考例2[フッ素含有ジオール(I−B)の合成]
参考例1で用いたトリレンジイソシアネートの代わりに、イソホロンジイソシアネートを同じ当量で、そして2−(パーフルオロオクチル)エタノールの代わりに2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノールを同じ当量で用い、他は参考例1と同様にして、下記構造式を有するフッ素含有ジオール(I−B)の白色粉末を得た(収率95%、融点132℃、水酸基価138)。
【0056】
Figure 0004212247
【0057】
参考例3[フッ素含有ジオール(I−C)の合成]
参考例2で用いたジエタノールアミンの代わりに、ジエタノールアミノプロピルアミンを同じ当量で、そして2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノールの代わりに、2−(パーフルオロデシル)エタノールを同じ当量で用い、他は参考例2と同様にして、下記構造式を有するフッ素含有ジオール(I−C)の白色粉末を得た(収率95%、融点153℃、水酸基価115)。
【0058】
Figure 0004212247
【0059】
参考例4[フッ素含有ジオール(I−D)の合成]
参考例2で用いた2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノールの代わりに、2−(パーフルオロオクチル)エタノールを同じ当量で用い、他は参考例2と同様にして、下記構造式を有するフッ素含有ジオール(I−D)の白色粉末を得た(収率95%、融点132℃、水酸基価138)。
【0060】
Figure 0004212247
【0061】
重合例1〜3(ポリウレタンの製造)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流凝縮器を備えた反応容器を窒素置換し、これに下記表1−1に記載のフッ素含有ジオール、フッ素を含有しないポリマージオールおよびフッ素を含有しないジオールを加え、固形分が35%になるようにジメチルホルムアミドを加え均一に溶解した。次に、表1−1に記載のジイソシアネートを所定当量加え、80℃の温度で所定の溶液粘度になるまで反応させた。得られた3種のフッ素含有含有ポリウレタンの性状は下記表1−1に記載の通りである。
【0062】
Figure 0004212247
【0063】
(注)表1〜2において共通
*1:ポリオキシテトラメチレングリコール(分子量2,000)
*2:ポリカーボネートジオール(分子量2,000)
*3:ポリカプロラクトンポリオール(分子量2,000)
*4:1,4−ブチレングリコール
*5:4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)
PU:ポリウレタン
【0064】
重合例4〜6(ポリウレタンの製造)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流凝縮器を備えた反応容器を窒素置換し、これに上記のフッ素含有ジオール(I−A、I−C、I−D)、下記のポリシロキサン(2−A、2−B、2−C)、下記表1−2に記載のフッ素およびポリシロキサンを含有しないポリマージオールおよびフッ素およびポリシロキサンを含有しない低分子量ジオールを表1−2に記載の割合で加え、固形分が35%になるようにジメチルホルムアミドを加え均一に溶解した。次に、表1−2に記載のジイソシアネートを所定当量加え、80℃の温度で所定の溶液粘度になるまで反応させた。得られた3種のフッ素およびケイ素含有ポリウレタンの性状は下記表1−2に記載の通りである。
【0065】
Figure 0004212247
【0066】
Figure 0004212247
【0067】
比較重合例1〜3(ポリウレタンの製造)
下記のフッ素含有ジオール化合物(I−A’、I−B’)を使用する以外は上記の重合例1〜3と同様にして2種のフッ素含有ポリウレタンを製造した(比較例1、2)。また、フッ素含有ジオールを用いないポリウレタンを製造した(比較例3)。これらのポリウレタンの性状は下記表2−1の通りである。
【0068】
Figure 0004212247
【0069】
Figure 0004212247
【0070】
比較重合例4〜6(ポリウレタンの製造)
前記のフッ素含有ジオール(I−A’、I−B’)を使用する以外は上記の重合例4〜6と同様にして2種のフッ素含有ポリウレタンを製造した(比較例4、5)。また、フッ素含有ジオールを用いないポリウレタンを製造した(比較例6)。これらのポリウレタンの性状を下記表2−2に示す。
【0071】
Figure 0004212247
【0072】
なお、以上の重合例において、ポリウレタン中のフッ素含有量はイオンクロマトアナライザー(横河北辰電気社製)を用い、また、ポリシロキサンセグメント含有量はJIS K0117の赤外分光分析法に従って測定した。溶液粘度はB型粘度計を用いて25℃で測定した。重量平均分子量はGPCで測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。また、物性はJIS K6301に従って測定した。
【0073】
実施例1〜6および比較例1〜6
重合例1〜6および比較重合例1〜6で調製したポリウレタン溶液(固形分35%)をそれぞれ用い、グラビア印刷により、厚み3.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製)の表面に、乾燥後の厚みが0.3μmになるように塗布した後、乾燥機中で乾燥して基材シート表面に耐熱滑性背面層を形成した。
【0074】
比較例7
シリコーン樹脂(信越化学製、KS−841)100部と触媒(信越化学製、PL−7)1部とをトルエン1,000部に溶解してシリコーン樹脂の塗料組成物を作製し、上記と同様にして基材シート上に背面層を形成した。
【0075】
次に、以上のようにして形成した背面層の反対側の基材フィルム面に、下記の組成のインキ組成物を100℃に加熱して、ホットメルトによるロールコート法にて塗布厚みが5μmになるように塗布して、転写インキ層を形成し、実施例1〜6および比較例1〜7のポリウレタンを用いた本発明および比較例の感熱転写材料を得た。
(インキ組成物)
・パラフィンワックス 10部
・カルナバワックス 10部
・ポリブテン(日本石油製) 1部
・カーボンブラック 2部
【0076】
以上のようにして得られた感熱記録材料のサンプルをそれぞれ用い、薄膜型サーマルヘッドで、印字エネルギー;1mJ/ドット(4×10-4/cm2)の条件で印字を行った。この時のスティッキング性、ヘッド汚染性、接着性および静止摩擦係数を観察および測定して評価を行った。ここで、スティッキング性は、感熱記録の実装試験に供した場合のサーマルヘッドと感熱記録材料との間の押圧操作時における、感熱記録材料のサーマルヘッドからの離脱性を目視で評価し、最も離脱性の良いものを5とし、最も離脱性の悪いものを1とする5段階評価を行った。
【0077】
また、サーマルヘッドの汚れは、感熱記録の実装試験に供した場合のサーマルヘッドの汚れの状態を観測し、最も汚れの少ないものを5とし、最も汚れのひどいものを1とする5段階評価を行った。
接着性試験は、背面層の碁盤目セロテープ剥離試験を行って評価した。また、静止摩擦係数は耐熱滑性背面層を表面性試験機(新東科学製)で評価した。
以上の評価結果を表3に示す。
【0078】
Figure 0004212247
【0079】
他の実施例
なお、参考例1において、2−(パーフロロオクチル)エタノールに代えて、下記のフッ素含有アルコール1〜8をそれぞれ使用し、以下参考例1と同様にしてそれぞれに対応するフッ素含有ジオールを得た。また、得られたフッ素含有ジオールを用いて重合例1および4と同様にしてそれぞれに対応するフッ素含有(ポリシロキサン含有)ポリウレタンを得た。得られたフッ素含有(ポリシロキサン含有)ポリウレタンを用いて実施例1および4と同様にして、各種物性に優れた本発明の感熱記録材料を得た。
【0080】
Figure 0004212247
【0081】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、背面層を、特定のポリウレタンを用いて形成することによって、耐熱性、可撓性および接着性に優れ、かつサーマルヘッドに対する滑り性に優れ、さらにサーマルヘッドが粘着しない感熱記録材料が提供される。

Claims (15)

  1. 基材シートと、該基材シートの一方の面に設けた感熱記録層および他の面に設けた背面層とからなる感熱記録材料において、該背面層が下記一般式(I)で表されるフッ素含有ジオールから誘導された側鎖を有するポリウレタンからなることを特徴とする感熱記録材料。
    Figure 0004212247
  2. 一般式(I)で表されるフッ素含有化合物のR1およびR2が、炭素数2〜4のメチレン基であり、Yが酸素原子であり、該フッ素含有化合物が、R1およびR2を介してポリウレタンの主鎖にウレタン結合で結合している請求項1に記載の感熱記録材料。
  3. 一般式(I)のRf−X−Y基が、下記の少なくとも1種の化合物の水酸基から水素を除いた基である請求項1に記載の感熱記録材料。
    Figure 0004212247
  4. Z−N(R1OH)(R2OH)基が、下記式のZ0に結合した活性水素基から水素を除いた基である請求項1に記載の感熱記録材料。
    Figure 0004212247
  5. 一般式(I)で表される側鎖の含有量が、ポリウレタン分子中のフッ素含有量が3〜80重量%となる量である請求項1に記載の感熱記録材料。
  6. フッ素含有量が、5〜50重量%である請求項5に記載の感熱記録材料。
  7. フッ素含有量が、5〜25重量%である請求項6に記載の感熱記録材料。
  8. ポリウレタンが、さらに少なくとも1個の活性水素基を有するポリシロキサンから誘導されたポリシロキサンセグメントを、1〜75重量%となる量で含有する請求項1に記載の感熱記録材料。
  9. ポリシロキサンの活性水素基が、水酸基またはアミノ基である請求項8に記載の感熱記録材料。
  10. ポリシロキサンセグメント含有量が、3〜50重量%である請求項8に記載の感熱記録材料。
  11. ポリシロキサンセグメント含有量が、3〜20重量%である請求項10に記載の感熱記録材料。
  12. ポリウレタンの重量平均分子量が、5,000〜500,000である請求項1に記載の感熱記録材料。
  13. 重量平均分子量が、50,000〜150,000である請求項12に記載の感熱記録材料。
  14. 背面層が、さらに他の樹脂を含む請求項1に記載の感熱記録材料。
  15. 背面層が、ポリイソシアネートで架橋された被膜である請求項1に記載の感熱記録材料。
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