JP4212155B2 - ワイヤソー用スラリータンク - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、インゴットをウェーハにワイヤソーでスライシングする際、砥粒が均一分散したスラリーをスライシング領域に供給するスラリータンクに関する。
【0002】
【従来の技術】
引上げ法等で製造したインゴットは、トップ及びテールを切断分離した後、外径研削,オリエンテーションフラット加工等の工程を経て所定厚みのウェーハにスライスされる。スライシングには、内周刃を備えたスライサーが知られているが、最近ではウェーハの大径化に伴ってピアノ線等のワイヤソーによる切断が採用されるようになってきた。
ワイヤソー切断装置は、一般的には図1に示すように3本のグルーブローラ1〜3を備えており、そのうちの1本が駆動モータ4に連結されている。グルーブローラ1〜3に複数回周回させることにより構成したマルチワイヤ5は、一方のワイヤリール6から巻き出され、他方のワイヤリール7に巻き取られる。マルチワイヤ5には、引っ張られた状態でローラ1〜3を周回するようにテンショナー8で張力が付与される。
【0003】
スライスされるインゴット9は、接着治具を介してホルダー10に装着されてグルーブローラ1と2の間に配置され、マルチワイヤ5により複数のウェーハにスライスされる。このとき、スライシング作業を円滑に行わせるため、マルチワイヤ5にスラリー11が供給される。スラリー11は、スラリータンク12から供給管13を経てノズル14からマルチワイヤ5に供給された後、パン15で回収され、スラリータンク12に返送される。また、スラリー11を冷却するため、熱交換器16とスラリータンク12との間でスラリー11を循環させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
スラリー11は、切断中のインゴット9及びワイヤ5を冷却する油性又は水溶性のクーラントに炭化ケイ素,コランダム,シリカ,ジルコニア等の砥粒を添加し懸濁させることにより用意される。しかし、調合された砥粒は、クーラントに均一分散されず、凝集物(いわゆる「ダマ」)になることがある。
凝集物を含んでいるクーラントをスラリー11として循環させると、フィルタを目詰りさせ、供給管13,ノズル14等が部分的に又は一時的に閉塞しやすくなる。目詰りや閉塞が生じると、切断域へのスラリー11の供給が不均一化し、正常なワイヤソー切断が阻害され、スライシングで得られるウェーハの品質が劣化する。また、複数個の砥粒が塊状に集合した凝集物がインゴット9とワイヤ5との間に送り込まれ、切り込み量が局部的に変動し、ウェーハの平坦度を劣化させる原因にもなる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、クーラントへの配合に際し砥粒を個々の粒子に分断する機能をスラリータンクに付与することにより、スラリー中に砥粒の凝集物が生じることを抑え、スラリーの安定供給を可能にし、一定した品質のウェーハを切り出すことを目的とする。
本発明のワイヤソー用スラリータンクは、その目的を達成するため、タンク本体に収容されたクーラントを攪拌するインペラーと、タンク本体の開口部に配置された砥粒投入用のホッパーと、ホッパーとタンク本体の内部を仕切るシャッターと、シャッターの下方に配置された固定篩と、固定篩の下方に配置された振動篩とを備え、タンク本体に投入される砥粒が振動篩を通過する際に解砕されることを特徴とする。
このスラリータンクは、調合専用のタンク或いはワイヤソー切断装置のスラリー循環系に組み込まれたタンクの何れであっても良い。スラリー循環系に組み込まれるタンクでは、タンク本体とワイヤソーとの間にノズルを備えた供給管を配し、ワイヤソーからのスラリーを回収するパンが接続される。
スラリータンク内への塊状砥粒の侵入を確実に防止する上では、インペラーを回転させる攪拌用モータ及び振動篩を振動させる加振用モータの双方が稼動しているときに開放されるようにシャッターの開閉をプログラムすることが好ましい。
このように砥粒が均一分散したスラリーは、半導体ウエーハ,ガラス基板,セラミックス基板等の各種ウエーハをインゴット等のブロック体から切り出す際に使用される。また、ラッピング等の多の研磨装置にも適用できる。
【0006】
【実施の形態】
本発明者等は、スラリー中に懸濁している砥粒の分散状態について種々調査検討し、複数の砥粒粒子が集合した凝集物が生じ易い条件を調査した。凝集物は、砥粒とクーラントが均一に混合されない場合に凝集物が発生しやすく、一旦発生すると通常の攪拌を長く続けても個々の砥粒粒子に解砕されない。このような凝集物の発生は、クーラントに砥粒を添加するときの砥粒の状態が大きく影響しており、分散度が進んだ状態で砥粒を添加することによって効果的に抑制されることを見出した。
そこで、本発明においては、スラリータンクに砥粒を個々の粒子に分断する機能をもたせている。
具体的には、図2に示すように砥粒投入用のホッパー21を上部に設けたスラリータンク12に加振用モータ22を付設している。ホッパー21は、シャッター23を底部に備えている。シャッター23の下方には、図3の断面に示すように固定篩24が配置され、更にその下方に振動篩25が配置されている。振動篩24は、リンク26を介して加振用モータ22の出力軸に連結されている。固定篩24及び振動篩25としては、網目サイズが3〜7mm程度のメッシュが使用される。なお、スラリータンク12には、インゴット9の切断に使用されたスラリー11を回収するパン15からのスラリー回収系が内部に開口しているが、図2,図3においてはスラリー回収系を省略している。
【0007】
クーラントとしては、鉱油をベースにした油性クーラントが通常使用されているが、種々の成分をもつ水性クーラントも使用できる。クーラントに、粒径が5〜30μm程度で炭化ケイ素,コランダム,シリカ,ジルコニア等の砥粒を調合することによってスラリー11が調整される。スラリーは、スラリータンク21内で調合されるが、別途の調合専用タンクを用いて調合することもできる。調合済みのスラリーを使用する場合、ホッパー21から供給される砥粒28は、切断に消費された量を補う追加的な量に定められる。
砥粒28は、ホッパー21に投入され、傾斜面27に沿って流下し、固定篩24及び振動篩25を経てスラリータンク12内のクーラントに添加される。砥粒添加時に加振用モータ22を駆動させ、図3に矢印で示す方向に沿って振動篩25を振動させる。振動周期は、たとえば5〜20mmのストローク,毎秒0.5〜2サイクルの範囲で設定される。振動篩25を通過する砥粒28は、振動篩25で加えられる振動により個々の粒子に分断される。
【0008】
このようにして、複数個の粒子が集合した状態ではなく、個々の粒子が分断された粒状化状態で砥粒28が添加される。他方、砥粒28が添加されるスラリー11は、攪拌用モータ29(図2)に連結されているインペラー30(図1)で攪拌されている。したがって、スラリー11に投入された砥粒28は、スラリー11内の一部に滞留することなく分散されるため、凝集化が防止される。
シャッター23は、不用意に砥粒28が投入されることを防止するため、好ましくは加振用モータ22及び攪拌用モータ29が駆動しているときのみに開放される。そのためには、加振用モータ22及び攪拌用モータ29から駆動状態を表す信号を制御装置に送り、双方のモータ22,29からの信号があるときにシャッター23を開放する信号を発するプログラムに従ってシャッター23の回閉動作を制御することが好ましい。
【0009】
個々の粒子として砥粒28が投入されたスラリー11は、凝集物がないため供給管13,ノズル14,フィルタ等に目詰りを起こすことなく、スライシングされているインゴット9の加工域に均一供給される。したがって、一定化した条件下でインゴット9がスライシングされ、品質安定性に優れたウェーハが切出される。また、スラリー供給系に目詰りがないため、メンテナンスも容易になる。
たとえば、平均粒径20μmの炭化ケイ素を砥粒28として油性クーラントに100g/l/分の割合で添加した。このとき、砥粒28の流動経路に5mmの網目をもつ固定篩24及び振動篩25を配置し、振動篩25を15mmのストローク,1サイクル/秒で振動させた。この条件下で砥粒28を配合したスラリー11を用いてインゴット9をスライシングしたところ、供給管13やノズル14の目詰りに起因したスラリー供給の不安定化は10時間スライシングを継続した時点でも検出されなかった。また、供給管13を循環しているスラリー11をサンプリングして砥粒の懸濁状態を調査したところ、30μmを超える大きな凝集物が検出されなかった。
【0010】
比較のため、振動付与しない他は同じ条件下でスラリー11を調製し、スラリー11を循環させながらインゴット9をスライシングした。この場合、切断作業開始から2時間経過した時点までノズル14から噴出されるスラリー11に脈流が検出された。また、インゴット9から切り出されたウェーハも、切断作業の時間経過に伴って平坦度や表面粗さが劣化する傾向がみられた。
この対比から明らかなように、砥粒28に振動を加えて個々の粒子に分断した状態でスラリー11に投入するとき、砥粒28の均一分散が図られ、安定条件下でのスライシングが可能になることが確認された。
【0011】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のスラリータンクは、分散度が進んだ解砕状態の砥粒をクーラントに添加してスラリーを調製しているため、多数の粒子が集合した砥粒の塊状凝縮物がスラリー中に懸濁することがなくなる。そのため、ノズルを始めスラリー供給系に閉塞等のトラブルを発生させることなく、ワイヤソーによるインゴット切断作業域に一定流量のスラリーが安定供給される。したがって、インゴットのスライシングも安定化し、品質安定性に優れたウェーハが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ワイヤソー切断装置の概略図
【図2】 本発明に従ったスラリータンクの斜視図
【図3】 スラリータンクの要部断面図
【符号の説明】
1〜3:グルーブローラ 4:駆動モータ 5:ワイヤ 6,7:ワイヤリール 8:テンショナー 9:インゴット 10:ホルダー
11:スラリー 12:スラリータンク 13:供給管 14:ノズル 15:パン 16:熱交換器 21:ホッパー 22:加振用モータ 23:シャッター 24:固定篩 25:振動篩
26:リンク 27:傾斜面 28:砥粒 29:攪拌用モータ
30:インペラー
Claims (2)
- タンク本体に収容されたクーラントを攪拌するインペラーと、タンク本体の開口部に配置された砥粒投入用のホッパーと、ホッパーとタンク本体の内部を仕切るシャッターと、シャッターの下方に配置された固定篩と、固定篩の下方に配置された振動篩とを備え、タンク本体に投入される砥粒が振動篩を通過する際に解砕されることを特徴とするワイヤソー用スラリータンク。
- インペラーを回転させる攪拌用モータ及び振動篩を振動させる加振用モータの双方が稼動しているときに開放されるようにシャッターの開閉がプログラムされている請求項1記載のワイヤソー用スラリータンク。
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