JP4212072B2 - 筆記具用キャップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを内蔵する万年筆、水性ボールペン、サインペン等の筆記具用キャップに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、筆記具の首部にキャップを嵌着したとき、ペン先からインクが乾燥しないように、首部外周面をキャップ口元内面や内キャップ等に微妙に当てて圧入しペン先部を密閉し気密を保っていた。また、密閉状態のキャップから首部を引き抜くときは、急激な負圧が生じるためインク漏れが起きることがあったが、その防止もこの微妙な圧入によっていた。しかし、この微妙な圧入をする首外径や圧入位置を出すためのキャップや首部材の製作および組立は、首部が円筒状でなく軸方向に先細状の曲面をなしているので厳格な寸法精度が要求され、その結果、部品製作がきわめて困難なのが実態であった。このため、気密を重視すれば首部引き抜き時の負圧が大きくなってインク漏れが生じ、前記負圧を重視すれば気密が弱くなってインク蒸発の問題が生じてしまうという、気密と負圧を同時に確実に満足させることが極く少数の熟練者のみの領域となってしまい、この解決が業界の強い要望であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記欠点を解決すること、すなわちキャップや首部材の外径や位置決め等の寸法精度を緩和して部品製作や部品組立を容易化しても、首部嵌合時にはペン先部が確実に気密化できてインクの蒸発を防止できるとともに、首部離脱時には急激な気圧変化を抑制して負圧状態での引き抜きがなくなりインク漏れが防止できるという、両者の要望を同時に満足できる筆記具用キャップをその目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題の解決手段として、筆記具用キャップを、ペン先を有する筆記具の首部を挿入するよう一端が開口した外キャップの内部に、一端が開口し底部に空気孔を有する有底筒状の内キャップを備えた筆記具用キャップであって、前記内キャップの空気孔と該内キャップ内とを連通させる空気通路を設けた衝止部を一端側に有するストッパーの他端部に、前記外キャップに固定した内キャップ取付具の一端部を前記内キャップの空気孔との間に間隙を設けて固定し、前記内キャップと前記内キャップ取付具との間にコイルスプリングを装着して当該内キャップの底部が前記ストッパーの衝止部に衝止するまで移動可能に付勢し、前記内キャップ取付具に前記内キャップが当接する係止部を形成して該内キャップの内方への移動を規制し、前記内キャップに筆記具の首部外周面を圧接する環状弾性部材を設けると共に、前記内キャップ取付具に前記内キャップ底外面を圧接する第2の環状弾性部材を設けることにより、前記キャップに筆記具の首部を嵌合するときには、筆記具の首部で前記内キャップを前記コイルスプリングの弾発に抗して当該内キャップが前記内キャップ取付具の係止部にて停止するまで押動して内方へ移動させ、前記内キャップに設けた環状弾性部材を前記首部外周面にて圧接変形させシールし且つ前記内キャップ底外面の空気孔外周部にて前記内キャップ取付具に設けた第2の環状弾性部材を圧接変形させシールして前記両環状弾性部材間を気密空間とし、前記キャップから筆記具の首部を外すときには、前記コイルスプリングの弾発により前記内キャップ底外面が前記第2の環状弾性部材から離間した後に前記内キャップの内面に設けた環状弾性部材から筆記具の首部を引き抜くようにしてなる、構成とした。
【0005】
【発明の実施の態様】
本発明は、この構成により、筆記具の首部をキャップに挿入すると、首部で内キャップを押動しつつ外キャップ内をともに内方へ移動して、首部外周面を環状弾性部材に圧接し変形させ、かつ内キャップ底外面の空気孔外周部を第2の環状弾性部材に圧接し変形させることによって、ペン先部を収納した両環状弾性部材間を気密空間とし、インク乾燥をほぼ完全に防止できるようにした。
【0006】
また、筆記具の首部を本発明のキャップから外すため両者の係合等を外すと、内キャップはコイルスプリングにより首部とともに内キャップの底部がストッパーの衝止部に衝止するまで開口側へ移動する。この状態で、第2の環状弾性部材は内キャップ底外面の空気孔外周部から離れるので、空気が内キャップの空気孔より進入してペン先部を収納した内キャップの内部が気密空間から大気連通状態へと変わり、この状態で首部を内キャップから引き抜いても急激な負圧変化は起こらず、ぺン先からインクが漏れることはない。
【0007】
なお、本発明は万年筆、ボールペン、繊維ペン等のインクを内蔵する筆記具の全てに適用でき、2つの環状弾性部材はフィン状、溝付き山形状、中空状のもの等が使用でき、材質としては各種の合成ゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム等弾性変形するものが使用できる。ストッパーはコイルスプリングによる内キャップの開口側への移動を止める構造ならいずれも使用できる。また、ストッパーに係止部を形成することで、内方へ移動する内キャップの停止位置を正確に出せるため、移動位置の寸法管理を厳密にせず多少の誤差があっても、内キャップ内の過度の加圧を防ぐことができる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明による実施例を図面により説明するが、本発明はこの実施例に限定するものではない。筆記具用キャップ1はペン先を有する首部2を装着するものであって、一端が開口した外キャップ3と空気孔4を有する有底筒状の内キャップ5を備え、外キャップ3の他端部にはクリップ8の固定部を重ね、それらを頭栓6と内キャップ取付具7で挟んで固定してある。内キャップ取付具7の一端部にはストッパー10の他端部を固定してあり、ストッパー10はその他端部を内キャップ5の空気孔4と内キャップ取付具7の一端部との間に間隙を有して挿入し、その一端側の先端部に空気通路9aを有する衝止部9を形成している。内キャップ取付具7の外周部と内キャップ5の段部の間にはコイルスプリング11を装着して内キャップ5をその底内面がストッパー10に衝止するまで移動するよう付勢してある。
【0009】
内キャップ取付具7のコイルスプリング11を受ける部分より内周部には、溝付き山形状の第2の環状弾性部材12を取付けてあり、内キャップ5が外キャップ3の内方(図で左方)へ移動すると、この第2の環状弾性部材12が内キャップ5底外面の空気孔4外周部に圧接し変形してシールし、さらに内キャップ5が開口側へ移動し内キャップ5の底部がストッパー10の衝止部9で止まったとき、第2の環状弾性部材12が内キャップ5の底外面より僅かに離れて内部と大気連通するようにしてある。
【0010】
内キャップ5の開口部は、図5に示すように僅かに小径にし、かつ開口端に開放する軸方向のスリットを入れて2つの舌片13からなる小径部を設けてある。また、舌片13より内方部分(図で左方)には薄肉金属筒よりなる保持部材14の他端部を、外面が内キャップ5の外面とほぼ面一となるよう固着し、その一端部を内キャップ5の開口端より突出させ、その先端部に内方へのフィン状をなす環状弾性部材15を設けて、首部2の外周面に圧接され変形しペン先を収納する内部をシールするようにしてある。なお、保持部材14と舌片13の間には間隙gを設けて舌片13が僅かに揺動できるようにしてある。
【0011】
外キャップ3の開口部には周知のバネカツラ16を取付けて、首部外周面および胴後端部に弾力圧接して装着できるようにしてある。なお、外キャップ3の外端部には係合部17を設けて首部2の係合部18と係脱可能としてある。また、内キャップ取付具7は、第2の環状弾性部材12の先端縁より僅か内方(図で左方)箇所に段差を設けて係止部19として、内キャップ5の内方への移動を停止させる。このため、係合部17,18等各部品を厳密とせずに多少の誤差があっても、確実に所定位置で止めることができるので、気密化した両環状弾性部材12,15間内を過度に加圧しないようにしてある。
【0012】
非筆記時において首部2を筆記具用キャップ1に嵌合するには、図1のように首部2の先端部を外キャップ3内に挿入し、首部2の先端角部で内キャップ5の開口端部をコイルスプリング11の弾発に抗しつつ押圧して外キャップ3内をともに内方(図で左方)へ移動し、首部2の係合部18が外キャップ3の係合部17に係合して停止し、図2を経て図3のようになる。この移動のとき、首部2の外周面が環状弾性部材15による圧接変形でシールされるが、ストッパー10の空気通路9aと、内キャップ5の空気孔4と内キャップ取付具7との間隙を通じて空気は移動し、首部2の係合部18が外キャップ3の係合部17に係合停止する僅か前で内キャップ5底外面の空気孔4外周部が第2の環状弾性部材12に接し、第2の環状弾性部材12を圧接変形してシールし、係止部19の近くで停止して図3のようになる。そのため、ペン先部を収納した両環状弾性部材12,15間は、前記ストッパー10の衝止部9の孔と空気孔4の間隙を通じて気密空間となるので、キャップ1装着時のインク乾燥はほぼ完全に防止できる。
【0013】
筆記時に筆記具用キャップ1から首部2の嵌合を外すには、図3の状態から首部2を外方(図で右方)へ移動させると、まず係合部17,18の係合が外れ、内キャップ5はコイルスプリング11の弾発により首部2とともにストッパー10の衝止部9に衝止するまで外方側に僅かに移動し、内キャップ5の底外面が第2の環状弾性部材12の圧接変形を解除して図2のようになり、さらに両者が僅かに離れることにより、ペン先部を収納する両環状弾性部材12,15間が気密空間から大気連通状態へと変わる。この状態でストッパー10により移動を停止させられた内キャップ5から首部2のみを外方へ移動させ引き抜いて図1のようにしても、内キャップ5内が大気連通状態になっているため、急激な負圧変化は起こらず、ぺン先からインクが漏れることはない。
【0014】
筆記時に胴後部20をキャップ1に嵌合するには、図4、図6および図7のように胴後部20をキャップ1に挿入し、内キャップ5の舌片13を保持部材14側に僅かに揺動させて胴後部20を弾性保持させると同時に、胴後部20の他部分をバネカツラ16で弾性保持する。このとき舌片13、13間のスリットから空気が抜けるので、内キャップ5内が加圧されることはなく、かつバネカツラと舌片の2箇所で弾性保持するので、安定した胴後部20の嵌合となる。
【0015】
【発明の効果】
本発明の筆記具用キャップは、キャップや首部材の外径や位置決め等の寸法精度を緩和して部品製作や部品組立を容易化しても、首部嵌合時には2つの環状弾性部材によりペン先部を収納する内キャップ内が確実に気密化でき、かつ過度な加圧もなくなるので、インク蒸発をほぼ完全に防止できる。また、首部離脱時には内キャップ内を大気連通状態としているため、内キャップから首部を引き抜いても負圧とならずインク漏れが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例において首部嵌合時の断面図である。
【図2】 同実施例の首部嵌合時の断面図である。
【図3】 同実施例の首部嵌合完了時の断面図である。
【図4】 同実施例の胴後部嵌合時の断面図である。
【図5】 同実施例の内キャップを示す拡大断面図である。
【図6】 同実施例の内キャップと胴後部の嵌合を示す作用図である。
【図7】 同実施例の内キャップと胴後部の嵌合を示す作用図である。
【符号の説明】
1 筆記具用キャップ
2 首部
3 外キャップ
4 空気孔
5 内キャップ
6 頭栓
7 内キャップ取付具
8 クリップ
9 衝止部
9a 空気通路
10 ストッパー
11 スプリング
12 第2の環状弾性部材
13 舌片
15 環状弾性部材
16 バネカツラ
17 係合部
18 係合部
19 係止部
20 胴後部
Claims (1)
- ペン先を有する筆記具の首部を挿入するよう一端が開口した外キャップの内部に、一端が開口し底部に空気孔を有する有底筒状の内キャップを備えた筆記具用キャップであって、前記内キャップの空気孔と該内キャップ内とを連通させる空気通路を設けた衝止部を一端側に有するストッパーの他端部に、前記外キャップに固定した内キャップ取付具の一端部を前記内キャップの空気孔との間に間隙を設けて固定し、前記内キャップと前記内キャップ取付具との間にコイルスプリングを装着して当該内キャップの底部が前記ストッパーの衝止部に衝止するまで移動可能に付勢し、前記内キャップ取付具に前記内キャップが当接する係止部を形成して該内キャップの内方への移動を規制し、前記内キャップに筆記具の首部外周面を圧接する環状弾性部材を設けると共に、前記内キャップ取付具に前記内キャップ底外面を圧接する第2の環状弾性部材を設けることにより、前記キャップに筆記具の首部を嵌合するときには、筆記具の首部で前記内キャップを前記コイルスプリングの弾発に抗して当該内キャップが前記内キャップ取付具の係止部にて停止するまで押動して内方へ移動させ、前記内キャップに設けた環状弾性部材を前記首部外周面にて圧接変形させシールし且つ前記内キャップ底外面の空気孔外周部にて前記内キャップ取付具に設けた第2の環状弾性部材を圧接変形させシールして前記両環状弾性部材間を気密空間とし、前記キャップから筆記具の首部を外すときには、前記コイルスプリングの弾発により前記内キャップ底外面が前記第2の環状弾性部材から離間した後に前記内キャップの内面に設けた環状弾性部材から筆記具の首部を引き抜くようにしてなる、筆記具用キャップ。
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