JP4211386B2 - 鍛鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型鋳塊から鍛造工程を経て製造される大型鍛鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
大型のプラスチック成形用の金型や、鍛造用の金型、鍛造管等の鍛鋼品は、大断面の鋳塊の製造、鍛造工程を経て最終製品まで加工される。鍛鋼品を製造する方法としては、鋳塊に鍛造その他の二次加工を行って最終製品を得る方法のほかに、鋳塊を造塊後、鍛造により一次加工して素材としての鍛鋼とする方法がある。この鍛鋼は、ほとんど二次加工を行わずに所定寸法に切断するだけで最終製品の鍛鋼品として用いられる場合もあるし、さらに二次加工としての鍛造やその他の高度な加工が施されて最終製品の鍛鋼品が完成する場合もある。
【0003】
通常、鋳塊の内部には、V偏析、逆V偏析といったマクロ偏析に加え、鋳塊の中心部にセンターキャビティ又は粗大なポロシティの集まりであるザクといった気孔性の欠陥が存在する。鋳塊が外表面から凝固しつつ、内部に残された溶鋼がさらに凝固するときに凝固収縮が生じ、その収縮分が空隙となり、鋳塊中に溶けていたガス成分である窒素や水素が冷却過程で溶解度を超えるに及んで空隙中に溜まり、気孔性の欠陥が生じる。気孔性の欠陥は、通常、造塊工程において鋳塊を圧下加工し、それに続く鍛造工程において鍛造ヒート数を多くして高い鍛造比で鍛造加工することにより圧潰される。
【0004】
しかしながら、最終製品が大型の場合、鋳塊の内部全体を充分に圧潰することは困難であり、通常は圧下量及び鍛造比を小さく取らざるを得ないため、これら気孔性欠陥が最終製品まで残存して製品欠陥となる場合がある。さらに、近年、省力化の意味から、鍛造ヒート数を極力減らし、且つ、鍛造比を極力小さくすることが望まれている。また、ザクのような気孔性欠陥は内部にガスが充満しているために鍛造加工によっても容易に圧潰されない場合がある。
【0005】
従って、鋳塊段階でこれらのセンターキャビティやザクをできるだけ小さくすることが、鍛鋼の製造工程において重要となる。
【0006】
通常、造塊過程において鋳塊の底部より鋳塊径又は厚さの半分程度の高さまでは、鋳塊底部より抜熱され凝固シェルが鋳塊軸と平行して上方一方向に成長していくためにザク欠陥を生じることはない。しかし、鋳塊の底部からの高さが、鋳塊径又は厚さの半分よりも上部の位置では抜熱が主として側面より生じるために、凝固シェルは鋳塊径又は厚さ方向に成長して鋳塊の中心部で最終凝固となる。鋳塊の中心部では溶鋼の溜まりが少ないために、凝固収縮が生じてもこれを充満させることができず、結果的に空隙が生じる。通常の造塊過程では、溶鋼の収縮分を補填するために上部に押し湯を設けているが、鋳塊が大きくなればなるほど収縮量が大きくなり、且つ鋳塊中心部の最終残溶鋼の形状が長いパイプ状になって流動抵抗が大きくなるため、凝固収縮により負圧が生じても空隙を充満させるのに十分な溶鋼移動が行われなくなる。このため、大型の鋳塊の場合には、押し湯による空隙の低減では不充分である。
【0007】
鋳塊の気孔性欠陥を防止、あるいは低減するためには、Ni基超合金に代表されるように、ESR、VARといった再溶解凝固法の適用が確実であるが、通常は溶解用の電極の鋳造、さらにその電極の再溶解と少なくとも2回の造塊工程を経る必要があるために、普通の造塊法に比べて極めて製造コストが高いという問題がある。
【0008】
また、従来より、鋳塊の内部欠陥を低減するために鋳型形状の変更等が実施されている。
【0009】
さらに、特許文献1には、凝固中に側面から鋳塊本体を加圧して偏析を防止する方法が開示されている。しかしながら、この方法は鋳塊外部より凝固収縮に応じてわずかな量を圧下する方法であり、圧下量が小さいために内部への圧下効果の浸透が充分でなく、ザクを安定して低減することが困難である。さらに、程度の大きな数十mmという空隙のザクを解消することは期待できない。
【0010】
一方、本発明者らは、特許文献2に開示される造塊方法を発明した。しかし、大型鍛鋼の品質を向上させるためには、鋳塊の未凝固部を圧下する条件をさらに検討し、より効果的な方法へ改善することが望まれている。
【0011】
【特許文献1】
特開昭51−66233号公報
【特許文献2】
特開2001−286988号公報
塊
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、大型鍛鋼におけるザクを低減し、大型鍛鋼品を製造する場合であっても気孔性欠陥を防止できる鍛鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋳塊の内部が未凝固の段階で、凝固収縮を上回る大きな変形、すなわち、鋳塊中心部に負偏析が形成される程度の大きな変形を、鋳塊の特定の高さの部位に付与することにより、鋳塊のザクのような気孔性欠陥の発生を効果的に低減できることを見出した。さらに、この鋳塊に若干の鍛造加工を施すことにより、成分濃度の大幅な変化がなく、且つ、微細な気孔性欠陥を防止できることを見出した。
【0013】
すなわち本発明は、鋳塊を圧下後、鍛造する鍛鋼の製造方法であって、鋳塊底部から鋳塊の径又は厚さに相当する距離だけ上部に離れた位置の鋳塊中心部の炭素含有率C(質量%)をレードル内の溶鋼の炭素含有率C0(質量%)で除した比C/C0の値が0.7〜0.9となるように、未凝固部を有する鋳造後の鋳塊の少なくとも未凝固部が存在する全領域の側面を、未凝固部の厚み相当を超える圧下量で圧下し、さらに、圧下した鋳塊を鍛造加工することを特徴とする。
【0014】
上記鍛造工程における鍛造比、すなわち、鋳造したままの鋳塊の横断面積の平均断面積S0(mm2)を、鍛造加工後の鍛鋼横断面の平均断面積S(mm2)で除した比S0/Sの値を2以上とする場合には、鍛造工程のヒート数を1として鍛造を完了することが可能となるので省力化の点から好ましい。
【0015】
本発明の鍛鋼の製造方法は、鋳塊底部から鋳塊の径又は厚さに相当する距離だけ上部に離れた位置の鋳塊中心部の炭素含有率C(質量%)をレードル内の溶鋼の炭素含有率C0(質量%)で除した比C/C0の値が0.7〜0.9となるように、未凝固部を有する鋳造後の鋳塊の少なくとも未凝固部が存在する全領域の側面を、未凝固部の厚み相当を超える圧下量で圧下し、さらに、圧下した鋳塊を鍛造加工することを特徴とする。
【0016】
本発明は、鋳塊中心部の最終残溶鋼の形状が長いパイプ状になるために、押し湯による溶鋼移動では凝固収縮によって生じる空隙を充満させるのに十分ではないような大型の鋳塊であっても、外表面より凝固収縮以上の圧下を加えることにより、ザクの発生そのものを防止するものである。ここで、凝固収縮以上の圧下がどの程度の圧下であるかは、鋳塊サイズ、鋳塊の温度、圧下時期によって異なるため、圧下量として一定に定めることは困難である。そこで本発明者らは、凝固界面の圧着によって生じるミクロ偏析溶鋼の排出度合いに着目し、負偏析の程度を目安にすることにより、鋳塊内部の圧潰状態、すなわち凝固収縮以上の圧下が行われたかを決定できることを見出した。
【0017】
すなわち、ミクロ凝固過程では、初晶が負偏析となり、続く凝固で正偏析となるようなミクロ偏析が形成される。鋳塊のどの部分でもこのミクロ凝固が繰り返されるが、凝固途上の鋳塊の側面を圧下することにより空洞を取り囲む凝固シェルの内面同士が圧着されると、鋳塊中心部からミクロ偏析溶鋼のみが絞り出され、その残部分の初期凝固相が鋳塊中心部に残り負偏析を形成する。この負偏析の程度は鋳塊中心部の圧潰の程度と相関があり、圧潰が凝固収縮に等しい程度であれば負偏析とならないが、これを上回れば上回る程、負偏析の度合いが大きくなることが見出された。個々の圧下部位において圧潰の程度を凝固収縮量に等しくするのが理想的だが、現実的には凝固が鋳塊の全ての部分で均質に進んでいるとは限らないため、理想的な圧下量を各部位ごとに調節することは非常に困難である。
【0018】
これに対して本発明者らは、鋳塊の特定の高さにおける中心部が負偏析になる程度に過剰に圧下し、実質的に同じ圧下量で鋳塊全体を圧下することによって、鋳塊全体に渡り安定してザクの発生を低減することができることを見出した。この方法により、鋳塊全体に渡り安定してザクの発生を低減できることから、高品質の大型鋳塊を効率良く製造することが可能となる。 ザクは、鋳塊の底部より鋳塊径又は厚さの半分程度の高さより上で生じるため、本発明においては、負偏析の程度を見る位置を、鋳塊底部から鋳塊の径又は厚さに相当する距離だけ上部に離れた位置の鋳塊中心部とした。この位置における負偏析の程度を、鋳塊中心部の炭素含有率C(質量%)をレードル内の溶鋼、すなわち鋳塊全体の平均濃度の炭素含有率C0(質量%)で除した比(以下、偏析比という)C/C0が0.7〜0.9の範囲となるように調節することにより、マクロなザクを鋳塊全体に渡り安定してほぼ消滅させることができ、且つ、材料特性の均質化を保持でき、鋳塊中心部の強度を確保できる。
【0019】
本発明においては、圧下した鋳塊を更に鍛造加工することにより、偏析比C/C0が0.7〜0.9の負偏析になる程度に鋳塊を圧下しただけでは残存する可能性がある微細な気孔をも圧潰することができる。
【0020】
従って、上記未凝固部を有する鋳塊の圧下工程と鍛造工程を組み合わせることにより、大型であってもザクや微細気孔等の気孔性欠陥が低減され、材料特性の均質化が保持され、中心部の強度が確保された鍛鋼を得ることができる。
【0021】
以下において本発明の好ましい実施形態を挙げて詳しく説明する。本発明は、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼などの鋼を対象とする。また、対象とする鋳塊の大きさは、とくに限定しないが、10t程度以上の鋳塊に適用するのが効果的である。例えば、12tの鋳塊で、水平断面形状が長方形の鋳塊の場合に、おおよそ、そのサイズは、高さ2000mm、水平断面の厚さ650mm、幅1200mm程度となる。また、水平断面形状が円形の鋳塊の場合に、おおよそ、そのサイズは、高さ2000mm、直径1000mm程度となる。
【0022】
図1は、造塊を行う手順の一例を模式的に示した図である。図1においては、溶鋼をレードル1から鋳型2へ下注ぎで鋳込み、鋳造が行なわれる(工程1A)。次に、中心部に未凝固溶鋼4を有する鋳塊3を鋳型から取り出し、横倒し(工程1B、工程1C)、鋳塊3の未凝固溶鋼が存在する位置の側面を相対する2方向から挟んで圧下する(工程1D)。工程1Dの圧下過程で鋳塊上部より未凝固溶鋼4が漏鋼する可能性があるため、鋳型上部に事前に冷やし金を設けるなどをして(図示せず)、鋳塊頭部を先行的に凝固させて閉塞しておくことが好ましい。
【0023】
鋳型から鋳塊を抜く時期は、鋳塊の中心にある未凝固溶鋼すなわち未凝固部の径又は厚さが鋳塊の径又は厚さの50〜70%程度となる時期が望ましい。
【0024】
鋳塊を圧下する際には、圧下治具5を固定して、マニピュレータ等により鋳塊底部を支持し(図示せず)、鋳塊を移動させて圧下してもよいし、鋳塊3を固定して、圧下治具5を移動させて圧下してもよい。圧下の順番は、特に限定されず、上側から下側に順次行ってもよいし、その逆に下側からでもよいし、鋳塊の高さの半分付近の位置から圧下を開始しても良いが、排出された成分の偏析した溶鋼を上側に集め、凝固後に切り捨てる観点から、鋳塊の下側から上側に向かって行う方が好ましい。
【0025】
圧下する鋳塊の側面は、鋳塊の径、厚み(短径)又は幅(長径)のいずれを規定する対向面でもよいが、圧下を充分に行うためには、鋳塊の厚み(短径)又は径を規定する対向面を圧下するのが好ましい。例えば、水平断面形状が長方形の場合には、相対する長辺側が好ましい。正方形及び円形の場合には相対する側面である。鋳塊は、相対する側面の両方から挟み込む方向6、7に向けて同時に圧下することが好ましい。
【0026】
圧下を開始する時期は、鋳塊の中心にある未凝固部の径又は厚さが鋳塊の径又は厚さの20〜40%程度となる時期が望ましい。たとえば、水平断面形状が長方形である鋳塊の両側の長辺側を圧下する場合、両長辺間の距離、すなわち鋳塊の厚さをベースとして、未凝固部の厚さが鋳塊の厚さの20〜40%程度となる時期が望ましい。また、水平断面形状が円形である鋳塊の相対する2方向から鋳塊の側面を圧下する場合も鋳塊の直径をベースとして、未凝固部の直径が鋳塊の直径の20〜40%程度となる時期が望ましい。
【0027】
圧下を開始する時期は、一般的に用いられている凝固厚さD(mm)と凝固時間T(分)との間の関係式であるD=K×T1/2(一般的にルート則と言う)から求めることができる。ただし、Kは凝固係数で、鋳型の重量、溶融金属の注入温度などで決まる係数である。一般的には、ほぼ25(mm×分−1/2)の値である。鋳型内に注入した溶融金属にトレーサーを添加することにより、このK値を確認することができる。
【0028】
圧下を開始する時期における鋳塊の表面温度は、700〜1100℃程度とすることが望ましい。700℃未満では、鋳塊の凝固殻の強度が高いため、圧下が困難となるので、圧下の効果が発揮できない。また、過大な圧下装置を用いるのは現実的でない。1100℃を超える場合には、鋳塊の凝固殻の強度が低いため、圧下の効果を十分発揮できない。なお、鋳塊の表面温度は、鋳塊側面の圧下する部位の温度とすることが望ましく、放射温度計などにより測定できる。
【0029】
圧下装置としては、一般的な油圧プレス装置などを用いればよい。また、鋳塊を圧下する圧下治具、すなわち圧下金型の大きさ及び形状は、鋳塊の大きさ、形状、圧下する回数などで決めればよく、特に限定されない。10t程度以上の鋳塊の場合、例えば、鋳塊と接する面の形状が、縦100〜400mm、横800〜1200mm程度の長方形の圧下治具を用いることができる。その際、長方形の各コーナー部には丸味をもたせることが好ましい。丸味をもたせると、鋳塊の表面に圧下による疵が発生しにくい。鋳塊の横断面が円形の場合には、鋳塊と接する圧下治具を疑似円形の孔形としてもよい。
【0030】
圧下は、鋳塊底部8から鋳塊の径又は厚さに相当する距離だけ上部に離れた位置の鋳塊中心部9の炭素含有率C(質量%)をレードル1内の溶鋼の炭素含有率C0(質量%)で除した偏析比C/C0の値が0.7〜0.9となるように行う。本発明において、鋳塊の径又は厚さに相当する距離とは、鋳塊の水平断面形状を取り囲む4本の接線により描かれる最も小さい長方形又は正方形の幅であり、例えば、鋳塊の水平断面形状が長方形である場合は、鋳塊の厚さ、すなわち鋳塊の長辺の距離をいい、鋳塊の水平断面形状が円形である場合は、鋳塊の直径に相当する距離をいう。鋳塊が上径と下径で異なる錐形である場合には、平均径をいう。
【0031】
圧下する際の圧下量及び圧下開始時の未凝固部分の径又は厚さを変えることにより、偏析比を容易に且つ安定的に0.7〜0.9の範囲内に調節することができる。偏析比の値を0.7〜0.9の範囲内に調節することができる圧下量及び圧下開始時の未凝固部分の径又は厚さを決定する方法としては、例えば、未凝固部分の径又は厚さをある適当な値に固定し、圧下量を種々変更して試験を行い、偏析比が0.7〜0.9となる範囲を求めても良い。また、圧下量をある適当な値に固定し、圧下開始時における未凝固部分の径又は厚さを種々変更して試験をし、偏析比が0.7〜0.9となる範囲を求めても良い。
【0032】
本発明で規定する圧下後の鋳塊底部8から鋳塊の径又は厚さに相当する距離だけ上部に離れた位置の鋳塊中心部9の炭素含有率C(質量%)は、圧下後の鋳塊中心部9の位置の化学分析を行うことにより求めることができるが、下記の方法でも求めることができる。
【0033】
すなわち、上記圧下後の鋳塊中心部9の炭素含有率Cは、圧下後さらに鍛造加工された鍛鋼において、上記鋳塊中心部9に相当する位置の炭素含有率を測定してもほとんど同じ値であることから、比C/C0を計算する際には、上記鋳塊中心部9に相当する鍛造後の鍛鋼中心部の位置の炭素含有率を、圧下後の鋳塊中心部9の炭素含有率Cとして採用しても良い。
【0034】
マクロ的なザクは、上記の造塊工程において鋳塊を圧下することによって、ほぼ消滅できるが、気孔性欠陥にはザクだけでなく微細気孔もある。鋳塊底部8から鋳塊の径又は厚さに相当する高さの鋳塊中心部9の偏析比が0.7〜0.9となるような圧下のみでは、微細気孔内に存在するガス圧の抵抗により微細気孔が充分に圧潰されず、残存する場合がある。このような微細気孔を完全に潰すには、造塊後に鍛造を行うことが有効である。 圧下した鋳塊を一旦室温に冷却後に加熱炉で加熱後、鍛造しても良いし、圧下した鋳塊を直接加熱炉に入れて加熱後、鍛造しても良いし、圧下した鋳塊をそのまま鍛造しても良い。
【0035】
鍛造加熱温度は、鋳塊の大きさ、形状、加工速度等を考慮して適当な温度を選択すれば良いが、700〜1200℃程度とするのが望ましい。加熱温度が低すぎると、鋳塊の変形抵抗が高く鍛造が困難であり、加熱温度が高すぎると、結晶粒の粗大化と共に表面の酸化や脱炭が生じ、脆化して割れやすくなり鍛造不能となる。また、鍛造終了温度としては、再結晶温度より少し高い温度であることが好ましい。
【0036】
鍛造加工の工程における鍛造比、すなわち、鋳造したままの鋳塊の横断面の平均断面積S0(mm2)を、鍛造加工後の鍛鋼品の横断面の平均断面積S(mm2)で除した比S0/Sの値は特に制限されないが、鍛造比を2以上とする場合には、鍛造工程のヒート数を1として鍛造を完了することが可能となるので、省力化の点から好ましい。鍛造比が大きすぎる場合にはヒート数を2以上とする必要があるので、鍛造比の上限は4以下であることが好ましい。
【0037】
例えば、未凝固部を有し、横断面が丸形状である鋳塊の側面を圧下する場合には、圧下された部位の横断面形状が長円又は楕円形状となる。それら長円又は楕円形状の短径は、元の鋳塊の直径より圧下量分を引いた値となり、長径は元の鋳塊の直径より大きな値となる。これらの長円又は楕円形状から平均横断面積を正確に求めるのは困難である。しかしながら、未凝固部を有する鋳塊の側面を圧下する際には、鋳塊の高さ方向の伸びがほとんどないことから、圧下前後での横断面の断面積変化は極僅かで無視できる程度と考えられる。そこで、本発明においては、鍛造比は、鋳造したままの元の鋳塊の横断面の平均断面積S0(mm2)と、最終的に鍛造された鍛鋼の横断面の平均断面積S(mm2)とを用いて、前者を後者で除した比の値とした。
【0038】
上記の製造方法により、マクロ的なザクや微細気孔等の気孔性欠陥が非常に少なく、材料特性が均一で、割れが発生し難い鍛鋼を効率良く製造することができる。そして、得られた鍛鋼を素材として用い、必要に応じて鍛造等の二次加工を行うことにより、所望の形状の鍛鋼品を得ることができる。
【0039】
【実施例】
0.55質量%C鋼の溶鋼を、図1のように内法寸法で上径が1050mm、下径が950mm、高さが2000mmの逆錐形鋳型に下注ぎし、鋳造した。鋳塊を中心部に未凝固部がある状態で圧下する過程で、鋳塊上部より漏鋼する可能性があるため、鋳型上部に冷やし金を設け、先行的に鋳塊頭部を凝固させて閉塞した。
【0040】
給湯完了後、約150分経過してから、鋳型より鋳塊を抜き、横倒し、圧下した。但し、一部の比較例では、鋳塊を圧下しなかった。
【0041】
圧下を開始する時期は、給湯完了時点より約200分後で、未凝固部分の等固相線温度基準の直径が約330mmと推定される時期とした。
【0042】
鋳塊を圧下する際には、鋳塊と接する面の形状が400mm×1100mmの圧下金具を有する油圧プレス機に鋳塊を置き、マニピュレータにより鋳塊底部を支持し、鋳塊径方向に1100mmの辺、長手方向に400mmの辺を位置合わせし、鋳塊の側面を相対する2方向から圧下した。
【0043】
圧下部位は、マニピュレータにより鋳塊を高さ方向の下側から上部側に移動させて、鋳塊底部を除く高さ500mmの部位から高さ2000mmの部位にかけて未圧下部が残らないように順次圧下した。
【0044】
圧下力の設定は最大で3000tonとし、圧下シリンダの圧下速度は40mm/秒とした。圧下後は、圧下速度と同じ速度で圧下金具を開放した。
【0045】
圧下量を種々変更することにより、鋳塊中心部の負偏析の程度を調整した。各実施例においては、未凝固部分の直径が330mmであるのに対し、表1に示すように200〜400mmの圧下量を加えることにより、偏析比を0.7〜0.9の範囲に調節した。比較例の一部では、より小さい圧下量とした。
【0046】
圧下しなかった鋳塊は鋳型から抜き出した後に、また圧下した鋳塊は圧下終了後に、加熱炉で約5時間加熱し、鋳塊の温度を約1200℃としてから鍛造を行なった。
【0047】
鍛造は、自由鍛造法である図1の工程1Dに示す縦プレスを用いて行い、鍛造比を表1に示すように種々変更し、丸棒とした。鍛造比は、鋳造したままの元の鋳塊の横断面の平均断面積S0(mm2)と、最終的に鍛造された鍛鋼品の横断面の平均断面積S(mm2)とを用いて、前者を後者で除した比(S0/S)の値とした。
【0048】
鍛造後の丸棒サンプルを冷却後、中心軸を通る面で縦断し丸棒の両端から10cmをはずして、未凝固部を有する状態で圧下された後でさらに鍛造された部分に相当する位置から10cm幅×10cm縦の縦断面を8枚、縦軸方向に均等に切り出し、気孔径、及び炭素濃度を調査した。これらのサンプルには、鋳塊底部から鋳塊の直径に相当する距離だけ上部に離れた位置に相当するサンプルが含まれる。
【0049】
気孔径は、それぞれのサンプルで観察される気孔の最大の円相当径を求めて、8サンプルの算術平均を求めた。1mm径以下の微細気孔については、顕微鏡観察によりこれを実施した。
【0050】
炭素濃度は、各8サンプルの中心から化学分析用サンプルを採取して、それぞれの濃度を求めた。未凝固圧下しなかった比較例5も、同様の位置から縦断面のサンプルを8枚採取して、炭素濃度を測定した。表1には、8サンプルの偏析比(C/C0)の最大値と最小値を示した。
【0051】
表1に、試験条件および試験結果を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1及び2では、未凝固部分の圧下量を350mmまたは400mmとすることにより、偏析比を0.7〜0.8程度となるようにし、鍛造比はいずれも2以上とした。その結果、気孔は認められず、きわめて良好な結果となった。
【0054】
参考例1〜6(旧実施例3〜8)では、未凝固部分の圧下量を200〜300mmとすることにより、偏析比を0.8程度〜0.9となるようにし、鍛造比は1.5〜2.5とした。その結果、気孔径は最大でも1.8mmとなり、比較的良好な結果となった。
【0055】
比較例1〜3では、未凝固部分の圧下量を200mmより小さくすることにより、偏析比が0.9以上となった。鍛造比はいずれも2以上としたが、気孔径は最大でも5.5mm〜11.3mmとなり、実施例と比べて極めて悪い結果となった。
【0056】
比較例4では、未凝固部分の圧下量を300mmとすることにより、偏析比を0.7〜0.9となるようにしたが、鍛造工程を実施しなかった。その結果、気孔径は2.2mmとなり、鍛造工程を行ったものに比べて劣る結果となり、鍛造工程が必要であることが明らかになった。
【0057】
比較例5では、未凝固部分の圧下を実施せず、鍛造比は2以上とした。その結果、気孔径は21.5mmと粗大になり、鋳塊段階での圧下が重要であることが明らかになった。
【0058】
【発明の効果】
本発明に係る鍛鋼の製造方法によれば、鋳塊の内部が未凝固の段階で、鋳塊の所定高さにおける中心部に適度な負偏析が形成される程度に鋳塊の少なくとも未凝固部を圧下することによって、凝固収縮により生じる空隙量を上回る圧下量を鋳塊全体に渡り付与するため、大型の鋳塊であっても、ザクのようなマクロ的な気孔性欠陥の発生を鋳塊全体に渡り安定して低減することができ、且つ、材料特性の均質化を保持でき、鋳塊中心部の強度を確保できる。
【0059】
さらに、圧下した鋳塊を鍛造することにより、比C/C0で0.7〜0.9の負偏析になる程度に鋳塊を圧下しただけでは残存する可能性がある微細な気孔をも圧潰することができ、気孔性欠陥が更に低減される。
【0060】
従って、上記本発明においては、未凝固部を有する鋳塊を所定の部位で圧下する工程と鍛造工程を組み合わせることにより、大型であってもザクや微細気孔等の気孔性欠陥が非常に少なく、材料特性の均質性が高く、中心部の強度が確保された鍛鋼を効率良く得ることができる。
【0061】
また、上記鍛造工程における鍛造比S0/Sの値を2以上とする場合には、鍛造工程のヒート数を1とすることができ、省力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鍛鋼の製造方法を実施する手順の一例を説明する図である。
【符号の説明】
1…レードル
2…鋳型
3…鋳塊
4…未凝固溶鋼
5…圧下治具
6…圧下の方向
7…圧下の方向
8…鋳塊底部
9…偏析比を測定する高さの鋳塊中心部
Claims (2)
- 鋳塊を圧下後、鍛造する鍛鋼の製造方法であって、鋳塊底部から鋳塊の径又は厚さに相当する距離だけ上部に離れた位置の鋳塊中心部の炭素含有率C(質量%)をレードル内の溶鋼の炭素含有率C0(質量%)で除した比C/C0の値が0.7〜0.9となるように、未凝固部を有する鋳造後の鋳塊の少なくとも未凝固部が存在する全領域の側面を、未凝固部の厚み相当を超える圧下量で圧下し、さらに、圧下した鋳塊を鍛造加工することを特徴とする鍛鋼の製造方法。
- 鋳造したままの鋳塊の横断面の平均断面積S0(mm2)を、鍛造加工後の鍛鋼の横断面の平均断面積S(mm2)で除した比S0/Sの値を2以上とすることを特徴とする、請求項1に記載の鍛鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
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