JP4211357B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機を含む自動変速機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機は、通常その前段におけるエンジンが運転中にトルク変動を生ずることからこれを吸収して緩和するため、そしてトルク増大を目的として伝動系にトルクコンバータを設けるのが普通である。
【0003】
例えば自動変速機における従来の伝動機構を説明すると、これは図13に示すごときものであった(例えば、特許文献1参照)。
先ず伝動経路の概略を説明するに、エンジン(原動機)10の回転はクランクシャフト10sと直結するトルクコンバータ20を経て主変速機30に伝達される。
【0004】
トルクコンバータ20の回転は、変速機中間軸31を経て前後進切り換え機構32に伝達される。この前後進切り換え機構32は、Dレンジでの前進走行時においては前進クラッチ32aを締結されてトルクコンバータ20からのエンジン回転をそのまま伝達し、Rレンジでの後進走行時においては後進ブレーキ32bを締結されてトルクコンバータ20からのエンジン回転を減速、逆転下に伝達し、P,Nレンジでの駐停車時においては前進クラッチ32aおよび後進ブレーキ32bの双方を解放されてトルクコンバータ20からのエンジン回転を後段に伝達しなくする。
【0005】
前後進切り換え機構32の後段には、2個のトロイダル伝動ユニット(フロント側トロイダル伝動ユニット33およびリヤ側トロイダル伝動ユニット34)を、同軸背中合わせに設ける。
これらトロイダル伝動ユニット33,34はそれぞれ、入力ディスク35と、これに同軸に対向配置した出力ディスク36と、対応する入出力ディスク35,36間に介在させた一対ずつのパワーローラ37とを具えた同様な構成とする。
【0006】
両トロイダル伝動ユニット33,34は、それぞれの出力ディスク36が背中合わせになるよう同軸に配置し、この配置に当たっては、それぞれの入力ディスク35を主軸38に回転係合させて前後進切り換え機構32からの回転が共通に入力されるようになし、それぞれの出力ディスク36を主軸38上に回転自在に支持する。
また両出力ディスク36は中空出力軸39を介して相互に一体結合し、この中空出力軸39上に出力歯車40を固設する。
【0007】
出力歯車40は、カウンターシャフト41の前端におけるカウンターギア42に噛合させ、カウンターギア42の後端を出力歯車組43を経て、主軸38の後方へ同軸配置した変速機出力軸44に駆動結合させる。
【0008】
前後進切り換え機構32からの回転は両入力ディスク35へ共通に伝達され、入力ディスク35の回転は対応するパワーローラ37を介して出力ディスク36に達し、この回転が共通な出力歯車40から、これに噛合するカウンターギア42およびカウンターシャフト41、並びに出力歯車組43を順次経て変速機出力軸44から取り出される。
【0009】
変速に際しては、パワーローラ37を自己の回転軸線が入出力ディスク35,36の回転軸線と交差する中立位置から同期して同位相でオフセットさせると、パワーローラ37が回転時の分力によりパワーローラ回転軸線と直交する首振り軸線周りに同期して同位相で傾転され、これにより入出力ディスク35,36に対するパワーローラ37の接触軌跡円弧径が連続的に変化して所定の無段変速を行うことができる。
なお変速比が指令変速比になったところで、パワーローラ37を上記オフセットが0の初期ストローク位置に戻すことで、パワーローラ37の自己傾転は行われなくなり指令変速比を保つことができる。
【0010】
一方でトルクコンバータ20は、入力要素としてのポンプインペラ21、出力要素としてのタービンランナ22、およびワンウェイクラッチ23上に乗せた反力要素としてのステータ24を具え、エンジン駆動されるポンプインペラ21から遠心力を受けた作動流体がタービンランナ22に衝突した後ステータ24を経てポンプインペラ21に戻る間、ステータ24による反力下でタービンランナ22をトルク増大しつつ、またトルク変動吸収下に流体駆動し、タービンランナ22から変速機中間軸31にエンジントルクを伝達する。
【0011】
そしてトルクコンバータ20は、上記のトルク増大機能およびトルク変動吸収機能が不要な低負荷、高回転時に入出力要素21,22間を直結して伝動効率を高めるためにロックアップクラッチ25を具え、かかるトルクコンバータ20のロックアップ状態でトルク変動を吸収し得るようにするため、ロックアップクラッチ25の締結時における伝動経路中にダンパー26を挿置する(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−286107号
【特許文献2】
特開平7−4497号
【0013】
ところでトルクコンバータ20は上記の通りロックアップ式にしたところで、ロックアップクラッチ25が解放されている非ロックアップ状態(コンバータ状態)では、入力要素21から出力要素22への動力伝達を流体を介して行うため、これら入出力要素21,22間でスリップを発生して伝動効率が悪くなるという問題から逃れることができない。
【0014】
かといって、トルクコンバータ20に代え電磁クラッチを用いたのでは、トルクコンバータ20において有用だったトルク増大機能が得られず、発進性能の低下を含めた動力性能の悪化を生ずる。
【0015】
そこで、本出願人は既に、特願2001−142653号において、自動変速機の前段におけるエンジンが運転中にトルク変動を生ずることからこれを吸収して緩和するため、そしてトルク増大を目的として、中立状態にし得る主変速機の前段に遊星歯車組からなる副変速機を配したものを提案済みである。
【0016】
上記副変速機は、例えば、サンギアに入力軸を接続すると共にキャリアに主変速機を接続し、リングギアが入力軸からの入力回転と逆の方向に回転し得なくなる位置にワンウェイクラッチに設けると共にサンギアとキャリアとの間にサンギアとキャリアとの相互間を直結または切断可能な選択クラッチを設けたものであり、この選択クラッチを解放してサンギアとキャリアとの相互間を切断すると、ワンウェイクラッチが締結されて副変速機を1速(低速段)を選択して低速段選択状態となり、この選択クラッチを締結してサンギアとキャリアとの相互間を直結すると、ワンウェイクラッチが解放されることにより副変速機を2速(高速段)を選択して高速段選択状態となるため、副変速機がトルクコンバータと同様の機能を発揮することができる。
【0017】
しかしながら、かかる構成の自動変速機の制御装置にあっては、アクセルペダルが踏み込まれて車両が走行するとき、副変速機にはエンジン側から動力が入力されるため、選択クラッチを解放するとワンウェイクラッチが締結されてリングギアを入力軸からの入力回転と逆向きに回転させないこととなって1速の変速比を実現できるものの、アクセルペダルを解放した状態で車両が走行するときは、副変速機には主変速機から動力が入力されるため、選択クラッチを解放しても、ワンウェイクラッチが解放されて入力軸からの入力回転と同方向に回転させることとなって1速の変速比を実現できなくなる。
【0018】
このため、副変速機が低速段を選択した状態での車両の走行中に、再び加速しようとしてアクセルペダルを踏み込んで副変速機への動力が主変速機から入力されるものからエンジン側から入力されるものに切り換わってしまうと、ワンウェイクラッチも再び解放から締結に切り換わることになるため、この切り換わりに際して生じる締結ショックが変速機出力軸に伝達されるトルク(以下、出力軸トルクという)の変動となって運転者に違和感を与えるといった問題を生じる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした事実に鑑みてなされたものであり、副変速機が低速段を選択した状態での車両走行中に、副変速機への動力の入力が入力軸から主変速機に切り換わったのち、再び入力軸に切り換わることによって発生する出力軸トルクの変動を抑制し、快適な運転性が確保される自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、中立状態にし得る主変速機と、この主変速機の前段に配置され、入力軸からの入力回転を減速して出力する低速段と高速段を具える遊星歯車組からなる副変速機とを有し、この副変速機は、遊星歯車組のサンギア、キャリア及びリングギアのいずれか一つの要素を、入力軸からの入力回転と逆の方向に回転し得ないようにワンウェイクラッチを介して変速機ケースに固定すると共に、他の2つの要素を、その相互間を直結または切断可能な選択クラッチを介して接続するものであって、この選択クラッチを解放して低速段選択状態を達成する一方、選択クラッチを締結して高速段選択状態を達成する自動変速機の制御装置において、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものであるか、主変速機から入力されるものであるかを判断する入力方向判断手段と、運転者の加速要求を判断する加速要求判断手段と、副変速機が選択クラッチを解放する低速段選択状態にて、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものから主変速機から入力されるものに切り換わったとき、前記選択クラッチを締結し、その後さらに、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものから入力軸から入力されるものに切り換わったとき、その切り換わったときの前記加速要求が小さいほど、選択クラッチの解放速度を小さくするように、当該選択クラッチを解放させる副変速機制御手段と、を具えることを特徴とするものである。
【0021】
請求項2記載の発明は、上記請求項1に記載の制御装置において、前記遊星歯車組は、単純遊星歯車組であることを特徴とするものであり、
また、請求項3記載の発明は、上記請求項1に記載の制御装置において、前記遊星歯車組は、ダブルピニオン型遊星歯車組であることを特徴とするものである。
【0023】
請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置において、前記選択クラッチは、そのクラッチ圧を減少させることで解放され該クラッチ圧を増加させることで締結されるものであり、前記副変速機制御手段は、前記クラッチ圧を減少させる途中に所定の棚圧を発生させるものであることを特徴とするものである。
【0024】
請求項5記載の発明は、上記請求項4に記載の制御装置において、前記副変速機制御手段は、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものから入力軸から入力されるものに切り換わったときの前記加速要求が小さいほど前記棚圧を維持する時間を大きくして前記解放速度を小さくするものであることを特徴するものである。
【0028】
請求項6記載の発明は、上記請求項1乃至5のいずれか一項に記載の制御装置において、前記加速要求判断手段は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を有し、この手段で検出したアクセル開度が大きいほど運転者の加速要求が大きいと判断するものであることを特徴とするものである。
【0029】
請求項7記載の発明は、上記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の制御装置において、前記副変速機制御手段は、車両の停止を検出する車両停止検出手段を有し、副変速機が選択クラッチを解放する低速段選択状態にて、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものから主変速機から入力されるものに切り換わって前記選択クラッチを締結した後に車両が停止した場合、前記選択クラッチを解放させるものであることを特徴とするものである。
【0030】
請求項8記載の発明は、上記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の制御装置において、前記入力方向判断手段は、車両の停止を検出する車両停止検出手段と、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を有し、車両が停止することなくアクセルペダルが踏み込まれているとき、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものであると判断し、アクセルペダルを解放したまま車両が停止しないとき、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものであると判断するものであることを特徴とするものである。
【0031】
請求項9記載の発明は、上記請求項8に記載の制御装置において、前記車両停止検出手段は、車速を検出する車速検出手段を有し、この手段で検出した車速がほぼゼロであるときに車両が停止しているとみなすものであることを特徴とするものである。また、請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の制御装置において、副変速機は、その伝動経路中に低速段用及び高速段用のダンパを備えることを特徴とするものである。
【0032】
【発明の効果】
請求項1記載の発明においては、副変速機が選択クラッチを解放する低速段選択状態にて、副変速機への動力が入力軸から入力されるものから主変速機から入力されるものに切り換わったときに選択クラッチを締結し、その後、再び副変速機への動力が入力軸から入力されるものに切り換わるときに選択クラッチを所定の解放速度で解放させるから、ワンウェイクラッチが解放から締結に切り換わるに際して生じる締結ショックは、選択クラッチを解放するときの滑りによる摩擦力と、入力軸からの入力回転の上昇とによって吸収されるため、出力軸トルクの変動がほとんどなくワンウェイクラッチの締結によるショックを抑制することができる。
【0033】
従って請求項1記載の発明によれば、副変速機が低速段を選択した状態での車両走行中に、副変速機への動力が入力軸から入力されるものから主変速機から入力されるものに切り換わったのち、再び入力軸から入力されるものに切り換わっても、出力軸トルクの変動によって運転者に違和感を与えることなく、快適な運転性を確保することができる。なお、請求項2及び3記載の発明は、副変速機としてなる遊星歯車組を単純遊星歯車組又はダブルピニオン型遊星歯車組に変更することにより動力の伝達経路が異なるだけで、上記請求項1記載の発明と同様な作用効果を得ることができる。
【0034】
また、請求項1記載の発明においては、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものから入力軸から入力されるものに切り換わったときの加速要求が小さいときに上記所定の解放速度を小さくして選択クラッチをゆっくりと解放するから、ワンウェイクラッチの締結ショックを選択クラッチの摩擦力で吸収できる量が増大するため、出力軸トルクの変動をより確実に抑制することができる。
【0035】
請求項4記載の発明においては、前記選択クラッチのクラッチ圧を減少させる途中に所定の棚圧を発生させることで、選択クラッチの滑りによる摩擦力が充分に得られる状態でワンウェイクラッチが解放から締結に切り換わるため、複雑なクラッチ圧制御を伴わずに容易にワンウェイクラッチの締結ショックを軽減することができる。
【0036】
請求項5記載の発明においては、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものから入力軸から入力されるものに切り換わったときの加速要求が小さいほど前記棚圧を維持する時間を大きくすることにより前記解放速度を小さくして選択クラッチをゆっくりと解放するから、ワンウェイクラッチの締結ショックを確実に抑制することができる。
【0040】
請求項6記載の発明は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を有し、この手段で検出したアクセル開度が大きいほど運転者の加速要求が大きいと判断することから、運転者の加速要求を容易に判断することができる。
【0041】
請求項7記載の発明は、車両の停止を検出する車両停止検出手段を有し、副変速機が選択クラッチを解放する低速段選択状態にて、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものから主変速機から入力されるものに切り換わって前記選択クラッチを締結した後に車両が停止した場合、前記選択クラッチを解放させることから、副変速機が高速段で車両が停止しても発進時には低速段に復帰しているため、車両の再発進を確実に実行することができる。
【0042】
請求項8記載の発明は、入力方向判断手段が車両の停止を検出する車両停止検出手段とアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を有し、車両が停止することなくアクセルペダルが踏み込まれているとき、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものであると判断し、アクセルペダルを解放したまま車両が停止しないとき、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものであると判断することから、車両が停止しているかどうかの判断と、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいるかどうかの判断だけで、副変速機への動力の入力方向を容易に判断することができる。
【0043】
請求項9記載の発明は、車両停止検出手段が車速を検出する車速検出手段を有し、この手段で検出した車速がほぼゼロであるときに車両が停止しているとみなすことから、車両の停止を容易に検出することができる。また、本発明によれば、請求項10に記載の如く、副変速機の伝動経路中に低速段用及び高速段用のダンパを設けることもできる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、図13に示すようなトロイダル型無段変速機におけるトルクコンバータ20を本発明の一実施の形態になる副変速機50に置換したもので、図1において、図13におけると同様の部分は同一符号にて示すにとどめ、その重複説明を省略した。
【0045】
本実施の形態になる副変速機50は、図2に実態構成を示すが、ハウジング51を具え、このハウジング51をドライブプレート52を介してエンジン10のクランクシャフト(入力軸)10sに結着すると共に、該ハウジング51内に以下の部品を組み込んで副変速機50を構成する。
つまり、トロイダル伝動ユニット33,34と共に主変速機30を構成する前後進切り換え機構32の入力軸(主変速機の入力軸)である中間軸31をハウジング51内に挿入し、該中間軸31の挿入端部上に単純遊星歯車組53を装着し、単純遊星歯車組53のキャリア53cを中間軸31に駆動結合すると共に、選択クラッチ(以下、高速段選択クラッチという)54のクラッチハブ54hにも駆動結合する。
【0046】
単純遊星歯車組53のリングギア53rは低速段選択ブレーキとしてのワンウェイクラッチ55を介し固定軸56上に乗せ、このワンウェイクラッチ55は図13におけるステータ24のためのワンウェイクラッチ23と同様な、若しくはこれを流用して、つまりワンウェイクラッチ55のインナレースを中空固定軸56(変速機ケース)に固定すると共にアウタレースをリングギア53rに接続して、リングギア53rをエンジン10の回転と逆方向に回転し得ないようにするものとする。
【0047】
高速段選択クラッチ54は上記したクラッチハブ54hのほかに、ハウジング51内に回転自在に収納したクラッチドラム54dを具え、このクラッチドラム54dを高速段用ダンパー57を介してハウジング51に駆動結合する。
クラッチドラム54dは更に、低速段用ダンパー58を介して単純遊星歯車組53のサンギア53sに駆動結合する。
【0048】
高速段選択クラッチ54には更に、図2に示すごとくクラッチドラム54d内に軸線方向摺動可能に嵌合したクラッチピストン54pを具え、このピストン54pを油圧α(従来のロックアップ制御油圧およびロックアップ制御油路をそのまま流用し得る)で図2の左方へストロークさせる時、高速段選択クラッチ54は図3に示す如く締結によりクラッチドラム54dおよびクラッチハブ54h間を結合し、この時高速段用ダンパー57からの回転が低速段用ダンパー58を経由することなくキャリア53cを経て中間軸31にそのまま(高速段選択状態で)伝達される。
【0049】
しかし、ピストン54pへの油圧αがなくて高速段選択クラッチ54が図1に示すごとく解放されている時は、高速段用ダンパー57からの回転が低速段用ダンパー58を経由して単純遊星歯車組53のサンギア53sに達する。
ここでサンギア53sは、高速段選択クラッチ54が解放されているため、またワンウェイクラッチ55がリングギア53rのエンジン10と逆方向の回転を阻止しているため、キャリア53cを減速下に同方向へ回転駆動し、動力は低速段選択状態で中間軸31に伝達される。
【0050】
なお高速段用ダンパー57のダンパー特性は上記の高速段選択状態で要求される特性に設定し、低速段用ダンパー58は上記の低速段選択状態で要求される特性に設定しておく。
【0051】
なお、図2に示す前後進切り換え機構32の実態構成を補足説明するに、前後進切り換え機構32は前記した前進クラッチ32aおよび後進ブレーキ32bの他に、単純遊星歯車組32cを具える。
そして、前進クラッチ32aを油圧βにより締結する時は単純遊星歯車組32cのサンギア32dおよびリングギア32e間を結合させて中間軸31からの回転をそのままサンギア32dより後段のトロイダル伝動ユニット33,34(図1参照)へ伝達し、Dレンジでの前進走行を可能にし、
後進ブレーキ32bを油圧γにより締結する時は単純遊星歯車組32cのキャリア32fを固定して中間軸31からの回転を減速、逆転下にサンギア32dより後段のトロイダル伝動ユニット33,34へ伝達し、Rレンジでの後進走行を可能にする。
しかして、P,Nレンジでの駐停車時においては前進クラッチ32aおよび後進ブレーキ32bの双方を解放させて中間軸31からの回転が後段のトロイダル伝動ユニット33,34へ伝達させない。
【0052】
前後進切り換え機構32の前進クラッチ32aおよび後進ブレーキ32bを上記のように締結、解放する制御、トロイダル伝動ユニット33,34の前記した変速制御、および副変速機50における高速段選択クラッチ54の締結、解放制御はそれぞれ、図1に示すようにコントロールバルブボディー61を介して変速機コントローラ62によりこれらを実行し、
変速機コントローラ62には、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ63からの信号と、
エンジン10のスロットル開度TVOを検出するスロットル開度Tセンサ64からの信号と、
アクセルペダルの釈放時にONとなってアイドル運転状態を検知するアイドルスイッチ65からの信号と、
ブレーキペダルの踏み込み時にONとなって制動状態を検知するブレーキスイッチ66からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ67からの信号と、
アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ68からの信号とを入力する。
【0053】
上記実施の形態になるトロイダル型無段変速機の作用を次に説明する。
先ず伝動作用を説明するに、ハウジング51へのエンジン回転は高速段用ダンパー57を経てクラッチドラム54dに達している。
ここで高速段選択クラッチ54が解放されていると、クラッチドラム54dへの回転が低速段用ダンパー58を経てサンギア53sに至り、サンギア53sへの回転が単純遊星歯車組53の前記作用により低速段選択状態で減速下に中間軸31へ伝達される。そして高速段選択クラッチ54が図3のごとく油圧αにより締結されていると、クラッチドラム54dへの回転が低速段用ダンパー58を経由することなくキャリア53cを経て中間軸31にそのまま高速段選択状態で伝達される。
【0054】
なお、低速段で用いる伝動経路中に挿入した低速段用ダンパー58は、低速段選択状態であるときのみ所定のダンパー機能を果たし、高速段選択状態である時は、この低速段用ダンパー58をバイパスする高速段選択クラッチ54を経て動力伝達を行うため、低速段用ダンパー58はダンパー機能を果たすことがない。よって、低速段用ダンパー58のダンパー特性を低速段選択状態で要求される特性に設定することができる。
【0055】
一方で高速段選択状態である時は、全ての変速段で共用する伝動経路中に挿入した高速段用ダンパー57のみがダンパー機能を果たすため、そのダンパー特性を低速段用ダンパー58とは別個に、高速段選択状態で要求される特性に設定することができる。
【0056】
副変速機50により上記のごとくに高低速切り換えされて中間軸31に達した回転は、前後進切り換え機構32の前進クラッチ32aが図3のごとく油圧βにより締結されている間、前後進切り換え機構32の前記した作用を介してそのまま後段のトロイダル伝動ユニット33,34に至り、これらトロイダル伝動ユニット33,34による変速下に変速機出力軸44より取り出される。
前後進切り換え機構32の後進ブレーキ32bが図2の油圧γにより締結されている間、中間軸31への回転は前後進切り換え機構32の前記した作用を介して逆転下に後段のトロイダル伝動ユニット33,34に至り、これらトロイダル伝動ユニット33,34を経て変速機出力軸44より取り出される。
前後進切り換え機構32の前進クラッチ32aおよび後進ブレーキ32bが共に解放されている間、中間軸31への回転は後段のトロイダル伝動ユニット33,34に至ることがなく、トロイダル型無段変速機を中立状態にしておくことができる。
【0057】
次に、上記トロイダル型無段変速機の発進制御および変速制御を説明する。
発進に際して変速機コントローラ62は、副変速機50を高速段選択クラッチ54の解放により低速段(減速段)選択状態にしておき、前後進切り換え機構32の前進クラッチ32aおよび後進ブレーキ32bを共に解放させておいた中立状態から、Dレンジでの前発進なら発進用摩擦要素としての前進クラッチ32aの締結進行制御により、またRレンジでの後発進なら発進用摩擦要素としての後進ブレーキ32bの締結進行制御により発進を行わせる。
【0058】
発進用摩擦要素の締結進行制御は図4に示すごとくにこれを行うが、以下、前発進時における前進クラッチ32aの締結進行制御について代表的に説明する。
Dレンジでも未だアクセルペダルを踏み込んでおらず、従ってアイドルスイッチ65がONであり、且つ、ブレーキペダルを踏み込んだ制動状態のためにブレーキスイッチ66もONである場合、
車速VSPが5Km/h未満の停車状態なら前進クラッチ32aを完全に解放してトロイダル型無段変速機を依然として中立状態に保ち、
車速VSPが5Km/h〜15Km/hなら前進クラッチ32aを、図2に示すリターンスプリング32gが収縮し終えてクラッチのロスストロークが完了した状態、つまり締結開始直前状態にし(イニシャル制御)、
車速VSPが15Km/h以上なら前進クラッチ32aを完全に締結し、副変速機50の低速段選択状態と相まってトロイダル型無段変速機を、Dレンジ、ロー側変速比での通常の動力伝達が可能な状態にする。
【0059】
Dレンジで未だアクセルペダルを踏み込んでおらず、従ってアイドルスイッチ65がONであるが、ブレーキペダルを釈放した制動解除状態のためブレーキスイッチ66がOFFである場合、
車速VSPが5Km/h未満の停車状態から前進クラッチ32aを、図2に示すリターンスプリング32gが収縮し終えてクラッチのロスストロークが完了した状態(締結開始直前状態)にするイニシャル制御を行い、
車速VSPが5Km/h〜15Km/hなら前進クラッチ32aを、上記の締結開始直前状態から締結を徐々に進行させる滑り締結制御を行い、
車速VSPが15Km/h以上なら前進クラッチ32aを完全に締結し、副変速機50の低速段選択状態と相まってトロイダル型無段変速機を、Dレンジ、ロー側変速比での通常の動力伝達が可能な状態にする。
【0060】
Dレンジでアクセルペダルの踏み込みを行い、従ってアイドルスイッチ65がOFFであり、且つ、ブレーキペダルを踏み込んだ制動状態のためにブレーキスイッチ66がONである場合、
車速VSPが5Km/h未満の停車状態でも前進クラッチ32aの締結を徐々に進行させる滑り締結制御を行い、
車速VSPが5Km/h〜15Km/hなら、前進クラッチ32aの上記滑り締結制御を継続させて前進クラッチ32aの締結を更に進行させ、
車速VSPが15Km/h以上なら前進クラッチ32aを完全に締結し、副変速機50の低速段選択状態と相まってトロイダル型無段変速機を、Dレンジ、ロー側変速比での通常の動力伝達が可能な状態にする。
【0061】
Dレンジでアクセルペダルの踏み込みを行い、従ってアイドルスイッチ65がOFFであり、且つ、ブレーキペダルを釈放した制動解除状態のためブレーキスイッチ66もOFFである場合、
車速VSPが5Km/h未満の停車状態から前進クラッチ32aの締結を徐々に進行させる滑り締結制御を行い、
車速VSPが5Km/h〜15Km/hなら前進クラッチ32aを完全に締結し、副変速機50の低速段選択状態と相まってトロイダル型無段変速機を、Dレンジ、ロー側変速比での通常の動力伝達が可能な状態にし、
車速VSPが15Km/h以上なら、前進クラッチ32aを引き続き完全締結状態にしてトロイダル型無段変速機を、Dレンジ、ロー側変速比での通常の動力伝達が可能な状態に保持する。
【0062】
なおN,Pレンジでは、アクセルペダルの操作状態に関係なく、つまりアイドルスイッチ65のON,OFFに関係なく、またブレーキペダルの操作状態に関係なく、つまりブレーキスイッチ66のON,OFFに関係なく、発進用摩擦要素(今はDレンジ故に、前進クラッチ32a)を完全解放状態にし、他方の摩擦要素(今はDレンジ故に、後進ブレーキ32b)の解放状態と相まってトロイダル型無段変速機を中立状態に保つ。
【0063】
トロイダル型無段変速機を上記のごとく、Dレンジでの通常の動力伝達が可能な状態にした後の変速制御を説明するに、変速機コントローラ62は図5に例示する予定の変速マップをもとに車速VSPおよびスロットル開度TVOから目標入力回転数Ne* を検索し、センサ63で検出したエンジン回転数Neがこの目標入力回転数Ne* に一致するようトロイダル伝動ユニット33,34を変速制御する。
そして変速機コントローラ62は、図5のマップをもとに車速VSPおよびスロットル開度TVOから、副変速機50を低速段選択状態にすべき低速段選択域か副変速機50を高速段選択状態にすべき高速段選択域かをチェックする。
【0064】
低速段選択域なら副変速機50を高速段選択クラッチ54の解放により低速段選択状態にしておき、上記した発進制御を実行するが、ヒステリシス域を超えて高速段選択域に入ったと判定する時、副変速機50を高速段選択クラッチ54の図3に示す締結により高速段選択状態にし、同図に示す前進クラッチ32aの締結保持と相まって図4に沿った変速制御を可能にする。
【0065】
つまり本実施形態は、中立状態にし得る主変速機30の前段に、入力軸10sからの入力回転を減速して出力する低速段と高速段を具える単純遊星歯車組53からなる副変速機50を配して、単純遊星歯車組53のサンギア53sにドライブプレート52を介して入力軸10sを接続すると共にキャリア53cに主変速機30の中間軸31を接続し、リングギア53rが前記入力回転と逆の方向に回転し得なくなる位置にワンウェイクラッチ55を設けると共にサンギア53sとキャリア53cとの間にサンギア53sとキャリア53cとの相互間を直結または切断可能な高速段選択クラッチ54を設け、この高速段選択クラッチ54を解放してサンギア53sとキャリア53cとの相互間を切断する低速段選択状態を達成する一方、高速段選択クラッチ54を締結してサンギア53sとキャリア53cとの相互間を直結する高速段選択状態を達成させるように構成したものである。
【0066】
しかしながら、かかる構成のトロイダル型無段変速機の制御装置にあっては、発進または加速等のように、アクセルペダルが踏み込まれて車両が走行するとき、副変速機50にはエンジン10側から動力が入力されるため、高速段選択クラッチ54を解放するとワンウェイクラッチ55が締結されてリングギア53rをエンジン10からの入力回転と逆向きに回転させないこととなって1速の変速比を実現できるものの、再発進や再加速等のように、アクセルペダルを解放した状態で車両が走行するときは、副変速機50には主変速機30から動力が入力されるため、高速段選択クラッチ54を解放しても、ワンウェイクラッチ55が解放されてエンジン10側からの入力回転と同方向に回転させることとなって1速の変速比を実現できなくなる。
【0067】
このため、副変速機50が低速段を選択した状態での車両の走行中に、再び加速しようとしてアクセルペダルを踏み込んで副変速機50への動力が主変速機30から入力されるものからエンジン10側から入力されるものに切り換わってしまうと、ワンウェイクラッチ55も再び解放から締結に切り換わることになるため、この切り換わりに際して生じる締結ショックが出力軸トルクの変動となって運転者に違和感を与えるといった問題を生じる。
【0068】
そこで、本実施形態では、図6のフローチャートに基づき、高速段選択クラッチ54を制御する。なお、本制御フローは、例えば10msec毎に実行されるものとし、また副変速機50の変速段は通常、運転状態(例えば車速VSPとアクセル開度APO)に基づいて1速または2速を選択されるものとする。
【0069】
まずステップ101では、運転状態に基づき副変速機50が選択すべき変速段が1速段であるかどうかを判断し、1速段であれば、ステップ102に移行し、1速段でなければ、後述するステップ113に移行する。
【0070】
ステップ102では、後述する高速段選択クラッチ締結フラグFrgがFrg=0であるかどうかを判断し、Frg=0であれば、ステップ103に移行し、Frg=0でなければ、後述するステップ107にジャンプする。なお、既存のイグニッションスイッチ(図示せず)がONになった直後、即ち、初期状態ではFrg=0とする。
【0071】
ステップ103では、車速センサ67で検出した車速VSPがVSP=0ではないかどうかを判断し、VSP=0でなければ、車両が走行中であるとしてステップ104に移行し、VSP=0であれば、車両が停止しているとしてそのまま本フローチャートによる制御を終了し、運転状態に応じて副変速機50を1速または1速から2速に変更する。なお、車速VSPとの比較は、VSP=0に限らず、VSP≒0として所定の幅を持たせても良い。この場合、車速センサ67で検出した車速VSPがほぼ0(ゼロ)であるときに車両が停止しているとみなすことから、車両の停止を容易に検出することができる。
【0072】
ステップ104では、アクセル開度センサ68で検出したアクセル開度APOがAPO=0であるかどうかを判断する。ステップ104にてAPO=0であれば、運転者がアクセルペダルを解放したまま車両が停止しない、所謂、コースト走行状態であるため、副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力さえるものであると判断してステップ105に移行する。また、ステップ104にてAPO=0でなければ、車両が停止することなく運転者がアクセルペダルを踏み込んでいる、所謂、発進または加速走行状態であるため、副変速機50に入力される動力がエンジン10から入力されるものあると判断してそのまま本フローチャートによる制御を終了し、運転状態に応じて副変速機50を1速または1速から2速に変更する。
【0073】
ステップ103,104によれば、車両が停止しているかどうかの判断と、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいるかどうかの判断だけで、副変速機50に入力される動力がエンジン10から入力されるものから主変速機30から入力されるものに切り換わったとして、副変速機50への動力の入力方向を容易に判断することができる。
【0074】
ステップ105では、副変速機50が1速段(低速段選択状態)にて、副変速機50に入力される動力がエンジン10から入力されるものから主変速機30から入力されるものに切り換わったとして、高速段選択クラッチ54を強制的に締結して副変速機50が2速段を達成するようにクラッチ圧αを制御する。
【0075】
高速段選択クラッチ54を締結するに際しては、その実施形態として、例えば図7または図8のタイムチャートにおける実線aまたは実線bに示すようにクラッチ圧αを制御する方法がある。但し、高速段選択クラッチ54は、クラッチ圧αを減少させることにより解放され該クラッチ圧αを増大させることで締結されるものとする。
【0076】
まず第一の実施形態では、図7の実線aに示す如く、アクセル開度がAPO=0.0/8(0)、即ち、アクセルペダルを解除したコースト走行状態になって時点t1から、クラッチ圧α1を傾きθ(=θ1)で徐々に増大させる(領域X)。これは、高速段選択クラッチ54を瞬時に締結してしまうと変速ショックを発生するため、この変速ショックを防止することを目的とする。
【0077】
次に第二の実施形態では、図8の実線bに示す如く、アクセル開度がAPO=0、即ち、コースト走行状態になって時点t1から、クラッチ圧αを増大させる途中に所定の棚圧α1を発生させる(領域X)。この場合、高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力が充分に得られる状態(半クラッチ状態)で高速段クラッチ54が解放から締結に切り換わるため、高速段選択クラッチ54を締結する際に生じるショックを確実に軽減することができる。
【0078】
ところで、第一の実施形態の場合、図8の一点鎖線に示す如く、アクセル開度APOの戻し時間、即ち、アクセルペダルの解放して再度踏み込むまでの時間Tが短い(T=T2)と、図8の破線に示す如く、クラッチ圧αがわずかな時間だけしか供給されずに、高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力が不十分になりこの摩擦力によって吸収できるエネルギー量が少なくなることがある。このため、再加速等によって副変速機50に主変速機30からの動力が短い時間T=T2で入力されると、出力軸トルクの変動が領域A1,A2に示す如く大きくなり、ワンウェイクラッチ55の締結ショックを抑制することができない。
【0079】
そこで、第二の実施形態では、アクセル開度APOの戻し時間Tが短い場合(T=T2)を考慮し、クラッチ圧αの傾きθを大きく取り(θ=θ 5>θ1)、棚圧α1が発生するまでのクラッチ圧増加速度を油圧制御機構上の最大速(メカ限界置)とすることが望ましい。この場合、アクセル開度APOの戻し時間Tが短い場合であっても、図8の実線に示す如く、棚圧α1をいち早く発生させて高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力を確保することで、主変速機30から副変速機50に動力が入力される時間Tが短い再加速時(T=T2)などの場合であっても、出力軸トルクの変動が領域B1に示す如くほとんどなく、高速段クラッチ54の締結ショックを抑制することができる。
【0080】
また再加速時のワンウェイクラッチ55における締結ショックの抑制を考慮した場合、アクセル開度APOの戻し時間T中に高速段選択クラッチ54を完全に締結させることが望ましい。
【0081】
そこで、第二の実施形態では、さらに、棚圧α1を所定時間Δt1だけ保持し、その後も副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものである場合、実線bに示す如く、クラッチ圧αの傾きを大きく取り(θ=θ2)、目標とするクラッチ圧(高速段選択クラッチ54を完全に締結させるのに必要なクラッチ圧)α2まで上昇させる。これにより、変速機30から副変速機50に動力が入力される時間Tが長い再加速時(T=T1)などの場合には、高速段選択クラッチ54を完全に締結させて、ワンウェイクラッチ55の締結ショックを抑制するのに必要になる摩擦力を十分に確保することができる。また主変速機30から副変速機50に動力が入力される時間が短く(T=T2)、高速段選択クラッチ54が途中で解放されてしまう場合であっても、高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力が充分に得られる状態でワンウェイクラッチ55が解放から締結に切り換わるため、ワンウェイクラッチ55の締結ショックを抑制することができる。
【0082】
なお第二の実施形態において、棚圧α1を所定時間Δt1だけ保持する間に、副変速機50に入力される動力がエンジン10側から入力されるものに切り換わった場合は、例えば図8の二点鎖線で示す如く、所定時間Δt1を経過後、後述するようにクラッチ圧αを徐々に減少させて高速段選択クラッチ54を解放する。この場合も、出力軸トルクの変動は、領域B2に示す如くほとんどなく、ワンウェイクラッチ55の締結ショックを抑制できる。
【0083】
ステップ105にて高速段選択クラッチ54を締結させた後は、ステップ106にて、副変速機50を強制的に2速にする制御が行われたことを示す前述の高速段選択クラッチ締結フラグFrgをFrg=1にセットする。
【0084】
ステップ107では、ステップ103と同様、再び車速VSPがVSP=0ではないかどうかを判断し、VSP=0であれば、車両が停止しているとして後述するステップ110に移行する。
【0085】
次にステップ107にて、VSP=0ではないと判断すれば、車両が走行中であるとしてステップ108に移行し、このステップ108では、アクセル開度APOがAPO=0ではないかどうかを判断する。ステップ108にてAPO=0であれば、運転者がアクセルペダルを解放したまま車両が停止しない、所謂、コースト走行状態であるため、副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものであると判断して高速段選択クラッチ54を締結したまま本フローチャートによる制御を終了する。
【0086】
次にステップ108にてAPO=0ではないと判断すれば、車両が停止することなく運転者がアクセルペダルを踏み込んでいる、所謂、発進または加速走行状態であるため、副変速機50に入力される動力がエンジン10から入力されるものあると判断してステップ109に移行する。
【0087】
ステップ107,108によれば、車両が停止しているかどうかの判断と、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいるかどうかの判断だけで、副変速機50に入力される動力が再び主変速機30から入力されるものからエンジン10から入力されるものに切り換わったとして、副変速機50への動力の入力方向を容易に判断することができる。
【0088】
ステップ109では、副変速機50に入力される動力が再び主変速機30から入力されるものからエンジン10から入力されるものに切り換わったとして、高速段選択クラッチ54を所定の解放速度で解放して副変速機50が1速段に復帰するようにクラッチ圧αを制御する。
【0089】
高速段選択クラッチ54を解放するに際しては、その実施形態として、例えば図7〜図9のタイムチャートに示すようにクラッチ圧αを制御する方法がある。
【0090】
まず図7の実線aに示す如く、アクセル開度がAPO=0ではなくなる時点、即ち、アクセルペダルを踏み込んだ再加速状態になった時点t2から、破線に示す如く、クラッチ圧αを一気に減少させて高速段選択クラッチ54を解放させた場合を考慮すると、出力軸トルクの変動は図7の領域C1,C2に示す如く大きくなりワンウェイクラッチ55の締結ショックを充分に抑制することができない。
【0091】
そこで、第一の実施形態では、図7の実線aに示す如く、アクセルペダルを踏み込んだ再加速状態になった時点t2から、実線aに示す如く、クラッチ圧αを傾きθ3で徐々に減少させて高速段選択クラッチ54を所定の解放速度で解放させる(領域Y)。この場合、ワンウェイクラッチ55が解放から締結に切り換わるに際して生じる締結ショックは、高速段選択クラッチ54を解放するときの滑りによる摩擦力と、入力軸10sからの入力回転の上昇とによって吸収されるため、出力軸トルクの変動が領域D1に示す如くほとんどなく、ワンウェイクラッチ55の締結によるショックを抑制することができる。
【0092】
従って、副変速機50が低速段を選択した状態での車両走行中に、副変速機50への動力が入力軸10sから入力されるものから主変速機30から入力されるものに切り換わったのち、再び入力軸10sから入力されるものに切り換わっても、出力軸トルクの変動によって運転者に違和感を与えることなく、快適な運転性を確保することができる。
【0093】
また上記実施形態では、副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものからエンジン10側から入力されるものに切り換わったときの運転者の加速要求を判断し、この加速要求が小さいほどクラッチ圧αを少しずつ減少させて高速段選択クラッチ54の解放速度を小さくすることが好ましい。
【0094】
例えば、図7の実線aを基準にすると、運転者の加速要求が実線aでの加速要求よりも大きいときは、図7の一点鎖線dのように、クラッチ圧αの傾きθをθ=θ4(<θ3)と小さくして高速段選択クラッチ54の解放速度を大きくする一方、運転者の加速要求が実線aでの加速要求よりも小さいときは、図7の二点鎖線eのように、クラッチ圧αの傾きθをθ=θ2(>θ3)と大きくして高速段選択クラッチ54の解放速度を小さくする。
【0095】
かかる構成によれば、運転者の加速要求が小さいときに高速段選択クラッチ54の解放速度を小さくして高速段選択クラッチ54をゆっくりと解放するから、ワンウェイクラッチ55による締結ショックを高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力で吸収できる量が増大するため、出力軸トルクの変動をより確実に抑制することができる。
【0096】
またかかる構成においては、アクセル開度センサ68で検出したアクセル開度APOを用い、このアクセル開度APOが大きいほど運転者の加速要求が小さいと判断すれば、運転者の加速要求を容易に判断することができる。
【0097】
次に第三の実施形態では、図9の実線aに示す如く、アクセル開度がAPO>0、即ち、再加速状態になって時点t2から、クラッチ圧αを減少させる途中に所定の棚圧α3を発生させる(領域Y)。この場合、高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力が充分に得られる状態(半クラッチ状態)でワンウェイクラッチ55が解放から締結に切り換わるため、高速段選択クラッチ54を解放する際に生じるワンウェイクラッチ55の締結ショックをさらに軽減することができる。
【0098】
また上記実施形態では、副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものからエンジン10側から入力されるものに切り換わったときの運転者の加速要求を判断し、この加速要求が小さいほど棚圧α3を維持する時間Δt2を長くすることにより高速段選択クラッチ54の解放速度を小さくすることが好ましい。
【0099】
例えば、図9の実線aを基準にすると、運転者の加速要求が実線aでの加速要求よりも大きいときは、図9の一点鎖線dのように、棚圧α3を維持する時間Δt2をΔt2=td(<ta)と短くして高速段選択クラッチ54の解放速度を大きくする一方、運転者の加速要求が実線aでの加速要求よりも小さいときは、図9の二点鎖線eのように、棚圧α3を維持する時間Δt2をΔt2=te(>ta)と長くして高速段選択クラッチ54の解放速度を小さくする。
【0100】
かかる構成によれば、運転者の加速要求が小さいほど棚圧α3を維持する時間Δt2を長くすることにより高速段選択クラッチ54の解放速度を小さくして高速段選択クラッチ54をゆっくりと解放するから、ワンウェイクラッチ55による締結ショックを高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力で吸収できる量が増大するため、出力軸トルクの変動をより確実に抑制することができる。
【0101】
これに対しステップ110では、副変速機50に入力される動力がエンジン10側から入力されるものから主変速機30から入力されるものに切り換わって高速段選択クラッチ54を締結した後に車両が停車したと判断して高速段選択クラッチ54を強制的に解放する。かかる構成によれば、副変速機50が2速で車両が停止しても発進時には1速段に復帰しているから、車両の再発進を確実に実行することができる。なお、このときの高速段選択クラッチ54の解放は、車両が停止していることから締結ショックを考慮する必要がないため、ステップ109で説明したようにクラッチ圧αを徐々に減少させることなく、瞬時に減少させてよい。
【0102】
ステップ111では、副変速機50が1速になっているかどうかを判断する。ステップ111にて、副変速機50が1速になっていれば、ステップ112にて、副変速機50を強制的に2速にする状態が終了したとして、高速段選択クラッチ締結フラグFrgをFrg=0にセットして本フローチャートによる制御を終了し、副変速機50が1速になっていなければ、そのまま本フローチャートによる制御を終了する。
【0103】
ステップ113では、高速段選択クラッチ締結フラグFrgがFrg=0であるかどうかを判断する。このステップ113にて、Frg=0でなければ、ステップ114に移行し、高速段選択クラッチ締結フラグFrgをFrg=0にセットして本フローチャートによる制御を終了する。またステップ113にて、Frg=0であれば、副変速機50が2速であるとして、そのまま本フローチャートによる制御を終了する。
【0104】
上述の如く本実施形態においては、図6〜図9を参照すると、副変速機50が高速段選択クラッチ54を解放する低速段選択状態にて、副変速機50への動力が入力軸10sから入力されるものから主変速機30から入力されるものに切り換わったとき(t=t1)に領域Xに示す如く高速段選択クラッチ54を締結し、その後、再び副変速機50への動力が入力軸10sから入力されるものに切り換わるとき(t=t2)に領域Yに示す如く高速段選択クラッチ54を所定の解放速度で解放させるから、ワンウェイクラッチ55が解放から締結に切り換わるに際して生じる締結ショックは、高速段選択クラッチ54を解放するときの滑りによる摩擦力と、入力軸10s即ちエンジン10からの入力回転の上昇とによって吸収されるため、出力軸トルクの変動がほとんどなくワンウェイクラッチ55の締結によるショックを抑制することができる。
【0105】
従って本実施形態によれば、副変速機50が低速段を選択した状態での車両走行中に、副変速機50への動力がエンジン10から入力されるものから主変速機30から入力されるものに切り換わったのち、再びエンジン10から入力されるものに切り換わっても、出力軸トルクの変動によって運転者に違和感を与えることなく、快適な運転性を確保することができる。
【0106】
また本実施形態においては、図7の領域Yに示す如く、副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものから入力軸10sから入力されるものに切り換わったときの加速要求が小さいときに上記所定の解放速度を小さくして高速段選択クラッチ54をゆっくりと解放するから、ワンウェイクラッチ55の締結ショックを高速段選択クラッチ54の摩擦力で吸収できる量が増大するため、出力軸トルクの変動をより確実に抑制することができる。
【0107】
さらに本実施形態においては、図9の領域Yに示す如く、高速段選択クラッチ54のクラッチ圧αを減少させる途中に所定の棚圧α3を発生させるから、高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力が充分に得られる状態でワンウェイクラッチ55が解放から締結に切り換わるため、高速段選択クラッチ54を解放する際に生じるワンウェイクラッチ55の締結ショックをさらに軽減することができる。
【0108】
また本実施形態においては、図9の領域Yに示す如く、副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものから入力軸10sから入力されるものに切り換わったときの加速要求が小さいほど棚圧α3を維持する時間Δt2を大きくすることにより前記所定の解放速度を小さくして高速段選択クラッチ54をゆっくりと解放するから、ワンウェイクラッチ55による締結ショックを高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力で吸収できる量が増大するため、出力軸トルクの変動をより確実に抑制することができる。
【0109】
さらに本実施形態においては、図8の領域Xに示す如く、高速段選択クラッチ54のクラッチ圧αを増加させる途中に所定の棚圧α1を発生させるから、高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力が充分に得られる状態で高速段クラッチ54が解放から締結に切り換わるため、高速段選択クラッチ54を締結する際に生じるショックを確実に軽減することができる。
【0110】
さらに本実施形態においては、図8の領域Xに示す如く、棚圧α1が発生するまでのクラッチ圧増加速度を最大速とすることから、アクセルペダルの解放して再度踏み込むまでの時間Tが短い場合(T=T2)であっても、棚圧α1をいち早く発生させて高速段選択クラッチ54の滑りによる摩擦力を確保することで、主変速機30から副変速機50に動力が入力される時間が短い再加速時などの場合であっても、高速段クラッチ54の締結ショックを抑制することができる。
【0111】
また本実施形態においては、図8の領域Xに示す如く、棚圧α1を所定時間Δt1だけ保持し、その後も副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものである場合、クラッチ圧αを目標とするクラッチ圧α2まで上昇させ、高速段選択クラッチ54を完全に締結させる。これにより、ワンウェイクラッチ55が締結する際の締結ショックを抑制するのに必要となる摩擦力を予め十分に確保することができる。
【0112】
さらに本実施形態は、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ68を有し、この手段で検出したアクセル開度APOが大きいほど運転者の加速要求が大きいと判断することから、運転者の加速要求を容易に判断することができる。
【0113】
また本実施形態は、車両の停止を検出する車両停止検出手段を有し、図6のステップ110の如く、副変速機50が高速段選択クラッチ54を解放する低速段選択状態にて、副変速機50に入力される動力が入力軸10sから入力されるものから主変速機30から入力されるものに切り換わって高速段選択クラッチ54を締結した後に車両が停止した場合、高速段選択クラッチ54を解放させることから、副変速機50が高速段で車両が停止しても発進時には低速段に復帰しているから、車両の再発進を確実に実行することができる。
【0114】
さらに本実施形態は、車両の停止を検出する車両停止検出手段とアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ68を有し、図6のステップ103,104およびステップ107,108に示す如く、車両が停止することなくアクセルペダルが踏み込まれているとき、副変速機50に入力される動力が入力軸10sから入力されるものであると判断し、アクセルペダルを解放したまま車両が停止しないとき、副変速機50に入力される動力が主変速機30から入力されるものであると判断することから、車両が停止しているかどうかの判断と、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいるかどうかの判断だけで、副変速機50への動力の入力方向を容易に判断することができる。
【0115】
本発明は、車両停止検出手段が車速VSPを検出する車速センサ67を有し、図6のステップ103,107に示す如く、この手段67で検出した車速VSPがほぼゼロであるときに車両が停止しているとみなすことから、車両の停止を容易に検出することができる。
【0116】
ところで副変速機50は、同じ単純遊星歯車組53を用いるにしても、図10に示すような構成にすることができる。この実施の形態においては、上記した実施の形態におけると同様に、単純遊星歯車組53のキャリア53cを中間軸31に接続するが、リングギア53rを低速段と高速段とで兼用する兼用ダンパー59を介してハウジング51に接続し、サンギア53sをワンウェイクラッチ55を介して中空固定軸56上に載置してエンジンと逆方向へ回転不能にする。
【0117】
そして高速段選択クラッチ54は、単純遊星歯車組53のキャリア53cとリングギア53rとの間を結合して単純遊星歯車組53の3要素をインターロック状態にするものとする。なお高速段選択クラッチ54は、単純遊星歯車組53の3要素のうちどの2要素間を結合しても単純遊星歯車組53をインターロック状態にすることができる。
【0118】
かかる構成においては、高速段選択クラッチ54を解放していると、エンジン回転Neが兼用ダンパー59を経てリングギア53rに至り、リングギア53rの回転は、サンギア53sがワンウェイクラッチ55によりエンジン10と逆方向の回転を阻止されているため、サンギア53sを反力受けとしてキャリア53cへ減速下に伝達され、副変速機50は動力を中間軸31へ低速段選択状態で伝達することができる。そして高速段選択クラッチ54が締結されていると、兼用ダンパー59を経由したエンジン回転がクラッチ54およびキャリア53cを経て中間軸31にそのまま高速段選択状態で伝達される。
【0119】
つまり、上記実施形態は、単純遊星歯車組53のリングギア53rにドライブプレート52を介して入力軸10sを接続すると共にキャリア53cに主変速機30の中間軸31を接続し、サンギア53sが前記入力回転と逆の方向に回転し得なくなる位置にワンウェイクラッチ55を設けると共にリングギア53rとキャリア53cとの間にリングギア53rとキャリア53cとの相互間を直結または切断可能な高速段選択クラッチ54を設け、この高速段選択クラッチ54を解放してリングギア53rとキャリア53cとの相互間を切断する低速段選択状態を達成する一方、高速段選択クラッチ54を締結してリングギア53rとキャリア53cとの相互間を直結する高速段選択状態を達成させるものである。
【0120】
さらに副変速機50は、上記した単純遊星歯車組53に代えてダブルピニオン型遊星歯車組を用いた図11または図12のような構成にすることもできる。
図11に示す実施の形態においては、ダブルピニオン型遊星歯車組72のリングギア72rを主変速機30の中間軸31に接続し、サンギア72sに兼用ダンパー59を経てエンジン回転Neを伝達するよう接続し、キャリア52cをワンウェイクラッチ55によりエンジン10と逆の方向へ回転し得ないようにして中空固定軸56上に載置する。そして、ダブルピニオン型遊星歯車組72の3要素のうちの任意の2個、例えばキャリア72cおよびサンギア72s間を高速段選択クラッチ54により相互に結合してダブルピニオン型遊星歯車組72をインターロック可能とする。
【0121】
本実施の形態においては、高速段選択クラッチ54を解放すると、エンジン回転Neが兼用ダンパー59を経てサンギア72sに伝達され、サンギア72sの回転は、キャリア72cがワンウェイクラッチ55によりエンジン10と逆方向の回転を阻止されているため、キャリア72cを反力受けとしてリングギア72rへ減速下に伝達され、副変速機50は動力を中間軸31へ低速段選択状態で伝達することができる。そして高速段選択クラッチ54が締結されていると、兼用ダンパー59を経由したエンジン回転Neがインターロック状態の遊星歯車組72を経て中間軸31にそのまま高速段選択状態で伝達される。
【0122】
つまり、上記実施形態は、ダブルピニオン型遊星歯車組72のサンギア72sにドライブプレート22を介して入力軸10sを接続すると共にリングギア72rに主変速機30の中間軸31を接続し、キャリア72cが前記入力回転と逆の方向に回転し得なくなる位置にワンウェイクラッチ55を設けると共にサンギア72sとリングギア72rとの間にサンギア72sとリングギア72rとの相互間を直結または切断可能な高速段選択クラッチ54を設け、この高速段選択クラッチ54を解放してサンギア72sとリングギア72rとの相互間を切断する低速段選択状態を達成する一方、高速段選択クラッチ54を締結してサンギア72sとリングギア72rとの相互間を直結する高速段選択状態を達成させるものである。
【0123】
図12に示す実施の形態においては、図11の場合と同様にダブルピニオン型遊星歯車組72のリングギア72rを主変速機30の中間軸31に接続し、キャリア72cにエンジン回転Neを伝達するよう接続する。そしてサンギア72sを、ワンウェイクラッチ55を介しエンジン10と逆の方向へ回転不能にして中空固定軸56上に載置する。
なお、ダブルピニオン型遊星歯車組72の3要素のうちの任意の2個、例えばキャリア72cおよびサンギア72s間を高速段選択クラッチ54により相互に結合してダブルピニオン型遊星歯車組72をインターロック可能とする。
【0124】
かかる構成においては、高速段選択クラッチ54を解放すると、エンジン回転Neが兼用ダンパー59を経てキャリア72cに伝達され、キャリア72cの回転は、サンギア72sがワンウェイクラッチ55によりエンジン10と逆方向の回転を阻止されているため、サンギア72sを反力受けとしてリングギア72rへ減速下に伝達され、副変速機50は動力を中間軸31へ低速段選択状態で伝達することができる。そして高速段選択クラッチ54が締結されていると、兼用ダンパー59を経由したエンジン回転Neがインターロック状態の遊星歯車組72を経て中間軸31にそのまま高速段選択状態で伝達される。
【0125】
つまり、上記実施形態は、ダブルピニオン型遊星歯車組72のキャリア72cにドライブプレート52を介して入力軸10sを接続すると共にリングギア72rに主変速機30を接続し、サンギア72sが前記入力回転と逆の方向に回転し得なくなる位置にワンウェイクラッチ55を設けると共にキャリア72cとリングギア72rとの間にキャリア72cとリングギア72rとの相互間を直結または切断可能な高速段選択クラッチ54を設け、この高速段選択クラッチ54を解放してキャリア72cとリングギア72rとの相互間を切断する低速段選択状態を達成する一方、高速段選択クラッチ54を締結してキャリア72cとリングギア72rとの相互間を直結する高速段選択状態を達成させるように構成したものである。
【0126】
なお副変速機50に単純遊星歯車組53またはダブルピニオン型遊星歯車組72の何れを用いるにしても、上記各実施の形態におけるように、副変速機50が低速段選択状態になる時に反力要素として機能すべき要素をエンジン10と逆の方向へ回転不能にするに際しワンウェイクラッチ55を用いてその目的を達成する場合、副変速機50を低速段選択状態にする時の制御が簡単になると共に、従来よりあるトルクコンバータのロックアップ制御システムをそのまま流用して当該制御を行うことができて経済的である。
【0127】
上述したところは、本発明の好適な実施形態を示したに過ぎず、当業者によれば、請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、エンジンは、伝動モータに置き換えることができ、無段変速機のトロイダル型に限らず、Vベルト式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態になる制御装置を具えたトロイダル型無段変速機の伝動経路を示す模式図である。
【図2】 同制御装置における副変速機の実態構成を、前後進切り換え機構と共に示す半部縦断側面図である。
【図3】 同副変速機を高速段選択状態で示すと共に同前後進切り換え機構を前進回転伝動状態で示す模式的側面図である。
【図4】 同実施の形態における発進制御に際し締結させるべき発進用摩擦要素の締結進行制御態様を示す説明図である。
【図5】 同実施の形態における制御装置の変速制御に当たって用いる変速パターンを例示する線図である。
【図6】 本実施形態の制御装置を例示するフローチャートである。
【図7】 同フローチャートによる作用を例示するタイムチャートである。
【図8】 同フローチャートによる他の作用を例示するタイムチャートである。
【図9】 同フローチャートによるさらに他の作用を例示するタイムチャートである。
【図10】 本発明にかかる副変速機の他の実施の形態を示す模式的側面図である。
【図11】 本発明にかかる副変速機の更に他の実施の形態を示す模式的側面図である。
【図12】 本発明にかかる副変速機の更に他の実施の形態を示す模式的側面図である。
【図13】 従来のトロイダル型無段変速機の伝動機構を示す模式図である。
【符号の説明】
10 エンジン
10s 入力軸
30 主変速機
31 中間軸(主変速機の入力軸)
32 前後進切り換え機構
33 フロント側トロイダル伝動ユニット
34 リヤ側トロイダル伝動ユニット
35 入力ディスク
36 出力ディスク
37 パワーローラ
39 中空出力軸
40 出力歯車
41 カウンターシャフト
42 カウンターギア
43 出力歯車組
44 変速機出力軸
50 副変速機
51 ハウジング
52 ドライブプレート
53 単純遊星歯車組
53c キャリア
53r リングギア
53s サンギア
54 高速段選択クラッチ
54h クラッチハブ
54d クラッチドラム
54p クラッチピストン
55 ワンウェイクラッチ(低速段選択ブレーキ)
56 中空固定軸
57 高速段用ダンパー
58 低速段用ダンパー
59 兼用ダンパー
61 コントロールバルブボディー
62 変速機コントローラ
63 エンジン回転センサ
64 スロットル開度センサ
65 アイドルスイッチ
66 ブレーキスイッチ
67 車速センサ
68 アクセル開度センサ
72 ダブルピニオン型遊星歯車組
72c キャリア
72r リングギア
72s サンギア
Claims (10)
- 中立状態にし得る主変速機と、この主変速機の前段に配置され、入力軸からの入力回転を減速して出力する低速段と高速段を具える遊星歯車組からなる副変速機とを有し、
この副変速機は、遊星歯車組のサンギア、キャリア及びリングギアのいずれか一つの要素を、入力軸からの入力回転と逆の方向に回転し得ないようにワンウェイクラッチを介して変速機ケースに固定すると共に、他の2つの要素を、その相互間を直結または切断可能な選択クラッチを介して接続するものであって、
この選択クラッチを解放して低速段選択状態を達成する一方、
選択クラッチを締結して高速段選択状態を達成する自動変速機の制御装置において、
副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものであるか、主変速機から入力されるものであるかを判断する入力方向判断手段と、
運転者の加速要求を判断する加速要求判断手段と、
副変速機が選択クラッチを解放する低速段選択状態にて、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものから主変速機から入力されるものに切り換わったとき、前記選択クラッチを締結し、その後さらに、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものから入力軸から入力されるものに切り換わったとき、その切り換わったときの前記加速要求が小さいほど、選択クラッチの解放速度を小さくするように、当該選択クラッチを解放させる副変速機制御手段と、を具えることを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 前記副変速機は、単純遊星歯車組であることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記遊星歯車組は、ダブルピニオン型遊星歯車組であることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記選択クラッチは、そのクラッチ圧を減少させることで解放され該クラッチ圧を増加させることで締結されるものであり、前記副変速機制御手段は、前記クラッチ圧を減少させる途中に所定の棚圧を発生させるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記副変速機制御手段は、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものから入力軸から入力されるものに切り換わったときの前記加速要求が小さいほど前記棚圧を維持する時間を大きくして前記解放速度を小さくするものであることを特徴する請求項4に記載の制御装置。
- 前記加速要求判断手段は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を有し、この手段で検出したアクセル開度が大きいほど運転者の加速要求が大きいと判断するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記副変速機制御手段は、車両の停止を検出する車両停止検出手段を有し、副変速機が選択クラッチを解放する低速段選択状態にて、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものから主変速機から入力されるものに切り換わって前記選択クラッチを締結した後に車両が停止した場合、前記選択クラッチを解放させるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記入力方向判断手段は、車両の停止を検出する車両停止検出手段と、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段を有し、車両が停止することなくアクセルペダルが踏み込まれているとき、副変速機に入力される動力が入力軸から入力されるものであると判断し、アクセルペダルを解放したまま車両が停止しないとき、副変速機に入力される動力が主変速機から入力されるものであると判断するものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記車両停止検出手段は、車速を検出する車速検出手段を有し、この手段で検出した車速がほぼゼロであるときに車両が停止しているとみなすものであることを特徴とする請求項8に記載の制御装置。
- 副変速機は、その伝動経路中に低速段用及び高速段用のダンパを備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の制御装置。
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