JP4210809B2 - オンサイト型水素製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素の使用場所において、炭化水素を改質して、水素ガスを発生させる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素製造プラントで製造した水素をボンベ、カードルなどの容器に充填し、輸送し、使用する場所に水素を供給する手法に代えて、水素の使用場所において必要量の水素を製造する装置をオンサイト型水素製造装置という。
【0003】
図1に示す通り、従来のオンサイト型水素製造装置は、原料炭化水素1を改質反応により水素を主成分とする改質ガス3を発生させる改質装置2と、改質ガス3を加圧圧縮する圧縮機7と、加圧された圧縮改質ガス8から水素を分離精製するPSA装置10を主要な機構としている。このオンサイト型水素製造装置においては、圧縮機7の吸引部と吐出部とを結ぶ圧縮改質ガス戻り配管13に設けた吸引圧力調整弁6により、圧縮機7の吸引部の吸引圧力4を一定値に調節して、改質装置2から圧縮機7を介してPSA装置10へ送る改質ガスの量を制御している。
【0004】
すなわち、製品水素11の量を減少させる場合には、炭化水素原料1の量を低下させることにより、改質装置2で発生する改質ガス3の量が減少するので、必然的に圧縮機7の吸引圧力4が低下する。吸引圧力4が低下すると、吸引圧力調整弁6は、吸引圧力を一定値に調整すべく、弁開度を大きくするので、圧縮機7の吐出部から圧縮改質ガス戻り配管13を通って圧縮機7の吸引部に戻る圧縮改質ガス8の量が増加し、これに伴ってPSA装置10への圧縮改質ガス8の流入量が減少することにより、製品水素11の量が減少する。
【0005】
これに対し、製品水素11の量を増加させる場合には、炭化水素原料1の量を増加させることにより、改質装置2で発生する改質ガス3の量が増加するので、必然的に圧縮機7の吸引圧力4が上昇する。吸引圧力4が上昇すると、吸引圧力調整弁6は、吸引圧力を一定値に調整すべく、弁開度を小さくするので、圧縮機7の吐出部から圧縮改質ガス戻り配管13を通って圧縮機7の吸引部に戻る圧縮改質ガス8の量が減少し、これに伴ってPSA装置10への圧縮改質ガス8の流入量が増加することにより、製品水素11の量が増加する。
【0006】
上記のような従来のオンサイト型水素製造装置においては、製品水素量の増減により改質ガス量が増減しても、圧縮機の吐出部から吸引部に戻る改質ガスの量が変化するだけであり、圧縮機で加圧圧縮される改質ガスの量は、製品水素量の増減に関わりなく、圧縮機の最大圧縮能力量で一定である。圧縮機は、通常電動機を動力としているので、その所用電力量も、製品水素量の増減に関わりなく、圧縮機の最大所用電力量で一定である。この様な理由により、従来技術によるオンサイト型水素製造装置では、製品水素の量が少ない運転状態において、製品水素のコストに占める圧縮機の所用電力費用の割合が高くなり、製品水素の量が多い運転状態に比して、水素製造コストが著しく増大してしまうという問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、オンサイト型水素製造装置において、製品水素の増減に関わりなく、水素製造コストを増大させない新たな技術を提供することを主な目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の様な従来技術の問題点を解決するために研究を重ねた結果、炭化水素の改質装置と改質ガスの加圧圧縮機と加圧改質ガスから水素を分離するPSA装置とを備えたオンサイト型水素製造装置において、圧縮機の入口部配管に吸収圧力調整弁を設け、吸引圧力を一定値に調節するする場合には、従来技術の問題点を著しく軽減乃至実質的に解消し得ることを見出し、本発明を完成するにいたった。すなわち、本発明は、下記のオンサイト型水素製造装置を提供するものである。
1.原料炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを発生させる改質装置と改質ガスを加圧圧縮する圧縮機と加圧された改質ガスから水素を分離するPSA装置とを備えた水素製造装置において、圧縮機の入口部配管に吸引圧力調整弁を設け、吸引圧力を一定値に調節することにより圧縮機の流量制御を行うことを特徴とするオンサイト型水素製造装置。
2.圧縮機が揺動式である上記項1に記載のオンサイト型水素製造装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、図2に示す概要を示す本発明オンサイト型水素製造装置のフローの一例を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明によるオンサイト型水素製造装置は、原料炭化水素1を改質処理することにより水素を主成分とする改質ガス3を発生させる改質装置2と、改質ガス3を加圧圧縮する圧縮機7と、加圧圧縮された改質ガスから水素を分離するPSA装置10とを基本構成要素として備えている。
【0011】
本発明によるオンサイト型水素製造装置においては、圧縮機7の吸引部側(入口配管部)に吸引圧力調節弁6を配置し、この弁6で圧縮機7の吸引部の吸引圧力4を一定値に調節することにより、改質装置2から圧縮機7を介してPSA装置10へ送られる改質ガス量の制御を行う。
【0012】
この様な構成を備えた本発明オンサイト型水素製造装置において、製品水素11の量を減少させる場合には、原料炭化水素1の量を減少させることにより、改質装置2で発生する改質ガス3の流量が減少し、圧縮機7の吸引圧力4が必然的に低下する。圧縮機7の吸引圧力4が低下すると、吸引圧力調節弁6は吸引圧力4を一定値に保持するために、弁開度を小さくするので、圧縮機7を通過しつつ加圧圧縮される改質ガス8の量が減少する。その結果、PSA装置11への圧縮改質ガス8の流入量が減少するので、製品水素11の量が減少する。
【0013】
これに対し、製品水素11の量を増加させる場合には、原料炭化水素1の量を増加させることにより、改質装置2で発生する改質ガス3の流量が増加し、圧縮機7の吸引圧力4が必然的に上昇する。圧縮機7の吸引圧力4が上昇すると、吸引圧力調節弁6は吸引圧力4を一定値に保持するために、弁開度を大きくするので、圧縮機7を通過しつつ加圧圧縮される改質ガス8の量が増加する。その結果、PSA装置11への圧縮改質ガス8の流入量が増加するので、製品水素11の量が増加する。
【0014】
本発明によるオンサイト型水素製造装置を用いて水素を発生させる場合には、製品水素量の増減に応じて、圧縮機を通過して加圧圧縮される改質ガスの量も増減する。前述の通り、圧縮機の所用電力量は、加圧圧縮ガスの量に比例するので、製品水素量が少ない運転時には、圧縮機の所用電力量が減少するので、従来技術とは異なって、水素コストの増大を回避することができる。
【0015】
本発明において使用する原料炭化水素1としては、特に制限はなく、より具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、都市ガス、液化石油ガス、ナフサ、メタノールおよびこれらの混合物などが例示される。
【0016】
原料炭化水素は、改質触媒の被毒抑制のために、水素添加、吸着除去などの公知の方法により、予め脱硫を行っておくこともある。
【0017】
原料炭化水素1の改質方法としては、限定はなく、水蒸気改質、部分燃焼、二酸化炭素改質などの任意の方法が採用できる。また、改質反応後には、改質ガス3中の水素濃度を増大させるために、一酸化炭素変成反応を行う場合もある。
【0018】
圧縮機7としては、低流量かつ高圧力を必要とするので、通常往復式のものが使用され、その中でも揺動式のものがより好ましい。
【0019】
また、それ自体公知のPSA装置10においては、改質ガスは、精製された製品水素と不純物主成分のオフガスとに分離される。PSA装置においては、活性炭、ゼオライトなどの公知の吸着剤を使用する。分離されたオフガス12は、改質装置2の熱源として使用することもできる。
【0020】
なお、上記では言及していないが、従来技術を示す図1および本発明を示す図2において、符号5は吸引タンクを示し、符号9は吐出タンクを示す。
【0021】
【発明の効果】
従来技術によるオンサイト型水素製造装置においては、製品水素の量に関係なく、圧縮機の最大圧縮能力量に対応して圧縮機の所用電力量が一定となっていたので、製品水素量が少ない運転時においても、製品水素コストが著しく増大していた。
【0022】
これに対して、本発明によれば、製品水素量に比例して圧縮機の所用電力量が増減するので、製品水素ガス量が少ない運転時には、製品水素コストを低減し得る経済的な運転が可能となる。
【0023】
また、圧縮機入口部と出口部とを結ぶ配管が不要となるので、従来技術に比して、装置建設コストの削減と装置の小型化が可能となる。
【0024】
【実施例】
以下に添付図面を参照しつつ、実施例に基づいて本発明の特徴とするところをより一層明らかにする。
実施例1
図2に示すオンサイト型水素製造装置を用いて、本発明を実施した。
【0025】
原料炭化水素1として表1に示す組成/温度/圧力の都市ガスを使用し、これを表2に示す条件下に水蒸気改質した後、一酸化炭素変成および脱湿を行い、表3に示す組成/温度/圧力の改質ガスを得た。
【0026】
【表1】
Figure 0004210809
【0027】
【表2】
Figure 0004210809
【0028】
【表3】
Figure 0004210809
【0029】
上記の様にして得られた改質ガス3を55kWの電動機を備えた揺動式圧縮機7により700kPa(ゲージ圧)まで圧縮した後、充填剤として活性炭およびゼオライトを充填した多塔式PSA装置10に送り、圧縮改質ガス8中のH92O、CO92、CH94、CO、N92などの不純物をオフガス12として吸着除去することにより、最終的に表4に示す組成/温度/圧力の製品水素11を得た。
【0030】
【表4】
Figure 0004210809
【0031】
上記の製品水素11の製造過程において、改質装置2出口の改質ガス3の量を180Nm93/h、125Nm93/hおよび70Nm93/hの3段階に変化させ、それぞれの量において圧縮機7の所用電力量を測定した結果を表5に示す。この際、吸引圧力調整弁6により、吸引圧力4がそれぞれの改質ガス量において、7kPa(ゲージ圧)となるように調整した。
【0032】
【表5】
Figure 0004210809
【0033】
比較例1
図1に示す従来技術による水素製造装置を使用して、実施例1と同様の条件下に製品水素11の製造を行い、それぞれの改質ガス量での圧縮機7の所用電力量を測定した結果を表6に示す。
【0034】
【表6】
Figure 0004210809
【0035】
表5と表6との比較から、本発明によれば、改質ガス量の増減に対応して圧縮機の所用電力量を増減できるのに対し、従来技術においては、改質ガス量の増減に関わりなく、圧縮機の所用電力量を一定とする必要があることが明らかである。
【0036】
このことから、本発明水素製造装置を使用する場合には、製品水素量の少ない運転状況においても、製品水素コストが圧縮機の所用電力量によって増大しないという経済的な運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術による水素製造装置の概要を示すフロー図である。
【図2】本発明による水素製造装置の概要を示すフロー図である。
【符号の説明】
1…原料炭化水素
2…改質装置
3…改質ガス
4…吸引圧力
5…吸引タンク
6…吸引圧力調整弁
7…圧縮機
8…圧縮改質ガス
9…吐出タンク
10…PSA装置
11…製品水素
12…オフガス
13…圧縮ガス戻り配管

Claims (2)

  1. 原料炭化水素を改質して水素を主成分とする改質ガスを発生させる改質装置と改質ガスを加圧圧縮する圧縮機と加圧された改質ガスから水素を分離するPSA装置とを備えた水素製造装置において、圧縮機の入口部配管に吸引圧力調整弁を設け、吸引圧力を一定値に調節することにより圧縮機の流量制御を行うことを特徴とするオンサイト型水素製造装置。
  2. 圧縮機が揺動式である請求項1に記載のオンサイト型水素製造装置。
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