JP4210129B2 - 超伝導体を用いた教育ツール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超伝導体を用いた教育ツールに関する。
【0002】
【従来の技術】
物理学の授業等において、臨界温度Tc以下に冷却された超伝導体が磁石の上方に浮くところを学生に見せる形で、超伝導体の磁気浮上効果(例えば、非特許文献1参照)の実演が行われている。このように、単に書物を通じて超伝導体について学ぶ場合よりも、学生が強く超伝導体に興味を抱くように授業が工夫されている。
【0003】
【非特許文献1】
H.Suzuki et al., "A Model Vehicle with Magnetic Flux Pinning Effect of High-Tc Oxide Superconductors" Proc. of Fourth International Symposium on Magnetic-Bearings pp423-425 (1994-8). ETH Zurich
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、超伝導体の磁気浮上効果の実演を一方的に見せられるだけでは、学生はその場で一時的に超伝導体の性質に感動したとしても、その感動は長続きしない場合が多い。これでは、学生に超伝導体への関心をより強く抱かせようとする当該実演の意義が失われてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、超伝導体に対する学生の関心を向上させ得る教育ツールを提供することを解決課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
教育現場にあって実際に学生に接している本願発明者の得た知見によれば、教育の原点は「感動」であり、学生に対してどのように感動を与えるかということがその後の学生の自発的な学習を促す等の観点から非常に重要である。
【0007】
かかる知見に鑑み、前記課題を解決するための本発明の第1態様の超伝導体を用いた教育ツールは、超伝導体と、ボードと、該ボードの一の垂線方向に磁力線が湧き出す又は吸い込まれる複数の第1磁石ブロックが配列され、該ボードに対して固定されることで構成された第1磁石列と、第1磁石ブロックとは逆に該ボードの該一の垂線方向に磁力線が吸い込まれる又は湧き出す複数の第2磁石ブロックが、第1磁石列の両側に沿って配列され、該ボードに対して固定されることで構成された第2磁石列とを備え、該ボードが傾斜されたとき、第1及び第2磁石ブロックによる磁界によって該ボードから離反した状態の超伝導体が、該磁界によって第1磁石列に沿った方向への移動が容易とされている一方、他の方向への移動が困難とされていることを特徴とする。
【0008】
また、前記課題を解決するための本発明の第2態様の超伝導体を用いた教育ツールは、超伝導体と、ボードと、該ボードの一の垂線方向に磁力線が湧き出す又は吸い込まれ、外観が同一の複数の第1磁石ブロックが配列され、該ボードに対して固定されることで構成された第1磁石列と、外観が第1磁石ブロックと同一で、第1磁石ブロックとは逆に該ボードの該一の垂線方向に磁力線が吸い込まれる又は湧き出す複数の第2磁石ブロックが、第1磁石列の両側に沿って配列され、該ボードに対して固定されることで構成された第2磁石列と、第1及び第2磁石ブロックと外観が同一で、第2磁石列の周囲に配置された上で該ボードに対して固定される複数のブロックとを備え、該ボードが傾斜されたとき、第1及び第2磁石による磁界によって該ボードから離反した状態の超伝導体が、該磁界によって第1磁石列に沿った方向への移動が容易とされている一方、他の方向への移動が困難とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の教育ツールの理解の容易のため、まず、本ツールにおける超伝導体の挙動の原理について図5及び図6を用いて簡単に説明する。
【0010】
図5によれば、第1磁石ブロック21と、その両側にある一対の第2磁石ブロック22とによる磁界の様子は、磁力線cによって表されている。磁力線cはおおよそ、第1磁石ブロック21から上がり、第1磁石ブロック21と第2磁石ブロック22との境界上方付近に頂点をなし、第2磁石ブロック22に下がる形状となっている。磁力線cにより表される形で磁束が超伝導体10に入り込み、ピンニングされた状態で、超伝導体10は第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22から離反して静止する。
【0011】
この状態では図6に示すように、超伝導体10は前後(複数の第1磁石ブロック21の配列方向/白矢印参照)には移動が容易である。これは、前後について図5の磁力線cで示される超伝導体10近傍の磁界はほぼ一様であり、超伝導体10の移動に際してピンニングされた磁束に基づく磁場エネルギーが増大しないからである。
【0012】
一方、超伝導体10は上下左右(黒矢印参照)には移動が困難である。これは、上下左右については、超伝導体10の移動に際し、図5の磁力線cで示される超伝導体10近傍の磁界がひずみ、超伝導体10の移動に際してピンニングされた磁束に基づく磁場エネルギーが増大するからである。
【0013】
従って、超伝導体10は複数の第1磁石ブロック21により構成された「第1磁石列(図6参照)」に沿った方向(図6白矢印参照)への移動が容易とされている。一方、超伝導体10は他の方向(図6黒矢印参照)への移動が困難とされている。
【0014】
以上が本発明の教育ツールにおける超伝導体の挙動の原理の説明である。
【0015】
本発明の第1態様の教育ツールによれば、理科や物理学の学習者は、超伝導体がボードに設けられた第1磁石列及び第2磁石列から浮上していることにまず興味を覚える。これに加え、学習者は第1磁石列の形状を視覚を通じて認識しながら、自らボードを傾斜させることで、超伝導体をボードから浮上した状態のまま第1磁石列に沿った方向に移動させることができる。自己の所作が学習対象物(超伝導体)の挙動に直接反映されることにより、単に当該挙動を受動的に見せられる場合よりも、本願発明者が重視する「感動」、さらには学習対象物である超伝導体への「知的好奇心」を学習者に対してより大きく付与することができるものと期待される。
【0016】
また、学習者は、ボードの傾き加減によっては、超伝導体が第1磁石列に沿った方向とは異なる方向にも移動してしまう(第1磁石列から脱線してしまう)おそれがあるという予想に基づき、学習対象物である超伝導体の挙動を注意深く見守りながらボードを傾斜させると考えられる。このような超伝導体の挙動の注意深い観察を通じ、当該学習者に対して学習対象物に対する知的好奇心を強く覚えさせることができるものと期待される。
【0017】
また、超伝導体が周囲の熱によりあたためられて臨界温度Tcを超えると、超伝導性が失われ、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22により作り出される磁界(図5参照)による束縛から解除されてボード等に落下する。これにより、学習者は時間が経過すると超伝導体がその性質を損ねてしまうという事実を直接的に知見することができる。このため、学習者に対して臨界温度Tcを超えると磁気浮上効果が失われるという超伝導体の性質に関する興味を与えることができる。
【0018】
また、本発明の教育ツールには、適切にボードを傾けることで超伝導体を第1磁石列から脱線しないように移動させることができる一方、ボードが過剰に傾けられたり、超伝導体が暖まって超伝導性が弱まってしまうと、超伝導体が第1磁石列から脱線してしまうというゲーム性がある。このため、学習者がボードの操作がうまくいかず、超伝導体が第1磁石列から脱線してしまったような場合、次回はボードをうまく操作して超伝導体を第1磁石列から脱線しないように移動させようというモチベーションをこの学習者に対して与えることができる。これにより、学習者に対して本発明の教育ツールを反復・継続使用するモチベーションを与えることができる。
【0019】
前記のように本発明によれば、学習者に対して強い「感動」を与え、超伝導体に対する学習者の関心(知的好奇心)の向上を図り得る。
【0020】
また、本発明の第2態様の教育ツールによれば、第1磁石ブロック及び第2磁石ブロックとは別個の「ブロック」により、第1磁石列の形状を視覚を通じて認識することが困難又は不可能となる。
【0021】
従って、学習者は、第1磁石列に沿った方向には移動が容易だが、その他の方向への移動が困難であるという超伝導体の挙動をより注意深くみつめ、ボードを傾斜させながら、第1磁石列の所在を模索することになる。このような第1磁石列の模索はそれ自体が学習者にとっては興味深い作業であり、超伝導体の性質に関する強い印象を当該学習者に与えることができるものと期待される。また、第1磁石列の模索過程における超伝導体の挙動の注意深い観察を通じ、当該学習者に対して学習対象物に対する知的好奇心を強く覚えさせることができるものと期待される。
【0022】
また、本発明の第1態様の教育ツールと同様、本発明の第2態様の教育ツールには、適切にボードを傾けることで超伝導体を、ブロックによりその所在が隠されている第1磁石列から脱線しないように移動させることができる一方、ボードが過剰に傾けられたりすると、超伝導体が第1磁石列から脱線してしまうというゲーム性がある。このため、学習者がボードの操作がうまくいかず、超伝導体が第1磁石列から脱線してしまったような場合、次回はボードをうまく操作して第1磁石列の形状を正確に把握しよう、さらには超伝導体を第1磁石列から脱線しないように移動させようというモチベーションをこの学習者に対して与えることができる。これにより、学習者に対して本発明の教育ツールを反復・継続使用するモチベーションを与えることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の教育ツールの実施形態について図面を用いて説明する。
【0024】
図1は本発明の第1実施形態の教育ツールの構成説明図であり、図2は本発明の第1実施形態の教育ツールの使用方法の説明図であり、図3は本発明の第2実施形態の教育ツールの構成説明図であり、図4は本発明の第2実施形態の教育ツールの機能説明図である。
【0025】
まず、本発明の第1実施形態の教育ツールについて図1及び図2を用いて説明する。
【0026】
図1に示す第1実施形態の教育ツールは、超伝導体10と、ボード12と、第1磁石列210と、第2磁石列220とを備えている。
【0027】
超伝導体10は、第2種超伝導体であり、ピンニング効果により内部に磁束をトラップした状態でボード12に設けられた第1磁石列210及び第2磁石列220から離反する。
【0028】
ボード12は、トタン等の磁性材よりなる略平板状の上板121と、合板等の非磁性材よりなる略平板状の下板122とが上下に重ね合わせられることで構成されている。
【0029】
下板122には塩化ビニルパイプ等よりなる一対の平行な持ち手32がビス止め等によって固定されている。下板122の中央下部には雲台34が取り付けられる。雲台34は万力36に取り付けられ、万力36は机(図示略)等に固定される。
【0030】
第1磁石列210は、ボード12の上方(一の垂線方向)に(磁力線が湧き出すように)N極を向けた状態で配列され、上板121に対して磁力により固定された略矩形状の複数の第1磁石ブロック21により構成される。
【0031】
第2磁石列220は、第1磁石ブロック21と外観が同一で、ボード12の上方に(磁力線が吸い込まれるように)S極を向けた状態で第1磁石列210の両側に沿って配列され、上板121に対して磁力により固定された複数の第2磁石ブロック22により構成される。
【0032】
なお、第1磁石ブロック21がS極を上方に向け、第2磁石ブロック22がN極を上方に向けた状態で配列されてもよい。
【0033】
前記構成の教育ツールの使用方法について図2を用いて説明する。
【0034】
超伝導体10は予め液体窒素等の冷却剤により臨界温度Tc以下に冷却されている。また、超伝導体10は前記のピンニング効果により、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22により作り出される磁界(図5参照)に拘束されながら第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22から離反している(浮いている)。
【0035】
図2(a)〜図2(d)に示すように、超伝導体10がボード12から浮上している状態で、学習者xが持ち手32を介してボード12を傾ける。これにより、超伝導体10が第1磁石列210の方向(第1磁石ブロックの配列方向)に沿って第1磁石列210から脱線せずに移動する。
【0036】
詳細には、図2(a)に示すようにボード12が学習者xからみてその奥側が下がるように傾けられることで超伝導体10が前方に移動する。また、図2(b)に示すようにボード12が学習者xからみてその手前側が下がるように傾けられることで超伝導体10が後方に移動する。さらに図2(c)に示すようにボード12が学習者xからみてその右側が下がるように傾けられることで超伝導体10が右方向に移動する。また、図2(d)に示すようにボード12が学習者xからみてその左側が下がるように傾けられることで超伝導体10が左方向に移動する。
【0037】
超伝導体10は第1磁石列210に沿った方向(図6白矢印参照)には移動が容易とされている。その一方、他の方向(図6黒矢印参照)には超伝導体10の移動は困難であり、ボード12を過剰に傾けた場合、超伝導体10が予期せぬ方向に飛んでしまう(第1磁石列210から脱線してしまう)おそれがある。これは、図5及び図6を用いて既に説明したように、ピンニング効果に基づく磁場エネルギーの増大を回避されるという性質による。
【0038】
本発明の第1実施形態の教育ツールによれば、学習者xは、超伝導体10がボード12上の第1磁石列210及び第2磁石列220から浮上していることにまず興味を覚える。これに加え、学習者xは第1磁石列210の形状を視覚を通じて認識しながら、自らボード12を傾斜させ得る(図2(a)〜図2(d)参照)。これにより、超伝導体10をボード12上の第1磁石列210及び第2磁石列220から浮上した状態のまま第1磁石列210に沿った方向に(第1磁石列210から脱線しないように)移動させることができる(図6白矢印参照)。自己の所作が学習対象物(超伝導体10)の挙動に直接反映されることにより、単に当該挙動を受動的に見せられる場合よりも、「感動」さらには超伝導体10への「知的好奇心」を学習者xに対してより大きく付与することができるものと期待される。
【0039】
また、学習者xは、ボード12の傾き加減によっては、超伝導体10が第1磁石列210に沿った方向とは異なる方向にも移動してしまう(第1磁石列210から脱線してしまう)おそれがあるという予想に基づき、学習対象物である超伝導体10の挙動を注意深く見守りながらボード12を傾斜させると考えられる(図2(a)〜図2(d)参照)。このような超伝導体10の挙動の注意深い観察を通じ、当該学習者xに対して学習対象物に対する知的好奇心を強く覚えさせることができるものと期待される。
【0040】
また、超伝導体10が周囲の熱によりあたためられて臨界温度Tcを超えると、超伝導性が失われ、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22により作り出される磁界(図5参照)による束縛から解除されてボード12上の第1磁石列210から脱線してしまう。これにより、学習者xは時間が経過すると超伝導体10がその性質を損ねてしまうという事実を直接的に知見することができる。このため、学習者xに対して臨界温度Tcを超えると磁気浮上効果が失われるという超伝導体10の性質に関する興味をより直接的且つ効果的に与えることができる。
【0041】
また、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22は磁力によって上板121に固定されているので、第1磁石列210及び第2磁石列220の形状が容易に変更可能である。従って、超伝導体10の走行状態にバリエーションを持たせることができ、学習者xの個人能力や、学習者xに何を学習させるかという目的に合わせることができ、常に新鮮な「感動」を付与することができるものと期待される。
【0042】
また、本発明の教育ツールには、適切にボード12を傾けることで超伝導体10を第1磁石列210から脱線しないように移動させることができる一方、ボード12が過剰に傾けられたり、超伝導体10が暖まってしまうと、超伝導体10が第1磁石列210から脱線してしまうというゲーム性がある。このため、学習者xがボード12の操作がうまくいかず、超伝導体10が第1磁石列210から脱線してしまったような場合、次回はボード12をうまく操作して超伝導体10を第1磁石列210から脱線しないように移動させようというモチベーションをこの学習者xに対して与えることができる。これにより、学習者xに対して本発明の教育ツールを反復・継続使用するモチベーションを与えることができる。
【0043】
前記のように本発明によれば、学習者xに対して強い「感動」を与え、超伝導体10に対する学習者xの関心(知的好奇心)の向上を図り得る。
【0044】
また、養護教育においては、学習者xに対してボード12の傾けに応じた超伝導体10の挙動に対して継続的な興味を覚えさせることができる点に大きな意義があると考えられる。
【0045】
続いて、本発明の第2実施形態の教育ツールについて図3及び図4を用いて説明する。
【0046】
図3に示す第2実施形態の教育ツールにおいて、図1に示す第1実施形態の教育ツールと共通の構成については共通の符号を用いるとともに詳細な説明を省略する。
【0047】
第2実施形態の教育ツールは、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22のほか、第2磁石ブロック22と同様にN極を上方に向けた状態で上板121に磁力によって固定される磁石ブロック(ブロック)23を備えている。磁石ブロック23は、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22と外観(形状、色彩等)が同一とされている。なお、磁石ブロック23は、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22と外観同一であれば、磁石でなくてもよく、教育・ツールの軽量化という観点から軽量素材により形成されていてもよい。また、第1実施形態の教育ツールにおける持ち手32、雲台34、万力36が省略され、学習者xがボード12を直接手にして当該ボード12が傾けられる構成となっている。
【0048】
前記構成の教育ツールの使用方法について図4を用いて説明する。
【0049】
超伝導体10は予め液体窒素等の冷却剤により臨界温度Tc以下に冷却されている。また、超伝導体10は前記のピンニング効果により、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22により作り出される磁界(図5参照)に拘束されながら第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22から離反している(浮いている)。
【0050】
図4(a)〜図4(d)に示すように、超伝導体10がボード12から浮上している状態で、学習者xがボード12を傾ける。これにより、超伝導体10が第1磁石列210の方向(第1磁石ブロックの配列方向)に沿って移動する。
【0051】
詳細には、図4(a)に示すようにボード12が学習者xからみてその奥側が下がるように傾けられることで超伝導体10が前方に移動する。また、図4(b)に示すようにボード12が学習者xからみてその手前側が下がるように傾けられることで超伝導体10が後方に移動する。さらに図4(c)に示すようにボード12が学習者xからみてその右側が下がるように傾けられることで超伝導体10が右方向に移動する。また、図4(d)に示すようにボード12が学習者xからみてその左側が下がるように傾けられることで超伝導体10が左方向に移動する。
【0052】
超伝導体10は第1磁石列210に沿った方向(図6白矢印参照)には、第1磁石列210から脱線しないように移動が容易とされている。その一方、他の方向(図6黒矢印参照)には超伝導体10の移動は困難であり、ボード12を過剰に傾けた場合、超伝導体10が予期せぬ方向に飛んでしまう(第1磁石列210から脱線してしまう)おそれがある。これは、前述のように、ピンニング効果に基づく磁場エネルギーの増大を回避されるという性質による。
【0053】
本発明の第2実施形態の教育ツールによれば、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22とは別個の磁石ブロック(ブロック)23により、第1磁石列210の形状を視覚で通じて認識することが困難又は不可能となる。
【0054】
従って、学習者xは、第1磁石列210に沿った方向には移動が容易だが、その他の方向への移動が困難であるという超伝導体10の挙動をより注意深くみつめ、ボード12を傾斜させながら、第1磁石列210の所在を模索することになる。このような第1磁石列210の所在の模索はそれ自体が学習者xにとっては興味深い作業であり、超伝導体10の性質に関する強い印象を当該学習者xに与えることができるものと期待される。また、第1磁石列210の模索過程における超伝導体10の挙動の注意深い観察を通じ、当該学習者xに対して学習対象物に対する知的好奇心を強く覚えさせることができるものと期待される。
【0055】
また、教育ツールには、適切にボード12を傾けることで超伝導体10を、磁石ブロック23によりその所在が隠されている第1磁石列210から脱線しないように移動させることができる一方、ボード12が過剰に傾けられたりすると、超伝導体10が第1磁石列210から脱線してしまうというゲーム性がある。このため、学習者xがボード12の操作がうまくいかず、超伝導体10が第1磁石列210から脱線してしまったような場合、次回はボード12をうまく操作して第1磁石列210の形状を正確に把握しよう、さらには超伝導体10を第1磁石列210から脱線しないように移動させようというモチベーションをこの学習者xに対して与えることができる。これにより、学習者xに対して本発明の教育ツールを反復・継続使用するモチベーションを与えることができる。
【0056】
なお、超伝導体10は、綿により被覆された上でアルミホイルによりさらに被覆されたり、発泡スチロール製の容器に収容される等、種々の断熱材(図示略)により被覆されていてもよい。
【0057】
この実施形態によれば、断熱材により外気との接触による超伝導体10の温度上昇、さらにはその超伝導性の消滅を抑制することができるので、超伝導体10がボード12から浮上し得る時間を延長することができる。断熱材の有無により超伝導体10の浮上時間が変動することを学習者xに認識させることができれば、そのことにより学習者xに対して学習対象物である超伝導体10に対する知的刺激を付与することができるものと期待される。
【0058】
前記実施形態では超伝導体10が、ボード12上に設けられた第1磁石列210及び第2磁石列220に対して上方に離反していたが、他の実施形態として超伝導体10がボード12上に設けられた第1磁石列210及び第2磁石列220に対して下方、横方向、斜め方向等、あらゆる方向に離反していてもよい。これは、超伝導体10が、第1磁石ブロック21及び第2磁石ブロック22による磁界によりボード12に対して離反しながらも束縛され得るからである。
【0059】
第1実施形態において、第1磁石列210が途切れることで超伝導体10のジャンプが可能とされたり、第1磁石列210の形状がジェットコースターのように構成されて超伝導体10の宙返りや急カーブが可能とされてもよい。
【0060】
当該実施形態によれば、ボード12の傾斜に伴う超伝導体10の挙動のバリエーションが増し、これをもって学習者xに対してより強い「感動」及び学習対象物である超伝導体10への「知的刺激」を付与することができる。
【0061】
第2実施形態において、第1磁石ブロック21、第2磁石ブロック22及び磁石ブロック23の上面を取り外し自在に覆い、第1磁石ブロック21を第2磁石ブロック22及び磁石ブロック23から識別可能とするための色彩やマーク等が施された透明シートが設けられていてもよい。
【0062】
当該実施形態によれば、学習者xが教育ツールを使用した後で、当該透明シートを第1磁石ブロック21等の上面を覆うことで、学習者xに対し、自ら経験した超伝導体10の走行状態と、第1磁石列210の形状との関連性を把握させることができる。また、学習者xが教育ツールを使用する前に、当該透明シートを第1磁石ブロック21等の上面を覆うことで、学習者xに対し、ボード12を傾斜させることでこれから経験するであろう超伝導体10の走行状態を予測させることができる。これにより、学習者xに対して超伝導体10への知的刺激を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の教育ツールの構成説明図
【図2】本発明の第1実施形態の教育ツールの使用方法の説明図
【図3】本発明の第2実施形態の教育ツールの構成説明図
【図4】本発明の第2実施形態の教育ツールの使用方法の説明図
【図5】本発明の教育ツールにおける超伝導体の挙動の原理説明図(その1)
【図6】本発明の教育ツールにおける超伝導体の挙動の原理説明図(その2)
【符号の説明】
10‥超伝導体、12‥ボード、21‥表示、21‥第1磁石ブロック、22‥第2磁石ブロック、23‥磁石ブロック(ブロック)、210‥第1磁石列、220‥第2磁石列

Claims (1)

  1. 超伝導体を用いた教育ツールであって、
    超伝導体と、
    ボードと、
    該ボードの一の垂線方向に磁力線が湧き出す又は吸い込まれ、外観が同一の複数の第1磁石ブロックが配列され、該ボードに対して固定されることで構成された第1磁石列と、
    外観が第1磁石ブロックと同一で、第1磁石ブロックとは逆に該ボードの該一の垂線方向に磁力線が吸い込まれる又は湧き出す複数の第2磁石ブロックが、第1磁石列の両側に沿って配列され、該ボードに対して固定されることで構成された第2磁石列と、
    第1及び第2磁石ブロックと外観が同一で、第2磁石列の周囲に配置された上で該ボードに対して固定される複数のブロックとを備え、
    該ボードが傾斜されたとき、第1及び第2磁石による磁界によって該ボードから離反した状態の超伝導体が、該磁界によって第1磁石列に沿った方向への移動が容易とされている一方、他の方向への移動が困難とされていることを特徴とする教育ツール。
JP2003018187A 2003-01-28 2003-01-28 超伝導体を用いた教育ツール Expired - Fee Related JP4210129B2 (ja)

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