JP4208393B2 - 車両走行軌道上すれ違い部、その製作方法、および車両交通システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両走行軌道上すれ違い部、その製作方法、および車両交通システムに係り、特にシャトル方式の車両交通システムに適したすれ違い部短縮手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道、モノレール、新交通システム等の車両交通システムでは、互いに対向して上り方向/下り方向に走行する車両(車両隊列)を単線路上に設けたすれ違い部(駅部も含む)上の異なる分岐路を経由して互いに逆方向にすれ違い運転させるものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述した軌道上のすれ違い部の長さは、保安上、車両条件等に応じて種々の制約を受けやすく、そのままでは短縮しにくい。これにより、すれ違い部の長さに比例して軌道等のインフラ設備全体の建設費用もより高くなるといった問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の技術を背景になされたもので、すれ違い部の長さを簡易に且つより効果的に短縮でき、インフラ設備全体の建設費用をより安価にできる車両走行軌道上すれ違い部、その製作方法、および車両交通システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る車両走行軌道上すれ違い部の製作方法は、対を成す車両が互いにすれ違い走行可能な軌道上のすれ違い部の走行方向の長さをLとし、前記すれ違い部の端部における支障限界からの距離をL1とし、前記すれ違い部上に設置された路車間通信用の地上側アンテナの長さをL2とし、前記すれ違い部上の隣接する前記アンテナの干渉防止距離をL3とし、前記すれ違い部上を異線進入してきた前記対を成す車両の互いの衝突防止距離をL4としたとき、保安上必要な前記すれ違い部の走行方向の長さLを、最短の場合でも、L=2L1+3L2+L3+L4(L1,L2,L3,L4>0)とする前記すれ違い部の製作方法において、前記車両の路車間通信用の車両側アンテナを先頭側及び最後尾側の端部にそれぞれ設置し、路車間通信時の信号送信を一の車両側アンテナで行ない信号の受信は他方の車両側アンテナで行なう第一の情報授受方法と、前記地上側アンテナからデータを送信する際には先頭及び最後尾を示すコードを付加し当該コードに従って判断される一の車両側アンテナを使用して通信する第二の情報授受方法と、前記地上側アンテナを同じ位置に2つ敷設して、それぞれ先頭と最後尾とで使い分けて通信する第三の情報授受方法の上記三つの情報授受方法の少なくとも一つを選択して適用する場合、前記支障限界からの距離L1をL1=0、前記衝突防止距離L4をL4=0と短縮し、かつ、前記隣接する地上側アンテナ間で呼びかけ方式を変えること及び使用する周波数を変えることを含むアンテナの干渉防止技術を採用して前記隣接する地上側アンテナの干渉を防止した最短の場合の長さをL=3L2+L3とする前記すれ違い部を製作するものであり、前記地上側アンテナの長さL2は、最短の場合、前記車両が最高速度から停止するのに必要な距離と同じ長さであることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記車両の異線進入に対する防護が不要であり、かつ、前記路車間通信用の地上側アンテナのうち一台を専ら車両検知に用いる条件の下、当該車両検知に用いる地上側アンテナの長さL2aの路車間通信用の地上側アンテナ一台と他の路車間通信用の地上側アンテナ一台を前記すれ違い部の一車両軌道上にそれぞれ設置して、前記すれ違い部の走行方向の長さLを、最短の場合でも、L=L2a+L2+L3としてすれ違い部を製作するものであって、前記車両検知専用の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2aは、路車間通信が確定するのに必要な長さであり、他の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2よりも短いことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記車両が前記すれ違い部ですれ違いをする際には必ず車両が一度停止する場合、前記路車間通信用の地上側アンテナの設置数を一台とし、最短の場合の長さがL=L2となる前記すれ違い部を製作することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明では、請求項1から3までのいずれか1項に記載の発明において、前記対を成す車両は、前記軌道上を前記すれ違い部を介してシャトル走行するものであることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明に係る車両走行軌道上すれ違い部は、対を成す車両が互いにすれ違い走行可能な軌道上のすれ違い部の走行方向の長さをLとし、前記すれ違い部の端部における支障限界からの距離をL1とし、前記すれ違い部上に設置された路車間通信用の地上側アンテナの長さをL2とし、前記すれ違い部上の隣接する前記アンテナの干渉防止距離をL3とし、前記すれ違い部上を異線進入してきた前記対を成す車両の互いの衝突防止距離をL4としたとき、前記すれ違い部は、前記隣接する地上側アンテナ間で呼びかけ方式を変えること及び使用する周波数を変えることを含むアンテナの干渉防止技術を採用して前記隣接する地上側アンテナの干渉を防止したものであり、その長さLは、L=2L1+3L2+L3+L4の条件に加え、L=3L2+L3(L1=0、L4=0)の条件を満たすものであって、前記路車間通信用の地上側アンテナの長さL2は、少なくても前記車両が最高速度から停止するのに必要な距離と同じ長さを有していることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の発明において、前記車両の異線進入に対する防護が不要であり、かつ、前記路車間通信用の地上側アンテナのうち一台を専ら車両検知に用いる条件の下、当該車両検知に用いる地上側アンテナの長さL2aの路車間通信用の地上側アンテナ一台と他の路車間通信用の地上側アンテナ一台を前記すれ違い部の一車両軌道上にそれぞれ設置して、前記すれ違い部の走行方向の長さLを、最短の場合でも、L=L2a+L2+L3としてすれ違い部を製作するものであって、前記車両検知専用の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2aは、路車間通信が確定するのに必要な長さであり、他の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2よりも短いことを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明では、請求項6記載の発明において、前記路車間通信用の地上側アンテナの設置数は一台であって、前記すれ違い部の長さLは、最短の場合、L=L2となることを特徴とする。
【0012】
請求項8記載の発明では、請求項5から7までのいずれか1項に記載の発明において、前記対を成す車両は、前記軌道上を前記すれ違い部を介してシャトル走行するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項9記載の発明に係る車両交通システムは、請求項5から8までのいずれか1項に記載の車両走行軌道上すれ違い部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項10記載の発明では、請求項9記載の発明において、前記すれ違い部の手前側の軌道上にそのすれ違い部に進入する車両に対してその速度を下げる制御信号を通信可能な信号装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車両走行軌道上すれ違い部、その製作方法、および車両交通システムの実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の車両走行軌道上すれ違い部、その製作方法、および車両交通システムを適用したシャトル方式の閉塞システムである車両交通システム100の概要を説明するものである。この車両交通システム100は、走行軌道Rと、この走行軌道R上を走行する車両TRと、この車両TRの走行軌道R上の走行や保安等の運行一般を制御する制御システム1とを備えている。
【0017】
走行軌道Rは、2つの折り返し点P1a(図中の例では左側のもの)、P1b(図中の例では右側のもの)間を結ぶ単線で構成された本線(単線部)R1と、この本線R1上の2つの分岐点P2a(図中の例では左側のもの)、P2b(図中の例では右側のもの)間を結ぶ2つの分岐線(以下、図中の例で上側のものを「A線」、下側のものを「B線」と呼ぶ)で構成されたすれ違い部R2とで構成されている。
【0018】
車両TRは、すれ違い部R2を挟む両側の本線R1からそのすれ違い部R2を介して互いに逆方向にシャトル走行可能な対を成す2編成の車両隊列(以下、便宜上、「編成1」、「編成2」と呼ぶ)で構成される。各車両隊列は、本例では2両の車両(例えば、長さ10m程)を互いに連結部(例えば、長さ1m程)を介して機械的に連結してなる2両隊列(例えば、全長21m程)の構成となっている。車両TRの走行速度は、例えば最高[30km/h]に設定されている。
【0019】
制御システム1は、車両TR側に搭載される車両側装置10と、走行軌道R上の所定個所に設けられる複数のループアンテナ(路車間通信用アンテナ又は信号装置)(以下、図中の左側の折り返し点P1aに置かれるものを「1C」、図中の折り返し点P1bに置かれるものを「2C」、すれ違い部R2のA線上に置かれるものを図中の右側からに順次「A1C」、「A2C」、「AC」、すれ違い部R2のB線上に置かれるものを図中の左側から走行方向に順次「B2C」、「B1C」、「BC」と符号を付す)と、これらの各ループアンテナを介して車両との間で双方向に情報通信可能な地上側装置20とを備える。
【0020】
各ループアンテナの内、本線R1上のループアンテナ1C及び2Cは、折り返し点P1a、P1b上における車両TRの出発/停車用のもの、すれ違い部R2上のループアンテナAC及びBCは、すれ違い部R2における車両誤進入時の停止用(異線進入に対する防護用)のもの、すれ違い部R2上のその他のループアンテナA2C、AC、B1C、BCは、衝突防護区間(閉塞区間)を構成するものである。
【0021】
各ループアンテナの全長は、車両TRが最高速度から停止するのに必要な距離(例えば最高速度[30km/h]で減速度0.2[G]の場合に18m程)に余裕距離(例えば12m程)を加えたもので、本例では例えば30m程に設定される。
【0022】
車両側装置10は、車両TRの進行/停止制御等の車両側の制御中枢を担う車両側制御装置11と、各ループアンテナを介して地上側装置20との間で路車間通信が可能な路車間通信用アンテナを含む路車間通信装置12とを備える。
【0023】
この内、車両側制御装置11は、例えばコンピュータ等で構成され、本例ではループアンテナ上に存在するときに路車間通信装置12を介してループアンテナ経由で車両TRの存在を示す信号を送信すると共に、地上側装置20からループアンテナ経由で路車間通信装置12を介して送られてくる進行/停止の各信号に基づいて車両TRを進行/停止の運転を制御する。
【0024】
地上側装置20は、信号・保安制御、車両追跡、及び進路制御等の地上側の制御中枢を担う地上側制御装置21と、各ループアンテナを介して車両側装置10との間で路車間通信が可能な通信装置22とを備える。
【0025】
この内、地上側制御装置21は、例えばコンピュータ等で構成され、本例では2編成の車両TR、TRからその走行軌道R上の存在を示す信号をループアンテナ経由で通信装置22を介して受信すると共に、その受信信号に基づいて編成1、2の各車両TR、TRの位置関係を把握し、各車両TR、TR同士が衝突しないように進行/停止の各信号を生成し、その各信号を通信装置22からループアンテナ経由で車両TRに送信する。
【0026】
ここで、本例のシャトル方式の車両交通システム100におけるすれ違い部R2の製作方法(設定例)を図2および図3に基づいて説明する。このすれ違い部R2の製作方法は、従来保安上必要とされるすれ違い部R2の長さLを保安上の必要な要求を満足しつつ短縮して製作する方法である。当該製作方法によるすれ違い部R2の長さLを短縮する工程は、以下の第1〜第4のステップで構成される。
【0027】
まず、第1のステップは、図2及び図3(a)に示すように、すれ違い部R1の走行方向の長さをLとし、すれ違い部Rの端部における支障限界からの距離をL1とし、すれ違い部R2上に設置された各ループアンテナの長さをL2とし、すれ違い部R2上の隣接する2つのループアンテナの干渉防止距離をL3とし、すれ違い部R2上を異線進入してきた編成1、編成2の各車両TR、TRの互いの衝突防止距離をL4としたとき、すれ違い部の長さLを、「L=2L1+3L2+L3+L4」の条件を満たすように決めるものである。この条件は、保安上必要とされるものである。
【0028】
本例のシャトル方式の車両条件によれば、この第1のステップで求まるすれ違い部R2の長さLは、図示のように、支障限界からの距離L1が7m、アンテナ長L2が30m(車両TRが最高速度(本例では30km/m)から停止するのに必要な距離18m+余裕距離12m)、隣接するアンテナの干渉防止距離が10m、衝突防止距離L4が37m(16m+16m+5m)となるため、L=2L1+3L2+L3+L4=151m(目安値)となる。
【0029】
次いで、第2のステップは、前記第1のステップで決められたすれ違い部R2の長さLを、図3(b)に示すように「L=3L2+L3(L1=0、L4=0)」の第1の短縮条件を満たすように短く設定するものである。この第2のステップでは、以下のように車両TRの情報授受方法を改善する。
【0030】
まず、第2のステップにおける「L1=0」の短縮条件を満たす手法を説明する。L1の長さに相当する余裕距離は、車両側のアンテナが車体中央(長さ10mの場合は端部から5mの位置)に設けられていることに起因する。そのため、本例では車両TR側のアンテナを車体の端部に装備することで、その余裕距離を理論上0mまで減らす(実際は1m〜2mの余裕を取る)。
【0031】
次いで、第2のステップにおける「L4=0」の短縮条件を満たす手法を説明する。前述のL1=0の短縮条件を満たすために車両側のアンテナを車体端部に装備した場合、車両TRがすれ違い部R2のループアンテナ上に停止した際にそのループアンテナから外側にはみ出る部分の長さが長くなる。このため、L4の長さを長く取る必要が出てくる。その結果、すれ違い部R2の全体で考えると、L1の短縮分とL4の長くなった分とが互いに相殺し、結果的にすれ違い部R2の距離はそれほど短縮されない。
【0032】
このことを前提に置き、L4の長さを理論上0mに近づける手法を以下に説明する。
【0033】
まず、車両TRには前後にアンテナが設けられているが、通常はその内の一方しか使っていない。その理由は、現状の通信設備では同一の信号設備上で複数の返答がくると混信してしまい、正常に通信を行なうことができないためである。この点を以下の(1)〜(4)のいずれか1つ又はその組み合わせにより改善する。
【0034】
(1)路車間通信のための信号の送信は、車両隊列の先頭車両及び最後尾車両の内の片方の車両(本例では2両隊列の例えば最後尾車両)で行なうが、信号の受信は、車両隊列の先頭車両及び最後尾車両の両方の車両で行なう。これにより、ループアンテナから「停止」信号が出ている場合は、先頭車両がその信号を受信した時点から停止制御が始まるため、最短距離でループアンテナ内に停止させることが可能となる。この場合、尾端車両で送信のみ、先頭車両で受信のみを行なう場合は、車両長の分だけ、すれ違うタイミングの制約条件が厳しくなる。
【0035】
(2)車両隊列の中で制御上意味をもつものは基本的には先頭車両と最後尾車両のみのため、地上側装置20からデータを送信する際に「先頭」及び「最後尾」を示すコードを付加し、車両側装置10はそのコードに従って自分に対する問いかけのみ返答する方法を採用すれば、両方の車両の通信が可能となる。この場合、通信周期が見かけ上2倍になるが、この点は本例の場合では問題にならない。
【0036】
(3)電波干渉の少ない状態であれば、信号設備を同じ位置に2つ敷設し、それぞれ先頭車両用と最後尾車両用とに使い分け、例えば両者を呼びかけ方法を変えたり、使用する周波数を変えたりする等で区別して通信する方法を用いれば、通信周期を下げることなく両方の車両で通信を行なえる。
【0037】
(4)先頭車両と最後尾車両で周波数を変えて同時に返答があっても受信できるような仕組みを構築して先頭と最後尾の両方で通信を行なえる。
【0038】
以上の(1)〜(4)の車両の情報授受方法を採用することにより、車両TRがループアンテナの外側にはみ出ずに停止可能となり、L4の長さを理論上0mに近づけることが可能となる。
【0039】
従って、本例のシャトル方式の車両条件によれば、この第2のステップで設定される、すれ違い部R2の長さLは、図3(b)に示すように、支障限界からの距離L1が7mから0m、衝突防止距離L4が37mから0mにそれぞれ省略されるため、L=3L2+L3(+余裕距離)=100m(+余裕距離)となる。
【0040】
なお、図3(b)〜(d)では、簡略化のため、すれ違い部R2の2つの分岐線(A線、B線)の一方(図中の上側、すなわちB線)のみを図示しているが、2つの分岐線の他方についても同様であることは言うまでもない。また、図3(b)〜(d)では、説明の都合上、ループアンテナB2C、B1C、BCの内、B2Cを信号装置B、BCを信号装置Aと仮称する。
【0041】
次いで、第3のステップは、前記第2のステップで設定された前記すれ違い部の長さLを、図3(c)に示すように、L=L2a+L2+L3(L2a<L2)の第2の短縮条件を満たすようにさらに短く設定するものである。
【0042】
ここで、信号装置Aは異線進入に対する防護装置のため、異線進入の起こる可能性が極めて低いシステムに適用する場合、実質的に省略することも可能である。また、信号装置Bは検知専用の信号装置であれば良く、その長さは通信が確定するのに十分な長さ(例えば10m)があればよい。そこで、この信号装置Bの長さをL2a(L2a<L2:本例ではL2a=10m)と定義する。
【0043】
従って、本例のシャトル方式の車両条件によれば、この第3のステップで設定される、すれ違い部R2の長さLは、図3(c)に示すように、信号装置A(長さL2=30m)が省略され、信号装置Bの長さがL2=30mからL2a=10mに短縮されるため、L=L2a+L2+L3=50mとなる。
【0044】
次いで、第4のステップは、前記第3のステップで設定された前記すれ違い部の長さLを、図(d)に示すように、L=L2(L2a=0、L3=0)の第3の短縮条件を満たすようにさらに短く設定するものである。
【0045】
ここで、すれ違いを行なう際には必ず車両が一度停止するような駅部やすれ違い部では、進入検知用の装置と信号装置とを兼用することも可能である。また、車両側の制御を、「停止信号を受けてもすぐに停止するのではなく、アンテナ(通信可能範囲)の尾端までに停止できれば良い」とする場合は、すれ違いタイミングの許容誤差は極めて小さいながらも、L=L2(L2a=0、L3=0)の短縮条件を満たす、すれ違い部R2を用いて車両を停止させずにすれ違い走行させることも可能である。
【0046】
また、保安上の観点で言えば、車両をすれ違い部R2で停止させる必要もあるため、アンテナ長L2(すれ違い部を走行する最高速度から停止するまでに必要な距離+余裕距離)と、その区間を走行する車両の最大編成長(以下、L5)との内のいずれか長い方が、すれ違い部R2の最少の長さとして設定される。すなわち、L2>L5の場合は、L=L2、L2<L5の場合は、L=L5となる。
【0047】
従って、本例のシャトル方式の車両条件によれば、この第3のステップで設定される、すれ違い部R2の長さLは、図3(d)に示すように、信号装置B(長さL2a=10m)、隣接するアンテナの干渉防止距離(L3=10m)が省略されるため、L=L2=30mとなる。ただし、この区間の最大編成長L5が30mを超える場合は、その長さL5がすれ違い部R2の長さLとなる。
【0048】
従って、本例によれば、すれ違い部の長さを簡易に且つより効果的に短縮でき、インフラ設備全体の建設費用をより安価にできる車両走行軌道上すれ違い部、その製作方法、および車両交通システムを提供できる。
【0049】
なお、前述のように、すれ違い部R2における信号装置(ループアンテナ)の長さは、その区間を走行する車両TRが最高速度で走行した状態から停止できる距離に余裕距離を加える式で求められる。このため、信号装置の長さは、最高速度が30[km/h]で減速度0.2[G]の場合には18m+余裕距離であるが、最高速度が60[km/h]の場合には70m+余裕距離と長くとる必要がある。しかし、すれ違い部R2の長さはコスト的に大きく影響があるほか、建築上の制約のため、例えば既設の単線路線に本システムを適用する場合等、必要な長さを確保できない場合も想定される。そのような場合にも安全を確保した上で車両を高速に走行させるための一例を図4に示す。
【0050】
図4に示す車両交通システム100では、前記第4のステップにより信号装置Cのみの長さL2で構成されたすれ違い部R2の手前側に減速用の信号装置Dが設けられ、地上側制御装置21による制御の元で、すれ違い部R2の信号装置Cとその手前の信号装置Dを連動して動作させ、例えば信号装置Cが「出発」のときに信号装置Dも「出発」となり、信号装置Cが停止のときのみ信号装置Dに所定の速度指示を出すことにより、本線(単線部)では路線が許容する最高速度(例えば、60[km/h])で走行し、すれ違い部に入る前で所定の制限速度(例えば、30[km/h])に減速させることができる。
【0051】
なお、本例では、信号装置Dを複数敷設することが可能である。例えば、複数の信号装置Dの例としては、現状のATCのように路線最高速度から120[km/h]に落とす信号装置D1、120[km/h]から70[km/h]に落とす信号装置D2、70[km/h]から30[km/h]に落とす信号装置D3のように段階的に速度を下げるものを例示できる。また、この各信号装置の長さは、この信号を受けた車両が即座にその速度となるように制御されることを考慮すると、確実に通信を行なうのに必要とされる長さを確保するのみで良い。
【0052】
また、本例では、信号装置Dの位置とその位置での減速の割合を予めマップとして持つように構成することも可能である。この場合は、いずれかの装置に故障が発生していても停止してしまうのではなく、その位置の信号装置Dで走行可能な速度まで減速して走行することが可能となる。
【0053】
さらに、本例では、車両側のマップに速度のデータも入っている場合、速度を指示するのではなく単純に「出発」「減速」の2信号だけを出すことで同様の制御が可能となる。
【0054】
また、本例では、信号装置Dは分岐部R2での速度制限がある場合等、信号に関らず必ずある速度以下に下げる必要のある個所にも応用できる。この場合は、情報を変えることのできる通信手段ではなく、無電源でデータ固定のタグを利用して代用することも可能である。
【0055】
また、本例では、信号装置D上に到達した車両TRに対し、ある決められたタイミングですれ違い部に入るように速度指示を行なう方式を用いることにより、すれ違いのタイミングをより正確に合わせることも可能である。この場合は、先に信号装置D上に到達した車両TRに対しては、その区間の最高速度よりも若干低い速度指示を与え、その後から信号装置D上に到達した車両TRに対しては、先の車両TRに対する遅れ分を考慮して若干高い速度指示を与えることで、より正確にすれ違い部に進入させることが可能となる。この場合は、すれ違い部に入る2車両の速度差は、ある一定の範囲内に収めることが可能なため、より短いすれ違い部で停止することなく走行することが可能となる。
【0056】
また、本例では、信号装置Dはすれ違い部R2の手前だけに限らず、ループ路線の駅部の手前等に敷設することも可能である。この場合には、前方駅部に停車している車両に近づきすぎて駅部手前に停車してしまうことを緩和するための緩速区間として応用できる。すなわち、前方が開いている場合は「出発」信号が出ていて、前方が閉じているときは所定の速度での走行に切り換える。ただし、この場合は、前方区間は在線のため、速度を下げて運転した上で、その区間の尾端までに停車するように制御を行なう。
【0057】
なお、本例はシャトル方式の車両交通システムに適用してあるが、本発明はこれに限らず、その他の鉄道、モノレール等の車両交通システムや、IMTS(Intelligent Multi−Mode Transit System)等の新交通システム等、車両走行軌道上にすれ違い部を有する車両交通システムであれば、何れの場合でも適用可能である。
【0058】
本発明は、上記の例に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、すれ違い部の長さを簡単に且つより効果的に短縮でき、これにより、インフラ設備の費用をより安価なものにできる車両走行軌道上すれ違い部、その製作方法、および車両交通システムを提供できる。この効果は、特にシャトル方式の車両交通システムの場合により顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両走行軌道上すれ違い部、その短縮方法、および車両交通システムの実施形態であるシャトル方式の車両交通システムの全体構成を示す概要図。
【図2】すれ違い部の長さの設定例を説明する図。
【図3】(a)〜(b)はすれ違い部の短縮方法を説明する図。
【図4】すれ違い部手前に信号装置を設置する場合の例を説明する図。
【符号の説明】
10 車両側装置
11 車両側制御装置
12 路車間通信装置
20 地上側装置
21 地上側制御装置
22 通信装置
1C、2C、AC、A1C、A2C、BC、B1C、B2C ループアンテナ(信号装置)
R 走行軌道
R1 本線(単線部)
R2 すれ違い部
TR 車両
Claims (10)
- 対を成す車両が互いにすれ違い走行可能な軌道上のすれ違い部の走行方向の長さをLとし、前記すれ違い部の端部における支障限界からの距離をL1とし、前記すれ違い部上に設置された路車間通信用の地上側アンテナの長さをL2とし、前記すれ違い部上の隣接する前記アンテナの干渉防止距離をL3とし、前記すれ違い部上を異線進入してきた前記対を成す車両の互いの衝突防止距離をL4としたとき、保安上必要な前記すれ違い部の走行方向の長さLを、最短の場合でも、L=2L1+3L2+L3+L4(L1,L2,L3,L4>0)とする前記すれ違い部の製作方法において、
前記車両の路車間通信用の車両側アンテナを先頭側及び最後尾側の端部にそれぞれ設置し、
路車間通信時の信号送信を一の車両側アンテナで行ない信号の受信は他方の車両側アンテナで行なう第一の情報授受方法と、前記地上側アンテナからデータを送信する際には先頭及び最後尾を示すコードを付加し当該コードに従って判断される一の車両側アンテナを使用して通信する第二の情報授受方法と、前記地上側アンテナを同じ位置に2つ敷設して、それぞれ先頭と最後尾とで使い分けて通信する第三の情報授受方法の上記三つの情報授受方法の少なくとも一つを選択して適用する場合、
前記支障限界からの距離L1をL1=0、前記衝突防止距離L4をL4=0と短縮し、かつ、前記隣接する地上側アンテナ間で呼びかけ方式を変えること及び使用する周波数を変えることを含むアンテナの干渉防止技術を採用して前記隣接する地上側アンテナの干渉を防止した最短の場合の長さをL=3L2+L3とする前記すれ違い部を製作するものであり、
前記地上側アンテナの長さL2は、最短の場合、前記車両が最高速度から停止するのに必要な距離と同じ長さであることを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部の製作方法。 - 請求項1記載の発明において、
前記車両の異線進入に対する防護が不要であり、かつ、前記路車間通信用の地上側アンテナのうち一台を専ら車両検知に用いる条件の下、当該車両検知に用いる地上側アンテナの長さL2aの路車間通信用の地上側アンテナ一台と他の路車間通信用の地上側アンテナ一台を前記すれ違い部の一車両軌道上にそれぞれ設置して、前記すれ違い部の走行方向の長さLを、最短の場合でも、L=L2a+L2+L3としてすれ違い部を製作するものであって、前記車両検知専用の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2aは、路車間通信が確定するのに必要な長さであり、他の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2よりも短いことを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部の製作方法。 - 請求項2記載の発明において、
前記車両が前記すれ違い部ですれ違いをする際には必ず車両が一度停止する場合、前記路車間通信用の地上側アンテナの設置数を一台とし、最短の場合の長さがL=L2となる前記すれ違い部を製作することを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部の製作方法。 - 請求項1から3までのいずれか1項に記載の発明において、前記対を成す車両は、前記軌道上を前記すれ違い部を介してシャトル走行するものであることを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部の製作方法。
- 対を成す車両が互いにすれ違い走行可能な軌道上のすれ違い部の走行方向の長さをLとし、前記すれ違い部の端部における支障限界からの距離をL1とし、前記すれ違い部上に設置された路車間通信用の地上側アンテナの長さをL2とし、前記すれ違い部上の隣接する前記アンテナの干渉防止距離をL3とし、前記すれ違い部上を異線進入してきた前記対を成す車両の互いの衝突防止距離をL4としたとき、
前記すれ違い部は、前記隣接する地上側アンテナ間で呼びかけ方式を変えること及び使用する周波数を変えることを含むアンテナの干渉防止技術を採用して前記隣接する地上側アンテナの干渉を防止したものであり、その長さLは、L=2L1+3L2+L3+L4の条件に加え、L=3L2+L3(L1=0、L4=0)の条件を満たすものであって、
前記路車間通信用の地上側アンテナの長さL2は、少なくても前記車両が最高速度から停止するのに必要な距離と同じ長さを有していることを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部。 - 請求項5記載の発明において、
前記車両の異線進入に対する防護が不要であり、かつ、前記路車間通信用の地上側アンテナのうち一台を専ら車両検知に用いる条件の下、当該車両検知に用いる地上側アンテナの長さL2aの路車間通信用の地上側アンテナ一台と他の路車間通信用の地上側アンテナ一台を前記すれ違い部の一車両軌道上にそれぞれ設置して、前記すれ違い部の走行方向の長さLを、最短の場合でも、L=L2a+L2+L3としてすれ違い部を製作するものであって、前記車両検知専用の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2aは、路車間通信が確定するのに必要な長さであり、他の路車間通信用の地上側アンテナの長さL2よりも短いことを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部。 - 請求項6記載の発明において、
前記路車間通信用の地上側アンテナの設置数は一台であって、前記すれ違い部の長さLは、最短の場合、L=L2となることを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部。 - 請求項5から7までのいずれか1項に記載の発明において、前記対を成す車両は、前記軌道上を前記すれ違い部を介してシャトル走行するものであることを特徴とする車両走行軌道上すれ違い部。
- 請求項5から8までのいずれか1項に記載の車両走行軌道上すれ違い部を有することを特徴とする車両交通システム。
- 請求項9記載の発明において、前記すれ違い部の手前側の軌道上にそのすれ違い部に進入する車両に対してその速度を下げる制御信号を通信可能な信号装置を備えたことを特徴とする車両交通システム。
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