JP4207622B2 - 難燃剤スラリー及びその利用 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気絶縁膜等の形成に用いる電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー(以下、「難燃剤スラリー」ともいう)およびその利用に関し、更に詳しくは、良好な難燃性を示し、電気特性と高温高湿耐性が低下しない電気絶縁層を形成できる難燃剤スラリー、これを用いて得られる難燃剤スラリー、これを用いて得られるワニス、電気絶縁膜、積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化、多機能化に伴って、電子機器に用いられているプリント配線板にも、より高密度化が要求されるようになってきている。
プリント配線板を高密度化するための手段として、プリント配線板を多層化する方法が知られている。多層化されたプリント配線板(多層プリント配線板)は、通常、電気絶縁層と、その表面に形成された第一の導体層とを有する内層基板上に、新たな電気絶縁層を積層し、当該電気絶縁層の上に第二の導体層を形成することによって、更に必要に応じて電気絶縁層と導体層とを数段積層することによって得られる。
【0003】
ところで多層プリント配線板は、配線や電子素子からの発熱量が多く、発熱による着火を防止する必要がある。このため、電気絶縁層には、通常、難燃剤が配合されている。この難燃剤としては、有機溶剤に溶解しない難燃性付与剤が広く用いられている。この難燃性付与剤の中でも、環境への配慮から、塩基性含窒素化合物のリン酸塩などの非ハロゲン系難燃付与剤が賞用されている。例えば、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子などの非ハロゲン系難燃付与剤を、極性溶剤と非極性溶剤とからなる混合溶剤中で、湿式粉砕した後、難燃剤として樹脂組成物中に分散させて電気絶縁膜の製造に用いるワニスを得ている(特開2002−121394号公報)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−121394号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報記載のワニスを用いて電気絶縁膜を形成すると、加水分解した塩基性含窒素化合物のリン酸塩が原因で、電気絶縁膜の外観が白化することが判った。また、この白化のおきた電気絶縁膜は、長期絶縁信頼性を低下する場合のあることが判った。
かかる知見のもと、本発明者らは、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と特定の金属化合物と有機分散媒とを混合して得られた難燃剤スラリーを用いれば、高温高湿でも白化しない電気絶縁膜を与えることを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーであって、
(i)該電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーが、有機分散媒と、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と、金属化合物とを含み、
(ii)該塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子に対する該金属化合物の割合(金属化合物/塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子;モル比)が、0.5〜0.05であり、
(iii)該塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子の平均粒径が、0.8〜0.07μmであり、
(iv)該金属化合物の平均粒径が、0.8〜0.07μmであり、
(v)該金属化合物の有機分散媒への溶解量が、25℃常圧下で、1g/リットル以下であり、かつ
(vi)該金属化合物の金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属である電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーが提供される。
本発明によれば、絶縁性重合体、硬化剤、及び前記電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーを含有する硬化性樹脂組成物のワニスが提供され、また当該ワニスを支持体に塗布、乾燥して得られる成形物が提供され、更に当該成形物を硬化してなる電気絶縁膜が提供され、最外層が導体層である基板上に、前記電気絶縁膜からなる電気絶縁層が形成された積層体が提供される。
本発明によれば、有機分散媒と、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と、金属化合物とを湿式粉砕機中で攪拌して前記の電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーを調製する方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーは、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と、後に詳述する特定の金属化合物(以下、特定金属化合物という)と有機分散媒からなるものである。このスラリー中には、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と特定金属化合物とが分散されている。
【0008】
塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子に対する特定金属化合物の割合(特定金属化合物/塩基性含窒素化合物のリン酸塩;モル比)は、通常0.5〜0.05、好ましくは0.4〜0.07、より好ましくは0.3〜0.1である。本発明では、0.5〜0.05である。特定金属化合物の割合が多すぎると吸水性が増して電気絶縁性が低下し、逆に特定金属化合物の割合が少なすぎると塩基性含窒素化合物のリン酸塩の分解を十分に抑制できなくなる。
有機分散媒の量に格別な制限はないが、生産性や操作性の観点から、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と特定金属化合物の合計量に対して、通常100重量%〜1000重量%、好ましくは200重量%〜800重量%、より好ましくは250重量%〜600重量%である。
【0009】
塩基性含窒素化合物のリン酸塩は、難燃性を付与する化合物として知られている。塩基性含窒素化合物のリン酸塩は、通常、リン酸源となるオルトリン酸アンモニウム、オルトリン酸、縮合リン酸、無水リン酸、リン酸尿素、リン酸一水素アンモニウム及びこれらの混合物と、窒素源となるメラミン、ジシアンシアナミド、グアニジン、グアニル尿素及びこれらの混合物とを、縮合剤としての尿素、リン酸尿素(これはリン酸源にもなる)及びこれらの混合物の存在下に、加熱縮合反応させ、次いで焼成することによって得られる。塩基性含窒素化合物のリン酸塩として好ましい化合物は、ポリリン酸メラミン塩、ポリリン酸メラム塩、ポリリン酸メレム塩、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩である。
【0010】
また、電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー中に分散されている塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子の一次粒子の平均粒径(以下、単に平均粒径という)は、通常1μm以下、好ましくは1μm〜0.05μm、より好ましくは0.8μm〜0.07μm、特に好ましくは0.5μm〜0.1μmである。本発明では、0.8μm〜0.07μmである。ここで、本発明において平均粒径の測定は、後述する実施例記載の方法である。また、長径10μmを超える粒子数が10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下であるものを用いると、難燃性が高く、電気絶縁性にも優れた多層回路基板を得ることができる。粒子の平均粒径を上述の範囲に調整するためには、湿式粉砕など、一般的な粒子の粉砕処理を行えば良い。
【0011】
本発明に用いる特定金属化合物は、長周期型周期律表の第2族又は第13族に属する金属(以下、特定金属ということがある)を金属成分として含む有機又は無機の化合物である。そして、本発明で用いる特定金属化合物は、スラリーに用いる有機分散媒に難溶である。ここで有機分散媒に難溶であるとは、常圧下、25℃での有機分散媒への溶解量が1g/リットル以下、好ましくは0.5g/リットル以下であることを言う。本発明では、1g/リットル以下である。また、特定金属化合物は、粒子であるのが好ましく、その場合、特定金属化合物の平均粒径は、通常1μm〜0.05μm、好ましくは0.8μm〜0.07μm、より好ましくは0.5μm〜0.1μmである。本発明では、0.8μm〜0.07μmである。この範囲であれば、高温高湿耐性と絶縁抵抗性を高いレベルで維持できる。ここで、本発明において平均粒径の測定は、後述する実施例記載の方法である。粒子の平均粒径を上述の範囲に調整するためには、湿式粉砕などの一般的な粒子の粉砕処理を行えば良い。
【0012】
このような特定金属化合物として、例えば特定金属と有機酸との塩(有機酸塩)、特定金属と無機酸との塩(無機酸塩)、特定金属の水酸化物(金属水酸化物)、特定金属のハロゲン化物(金属ハロゲン化物)や、これらの水和物などが挙げられる。更に、カナール石(MgCl・KCl・6HO)、白雲石(CaCO・MgCO)などの複塩を用いることもできる。中でも、耐水安定性が高く、塩基性含窒素化合物のリン酸塩の分解を抑制する能力が高いことから、炭酸塩や金属水酸化物が好ましい。
第2族に属する金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが挙げられる。
第13族に属する金属としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムが挙げられる。
これらの金属の中でも、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウムなどの軽金属が好ましく、特に操作性と環境安全性の観点からマグネシウム、カルシウム、アルミニウムが好ましい。本発明では、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属である。
【0013】
有機酸としては、シュウ酸、酒石酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
無機酸としては、炭酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
ハロゲンとしては、塩素、臭素、硫黄などが挙げられる。
【0014】
有機分散媒は、常温常圧下で液体の有機化合物であればよく、一般に有機溶剤として使用されるものが賞用される。有機分散媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系有機溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系有機溶剤;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶剤;などが挙げられる。
【0015】
電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーを調製する方法に格別な制限はなく、有機分散媒中に塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と特定金属化合物とを、別々に又は同時に添加して、攪拌する方法A;塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と有機分散媒との混合液と、特定金属化合物と有機分散媒との混合液とを別々に調製した後、両者を混合し、攪拌する方法B;塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と特定金属化合物とを有機分散媒又は水中で混合した後、必要に応じて湿式分散し、次いで有機分散媒又は水を除去して粒子を分取した後、当該粒子を有機分散媒と混合し、攪拌する方法C;などが挙げられる。尚、粒子を分取する工程を含む方法Cにおいて水を使用する場合、分取された難燃剤を十分に乾燥するのが好ましい。
いずれの方法においても、各成分を攪拌するのに要する時間や温度に格別な制限はなく、攪拌方法や各成分の使用量に応じて任意に選択することができるが、通常1〜30分間、好ましくは1〜10分間、10〜80℃、好ましくは15〜60℃、より好ましくは20〜40℃で行う。
【0016】
各成分を攪拌する方法に格別な制限はなく、例えば、攪拌機や湿式粉砕機などの装置を用いることができる。特に、電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー中の粒子の平均粒径を上述の範囲に調整することができるため、湿式粉砕機を用いて攪拌するのが好ましい。具体的には、生産性の観点から、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と特定金属化合物とを、有機分散媒中で混合する際に湿式粉砕機を用いて混合することで、平均粒径の大きな粒子を塊砕(湿式粉砕)する。
また、粒子の凝集を抑制する目的で、分散助剤を添加することが好ましい。
【0017】
分散助剤は、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子及び特定金属化合物と接触することにより、その表面に物理的又は化学的に結合(吸着を含む)して、粒子の凝集を低下させ、粒子の分散を向上させるもので、シラン化合物、金属エステル化合物、金属錯体化合物、金属キレート化合物などがある。中でも、有機溶剤の中で安定性から、金属キレート化合物が好ましい。
金属キレート化合物は、金属と有機化合物残基とがキレートを形成したものであれば良く、好ましくは、金属アルコキシド中の、一部のアルコキシ基がエステル残基やカルボン酸残基や他のアルコキシ基などの有機化合物残基と置換されたものである。分散溶液中にて安定であることから特にアルミニウムやチタンを有する金属キレート化合物が好ましい。好適なアルミニウムキレート化合物としては、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテートやモノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。好適なチタンキレート化合物としては、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートやイソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネートやイソプロピルトリス(ジオクチルバイフォスフェート)チタネートが挙げられる。
分散助剤の量は、塩基性含窒素化合物のリン酸塩100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜30重量部である。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物のワニスは、絶縁性重合体、硬化剤、及び上述した電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーを含有するものである。ワニスの固形分濃度は、形成する電気絶縁膜の厚みの制御や平坦性を考慮して適宜選択されるが、通常5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは20〜60重量%になる範囲である。ワニスには、電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー由来の有機分散媒が含まれているが、電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーに含まれている有機分散媒では量が不足する場合、有機分散媒を新たに追加することができる。
【0019】
本発明のワニスに含有される電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー以外の成分について、以下に説明する。
絶縁性重合体は、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体、液晶ポリマー、ポリイミドなどの電気絶縁性を有する重合体である。これらの中でも、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネートエステル重合体又はポリイミドが好ましく、脂環式オレフィン重合体又は芳香族ポリエーテル重合体が特に好ましく、脂環式オレフィン重合体がとりわけ好ましい。また脂環式オレフィン重合体は、極性基を有するものが好ましい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好適である。脂環式オレフィン重合体としては、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどのノルボルネン環を有する単量体(以下、ノルボルネン系単量体という)の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、単環シクロアルケン重合体、脂環式共役ジエン重合体、ビニル系脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素添加物が好ましく、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素添加物が好ましい。脂環式オレフィンや芳香族オレフィンの重合方法、及び必要に応じて行われる水素添加の方法は、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0020】
硬化剤としては、イオン性硬化剤、ラジカル性硬化剤又はイオン性とラジカル性とを兼ね備えた硬化剤等、一般的なものを用いることができ、特にビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテルのようなグリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物が好ましい。硬化剤の配合割合は、絶縁性重合体100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは10〜50重量部の範囲である。
例えば硬化剤として多価エポキシ化合物を用いた場合には、硬化反応を促進させるために、第3級アミン化合物(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなど)や三弗化ホウ素錯化合物などの硬化促進剤や硬化助剤を使用するのが好適である。硬化促進剤や硬化助剤の量は、絶縁性重合体100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
硬化剤、硬化促進剤及び硬化助剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択される。
【0021】
追加の有機分散媒として、上述した本発明の電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーに用いる有機溶剤が例示される。電気絶縁形成時に微細配線への埋め込み性に優れ、気泡等を生じさせないシート状又はフィルム状成形物を与えることができるため、有機分散媒としては、芳香族炭化水素系有機溶剤や脂環式炭化水素系有機溶剤のような非極性有機溶剤と、ケトン系有機溶剤のような極性有機溶剤とで構成されるものが好ましい。その場合、非極性有機溶剤と極性有機溶剤の割合が、重量比で、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の範囲となるのが望ましい。
【0022】
本発明のワニスには、上述した各成分の他、所望に応じて、レーザー加工性向上剤(2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールなど)、軟質重合体、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、紫外線吸収剤などをその他の成分として用いることができる。
【0023】
上述してきた絶縁性重合体、硬化剤、電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー、必要に応じて追加の有機分散媒、及び必要に応じてその他の成分を混合して、本発明のワニスを得る。ワニスを得る方法に格別な制限はない。各成分を混合する際の温度は、硬化剤による反応が作業性に影響を及ぼさない温度で行うのが好ましく、安全性の点から混合時に使用する有機分散媒の沸点以下で行うのがより好ましい。
【0024】
各成分の混合方法は、常法に従えばよく、例えば、攪拌子とマグネチックスターラーを使用した攪拌、高速ホモジナイザー、ディスパージョン、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、ビーズミル、アトライター三本ロールなどを使用した方法などで行うことができる。
【0025】
本発明のワニスを任意の形状の支持体に塗布し、乾燥すれば本発明の成形物が得られる。例えば、シート状又はフィルム状成形物を得る場合、樹脂フィルム(キャリアフィルム)、金属箔などの平坦な支持体上に塗布、乾燥すればよい。
シート状又はフィルム状の成形物を得る方法に格別の制限はないが、操作性の観点から溶液キャスト法で成形するのが好ましい。溶液キャスト法では、ワニスを支持体に塗布した後に、有機溶剤を乾燥除去して、支持体付きのシート状又はフィルム状の成形物を得ることができる。
溶液キャスト法に使用する支持体として、樹脂フィルム(キャリアフィルム)や金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、通常、熱可塑性樹脂フィルムが用いられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネイトフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これら樹脂フィルムの中、耐熱性や耐薬品性、積層後の剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。
支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1μm〜200μm、好ましくは2μm〜100μm、より好ましくは3〜50μmである。
【0026】
塗布方法として、デイップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコートなどの方法が挙げられる。また有機溶剤の除去乾燥の条件は、有機溶剤の種類により適宜選択され、乾燥温度は、通常20〜300℃、好ましくは30〜200℃であり、乾燥時間は、通常30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。
【0027】
フィルム又はシートの厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1.0〜80μmである。なお、フィルム又はシートを単独で得たい場合には、支持体上にフィルム又はシートを形成した後、支持体から剥離する。
このほか、本発明のワニスを有機合成繊維やガラス繊維などの繊維基材に含浸させてプリプレグを形成することもできる。
【0028】
本発明の電気絶縁膜は、本発明のワニスを支持体上に塗布、乾燥して得られた本発明の成形物を、硬化して得られる硬化物である。本発明の成形物を、任意の基板上に積層し、硬化して、硬化物を得ることができる。ここで基板として、最外層に導体層(第一の導体層)を有する基板(以下、内層基板という)を用いれば、本発明の積層体が得られる。
内層基板は、プリント配線基板、シリコンウェハー基板などの1層以上の電気絶縁層と、必要に応じて1層以上の導体層を有し、その表面に形成された導体層(第一の導体層)とからなる。内層基板の厚みは、通常50μm〜2mm、好ましくは60μm〜1.6mm、より好ましくは100μm〜1mmである。
【0029】
内層基板を構成する電気絶縁層の材料は電気絶縁性のものであれば特に限定されず、例えば前述したワニスを硬化してなるものが挙げられる。また、内層基板は、ガラス繊維、樹脂繊維などを強度向上のために含有させたものであっても良い。内層基板表面にある第一の導体層の材料は、通常、導電性金属である。
【0030】
本発明の電気絶縁膜を有する積層体を得る方法としては、(A)本発明のワニスを、内層基板に塗布した後、有機溶剤を除去乾燥して得られる本発明の成形物を加熱や光照射によって硬化させる方法、又は(B)フィルム状又はシート状の成形物を、内層基板上に積層した後に、加熱圧着等により硬化させる方法が挙げられる。電気絶縁層の平滑性が確保でき、多層形成が容易な点から、(B)の方法により積層体を得るのが好ましい。
また、本発明の電気絶縁膜中、走査型電子顕微鏡により確認される500μm四方の範囲に、通常30μm超過、好ましくは25μm超過、より好ましくは20μm超過の、難燃剤が凝集して形成される大きな粒子が存在しない。
本発明の電気絶縁膜の厚みは、通常0.1〜200μm、好ましくは1〜150μm、より好ましくは10〜100μmである。
【0031】
(A)の方法において、本発明のワニスを内層基板に塗布する方法は、特に制限されず、例えば、本発明のワニスをダイコーター、ロールコーター又はカーテンコーターにより基板に塗布する方法が挙げられる。基板にワニスを塗布した後、70〜140℃、1〜30分乾燥し、更に通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃、通常0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間加熱して、硬化させて、本発明の電気絶縁膜からなる電気絶縁層が形成された本発明の積層体を得る。
【0032】
(B)の方法において、本発明のフィルム状又はシート状の成形物を内層基板上に積層するには、通常、支持体付きのフィルム状又はシート状成形物を、当該フィルム状又はシート状の成形物が内層基板表面の第一の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着する。加熱圧着は、配線への埋め込み性を向上させ、気泡等の発生を抑えるために減圧(好ましくは真空)下で行うのが好ましい。減圧する場合、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paに雰囲気を減圧する。加熱圧着時の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃、圧着力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPa、圧着時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。
加熱圧着によって成形物が硬化され、電気絶縁層が形成された本発明の積層体が得られる。
前記支持体付きのフィルム状又はシート状の成形物を内層基板上に積層させた場合には、前記支持体が付いたまま硬化させても良いが、通常は、前記支持体を剥がした後に硬化させる。
【0033】
内層基板表面の導体層と電気絶縁層との密着力を向上させるために、硬化性組成物のフィルム状又はシート状成形体を積層する前に、導体層が形成された内層基板の表面を前処理することが好ましい。前処理の方法としては、特に限定されず公知の技術が使える。例えば、内層基板表面の導体層が銅からなるものであれば、強アルカリ酸化性溶液を内層基板表面に接触させて第一の導体層表面に、房状の酸化銅の層を形成して粗化する酸化処理方法、第一の導体層表面を先の方法で酸化した後に水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリンなどで還元する方法、及び第一の導体層にめっきを析出させ粗化する方法、有機酸と接触させて、第一の導体層の銅の粒界を溶出して粗化する方法、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法等が挙げられる。この内、微細な配線パターンの形状が維持されやすい観点から、有機酸と接触させて第一の導体層の銅の粒界を溶出して粗化する方法、チオール化合物やシラン化合物などによりプライマー層を形成する方法が好ましい。
【0034】
このようにして内層基板上に本発明の電気絶縁膜を形成することで、当該電気絶縁膜からなる電気絶縁層が最外層となった本発明の積層体が得られる。
この積層体を最終的なプリント配線板として得た場合、当該基板において、本発明の電気絶縁膜はソルダーレジスト層として機能する。
【0035】
また本発明の積層体上に、新たな導体層を形成することができる。新たな導体層を形成する方法に格別な制限はないが、例えば、次の方法が挙げられる。
電気絶縁層にビアホール形成用の開口を形成し、次いで、この電気絶縁層表面とビアホール形成用開口の内壁面にスパッタリング等のドライプロセス(乾式めっき法)により金属薄膜を形成した後、金属薄膜上にめっきレジストを形成させ、更にその上に電解めっき等の湿式めっきによりめっき膜を形成する。このめっきレジストを除去した後、エッチングにより金属薄膜と電解めっき膜からなる第二の導体層を形成する。電気絶縁層と第二の導体層との密着力を高めるために、電気絶縁層の表面を過マンガン酸やクロム酸等の液と接触させ、あるいはプラズマ処理等を施すことができる。
【0036】
第一の導体層と第二の導体層との間を接続するビアホール形成用の開口を電気絶縁層に形成させる方法に格別な制限はなく、例えば、ドリル、レーザ、プラズマエッチング等の物理的処理等によって行う。電気絶縁層の特性を低下させず、より微細なビアホールを形成することができるという観点から、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UV−YAGレーザ等のレーザによる方法が好ましい。
また、上記プリント配線板において、導体層の一部は、金属電源層や金属グラウンド層、金属シールド層になっていても良い。
【0037】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中、部及び%は、特に断りのない限り量基準である。
本実施例において層間絶縁抵抗評価及び高温高湿耐性評価の方法は以下の通りである。
(1)分子量(重量平均分子量)
トルエンを有機溶剤とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
(2)水素化率及びカルボキシル基含有率
水素添加前の重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加率(水素添加添加率)及び重合体中の総モノマー単位数に対する(無水)マレイン酸残基のモル数の割合(カルボキシル基含有率)はH−NMRスペクトルにより測定した。
(3)ガラス移転温度(Tg)
示差走査熱量法(DSC法)により測定した。
(4)平均粒径
走査型電子顕微鏡にて観察された塩基性含窒素化合物粒子1000個及び特定金属化合物粒子1000個の長径を計測して、得られた値の平均を一次粒子の平均粒径として算出した。
【0038】
(5)層間絶縁抵抗評価
内層基板(両面とも銅薄膜が形成された基板)の両面に電気絶縁層−導体層−電気絶縁層−導体層−電気絶縁層の順で多層化したプリント配線板のそれぞれ2層目と3層目の電気絶縁層間で、JPCA−BU01に定めるベタ導体−ライン間評価用パターンを形成した後、直流電圧5.5Vを印加した状態で、131℃、85%RHを維持する恒温恒湿槽に放置した。100時間後、評価用多層(2−2−2)プリント配線板を取り出して常態(25℃、50%RH;以下同じ)に放置し、更に1時間後に、常態で直流電圧5.5Vを印加しながら、ベタ導体とラインとの間の電気絶縁抵抗値を測定した。電気抵抗が10オーム以上のものは◎、10オーム以上で10オーム未満のものは○、10オーム未満で短絡してないものは△、短絡しているものは×と評価した。
【0039】
(6)高温高湿耐性評価
層間絶縁抵抗評価と同一の評価用多層(2−2−2)プリント配線板を121℃、100%RH(不飽和モード)に維持する高温高湿槽に放置した。120時間後、評価用多層(2−2−2)プリント配線板を取り出して、多層プリント配線板の導体層が無い部分を光学顕微鏡により外観検査を行った。基板表面の電気絶縁層に粒子状の析出物が観察されないものは〇、基板表面に1μm未満の粒子状の析出物が観察されるものは△、基板表面に1μm以上の粒子状の析出物が観察されるものは×と評価した。
【0040】
(7)難燃性の評価
層間絶縁抵抗評価と同一の評価用多層(2−2−2)プリント配線板の導体が無い部分を、幅13mm、長さ100mmの短冊状に切断し、試験片を作製した。メタンガスを管の口径9.5mm、管の長さ100mmのブンゼンバーナーにて燃焼させて高さ19mmの炎に調整して、得られた試験片に着火するまで接炎した。着火後直ちに炎を外し、試験片が燃焼している時間を計測した。試験片が消炎後、直ちに再度試験片に着火するまで接炎した。二度目の着火後も直ちに炎を外し、試験片が燃焼している時間を計測した。一度目の試験片の燃焼時間と二度目の試験片の燃焼時間の合計が5秒以内のものを○、5秒を超え10秒以内のものを△、10秒を超えるものを×として評価した。
【0041】
実施例1 方法Aによる難燃剤スラリーの調整
塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子として、平均粒径が17μmのポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩粒子100部と金属化合物として平均粒径0.9μmの水酸化マグネシウム粒子15部を、有機分散媒であるキシレン322部とシクロペンタノン138部との混合有機分散媒にて、セパラブルフラスコ中で3枚羽根攪拌翼にて、室温で10分間攪拌して分散液を得た。尚、水酸化マグネシウム粒子のここで使用した有機分散媒への溶解量は0.5g未満/リットルであった。
得られた分散液575部を、0.4mmのジルコニアビーズを83容量%充填させた横型攪拌槽式粉砕機で、滞留時間18分間の条件で循環させながら60分間攪拌した後、更にビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート3.8部、キシレン6部、シクロペンタノン15部を添加し、滞留時間18分間の条件で、60分間攪拌して、難燃剤スラリーAを得た。難燃剤スラリーAに含まれる粒子(ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩粒子と水酸化マグネシウム粒子)の平均粒径は0.31μmであった。
【0042】
実施例2 方法Aによる難燃剤スラリーBの調整
特定金属化合物として平均粒径が0.7μmである炭酸アルミニウム粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして難燃剤スラリーBを得た。難燃剤スラリーBに含まれる粒子(ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩粒子と炭酸アルミニウム粒子)の平均粒径は0.38μmであった。尚、炭酸アルミニウム粒子のここで使用した有機分散媒への溶解量は0.5g未満/リットルであった。
【0043】
実施例3 方法Cによる難燃剤スラリーCの調整
塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子として、平均粒径が17μmのポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩粒子100部、平均粒径0.4μmの炭酸カルシム粒子15部と水460部をセパラブルフラスコ中で3枚羽根攪拌翼にて、室温で10分間攪拌し、分散液を得た。尚、炭酸カルシウム粒子のここで使用した有機分散媒への溶解量は0.5g未満/リットルであった。
得られた分散液575部を、0.4mmのジルコニアビーズを83容量%充填させた横型攪拌槽式粉砕機で、滞留時間18分間の条件で循環させながら60分間粉砕処理を行った後、得られた分散液を空孔150μmのフッ素樹脂製ろ布で濾過して、0.4mmのジルコニアビーズを除去した後、平型のバットにあけて70℃、12時間放置して、更に、120℃、12時間減圧して、乾燥処理させて難燃剤を得た。得られた塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と金属化合物とからなる難燃剤100部、有機分散媒としてキシレン322部とシクロペンタノン138部との混合有機分散媒、及びビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート3.8部をセパラブルフラスコ中で3枚羽根攪拌翼にて、室温で10分間攪拌した後、0.4mmのジルコニアビーズを83容量%充填させた横型攪拌槽式粉砕機で、滞留時間18分間の条件で循環させながら60分間攪拌して、難燃剤スラリーCを得た。難燃剤スラリーCに含まれる粒子(ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩粒子と炭酸カルシウム粒子)の平均粒径は0.28μmであった。
【0044】
実施例4 難燃剤スラリーAを用いたプリント配線板の製造と評価
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンを開環重合し、次いで水素添加反応を行い、数平均分子量(Mn)=31,200、重量平均分子量(Mw)=55,800、Tg=約140℃の水素化重合体を得た。得られたポリマーの水素化率は99%以上であった。
得られた水素化重合体100部、無水マレイン酸40部及びジクミルパーオキシド5部をt−ブチルベンゼン250部に溶解し、140℃で6時間反応を行った。得られた反応生成物溶液を1000部のイソプロピルアルコール中に注ぎ、反応生成物を凝固させマレイン酸変性水素化重合体を得た。この変性水素化重合体を100℃で20時間真空乾燥した。この変性水素化重合体の分子量はMn=33,200、Mw=68,300でTgは170℃であった。マレイン酸基含有率は25モル%であった。
【0045】
前記変性水素化重合体100部、ビスフェノールAビス(プロピレングリコールグリシジルエーテル)エーテル40部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(硬化促進剤)0.1部、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール(レーザー加工性向上剤)5部、及び、難燃剤スラリーA200部を、キシレン168部及びシクロペンタノン28部からなる混合有機溶剤に溶解させてワニスを得た。次いで、このワニスを遊星式攪拌ミルにて0.3mm径のジルコニアビーズを用いて分散混合させた後、ビーズを除去、更にポアサイズが10μmのフィルターを用いろ過してワニスを得た。
【0046】
得られたワニスを、それぞれダイコーターを用いて、300mm四方の厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルムに塗工し、その後、窒素オーブン中、120℃で10分間乾燥し、樹脂成形物の厚みが40μmである支持体付きのフィルム状成形体を得た。
【0047】
ガラスフィラー及びハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラスクロスに含浸させて得られたコア材の両面に銅箔が形成された、厚み0.8mmの両面銅張り基板を用いて、JPCA−BU01に定めあるベタ導体−ライン間評価用パターン及び配線幅と配線間距離とがともに50μmの導体パターンを、両面に有する内層基板を得た。この内層尾基板の両面を有機酸でマイクロエッチングした。
次いで、先に得た支持体付きのフィルム状成形体を、樹脂成形物面が内側となるようにして内層基板に重ね合わせた。これを、一次プレスとして耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空積層装置を用いて、200Paに減圧して、温度110℃、圧力1.0MPaで60秒間加熱圧着した。次いで、二次プレスとして金属製プレス板で覆われた耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空積層装置を用いて、200Paに減圧して、温度140℃、圧力1.0MPaで60秒間加熱圧着した。そして、ポリエチレンナフタレートフィルムのみを剥がし、窒素オーブン中に140℃で30分間、170℃で60分間放置し、内層基板上に電気絶縁層を形成した。
【0048】
得られた積層板の絶縁層部分に、UV−YAGレーザ第3高調波を用いて直径30μmの層間接続のビアホールを形成した。
次いで、このビアホールを形成した基板表面に、アルゴンガスと窒素ガスとの体積比が50:50の混合ガスを用いて、周波数13.56MHz、出力100W、ガス圧0.8Paの処理条件でプラズマ処理を行った。処理時の温度は25℃、処理時間は5分間であった。
こうしてプラズマ処理された電気絶縁層表面に、周波数13.56MHz、出力400W、ガス圧0.8Paの条件でアルゴン雰囲気下にてRFスパッタ法により、0.46nm/秒のレートで厚さ30nmのクロム膜を形成させ、次いで0.91nm/秒のレートで厚さ300nmの銅薄膜を形成させた。
この積層板表面に市販の感光性ドライフィルムを熱圧着して貼り付け、更に、このドライフィルムにJPCA−BU01に定めるベタ導体−ライン間評価用パターン及び配線幅と配線間距離とがともに50μmのパターンを形成するためのマスクを密着させ露光した後、現像してレジストパターンを得た。次にレジストパターンのない部分に電解銅メッキを施し厚さ18μmの電解銅メッキ膜を形成させた。次いで、レジストパターンを剥離液で除去し、塩化第二銅と塩酸混合溶液によりエッチング処理を行うことにより、前記金属薄膜及び電解銅メッキ膜からなる配線パターンを形成した。そして最後に、170℃で30分間アニール処理をして、配線パターン付き多層(1−2−1)プリント配線板を得た。こうして得られた配線パターン付き多層(1−2−1)プリント配線板を内層基板として使用し、前述の方法と同様にして、支持体付きフィルム状成形体により電気絶縁層を形成し、この電気絶縁層部分に、UV−YAGレーザ第3高調波を用いて直径30μmの層間接続のビアホールを形成した後、前述と同様にして、JPCA−BU01に定めるベタ導体−ライン間評価用パターン及び配線幅と配線間距離とがともに50μmの導体パターンを有する配線パターン付き多層(2−2−2)プリント配線板を得た。
得られた多層(2−2−2)プリント配線板の評価結果を表に示す。
【0049】
実施例5 難燃剤スラリーBを用いたプリント配線板の製造と評価
複合難燃剤スラリーAに替えて難燃剤スラリーBを用いる以外は実施例4と同様にして多層(2−2−2)プリント配線板を得た。多層(2−2−2)プリント配線板の評価結果を表に示す。
【0050】
実施例6 難燃剤スラリーCを用いたプリント配線板の製造と評価
複合難燃剤スラリーAに替えて難燃剤スラリーCを用いる以外は実施例4と同様にして多層(2−2−2)プリント配線板を得た。多層(2−2−2)プリント配線板の評価結果を表に示す。
【0051】
比較例1
水酸化マグネシウムを用いない以外は実施例と同様にして難燃剤スラリーDを得た。
比較例2
難燃剤スラリーとして、難燃剤スラリーDを用いたこと以外は実施例4と同様にして多層(2−2−2)プリント配線板を得た。多層(2−2−2)プリント配線板の評価結果を表に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004207622
【0053】
これらのことから、溶剤中で塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と特定金属からなる特定金属化合物とを接触させて得られた難燃剤を添加した本発明のワニスは、難燃性を低下させず、高温高湿条件下でも電気絶縁層表面に白化を生じず、電気絶縁性も低下しないことが判った。このため、本発明のワニスを用いると層間絶縁抵抗と難燃性に優れた電気絶縁膜を得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーを含むワニスは、高温高湿耐性に優れた電気絶縁膜を与えることができる。この電気絶縁膜を有する多層プリント配線板は、コンピューターや携帯電話等の電子機器において、CPUやメモリなどの半導体素子、その他の実装部品として使用できる。

Claims (7)

  1. 電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーであって、
    (i)該電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーが、有機分散媒と、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と、金属化合物とを含み、
    (ii)該塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子に対する該金属化合物の割合(金属化合物/塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子;モル比)が、0.5〜0.05であり、
    (iii)該塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子の平均粒径が、0.8〜0.07μmであり、
    (iv)該金属化合物の平均粒径が、0.8〜0.07μmであり、
    (v)該金属化合物の有機分散媒への溶解量が、25℃常圧下で、1g/リットル以下であり、かつ
    (vi)該金属化合物の金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属である電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー。
  2. 金属化合物が有機酸塩、無機酸塩、又は水酸化物である請求項1記載の電気絶縁膜形成用難燃剤スラリー。
  3. 絶縁性重合体、硬化剤、及び請求項1又は2記載の電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーを含有する硬化性樹脂組成物のワニス。
  4. 請求項3記載のワニスを支持体に塗布、乾燥して得られる成形物。
  5. 請求項4記載の成形物を硬化してなる電気絶縁膜。
  6. 最外層が導体層である基板上に、請求項5記載の電気絶縁膜からなる電気絶縁層が形成された積層体。
  7. 有機分散媒と、塩基性含窒素化合物のリン酸塩粒子と、金属化合物とを湿式粉砕機中で攪拌して請求項1記載の電気絶縁膜形成用難燃剤スラリーを調製する方法。
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