本発明は、C形鋼やデッキプレートなど、開口を有する「被取付体」に対し、配線・配管材類支持具や諸器具、或いは、複数の前記被取付体を相互に連結する連結具等々の「取付体」を固定するための固定構造に関するものであって、特にボルト及びナットの組み合わせによって被取付体に対して取付体を連結固定する固定構造に関するものである。
ボルト及びナットの組み合わせからなる取付構造に関しては、例えば、特許文献1に示す技術が従来より提案されている。これらの従来技術は、被取付体に係る形鋼に形成された溝に対して取付体を固定させるにあたり、前記溝へナットを進入させて当該ナットが螺合されたボルトを回転させて該ナットを同時回転(共回り)させ、該ナットの長手両端を前記溝における内側突出部(211)の裏側に係合させて固定を完了するものである。
これらの技術は、取付体を固定するにあたりネジ孔を別途設定する迄もなく容易に固定できるという点で優れた技術といえるが、以下のような問題があった。
即ち、ナットを同時回転させるに先だち当該ナットを被取付体の溝内に進入させるが、その際、該ナットの位置ないし角度を前記溝に対して合わせるべく調整する必要があった。つまり、ボルトの回動によるナットの同時回転に先だって煩雑な「位置合わせ作業」を余儀なくされるのである。
かかる取付体の固定作業というのは、施工現場においては一般に多数に及ぶものである。即ち、全ての取付体に対して煩雑な「位置合わせ作業」を要するために施工作業に長時間を要することとなり、ひいては施工コストの増大にも繋がるのである。
また、上記取付体の設置個所は天井付近等の高所であることも多い。かかる高所での作業は、作業者の安全を確保する必要性から極力簡易なものであることが望ましい。しかし、上記従来技術においては「位置合わせ作業」が避けられないため、更なる作業の簡略化が必要であった。
更には、複数のケーブルラックを連結する場合など、複数の被取付体を取付体にて相互に連結する場合にあっては、取付体におけるナットの位置合わせ作業を行う以前に、被取付体どうしの位置合わせ作業が必要となる。即ち、前記取付体を被取付体に固定するにあたっては、該被取付体どうしの好適な位置を維持した状態で、尚かつ、取付体に係るナットの位置合わせを行う必要があり、煩に堪えないものとなる。
本発明は、上記の如き問題を解決するためには、ナットの方向を予め位置決めした状態で提供することにより可能であることに気付き案出されたものである。そして、本発明の解決しようとする課題は以下に示すものである。
特開平07−208665号公報(第1図、第2図、第3図)
即ち本発明の課題は、ボルトとナットの組み合わせからなる固定構造を備えた取付体を開口を備えた被取付体に対して固定するにあたり、予めナットの位置合わせを行うことなく、前記ボルトを工具にて回動させることのみを以て、被取付体に対して取着可能となる固定構造を提供することにある。
上記課題を解決すべく本発明の採った手段は、以下に示すとおりである。
まず請求項1に係る発明は、開口210を有する被取付体200と、該被取付体200に固定される取付体100とからなる取付体の被取付体への取付装置であって、前記取付体100は取付体本体と、該本体に挿通されたボルト110と、前記ボルト110に螺合され、該ボルト110の回転に伴って、前記被取付体200の開口210に挿入可能な第一の位置から前記開口210に挿入された状態で該開口210からの抜脱不可とする第二の位置に回動可能なナット120と、前記ナット120の転回を規制して該ナット120を第一の位置に配置する位置決部130と、を有し、前記第一の位置に配置されたナット120を前記開口210に挿入し、前記ボルト110を一方に回転させて、前記ナット120が第二の位置に回動可能となるまで該ナット120をボルト110先端側に後退させた後、前記ボルト110を他方に回転させて前記ナット120が第二の位置に回動させると共に該ボルト110基端側に近接させ、前記取付体本体とナット120とで前記被取付体200の開口210周縁を挟持することにより、被取付体200に固定されることを特徴とするものである。
次に請求項2に係る発明は、請求項1に記載の被取付体への取付体の取付装置において、前記ナット120の周壁が、前記被取付体200の開口210内側壁に当接することによって、当該ナット120が第一の位置から第二の位置へと回動することを防止するものである。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の被取付体への取付体の取付装置において、前記被取付体200の開口210裏面側は、前記ナット120を第二の位置で回動を規制する回動規制部を有することを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の被取付体への取付体の取付装置において、前記ナット120は、前記位置決部130と係合する係合部を有することを特徴とするものである。
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の被取付体への取付体の取付装置において、前記ナット120は、前記回動規制部と係止する係止部を有することを特徴とするものである。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の被取付体への取付体の取付装置において、前記係合部は、係止部を兼ねていることを特徴とするものである。
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の被取付体への取付体の取付装置において、前記位置決部130は、前記ナット120を第一の位置に配置した状態で、前記開口210にナット120と共に挿通可能にボルト110先端側に突出してなることを特徴とするものである。
請求項8に係る発明は、開口210を有する被取付体200に固定可能な取付体100であって、前記取付体本体に挿通されたボルト110と、前記ボルト110に螺合され、該ボルト110の回転に伴って、前記被取付体200の開口210に挿入可能な第一の位置から、前記開口210に挿入された状態で該開口210からの抜脱不可とされる第二の位置に回動可能なナット120と、前記ナット120の転回を規制して該ナット120を第一の位置に配置する位置決部130と、を有し、前記第一の位置に配置されたナット120を前記開口210に挿入し、前記ナット120の位置決め状態を解除するまで、前記ボルト110を一方に回転させて前記ナット120をボルト110先端側に後退させた後、前記ボルト110を他方に回転させて前記ナット120を第二の位置まで回転させると共に該ボルト110基端側に近接させ、前記取付体本体とナット120とで前記被取付体200の開口210周縁を挟持することにより、被取付体200に固定されることを特徴とするものである。
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の取付体100において、前記ナット120は、位置決部130に係合する係合部を有することを特徴とするものである。
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の取付体100において、前記係合部は前記ボルト110の基端側に突出する突起141であることを特徴とするものである。
請求項11に係る発明は、請求項8又は請求項9に記載の取付体100において、前記位置決部130は、前記ナット120を第一の位置に位置決めした状態で、前記開口210にナット120と共に挿通可能にボルト110先端側に突出してなることを特徴とするものである。
請求項12に係る発明は、開口210を有する被取付体200への取付体固定方法であって、前記取付体100は取付体本体と、該本体に挿通されたボルト110と、前記ボルト110に螺合され、該ボルト110の回転に伴って、前記被取付体200の開口210に挿入可能な第一の位置から前記開口210に挿入された状態で該開口210からの抜脱不可とする第二の位置に回動可能なナット120と、前記ナット120の転回を規制して該ナット120を第一の位置に配置する位置決部130と、を配し、前記第一の位置に配置されたナット120を前記開口210に挿入し、前記ボルト110を一方に回転させて、前記ナット120が第二の位置に回動可能となるまで該ナット120をボルト110先端側に後退させた後、前記ボルト110を他方に回転させて前記ナット120が第二の位置に回動させると共に該ボルト110基端側に近接させ、前記取付体本体とナット120とで前記被取付体200の開口210周縁を挟持することにより、被取付体200に固定することを特徴とするものである。
本発明に係る被取付体への取付構造によれば、
まず、取付体のナット120の転回角度は位置決部130によって規制されているので、当該ナット120を被取付体200の開口210に挿通させるのに先だって、該ナット120の転回角度を調整する必要がなくそのまま挿通させることができ、作業の迅速化を図ることが可能となるという効果を奏する。
また、前記位置決部130によるナット120の転回角度への規制は、当該ナット120に螺合するボルト110を回転させて、該ナット120を該ボルト110の先端部方向へと移動させることを以て規制解除可能である。即ち、取付体100のナット110を被取付体200の開口210に挿通させた後、ボルト110を回転させることのみを以て規制を解除できるので、取付作業の簡易化を図ることが可能となるという効果を奏する。
更に、前記位置決部130による規制が解除されたナット120は、転回角度を自由に変化させることが可能となり、該ナット120が螺合するボルト110の回転に伴って同時回転して、「第一の位置」から「第二の位置」へと、その転回角度を変化させることによって開口210の周縁部分に係合することとなる。当該ナット120は係止部を有しているので、該係止部が開口210の回動規制部に係止し、該ナット120の同時回転が抑止される。該ナット120の同時回転が抑止されることによって前記開口210の周縁部分に係合した状態を維持することとなり、取付体100が被取付体200に固定された状態を維持することが可能となるという効果を奏するのである。
本発明は、C形鋼やデッキプレート等の「被取付体200」に対して、配線ボックス、配線配管材用サドル、配線配管材用受具(ケーブルラック)、或いは、複数の前記被取付体を相互に連結する連結具等々の「取付体100」を設置・固定するものである。
詳細には、前記被取付体200は開口210を有するものであり、取付体100はボルト110と該ボルト110に螺合するナット120と該ナット120の転回角度を規制する位置決部130とを有するものである。以下、本発明の構成につき詳述する。
まず、本発明において被取付体200というのは、取付体100が固定される対象物であって開口210を有するものを指し、具体的には、天井や壁面等に設置されるC形鋼や、床面或いはカバー部材として使用されるデッキプレート等として構成することが考えられる。
ここで、「開口210」というのはナット120を挿通させるものであり、長幅と短幅とからなるものである。この長幅というのは開口210における長手方向への開口幅を意味するものであり、前記ナット120の長部及び短部の何れの方向からも挿通可能に形成したものである。一方、短幅というのは前記開口210における短手方向への開口幅を意味するものであり、前記ナット120の短部は挿通可能であるが長部は挿通できない寸法にて構成したものである。
かかる構成を採ることにより、前記ナット120を開口210内に挿通させた後、該ナット120の転回角度を第一の位置から第二の位置へと変化させることにより、該ナット120が前記開口210の周縁部分に係合させることが可能となるのである。当該開口210に関して、具体的には、略矩形や楕円形、或いは、溝状のスリットとして形成することが考えられる。
また、上記開口210の内側には、図3又は図4に示すように「開口内側壁」を形成することによって、ボルト110を回転させて該ボルト110の先端側へとナット120を移動させる際に、当該ナット120の転回角度が第一の位置から第二の位置へと変化してしまうことを防止するものとしてもよい。かかる構成によれば、ナット120を開口210の奥へと移動させる際に、当該ナット120の転回角度を第一の位置のままで維持することが可能となるのである。
更に、上記開口210の内側には、図3又は図4に示すように「回動規制部」を形成することによって、ナット120の転回角度を第二の位置のままで維持させてもよい。かかる構成によれば、ナット120が第二の位置へと転回した後は、如何にボルト110が回転しようとも、当該ナット120の転回角度が第二の位置から変化するのを防止可能となる。
尚、上記開口210は、図4又は図7に示すように、その周縁部分において「内側突出部」を形成すると更に好適である。即ち、開口210の周縁部分に「内側突出部」を形成することにより、該内側突出部へナット120の端部が係合することとなるので、当該ナット120に対して開口方向への荷重が掛かった際にも、該ナット120の端部が前記内側突出部に係合した状態を維持できるからである。勿論、前記開口の周縁部分に内側突出部分を設けなくとも、前記ナット120の配設個所が、開口方向への荷重が掛からない個所であれば、前記ナット120による開口210周縁部分への係合を安定的に維持することができる。
一方、本発明において取付体100というのは、上述の被取付体200への固定目的物であって、ボルト110と該ボルト110に螺合するナット120と該ナット120の転回角度を規制する位置決部130とを有するものであり、具体的には、配線ボックスや配線配管材用サドルとして構成することが考えられる。つまり、本発明を配線ボックスとして具現化した場合には、図12に示すように、該配線ボックスの側面や裏面に延設した舌部にボルト110を挿通させ、該ボルト110にナット120を螺合した構成となる。
まず、本発明における取付体100が備えるボルト110というのは、取付体100に穿設した貫通孔に挿通して設けられ、被取付体200の開口210に挿通させるナット120と螺合するものである。そして、当該ボルト110の頭部を工具で回転させることにより、該ボルト110が回転すると共に、該ボルト110に螺合するナット120が前記ボルト110との間に生じる摩擦によって軸芯周りに同時回転するのである。またこのボルト110は、螺合されるナット120に対応するピッチにて形成された螺刻溝を有するものを用いるべきである。尚、所謂「逆ネジ」のボルト110を用いることによって、被取付体200への固定に際してのボルト110の回転方向を変更することが可能となる。
次に、本発明における取付体100が備えるナット120というのは、該取付体100が備えるボルト110に螺合した状態にて被取付体200の開口210に挿通させるものである。そして、前記ボルト110の回転に伴って当該ナット120が軸芯周りに同時回転して転回角度を変化させ、該ナット120の一部を前記開口210の周縁部分に係合させるのである。
このナット120は、開口210の周縁部分に係合可能であればその構成は特段限定されるものではないが、具体的には、前記ナット120の形状を図2に示すが如く「長部」と「短部」とを有する形状のものとすることが考えられる。まず、長部というのは、開口210の長幅にのみ挿通可能であって、短幅には挿通できない寸法にて形成した部位を指す。一方、短部というのは、開口210の長幅は勿論のこと、短幅にも挿通可能な寸法にて形成した部位を指すものである。かかる寸法にて形成すれば、その形状は特段限定されるものではないが、具体的には、菱形や楕円形等に形成することが考えられるが、特に、図2に示すように平行四辺形に形成し、図3に示すように転回角度を変化可能に構成するのが好適と考えられる。このように平行四辺形に形成することにより、どちらの方向に転回させても、4つの角部のうちの何れか2つが開口210の周縁部分に係合することとなるからである。
ここで、上記ナット120は、螺合されるボルト110に対応するピッチにて形成された螺刻溝を有するものを用いるべきである。尚、ボルト110に「逆ネジ」を採用した場合には、勿論、ナット120も逆ネジのものを採用すべきである。
また、本発明において位置決部130というのは、取付体100に設けられるものであって、前記ナット120の転回角度を規制するものである。即ち、当該位置決部130によって前記ナット120の転回角度を規制することにより、被取付体200の開口210に当該ナット120を挿通させるのに先だって、該ナット120の角度を調整することなく開口210にそのまま挿通させることが可能となり、固定作業を簡易なものとすることができるのである。
この位置決部130は、ナット120の転回角度を規制するものであるが、ボルト110を一方に向けて回転させることによって該ボルト110の先端部方向へとナット120が移動して、該ナット120への規制が解除されるものである。即ち、ナット120をボルト110の先端部方向に移動させることにより、当該ナット120がボルト110に軸支された状態で取付体100から離間することとなる。そのため、取付体100に設けた位置決部130からも離間することとなり、前記ナット120が位置決部130による規制から解放され、その転回角度を自由に変化させることが可能となる。
尚、この位置決部130を取付体100に設けるに際しては、ナット120の転回角度を規制した状態のままで、被取付体200の開口210内に挿通可能な大きさにて形成するのが好適である。即ち、ナット120の側面或いは裏面を係止するものであって、尚且つ、前記開口210よりも小さな寸法にて構成するのである。具体的には、以下に例示する4つの形態が考えられる。
即ち、まず1つ目の形態として図7に示すように、ナット120の裏面に係合部としての突起141を立設すると共に、これら突起141に係合可能な一対の離間壁を、挿通される開口210におけるそれぞれの幅寸法よりも短い間隔にて立設して、これら突起141と離間壁とを相互に係合させることにより位置決めを行うことが考えられる。続いて2つ目の形態として図8に示すように、ナット120の両側面を挟持可能な一対の離間壁を、挿通される開口210におけるそれぞれの幅寸法よりも短い間隔にて立設することが考えられる。更に3つ目の形態として図9に示すように、ナット120の裏面に係合部としての突起141を立設すると共に、該突起141が挿通可能な貫通孔又は凹部を取付体100に穿設して、該突起141を該貫通孔等に挿通させることにより位置決めを行うことが考えられる。そして4つ目の形態として図10に示すように、取付体100における一方の面にナット120と略同一形状の凹部を形成し、該凹部に前記ナット120を収容することにより該ナット120の転回を規制して位置決めを行うことが考えられる。
続いて、本発明において係止部というのは、前記ボルト110の回転に伴う前記ナット120の同時回転を抑制するものである。即ち、当該ナット120が螺合するボルト110の回転に伴う同時回転を抑制することにより該ナット120の転回角度を所定の角度に規制するものであって、この転回角度を規制することによって該ナット120が開口210の周縁部分へ係合した状態を維持するのである。
具体的には、例えば図8又は図10に示すように、ナット120の周側面142を係止部とし、該周側面142を開口210の周縁部分(回動規制部)に当接させることによって該ナット120の同時回転を抑止するものとすることが考えられる。かかる構成によれば、まず、前記ナット120を取付体100の開口210に挿通させて、位置決部130からの規制が解除された後にボルト110を回転させることにより、該ボルト110の回転に伴って前記ナット120が同時回転して転回角度が変化する。この転回角度の変化に伴って当該ナット120の周側面142が前記開口210の周縁部分(回動規制部)に当接するため、該ナット120の同時回転が抑止され、前記ボルト110のみが回転することとなる。つまり、前記ナット120の転回角度が変化して開口210の周縁部分に当接した後には、当該ナット120は転回角度を変化させることとなく、開口210の周縁部分(回動規制部)に当接した状態を維持することとなるのである。
また、上記係止部は、例えば図7に示すように、取付体100に配備されるナット120の片面に突起141を形成すると共に、当該取付体100における前記ナット120と対面する側に「一対の離間壁」を形成して、これら各部材を相互に係合させるように構成することが考えられる。かかる構成によれば、まず、前記ナット120を取付体100の開口210に挿通させた後にボルト110を回転させることにより、該ボルト110の回転に伴って前記ナット120が同時回転して転回角度が変化する。この転回角度の変化に伴って当該ナット120の周側面142が前記開口210の周縁部分に係合すると共に、該ナット120に形成した突起141が取付体100に形成した前記離間壁に係合するため、該ナット120の同時回転が抑止され、前記ボルト110のみが回転することとなる。つまり、前記ナット120の転回角度が変化してナット120の突起141が取付体100に形成した前記離間壁に係合した後には、当該ナット120は転回角度を変化させることとなく、開口210の周縁部分に係合した状態を維持することとなるのである。尚、上記においてナット120の突起141と相互に係合させるべく取付体100に形成する「離間壁」は、上記の位置決部130として形成した「一対の離間壁」に担わせるものとしてもよい。
また、取付体100に対してナット120と略同一形状の凹部を穿設した場合にあっても、ナット120に突起141を設けた際には、該凹部に該突起141が係合することとなるので前記離間壁と同様な作用を奏することとなることも付言する。
更に上記係止部は、例えば図4又は図7に示すように、開口210の周縁部分に設けた内側突出部分に対してナット120の突起141を係合させることにより、同時回転を抑止するよう構成してもよい。かかる構成とした場合には、当該係合部は係止部の役割も果たすこととなって好適である。
尚、上記した取付体100は、特に、被取付体200に対して設置・固定するものに主眼を置いて説明したが、本発明は特段これに限定されるものではなく、複数の被取付体200を相互に連結する連結具も、本発明における取付体100の技術的思想に含まれることは殊更いうまでもない。
具体的には次述の如き構成となる。即ち、「開口210を有する複数の被取付体200に対して一の取付体100を固定することにより、前記複数の被取付体を相互に連結する連結装置であって、前記取付体100は取付体本体と、該本体に挿通されたボルト110と、前記ボルト110に螺合され、該ボルト110の回転に伴って、前記被取付体200の開口210に挿入可能な第一の位置から前記開口210に挿入された状態で該開口210からの抜脱不可とする第二の位置に回動可能なナット120と、前記ナット120を第一の位置に配置する位置決部130と、を有し、前記第一の位置に配置されたナット120を前記開口210に挿入し、前記ボルト110を一方に回転させて、前記ナット120が第二の位置に回動可能となるまで該ナット120をボルト110先端側に後退させた後、前記ボルト110を他方に回転させて前記ナット120が第二の位置に回動させると共に該ボルト110基端側に近接させ、前記取付体本体とナット120とで前記被取付体200の開口210周縁を挟持することにより、複数の被取付体200を相互に連結する連結装置」である。かかる構成によれば、複数の被取付体200を取付体100にて相互に連結する場合にあっては、被取付体200どうしの位置合わせ作業を行った後、これら被取付体200の端部付近に取付体100をあてがって、ボルト110を回転・反転させることのみを以て被取付体200に対し取付体100を固定でき、ひいては、複数の前記被取付体200どうしの連結を容易に行うことが可能となるのである。
上記の各構成を採ることにより、次のような作用及び効果を奏することとなる。
まず、取付体100に配備されてボルト110に螺合され、該取付体100の位置決部130により「第一の位置」にて転回角度を規制されたナット120を該位置決部130と共に被取付体200の開口210に挿通させる。当該ナット120に螺合するボルト110を一方に向けて回転させることにより該ナット120を前記ボルト110の先端部方向へと移動させる。当該ナット120が前記ボルト110の先端部方向へ移動することにより前記取付体100から該ナット120が離間して、該取付体100に設けた位置決部130による前記ナット120への規制が解除され、転回角度を自由に変化させることが可能となる。尚、被取付体200の開口内側壁にナット120の周壁が当接した状態にあるときは、位置決部130による前記ナット120への規制が解除されたとしても、該ナット120の転回角度は依然として「第一の位置」のままであることを付言する。
ナット120の周壁が開口内側壁の当接から解放された後は、前記ボルト110の回転方向を反転させることにより、該ボルト110とナット120との間に生じる摩擦により、当該ナット120が「第二の位置」へと軸芯周りに同時回転することとなる。該ナット120が第二の位置へと転回することによって開口210の周縁部分に係合する。尚、ナット120の周側面142を係止部として構成した場合には、該周側面142が前記開口210の周縁部分(回動規制部)に当接することによって、当該ナット120の転回角度は「第二の位置」のままで維持されることとなる。
そして、当該ナット120の同時回転が抑止された状態において、該ナット120が前記ボルト110の頭部方向へ移動する方向に向けて該ボルト110を回転させることによって、該ボルト110とナット120とにより開口210周縁部分を強固に挟圧し、取付体100を被取付体200の開口210周縁部分に固定することが可能となるのである。
以下、本発明に係る技術的思想を、実施例に具現化して説明する。
図1は、本発明に係る被取付体200への固定構造を、ケーブルラックの連結具に適用した実施例1を示すものである。
本実施例では、被取付体200としてのケーブルラックを、取付体100としての連結具にて連結するものであって、当該ケーブルラックは、図1に示すように、親桁に穿設された貫通孔に子桁の一端を挿通し固定してなるものである。前記親桁はスリット状の開口210を有しており、該スリットに対して本実施例に係る連結具のナット120を挿通させ、該ナット120が螺合するボルト110を回転させることにより当該連結具を前記親桁に固定し、複数のケーブルラックを相互に連結可能とするものである。
詳細には図1に示すように、本実施例に係る連結具は、連結具本体に対して4つのボルト穴を穿設し、該ボルト穴に挿通されたボルト110に対して、図2に示すナット120を螺合させてなるものである。この図2に示すナット120というのは、長部と短部とを有する菱形状に形成し、その一方の面の対角線上に2つの突起141を設けたものである。
この連結具は、図4の断面図に示すように、その裏面側(受具と当接する面)に一対の離間壁を立設しており、当該離間壁がナット120の突起141に係合することによって転回角度を所期の角度に規制して、該離間壁と共に前記ナット120を被取付体200の開口210へとそのまま挿通可能としている。尚、当該ナット120を開口210に挿通させる前の段階では、前記離間壁は該ナット120の突起141と係合することによって位置決部130としての役割を果たすが、該ナット120が開口210に挿通させた後の段階では、前記離間壁に該ナット120の突起141が係合することにより同時回転が抑止され、前記突起141による同時回転防止作用を補助することとなる。
ここで、本実施例におけるケーブルラックと連結具との連結の動作を説明する。まず、2つのケーブルラックの端部どうし図中矢印Aの方向へと近接させて相互に接続する。然る後、連結具を図中矢印Bの方向からケーブルラックに対して装着する。この装着に伴って、ケーブルラックに設けられた開口210に対して、連結具に貫挿するボルト110に螺合したナット120を挿通させる。そして、当該ボルト110を一方向へと回転させて該ナット120を前記ボルト110の先端部方向へと移動させ、位置決部130による該ナット120の転回角度への規制を解除する。
その後、ボルト110の回転方向を反転させることにより、当該ボルト110の回転に伴ってナット120が第一の位置から第二の位置へと同時回転すると共に、当該ナット120を前記ボルト110の頭部方向へと移動させる。当該ナット120が第二の位置へと転回することにより、図5に示すように該ナット120の長部が開口210の周縁部分に係合すると共に、該ナット120に設けた突起141が被取付体200の内側突出部分に当接して、同時回転が抑止されることとなる。かかる作用を奏することにより、当該連結具が前記親桁に固定され、複数のケーブルラックを相互に連結することとなるのである。
また、「位置決部130」及び「係止部」は上記構成に限定されるものではなく、例えば図8乃至図10に示す形態の如く構成してもよい。
即ち、まず図8に示す構成というのは、図4又は図7と同様に一対の離間壁を付与して位置決めは行うものの、ナット120には突起141を付与しない構成である。かかる構成を採ることにより、位置決めが解除されたナット120はボルト110共に同時回転して転回角度を変化させるが、ナット120の周側面142が開口210の周縁部分に当接することにより該ナット120の同時回転を抑止して、係合した状態を維持するのである。
次に図9に示す構成というのは、ナット120に突起141を付与すると共に当該突起141と係合可能な貫通孔を連結具本体に穿設することによって該ナット120の位置決め及び同時回転の抑止は行うものの、一対の離間壁は付与しない構成である。かかる構成を採ることにより、位置決めが解除されたナット120はボルト110共に同時回転して転回角度を変化させるが、ナット120の突起141が開口210の周縁部分に設けた内側突出部分(開口内側壁)に当接することにより該ナット120の同時回転を抑止して、係合した状態を維持するのである。尚、かかる構成によれば、ナット120を開口210に挿通させるにあたり、該ナット120の周側面142がガイドの役割を果たし、所期の場所へとスムースに挿通させることが可能である。
更に図10に示す構成というのは、上記構成とは異なり「離間壁」及び「突起141」の何れも備えておらず、当該連結具本体に該ナット120と略同一形状の凹部を穿設して、該凹部に前記ナット120の周側面を係合させることにより該ナット120の転回角度を規制するものである。尚、かかる構成においてナット120に突起141を付与し、当該突起141を前記「凹部」に係合させ、或いは、該突起141を開口210の周縁部分に設けた「内側突出部」に係合させることにより、同時回転を抑止するものとしてもよい。
つまり、上記した何れの形態においても、ナット120の端部が開口210の周縁部分に係合した状態で、ナット120の転回角度が固定されるものであればよいのである。
一方、本実施例では取付体100にボルト穴を4箇所穿設すると共にこれら全ての穴にボルト110を貫挿して連結角度の精度を高めるものとしたが、特段この構成に限定されるものではなく、2箇所にのみボルト110を貫挿してケーブルラックを相互に連結可能なものとしてもよい。
尚、本実施例に係る連結具は、受具を連結する場合の他、図6に示すように、矩形状に穿設した開口210を有するデッキプレートを相互に連結するものとしてもよい。
図11は、本発明に係る被取付体200への固定構造を、配線配管材を保持するサドルとして具現化した実施例2を示すものである。尚、本実施例は上記実施例1に係る連結具と共通する部分を有するので特に相違点のみを説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
本実施例では、被取付体200としてのC形鋼に対して取付体100としてのサドルを取着することによって、前記C形鋼に対してケーブルを固定するものである。尚、本実施例において図13は、前記サドルにおけるボルト穴付近の板状部材と該ボルト穴に挿通するボルト110及び該ボルト110に螺合するナット120のみを示し、その他の部分は省略したものである。
本実施例に係るサドルは、図11に示すように、長尺状の鋼板をプレスすることによって断面略U字形状に形成し、その両端にボルト穴を穿設すると共に当該穴にボルト110を貫挿して、其処にナット120を螺合させてなるものである。当該ナット120はそれぞれ2つの突起141を備えるものであり、当該サドルにおける前記ナット120が配備される両端部分には、該ナット120の突起141を進入可能とすべく、それぞれ凹部を穿設して、ナット120の転回角度を規制するものである。
かかる構成により、上記実施例1と同様に被取付体200の開口210に対してサドルが固定され、サドルに保持される配線配管材が被取付体200としてのC形鋼等に対して固定可能となるのである。
図12は、本発明に係る被取付体200への固定構造を、配線の接続やスイッチ類を設置する配線ボックスとして具現化した実施例3を示すものである。
尚、本実施例においても上記実施例1及び実施例2と共通する部分を有するので特に相違点のみを説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
本実施例では、被取付体200としてのC形鋼に対して取付体100としての配線ボックスを取着可能とするものである。
本実施例に係る配線ボックスは、図12に示すように、箱形からなるボックス本体の底面又は側面に延設した舌部にボルト穴を穿設すると共に当該穴にボルト110を貫挿して、其処にナット120を螺合させてなるものである。
本実施例に係る配線ボックスは、図13に示すように、C形鋼等の被取付体200に対し固定して用いるものである。尚、本実施例において図13は、前記配線ボックスにおけるボルト穴付近の側面部分又は底面部分と該ボルト穴に挿通するボルト110及び該ボルト110に螺合するナット120のみを示し、その他の部分は省略したものである。
かかる構成により、上記実施例1又は実施例2と同様に、被取付体200の開口210に対して配線ボックス本体が固定されることとなる。
図14は、本発明に係る被取付体200への固定構造を、配線配管材を載置する受具として具現化した実施例4を示すものである。
尚、本実施例においても上記実施例1乃至実施例3と共通する部分を有するので特に相違点のみを説明し、共通する部分についてはその説明を省略する。
図14では、取付体100としての受具を、被取付体200としてのC形鋼に設置・固定した状態を示している。
本実施例に係る受具は、図14に示すように、複数の金属線材を格子状に組み合わせ、相互に溶接することによって構成したものである。そして、当該受具における底部の両端にはボルト穴を有するプレートを溶接して設けており、該プレートのボルト穴にボルト110が貫挿され、其処にナット120を螺合させている。
そして、本実施例に係る受具を被取付体200としてのC形鋼等に対し固定する際には、は、天地を反転させた図13に示すとおりである。即ち、前記受具底部のボルト穴を有するプレートと該ボルト穴に挿通するボルト110及び該ボルト110に螺合するナット120のみを示し、その他の部分は省略したものである。
かかる構成により、上記実施例1乃至実施例3と同様に、被取付体200の開口210に対して受具が固定されることとなるのである。
尚、上記受具をC形鋼等の被取付体200に対し固定する場合には、上記の構成に特段限定されるものではなく、図15に示すように構成してもよい。即ち、受具を構成する金属線材の一部を連結具の一方で掛止させ、該連結具の他方にボルト穴を穿設すると共に該ボルト穴にボルト110を挿通させ、該ボルト110にナット120を螺合させて、該ナット120を第一の位置から第二の位置へと転回させることによって、前記C形鋼に対して固定するのである。
実施例1に係るケーブルラックの連結具を示す図である。
図1に示す連結具が備えるナット120を斜め上方より示す図である。
図2に示すナット120の転回角度を変化させ、該ナット120の突起141が他の部材に係合することにより、ボルト110の軸芯周りへの同時回転が抑止された状態を上方より示す図である。
図1に示す連結具を被取付体200に係るケーブルラックに取着する行程の第1段階の断面を示す図である。
図1に示す連結具を被取付体200に係るケーブルラックに取着する行程の第2段階の断面を示す図である。
ナット120を挿通させるための開口210を穿設したデッキプレートを斜め上方より示す図である。
位置決部130と係止部に関する第1の形態の断面を示す図である。
位置決部130と係止部に関する第2の形態の断面を示す図である。
位置決部130と係止部に関する第3の形態の断面を示す図である。
位置決部130と係止部に関する第4の形態の断面を示す図である。
実施例2に係るサドルを示す図である。
実施例3に係る配線ボックスを示す図である。
C形鋼に対して取付体100を固定する行程の断面を示す図である。
実施例4に係る配線配管材用受具を、C形鋼に対して設置・固定した状態を示す図である。
図14に示す配線配管材用受具を、C形鋼に対し連結具を介して設置・固定した状態を示す図である。
符号の説明
100 取付体
110 ボルト
120 ナット
130 位置決部
141 突起
142 周側面
200 被取付体
210 開口
211 内側突出部