JP4206755B2 - ソレノイドバルブ - Google Patents

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Description

技術分野
この発明は、各種流体圧力制御等に好適に用いられるソレノイドバルブに関する。
背景技術
従来、この種のソレノイドバルブとしては、たとえば、図7に示すものがある。図7は従来技術に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。
ソレノイドバルブ200は、ソレノイド部200Aとバルブ部200Bとから構成される。
ここで、バルブ部200Bは、図示の例では、スプールのストロークに応じて弁の開口面積を変化させて、流体の流入量や流出量を制御できるスプールバルブタイプを示している。
ソレノイド部200Aは、概略、通電により磁界を発生する略円筒状のコイル203と、コイル203により発生した磁界によってセンターポスト202に磁気的に吸引されるプランジャ201と、プランジャ201の駆動をバルブ部200B(具体的にはスプール)に伝達するためにプランジャ201に連結されたロッド204と、プランジャ201とセンターポスト202の位置決め(軸出し)を行うために、これらの外周面を覆うように設けられる略有底筒状の金属製のスリーブ205と、を備えている。
また、ソレノイド部200Aは、磁路を形成するアッパープレート206と、コイル203を一体的にモールドするモールド部207と、これらの各部材を内包する金属製のケース部材208と、を備えている。
そして、センターポスト202には、スリーブ205の開口端付近で径方向に拡がるプレート部202aが設けられている。また、モールド部207におけるプレート部202a側の端面においては傾斜面207aが設けられている。これらプレート部202aと、傾斜面207aと、ケース部材208の内周面208aによって断面が略3角形の環状隙間が形成されている。
この環状隙間に第1Oリング209が配置されて、この第1Oリング209がプレート部202aと、傾斜面207aと、ケース部材208の内周面208aに密着することで、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)がソレノイドバルブ200本体の内部(ボビン)に侵入することを防止している。
このコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因について詳述すると、センターポスト202とバルブスリーブ202cをケースカシメにて固定している部分は、カシメによる歪みが発生し易く、その歪みにより隙間が発生する。
また、金属のアッパープレート206とその外周の樹脂の一体成形部分は、金属と樹脂との線膨張係数に比較的差があることから、温度変化による膨張・収縮で隙間が発生する。
従って、外部からケースカシメ部の隙間を通り、このケースカシメ部の隙間からケース内周面とモールド部外周面との隙間を通り、および/または、ボビン内周とスリーブ外周の隙間からアッパープレートと樹脂部の隙間を通り、コイル部へと水が浸入する。
また、センターポスト202の外周には環状溝202bが設けられており、この環状溝202bにも第2Oリング210が配置されている。そして、第2Oリング210がスリーブ205の内周に密着することによって、本体内の流体(油圧制御用においては油)が外部に流出することを防止している。
次に、ソレノイドバルブ200の動作について説明する。
プランジャ201は、通常状態、すなわちコイル203に通電していない状態では、センターポスト202から離間する方向に位置する構成となっている。
なお、一般的にはスプリング等の付勢部材によって、プランジャ201をセンターポスト202から離間する方向に付勢するように構成されている。図示の例では、スプールをソレノイド部200A方向に付勢するスプリングを設けることによって、プランジャはスプールを介してセンターポスト202から離間されるように構成されている。
そして、コイル203に通電することによって、コイル203は磁界を発生して、磁路が形成され、プランジャ201はセンターポスト202に磁気的に吸引される。
従って、コイル203に通電する電流の大きさによって、磁気力を制御することができ、これによりプランジャ201の移動量を制御することでスプールのストローク量を制御できる。これにより流体の流量を制御し、油圧制御などの各種流体圧力制御等を行うことができる。
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。
上述したように、ソレノイドバルブ200本体の内部と外部との間で、コイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)の侵入防止及び内部の流体漏れを防止するためには、2個のOリング(第1Oリング209及び第2Oリング210)を必要としていた。
なお、ソレノイドバルブ200本体を構成する部材のうち、センターポスト202,スリーブ205及びケース部材208等は金属製であるのに対して、モールド部207やコイル203が巻回されるボビン等は樹脂製である。
特に、第1Oリング209は、ケースカシメ部から外部の水がモールドコイル外周とケース内周の隙間、および/またはボビン内周とスリーブ外周の隙間を通り、アッパープレートと樹脂(モールド)の隙間を通って、コイルの内部等に侵入し、絶縁不良およびショートすることを防止するものである。
また、内部の流体の漏れ防止を主な目的として、第2Oリング210を設けている。
これは、仮に第2Oリング210がなければ、上記のように金属製の部材と樹脂製の部材との間では隙間が生じやすいために、金属製のスリーブ205とモールド部207との間,金属製のスリーブ205とボビンとの間及び金属製のアッパープレート206とボビンとの間で隙間が生じることによって、図7中矢印A方向に流体(油)が漏れてしまうため、これが浸透してコネクタ部等にまで流体が漏れ、コネクタ内部に油が溜まる等の不具合となるからである。
そのため、第2Oリング210が、金属製のセンターポスト202及びスリーブ205に密着することで高いシール性を実現している。
このように、2つのOリングを用いることによって、十分なシール性能を発揮するものの、部品点数の増加や構造の複雑化を招いていた。
また、センターポスト202に第2リング210を装着するための環状溝202bを設けなければならないことから、環状溝202bを設けた部分ではコイル203との間で磁束が形成されにくくなるため、必要な磁束を確保するためにソレノイドバルブ200自体の大型化を招く要因になっていた。
本発明の目的は、本体内部と外部との間のシール性能を維持しつつ、構造の簡略化と小型軽量化を実現したソレノイドバルブを提供することにある。
発明の開示
上記目的を達成するために本発明にあっては、
通電により磁界を発生する略円筒状のコイルと、
該円筒状のコイルと同心的に設けられるセンターポストと、
前記コイルによって発生した磁界によって、前記センターポストに磁気吸引されるプランジャと、
前記センターポスト及びプランジャの外周面を覆うように設けられる、略有底筒状の金属製のスリーブと、
該スリーブの開口端付近に設けられ、径方向に拡がる略平面部を有する金属製のプレートと、
これらコイル,センターポスト,プランジャ,スリーブ及びプレートを内包する金属製のケース部材と、を備えたソレノイドバルブにおいて、
前記スリーブにケース部材の内周面に向かって伸びるつばを設け、
該つばの一方の面と、前記ケース部材の内周面と、前記プレートの略平面部との間で、環状の空間部を形成すると共に、
該空間部に配置され、前記つばの一方の面,前記ケース部材の内周面及び前記プレートの略平面部のそれぞれをシールするシール部材を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、シール部材が、ケース部材の内周面及びプレートの略平面部をシールすることによって、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)の侵入を防止できる。しかも、プレートの略平面部及びつばの一方の面をシールすることによって、内部からの流体の漏れを防止できる。従って、一つのシール部材で、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)侵入防止及び内部からの流体漏れを防止できる。
前記環状の空間部は、前記つばを前記プレートから遠ざかる方向に伸ばして形成された外周面と、該外周面の端部を前記ケース部材の内周面に向けて折り曲げて形成された略平面部と、によって略円筒形状とするとともに、
前記シール部材は、
前記プレートの略平面部との間で第1シール面を形成させるシール部と、
前記つばの略平面部に当接する当接部と、
前記つばの外周面部に当接されて内径側への移動が規制される位置規制部と、を備え、
前記シール部及び当接部のうちの少なくともいずれか一方を、前記ケース部材の内周面に向かって撓み変形自在として、かつ、該ケース部材の内周面との間で第2シール面を形成させると共に、
前記当接部及び位置規制部のうちの少なくともいずれか一方によって、つばとの間で第3シール面を形成させるとよい。
この構成によれば、位置規制部により内径側への移動が規制されることで、軸方向の寸法ばらつきに対しても第2シール面でのシール性が維持される。さらに、軸方向に荷重がかかった場合には、ケース部材の内周面に向かって撓み変形自在なシール部および当接部のうちのいずれか一方によって十分なシール性を発揮する。
前記つばを、前記プレートに当接する位置から前記ケース部材の内周面に向かうにつれてプレートから離れるように傾斜させることによって、前記環状の空間部における断面形状を略3角形とすると共に、
前記シール部材を、前記つばの傾斜した傾斜面,前記ケース部材の内周面及び前記プレートの略平面部のそれぞれをシールするOリングとするとよい。
これにより、Oリングのように簡易なシール部材によっても、一つのシール部材で、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)侵入防止及び内部からの流体漏れを防止できる。
前記つばを弾性変形可能な弾性材で構成すると共に、
該つばの弾性反発力によって前記シール部材を押圧するように、該つばが配置されているとよい。
これにより、シール部材やシールスペースの寸法ばらつきを吸収することができる。
また、本発明のソレノイドバルブにあっては、
バルブ部側とコイル内部側との間、及び、外部側とコイル内部側との間を同時にシールするシール部材を備えたソレノイドバルブにおいて、
前記シール部材が配置されるシールスペースを形成する外壁面の少なくとも一部を弾性変形可能な板状部材で構成すると共に、
前記板状部材による弾性反発力によって前記シール部材を押圧するように、該板状部材が配置されていることを特徴とする。
したがって、シール部材やシールスペースの寸法ばらつきを吸収することができる。
前記板状部材の変形が弾性域内に収まるように該板状部材の変形領域を規制する規制部を設けることを特徴とする。
これにより、板状部材が塑性変形してしまうことを防止できる。
発明を実施するための最良の形態
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(第1の実施の形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドバルブについて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図であり、図2は本発明の第1実施の形態に係るシール部材の装着状態を示す概略構成断面図である。
ソレノイドバルブ100は、ソレノイド部100Aとバルブ部100Bとから構成される。
ここで、バルブ部100Bは、図示の例ではスプールバルブの場合を示している。すなわち、バルブスリーブ16の内部にスプール15が往復動自在に備えられており、このスプール15のストロークに応じてバルブスリーブ16に形成した弁の開口面積が変化する構成である。従って、ソレノイドによりスプール15のストローク量を制御することによって流体の流入量や流出量を制御できる。
ソレノイド部100Aは、概略、通電により磁界を発生する略円筒状のコイル3と、コイル3への通電によって発生した磁界により磁気回路が形成されることでセンターポスト2に磁気的に吸引されるプランジャ1と、プランジャ1の軸受となる略有底筒状の金属製のスリーブ4と、プランジャ1の駆動をスプール15に伝達するためにプランジャ1に連結されたロッド7と、を備えている。
また、ソレノイド部100Aは、磁路を形成するために径方向に拡がる略平面部12aを有すると共にソレノイドバルブ本体を所定の位置に固定するためのブラケット12bを有するブラケットプレート12と、コイル3,センターポスト2,プランジャ1,スリーブ4及びブラケットプレート12を含む各種構成部材を内包するケース部材9と、を備えている。
更に、ソレノイド部100Aは、コイル3が巻かれるボビン6と、プランジャ1がセンターポスト2から離間しやすくするためのシム8と、磁路を形成するアッパープレート11と、ロッド7の軸受13と、スプール15に固定されたE型リング18を付勢することによってスプール15と共にロッド7を介してプランジャ1をセンターポスト2から離間させる方向に付勢するスプリング14と、コイル3に通電を行うための端子17aを備えたコネクタ17と、を備えている。
なお、コイル3やボビン6はモールドによってアセンブル化され、モールドコイルサブアセンブル5を構成している。
また、バルブ部100B内部からコイル3側への流体の漏れを防止すると共に、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)の侵入を防止する、本実施の形態の特徴の主要部材となるシール部材10を備えている。
次に、ソレノイドバルブ100の動作について説明する。
プランジャ1は、通常状態、すなわちコイル3に通電していない状態では、センターポスト2から離間する方向に位置する構成となっている。すなわち、本実施の形態では、上述のようにスプール15を、E型リング18を介してソレノイド部100A方向に付勢することによって、プランジャ1はセンターポスト2から離間される。
そして、コイル3に通電することによって、磁路(ケース部材9,アッパープレート11,プランジャ1,センターポスト2,ブラケットプレート12によって形成される磁路)が形成され、プランジャ1はセンターポスト2に磁気的に吸引される。
従って、コイル3に通電する電流の大きさによって、磁気力を制御することができ、これによりプランジャ1の移動量を制御することでスプール15のストローク量を制御できる。これにより流体の流量を制御し、油圧制御などの各種流体圧力制御等を行うことができる。
なお、本実施の形態においては、一般的なソレノイドバルブのようにプランジャの両端側でそれぞれ軸受を行うような構造ではなく、スリーブ4によってプランジャ1を軸受する構成である。従って、軸出しにかかわる部材(プランジャ1,ロッド7,センターポスト2,スリーブ4及びロッド軸受13の5個)の数が比較的少ないため寸法管理の負担が少ない。また、プランジャの両端側でそれぞれ軸受構造を必要とする場合に比べて、軸方向を小型化することができるという利点がある。
次に、シール部材10について特に図2を参照して更に詳しく説明する。
本発明の実施の形態においては、略有底筒状のスリーブ4の開口端部におけるつばをケース部材9の内周面付近まで伸ばした構成としている。また、本実施の形態では、ブラケットプレート12の略平面部12aに接する位置から湾曲させて、この略平面部12aから遠ざかる方向に伸ばして円筒部4aを形成し、更に、ケース部材9の内周面に向けて折り曲げることで略平面部4bを形成している。
これにより、これら円筒部4aの外周面及び略平面部4bと、ケース部材9の内周面と、ブラケットプレート12の略平面部12aによって、略円筒状の環状空間を形成している。
そして、この環状空間にシール部材10を配置している。
シール部材10は、概略、スリーブ4のつばの円筒部4aの外周面に当接されて内径側への移動が規制される位置規制部10aと、スリーブ4のつばの略平面部4bに当接する当接部10bと、ブラケットプレート12の略平面部12aをシールするシール部10cと、を備えている。
そして、本実施の形態においては、シール部10cによってブラケットプレート12の略平面部12aとの間で第1シール面を形成させ、シール部10c及び当接部10bとケース部材9の内周面との間で第2シール面を形成させ、当接部10bとスリーブ4のつばの略平面部4bとの間、及び位置規制部10aとスリーブ4のつばの円筒部4aの外周面との間で第3シール面を形成している。
また、本実施の形態においては、当接部10b及びシール部10cを、ケース部材9の内周面に向かって撓み変形自在に構成している。
このように、当接部10bとシール部10cとを可撓性のあるリップ状にしたことから、環状空間の寸法ばらつきに対しても十分にシールすることが可能となる。
特に、本実施の形態では、ケース部材9の内周面付近において、断面が略U字形状となるように、それぞれリップ状の当接部10bとシール部10cを設けた。従って、軸方向の撓みが十分に行えるため、軸方向に対する寸法ばらつきに対しても十分にシール性を発揮することができる。また、軸方向に荷重がかかった場合(図2中矢印P方向)には、各リップが軸方向内側(図2中矢印Q方向)に撓んで(図2中点線部)ケース部材9の内周面に対するシール性を確保し、またはバックアップすることができる。
すなわち、本実施の形態に係るソレノイドバルブのように、径方向に対して軸方向の寸法が大きく、また、ケース部材9の端部を軸方向にかしめることで、各部材を固定するタイプのものでは、径方向の寸法ばらつきに対して軸方向の寸法ばらつきの方が大きくなりやすく(寸法公差で3〜4倍程度)、かしめ時に軸方向に荷重がかかるが、上述したようなシール部材10を用いることによって、十分なシール性を確保することができる。
また、本実施の形態では、当接部10bのリップの根本付近に環状突起10dを設け、シール部10cのリップの根本付近に環状突起10eを設けている。
これにより、図示のように、環状突起10dをスリーブ4のつばの略平面部4bに密着させて、また、環状突起10eをブラケットプレート12の略平面部12aに密着させることでシールの補助を行うようにしても良い。
以上のような構成によって、シール部材10のシール部10cが、金属製のブラケットプレート12の略平面部12aをシールし、かつ、同じく金属製のケース部材9の内周面をシールすることから、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)の侵入を防止することが可能となる。
そして、シール部材10の位置規制部10aが、金属製のスリーブ4のつばの円筒部4aの外周面をシールすることで、本体内部の流体の漏れを防止することができる。更に、当接部10bが、金属製のスリーブ4のつばの略平面部4bをシールすることで、流体の漏れを2重に防止することができる。
このように、一つのシール部材10によって、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)侵入防止と内部からの流体の漏れ防止を同時に行うことが可能となる。
従って、シール性を維持しつつ、部品点数を減少させ、かつ、構造の簡略化を図ることが可能となる。また、従来技術のようにセンターポストにOリング装着用の環状溝を設ける必要がなくなることから、センターポストを小さくしても磁路を十分に確保できるため、小型軽量化を図ることが可能となる。
なお、上述の例では、当接部10b及びシール部10cのいずれをも撓み変形自在にして、かつ、いずれをもケース部材9の内周面との間で第2シール面を形成させるように構成する場合を示したが、いずれか一方のみを撓み変形自在に構成して、一方のみでケース部材9の内周面との間で第2シール面を形成させるようにしても良い。
また、上述の例では、位置規制部10a及び当接部10bのいずれをもスリーブ4のつばとの間で第3シール面を形成させるように構成する場合を示したが、いずれか一方のみで第3シール面を形成させて、他方は、単に当接させるのみとする構成とすることも可能である。
また、シール部材の構造については、図2に示したものに限らず、例えば、図3に示すような構造とすることもできる。
すなわち、図3に示すシール部材30は、概略、スリーブ4のつばの円筒部4aの外周面に当接されて内径側への移動が規制される位置規制部30aと、スリーブ4のつばの略平面部4bに当接する当接部30dと、ブラケットプレート12の略平面部12aをシールする第1シール部30eと、ケース部材9の内周面をシールする第2シール部30b,第3シール部30cと、を備えている。つまり、上記図2に示すシール部材10における当接部10bを、図3に示すシール部材30では、第2シール部30bと当接部30dに分けて、また、図2に示すシール部材10におけるシール部10cを、図3に示すシール部材30では、第1シール部30eと第3シール部30cに分けた構成となっている。
そして、第1シール部30eが第1シール面を形成し、第2シール部30b,第3シール部30cが第2シール面を形成し、位置規制部30a及び当接部30dが第3シール面を形成している。
また、第2シール部30b,第3シール部30c,当接部30d及び第1シール部30eは、撓み変形自在に構成している。
従って、上記図2に示すシール部材10と同様に、寸法ばらつき等に対しても安定したシール性を維持することができる。
次に、本実施の形態に係るソレノイドバルブ100の好適な適用例について説明する。
自動車等のエンジンにおいては、エンジンの吸排気バルブをカムシャフトの回転によってバルブ開閉を行うが、運転状態(高速・低速)によって、バルブのタイミングを適切に制御することによって、燃費が向上し、高い排ガス清浄化を得ることが可能になる。
このバルブタイミングの制御は、カムシャフトを回転方向にずらして、位相を変えることにより行うことができ、これをソレノイドバルブによって行う技術が公知技術として知られている。
ここで、カムシャフトを回転方向にずらすために、ソレノイドバルブによる油圧制御を行うことになるが、配置スペース等の関係からエンジンオイルの流路の経路上にソレノイドバルブが設置されて、エンジンオイルを利用するのが一般的である。
従来、オンオフ制御を行うソレノイドバルブを用いることによって、高速時と低速時の2種類の状態に分けて制御を行うことがなされていたが、近年、より高精細な制御を行うべく、リニア制御が可能なソレノイドバルブが用いられるようになっている。
そこで、上述した本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブをこのようなバルブタイミングコントロール(VTC)用のリニア制御ソレノイドバルブとして好適に用いることが可能となる。
(第2の実施の形態)
図4には、第2の実施の形態が示されている。上記第1の実施の形態では、環状の空間部を断面が略長方形の略円筒状として、ここに特に軸方向の寸法形状の変化に対応可能とする特殊形状を有するシール部材を配置する場合について説明したが、本実施の形態では、環状の空間部の断面を略3角形状として、Oリングによって各面をシールする3面シールとした場合について説明する。
その他の構成および作用については第1の実施の形態と同一なので、同一の構成部分については、その説明は省略する。
図4は本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。なお、図中矢印Pで示したシール部分については、図中(P)に拡大図を示している。
本発明の実施の形態においては、略有底筒状のスリーブ4の開口端部におけるつばをケース部材9の内周面付近まで伸ばした構成としており、本実施の形態では、ブラケットプレート12の略平面部12aに接する位置から湾曲させて、ケース部材9の内周面に向かうにつれて略平面部12aから徐々に離れるように傾斜した傾斜面4cを形成している。
これにより、これらスリーブ4の傾斜面4cと、ケース部材9の内周面と、ブラケットプレート12の略平面部12aによって、断面が略3角形状の環状空間を形成している。
そして、この環状空間にシール部材20を配置している。
本実施の形態に係るシール部材20はOリングであり、上記スリーブ4の傾斜面4c,ケース部材9の内周面及びブラケットプレート12の略平面部12aの全ての面に密着してシールする3面シールである。
以上のような構成によって、シール部材20が、金属製のブラケットプレート12の略平面部12aに密着し、かつ、同じく金属製のケース部材9の内周面に密着することから、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)の侵入を防止することが可能となる。
そして、シール部材20が、金属製のスリーブ4のつばの傾斜面4cに密着することで、本体内部の流体の漏れを防止することができる。
このように、一つのシール部材20によって、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)侵入防止と内部からの流体の漏れ防止を同時に行うことが可能となり、上記第1の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、シール部材自体を構造の簡易なOリングを用いることから、シール部材装着部の構造も簡易なものとなるため、より構造の簡略化を図ることが可能となる。
(第3の実施の形態)
図5を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るソレノイドバルブについて説明する。なお、本実施の形態は、シール部材及びスリーブ4のつば以外の構成については、上記第1の実施の形態と同一であるので、これらについてのみ詳しく説明し、その他の構成についての説明は省略する。
図5は本発明の第3実施の形態に係るシール部材の装着状態を示す概略構成断面図である。
本実施の形態においては、スリーブ4におけるつばの略平面部4’bが弾性変形可能に構成されている。すなわち、円筒部4’aと略平面部4’bの間の曲げ部4’dが力を受ける基点となり、略平面部4’bが撓む板バネとして構成されている。
このような構成により、シール部材40が装着されると、シール部材40に備えられた当接部41によって、略平面部4’bが押圧されて撓む。これにより、略平面部4’bの弾性反発力によって、シール部材40に備えられた当接部41を押圧する。
従って、シール部材40の弾性反発力と略平面部4’bの弾性反発力が相俟って、十分なシール性を発揮する。
ここで、シール部材が配置されるシールスペース(環状空間)は、スリーブ4のつばと、ケース部材9の内周面と、ブラケットプレート12の略平面部12aによって形成されることになるが、これらの部材の寸法ばらつきによって、シールスペースの大きさがばらつくことになる。
また、シール部材40の寸法についてもばらつきは発生する。
しかし、本実施の形態のように、シールスペースを形成する外壁の一部(つばの一部である略平面部4’b)を弾性変形可能な弾性材で構成することによって、上記寸法ばらつきを吸収することができる。
従って、シールスペースに対してシール部材(の体積)が大きい場合でも、つぶし荷重が大きくなることによって、略平面部4’bを変形させ、シールスペースが大きくなるため、シール部材の充填率が100%を超えることなく安定したシール性を得ることができる。
また、略平面部4’bが変形することによって、シールスペースが大きくなるため、充填率が高くなりすぎず、シール部材の組み付け荷重の低減を図ることができ、組み付け性が向上する。
このように、シールスペースの寸法ばらつきやシール部材の寸法ばらつきに対して、シール部材の締め代(つぶし代)が十分に取れなかったり、シール部材の充填率が100%を越えてしまったりすることを防止できる。
また、本実施の形態においては、モールドコイルサブアセンブル5のモールド部の端面51を、略平面部4’bの変形領域を規制する規制部として機能させている。
これにより、略平面部4’bの変形領域を弾性域内に規制することが可能となり、略平面部4’bが塑性変形することを防止することが可能となる。
なお、上記略平面部4’bの材質(スリーブ4の材質)としては、例えば、ステンレスを好適に適用可能である。
また、略平面部4’b部分の加工に関しては、薄肉の板材を曲げた場合、その曲げR部分(曲げ部4’d)がさらに薄くなりやすく、板バネの撓みの基点として適している。これにより、この曲げ部4’dの厚さを調節することにより、板バネの撓み荷重を調整することが可能である。
(第4の実施の形態)
図6を参照して、本発明の第4の実施の形態に係るソレノイドバルブについて説明する。なお、本実施の形態は、スリーブ4のつば以外の構成については、上記第2の実施の形態と同一であるので、これらについてのみ詳しく説明し、その他の構成についての説明は省略する。
図6は本発明の第4実施の形態に係るシール部材の装着状態を示す概略構成断面図である。
本実施の形態においては、上記第3の実施の形態と同様に、スリーブ4におけるつばの先端部(傾斜面4’cを有する部分)を弾性変形可能に構成している。すなわち、傾斜面4’cの根本部分である曲げ部4’eが力を受ける基点となり、つばの先端部が撓む板バネとして構成されている。
このような構成により、シール部材20(Oリング)が装着されると、シール部材20によって、つばの先端部が押圧されて撓む。これにより、つばの先端部の弾性反発力によって、シール部材20を押圧する。
従って、上記第3の実施の形態の場合と同様の効果を得ることが可能となる。
なお、本実施の形態においては、ボビン6の端面61を、つばの先端部の変形領域を弾性域内に収めるための規制部として機能させている。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明は、一つのシール部材で、外部からのコイルの絶縁不良の原因またはショートの原因となる水(異物)侵入防止及び内部からの流体漏れを防止できるため、本体内部と外部との間のシール性能を維持しつつ、構造の簡略化と小型軽量化を実現できる。
環状の空間部を略円筒形状として、ここにシール部と当接部と位置規制部とを備えたシール部材を配置させることによって、環状空間部の寸法変化、特に軸方向の変化に対しても、十分なシール性を発揮できる。
環状の空間部における断面形状を略3角形として、ここにOリングを装着するようにすれば、より構造の簡略化を図ることができる。
また、シールスペースを形成する外壁面の少なくとも一部を弾性変形可能な板状部材で構成し、その弾性反発力によってシール部材を押圧するようにすれば、シール部材やシールスペースの寸法ばらつきを吸収することができ、一層安定したシール性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図であり、
図2は、本発明の第1実施の形態に係るシール部材の装着状態を示す概略構成断面図であり、
図3は、シール部材の変形例を示す一部破断断面図であり、
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドバルブの概略構成断面図であり、
図5は本発明の第3実施の形態に係るシール部材の装着状態を示す概略構成断面図であり、
図6は本発明の第4実施の形態に係るシール部材の装着状態を示す概略構成断面図であり、
図7は、従来技術に係るソレノイドバルブの概略構成断面図である。

Claims (4)

  1. 通電により磁界を発生する略円筒状のコイルと、
    該円筒状のコイルと同心的に設けられるセンターポストと、
    前記コイルによって発生した磁界によって、前記センターポストに磁気吸引されるプランジャと、
    前記センターポスト及びプランジャの外周面を覆うように設けられ、前記プランジャの軸受となる略有底筒状の金属製のスリーブと、
    該スリーブの開口端付近に設けられ、径方向に拡がる略平面部を有する金属製のプレートと、
    これらコイル,センターポスト,プランジャ,スリーブ及びプレートを内包する金属製のケース部材と、を備えたソレノイドバルブにおいて、
    前記スリーブの開口端部に、前記プレートの略平面部に接する位置から湾曲させて、この略平面部から遠ざかる方向に伸ばして円筒部が形成され、更に、前記ケース部材の内周面に向けて折り曲げることで略平面部が形成されるつばを設け、
    該つばにおける前記円筒部の外周面及び前記略平面部と、前記ケース部材の内周面と、前記プレートの略平面部との間で、環状の空間部を形成すると共に、
    該空間部に配置され、前記つば,前記ケース部材の内周面及び前記プレートの略平面部のそれぞれをシールするシール部材を備えたことを特徴とするソレノイドバルブ。
  2. 記シール部材は、
    前記プレートの前記略平面部をシールする部分を有するシール部と、
    前記つばの前記略平面部に当接する部分を有する当接部と、
    前記つばの前記円筒部の外周面部に当接されて内径側への移動が規制される位置規制部と、を備え、
    前記シール部によって前記プレートの前記略平面部との間で第1シール面を形成させ、
    前記シール部及び前記当接部と前記ケース部材の内周面との間で第2シール面を形成させ、
    前記当接部と前記つばの略平面部との間、及び前記位置規制部と前記つばの円筒部の外周面との間で第3シール面を形成させ
    前記シール部及び前記当接部を、前記ケース部材の内周面に向かって撓み変形自在となるように、可撓性のあるリップ状に形成したことを特徴とする請求項1に記載のソレノイドバルブ。
  3. 通電により磁界を発生する略円筒状のコイルと、
    該円筒状のコイルと同心的に設けられるセンターポストと、
    前記コイルによって発生した磁界によって、前記センターポストに磁気吸引されるプランジャと、
    前記センターポスト及びプランジャの外周面を覆うように設けられる、略有底筒状の金属製のスリーブと、
    該スリーブの開口端付近に設けられ、径方向に拡がる略平面部を有する金属製のプレートと、
    これらコイル,センターポスト,プランジャ,スリーブ及びプレートを内包する金属製のケース部材と、を備えたソレノイドバルブにおいて、
    前記スリーブにケース部材の内周面に向かって伸びるつばを設け、
    該つばの一方の面と、前記ケース部材の内周面と、前記プレートの略平面部との間で、環状の空間部を形成すると共に、
    該空間部に配置され、前記つばの一方の面,前記ケース部材の内周面及び前記プレートの略平面部のそれぞれをシールするシール部材を備えたソレノイドバルブであって、
    前記つばを、前記プレートに当接する位置から前記ケース部材の内周面に向かうにつれてプレートから離れるように傾斜させることによって、前記環状の空間部における断面形状を略3角形とすると共に、
    前記シール部材を、前記つばの傾斜した傾斜面,前記ケース部材の内周面及び前記プレートの略平面部のそれぞれをシールするOリングとすることを特徴とするソレノイドバルブ。
  4. 前記つばは、前記シール部材が装着されると、そのシール部材の押圧力によって、つばの先端部が弾性変形可能な弾性材で構成されると共に、
    該つばの弾性反発力によって前記シール部材を押圧するように、該つばが配置されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のソレノイドバルブ。
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