JP4205804B2 - N−長鎖アシル酸性アミノ酸、およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−長鎖アシル酸性アミノ酸が含まれている水と親水性有機溶媒の混合溶液中から製品の香りに影響しない程度まで親水性有機溶媒を除去するN−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造方法に関するものであり、かつ液体洗浄剤または香粧品組成物に配合した場合でも沈殿や濁りを生じることのないN−長鎖アシル酸性アミノ酸配合組成物を与えるN−長鎖アシル酸性アミノ酸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、N−長鎖アシル酸性アミノ酸のアミン塩またはアルカリ金属塩は、その界面活性作用から界面活性剤や抗菌剤として広く利用されている。特に洗剤、および医薬部外品・化粧品など香粧品分野での利用が多く、直接人体に接触するケースも多い。そのため臭気や外観等で使用者に不快感をもたらすようなものであってはならない。
【0003】
N−長鎖アシル酸性アミノ酸を製造する方法として、特公昭46−8685号公報では反応溶媒として親水性有機溶媒と水の混合溶媒を使用し、アルカリの存在下酸性アミノ酸と長鎖脂肪酸ハライドを縮合反応させ、反応終了後反応液を鉱酸でpH1に調整してN−長鎖アシル酸性アミノ酸の粗結晶を析出させ、ろ過、洗浄して親水性有機溶媒を除去してN−長鎖アシル酸性アミノ酸を得る方法が開示されている。しかしこの方法で得られたN−長鎖アシル酸性アミノ酸は無機塩の除去性が不十分であるとともに、上記のようなN−長鎖アシル酸性アミノ酸の分離法は設備、操作ともに工業的ではない。
【0004】
特公昭57−47902号公報では、水と親水性溶媒の混合溶媒中、アルカリの存在下に酸性アミノ酸と脂肪酸ハライドを反応させて得られる合成反応液を、40℃から該親水性有機溶媒の沸点温度においてpH1〜6に調整することにより水層と有機層に分層し、次いで有機層より親水性溶媒を除去してN−長鎖アシル酸性アミノ酸を分離取得する方法が開示されている。ここではN−長鎖アシル酸性アミノ酸を含む有機層からN−長鎖アシル酸性アミノ酸を単離するのに特に困難はないと述べており、実施例では有機層を真空加熱で大部分のアセトンを除去した後、残渣に水を加え65℃で撹拌しながら空気を液面に吹きつけることにより残余のアセトンを除去するとの記載がある。しかしながら、この空気を液面に吹き付ける程度の脱溶媒プロセスでは残留するアセトンの完全な除去や後述する高沸点臭気物質の除去は困難である。
【0005】
さらに特公昭46−8685号公報および特公昭57−47902号公報と同一の出願人による特開平3−284685号公報では、N−長鎖アシル酸性アミノ酸中に残存し製品の臭いの原因となる物質としてアセトンやアセトンのアルドール縮合物であるジアセトンアルコールやメシチルオキシドを挙げ、特公昭57−47902号公報の方法ですらこれらの臭気物質を完全に除くことができず、N−長鎖アシル酸性アミノ酸中に残存し、製品の臭いの原因となると述べている。その上でこれらの臭気物質および塩類をルーズな逆浸透膜によりN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩水溶液から除去する方法を開示している。しかしこの方法では、高価な膜分離装置を使用する点で不利であること、濃度管理、膜管理等運転管理に煩雑さが伴うことから工業的に簡易な方法であるとは言えない。
【0006】
特開平7−2747号公報でも膜分離プロセスを提案しているが特開平3−284685号公報の方法と同様に不利な点を有している。またこの出願の比較例では得られたN−長鎖アシル酸性アミノ酸が含まれる有機層の直接濃縮例が記載されているが、ここではその過程において大幅に遊離脂肪酸含有量が増加すること、および親水性有機溶媒が除去困難なことが実証されている。
【0007】
また特開平3−279354号公報ではアセトンとイソプロパノールからなる親水性有機溶媒と水との混合溶媒を用いることにより、アセトン単独では多量に副生するジアセトンアルコールやメシチルオキシドのような臭気成分の生成を抑制する反応方法、また反応液を酸性化後晶析分離し得られた結晶を親水性有機溶媒に溶解し硫酸ナトリウム水溶液を添加した後、有機層と水層に分層する方法を開示している。しかしこの方法では、一旦晶析分離した結晶を再溶解する工程が煩雑であること、多量の硫酸ナトリウムを使用する限りそれの製品への混入は避けられないこと、また高濃度の硫酸ナトリウムを含む廃液の処理が必要なことが問題となる。さらに、親水性有機溶媒としてアセトンとイソプロパノールの混合溶媒を用いたとしても、除去が不要な程度にジアセトンアルコールやメシチルオキシドが生成しないわけではなく、これら臭気成分の除去は必須である。また有機層から有機溶媒を除去する方法については実施例中にも真空加熱により除去するとの記載以外に何ら具体的な方法の記載がなく、得られたN−長鎖アシル酸性アミノ酸中のアセトン縮合物はtraceと記述されているだけで、最終製品の香りに影響を及ぼさない程度に除去されているか不明である。
【0008】
このように、従来の方法で得られたN−長鎖アシル酸性アミノ酸または塩は、不純物として含まれる無機塩や遊離脂肪酸のため、製品に配合したとき特に低温下での保存の際に濁りや沈殿を生ずるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、N−長鎖アシル酸性アミノ酸またはその塩の製造に用いられた親水性有機溶媒を除去するにあたり、▲1▼製品の香りに影響しない、▲2▼遊離脂肪酸含有量の増加を抑制できる、▲3▼工業的に簡便な方法は今までになかった。また、N−長鎖アシル酸性アミノ酸をN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩として製品に配合したとき、その製品の香りに影響せず、低温下に長期間放置しても沈殿や濁りを生じることのない低温安定性に優れたN−長鎖アシル酸性アミノ酸も今までになかった。こうした状況の下で、本発明の目的は、製品の香りに影響せず、かつ低温安定性に優れたN−長鎖アシル酸性アミノ酸を提供することであり、また、該N−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
通常、N−長鎖アシル酸性アミノ酸が水と親水性有機溶媒の混合溶媒中に含有されている混合液から親水性有機溶媒を蒸留除去する際、熱供給の点から減圧下で実施するのが一般的である。しかしながら水と親水性有機溶媒の混合溶媒中にN−長鎖アシル酸性アミノ酸が含まれる溶液から親水性有機溶媒を蒸留除去するにあたって、減圧下で実施すると以下のような状況が観察された。
【0011】
特公昭57−47902号公報の実施例のように、アセトンと水にN−長鎖アシル酸性アミノ酸の一つであるN−ココイル−L−グルタミン酸を溶解した溶液を減圧下撹拌槽にてアセトンの蒸留除去を試みたところ、蒸留が進行しアセトンがある組成以下になると溶液は透明な状態から半透明状態になり粘度が若干上昇した。さらに蒸留を続けると大きく液の粘度が上昇し、ほとんど流動性のないペースト状となってしまった。この状態からのアセトンの蒸留除去は極めて効率が悪く、臭気物質であるアセトン、およびジアセトンアルコールやメシチルオキシドのようなアセトンの縮合物はほとんど除去されないことが判った。
【0012】
他の親水性有機溶媒、例えばターシャリーブタノールでも同様の状況が観察された。ターシャリーブタノールの場合、アセトンのようなアルドール縮合物やその他の変成物を伴わないために、臭気物質としてはターシャリーブタノール自身のみを考慮すればよい。ターシャリーブタノール自身の臭気閾値は、アセトンの縮合物であるジアセトンアルコールやメシチルオキシドに比べはるかに高く、最終製品の形態等にもよるが、最終製品の香りに影響を及ぼさないためには、N−長鎖アシル酸性アミノ酸中のターシャリーブタノール含有量は0.1%以下で良い。従って蒸留除去の負荷はアセトンに比べターシャリーブタノールの場合はるかに小さいと言える。ターシャリーブタノール、水およびN−ココイル−L−グルタミン酸の混合液から減圧下ターシャリーブタノールを蒸留除去していくと、ある時点で一旦液は透明な均一溶液状態となるが、さらに蒸留を続けるとアセトンのときと同じく半透明状態を経てペースト状に至る。しかしそれでもなお、このペースト状となった液からターシャリーブタノールを蒸留除去して上記含有量を達成するのは困難である。
【0013】
困難さの原因は、一つには、親水性有機溶媒の大部分が留去した後の溶液の性状である。溶液がペースト状では、溶液の撹拌が効果的に行えないため溶液の均一性が失われ、例えばローカルヒートのような事態になり、溶媒留去が効果的に実施されないのである。また上記のようなマクロな不均一性のほかに、ペースト状では物質移動が極めて制限されるが故に、溶媒の留去が効果的に行われないとも本発明者等は考えている。N−長鎖アシル酸性アミノ酸はN−アシル基とカルボキシル基を持っているため水素結合による架橋をつくりやすく、ペースト状とは、水分子と少量の親水性有機溶媒の分子がこの架橋構造の中に入り込んでいる状態でありかつ架橋構造が運動を活発にしていない状態と推察される。このように運動の活発でない架橋構造中に親水性有機溶媒が取り込まれているため、ここから親水性有機溶媒を蒸留除去するのには困難さを伴うことが理解できる。このようにN−長鎖アシル酸性アミノ酸が水と親水性有機溶媒の混合溶媒中に含有されている混合液から親水性有機溶媒を蒸留除去していくと、液は高粘度化し流動性を失うため、液の流動性を維持して蒸留を継続するには、液の温度を上げざるを得ない。
【0014】
さらに困難さの二つ目として、蒸留操作中に透明な状態から半透明状態への状態変化がある。この状態変化が起こった後、液中に分散気泡が多数発生し濃縮操作自体が非常に不安定な状態となるため、実際の操作においては、系の圧力を高めたり低めたりする操作を断続的に行うか、加熱量を低め発生蒸気量を大幅に低下させて非常に多大な時間を要して蒸留せざるを得ない。従って、このような方法で親水性有機溶媒を濃縮除去していく場合、その過程においてN−長鎖アシル酸性アミノ酸は多大な熱履歴を受けて分解を起こし、分解物である遊離脂肪酸を生成することとなる。N−長鎖アシル酸性アミノ酸中の遊離脂肪酸の増加は、N−長鎖アシル酸性アミノ酸の塩を液体洗浄剤または香粧品組成物に配合した場合、その配合香粧品組成物が低温下で濁りを生じ、製品本来の性状を著しく損なう要因となることを見出した。
【0015】
本発明者らは、前記従来技術の課題を克服する一つの方法として、特願平9−231171号公報でN−長鎖アシル酸性アミノ酸が含まれている水と親水性有機溶媒の混合液中から親水性有機溶媒を除去する時に、親水性有機溶媒含量が5重量%以下の組成において蒸留時の固形分濃度35〜65重量%、混合液の温度を75〜100℃に維持することで、蒸留時の液の温度を低く保ちながらも液の流動状態が大幅に改善し、液の粘性を良好な範囲に保ちながら蒸留する方法を提案している。しかしこの方法でも、蒸留操作中に起こる透明な状態から半透明状態への状態変化、さらにそれに引き続き起こる液中の分散気泡による急激な発泡に対しては十分に対応できるものではなく、特に工業的レベルにスケールアップした場合において、課題を残すものである。また、蒸留時における遊離脂肪酸の生成抑制に関しても十分ではない。
【0016】
そこで、本発明者等はさらに鋭意検討を重ねた結果、以下のことを見出した。
▲1▼N−長鎖アシル酸性アミノ酸が含まれている水と親水性有機溶媒の混合液中から親水性有機溶媒を除去するに際し、該混合液を気液混相流となして蒸発缶内に噴霧し溶媒を蒸発させる噴霧蒸発器を用いた蒸発方式で行うことで、蒸留途中に起こる混合液の状態変化に伴う発泡に対しても全く問題なく蒸留操作を実施することができること。
【0017】
▲2▼蒸留時の温度条件を90℃以下とすることで遊離脂肪酸の生成は実質的に問題ないレベルまで抑えられること。
【0018】
さらに本発明者らは、生成した遊離脂肪酸含有量が一定量以下のN−長鎖アシル酸性アミノ酸は格段に優れた性能を発揮することを見い出し、本発明を完成するに到った。
【0019】
即ち本発明のN−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造方法は、N−長鎖アシル酸性アミノ酸が水と親水性有機溶媒の混合溶媒中に含有されている混合液から親水性有機溶媒を蒸留除去するに際し、該混合液を気液混相流となして蒸発缶内に噴霧し溶媒を蒸発させる噴霧蒸発器を用いた蒸発方式で行うこと、該混合液の温度が90℃を越えないこと、および蒸留時において液中の固形分濃度を5〜70重量%に維持することを特徴とするN−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造方法である。
【0020】
また本発明は、無機塩含量がN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対し1重量%以下、ターシャリーブタノール含量がN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対し0.1〜750重量ppm、遊離脂肪酸含有量がN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対し3重量%以下であることを特徴とするN−長鎖アシル酸性アミノ酸に関するものである。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
N−長鎖アシル酸性アミノ酸の塩を液体洗浄剤または香粧品組成物等に配合した場合、特に該配合組成液を5℃程度の低温下に静置したときに起こる濁り、沈殿の大きな原因はN−長鎖アシル酸性アミノ酸中の遊離脂肪酸、無機塩類であり、これらは原料からの持ち込みによるもの、またはN−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造工程において発生するものである。特に、遊離脂肪酸は一度生成するとN−長鎖アシル酸性アミノ酸との分離が困難であり、製造工程においてその発生を抑えることが重要である。
【0023】
本発明のN−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造方法は、次のような工程からなる。以下では最も好ましい親水性有機溶媒としてターシャリーブタノールを用いた系で詳述するが、親水性有機溶媒として従来汎用の例えばアセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等も同様に用いることが可能である。
【0024】
本発明の製造方法のアシル化反応工程は、水とターシャリーブタノールの混合溶媒中、酸性アミノ酸と脂肪酸ハライドを攪拌下に縮合させて(アシル化反応)粗N−長鎖アシル酸性アミノ酸を生成させる工程である。
【0025】
本発明の製造方法によって得られるN−長鎖アシル酸性アミノ酸は、炭素原子数8〜20の飽和または不飽和のアシル基が酸性アミノ酸のアミノ基に導入されたものである。
【0026】
本発明の製造方法において、原料として用いられる酸性アミノ酸は、分子中に存在するカルボキシル基とアミノ基の数がそれぞれ2個と1個のモノアミノジカルボン酸であり、アミノ基はN−メチル基またはN−エチル基でもかまわない。また光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、ランチオニン、β−メチルランチオニン、シスタチオニン、ジエンコール酸、フェリニン、アミノマロン酸、β−オキシアスパラギン酸、α−アミノ−α−メチルコハク酸、β−オキシグルタミン酸、γ−オキシグルタミン酸、γ−メチルグルタミン酸、γ−メチレングルタミン酸、γ−メチル−γ−オキシグルタミン酸、α−アミノアジピン酸、α−アミノ−γ−オキシアジピン酸、α−アミノピメリン酸、α−アミノ−γ−オキシピメリン酸、β−アミノピメリン酸、α−アミノスベリン酸、α−アミノセバシン酸、パントテン酸等が挙げられる。これらをアシル化反応に供する際には、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等の形でもかまわない。
【0027】
本発明の製造方法において、原料として用いられる脂肪酸ハライドは炭素原子数8〜20の飽和または不飽和脂肪酸の酸塩化物、酸臭化物、酸沃化物であれば何でも良く、直鎖、分岐、環状を問わない。例えばカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸のような直鎖脂肪酸のハライド、2−ブチル−5−メチルペンタン酸、2−イソブチル−5−メチルペンタン酸、ジメチルオクタン酸、ジメチルノナン酸、2−ブチル−5−メチルヘキサン酸、メチルウンデカン酸、ジメチルデカン酸、2−エチル−3−メチルノナン酸、2,2−ジメチル−4−エチルオクタン酸、メチルドコサン酸、2−プロピル−3−メチルノナン酸、メチルトリデカン酸、ジメチルドデカン酸、2−ブチル−3−メチルノナン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、2−(3−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、2−(2−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、ブチルエチルノナン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ジメチルテトラデカン酸、ブチルペンチルヘプタン酸、トリメチルトリデカン酸、メチルヘキサデカン酸、エチルペンタデカン酸、プロピルテトラデカン酸、ブチルトリデカン酸、ペンチルドデカン酸、ヘキシルウンデカン酸、ヘプチルデカン酸、メチルヘプチルノナン酸、ジペンチルヘプタン酸、メチルヘプタデカン酸、エチルヘキサデカン酸、エチルヘキサデカン酸、プロピルペンタデカン酸、ブチルテトラデカン酸、ペンチルトリデカン酸、ヘキシルドデカン酸、ヘプチルウンデカン酸、オクチルデカン酸、ジメチルヘキサデカン酸、メチルオクチルノナン酸、メチルオクタデカン酸、エチルヘプタデカン酸、ジメチルヘプタデカン酸、メチルオクチルデカン酸、メチルノナデカン酸、メチルノナデカン酸、ジメチルオクタデカン酸、ブチルヘプチルノナン酸のような分岐脂肪酸のハライド、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸、トリデセン酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、オレイン酸、ノナデセン酸、ゴンドイン酸のような直鎖モノエン酸のハライド、メチルヘプテン酸、メチルノネン酸、メチルウンデセン酸、ジメチルデセン酸、メチルドデセン酸、メチルトリデセン酸、ジメチルドデセン酸、ジメチルトリデセン酸、メチルオクタデセン酸、ジメチルヘプタデセン酸、エチルオクタデセン酸のような分岐モノエン酸のハライド、リノール酸、リノエライジン酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸、プソイドエレオステアリン酸、パリナリン酸、アラキドン酸のようなジまたはトリエン酸のハライド、オクチン酸、ノニン酸、デシン酸、ウンデシン酸、ドデシン酸、トリデシン酸、テトラデシン酸、ペンタデシン酸、ヘプタデシン酸、オクタデシン酸、ノナデシン酸、ジメチルオクタデシン酸のようなアセチレン酸のハライド、メチレンオクタデセン酸、メチレンオクタデカン酸、アレプロール酸、アレプレスチン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ヒドノカルプン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸のような環状酸のハライドが挙げられる。また天然油脂由来の脂肪酸のハライドでも良く、上記の炭素原子数8〜20の飽和または不飽和脂肪酸を80%以上含む混合脂肪酸のハライドであれば本発明製造方法における脂肪酸ハライドとして使用できる。例えば、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、落花生油脂肪酸、綿実油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリブ油脂肪酸、ツバキ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、豚脂脂肪酸、乳脂脂肪酸、魚油脂肪酸等のハライドが挙げられる。脂肪酸ハライド中の遊離脂肪酸は少ないほど好ましい。
【0028】
本発明の製造方法において、酸性アミノ酸に対する脂肪酸ハライドのモル比は1.05以下とし、好ましくは1以下、さらに好ましくは0.98以下とする。酸性アミノ酸に対する脂肪酸ハライドのモル比1を越えて用いた脂肪酸ハライドは加水分解によって遊離脂肪酸になる。
【0029】
本発明の製造方法におけるアシル化反応工程の反応溶媒に用いられる親水性有機溶媒、例えばターシャリーブタノールは高純度である必要はなく、水含有品でかまわず、反応精製系から回収されたターシャリーブタノールも精製することなしに使うことができる。反応時における水/親水性有機溶媒混合比は親水性有機溶媒の種類によって最適な範囲があるため、使用する親水性有機溶媒種によって、水/親水性有機溶媒混合比を選択することが好ましい。例えば、親水性有機溶媒がターシャリーブタノールの場合、水/ターシャリーブタノール溶媒混合比は90/10〜20/80(容量比)の範囲が好ましい。さらに好ましくは、85/15〜50/50(容量比)の範囲である。
【0030】
本発明の製造方法におけるアシル化反応工程における酸性アミノ酸の仕込み濃度は特に限定されないが、反応中経時的に反応液の粘度が上昇するため、反応終了に近くなった時点で攪拌混合が可能な程度の仕込み濃度にすべきである。
【0031】
本発明のアシル化反応工程で使用されるアルカリ物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の無機塩基があげられ、実用的には水酸化ナトリウムが用いられる。反応中pHは9〜13.5に維持するのが良く、好ましくは10〜13の範囲であり、さらに好ましくはpH12〜13の範囲に維持する。pHが9を下回ると脂肪酸ハライドが酸性アミノ酸と縮合反応せずに加水分解した遊離脂肪酸の生成が増え、pHが13.5を越えても実質的に不利な点は発生しないが、必要以上のアルカリ量、およびそれに応じて次工程の酸沈分層工程で消費する酸の量が増えるため資源浪費の観点から好ましくない。
【0032】
本発明の製造方法におけるアシル化反応工程の反応温度は特に限定されないが、一般的に言えることは、脂肪酸ハライドが酸性アミノ酸と縮合してN−長鎖アシル酸性アミノ酸を生成する反応(即ちアシル化反応)は、脂肪酸ハライドが加水分解して遊離脂肪酸を生成する反応との競争反応であり、加水分解反応の方が活性化エネルギーが大きいため、反応温度が低いほど遊離脂肪酸の生成比率は少なくなるので有利である。その際、脂肪酸ハライドの加水分解反応が実質的に起こらなくなる下限温度が存在するのでむやみに低温にする必要はない。また生成物のN−長鎖アシル酸性アミノ酸中に許容される遊離脂肪酸含有率を下回る程低温にする必要もない。またあまり低温にすると、生成するN−長鎖アシル酸性アミノ酸の種類や反応液中濃度によっては反応中に高粘度になり混合不能になったり、反応中に析出したりするので、このような事態にならない範囲で反応温度を設定すべきである。またこのような場合も含めて、反応中経時的に反応温度を変化させても良い。通常アシル化反応温度は−10〜70℃の範囲、好ましくは−10〜20℃の範囲、さらに好ましくは−5〜10℃の範囲である。
【0033】
上記反応温度を制御するためには、反応熱の除熱が必要である。除熱の方法としては特に制限はなく通常用いられる方法、例えば反応槽にジャケットを取り付けてそこに冷媒を通して除熱する方法、反応液中に冷却コイルを通して除熱する方法、または別途冷却用熱交換器を設置して反応液を反応槽から熱交換器に循環して除熱する等の方法が用いられる。
【0034】
本発明の製造方法におけるアシル化反応工程の反応形態は、撹拌槽で所定量の酸性アミノ酸、アルカリ、反応溶媒を仕込んだ後、脂肪酸ハライドを連続的に供給しながら、同時にpHをアルカリ側にするため同時にアルカリを供給する半回分方式でも良いし、反応溶媒を仕込んだ後、酸性アミノ酸のアルカリ水溶液、脂肪酸ハライドを同時に連続供給する方式でも良く、所定量を反応させた後撹拌槽内の液を次工程の酸沈分層工程に付する。撹拌槽内に脂肪酸ハライドを供給する際、噴霧させても良いし、あるいは液中に供給するようにしても良い。また撹拌槽もしくは管型反応器を用いて反応溶媒、酸性アミノ酸のアルカリ水溶液および脂肪酸ハライドを反応器に連続的に供給しながら反応液を連続的に抜き出して次工程の酸沈分層工程に付する、連続方式でもかまわない。
【0035】
本発明の製造方法においては、酸性アミノ酸と脂肪酸ハライドとの縮合反応を攪拌下または液の混合が十分な状態の下において行うことが重要である。攪拌状態が悪い場合には、酸性アミノ酸と脂肪酸ハライドとの縮合反応の選択率が低下し、脂肪酸ハライドの加水分解反応により遊離脂肪酸の生成が増える。この原因としては反応系が2相であり、液中に分散した脂肪酸ハライドの界面で反応が進行し、その界面の更新が反応選択率を維持するのに必須であるためと推測される。
【0036】
攪拌条件として攪拌動力を指標にすると0.2kW/m3以上が必要である。これより低い攪拌動力においてでも、N−長鎖アシル酸性アミノ酸を得ることは可能であるが、本発明の遊離脂肪酸含量が3重量%以下のN−長鎖アシル酸性アミノ酸を得るには不十分である。攪拌動力は好ましくは0.3kW/m3以上とし、さらに好ましくは0.5kW/m3以上とする。
【0037】
本発明の製造方法における酸沈分層工程は、アシル化反応液を塩酸、硫酸のような鉱酸でpHを1〜6の範囲にすることにより有機層と水層の二層に分離して有機層を取得する工程である。アシル化反応液は、生成したN−長鎖アシル酸性アミノ酸がアルカリ塩の形で存在している。これに鉱酸を加えることでN−長鎖アシル酸性アミノ酸中のカルボキシル基の一部もしくは全部をフリーの酸にすることで有機層と水層とに分層するものである。
【0038】
酸沈分層時のpHによって、カルボキシル基の解離状態が変わり分層状態、即ち有機層と水層との重量比や無機塩類の除去性がやや変わるため、上記pH範囲でもpH1〜3で実施することが好ましく、さらに好ましくはpH1〜2.5で実施する。
【0039】
酸沈分層温度は35℃〜親水性有機溶媒の沸点、例えば親水性有機溶媒がターシャリーブタノールの場合では80℃である。好ましくは40〜70℃である。35℃より低い温度では分層平衡に達するまでの時間が長くなったり、平衡に達しても有機層中にかなりの量の無機塩が残存したり、N−長鎖アシル酸性アミノ酸の種類やその液中濃度によっては全く分層しない場合があるからである。水/ターシャリーブタノールの共沸組成の常圧における沸点が80℃近傍にあるので、80℃を越すと沸騰が起こるため加圧下での分層が必要となり、特別な装置が必要となり不利である。
【0040】
本発明の製造方法における水洗工程は、酸沈分層工程で得られたN−長鎖アシル酸性アミノ酸を含む有機層中の水溶性不純物を液液抽出法により水層中に移行させ、それを低減する工程である。具体的には、酸沈分層後の有機層に水および/またはターシャリーブタノールを添加してN−長鎖アシル酸性アミノ酸/ターシャリーブタノール/水の組成を調整し、液液抽出で有機層中の水溶性不純物、主に反応および酸沈分層工程で生成する無機塩類を水層中に移行させることを行う。
【0041】
これをN−ココイル−L−グルタミン酸/ターシャリーブタノール/水の組成(重量分率)を例に取って三角図で表すと、分層の起こる組成は図1の線で囲まれた領域(分層領域)になる。
【0042】
この組成領域内であれば、該混合液はN−ココイル−L−グルタミン酸を含む有機層と水層の二相に分離するので、この領域内に入るように各成分組成を決定すれば何回でも有機層の精製は可能であるため、有機層中の無機塩が希望する含有量になるまで精製を繰り返すことができる。これを図1で例を用いて説明する。
【0043】
図1の各軸の目盛りは重量分率である。酸沈分層後の有機層組成がA点である時、水を添加してB点の組成にすると有機層と水層の二層に分かれ各層の組成はそれぞれC点とD点になる。さらにC点組成の有機層に水を添加してE点の組成にすれば二層に分層し有機層水層の組成はそれぞれF点とG点になる。この時点でF点の有機層中に含まれる無機塩の含有量が希望する程度に低減されていれば水洗工程は終了することになるが、そうでない場合さらに同様な分層操作を実施すればよい。
【0044】
本発明においては、無機塩類の含量はN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対し1重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下となるようにする。N−長鎖アシル酸性アミノ酸塩中の無機塩類がN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対し、1重量%よりも多い場合には、N−長鎖アシル酸性アミノ酸塩を液体洗浄剤または香粧品組成物に配合した場合に低温下において沈殿や濁りを生じてしまう。
【0045】
本発明の製造方法における水洗工程では、分層平衡に達する時間は分層領域においてターシャリーブタノール濃度が高いほど短くなるので分層が実施可能な範囲でターシャリーブタノール濃度を高くするのは分層時間から好ましい。
【0046】
本発明の製造方法における水洗工程では、水洗温度は35〜80℃、好ましくは40〜70℃である。35℃より低い温度では分層平衡に達するまでの時間が長くなったり、平衡に達しても有機層中にかなりの量の無機塩が残存したり、N−長鎖アシル酸性アミノ酸の種類や液中濃度によっては全く分層しない場合があるからである。水/ターシャリーブタノールの共沸組成の沸点が80℃近傍にあるので、80℃を越すと沸騰が起こるため加圧下での分層が必要となり、特別な装置が必要となり不利である。
【0047】
こうしたN−長鎖アシル酸性アミノ酸と、水とターシャリーブタノール混合溶媒との関係から明らかなように、本発明の水洗工程を適用することにより、本発明の製法以外の製法によって得られた無機塩類などの不純物を含むN−長鎖アシル酸性アミノ酸についても、同様にして無機塩類不純物を所望のレベルまで低下させることができる。
【0048】
本発明の製造方法における溶媒留去工程では、N−長鎖アシル酸性アミノ酸が水とターシャリーブタノールの混合溶媒中に含有されている混合液からターシャリーブタノールを蒸留除去するに際し、例えば、特公平7−51201号公報に見られるが如き、該混合液を気液混相流となして蒸発缶内に噴霧し溶媒を蒸発させる噴霧蒸発器を用いた蒸発方式で行う。この方法についてさらに詳しく説明する。
【0049】
この方法は、蒸発缶の下部より液を抜き出し、これをポンプにて熱交換器に循環、送液し所定の過熱状態とした後、蒸発缶上部に設けた配管より蒸発缶内に噴霧、溶媒を蒸発させる方法であって以下のような特徴を有す。
【0050】
1)蒸発缶の気相部には液面に向けて設置されている1個または複数個のほぼ円筒状の管端が有り、これが缶上部に設けた配管に接続している。
【0051】
2)熱交換器における液の流量と熱交換器出口部における過熱度とを制御することにより、熱交換器を出た過熱液体を管端までの間に蒸発させて気液混相流となす。
【0052】
3)管端から噴霧された液滴中の残過熱熱量を、液滴が蒸発缶内部の液相に着水するまでの間に気相部において放出する。
【0053】
気液混相流の流動形態は、例えば化学工学便覧改訂5版p272〜273に示すように分類されている。鉛直気液二相流の流動状態図を図2に示す。
【0054】
発泡性液体を上記のような方式で蒸留する場合には、管端における気液混相流の流動形態を間欠流または環状流とする。実際の流動形態の調整は管端における液の線速、および過熱器出口における液温度と蒸発缶の操作圧力における液の沸点との温度差(過熱度)とを制御することで達せられる。
【0055】
本発明の製造方法においては、蒸留時の混合液温度は90℃を越えないようにする。90℃を越えるとN−長鎖アシル酸性アミノ酸は熱により分解する反応等が促進され、これは製品品質の低下の原因となる。好ましくは80℃を越えないようにする。さらに好ましくは、70℃を越えないようにする。このような条件で液温度を管理する点を考慮すると、蒸留圧力は減圧下において一定の圧力を維持するように実施することが好ましい。
【0056】
ここで、N−長鎖アシル酸性アミノ酸/ターシャリーブタノール/水の系において、圧力−沸点曲線はターシャリーブタノール/水の系の圧力−沸点曲線に一致する。N−長鎖アシル酸性アミノ酸は圧力−沸点曲線に全く関与しないので、混合液温度を決めるとターシャリーブタノール/水系の圧力−沸点曲線から操作圧力を決めることができる。
【0057】
本発明の製造方法において、蒸留除去の間にターシャリーブタノールとともに水も失われるので場合によってはN−長鎖アシル酸性アミノ酸の過度の濃縮を防ぐ手段が必要になる。その手段としては、例えば蒸留除去の間、水または温水を間欠的もしくは連続的に混合液に補充してもいいし、水蒸気を吹き込んでも良い。本発明の方法を実施する場合、この水蒸気を吹き込む手段は潜熱を利用するので熱供給という点から効果的である。
【0058】
本発明の製造方法において重要な要素の1つは例えば上記の如き手法により、蒸留時の液中の固形分濃度は5〜70重量%に維持することにある。70重量%よりも固形分濃度を高くすると、液の高粘度化および固化等が起こる可能性があり、過加熱され、遊離脂肪酸が生成する。5重量%よりも固形分濃度を下げるとターシャリーブタノール濃度が低下し蒸留効率が低下するとともに、最終製品として必要な固形分濃度がこれより高い場合には、さらなる濃縮を要する点で不利である。固形分濃度は好ましくは、35〜65重量%に維持する。さらに好ましくは、40〜60重量%に維持する。
【0059】
本発明のN−長鎖アシル酸性アミノ酸においては、ターシャリーブタノールは製品の香りに影響を及ぼさない程度まで除去されていればよい。またN−長鎖アシル酸性アミノ酸中に微量残存したターシャリーブタノールはN−長鎖アシル酸性アミノ酸またはその塩特有の脂肪酸臭をマスキングする効果を有する。ターシャリーブタノール含有量は、N−アシル酸性アミノ酸に対し0.1〜750重量ppm、好ましくは0.1〜300重量ppm、さらに好ましくは0.1〜150重量ppmである。ターシャリーブタノール含有量が750重量ppmより少ない場合には、マスキング効果が十分ではない。一方これより多い場合でもマスキング効果は見られるが、ターシャリーブタノールの臭気が問題となる。
【0060】
このようにしてターシャリーブタノールを蒸留除去した後、乾燥することによってN−長鎖アシル酸性アミノ酸を得ることができる。また、ターシャリーブタノールを除去した後、N−長鎖アシル酸性アミノ酸と水の混合液をそのまま中和することでN−長鎖アシル酸性アミノ酸のアルカリ塩水溶液を得ることもできる。
【0061】
以上を達成することにより、本発明のN−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造工程において遊離脂肪酸の生成は実質上ないか、またはあっても極めてわずかな量に抑えることができる。さらに本発明の工程により得られた遊離脂肪酸が一定含有量以下のN−長鎖アシル酸性アミノ酸は、従来のものに比し格段に優れた性能を発揮することをも本発明者らは見出した。
【0062】
本発明のN−長鎖アシル酸性アミノ酸においては、遊離脂肪酸含量はN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対し3重量%以下である。遊離脂肪酸がN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対し、3重量%よりも多い場合には、該N−長鎖アシル酸性アミノ酸から得られるN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩を液体洗浄剤または香粧品組成物に配合した場合に沈殿や濁りを生じてしまう。遊離脂肪酸の含量は、好ましくは2.5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。
【0063】
このようにして得られるN−長鎖アシル酸性アミノ酸と水の混合液、またはN−長鎖アシル酸性アミノ酸から得られるN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩は優れた界面活性能力を示すと共に、先述のように遊離脂肪酸含量が少なく、かつ不純物が低減されており、産業上極めて有用である。N−長鎖アシル酸性アミノ酸の塩としては、蒸留時の塩の形態、即ちナトリウム・カリウム・リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム・マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン・ジエタノールアミン・トリエタノールアミン・トリイソプロパノールアミン等の有機アミン塩、アルギニン・リジン等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。
【0064】
その用途の代表例としては、例えば工業用洗浄剤及び処理剤原料、家庭用(衣料・台所・住居等)洗剤原料、香粧品原料等を挙げることが出来る。特に香粧品原料用途はN−長鎖アシル酸性アミノ酸またはその塩の特徴である低刺激性を活かした有用な用途と言える。
【0065】
本発明に於ける香粧品とは、薬事法に言う医薬部外品および化粧品の総称であり、具体的には、医薬部外品としては口中清涼剤、腋臭防止剤、てんか粉類、養毛剤、除毛剤、染毛剤、パーマネントウェーブ用剤、浴用剤、薬用化粧品、薬用歯磨き類などを列挙することができ、化粧品としては、化粧石鹸、洗顔料(クリーム・ペースト状、液・ジェル状、顆粒・粉末状、エアゾール使用など)、シャンプー、リンスなどの清浄用化粧品、染毛料、ヘアトリートメント剤(クリーム状、ミスト状、オイル状、ジェル状その他の形態の物および枝毛コート剤を含む)、ヘアセット剤(髪油、セットローション、カーラーローション、ポマード、チック、びんつけ油、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアリキッド、ヘアフォーム、ヘアジェル、ウォーターグリース)などの頭髪用化粧品、一般クリーム・乳液(クレンジングクリーム、コールドクリーム、バニシングクリーム、ハンドクリームなど)、ひげ剃り用クリーム(アフターシェービングクリーム、シェービングクリームなど)、化粧水(ハンドローション、一般化粧水など)・オーデコロン、ひげ剃り用ローション(アフターシェービングローション、シェービングローションなど)、化粧油、パックなどの基礎化粧品、おしろい(クリームおしろい、固形おしろい、粉おしろい、タルカムパウダー、練りおしろい、ベビーパウダー、ボディパウダー、水おしろいなど)・パウダー、ファンデーション(クリーム状、液状、固形など)、ほお紅・まゆずみ、アイクリーム・アイシャドウマスカラなどのメークアップ化粧品、一般香水、練り香水、粉末香水などの香水類、日焼け・日焼け止めクリーム、日焼け・日焼け止めローション、日焼け・日焼け止めオイルなどの日焼け・日焼け止め化粧品、爪クリーム・エナメル・エナメル除去液などの爪化粧品、アイライナー化粧品、口紅・リップクリームなどの口唇化粧品、歯磨きなどの口腔化粧品、バスソルト、バスオイルなどの浴用化粧品などを列挙することができる。中でも、本発明品は上記に言う清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品に使われることが多く、分けても清浄用化粧品での使用に最適である。
【0066】
また、本発明品は通常香粧品に用いられる各種の基材と併用することができる。具体的には、脂肪酸塩(石鹸)、アルキル硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルファーオレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩(SAS)、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルファースルホン化脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ナフタリンスルフォン酸塩ホルマリン縮合物などの陰イオン性界面活性剤、アルキルベタイン類、アルキルアミドベタイン類、アルキルスルホベタイン類、イミダゾリニウムベタイン類などの両性界面活性剤、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルなどの非イオン性界面活性剤、第1〜第3級脂肪アミン塩、塩化アルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、ジアルキルモルフォリニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体、トラガントゴムなどの高分子界面活性剤、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニンなどの天然界面活性剤、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、ひまし油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、卵黄油、パーム油、パーム核油、合成トリグリセライド等の油脂、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウおよびその誘導体等のロウ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のその他のエステル油、金属石鹸、ストレートシリコーン油、変成シリコーン油等のシリコーン類等の揮発性および不揮発性の油分、グリセリン、1,3−ブタンジオール、プロパンジオール、ポリエチレングリコールなどのポリオール類やトリメチルグリシン、ソルビトール、ピロリドンカルボン酸塩類、乳酸塩類、ヒアルロン酸塩類などの保湿剤、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、両性メタクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、シリコーンレジン等の水溶性および油溶性高分子やポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルメチルグリコシド、テトラデセンスルホン酸塩等の増粘、増泡成分、エチレンジアミン四酢酸およびその塩類、ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸およびその塩類、リン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸塩類、メタリン酸塩類などの金属イオン封鎖剤、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸およびその塩類、フェノキシエタノール等の防腐剤、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等のpH調整剤、その他トリクロロルカルバニリド、サリチル酸、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノールなどのふけ・かゆみ防止剤、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体その他の紫外線吸収剤、アルブチン、コウジ酸、アスコルビン酸およびその誘導体などの美白剤、センブリエキス、セファランチン、ビタミンEおよびその誘導体、ガンマーオリザノールなどの血行促進剤、トウガラシチンキ、ショオウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルエステルなどの局所刺激剤、各種ビタミンやアミノ酸などの栄養剤、女性ホルモン剤、毛根賦活剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、アラントイン、アズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸などの収斂剤、メントール、カンフルなどの清涼剤、抗ヒスタミン剤、高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコン系物質、トコフェロール類、BHA、BHT、没食子酸、NDGAなどの酸化防止剤、精製水等などを含むことができる。
【0067】
特に、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシド、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、テトラデセンスルホン酸塩、ミリスチン酸塩類、ミリスチルジメチルアミンとの併用は粘度、起泡力を増加させる点で有用であり、また、各両イオン性界面活性剤との併用は刺激性を一層低減させるという点に於いてきわめて有用である。
【0068】
以下で、本発明を実施例等を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。
【0069】
本発明の実施例等で用いる分析手段などは以下の通りである。
【0070】
(イ)無機塩類の定量
各イオンを誘導結合型プラズマ発光分析装置IRIS/AP(Thermo Jarrell Ash製)で測定した。塩素イオンのみはイオンクロマトグラフィーで測定した。イオンクロマトグラフィーの条件は、カラムDIONEX AS4ASC、ガードカラムAG4ASC、サプレッサーAMMS、溶離液3mmol/L Na2CO3、1mmol/L NaHCO3混合溶液、再生液は0.05NのH2SO4である。実施例中、無機塩含有量はN−長鎖アシル酸性アミノ酸重量に対する値で示す。
【0071】
(ロ)N−長鎖アシル酸性アミノ酸、遊離脂肪酸の定量
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて、ODSカラムに、メタノール/水/リン酸系の溶離液で、紫外検出器および示差屈折率検出器を用いて行った。実施例中、遊離脂肪酸含有量は全てN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対する重量%に換算して表示した。
【0072】
(ハ)固形分の定量
105℃、3Hrでの乾燥減量法により測定した。固形分の定義は以下の通り。 固形分(重量%)=乾燥後重量/乾燥前重量 × 100
(ニ)ターシャリーブタノールの定量
ガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製GC−14A)にて、検出器を水素炎イオン化型検出器、カラムは内径3mmのガラスカラムに充填剤として液相PEG20M 20%、担体ChromosorbW AW−DMCSの60〜80メッシュを用い、インジェクション温度200℃、カラム温度は0〜10分が120℃、その後30℃/minで200℃まで昇温し、200℃で15分ホールドというパターンで測定した。実施例中のターシャリーブタノール量はN−長鎖アシル酸性アミノ酸に対する量で示す。
【0073】
(ホ)原体での低温安定性評価
固形分30重量%のN−長鎖アシル酸性アミノ酸トリエタノールアミン塩水溶液10mlを−18℃以下の温度で冷却していき、液中に濁りが見られるか、または白い析出物が出る温度(凝固点または低温始濁点ともいう)を測定した。
【0074】
液の温度を−10℃まで冷却しても液中に濁りまたは析出のなかった物は○(安定性良好)、−10℃以上で濁りまたは析出の発生した物については×(安定性不良)で示す。この試験は液体洗浄剤等に配合した香粧品組成物での低温安定性と非常に相関性が高い試験法である。
【0075】
(ヘ)シャンプー配合組成液での低温安定性評価
シャンプー組成物を表2の組成で配合し、これを5℃にて保存し、1日後、1週間後、1ケ月後、3ケ月後および6ケ月後に濁りの発生の有無を検討した。
【0076】
以下、実施例に従って本発明の方法を詳細に説明する。
【0077】
(実施例1)
(アシル化工程)
L−グルタミン酸モノナトリウム一水和物1444g(7.72mol)、純水3070g、25%水酸化ナトリウム水溶液1235g(水酸化ナトリウム7.72mol)の混合溶液に、ターシャリーブタノール/水混合溶媒(ターシャリーブタノール88容量%)1647mlを加え、この溶液を氷冷しながら25%水酸化ナトリウムでpHを12に調整しながら塩化ココイル1760g(7.56mol、遊離脂肪酸2重量%含有)を攪拌下、2.5時間を要して滴下した。
【0078】
(酸沈分層工程)
さらに30分攪拌を続けた後、75%硫酸を滴下して液のpH値を2に、また液の温度を65℃に調整した。滴下終了後、攪拌を停止し、20分間65℃で静置すると有機層と水層とに分層し、これから有機層を分離した。
【0079】
(水洗工程)
分離した有機層に有機層重量に対し100重量%のターシャリーブタノール/水混合液(ターシャリーブタノール20重量%)を添加して20分攪拌した。攪拌停止後、20分間65℃で静置すると有機層と水層とに分層した。
【0080】
ここから有機層を分離した後、さらに有機層に50重量%のターシャリーブタノール/水混合液(ターシャリーブタノール20重量%)を添加して20分攪拌した。攪拌停止後、20分間65℃で静置すると有機層と水層とに分層した後、有機層を分離した。
【0081】
得られた有機層を分析すると、N−ココイル−L−グルタミン酸に対して、遊離脂肪酸含量は1.6重量%、無機塩として塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムはいずれも200重量ppm以下であった。
【0082】
(溶媒留去工程)
分離取得した有機層中の固形分含量が50重量%となるように純水を添加して攪拌混合した。その後、噴霧式蒸発器を用いて溶媒除去操作を実施した。噴霧式蒸発装置を、図3に例示する。装置は、(1)蒸発缶(内径300mm、高さ700mm)、(2)液を循環するポンプ、(3)熱交換器、(4)加熱された気液混相流を蒸発缶に噴霧するノズル(管端は内径10mm)、(5)蒸発ガスを凝縮するコンデンサー、(6)留出液タンクからなる。
【0083】
装置の概略の運転方法を例示する。蒸発缶下部よりポンプにて液を循環し、これを熱交換器へ導入する。熱交換器を出た液は過熱されておりノズル末端に近づくにつれ徐々に蒸発し気液混相流となる。
【0084】
本実施例では、圧力265mmHg、ノズル末端における液の線速約1.5m/秒、液の過熱度を約20℃の条件にて、蒸留時に固形分を50重量%に維持するように液中に純水を添加しながら減圧蒸留を行った。蒸留開始4Hr後には液温度は73℃となり蒸留を終了し、N−ココイル−L−グルタミン酸を53重量%含有する混合液を得た。これを乾燥してN−ココイル−L−グルタミン酸の白色固体を得た。N−ココイル−L−グルタミン酸の収率97.0%、ターシャリーブタノール濃度は50重量ppmで、遊離脂肪酸含量は1.8重量%であった。
【0085】
(実施例2)
実施例1と同じ方法で水洗工程まで実施した後、分離取得した有機層中の固形分含量が40重量%となるように純水を添加して攪拌混合した後、溶媒留去工程を以下のように実施した。
【0086】
実施例1と同じ装置を用いて、圧力条件を356mmHgとする以外は実施例1と同じ方法で実施した。蒸留開始4Hr後には液温度は80℃となり蒸留を終了し、N−ココイル−L−グルタミン酸を41重量%含有する混合液を得た。これを乾燥してN−ココイル−L−グルタミン酸の白色固体を得た。N−ココイル−L−グルタミン酸の収率96.8%、ターシャリーブタノール濃度は60重量ppmで、遊離脂肪酸含量は1.9重量%であった。
【0087】
(実施例3)
実施例1と同じ方法で水洗工程まで実施した後、分離取得した有機層中の固形分含量が60重量%となるように純水を添加して攪拌混合した後、溶媒留去工程を以下のように実施した。
【0088】
実施例1と同じ装置を用いて、圧力条件を468mmHgとする以外は実施例1と同じ方法で実施した。蒸留開始4Hr後には液温度は87℃となり蒸留を終了し、N−ココイル−L−グルタミン酸を62重量%含有する混合液を得た。これを乾燥してN−ココイル−L−グルタミン酸の白色固体を得た。N−ココイル−L−グルタミン酸の収率96.6%、ターシャリーブタノール濃度は60重量ppmで、遊離脂肪酸含量は2.1重量%であった。
【0089】
(実施例4)
実施例1において塩化ココイルを塩化ラウロイルとした以外は実施例1と同じ条件および方法で水洗工程まで実施した後、分離取得した有機層中の固形分含量が50重量%となるように純水を添加して攪拌混合した後、溶媒留去工程を以下のように実施した。
【0090】
実施例1と同じ装置を用いて、圧力条件を234mmHgとする以外は実施例1と同じ方法で実施した。蒸留開始4Hr後には液温度は70℃となり蒸留を終了し、N−ラウロイル−L−グルタミン酸を50重量%含有する混合液を得た。これを乾燥してN−ラウロイル−L−グルタミン酸の白色固体を得た。N−ラウロイル−L−グルタミン酸の収率97.1%、ターシャリーブタノール濃度は65重量ppmで、遊離脂肪酸含量は1.8重量%であった。
【0091】
(比較例1)
実施例1と同じ方法で水洗工程まで実施し、有機層を分離取得した。その後、10Lガラス製容器を用いて減圧下加熱し、蒸留中の水添加はせずに、ターシャリーブタノールおよび水の蒸留除去を実施した。途中、液が発泡状態となり圧力を40mmHg〜常圧の間で調節しながら、蒸留開始15Hr後には液温度は105℃となり蒸留を終了し、N−ココイル−L−グルタミン酸を得た。N−ココイル−L−グルタミン酸の収率は92.3%、ターシャリーブタノール濃度は80重量ppmで、遊離脂肪酸含量は6.5重量%であった。
【0092】
(比較例2)
実施例1において塩化ココイルを塩化ラウロイルとした以外は実施例1と同じ条件および方法で水洗工程まで実施し、分離取得した有機層から、10Lガラス製容器を用いて減圧下加熱し蒸留中の水添加はせずに、ターシャリーブタノールおよび水の蒸留除去を実施した。途中、液が発泡状態となり圧力を40mmHg〜常圧の間で調節しながら、蒸留開始15Hr後には液温度は110℃となり蒸留を終了した。N−ラウロイル−L−グルタミン酸の収率は90.5%、ターシャリーブタノール濃度は60重量ppmで、遊離脂肪酸含量は8.3重量%であった。
【0093】
(実施例5)
実施例1、実施例3、実施例4および比較例1、比較例2で製造したものと純水、トリエタノールアミンを混合し30重量%のトリエタノールアミン塩水溶液を調製した。これを用いて上記(ホ)に示す原体での低温安定性試験を実施した。評価結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
(実施例6)
実施例1、実施例2、実施例3および比較例1で製造したものと純水、トリエタノールアミンを混合し30重量%のトリエタノールアミン塩水溶液を調製した。これを用いて表2に示すシャンプー組成液を次の方法で配合した。
【0096】
精製水の一部をとり、カチオン化セルロースを加熱しつつ溶解する。残りの成分を80℃にて均一になるまで混合し、保持する。両者を併せ、さらに均一になるまで混合した後に室温まで冷却し容器に充填する。こうして得られたシャンプー組成液を5℃にて保存し、1日後、1週間後、1ケ月後、3ケ月後および6ケ月後に濁りの発生の有無を検討した。
【0097】
この結果、実施例1、実施例2、実施例3を用いたものは6ケ月後においても透明だったが、比較例1を用いたものは1日後の時点で著量の濁りを認め、製品本来の性状を著しく損なった。
【0098】
【表2】
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、従来法に比べ次の利点がある。
【0100】
本発明の製造方法は簡易であるとともに、工業的にも安定して実施可能な製造方法である。また、本発明によって製造されたN−長鎖アシル酸性アミノ酸は、それをアルカリ塩として液体洗浄剤または香粧品組成物に配合した場合において、特に低温下での長期保存時に濁りや沈殿を生じないN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩配合香粧品組成物を与えるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるN−長鎖アシル酸性アミノ酸の精製の原理を説明するもので、前記アミノ酸としてのN−ココイル−L−グルタミン酸/ターシャリーブタノール/水の間で分層の生じる組成(線で囲まれた領域)を示す(図1中の各軸の目盛りは重量分率)。
【図2】鉛直気液二相流の流動状態図(化学工学便覧改訂5版p273)。
【図3】噴霧式蒸発装置略図。
【符号の説明】
(1)蒸発缶
(2)循環ポンプ
(3)熱交換器
(4)噴霧ノズル
(5)凝縮コンデンサー
(6)留出液タンク
Claims (5)
- N−長鎖アシル酸性アミノ酸が水と親水性有機溶媒の混合溶媒中に含有されている混合液から親水性有機溶媒を蒸留除去するに際し、該混合液を気液混相流となして蒸発缶内に噴霧し溶媒を蒸発させる噴霧蒸発器を用いた蒸発方式で行うこと、該混合液の温度が90℃を越えないこと、および蒸留時において液中の固形分濃度を5〜70重量%に維持することを特徴とするN−長鎖アシル酸性アミノ酸の製造方法。
- 親水性有機溶媒がターシャリーブタノールであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- N−長鎖アシル酸性アミノ酸が水と親水性有機溶媒の混合溶媒中に含有されている混合液が、以下の工程より製造される混合液であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の方法。
1)水とターシャリーブタノールの混合溶媒中、酸性アミノ酸と脂肪酸ハライド とをアルカリの存在下に縮合反応させる工程(アシル化反応工程)、
2)反応終了後、反応液を鉱酸でpHを1〜6にすることにより有機層と水層と に分層しN−長鎖アシル酸性アミノ酸を含む有機層を取得する工程(酸沈分層 工程)、
3)得られた有機層を水および/またはターシャリーブタノールと混合し、35 ℃〜80℃の温度において水層とN−長鎖アシル酸性アミノ酸を含む有機層と に分層し不純物を除去する工程(水洗工程)。 - アシル化反応工程において、脂肪酸ハライド/酸性アミノ酸のモル比が1.05以下であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
- 酸沈分層分層工程において、pHが1〜3であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
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