JP4205301B2 - フィッシャートロプシュ法による炭化水素類の製造方法 - Google Patents

フィッシャートロプシュ法による炭化水素類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素と一酸化炭素を主成分とする混合ガス(以下「合成ガス」という)から炭化水素類を製造する方法に関する。さらに詳しくは、合成ガスを、液状炭化水素類中に分散せしめたマンガン酸化物を担体とするルテニウム系触媒に接触させ、炭化水素類、とりわけ灯軽油留分に容易に変換できるワックス分と共にオレフィン分に富む炭化水素類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成ガスから炭化水素類を合成する方法として、フィッシャー・トロプシュ反応(Fischer−Tropsch 反応)、メタノール合成反応などが良く知られている。そして、フィッシャー・トロプシュ反応は鉄、コバルト、ルテニウム等の鉄系触媒で、メタノール合成反応は銅系触媒で、C2含酸素(エタノール、アセトアルデヒド)合成はロジウム系触媒で進行することが知られており、また、これらの炭化水素類の合成に用いる触媒の触媒能は、一酸化炭素の解離吸着(dissociative adsorption) 能と強く関連することが知られている(例えば「均一触媒と不均一触媒」、干鯛、市川共著、丸善、昭和58年刊)。
【0003】
ところで、近年、大気環境保全の観点から、低硫黄分の軽油が望まれており、今後その傾向はますます強くなるものと考えられる。また、原油資源は有限であるとの観点から、それに代わるエネルギー源の開発が望まれており、今後ますます強く望まれるようになるものと考えられる。これらの要望に応える技術として、エネルギー換算で原油に匹敵する可採埋蔵量があるといわれる天然ガス(主成分メタン)から灯軽油等の液体燃料を合成する技術である所謂GTL(gas to liquid)がある。天然ガスは、硫黄分を含まないか、含んでいても脱硫が容易な硫化水素(H2S)やメルカプタン(CH3SH)等であるため、得られる灯軽油等の液体燃料には、その中に殆ど硫黄分が無なく、またセタン価の高い高性能ディーゼル燃料に利用できるなどの利点があるため、このGTLは近年ますます注目されるようになってきている。
【0004】
上記GTLの一環として、合成ガスからフィッシャー・トロプシュ反応(以下「FT反応」という)によって炭化水素類を製造する方法(以下「FT法」という)が盛んに研究されている。このFT法によって炭化水素類を製造するに当たり、灯軽油留分の収率を高めるためには、C10〜C16相当の炭化水素を効率的に合成することが肝要である。一般に、FT反応における炭化水素類生成物の炭素数分布はシュルツ・フローリー(Shultz-Flory)則に従うとされており、シュルツ・フローリー則では、連鎖成長確立α値は、反応温度の上昇と共に大きく減少する傾向にある、つまり反応温度が上昇すると生成炭化水素類の炭素数が大きく低下する傾向にあるとしている。古くは、如何にシュルツ・フローリー則を外し、如何に特定の炭素数の炭化水素類を選択的に合成するかを課題として、盛んに触媒開発等の技術開発が行われたようであるが、未だこの課題を十分解決し得た技術は提案されていない。最近では、寧ろ、シュルツ・フローリー則を外すことにはこだわらずに、ワックス分等の水素化分解により容易に灯軽油留分とすることのできる留分の収率を高め、該ワックス分等を水素化分解することにより、その結果として灯軽油留分の得率を高めようという考え方が一般的になっている。しかしながら、現状の連鎖成長確率は0.85前後であり、これを如何に高めていくかが最近の技術的課題の一つとなっている。とはいえ、あまり連鎖成長確率を高めていくと、生成炭化水素類はワックス分が殆どとなるため、今度はプロセス運転上の問題が生じ、また触媒の一般的性能からしても、連鎖成長確率は0.95前後が事実上の上限と考えられている。
【0005】
そこで、灯軽油留分の得率をなお一層高めるためには、ワックス分を生成させ、その水素化分解による灯軽油留分の得率の向上に加えて、低級オレフィンも生成させ、その二量化、三量化等により灯軽油留分を生成させることも視野に入れる必要がある。この灯軽油留分の得率のなお一層の向上は、連鎖成長確率が高く、かつ生成低級炭化水素中のオレフィン選択性に優れるFT反応を行うことにより達成することができると考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現在のところ、連鎖成長確率が高く、かつオレフィン選択性が優れていて、上記灯軽油留分得率のなお一層の向上を十分達成できるFT反応を行い得る触媒、プロセスは未だ提案されていない。従来から、種々のFT反応用の触媒が提案されており、オレフィン類への高選択性を目的とした触媒として、マンガン酸化物担体にルテニウムを担持させた触媒、このルテニウム担持触媒にさらに第三成分を加えた触媒などのルテニウム系触媒が提案されている(特公平3−70691号公報、同3−70692号公報等)。しかし、これらのルテニウム系触媒を用いたFT法では、上記灯軽油留分得率のなお一層の向上を十分達成することができない。すなわち、上記ルテニウム系触媒は、主として固定床式で用いることを目的として開発された触媒であって、このルテニウム系触媒を用いた固定床式のFT法では、このルテニウム系触媒の連鎖成長確率もさることながら、固定床式の反応形式では、ワックス分が多量に生成したとき、この生成したワックス分が触媒の活性点に付着してそれを覆い、触媒の活性が低下する問題や、触媒床の局所が過熱するヒートスポットが生ずる等の問題が発生し易く、安定して円滑に反応を行うことができなくなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、上記状況に鑑み、連鎖成長確率が高く、かつオレフィン選択性に優れ、なおかつ触媒活性が高く、ヒートスポットの発生などを来たすことなく、安定して円滑に反応を行うことができるFT法を提供することにあり、他の目的は、生成したワックス分の水素化分解、生成したオレフィンの二量化、三量化等により、灯軽油留分の増産に従来より一層大きく寄与できるFT法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、先に、触媒として、一定の物性を有し、一定量のルテニウムをマンガン酸化物担体に担持させた触媒を用い、この触媒を、予め還元処理した後、液状炭化水素類中に一定濃度で分散せしめ分散状態となし、この分散状態の触媒に水素および一酸化炭素を主成分とする混合ガスを接触せしめることにより上記目的を達成し得ることを見出し、すなわち、(a)触媒を一定濃度で液状炭化水素類中に分散させた状態において原料混合ガスと接触させるという特定の反応形式によれば、反応混合物中のワックス分が多量になっても、ワックス分の触媒活性点への付着に起因する触媒活性の低下を十分防止できることおよびヒートスポットの発生を抑制できることを知見し、(b)この特定の反応形式において、所望の連鎖成長確率が高く、かつオレフィン選択性に優れたFT反応を実現するために最も適した特定の物性の触媒を知見し、(c)かつ該触媒の触媒能を十分発揮させるための事前の還元処理の必要性を知見し、これらの知見に基づいて次ぎのような炭化水素類の製造方法を発明して特許出願した。すなわち、マンガン酸化物担体に、ルテニウムを触媒基準で0.1〜50質量%担持した、比表面積4〜200m2/g、触媒粒子径分布0.5〜150μmを示す触媒を、予め還元処理を施した後、液状炭化水素類中に濃度1〜50質量%にて分散せしめ、該触媒に水素および一酸化炭素を主成分とする混合ガスを、加圧下に、反応温度170〜300℃で接触させる炭化水素類の製造方法を発明して特許出願した(特開2002−69007号)。
【0009】
しかして、本発明者らは、さらに研究を進めたところ、先に発明した上記のような炭化水素類の製造方法において、触媒として、マンガン酸化物担体に、ルテニウムの他、一定量のアルカリ金属、アルカリ土類金属、セリウムおよびイットリウムから選ばれた少なくとも1種の金属の化合物を担持させた触媒を用いると、一酸化炭素の転化率が一層向上し、かつ触媒寿命も向上することを見出して本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、上記目的を達成するために、マンガン酸化物担体に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、セリウムおよびイットリウムから選ばれた少なくとも1種の金属の化合物を触媒基準で0.1〜20質量%担持し、さらに、ルテニウムを触媒基準で0.1〜50質量%担持した、比表面積4〜200m2/g、触媒粒子径分布0.5〜150μmを示す触媒を、予め還元処理を施した後、液状炭化水素類中に濃度1〜50質量%にて分散せしめ、該触媒に水素および一酸化炭素を主成分とする混合ガスを、圧力1〜10MPa、反応温度170〜300℃で接触させる炭化水素類の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に発明を詳細に説明する。本発明方法では、触媒として、マンガン酸化物担体に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、セリウムおよびイットリウムから選ばれた少なくとも1種の金属の化合物(以下「アルカリ金属等の金属化合物」という)およびルテニウムを担持させた触媒であって、そのアルカリ金属等の金属化合物およびルテニウムの担持量、比表面積、触媒粒子径分布の諸物性が以下に述べる一定の範囲内にある触媒が用いられる。なお、本発明で用いる触媒の嵩密度は、0.5〜2.5g/ccが適当である。
【0012】
本発明で用いる触媒において、アルカリ金属等の金属化合物およびルテニウムの担持量は活性点数と関連する。本発明で用いる触媒のアルカリ金属等の金属化合物の担持量は、触媒基準で0.1〜20質量%であり、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。また、ルテニウムの担持量は、触媒基準で0.1〜50質量%であり、好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。アルカリ金属等の金属化合物およびルテニウムの各担持量が上記範囲未満では、活性点数が不足となり十分な触媒活性が得られなくなる虞があるばかりか、アルカリ金属等の金属種と担体成分(マンガン)との相乗効果が得られず、劣化勾配ならびに触媒安定性(寿命)に事欠く。また、アルカリ金属等の金属化合物およびルテニウムの各担持量が上記範囲を超過した際には、担体上にアルカリ金属等の金属化合物とルテニウムが十分担持されなくなり、分散性の低下や担体成分と相互作用を持たないアルカリ金属等の金属種やルテニウム種が発現するため、活性低下や選択性の低下などが著しくなる傾向が見られるため好ましくない。なお、触媒の化学組成は誘導結合プラズマ質量分析法(ICP法)によって求めた。
【0013】
また、本発明で用いる触媒の比表面積は、4〜200m2/gであり、好ましくは4〜120m2/g、さらに好ましくは5〜100m2/gである。比表面積が4m2/g未満では、アルカリ金属等の金属化合物およびルテニウムの分散性が低下する恐れがあり好ましくない。また、比表面積の上限に関しては、一般に固体触媒を扱うに当たっては、広いほど気液固の接触頻度が高まるため好ましい。しかし、マンガン酸化物単独の比表面積の現実的な上限値は200〜250m2/g程度であることを考えると、これにアルカリ金属等の金属化合物およびルテニウム化合物を担持した触媒のそれは最大200m2/g程度と考えられる。なお、触媒の比表面積は、高純度窒素をプローブとしBET法(Braunauer-Emett-Tailor 法)で求めた。
【0014】
また、本発明で用いる触媒の触媒粒子径の分布範囲は、0.5〜150μmであり、好ましくは0.5〜120μm、さらに好ましくは1.0〜105μmである。本発明では、触媒は液状炭化水素類中に分散させて分散状態で使用されるため、その粒子径分布を考慮する必要がある。0.5μm未満のような細か過ぎる粒子は、フィルター等を通過して下流側に溢出するために、反応容器内の触媒濃度が減少して触媒濃度を保持することが難しくなったり、下流側機器が触媒微粒子によって障害を受けるなどの問題が発生する可能性が高くなる。また、場合によっては、フィルターが目詰まりして連続運転ができなくなることも考えられる。150μmを超えるような大きい粒子は、反応容器全体にわたって液状炭化水素類中に均一に分散させることが難しく、触媒を分散したスラリーが不均一となるため、反応活性が低下する可能性が高くなるなど好ましくない。
【0015】
粒子径分布が上記一定範囲内の触媒でも、液状炭化水素類中に分散させたとき、分散に偏りが生じる場合がある。かかる場合には、触媒粒子を液状炭化水素類中に偏りを生じることなく均一に分散させるために、平均粒子径をも考慮することが望ましい。本発明で用いる触媒の平均粒子径は、10〜100μmが好ましく、10〜60μmがさらに好ましく、10〜50μmがなおさらに好ましい。平均粒子径が、上記10〜100μmの範囲の上下限を外れた場合には、触媒粒子の液状炭化水素類中への分散が不均一となり、反応活性が低下する場合がある。
【0016】
本発明で用いる触媒の調製は、その調製方法自体は、従来から知られた担持触媒の一般的調製方法に準じて行うことができる。まず、触媒の調製に用いる担体のマンガン酸化物としては、従来から担体として用いられている各種のマンガン酸化物を適宜選択して用いることができ、空気中加熱による熱転移、あるいは水熱転移により、またはCO、H2による還元により、種々のマンガン酸化物の形態をとることができる。その例として、MnO2、Mn23、Mn34、MnO等が好ましく挙げられる。また、硫酸マンガンのような酸化物以外の塩を出発物質とし、これらから得られたマンガン酸化物を用いることもできる。例えば、熱酸性硫酸マンガンをグラファイト電極(炭素電極)を用いて陽極酸化して得られるγ型MnO2等を好ましく使用できる。上記各種のマンガン酸化物の中でも、3価もしくは4価のように荷電数が高いマンガン酸化物が好ましく用いられる。これは、FT反応中にルテニウムの酸化状態を一定に保ために、担体のマンガン酸化物ではチャージトランスファー(charge transfer) を起こしていると推定されるからである。マンガン酸化物の比表面積は、一般に6m2/g以上が望ましく、その上限は特に制限されないが、上記のとおり200〜250m2/g程度が現実的な上限値である。また、この担体のマンガン酸化物としては、粉末状、顆粒状、打錠成形体、押し出し成形体等の任意の形状のものを用いることができる。
【0017】
上記担体のマンガン酸化物に、アルカリ金属等の金属化合物およびルテニウムを担持させるに際しては、まずアルカリ金属等の金属化合物を担持させ、水分を除去した後、焼成する。次にルテニウムを担持させ、水分を除去した後充分に乾燥する。また、担体のマンガン酸化物へのアルカリ金属等の金属化合物あるいはルテニウムの担持は、例えば、担体をアルカリ金属等の金属化合物あるいはルテニウム化合物の如き触媒種化合物の溶液中に浸漬して、触媒種化合物を担体上に吸着させたり、イオン交換して付着させたり、アルカリなどの沈殿剤を加えて沈着させたり、溶液を蒸発乾固したり、あるいは触媒種化合物の溶液を担体上へ滴下して行うなど、担体と触媒種化合物の溶液とを接触させて行うことができる。この際、得られる目的の触媒におけるアルカリ金属等の金属化合物およびルテニウムの担持量が上記所定量となるように、担体に含有させるアルカリ金属等の金属化合物およびルテニウム化合物の量が調節される。上記担持に用いるアルカリ金属等の金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ベリリウム、カルシウム、セリウム、イットリウム、バリウム、マグネシウム等の塩化物、炭酸塩、硝酸塩、アンモニア塩等が挙げられ、中でもナトリウム、カリウム、カルシウム等が好ましく用いられる。また、ルテニウム化合物としては、従来からルテニウム担持触媒の調製に用いられている各種のルテニウム化合物を適宜選択して用いることができる。その例として、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、塩化六アンモニアルテニウムなどの水溶性ルテニウム塩や、ルテニウムカルボニル、ルテニウムアセチルアセトナートなどの有機溶剤に可溶なルテニウム化合物などが好ましく挙げられる。上記の如くしてアルカリ金属等の金属化合物およびルテニウム化合物を含有させた担体のマンガン酸化物は、乾燥される。この乾燥は、一般に、常温〜300℃で10〜48時間保持することにより行うことができる。乾燥された各触媒種化合物含有マンガン酸化物は、必要に応じて適宜粉砕し、分級して、所定の触媒粒子径分布、さらに好ましくは所定の平均粒子径の粉末状とされ、かくして本発明で用いる所定の諸物性を有する触媒を得ることができる。
【0018】
本発明の炭化水素類の製造方法においては、上記の如くして調製された触媒は、FT反応に供する前に予め還元処理(活性化処理)される。この還元処理により、触媒がFT反応において所望の触媒活性を示すように活性化される。この還元処理を行わなかった場合には、マンガン酸化物上に担持されたアルカリ金属等の金属種およびルテニウム種が十分に還元されず、FT反応において所望の触媒活性を示さない。この還元処理は、触媒を液状炭化水素類に分散させたスラリー状態で還元性ガスと接触させる方法でも、炭化水素類を用いず単に触媒に還元性ガスを通気、接触させる方法でも好ましく行うことができる。前者の方法における触媒を分散させる液状炭化水素類としては、処理条件下において液状のものであれば、オレフィン類、アルカン類、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素を始めとする種々の炭化水素類を使用できる。また、含酸素、含窒素等のヘテロ元素を含む炭化水素であっても良い。これらの炭化水素類の炭素数は、処理条件下において液状のものであれば特に制限する必要はないが、一般にC6〜C40のものが好ましく、C9〜C40のものがより好ましく、C9〜C35のものが最も好ましい。C6の炭化水素類より軽質なものでは溶媒の蒸気圧が高くなり、処理条件幅が制限されるようになる。また、C40の炭化水素類より重質のものでは還元性ガスの溶解度が低下して、十分な還元処理ができなくなる懸念がある。また、炭化水素類中に分散させる触媒量は、1〜50質量%の濃度が適当あり、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%の濃度である。触媒量が1質量%未満では、触媒の還元効率が低下する。触媒の還元効率の低下を防ぐ方法として、還元性ガスの通気量を減少させる方法があるが、還元性ガスの通気量を低下させると気(還元性ガス)−液(溶媒)−固(触媒)の分散が損なわれるため好ましくない。一方、触媒量が50質量%を超えて多量の場合は、炭化水素類に触媒を分散させたスラリーの粘性が高くなり過ぎ、気泡分散が悪くなり、触媒の還元が十分なされなくなるため好ましくない。還元処理温度は、140〜310℃が好ましく、150〜250℃がより好ましく、160〜220℃が最も好適である。140℃未満では、ルテニウムが十分に還元されず、十分な反応活性が得られない。また、310℃を超える高温では、担体のマンガン酸化物の相転位、酸化状態の変化等が進行してルテニウムとの複合体を形成したり、これによって触媒がシンタリング(sintering) して、活性低下を招く可能性が高くなる。この還元処理には、水素を主成分とする還元性ガスを好ましく用いることができる。用いる還元性ガスには、水素以外の成分、例えば水蒸気、窒素、希ガスなどを、還元を妨げない範囲である程度の量を含んでいても良い。この還元処理は、上記処理温度と共に、水素分圧および処理時間にも影響されるが、水素分圧は、1〜100kg/cm2(0.098〜9.8MPa)が好ましく、5〜60kg/cm2(0.49〜5.88MPa)がより好ましく、10〜50kg/cm2(0.98〜4.9MPa)が最も好ましい。還元処理時間は、触媒量、水素通気量等によっても異なるが、一般に、0.1〜72時間が好ましく、1〜48時間がより好ましく、5〜48時間が最も好ましい。処理時間が0.1時間未満では、触媒の活性化が不十分となる。また、72時間を超える長時間還元処理しても、触媒に与える悪影響は無いが、触媒性能の向上も見られないのに処理コストが嵩むなどの好ましくない問題を生じる。
【0019】
上記の如く還元処理した触媒がFT反応、すなわち炭化水素類の合成反応に供せられる。本発明におけるFT反応は、触媒を液状炭化水素類中に分散せしめた分散状態となし、この分散状態の触媒に合成ガスを接触させる。この際、触媒を分散させる炭化水素類としては、上記の予め行う還元処理で用いられる炭化水素類と同様のものを用いることができる。すなわち、反応条件下において液状のものであれば、オレフィン類、アルカン類、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素を始めとする種々の炭化水素類、含酸素、含窒素等のヘテロ元素を含む炭化水素等を用いることができ、その炭素数は特に制限する必要はないが、一般にC6〜C40のものが好ましく、C9〜C40のものがより好ましく、C9〜C35のものが最も好ましい。C6の炭化水素類より軽質なものでは溶媒の蒸気圧が高くなり、反応条件幅が制限されるようになる。また、C40の炭化水素類より重質のものでは原料の合成ガスの溶解度が低下して、反応活性が低下する懸念がある。上記の予め行う還元処理において、触媒を液状炭化水素類に分散させて行う方法が採用されている場合は、該還元処理で用いられた液状炭化水素類をそのままこのFT反応において用いることができる。炭化水素類中に分散させる触媒量は、1〜50質量%の濃度であり、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%の濃度である。触媒量が1質量%未満では活性が低下する。活性の低下を防ぐ方法として、合成ガスの通気量を減少させる方法があるが、合成ガスの通気量を低下させると気(合成ガス)−液(溶媒)−固(触媒)の分散が損なわれるため好ましくない。一方、触媒量が50質量%を超えて多量の場合は、炭化水素類に触媒を分散させたスラリーの粘性が高くなりすぎ、気泡分散が悪くなり、反応活性が十分得られなくなるため好ましくない。
【0020】
FT反応に用いる合成ガスは、水素および一酸化炭素を主成分としていれば良く、反応を妨げない物質が混入されていても差し支えない。FT反応の速度(k)は、水素分圧に約一次で依存するので、水素および一酸化炭素の分圧比(H2/COモル比)が0.6以上であることが望まれる。この反応は、体積減少を伴う反応であるため、水素および一酸化炭素の分圧の合計値が高いほど好ましい。水素および一酸化炭素の分圧比は、その上限は特に制限されないが、現実的なこの分圧比の範囲としては0.6〜2.7が適当であり、好ましくは0.8〜2.5、より好ましくは1〜2.3である。この分圧比が0.6未満では、生成する炭化水素類の収量が低下し、また、この分圧比が2.7を超えると生成する炭化水素類において軽質分が増える傾向が見られる。水素および一酸化炭素の分圧の合計値は、1〜10MPaが好ましく、1.5〜6MPaがより好ましく、1.8〜4.5MPaが最も好ましい。1MPa未満では、連鎖成長が不十分となりガソリン分、灯軽油分、ワックス分などの収率が低下する傾向が見られるため好ましくない。平衡上は、水素および一酸化炭素の分圧が高いほど有利になるが、該分圧が高まるほどプラント建設コスト等が高まったり、圧縮に必要な圧縮機などの大型化により運転コストが上昇するなどの産業上の観点から該分圧の上限は規制される。
【0021】
このFT反応においては、一般に、合成ガスのH2/COモル比が同一であれば、反応温度が低いほど連鎖成長が進み、かつオレフィン選択性が高くなるが、CO転化率は低くなる。逆に、反応温度が高くなれば、連鎖成長、オレフィン選択性は低くなるが、CO転化率は高くなる。また、H2/CO比が高くなれば、CO転化率が高くなり、連鎖成長、オレフィン選択性は低下し、H2/CO比が低くなれば、その逆となる。これらのファクターが反応に及ぼす効果は、用いる触媒の種類等によってその大小が異なるが、本発明においては、反応温度は170〜300℃が好ましく、190〜290℃がより好ましく、200〜290℃が最も好ましい。
【0022】
以上述べた本発明の炭化水素類の製造方法に従って、水素および一酸化炭素を主成分とする混合ガスから炭化水素類を合成すれば、CO転化率がワンパス(once through conversion) で60%以上、連鎖成長確率(α)が0.89〜0.95、低級炭化水素中のオレフィン/パラフィン比が、例えばC3炭化水素では3〜7になるという好結果が得られる。
なお、CO転化率および連鎖成長確率(α)は下記式で定義されるものである。〔CO転化率〕
【0023】
【数1】
Figure 0004205301
【0024】
〔連鎖成長確率(α)〕
炭素数nの炭化水素の生成物中の質量分率をMn、連鎖成長確率をαとした場合、シュルツ・フローリー分布に従うと、下式のような関係が成り立つ。従って、log(Mn/n)とnをプロットしたときの傾きlog αからα値を知ることができる。
【0025】
【数2】
Figure 0004205301
【0026】
【実施例】
以下、実施例および比較例によりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、COおよびCH4の分析には、Active Carbon (60/80mesh) を分離カラムに用い熱伝導度型ガスクロマトグラフ(TCD-GC)で行った。なお、Arを内部標準として10vol%添加した合成ガスを用いた。なお、COおよびCH4のピーク位置、ピーク面積をArと比較することで定性および定量分析した。C1〜C6炭化水素類の分析には、Capillary Column(Al23/KCl PLOT)を分離カラムに用い水素炎イオン化検出型ガスクロマトグラフ(FID-GC)を用い、TCD−GC共通に分析できるC1(メタン)と比較して該炭化水素類の定性、定量を行った。さらに、C5〜C40炭化水素類の分析にはCapillary Column(TC-1)を備えたFID−GCを用い、軽質炭化水素(C1〜C6)と共通に分析できるC5およびC6と比較して該炭化水素類の定性、定量を行った。触媒(担体を含む)比表面積の測定は自動表面積測定装置(ベルソープ28、日本ベル製)を用い窒素をプローブ分子に用いてBET法で測定した。触媒の化学成分の同定はICP(CQM-10000P、島津製作所製)により、粒度分布はレーザー光散乱法による粒度測定装置(Mastersizer MSX-46型、マルバーン製)で求めた。
【0027】
実施例1
予め乾燥した酸化マンガン粉末30g に純水をビュレットから滴下し、飽和吸水量を求めた。この時の飽和吸水量は0.26ml/gだった。硝酸カリウム(K Assay 38質量%)1.12g にイオン交換水(以下水と略記)を加えて100ml とし、撹拌して溶解した。この溶液0.26mlを採取し更に水を加えて25mlとした。この溶液の全量を100gの酸化マンガン粉末に含浸させ、約3時間放置した後、残りの溶液を除去し、空気中、温度110℃で数時間乾燥した。その後、塩化ルテニウム(Ru Assay 35質量%)1g に水を100ml 加え攪拌して溶解し、この溶液0.28mlを採取して、更に水25mlを加えて、先の酸化マンガン100gに含浸し、同様の乾燥作業を行った。これをメノウ乳鉢に移して粉砕し、触媒粒子径分布0.5-150 μm に篩い分けして触媒Aを得た。なお粒子径分布はレーザー光散乱法によって求めた。この触媒の平均粒子径は10μm 、嵩密度は2.3 だった。ICP を用いて組成分析を行った結果、K 換算で 0.1質量% 、Ru換算で 0.1質量% 、残り酸化マンガンであった。また、比表面積は 4m2/gであった。触媒A 12gを容積100ml の反応器に充填し、水素分圧0.1MPa、温度310℃、流量100ml/min (STP: standard temperature and pressure) で触媒に接触させ6分間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし170℃まで降温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を10MPa まで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素29vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2.1)に切り替えGHSV(gas hourly space velocity)2400 で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は67.4% 、連鎖成長確率は0.90、-dk/dt(劣化勾配)は23、C3中のオレフィン/パラフィン比は7だった。
【0028】
実施例2
実施例1に示した調製手法によって、Li換算 0.2質量% 、Ru換算 0.5質量% 、残り酸化マンガン、比表面積 5m2/g、触媒粒子径分布0.5-150 μm 、平均粒子径10μm 、嵩密度2.3 の触媒Bを得た。触媒B 9.6g を容積100ml の反応器に充填し、水素分圧0.5MPa、温度250℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ6分間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし190℃まで降温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を6MPaまで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素25.8vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2.5)に切り替えGHSV1600で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は72% 、連鎖成長確率は0.90、-dk/dt(劣化勾配)25、C3中のオレフィン/パラフィン比は6だった。
【0029】
実施例3
実施例1に示した調製手法によってCe換算 0.3質量% 、Ru換算 0.5質量% 、残り酸化マンガン、比表面積15m2/g、触媒粒子径分布0.5-150 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.3 の触媒Cを得た。触媒C 9.6g を容積100ml の反応器に充填し、水素分圧0.5MPa、温度250 ℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ6 分間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし200℃まで降温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を5MPaまで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素32.1vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 1.8)に切り替えGHSV1600で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は68.9% 、連鎖成長確率は0.92、-dk/dt(劣化勾配)25、C3中のオレフィン/パラフィン比は7だった。
【0030】
実施例4
実施例1に示した調製手法によってNa換算 0.4質量% 、Ru換算 1質量% 、残り酸化マンガン、比表面積 8m2/g、触媒粒子径分布0.5-120 μm 、平均粒子径10μm 、嵩密度2.1 の触媒Dを得た。触媒D 8.4g を容積100ml の反応器に充填し、水素分圧1MPa、温度170℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ1 時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし270℃まで昇温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を2MPaまで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV6000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は78.5% 、連鎖成長確率は0.90、-dk/dt(劣化勾配)19、C3中のオレフィン/パラフィン比は6だった。
【0031】
実施例5
実施例1に示した調製手法によってNa換算 0.5質量% 、Ru換算 2質量% 、残り酸化マンガン、比表面積 8m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.1 の触媒Eを得た。触媒E 7.2g を容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧2MPa、温度170℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ24時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし270℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を2MPaとし、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV6000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は78.5% 、連鎖成長確率は0.90、-dk/dt(劣化勾配)19、C3 中のオレフィン/パラフィン比は6だった。
【0032】
実施例6
実施例1に示した調製手法によってNa換算 1.0質量% 、Ru換算 3質量% 、残り酸化マンガン、比表面積10m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.1 の触媒Fを得た。触媒F 7.2g を容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧2MPa、温度170℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ5 時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし240℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を4MPa まで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV3000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は88.9% 、連鎖成長確率は0.91、-dk/dt(劣化勾配)19、C3中のオレフィン/パラフィン比は6だった。
【0033】
実施例7
実施例1に示した調製手法によってNa換算 3.0質量% 、Ru換算 4質量% 、残り酸化マンガン、比表面積10m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.2 の触媒Gを得た。触媒G8.4gを容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧3MPa、温度160℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ72時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし290℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を2MPaまで降圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素32.1vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 1.8)に切り替えGHSV12000 で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は73.9% 、連鎖成長確率は0.90、-dk/dt(劣化勾配)19、C3中のオレフィン/パラフィン比は7だった。
【0034】
実施例8
実施例1に示した調製手法によってNa換算 5.0質量% 、Ru換算 5質量% 、残り酸化マンガン、比表面積50m2/g、触媒粒子径分布0.5-120 μm 、平均粒子径30μm 、嵩密度2.3 の触媒Hを得た。触媒H 6g を容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧5MPa、温度140℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ48時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし300℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を1.5MPaまで降圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素36vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 1.5)に切り替えGHSV12000 で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は77.7% 、連鎖成長確率は0.89、-dk/dt(劣化勾配)20、C3中のオレフィン/パラフィン比は7だった。
【0035】
実施例9
実施例1に示した調製手法によってBe換算10質量% 、Ru換算20質量% 、残り酸化マンガン、比表面積 100m2/g、触媒粒子径分布0.5-150 μm 、平均粒子径40μm 、嵩密度1 の触媒Iを得た。触媒I 1.2g を容積100ml の反応器に充填し、水素分圧5MPa、温度140℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ12時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし300℃まで昇温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を1.5MPaまで降圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素39.1vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 1.3)に切り替えGHSV12000 で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は76.9% 、連鎖成長確率は0.89、-dk/dt(劣化勾配)21、C3中のオレフィン/パラフィン比は7だった。
【0036】
実施例10
実施例1に示した調製手法によってCa換算15質量% 、Ru換算30質量% 、残り酸化マンガン、比表面積 120m2/g、触媒粒子径分布0.5-150 μm 、平均粒子径50μm 、嵩密度0.7 の触媒Jを得た。触媒J0.72g を容積100ml の反応器に充填し、水素分圧6MPa、温度200℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ12時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし310℃まで昇温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を1MPaまで降圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素45vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 1)に切り替えGHSV16000 で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は70.8% 、連鎖成長確率は0.88、-dk/dt(劣化勾配)25、C3中のオレフィン/パラフィン比は5だった。
【0037】
実施例11
実施例1に示した調製手法によってY 換算20質量% 、Ru換算50質量% 、残り酸化マンガン、比表面積 200m2/g、触媒粒子径分布0.5-150 μm 、平均粒子径60μm 、嵩密度0.7 の触媒Kを得た。触媒K0.24g を容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧10MPa 、温度200℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ24時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし350℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を1MPaまで降圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素50vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 0.8)に切り替えGHSV24000 で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は89.3% 、連鎖成長確率は0.88、-dk/dt(劣化勾配)25、C3中のオレフィン/パラフィン比は3だった。
【0038】
比較例1
実施例1に示した調製手法によってRu換算 0.5質量% 、残り酸化マンガン、比表面積15m2/g、触媒粒子径分布0.5-150 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.3 の触媒aを得た。触媒a 9.6gを容積100ml の反応器に充填し、水素分圧0.5MPa、温度250℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ6分間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし200℃まで降温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を5MPaまで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素32.1vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 1.8)に切り替えGHSV1600で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は65.4% 、連鎖成長確率は0.92、-dk/dt(劣化勾配)37、C3中のオレフィン/パラフィン比は7だった。このようにマンガン酸化物担持ルテニウム触媒にアルカリ金属を加えない場合、ワンパスのCO転化率は低く、-dk/dt(劣化勾配)も大きくなり、生産性が劣る可能性が高くなる。
【0039】
比較例2
実施例1に示した調製手法によってRu換算 2質量% 、残り酸化マンガン、比表面積 8m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.1 の触媒bを得た。触媒b 7.2gを容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧2MPa、温度170℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ24時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし270℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を2MPaとし、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV6000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は75% 、連鎖成長確率は0.90、-dk/dt(劣化勾配)37、C3中のオレフィン/パラフィン比は6だった。このようにマンガン酸化物担持ルテニウム触媒にアルカリ金属を加えない場合、ワンパスのCO転化率は低く、-dk/dt(劣化勾配)も大きくなり、生産性が劣る可能性が高くなる。
【0040】
比較例3
実施例1に示した調製手法によってNa換算0.05質量% 、Ru換算 2質量% 、残り酸化マンガン、比表面積10m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.1 の触媒cを得た。触媒c 7.2gを容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧2MPa、温度170℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ24時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし270℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を2MPaとし、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV6000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は70% 、連鎖成長確率は0.85、-dk/dt(劣化勾配)37、C3中のオレフィン/パラフィン比は6だった。このようにマンガン酸化物担持ルテニウム触媒にアルカリ金属を少量加えた場合、ワンパスのCO転化率は低く、-dk/dt(劣化勾配)も大きくなり、生産性が劣る可能性が高くなる。
【0041】
比較例4
実施例1に示した調製手法によってNa換算25質量% 、Ru換算 2質量% 、残り酸化マンガン、比表面積10m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径20μm 、嵩密度2.1 の触媒dを得た。触媒d 7.2gを容積100ml の反応器に充填し、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを加えた後、水素分圧2MPa、温度170℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ24時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし270℃まで昇温した。さらに、ヘリウムを流通させながら系内を2MPaとし、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV6000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は65% 、連鎖成長確率は0.8 、-dk/dt(劣化勾配)35、C3中のオレフィン/パラフィン比は5だった。このようにマンガン酸化物担持ルテニウム触媒にアルカリ金属を過剰に加えた場合、活性金属の凝集を招き分散性が低下し、ワンパスのCO転化率は低く、-dk/dt(劣化勾配)も大きくなり、生産性が劣る可能性が高くなる。
【0042】
比較例5
実施例1に示した調製手法によってCo換算30質量% 、残りシリカ、比表面積 112m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径75μm 、嵩密度1 の触媒eを得た。触媒e 7.2gを容積100ml の反応器に充填し、水素分圧2MPa、温度360℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ24時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし270℃まで降温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を2MPaまで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV6000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は50% 、連鎖成長確率は0.85、-dk/dt(劣化勾配)45、C3中のオレフィン/パラフィン比は0.5 だった。このようにコバルト系触媒においてもアルカリ金属を加えない場合、ワンパスのCO転化率は低く、-dk/dt(劣化勾配)も大きく、オレフィン/パラフィン比も小さくなり、しかも触媒の活性化(還元処理)を気層上で行わなくてはならなく、ハンドリング上不利益をもたらし、生産性が劣る可能性が高くなる。
【0043】
比較例6
実施例1に示した調製手法によってCo換算16質量% 、Zr換算 1質量% 、残りシリカ、比表面積 306m2/g、触媒粒子径分布1.0-105 μm 、平均粒子径40μm 、嵩密度0.8 の触媒fを得た。触媒f 7.2gを容積100ml の反応器に充填し、水素分圧2MPa、温度360℃、流量100ml/min(STP)で触媒に接触させ24時間還元した後、直ちにヘリウムガスでパージし270℃まで降温した。その後、ヘリウムを通気下、分散媒としてn-C1634(ノルマルヘキサデカン:比重0.8)30mlを圧送し、撹拌した。ヘリウムで系内を2MPaまで昇圧し、次いでアルゴン10vol.% 、一酸化炭素30vol.% 、残り水素の混合ガス(H2/CO比 2)に切り替えGHSV6000で接触させた。反応開始48時間後のワンパスCO転化率は48% 、連鎖成長確率は0.85、-dk/dt(劣化勾配)45、C3中のオレフィン/パラフィン比は0.3 だった。このようにコバルト系触媒においてもアルカリ金属を加えない場合、ワンパスのCO転化率は低く、-dk/dt(劣化勾配)も大きく、オレフィン/パラフィン比も小さくなり、しかも触媒の活性化(還元処理)を気層上で行わなくてはならなく、ハンドリング上不利益をもたらし、生産性が劣る可能性が高くなる。
【0044】
上記実施例および比較例における反応条件および結果を、表1(実施例)および表2(比較例)に纏めて表示した。
【0045】
【表1】
Figure 0004205301
【0046】
【表2】
Figure 0004205301
【0047】
【発明の効果】
本発明の炭化水素類の製造方法によれば、連鎖成長確率が高く、かつオレフィン選択性に優れ、触媒活性が高く、優れた一酸化炭素の転化率、改善された触媒寿命で、なおかつヒートスポットの発生など来たすことなく安定して円滑にFT反応を行うことができる。本発明方法は、生成したワックス分の水素化分解、生成したオレフィンの二量化、三量化等により、灯軽油留分の増産に大きく寄与できる方法である。

Claims (1)

  1. マンガン酸化物担体に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、セリウムおよびイットリウムから選ばれた少なくとも1種の金属の化合物を触媒基準で0.1〜20質量%担持し、さらに、ルテニウムを触媒基準で0.1〜50質量%担持した、比表面積4〜200m2/g、触媒粒子径分布0.5〜150μmを示す触媒を、予め還元処理を施した後、液状炭化水素類中に濃度1〜50質量%にて分散せしめ、該触媒に水素および一酸化炭素を主成分とする混合ガスを、圧力1〜10MPa、反応温度170〜300℃で接触させる炭化水素類の製造方法。
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