JP4204861B2 - 軸封装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メカニカルシールを備えた立軸ポンプにおける軸封装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の立軸ポンプとして例えば、水中ポンプがあり、図8に示される如く、モートルを収容する上部のモートルケーシング1と羽根車を収容する下部のポンプケーシング2との間に、潤滑油3が収容される油室ハウジング4が備えられ、この油室ハウジング4を上下方向に貫通してモートルの駆動軸5が備えられると共に、駆動軸5と油室ハウジング4との相互間をシールするためのメカニカルシール6が備えられている。
【0003】
そして、メカニカルシール6は、油室ハウジング4の上部および下部にガスケットを介して装着される上部メイティングリング6aおよび下部メイティングリング6b、駆動軸5に装着される上部シールリング6cおよび下部シールリング6dと、これら上部シールリング6cと下部シールリング6d間に装着されると共に両シールリング6c、6dをそれぞれ上部メイティングリング6aおよび下部メイティングリング6bに押圧付勢するコイルスプリング6e等を備え、モートルの駆動による駆動軸5の回転時には、上部メイティングリング6aと上部シールリング6c、下部メイティングリング6bと下部シールリング6dとがコイルスプリング6eによる弾発付勢力下、それぞれ摺動しながら相対回転するように構成されていた。
【0004】
また、油室ハウジング4によって構成される油室4a内には、上部メイティングリング6aと上部シールリング6cとの上部摺動面7が没する程度の規定量の潤滑油3が収容されて、上部摺動面7および下部メイティングリング6bと下部シールリング6dとの下部摺動面8の双方の潤滑と冷却を行っている。
【0005】
しかしながら、駆動軸5と共にメカニカルシール6も回転するため、駆動軸5の回転に従い潤滑油3も旋回を始め、図9に示される如く、遠心力の作用により潤滑油3が油室4aの外周部に押しやられ、中心部における潤滑油3の液面が下がり、上部摺動面7に潤滑油3が有効に供給できない事態を招き、上部摺動面7における潤滑油3が不足すると、摩擦トルクの増大によって上部摺動面7の温度が上昇し、メイティングリング6aやシールリング6c等の摺動材の摩耗が加速されたり、ガスケット等のパッキン類の硬化によるシール性能の低下を引き起こし、メカニカルシール6の寿命の低下を招くという問題があった。
【0006】
特に、潤滑油3の減少時においては、図10に示される如く、駆動軸5の回転時のみならず、駆動軸5の回転停止状態においても上部摺動面7に潤滑油3が供給されない事態を招くという問題があった。
【0007】
そこで、駆動軸5の回転時における潤滑油3による潤滑不良を解消すべく、図11および図12に示される如く、油室4aの内壁から駆動軸5に向かって延びる油旋回防止板9が設けられた構造のものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
そして、このような構造を採用することによって、駆動軸5の回転に伴って生じる潤滑油3の旋回流が、図13の矢印で示すように各油旋回防止板9に衝突してその旋回流の流れが阻止され、潤滑油3が規定量存在する場合には、図11に示される如く、駆動軸5の回転時においても中心部における潤滑油3の液面があまり下がらず、上部摺動面7に対する潤滑油3の供給が有効に行え、メカニカルシール6の寿命の延長が図れる利点があった。
【0009】
【特許文献1】
実公昭53−40595号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、メカニカルシール6は摺動面7、8の潤滑のため摺動面7、8の間には僅かの隙間を有しており、この隙間より潤滑油3が外部に流出し、長期的使用により潤滑油3の減少を招き、液面の低下が生じていた。このような潤滑油3の減少時においては、図13に示される如く、駆動軸5の回転時のみならず、駆動軸5の回転停止状態においても上部摺動面7に潤滑油3が供給されない事態を招くという問題は依然として残る欠点があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、潤滑油が規定量より減少した場合であっても、より有効に上部摺動面に潤滑油を供給できる軸封装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための技術的手段は、潤滑油が収容された油室ハウジングを上下方向に貫通して駆動軸が備えられると共に、駆動軸と油室ハウジングとの相互間がメカニカルシールによりシールされた立軸ポンプにおける前記油室ハウジング内に、駆動軸の回転に伴って生じる潤滑油の旋回流を阻止する油旋回防止板を油室ハウジング内の外周部からメカニカルシール方向に延設状に配置した軸封装置において、前記油旋回防止板は前記油室ハウジング内の周方向一個所のみに設けられると共に、前記潤滑油の旋回流を前記油旋回防止板によって前記メカニカルシール方向に案内する円弧状に形成され、前記メカニカルシールと前記油旋回防止板のメカニカルシール側端縁とが近接配置された点にある。
【0014】
さらに、前記油旋回防止板の上端は、前記メカニカルシールの上部摺動面よりも高く形成され、上部摺動面から油旋回防止板の下端までの距離は少なくとも上部摺動面とメカニカルシールの下部摺動面との距離の1/2以上ある構造としてもよい。
【0015】
また、前記油旋回防止板と前記油室ハウジングとが合成樹脂により一体成形された構造としてもよい。
【0016】
さらに、前記油旋回防止板は、その上端側が下端側に対して、前記潤滑油の旋回流方向前方に傾斜して形成されている構造としてもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1および図2に示される如く、11は立軸ポンプの一例としての水中ポンプで、モートル12を収容するモートルケーシング13と、上部ブラケット14と、電装品15等を収容するモートルカバー16と、羽根車17を収容すると共にくみ上げ液流の流路を形成するポンプケーシング18と、モートルケーシング13とポンプケーシング18との間に配置された油室ハウジング19とを備えている。
【0018】
そして、モートル12の駆動軸20は、モートルケーシング13の底部と上部ブラケット14とに軸受21を介して上下方向の軸心回りに回転自在に支持され、駆動軸20の下部は油室ハウジング19を上下方向に貫通して配置され、その下端部に前記羽根車17が装着されている。
【0019】
また、油室ハウジング19によって構成される油室19a内には潤滑油23が収容されると共に、駆動軸20が貫通された部分における駆動軸20と油室ハウジング19との相互間をシールすべくメカニカルシール24が装着されている。
【0020】
メカニカルシール24は、従来同様、図3および図4にも示される如く、油室ハウジング19の上部および下部にガスケットを介して装着される上部メイティングリング24aおよび下部メイティングリング24b、駆動軸20に装着される上部シールリング24cおよび下部シールリング24dと、これら上部シールリング24cと下部シールリング24d間に装着されると共に両シールリング24c、24dをそれぞれ上部メイティングリング24aおよび下部メイティングリング24bに押圧付勢するコイルスプリング24e等を備え、モートル12の駆動による駆動軸20の回転時には、上部メイティングリング24aと上部シールリング24c、下部メイティングリング24bと下部シールリング24dとがコイルスプリング24eによる弾発付勢力下、それぞれ摺動しながら相対回転するように構成されている。
【0021】
また、油室19a内に収容される潤滑油23の油量は、上部メイティングリング24aと上部シールリング24cとの上部摺動面25および下部メイティングリング24bと下部シールリング24dとの下部摺動面26の双方の潤滑と冷却を行うべく、図1に示される如く、上部摺動面25が没する程度の規定量の潤滑油3が収容されている。
【0022】
さらに、油室ハウジング19内の外周部、即ち油室19aの外周を構成する側壁19bからメカニカルシール24方向に延設状として油旋回防止板28が設けられており、図2にも示される如く、油旋回防止板28は油室ハウジング19内の周方向一個所のみに設けられた構造とされている。そして、図2の矢印で示される如く、駆動軸20の回転に伴って生じる潤滑油23の旋回流が油旋回防止板28に衝突した際に、その旋回流をメカニカルシール6方向に案内すべく、油旋回防止板28は底面視(もしくは平面視)円弧状に形成されている。
【0023】
この際、油旋回防止板28のメカニカルシール24側端縁はメカニカルシール24に近接配置されており、その間隔Sは例えば、5mm以下とされている。また、旋回流をメカニカルシール6方向に案内すべく、本実施形態においては図2に示される如く、油旋回防止板28のメカニカルシール24側端縁は接線方向に対して略30度の角度θを有した構造とされている。この角度θは10度〜45度の範囲が旋回流をメカニカルシール6方向に効果的に案内する点で好ましい。
【0024】
さらに、本実施形態においては、油旋回防止板28は油室ハウジング19の上壁19cより下向きに垂設されており、図3に示される如く、上部摺動面25から油旋回防止板28の下端までの距離Aは、少なくとも上部摺動面25と下部摺動面26との距離Bに対して1/2B以上ある構造とされている。
【0025】
そして、本実施形態においては、合成樹脂により油室ハウジング19と油旋回防止板28とが一体成形されており、油旋回防止板28は油室ハウジング19の上壁19cおよび側壁19bより一体に張り出された構造とされている。
【0026】
本実施形態は以上のように構成されており、駆動軸20の回転に伴って生じる潤滑油23の旋回流が、油旋回防止板28に衝突した際には、従来例における図12に示されるように油旋回防止板9に沿って外周側に案内される場合と異なり、図2に示される如く、油旋回防止板28の曲面に沿って中心側のメカニカルシール24方向に案内されるため、図3に示されるようにメカニカルシール24近辺の液面を押し上げ、油室ハウジング19の中心部における潤滑油23の液面高さが確保でき、上部摺動面25に対する潤滑油23の供給が有効に行える。
【0027】
この際、油旋回防止板28を油室ハウジング19内の周方向一個所のみに設けた構造としているため、複数個所に設けた場合と比較して、潤滑油23に生じる旋回流の速さもより速くなり、より勢いのある潤滑油23の旋回流を発生でき、この点からも油室ハウジング19の中心部における潤滑油23の液面高さをより高く確保でき、上部摺動面25に対する潤滑油23の供給がより有効に行える。
【0028】
従って、長期的使用により潤滑油23が外部に流出して、上部摺動面25以下に潤滑油23の液面が低下した場合であっても、図4に示される如く、油旋回防止板28による潤滑油23のメカニカルシール24方向への案内作用により、油室ハウジング19の中心部における潤滑油23の液面高さを有効に確保して、上部摺動面25に対する潤滑油23の供給が有効に行え、ここに、メカニカルシール24の寿命の延長が図れる。
【0029】
また、油旋回防止板28のメカニカルシール24側端縁をメカニカルシール24に近接配置することによって、潤滑油23をより効率よくメカニカルシール24に案内でき、上部摺動面25に対して潤滑油23をより有効に供給できる利点がある。
【0030】
さらに、上部摺動面25から油旋回防止板28の下端までの距離Aは、少なくとも上部摺動面25と下部摺動面26との距離Bに対して1/2B以上ある構造とされているため、油旋回防止板28に衝突する潤滑油23の油量も良好に確保でき、この点からも潤滑油23をより効率よくメカニカルシール24に案内でき、上部摺動面25に対して潤滑油23をより有効に供給できる利点がある。
【0031】
また、油旋回防止板28と油室ハウジング19とを合成樹脂で一体成形する構造としているため、安価に製作でき、経済性に優れる利点もある。
【0032】
図5および図6は第2の実施形態を示しており、第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
即ち、本実施形態によれば、油室ハウジング19の上壁19cに適宜、補強リブが一体に張出形成された構造とされている。
【0034】
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏するだけでなく、油室ハウジング19が合成樹脂で一体成形された構造であっても、油室ハウジング19自体の強度が良好に確保できる利点がある。
【0035】
図7は第3の実施形態を示しており、第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
即ち、第1の実施形態においては、油室ハウジング19の側壁19bおよび上壁19cから下向きに突出状として油旋回防止板28が一体に形成された構造とされているが、本実施形態によれば、ポンプケーシング18と油室ハウジング19とに兼用された下壁19dに、油旋回防止板28が上向きに突出状として一体成形された構造とされている。
【0037】
従って、本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0038】
なお、上記各実施形態において、油旋回防止板28が上下方向に沿って突設された構造を示しているが、油旋回防止板28をその上端側が下端側に対して、潤滑油23の旋回流方向前方に傾斜して突設される構造であってもよい。
【0039】
この場合、旋回流の発生によって油旋回防止板28に衝突した潤滑油23は、油旋回防止板28の傾斜面に沿って上昇案内されるため、油室ハウジング19の中心部における潤滑油23の液面高さをより高くすることができ、上部摺動面25に対する潤滑油23の供給がより有効に行える。
【0040】
また、油室ハウジング19や油旋回防止板28は合成樹脂に限らず、その他の材料で形成してもよく、さらには油旋回防止板28を油室ハウジング19に一体に形成する構造に限らず、別体で形成して油室ハウジング19に装着する構造であってもよい。
【0041】
さらに、本発明は水中ポンプ11に限らず、その他の立軸ポンプにも同様に適用することができる。
【0042】
また、メカニカルシール24の構造においても本実施形態に示される構造に何ら限定されない。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明の軸封装置によれば、油旋回防止板は油室ハウジング内の周方向一個所のみに設けられると共に、潤滑油の旋回流を油旋回防止板によってメカニカルシール方向に案内する円弧状に形成された構造としているので、潤滑油が規定量より減少した場合であっても、より有効に上部摺動面に潤滑油を供給でき、メカニカルシールの寿命の延長が図れる利点がある。
【0044】
そして特に、メカニカルシールと油旋回防止板のメカニカルシール側端縁とが近接配置された構造としているので、潤滑油をより効率よくメカニカルシールに案内でき、上部摺動面に対して潤滑油をより有効に供給できる利点がある。
【0045】
さらに、油旋回防止板の上端は、メカニカルシールの上部摺動面よりも高く形成され、上部摺動面から油旋回防止板の下端までの距離は少なくとも上部摺動面とメカニカルシールの下部摺動面との距離の1/2以上ある構造とすれば、油旋回防止板に衝突する潤滑油の油量も良好に確保でき、この点からも潤滑油をより効率よくメカニカルシールに案内でき、上部摺動面に対して潤滑油をより有効に供給できる利点がある。
【0046】
また、油旋回防止板と油室ハウジングとが合成樹脂により一体成形された構造とすれば、安価に製作でき、経済性に優れる利点もある。
【0047】
さらに、油旋回防止板は、その上端側が下端側に対して、潤滑油の旋回流方向前方に傾斜して形成されている構造とすれば、油室ハウジングの中心部における潤滑油の液面高さをより高くすることができ、上部摺動面に対する潤滑油の供給がより有効に行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる全体断面図である。
【図2】図1における油室ハウジングのII−II線矢視図である。
【図3】図1の要部拡大説明図である。
【図4】同潤滑油減少時の説明図である。
【図5】第2の実施形態における油室ハウジングの底面図である。
【図6】同要部断面図である。
【図7】第3の実施形態における要部断面図である。
【図8】従来例を示す要部断面図である。
【図9】同説明図である。
【図10】同説明図である。
【図11】別の従来例を示す要部断面図である。
【図12】図10における油室ハウジングのXII−XII線矢視図である。
【図13】同潤滑油減少時の説明図である。
【符号の説明】
11 水中ポンプ
12 モートル
13 モートルケーシング
17 羽根車
18 ポンプケーシング
19 油室ハウジング
19a 油室
20 駆動軸
23 潤滑油
24 メカニカルシール
25 上部摺動面
26 下部摺動面
28 油旋回防止板

Claims (4)

  1. 潤滑油が収容された油室ハウジングを上下方向に貫通して駆動軸が備えられると共に、駆動軸と油室ハウジングとの相互間がメカニカルシールによりシールされた立軸ポンプにおける前記油室ハウジング内に、駆動軸の回転に伴って生じる潤滑油の旋回流を阻止する油旋回防止板を油室ハウジング内の外周部からメカニカルシール方向に延設状に配置した軸封装置において、
    前記油旋回防止板は前記油室ハウジング内の周方向一個所のみに設けられると共に、前記潤滑油の旋回流を前記油旋回防止板によって前記メカニカルシール方向に案内する円弧状に形成され
    前記メカニカルシールと前記油旋回防止板のメカニカルシール側端縁とが近接配置されたことを特徴とする軸封装置。
  2. 前記油旋回防止板の上端は、前記メカニカルシールの上部摺動面よりも高く形成され、上部摺動面から油旋回防止板の下端までの距離は少なくとも上部摺動面とメカニカルシールの下部摺動面との距離の1/2以上あることを特徴とする請求項1に記載の軸封装置。
  3. 前記油旋回防止板と前記油室ハウジングとが合成樹脂により一体成形されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軸封装置。
  4. 前記油旋回防止板は、その上端側が下端側に対して、前記潤滑油の旋回流方向前方に傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の軸封装置。
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