JP4203930B2 - 流路切換弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、人工透析治療に使用される医療用の流路切換弁に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
腹膜透析治療(透析液交換作業)は、概して言うと、▲1▼体内からの廃液排出、▲2▼輸液用のチューブ内の空気抜き、▲3▼体内への透析液の注入、といった手順にて行われる。このため治療に先立っては、(イ)人体と廃液を受ける容器との間、(ロ)人体と透析液が充填された容器との間、(ハ)透析液が充填された容器と廃液を受ける容器との間は、それぞれ柔軟なチューブによって接続されることになる。そして、使用しないチューブを特殊なクリップで挟んで圧潰(閉塞)することにより流路を切り換えて、上記腹膜透析治療が行われる。
【0003】
さて、上記クリップには、チューブ内の流路を確実に閉塞でき、かつ、その状態を安定して維持できる機能が求められる。よって、同クリップは、対向する刃部同士を近接させることでチューブを局所的に圧潰でき、更に刃部同士が互いに掛止可能な構造となっている。
しかし、このクリップを用いる方法では、やはり流路の完全な閉塞は困難であり、ある程度の漏れは避けられない。また、過大な力でチューブを挟んだ場合などにはチューブに裂傷が生じ、そこから液が漏れ出すことがある。更に言えば、上記クリップでチューブを圧潰するには、かなりの力が必要となるので、上肢が弱っている患者などは自分で操作することができない。
【0004】
そこで、チューブ個々の途中に栓を設ける方法が考えられた。ところが、先のクリップを使用する方法についても言えることであるが、複数の栓の連携開閉はかなり複雑な操作である。このため、操作手順を間違えて適切な治療ができなくなる恐れがある。
なお、こうした問題を解決するべく、全てのチューブ(人体側から延びるチューブ、透析液が充填された容器側から延びるチューブ、廃液を受ける容器側から延びるチューブ)を接続して使用するタイプの流路切換弁が開発された(特願昭63−503390)。この流路切換弁は、レバーを時計回りあるいは反時計回りに回転させることで、流路が切り換わるようになっている。つまり、3本のチューブのうちのいすれか2本が相互に接続され、残りの1本は閉塞される。
【0005】
しかし、こうしたロータリー式の流路切換弁では、レバーの回転方向を間違いやすい。そして、当然のことながら、この場合も規定どおり流路を切り換えることができず、適切な治療が不可能となる。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、操作性に優れた流路切換弁を提供することである。特に、一方向への単純な操作で流路を切り換えることができる流路切換弁を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題は、
ケースと、このケース内に順方向にのみ変位可能に収納された可動部とを具備した輸液交換に際して用いられる流路切換弁であって、
前記ケースの一側壁には、前記可動部の変位方向に沿って、廃液を受ける容器側から延びるチューブが接続される第1のポート、及び人体側から延びるチューブが接続される第2のポートが形成されてなり、
前記ケースの一側壁と対向する他側壁には、前記可動部の変位方向に沿って延びる切欠きが形成されてなり、
前記可動部には、
前記ケースの一側壁と向き合う第3のポートと、
前記ケースの他側壁に形成された前記切欠きから露出する輸液が充填された容器側から延びるチューブが接続される第4のポートと、
前記第3のポートと前記第4のポートとをつなぐ第1の誘導路
とが形成されてなり、
更に、前記可動部には、
前記ケースの一側壁と向き合う第5のポートと、
前記ケースの一側壁と向き合い、かつ、前記第5のポートを挟んで前記第3のポートとは逆側に位置する第6のポートと、
前記第5のポートと前記第6のポートとをつなぐ反転用の第2の誘導路
とが形成されてなり、
前記可動部が前記ケース内における第1の規定位置に存在する状態では、前記第1のポートと前記第2のポートとが、前記第5のポート、前記第2の誘導路、及び前記第6のポートを介して連結されるよう構成されると共に、
前記可動部が前記ケース内における前記第1の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた第2の規定位置に存在する状態では、前記第1のポートと前記第4のポートとが、前記第1の誘導路および前記第3のポートを介して連結されるよう構成され、
更に、前記可動部が前記ケース内における前記第2の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた第3の規定位置に存在する状態では、前記第2のポートと前記第4のポートとが、前記第1の誘導路および前記第3のポートを介して連結されるよう構成されてなる
ことを特徴とする輸液交換に際して用いられる流路切換弁によって解決される。
【0007】
すなわち、上記のごとく構成された本発明の輸液交換に際して用いられる流路切換弁では、可動部をケースに対して段階的に変位させることで、流路が切り換わるようになっている。
更に詳しくは、まず、可動部がケース内の第1の規定位置に存在する状態では、第1のポートと第2のポートとが連結される。これによって、人体側から延びるチューブが接続された第2のポートから流入した流体は、廃液を受ける容器側から延びるチューブが接続された第1のポートから廃液を受ける容器に排出されるようになる。
次に、可動部がケース内における上記第1の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた第2の規定位置に存在する状態では、第1のポートと輸液が充填された容器側から延びるチューブが接続された第4のポートとが連結される。これによって、輸液が充填された容器から第4のポートを経て流入した輸液は、第1のポートから廃液を受ける容器に排出されるようになる。
更に、可動部がケース内における上記第2の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた第3の規定位置に存在する状態では、第2のポートと第4のポートとが連結される。これによって、輸液が充填された容器からから第4のポートを経て流入した輸液は、第2のポートを経て人体に供給されるようになる。
従って、本発明の流路切換弁を、例えば透析治療に使用する場合、第1のポートに廃液を受ける容器側から延びるチューブを接続し、第2のポートに人体側から延びるチューブを接続し、更に第4のポートに透析液が充填された容器側から延びるチューブを接続すればよい。こうすることで、可動部を一方向に段階的に変位させるだけで、確実に流路を切り換えることができる。すなわち、可動部が第1の規定位置に存在する状態では、人体側と廃液を受ける容器側とが、次に、可動部が第2の規定位置に存在する状態では、透析液が充填された容器側と廃液を受ける容器側とが、次いで可動部が第3の規定位置に存在する状態では、透析液が充填された容器側と人体側とが接続される。このため、流路の切り換えを間違えることはなく、適切な治療が可能となる。しかも、透析液が人体に供給されるに先立って、透析液が充填された容器側と廃液を受ける容器側とが接続される為、輸液用のチューブ内の空気抜きが行える。従って、可動部を第3の規定位置まで変位させた状態では、即ち、透析液が充填された容器側と人体側とが接続された段階では、輸液用のチューブ内の空気抜きが行われているので、体内に空気が送り込まれると言った事故が起きない。そして、本発明の流路切換弁は、操作性に優れており、特に一方向への単純な操作(スライド操作)で、確実に流路を切り換えることができる。
【0008】
なお本発明の流路切換弁は、更に、可動部がケース内における、第1の規定位置から所定の距離だけ順方向と逆の方向に離れた初期規定位置に存在する状態では、第1のポート、第2のポート、および第3のポートの全てが閉塞され、前記可動部が前記ケース内における、第3の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた最終規定位置に存在する状態でも、前記第1のポート、前記第2のポート、および前記第3のポートの全てが閉塞されるよう構成することができる。こうすることで、流路を完全に閉塞した状態から作業を開始でき、また、作業終了時にも流路を完全に閉塞した状態とすることが可能となる。
【0009】
また本発明の流路切換弁では、可動部とケースとの摺接面の気密性を更に高めるため、可動部におけるケースの一側壁と向き合う面に、第3のポート、第5のポート、および第6のポートそれぞれに対応する孔が形成された、弾性材料(例えばゴムなど)からなるシール材を配設してなることが好ましい。
更に本発明の流路切換弁には、可動部が、(少なくとも)第1の規定位置、第2の規定位置、第3の規定位置のいずれかに存在するとき、前記可動部をケースに対して掛止させるための掛止機構を具備させてなることが好ましい。これによって、可動部を規定の位置に確実に停止させることができ、操作性が一層向上する。しかも、この掛止機構を設けることによって、視覚だけでなく、触覚(指先に作用する抵抗)によっても、可動部が規定位置に到達したことを認識できる。ゆえに、目が不自由であっても、操作を間違えることはない。
【0010】
なお、本発明の流路切換弁を医療、例えば透析治療に使用する場合には、基本的に同流路切換弁は、一度使用された後、直ちに廃棄される。よって、可動部は順方向と逆の方向には変位不可能であってもよい。したがって、可動部の操作間違いを更に起きにくくするため、上記掛止機構を設ける場合には、それを、可動部が順方向にのみ変位できるよう構成することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図10を用いて、本発明の実施形態を更に詳しく説明する。なお図1は本実施形態に係る流路切換弁の使用状態での外観図、図2は図1におけるX−X線での同流路切換弁の断面図、図3はケースの切欠きを示す斜視図、図4は図1におけるY−Y線での流路切換弁の断面図、図5は可動部の要部斜視図、図6は掛止機構部分の平面図、図7〜図10はそれぞれ流路を切り換えた状態での流路切換弁の断面図である。
【0012】
図1から判るように、本実施形態に係る流路切換弁(以下、単に本流路切換弁と言う)は、プラスチック製のケース1と、このケース1内に変位可能に収納された、同じくプラスチック製の可動部2とを主要構成要素とする。なお、可動部2については一体成形品であり、一方、ケース1については、天面側が開放された本体部およびこの開放面を閉塞する蓋部からなる二体構造品である。但し、これ以降の説明や図では、本体部と蓋部とを区別せず、ケース1を一体成形品のごとく扱う。
【0013】
さて、本流路切換弁を構成するケース1の一側壁(以下、主側壁と言う)1aには、図2からも判るように、上記可動部2の変位方向(図2中、左右方向)に沿って、チューブ接続管3,4が設けられている。そして、チューブ接続管3の基端側には第1のポート(すなわち開口)5が、また、チューブ接続管4の基端側には第2のポート6がそれぞれ形成されている。
【0014】
なお使用(人工透析治療)状態では、チューブ接続管3に、したがって第1のポート5には、廃液を受ける容器(図示せず)側から延びるチューブAが接続される。一方、チューブ接続管4に、したがって第2のポート6には、人体(図示せず)側から延びるチューブBが接続される。
次に、上記ケース1の主側壁1aと対向する他側壁(以下、対向側壁と言う)1bには、図3に示すごとく、可動部2の変位方向に沿って延びる細長い切欠き7が形成されている。なお、この切欠き7の長さLは、可動部2の総変位量よりも僅かに(チューブ接続管の直径相当長さだけ)大きい程度である。また、同切欠き7からは、可動部2に設けたチューブ接続管(後に詳述)が突出している。
【0015】
更に言うと、ケース1の天面にも、可動部2の変位方向に沿って延びる切欠き8が形成されている。そして、この切欠き8からは、可動部2をスライド操作するための突起9が突出している。但し、この突起9は、可動部2の他の部分と一体となっている。つまり、突起9は可動部2の一部である。また切欠き8は、上記切欠き7よりもいくらか長くなっている。これは、突起9の長さ寸法が、可動部2に設けた上記チューブ接続管の直径よりも大きいためである。つまり、本実施形態では、切欠き7および切欠き8の有効長さを共に等しくしている。
【0016】
加えて、図4からも判るように、ケース1の底面にはレール10が形成されている。このレール10は、ケース1の他の部分と一体となっており、また、凹字形の横断面を有する。そして、レール10は、可動部2の下面側に形成した溝11と、同可動部2がスムーズに変位できる程度に遊嵌している。なお、言うまでもなく、ケース1のレール10と可動部2の溝11とは、可動部2のガイド機構を形成しており、これによって可動部2のガタつきが抑えられる。
【0017】
さて、可動部2には、上述したようにチューブ接続管12が一体的に設けられており、更に、このチューブ接続管12の基端側には第4のポート(すなわち開口)13が形成されている。言い換えれば、可動部2は、ケース1の対向側壁1bに形成された切欠き7から露出する第4のポート13を有する。なお使用状態では、上記チューブ接続管12に、したがって第4のポート13には、透析液が充填された容器(図示せず)側から延びるチューブCが接続される。
【0018】
また可動部2には、第3のポート14、およびこの第3のポート14と上記第4のポート13とをつなぐ第1の誘導路15が形成されている。但し、第3のポート14は、ケース1の主側壁1aと向き合う位置に存在している。一方、第1の誘導路15は直線状のものである。このため、チューブ接続管12の内部空間と第1の誘導路15とは連続的につながっている。
【0019】
更に可動部2には、第5のポート16、第6のポート17、そしてこれら第5のポート16と第6のポート17とをつなぐ反転用の第2の誘導路18が形成されている。このうち第5のポート16および第6のポート17は、ケース1の主側壁1aと向き合う位置に存在している。特に、第6のポート17については、第5のポート16を挟んで第3のポート14と逆側に位置している。但し、第3のポート14、第5のポート16、第6のポート17は、全て一直線上にある。
【0020】
これに加え、可動部2におけるケース1の主側壁1aと向き合う面(摺接面)には、図5から判るように、シール材19が配されている(実際には可動部2に埋め込まれている)。そして、このシール材19における、上記第3のポート14、第5のポート16、第6のポート17のそれぞれに対応する位置には、孔19a〜19cが形成されている。ちなみに本実施形態では、シール材19としてゴムなどの弾性材料からなるものを使用した。しかし、このシール材19としては、他の材料から構成されたものを用いてもよく、あるいはシール材19を摺接面に介在させなくともよい。
【0021】
本流路切換弁は、可動部2をケース1に対して掛止(一時的に掛止)させるための掛止機構を更に具備する。より具体的に言うと、図6からも判るように、ケース1の対向側壁1bには、所定の間隔で、半円形の凹部20a〜20eが形成されている(但し図6では凹部20a,20bだけしか示していない)。ちなみに、図2(図7〜図10も同じ)においてP0 で示す点が凹部20aに、P1 で示す点が凹部20bに、P2 で示す点が凹部20cに、P3 で示す点が凹部20dに、そしてP4 で示す点が凹部20eに対応している。一方、可動部2の角には、掛止爪21が、残りの部分(本体部分)に対して一体的に設けられている。特に、この掛止爪21の先端には、半円形の凸部21aが設けられている。したがって、可動部2のケース1に対する掛止状態は、この掛止爪21の凸部21aが上記凹部20a〜20eのいずれかと嵌合することにより得られる。なお、上述したように可動部2は、弾力性に富んだプラスチック製である。このため、可動部2を変位させようとして掛止爪21にある一定以上の力が作用すると、凸部21aの嵌合状態が解除され、その結果、可動部2の掛止状態も解除される。
【0022】
総じて言うと上記掛止機構は、可動部2が、初期規定位置、第1の規定位置、第2の規定位置、第3の規定位置、最終規定位置のいずれかに存在するとき、同可動部2をケース1に対して掛止させる役割を果たす。なお図2に示すのは、可動部2が初期規定位置に存在する状態であり、この状態では、掛止爪21の凸部21aは凹部20aと嵌合(P0 点に存在)している。また、凸部21aが凹部20bと嵌合(P1 点に存在)しているのが第1の規定位置、凸部21aが凹部20cと嵌合(P2 点に存在)しているのが第2の規定位置、凸部21aが凹部20dと嵌合(P3 点に存在)しているのが第3の規定位置、そして、凸部21aが凹部20eと嵌合(P4 点に存在)しているのが最終規定位置である。
【0023】
さて本流路切換弁では、可動部2が、図2に示すごとく、ケース1内における初期規定位置に存在する状態(第1の規定位置から所定の距離だけ順方向と逆の方向に離れた位置に存在する状態)では、第1のポート5、第2のポート6および第3のポート14(ひいては第4のポート13)の全てが閉塞されるようになっている。なお、ここで順方向とは、P0 点からP4 点に向かう方向である。
【0024】
次に、上記可動部2が、図7に示すごとく、ケース1内における第1の規定位置に存在する状態では、第1のポート5と第2のポート6とが、第5のポート16、第2の誘導路18および第6のポート17を介して連結されるようになっている。つまり、同図に矢印で示すごとく、チューブ接続管4から流入した流体は可動部2内で反転して、チューブ接続管3から排出されるようになる。
【0025】
更に上記可動部2が、図8に示すごとく、ケース1内における第2の規定位置に存在する状態(第1の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた位置に存在する状態)では、第1のポート5と第4のポート13とが、第1の誘導路15および第3のポート14を介して連結されるようになっている。つまり、同図に矢印で示すごとく、チューブ接続管12から流入した流体は、可動部2内を通過して、チューブ接続管3から排出されるようになる。
【0026】
また、上記可動部2が、図9に示すごとく、ケース1内における第3の規定位置に存在する状態(上記第2の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた位置に存在する状態)では、第2のポート6と第4のポート13とが、第1の誘導路15および第3のポート14を介して連結されるようになっている。つまり、同図に矢印で示すごとく、チューブ接続管12から流入した流体は、可動部2内を通過して、チューブ接続管4から排出されるようになる。
【0027】
そして最後に、上記可動部2が、図10に示すごとく、ケース1内における最終規定位置(上記第3の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた位置に存在する状態)では、第1のポート5、第2のポート6および第3のポート14(ひいては第4のポート13)の全てが閉塞されるようになっている。
このように本流路切換弁は、可動部2をケース1に対して段階的に変位させることで、流路が切り換わるようになっている。したがって、本流路切換弁を透析治療に使用する場合には、図1に示したように、チューブ接続管3(第1のポート5)に廃液を受ける容器側から延びるチューブAを、また、チューブ接続管4(第2のポート6)に人体側から延びるチューブBを、更にチューブ接続管12(第4のポート13)に透析液が充填された容器側から延びるチューブCをそれぞれ接続すればよい。こうすることで、可動部2を一方向に段階的に変位させるだけの簡単な操作で、確実に流路を切り換えることができる。
【0028】
更に詳しく言うと、可動部2が初期規定位置に存在する状態では、流路が完全に閉塞される。これに対して、可動部2を第1の規定位置まで変位させた状態では、人体側と廃液を受ける容器側とが接続される(体内からの廃液排出)。また可動部2を第2の規定位置まで変位させた状態では、透析液が充填された容器側と廃液を受ける容器側とが接続される(輸液用のチューブ内の空気抜き)。更に可動部2を第3の規定位置まで変位させた状態では、透析液が充填された容器側と人体側とが接続される(体内への透析液の注入)。そして最後に、可動部2を最終規定位置まで変位させた状態では、流路が再び完全に閉塞される。本流路切換弁は、こうした構造となっているため、透析治療に用いた場合に、流路の切り換えを間違えることはなく、誰にでも適切な治療が可能となる。
【0029】
更に言えば、本流路切換弁は、片手でも操作できるため、極めて使い勝手がよい。具体的には、まず拇指を可動部2の突起9に当て、他の四指でケース1を保持する。そして、拇指を段階的に伸展させ、可動部2を変位させる。これによって、上述したごとく流路が切り換わっていく。
続いて、本発明の他実施形態について、図11(掛止機構部分の平面図)を用いて説明する。なお、本実施形態の流路切換弁も、その基本的な技術思想や要部構造は、先のものと同じである。よって以下では相違点についてのみ記述する。
【0030】
本実施形態に係る流路切換弁は、掛止機構を、可動部2’が順方向にのみ変位できるよう構成したことを特徴とする。すなわち、図11から判るように、可動部2’は掛止爪21’を有するが、この掛止爪21’の凸部21a’は、半円形ではなく鉤形(四分割円形)となっている。また、ケース1’の凹部20a’〜20e’も、同じく鉤形(四分割円形)となっている(但し、図11では凹部20a’,20b’だけしか示していない)。したがって可動部2’は順方向(図11中、右方向)にしか変位できず、後戻りさせることは不可能である。こうした構造は、使い捨てが前提の医療用の流路切換弁に特に好適である。
【0031】
なお、ここでは、可動部の突起を第2の誘導路の上に設けたものを例に挙げて本発明を説明した。しかし、この突起はいかなる位置にあってもよい。更に、可動部を変位させる手段としては、どのようなものが用いられてもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明の流路切換弁は操作性に優れる。特に、一方向への単純な操作で流路を確実に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る流路切換弁の使用状態での外観図
【図2】図1におけるX−X線での流路切換弁の断面図
【図3】ケースの切欠きを示す斜視図
【図4】図1におけるY−Y線での流路切換弁の断面図
【図5】可動部の要部斜視図
【図6】掛止機構部分の平面図
【図7】流路を切り換えた状態での流路切換弁の断面図
【図8】流路を切り換えた状態での流路切換弁の断面図
【図9】流路を切り換えた状態での流路切換弁の断面図
【図10】流路を切り換えた状態での流路切換弁の断面図
【図11】掛止機構部分の平面図(他実施形態)
【符号の説明】
1 ケース
1a ケースの主側壁(一側壁)
1b ケースの対向側壁(他側壁)
2 可動部
3,4,12 チューブ接続管
5 第1のポート
6 第2のポート
7,8 切欠き
9 突起
10 レール
11 溝
13 第4のポート
14 第3のポート
15 第1の誘導路
16 第5のポート
17 第6のポート
18 第2の誘導路
19 シール材
19a〜19c シール材の孔
20a〜20e ケースの凹部
21 掛止爪
21a 掛止爪の凸部
A 廃液を受ける容器側から延びるチューブ
B 人体側から延びるチューブ
C 透析液が充填された容器側から延びるチューブ
Claims (5)
- ケースと、このケース内に順方向にのみ変位可能に収納された可動部とを具備した輸液交換に際して用いられる流路切換弁であって、
前記ケースの一側壁には、前記可動部の変位方向に沿って、廃液を受ける容器側から延びるチューブが接続される第1のポート、及び人体側から延びるチューブが接続される第2のポートが形成されてなり、
前記ケースの一側壁と対向する他側壁には、前記可動部の変位方向に沿って延びる切欠きが形成されてなり、
前記可動部には、
前記ケースの一側壁と向き合う第3のポートと、
前記ケースの他側壁に形成された前記切欠きから露出する輸液が充填された容器側から延びるチューブが接続される第4のポートと、
前記第3のポートと前記第4のポートとをつなぐ第1の誘導路
とが形成されてなり、
更に、前記可動部には、
前記ケースの一側壁と向き合う第5のポートと、
前記ケースの一側壁と向き合い、かつ、前記第5のポートを挟んで前記第3のポートとは逆側に位置する第6のポートと、
前記第5のポートと前記第6のポートとをつなぐ反転用の第2の誘導路
とが形成されてなり、
前記可動部が前記ケース内における第1の規定位置に存在する状態では、前記第1のポートと前記第2のポートとが、前記第5のポート、前記第2の誘導路、及び前記第6のポートを介して連結されるよう構成されると共に、
前記可動部が前記ケース内における前記第1の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた第2の規定位置に存在する状態では、前記第1のポートと前記第4のポートとが、前記第1の誘導路および前記第3のポートを介して連結されるよう構成され、
更に、前記可動部が前記ケース内における前記第2の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた第3の規定位置に存在する状態では、前記第2のポートと前記第4のポートとが、前記第1の誘導路および前記第3のポートを介して連結されるよう構成されてなる
ことを特徴とする輸液交換に際して用いられる流路切換弁。 - 可動部がケース内における第1の規定位置から所定の距離だけ順方向と逆の方向に離れた初期規定位置に存在する状態では、第1のポート、第2のポート、及び第3のポートの全てが閉塞され、
前記可動部が前記ケース内における第3の規定位置から所定の距離だけ順方向に離れた最終規定位置に存在する状態でも、前記第1のポート、前記第2のポート、及び前記第3のポートの全てが閉塞されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1の輸液交換に際して用いられる流路切換弁。 - 可動部におけるケースの一側壁と向き合う面には、第3のポート、第5のポート、及び第6のポートそれぞれに対応する孔が形成された弾性材料からなるシール材が配設されてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の輸液交換に際して用いられる流路切換弁。 - 可動部が第1の規定位置、第2の規定位置、第3の規定位置のいずれかに存在する場合、前記可動部をケースに対して掛止させるための掛止機構を更に具備してなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの輸液交換に際して用いられる流路切換弁。 - 掛止機構は、可動部が順方向にのみ変位できるよう構成されたものである
ことを特徴とする請求項4に記載の輸液交換に際して用いられる流路切換弁。
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