JP4203720B2 - エンジンのバルブタイミング制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのバルブタイミング制御装置に係り、詳しくは、エンジンの冷機状態時から非冷機状態時までにおける排ガス特性の向上を図るエンジンのバルブタイミング制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、吸気弁及び排気弁のバルブタイミングは、エンジンの出力性能に大きな影響を及ぼすものであるため、吸気弁又は排気弁の少なくとも一方のバルブタイミングをエンジン回転数に応じて変更することにより、エンジン回転数に対応した最適なバルブタイミングに設定し、エンジン出力の向上を図る可変バルブタイミング技術がある。
【0003】
そして、上記可変バルブタイミング技術を用いて、ピストンの排気上死点前に吸気弁が開くと共にピストンの排気上死点を過ぎてから排気弁が閉じるように、吸気弁の開弁タイミング及び排気弁の閉弁タイミングを変更し、吸気弁及び排気弁が共に開くバルブオーバラップ領域を設定することにより、排ガスが排出されるときに生じるシリンダ内の負圧を利用して吸入効率を向上させた技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、バルブオーバラップ領域を設けると、内部EGRが増大するため、エンジンの燃焼が緩慢になって燃焼温度を低下させ、NOxの生成を抑制することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−50040号公報(段落番号0030、図2等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記バルブオーバラップ領域を設けると内部EGRが増加するため、特に燃料気化特性が低いエンジン冷態時等には燃焼安定性を確保することが困難となるおそれがある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、エンジンの排ガス特性を向上させると共に、エンジンの冷態状態であっても燃焼安定性を図ることができるエンジンのバルブタイミング制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の発明では、ピストンで区画される燃焼室の排気口と吸気口とをそれぞれ開閉する排気弁及び吸気弁と、前記排気弁の閉弁時期又は前記吸気弁の開弁時期の少なくとも何れか一方を変更するバルブタイミング変更手段と、前記排気口に連通する排気通路に設けられた触媒とを有するエンジンのバルブタイミング制御装置において、変速機のシフト情報を検出するシフト情報検出手段を有し、前記エンジン冷態時であると共に前記シフト情報検出手段により非走行レンジが検出されているとき、前記ピストンの排気上死点において前記排気弁が閉じ、前記ピストンの吸気行程において前記吸気弁が開く冷態時バルブタイミングに設定する冷態時開閉タイミング設定手段と、前記冷態時バルブタイミング設定手段による前記冷態時バルブタイミング設定後、前記シフト情報検出手段により非走行レンジから走行レンジへの切り替えが検出されたとき、前記バルブタイミング変更手段により排気弁閉弁時期を前記ピストンの吸気行程に変更するか、又は吸気弁開弁時期をピストンの排気行程に変更するか少なくとも一方の変更を行う非冷態時開閉タイミング制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
したがって、本発明の請求項1に記載のエンジンのバルブタイミング制御装置は、変速機のシフトが非走行レンジから走行レンジに切り替わったことを検出したときに、以後出力が向上してエンジン温度が上昇することを予測し、前もって内部EGRを増加させることにより、最適のタイミングでバルブタイミングを変更することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1を参照すると、車両に搭載された内燃機関の概略構成図が示されており、以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の構成を説明する。
内燃機関(以下、エンジン)1は、例えば、燃料噴射モードをピストンの吸気行程での燃料噴射(吸気行程噴射モード)、圧縮行程での燃料噴射(圧縮行程噴射モード)及び排気行程での燃料噴射(排気行程噴射モード)に切り替えることが可能な筒内噴射型火花点火式4サイクル4気筒ガソリンエンジンが採用される。この筒内噴射型のエンジン1は、上記燃料噴射モードの切換えと空燃比制御とにより、理論空燃比(ストイキオ)での運転やリッチ空燃比での運転(リッチ空燃比運転)の他、リーン空燃比での運転(リーン空燃比運転)が実現可能である。
【0012】
同図に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、各気筒毎に点火プラグ4と共に電磁式のインジェクタ6が取り付けられており、インジェクタ6は、ピストン21で区画される燃焼室5内に燃料を直接的に噴射可能である。
点火プラグ4には高電圧を出力する点火コイル8が接続されている。また、インジェクタ6には、燃料パイプ7を介して燃料タンクを擁した燃料供給装置(図示せず)が接続されている。より詳しくは、燃料供給装置には、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとが設けられており、これにより、燃料タンク内の燃料をインジェクタ6に対し低燃圧或いは高燃圧で供給し、該燃料をインジェクタ6から燃焼室5内に向けて所定の燃圧で噴射可能である。
【0013】
シリンダヘッド2には、各気筒毎に略直立方向に吸気ポート9が形成されており、各吸気ポート9の燃焼室5側には、吸気ポート9と燃焼室5とを連通する吸気口9aの開閉を行う吸気弁11がそれぞれ設けられている。吸気弁11は、エンジン回転に応じて回転するカムシャフト12のカム12aに倣って吸気口9aを開閉作動する。そして、各吸気ポート9には吸気マニホールド10の一端がそれぞれ接続されている。
【0014】
吸気マニホールド10には吸入空気量を調節する電磁式のスロットル弁17が設けられている。スロットル弁17近傍には、スロットル開度を検出するスロットルポジションセンサ(TPS)18が設けられており、TPS18にはアイドルスイッチ(アイドルSW)が併設されている。さらに、吸気マニホールド10のスロットル弁17よりも上流部分には、吸入空気量を検出するため、カルマン渦式のエアフローセンサ19が設けられている。
【0015】
また、シリンダヘッド2には、各気筒毎に略水平方向に排気ポート13が形成されており、各排気ポート13の燃焼室5側には、各排気ポート13と燃焼室5とを連通する排気口13aの開閉を行う排気弁15がそれぞれ設けられている。排気弁15は、エンジン回転に応じて回転するカムシャフト16のカム16aに倣って排気口13aを開閉作動する。そして、各排気ポート13には排気マニホールド14の一端がそれぞれ接続されている。
【0016】
排気マニホールド14の他端には排気管20が接続されており、排気管20には、ストイキオ近傍においてHC、CO、NOxを高効率で浄化可能な三元触媒コンバータ30が介装されている。また、排気管20の三元触媒コンバータ30の直上流部分には、排気中の酸素濃度ひいては排気空燃比を検出するO2センサ22が設けられており、三元触媒コンバータ30には触媒温度を検出する高温センサ32が設けられている。
【0017】
また、シリンダヘッド2には、カム12aやカム16aを油圧調整によって進角或いは遅角操作することで吸気弁11や排気弁15の開閉時期を可変させる可変バルブタイミング機構40が設けられている。可変バルブタイミング機構40としては、例えばカムシャフト12、16を揺動させる振り子式可変バルブタイミング機構が適用される。なお、振り子式可変バルブタイミング機構は公知であり、ここではその構成の詳細については説明を省略する。
【0018】
ECU60は、入出力装置、記憶装置、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えており、当該ECU60により、エンジン1の総合的な制御が行われる。
ECU60の入力側には、上記TPS18、エアフローセンサ19、O2センサ22、高温センサ32等の他、エンジン1の冷却水温度Twを検出する水温センサ62、クランク角を検出するクランク角センサ64や、エンジン1の出力を車輪に伝達する変速機(図示せず)のシフト情報を検出するシフトセンサ(シフト情報検出手段)66等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。なお、クランク角センサ64からはエンジン回転速度Neが検出される。
【0019】
一方、ECU60の出力側には、上記インジェクタ6、点火コイル8、スロットル弁17、可変バルブタイミング機構40等の各種出力デバイスが接続されており、インジェクタ6、点火コイル8、スロットル弁17には、上記各種検出情報に基づき選択された燃料噴射モード及び各種センサ類からの検出情報に応じて求められた燃焼空燃比等に基づいて燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期、スロットル開度の各信号がそれぞれ出力される。
【0020】
これにより、インジェクタ6からは適正量の燃料が適正なタイミングで噴射され、また、点火プラグ4により適正なタイミングで火花点火が実施され、スロットル開度が適正な開度に制御され、さらに、可変バルブタイミング機構40に対して適正なバルブタイミング指令が行われる。
特に、本発明では、ECU60に本発明に係るバルブタイミング制御装置61が設けられており、エンジン冷態始動時には、当該バルブタイミング制御装置61からの出力信号に基づいて燃焼室5を密閉すべく吸気弁11及び排気弁15を共に閉弁させる一方、ピストン21の排気行程の上死点(排気上死点)TDC直後で燃焼室5を開放すべく吸気弁11のみを開弁させる。そして、その後のファーストアイドル時には、バルブタイミング制御装置61によって排気弁15を排気上死点TDCにて閉弁させると共に、吸気弁11を排気上死点TDC後であるピストンの吸気行程において開弁させる。さらに、ファーストアイドル時制御後のエンジン非冷態時には、バルブタイミング制御装置61によって排気上死点TDC後のピストン吸気行程において排気弁15を閉弁させるべく閉時期を変更する。なお、排気上死点TDCとは、ピストン21の排気行程においてピストン21がシリンダヘッド2に最も接近する位置をいう。
【0021】
以下、このように構成された本発明に係るエンジン1のバルブタイミング制御装置の作用を説明する。
図2には、冷態始動時制御及び上記本発明に係るバルブタイミング制御装置61の冷態時開閉タイミング変更手段により実施されるファーストアイドル時制御(冷態時制御)並びにバルブタイミング制御装置61の非冷態時開閉タイミング変更手段による発進時制御(非冷態時制御)の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに基づき説明する。
【0022】
ステップS101でスタートスイッチがオンになっている場合には、ステップS102及びステップS103にてバルブタイミング制御装置61による冷態始動時制御を行う。
具体的には、ステップS102では、吸気弁11の開時期IOを最遅角側たる排気上死点TDCにする如くのタイミング変更を行い、ステップS103では、排気弁15の閉時期ECを最進角側たる排気上死点TDCよりも前にする如くのタイミング変更を行う。つまり、吸気弁11の開時期IOと排気弁15の閉時期ECとの変更によってネガティブオーバラップVOLnを設定して燃焼室5を密閉し、ステップS104に進む。
【0023】
また、ステップS103では、バルブタイミング制御装置61の出力信号に応じて、インジェクタ6の燃料噴射時期を吸気弁11及び排気弁15の閉弁時のタイミング、換言すれば、排気行程終盤時期へ変更してステップS104に進む。ステップS104では、エンジン回転変動が所定値以上であるか否かを判別し、所定値以上であると判定された場合、即ち、YESのときにはステップS105に進み、前記冷態始動時制御を終了して冷態時開閉タイミング変更手段によるファーストアイドル時制御を行う。
【0024】
具体的には、ステップS105では、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDCにする遅角側へのタイミング変更をフィードバック制御によって行ってステップS106に進む。また、インジェクタ6の燃料噴射時期については、排気弁15の閉時期EC後の吸気行程序盤時期に変更する。一方、ステップS104にて所定値以上でないと判定された場合には、前記冷態始動時制御を継続すべくステップS102に戻る。
【0025】
ステップS106では、シフトセンサ66の出力信号がニュートラルレンジN(非走行レンジ)からドライブレンジD(走行レンジ)に切り替えられているか否かを判別し、NレンジからDレンジに切り替えられていると判定された場合、即ち、YESのときにはステップS107に進み、冷態時開閉タイミング変更手段による前記ファーストアイドル時制御を終了して非冷態時開閉タイミング変更手段による発進時制御を行う。
【0026】
具体的には、ステップS107では、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDC後のピストン吸気行程にする遅角側へのタイミング変更をフィードバック制御によって行ってステップS108に進む。また、インジェクタ6の燃料噴射時期については、排気弁15の閉時期EC後の吸気行程中盤時期に変更する。一方、ステップS106にてNレンジからDレンジに切り替えられていないと判定された場合には、前記ファーストアイドル時制御を継続すべくステップS105に戻る。
【0027】
ステップS108では、エンジン回転変動が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合、即ち、YESのときにはステップS109に進み、排気弁15の閉時期ECを進角側へのタイミング変更をフィードバック制御によって行うと共に、吸気弁11の開時期IOを進角側である排気上死点TDCよりも前へのタイミング変更をフィードバック制御によって行い、排気上死点TDCを挟んだオーバラップ領域を設定して一連の制御を終了する。なお、この場合のインジェクタ6は通常の圧縮又は吸気行程噴射制御を行う。また、ステップS108にて所定値以上でないと判定された場合には、前記発進時制御を継続すべくステップS107に戻る。
【0028】
ここで、本実施形態の冷態始動時制御では、ステップS104にてエンジン回転変動に応じて冷態始動時制御をファーストアイドル時制御に切り替えているが、エンジン始動時から所定時間経過したとき、若しくは触媒温度が所定温度以上になったとき、若しくはエンジン回転速度が所定回転速度以上になったとき、若しくは変速機のシフト情報がPレンジからNレンジに切り替わったときに切り替えるものであっても良い。
【0029】
また、本実施形態のファーストアイドル時制御では、ステップS106にて変速レンジがNレンジからDレンジに切り替わったときに終了させているが、他の例としては、ファーストアイドル制御を行ってから所定時間が経過したとき、エンジン水温が所定値以上となったとき又は触媒温度が所定値以上となったとき等にファーストアイドル時制御を終了させても良いものである。
【0030】
なお、本実施形態のように、変速機のシフト情報が非走行レンジであるPレンジ又はNレンジから、走行レンジであるDレンジに切り替わったとき、ファーストアイドル制御から非冷態時制御へと切り替える構成とすることにより、今後エンジン出力が上がり機関温度が上昇することを予測して、前もって非冷態時制御であるバルブオーバラップ領域の設定を行い内部EGRを増加させることができ、NOxの生成をより適切に抑制することができる。
【0031】
即ち、ECU60よりバルブタイミング変更指令が可変バルブタイミング機構40に出力されてから、実際にバルブタイミングが変更されるまでにタイムラグがあったしても、走行レンジであるDレンジに切り替わった段階でECU60から可変バルブタイミング機構40にバルブタイミングの変更指令を行うことにより、乗員がアクセルペダルを踏み込んで実際にエンジン回転数が上昇したときに、バルブタイミングの変更が実行されておらず燃焼温度の上昇に伴いNOxが増大するとの事態を抑制することができる。
【0032】
図3は、上記冷態始動時制御(ステップS102、S103)のタイミングチャートである。この冷態始動時制御は、エンジン回転変動が所定値以上になるまで行われる。同図では、縦軸がバルブリフトLfを示し、横軸がクランク角θを示しており、EO及びECは排気弁15の開時期及び閉時期をそれぞれ示し、IO及びICは吸気弁11の開時期及び閉時期をそれぞれ示している。
【0033】
そして、エンジン冷態始動時には、吸気弁11の開時期IOが排気上死点TDCの直後の位置に設定されると共に、排気弁15の閉時期ECが排気上死点TDCよりも前の位置に設定され、吸気弁11の開時期IOと排気弁15の閉時期ECと間においてネガティブオーバラップVOLnが設定され、燃焼室5が密閉される。なお、燃料噴射は、排気弁15の閉時期ECの直後から排気上死点TDCに至るネガティブオーバラップVOLnの排気行程終盤時期に行われる。
【0034】
このように、エンジンの冷態始動時には、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDC前にすると共に、吸気弁11の開時期IOを排気上死点TDCにすることで、残留ガスがいったん吸気口9aから燃焼室5外に吹き出された後、ピストン21の下降による十分な負圧により再度燃焼室5内に良好に戻ることになり、また、燃焼室5が密閉され残留ガスが圧縮されているときに燃料噴射を行うことにより、燃焼室5内に閉じ込められた燃料と残留ガスとの混合気が筒内圧の上昇に伴って昇温し、燃料の空気との混合及び燃料の霧化が促進される。
【0035】
図4は、バルブタイミング制御装置61の冷態時開閉タイミング変更手段による上記ファーストアイドル時制御(ステップS105)のタイミングチャートである。このファーストアイドル時制御は、NレンジからDレンジに切り替えられるまで行われる。
同図に示すように、ファーストアイドル時には、吸気弁11の開時期IOが排気上死点TDCの直後に位置されたままである一方、排気弁15の閉時期ECは排気上死点TDCに位置する如く遅角側への変更が行われ、上記のネガティブオーバラップVOLnが解消されている。つまり、排気弁15の閉時期ECが吸気弁11の開時期IOに一致されてバルブオーバラップVOLp及びネガティブオーバラップVOLnを共に略0にする。なお、燃料噴射は、排気上死点TDCの吸気行程序盤時期に行われる。
【0036】
このように、冷態始動時制御の終了時点には、冷態時開閉タイミング変更手段が、オーバラップを略0に等しくなるように吸気弁11及び排気弁15の開閉タイミングを調整しているので、内部EGR量を低減することができ、例えエンジン低温に伴い燃料気化特性が低下していても燃焼安定性を確保することができる。
【0037】
なお、上記ファーストアイドル制御においては、吸気弁11の開時期IOをピストンの排気上死点TDC後のピストン吸気行程時に設定しても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
図5は、バルブタイミング制御装置61の非冷態時開閉タイミング変更手段(ステップS107)による上記ファーストアイドル時後の発進時制御のタイミングチャートである。この発進時制御は、エンジン回転変動が所定値以上になるまで行われる。
【0038】
同図に示すように、発進時には、吸気弁11の開時期IOが排気上死点TDCの直後に位置されたままであるものの、排気弁15の閉時期ECは排気上死点TDCの後側であるピストン吸気行程に位置する如くの遅角側への変更が行われ、バルブオーバラップ領域VOLpが形成される。なお、燃料噴射は、排気弁15の閉時期ECの直後の吸気行程中盤時期に行われる。
【0039】
このように、ファーストアイドル時制御の終了時点からは、非冷態時開閉タイミング変更手段が、バルブオーバラップを形成するように排気弁15の開閉タイミングを調整しているので、内部EGR量を増加させることができ、NOxの発生が効果的に抑えられる。
以上のように、本発明では、ファーストアイドル時たる冷態時には、バルブタイミング制御装置61の冷態時開閉タイミング変更手段が、バルブオーバラップを形成させないように吸気弁11及び排気弁15の開閉タイミングを変更して内部EGR量を低減させて燃焼安定性を確保することができるし、Dレンジに切り替わって発進が意図された非冷態時には、バルブタイミング制御装置61の非冷態時開閉タイミング変更手段が、バルブオーバラップを形成させるように排気弁15の閉弁タイミングを変更して内部EGR量を増加させてNOxの発生を抑制しているので、エンジン1の始動から発進に至るまでの排ガス特性の適切化を図ることができる。
【0040】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、筒内噴射型エンジンについて示されているが、バルブタイミング制御装置は、エンジン1の他、例えばマルチポイントインジェクション(MPI)型エンジンにも適用させることができ、この場合にも、始動から発進に至るまでの排ガス特性の適切化を達成できる。
【0041】
なお、上記実施形態では、エンジンの冷態始動時には、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDC前に設定すると共に、吸気弁11の開時期IOを排気上死点TDCとして燃焼室5を密閉する構成としたが、これに限定されるものではなく、エンジンの冷態始動時においてもファーストアイドル制御と同様に、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDCに設定すると共に、吸気弁11の開時期IOを排気上死点TDC以後であってピストン21の吸気行程に設定する冷態時開閉タイミング制御を行う構成としても良い。
【0042】
また、上記実施形態では、エンジン非冷態時には、排気弁15を排気上死点TDC後のピストン吸気行程に閉弁させているが、必ずしもこの形態に限定されるものではなく、吸気弁11を排気上死点TDC前であるピストン排気行程に開弁させる、又は排気弁15の閉時期ECのピストン吸気行程への変更及び吸気弁11の開時期IOのピストン排気行程への変更を同時に行ってポジティブなオーバーラップを形成させるものであっても良く、この場合にも内部EGR量を増加させることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、請求項1記載の発明によれば、変速機のシフトが非走行レンジから走行レンジに切り替わったことを検出したときに、以後出力が向上してエンジン温度が上昇することを予測し、前もって内部EGRを増加させることにより、最適のタイミングでバルブタイミング変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンシステム構成図である。
【図2】冷態始動時制御、及び図1のバルブタイミング制御装置の冷態時開閉タイミング変更手段によるファーストアイドル時制御(冷態時制御)並びに非冷態時開閉タイミング変更手段による発進時制御(非冷態時制御)の制御ルーチンのフローチャートである。
【図3】冷態始動時制御のタイミングチャートである。
【図4】冷態時開閉タイミング変更手段によるファーストアイドル時制御のタイミングチャートである。
【図5】非冷態時開閉タイミング変更手段による発進時制御のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
5 燃焼室
9a 吸気口
11 吸気弁
13 排気通路
13a 排気口
15 排気弁
21 ピストン
30 触媒
60 ECU(電子コントロールユニット)
61 バルブタイミング制御装置
66 シフトセンサ
Claims (1)
- ピストンで区画される燃焼室の排気口と吸気口とをそれぞれ開閉する排気弁及び吸気弁と、
前記排気弁の閉弁時期又は前記吸気弁の開弁時期の少なくとも何れか一方を変更するバルブタイミング変更手段と、
前記排気口に連通する排気通路に設けられた触媒とを有するエンジンのバルブタイミング制御装置において、
変速機のシフト情報を検出するシフト情報検出手段を有し、
前記エンジン冷態時であると共に前記シフト情報検出手段により非走行レンジが検出されているとき、前記ピストンの排気上死点において前記排気弁が閉じ、前記ピストンの吸気行程において前記吸気弁が開く冷態時バルブタイミングに設定する冷態時開閉タイミング設定手段と、
前記冷態時バルブタイミング設定手段による前記冷態時バルブタイミング設定後、前記シフト情報検出手段により非走行レンジから走行レンジへの切り替えが検出されたとき、前記バルブタイミング変更手段により排気弁閉弁時期を前記ピストンの吸気行程に変更するか、又は吸気弁開弁時期をピストンの排気行程に変更するか少なくとも一方の変更を行う非冷態時開閉タイミング制御手段とを備えたことを特徴とするエンジンのバルブタイミング制御装置。
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