JP4069375B2 - エンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンに係り、詳しくは、エンジンの冷機始動時におけるエンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、吸気弁及び排気弁のバルブタイミングは、エンジンの出力性能に大きな影響を及ぼすものであるため、吸気弁又は排気弁の少なくとも一方の開弁、閉弁時期をエンジン回転数に応じて変更すること等により、エンジン回転数に対応した最適なバルブタイミングとし、エンジン出力の向上を図る可変バルブタイミング技術がある。
【0003】
そして、上記可変バルブタイミング技術を利用し、冷態始動時や寒冷時のアイドル運転中等のエンジン冷態時には、吸気弁及び排気弁のバルブタイミングをマイナスオーバラップに設定し、エンジンの早期暖機化や触媒の早期活性化を図る技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
即ち、エンジンの冷態時には、バルブタイミングをピストンの排気上死点付近において排気弁が閉じてから所定時間経過した後に吸気弁を開くマイナスオーバラップを設定して、燃焼室が密閉される期間をつくることにより、筒内残留ガスを確保して筒内温度の上昇を促すこととしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−50040号公報(段落番号0030、図2等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載の技術では、排気弁がピストンの排気上死点よりも以前に閉弁されると共に、吸気弁がピストンの排気上死点から所定時間経過した後に開弁されるようにマイナスオーバラップを設定している。
即ち、ピストンが上死点に到達して筒内圧が最も上昇してから所定時間経過し、ピストンの下降に伴い筒内圧が低下してから吸気弁を開くため、筒内残留ガスを確保することができても筒内圧を利用して燃料との混合を促進するという面では十分でないといった問題点がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、エンジン冷態始動時において燃料との混合を促進させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の本発明のエンジンは、ピストンで区画される燃焼室内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射手段と、前記燃焼室の吸気口及び排気口を夫々開閉する吸気弁及び排気弁と、前記吸気弁及び前記排気弁を共に閉じて前記燃焼室を密閉可能な燃焼室密閉手段とを備えたエンジンにおいて、前記エンジンの冷態始動時、前記ピストン排気行程において前記燃焼室密閉手段により前記燃焼室が密閉され、該密閉中に前記燃料噴射手段により前記燃焼室内に燃料を噴射すると共に、前記ピストンの排気上死点から前記吸気弁を開弁させる冷態制御手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
したがって、請求項1記載の本発明のエンジンでは、冷態制御手段が、エンジンの冷態始動時には、密閉手段により燃焼室を密閉した後、燃焼室の容積が減少して筒内圧が最も上昇した排気上死点から燃焼室を開いているので、圧縮されて昇温した気筒内の残留ガスは、吸気弁の開弁時に吸気口からいったん燃焼室の外部に吹き出された後、ピストンの上死点からの下降による十分な負圧により燃焼室内に吹き返されて新気と共に気筒内に再度流入し、噴射燃料との混合が促進される。
【0009】
また、請求項2記載の発明では、ピストンで区画される燃焼室の吸気口及び排気口を夫々開閉する吸気弁及び排気弁と、前記吸気弁及び前記排気弁を共に閉じて前記燃焼室を密閉可能な燃焼室密閉手段と、前記吸気口に連通する吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えたエンジンにおいて、前記エンジンの冷態始動時、前記燃料噴射手段により前記吸気弁が閉弁してから開弁するまでの間に燃料が噴射されると共に、前記ピストン排気行程において前記燃焼室密閉手段により前記燃焼室が密閉され、前記ピストンの排気上死点から前記吸気弁を開弁させる冷態制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
この場合にも、冷態制御手段が、エンジンの冷態始動時に吸気弁及び排気弁を閉じることで燃焼室を密閉し、その後、ピストンが上昇して排気行程での上死点に達し、筒内圧が最も上昇してから吸気弁を開弁させているので、燃焼室内で圧縮されて昇温した残留ガスは、いったん燃焼室の外部に吹き出され吸気通路内の燃料と混合された後、ピストンの上死点からの下降による十分な負圧により燃焼室内に吹き返されて吸気通路からの新気及び燃料と共に気筒内に再度流入し、燃料との混合が促進される。
【0011】
さらに、請求項3記載の発明では、前記燃焼室密閉手段は排気弁の閉弁時期を所定量進角させて吸気弁の開弁よりも早く排気弁を閉弁させることにより前記燃焼室を密閉することを特徴としている。このように、排気弁の開弁時期進角量を調整することによって、燃焼室の密閉時間を自由に設定することが可能になり、設計自由度が向上する。
【0012】
また、請求項4記載の発明では、前記冷態制御手段は前記エンジンのアイドル運転中に該エンジンの回転変動が大きくなったことを検出したとき、前記燃焼室密閉手段による前記排気弁の閉弁時期を排気上死点近傍まで遅角することを特徴としている。このように、冷態制御手段が、エンジンの回転変動に応じて排気弁の閉弁時期を吸気弁の開弁時期である排気行程の上死点近傍まで遅角させているので、バルブオーバラップ量が略0になり、内部EGR量を低減させて燃焼変動が小さくなり、燃焼安定性が確保される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1を参照すると、車両に搭載された本発明に係る内燃機関の概略構成図が示されており、以下、当該内燃機関の構成を説明する。
内燃機関(以下、エンジン)1は、例えば、燃料噴射モードをピストンの吸気行程での燃料噴射(吸気行程噴射モード)、圧縮行程での燃料噴射(圧縮行程噴射モード)及び排気行程での燃料噴射(排気行程噴射モード)に切り替えることが可能な筒内噴射型火花点火式4サイクル4気筒ガソリンエンジンが採用される。この筒内噴射型のエンジン1は、上記燃料噴射モードの切り替えと空燃比制御とにより、理論空燃比(ストイキオ)での運転やリッチ空燃比での運転(リッチ空燃比運転)の他、リーン空燃比での運転(リーン空燃比運転)が実現可能である。
【0014】
同図に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には、各気筒毎に点火プラグ4と共に電磁式のインジェクタ(燃料噴射手段)6が取り付けられており、インジェクタ6は、ピストン21で区画される燃焼室5内に燃料を直接的に噴射可能である。
点火プラグ4には高電圧を出力する点火コイル8が接続されている。また、インジェクタ6には、燃料パイプ7を介して燃料タンクを擁した燃料供給装置(図示せず)が接続されている。より詳しくは、燃料供給装置には、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとが設けられており、これにより、燃料タンク内の燃料をインジェクタ6に対し低燃圧或いは高燃圧で供給し、該燃料をインジェクタ6から燃焼室5内に向けて所定の燃圧で噴射可能である。
【0015】
シリンダヘッド2には、各気筒毎に略直立方向に吸気ポート9が形成されており、各吸気ポート9の燃焼室5側には、吸気ポート9と燃焼室5とを連通する吸気口9aの開閉を行う吸気弁11がそれぞれ設けられている。吸気弁11は、エンジン回転に応じて回転するカムシャフト12のカム12aに倣って吸気口9aを開閉作動する。そして、各吸気ポート9には吸気マニホールド10の一端がそれぞれ接続されている。
【0016】
吸気マニホールド10には吸入空気量を調節する電磁式のスロットル弁17が設けられている。スロットル弁17近傍には、スロットル開度を検出するスロットルポジションセンサ(TPS)18が設けられており、TPS18にはアイドルスイッチ(アイドルSW)が併設されている。さらに、吸気マニホールド10のスロットル弁17よりも上流部分には、吸入空気量を検出するため、カルマン渦式のエアフローセンサ19が設けられている。
【0017】
また、シリンダヘッド2には、各気筒毎に略水平方向に排気ポート13が形成されており、各排気ポート13の燃焼室5側には、各排気ポート13と燃焼室5とを連通する排気口13aの開閉を行う排気弁15がそれぞれ設けられている。排気弁15は、エンジン回転に応じて回転するカムシャフト16のカム16aに倣って排気口13aを開閉作動する。そして、各排気ポート13には排気マニホールド14の一端がそれぞれ接続されている。
【0018】
排気マニホールド14の他端には排気管20が接続されており、排気管20には、ストイキオ近傍においてHC、CO、NOxを高効率で浄化可能な三元触媒コンバータ30が介装されている。また、排気管20の三元触媒コンバータ30の直上流部分には、排気中の酸素濃度ひいては排気空燃比を検出するO2センサ22が設けられており、三元触媒コンバータ30には触媒温度を検出する高温センサ32が設けられている。
【0019】
また、シリンダヘッド2には、カム12aやカム16aを油圧調整によって進角或いは遅角操作することで吸気弁11や排気弁15の開閉時期を可変させる可変バルブタイミング機構40が設けられている。この可変バルブタイミング機構40としては、例えばカムシャフト12、16を揺動させる振り子式可変バルブタイミング機構が適用される。なお、振り子式可変バルブタイミング機構は公知であり、ここではその構成の詳細については説明を省略する。
【0020】
ECU60は、入出力装置、記憶装置、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えており、当該ECU60により、エンジン1の総合的な制御が行われる。
ECU60の入力側には、上記TPS18、エアフローセンサ19、O2センサ22、高温センサ32等の他、エンジン1の冷却水温度Twを検出する水温センサ62やクランク角を検出するクランク角センサ64等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。なお、クランク角センサ64からはエンジン回転速度Neが検出される。
【0021】
一方、ECU60の出力側には、上記インジェクタ6、点火コイル8、スロットル弁17、可変バルブタイミング機構40等の各種出力デバイスが接続されており、インジェクタ6、点火コイル8、スロットル弁17には、上記各種検出情報に基づき選択された燃料噴射モード及び各種センサ類からの検出情報に応じて求められた燃焼空燃比等に基づいて燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期、スロットル開度の各信号がそれぞれ出力される。
【0022】
これにより、インジェクタ6からは適正量の燃料が適正なタイミングで噴射され、点火プラグ4により適正なタイミングで火花点火が実施され、さらに、スロットル開度が適正な開度に制御される。また、可変バルブタイミング機構40に対して適正なバルブタイミング指令が行われる。
特に、本発明では、ECU60に本発明に係る冷態制御手段61が設けられており、エンジン冷態始動時には、排気行程においてECU60に設けられた燃焼室密閉手段からの出力信号に基づいて燃焼室5を密閉すべく吸気弁11及び排気弁15が共に閉弁させられる一方、ピストン21の排気行程の上死点(排気上死点)TDC直後において前記冷態制御手段により燃焼室5を開放すべく吸気弁11のみが開弁させられる。なお、排気上死点TDCとは、ピストン21の排気行程においてピストン21がシリンダヘッド2に最も接近する位置をいう。そして、当該冷態制御手段61からの出力信号に基づいて上記吸気弁11及び排気弁15が開弁されて燃焼室5が密閉されたタイミングで燃料が噴射される。
【0023】
以下、このように構成された本発明に係るエンジン1の作用を説明する。
図2には、上記本発明に係る冷態制御手段61により実施される冷態制御を含む冷態時・非冷態時制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに基づき説明する。なお、本実施形態の冷態制御とは、冷態制御手段61による冷態制御と、該冷態制御が終了した後のファーストアイドル時制御とから構成される。
【0024】
ステップS101でスタートスイッチがオンになっている場合には、ステップS102及びステップS103にて冷態制御手段61による冷態始動時制御を行う。
具体的には、ステップS102では、吸気弁11の開時期IOを最遅角側たる排気上死点TDC直後にする如くのタイミング変更を行い、ステップS103では、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDCよりも前の最進角側にするバルブタイミングの変更を行う。つまり、吸気弁11の開時期IOと排気弁15の閉時期ECとの変更によってネガティブオーバラップVOLnを設定して燃焼室5を密閉する。
【0025】
また、ステップS103では、インジェクタ6の燃料噴射時期を吸気弁11及び排気弁15の閉弁時のタイミング、換言すれば、燃焼室密閉手段によって進角側に変更された排気弁15の閉時期EC後から排気上死点TDCまでとなる排気行程終盤時期への噴射時期の設定を行ってステップS104に進む。
ステップS104では、エンジン始動後所定時間t1が経過しているか否かを判別する。ここに、所定時間t1は例えば始動後ファーストアイドル運転が開始されるまでの時間である。そして、所定時間t1経過していると判定された場合、即ち、YESのときにはステップS105に進み、冷態制御手段61による前記冷態制御を終了してファーストアイドル時制御を行う。
【0026】
具体的には、ステップS105では、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDCにする遅角側へのバルブタイミング変更をフィードバック制御によって行うと共に、インジェクタ6の燃料噴射時期を排気弁15の閉時期EC後の吸気行程序盤時期に変更してステップS106に進む。一方、ステップS104にて所定時間t1経過していないと判定された場合には、冷態制御手段61による冷態制御を継続すべくステップS102に戻る。
【0027】
ステップS106では、ファーストアイドル時制御開始後、ファーストアイドル期間に対応する所定時間t2が経過しているか否かを判別し、所定時間t2経過していると判定された場合、即ち、YESのときにはステップS107に進み、前記ファーストアイドル時制御を終了して非冷態時制御の発進時制御を行う。
具体的には、ステップS107では、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDC後にする遅角側へのバルブタイミング変更を行い、インジェクタ6の燃料噴射時期を排気弁15の閉時期EC後の吸気行程中盤時期に変更してステップS108に進む。一方、ステップS106にて所定時間t2経過していない場合には、ファーストアイドル時制御を継続すべくステップS105に戻る。
【0028】
ステップS108では、発進時制御開始後、発進時制御を必要とする所定時間t3が経過しているか否かを判別し、所定時間t3経過していると判定された場合、即ち、YESのときにはステップS109に進む。
ステップS109では、排気弁15の閉時期ECの進角側へのバルブタイミング変更をフィードバック制御によって行うと共に、吸気弁11の開時期IOの進角側である排気上死点TDCよりも前へのバルブタイミング変更をフィードバック制御によって行い、排気上死点TDCを挟んだオーバラップを設定して一連の動作を終了し、通常の圧縮又は吸気行程の燃料噴射制御を行う。なお、ステップS108にて所定時間t3経過していないと判定された場合には、発進時制御を継続すべくステップS107に戻る。
【0029】
なお、本実施形態では、ステップS104にてエンジン始動から所定時間t1経過したときには、冷態始動時制御をファーストアイドル時制御に切り替えているが、回転変動が所定値以上になった場合に切り替えるものであっても良い。つまり、エンジンの回転変動の発生に応じてネガティブオーバラップVOLnをほぼ0にして内部EGR量を低減させても良く、この場合には、燃焼変動を抑制させて燃焼安定性の向上を図ることができ、燃費の更なる向上を達成することができる。
【0030】
また、ステップS106におけるファーストアイドル時制御の終了、及びステップS108における発進時制御の終了もまた、所定時間の経過で判断することの他、例えば、ステップS106では、非走行レンジ(Nレンジ)から走行レンジ(Dレンジ)に切り替わったときにファーストアイドル時制御を終了させ、ステップS108では、回転変動が所定値以上になったときに発進時制御を終了させても良いものである。
【0031】
さらに、ステップS107では、排気弁15の閉時期ECを排気上死点TDC後へ遅角させることの他、吸気弁11の開時期IOを排気上死点TDCの前へ進角させ、吸気ポート側に吹き戻る排気を増加させても良い。インジェクタ6は、この場合にも排気弁15の閉時期EC後の吸気行程中盤時期にて燃料噴射を行うことになる。
【0032】
図3は、冷態制御手段61による上記冷態始動時制御(ステップS102、S103)のタイミングチャートである。
まず、冷態制御手段61による冷態制御は、エンジン1の始動後の所定時間t1経過するまで行われる。同図では、縦軸がバルブリフトLf、横軸がクランク角θを示しており、EO及びECは排気弁15の開時期及び閉時期をそれぞれ示し、IO及びICは吸気弁11の開時期及び閉時期をそれぞれ示している。
【0033】
エンジン冷態始動時には、吸気弁11の開時期IOが排気上死点TDCの直後の位置に変更されると共に、排気弁15の閉時期ECが排気上死点TDCよりも前の位置に変更され、排気弁15の閉時期ECと吸気弁11の開時期IOとの間においてネガティブなオーバラップVOLnが設定され、燃焼室5が密閉される。
【0034】
そして、インジェクタ6は、排気弁15の閉時期ECの直後から排気上死点TDCに至るネガティブなオーバラップVOLnの時期、つまり、排気行程終盤時期に燃料噴射を行っている。
このように、エンジンの冷態始動時には、冷態制御手段61が排気上死点前に密閉手段により燃焼室5を密閉し、密閉中に燃料を噴射することにより燃焼室5内に閉じ込められた燃料と残留ガスとの混合気が筒内圧の上昇に伴って昇温し、燃料の霧化が促進されると共に、吸気弁11の開時期IOを排気上死点TDC直後とし、ピストン21の上昇により燃焼室の容積が最も小さくなって筒内圧が最も大きくなったときに吸気弁11を開弁することにより、燃料を含んだ残留ガスがいったん吸気口9aから燃焼室5外に吹き出された後、ピストン21の下降による十分な負圧により再度燃焼室5内に良好に戻ることになり、燃料と新気との混合が促進される。これにより、燃料気化特性が良好となり、エンジン始動時に必要な燃料を削減することができ、燃費の向上が図られると共に、未燃燃料がそのまま排出されることが抑制され、HCの排出を抑制することができる。
【0035】
また、排気弁15の閉時期EC直後の排気行程終盤時期に燃料噴射を行うことで燃料気化時間を長くすることができ、燃焼安定性の向上が図られる。
図4は、図3の冷態始動時後の上記ファーストアイドル時制御(ステップS105)のタイミングチャートである。このファーストアイドル時制御は、当該制御開始後の所定時間t2が経過するまで行われる。
【0036】
同図に示すように、ファーストアイドル時には、吸気弁11の開時期IOが排気上死点TDCの直後に位置されたままである一方、排気弁15の閉時期ECは排気上死点TDCに位置する如くの遅角側への変更が行われ、上記のネガティブオーバラップVOLnが解消されている。つまり、排気弁15の閉時期ECが吸気弁11の開時期IOに一致されてオーバラップVOLp及びネガティブオーバラップVOLnを共にほぼ0にする。
【0037】
そして、インジェクタ6は、排気上死点TDC直後、つまり、吸気行程序盤時期に燃料噴射を行っている。
このように、冷態始動時制御の終了時点には、オーバラップをほぼ0に等しくなるようにタイミングを調整しているので、内部EGR量が低減され、燃焼変動が抑えられることになり、燃焼安定性が確保される。
【0038】
また、排気弁15の閉時期EC直後の吸気行程序盤時期に燃料噴射を行うことで、従来の筒内噴射式エンジンよりも燃料気化時間を長くすることができ、やはり、燃焼安定性の向上が図られる。
図5は、図4のファーストアイドル時後の上記発進時制御(ステップS107)のタイミングチャートである。この発進時制御は、当該制御開始後の所定時間t3が経過するまで行われる。
【0039】
同図に示すように、発進時には、吸気弁11の開時期IOが排気上死点TDCの直後に位置されたままであるものの、排気弁15の閉時期ECは排気上死点TDCの後側に位置する如く遅角側への変更が行われ、オーバラップVOLpが形成される。つまり、排気弁15の閉時期ECと吸気弁11の開時期IOとがオーバラップVOLpしている。
【0040】
そして、インジェクタ6は、排気弁15の閉時期ECの直後、つまり、吸気行程中盤時期に燃料噴射を行っている。
このように、ファーストアイドル時制御の終了時点からは、ポジティブなオーバラップを形成するようにタイミングを調整しているので、内部EGR量が増加し、NOxの発生が抑えられる。
【0041】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、筒内噴射型エンジンに対する冷態始動時制御が示されている。しかし、この冷態始動時制御は、上記エンジン1に限定されるものではなく、マルチポイントインジェクション(MPI)を採用したエンジンにも適用することができる。
【0042】
即ち、MPIエンジンにおいては、冷態制御手段は、吸気弁の開弁前にインジェクタにより吸気通路に燃料を噴射しておくと共に、排気上死点前には排気弁と吸気弁とを共に閉弁して燃焼室を密閉し、筒内圧が最も上昇した直後に吸気弁を開弁させるようにする。これにより、排気行程のピストン上昇に伴い燃焼室内の圧力が上昇すると燃焼室内のガスが圧縮されて昇温されると共に、吸気弁の開弁に伴い燃焼室内のガスが一旦燃焼室の外部に吹き出され、吹き出されたガスによって吸気通路に噴射されている燃料と新気とが混合される。
【0043】
さらに、燃焼室外部に吹き出されたガスは混合された燃料及び新気と共に気筒内に再度流入し、燃料と空気との混合、霧化がさらに促進される。これにより、燃料気化特性が良好となり、エンジン始動時に必要な燃料を削減して燃費の向上が図られると共に、未燃燃料がそのまま車両外部に排出されることが抑制され、HC排出を削減することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、燃焼室5の密閉時間を自由に設定するべく、可変バルブタイミング機構40によって排気弁15の開弁時期進角量を調整しているが、この形態に限られるものではなく、例えば排気弁15を閉弁状態で停止させても良く、この場合にも上記と同様に燃焼室5を密閉させることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、請求項1記載の本発明のエンジンによれば、冷態制御手段が、エンジンの冷態始動時には、密閉手段により燃焼室を密閉した後、燃焼室の容積が減少して筒内圧が最も上昇した排気上死点から燃焼室を開いているので、圧縮されて昇温した気筒内の残留ガスは、吸気弁の開弁時に吸気口からいったん燃焼室の外部に吹き出された後、ピストンの上死点からの下降による十分な負圧により燃焼室内に吹き返されて新気と共に気筒内に再度流入し、噴射燃料との混合を促進させることができる。
【0046】
また、請求項2記載の発明によれば、冷態制御手段が、エンジンの冷態始動時に吸気弁及び排気弁を閉じることで燃焼室を密閉し、その後、ピストンが上昇して排気行程での上死点に達し、筒内圧が最も上昇してから吸気弁を開弁させているので、燃焼室内で圧縮されて昇温した残留ガスは、いったん燃焼室の外部に吹き出され吸気通路内の噴量と混合された後、ピストンの上死点からの下降による十分な負圧により燃焼室内に吹き返されて吸気通路からの新気及び燃料と共に気筒内に再度流入し、燃料との混合を促進させることができる。
【0047】
さらに、請求項3記載の発明によれば、排気弁の開弁時期進角量を調整することによって、燃焼室の密閉時間を自由に設定することが可能になり、設計自由度を向上させることができる。
また、請求項4記載の発明によれば、冷態制御手段が、エンジンの回転変動に応じて排気弁の閉弁時期を吸気弁の開弁時期である排気行程の上死点近傍まで遅角させているので、バルブオーバラップ量が略0になり、内部EGR量を低減させて燃焼変動が小さくなり、燃焼安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンシステム構成図である。
【図2】図1の冷態制御手段による冷態制御を含む冷態時制御・非冷態時制御ルーチンのフローチャートである。
【図3】図1の冷態制御手段による冷態始動時制御のタイミングチャートである。
【図4】図1の冷態制御手段によるファーストアイドル時制御のタイミングチャートである。
【図5】ファーストアイドル時後における非冷態時制御の発進時制御のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
5 燃焼室
6 燃料噴射手段
9 吸気通路
9a 吸気口
11 吸気弁
13a 排気口
15 排気弁
21 ピストン
60 ECU(電子コントロールユニット)
61 冷態制御手段
Claims (4)
- ピストンで区画される燃焼室内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射手段と、
前記燃焼室の吸気口及び排気口を夫々開閉する吸気弁及び排気弁と、
前記吸気弁及び前記排気弁を共に閉じて前記燃焼室を密閉可能な燃焼室密閉手段とを備えたエンジンにおいて、
前記エンジンの冷態始動時、前記ピストン排気行程において前記燃焼室密閉手段により前記燃焼室が密閉され、該密閉中に前記燃料噴射手段により前記燃焼室内に燃料を噴射すると共に、前記ピストンの排気上死点から前記吸気弁を開弁させる冷態制御手段を備えたことを特徴とするエンジン。 - ピストンで区画される燃焼室の吸気口及び排気口を夫々開閉する吸気弁及び排気弁と、
前記吸気弁及び前記排気弁を共に閉じて前記燃焼室を密閉可能な燃焼室密閉手段と、
前記吸気口に連通する吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射手段とを備えたエンジンにおいて、
前記エンジンの冷態始動時、前記燃料噴射手段により前記吸気弁が閉弁してから開弁するまでの間に燃料が噴射されると共に、前記ピストン排気行程において前記燃焼室密閉手段により前記燃焼室が密閉され、前記ピストンの排気上死点から前記吸気弁を開弁させる冷態制御手段とを備えたことを特徴とするエンジン。 - 前記燃焼室密閉手段は、排気弁の閉弁時期を所定量進角させて吸気弁の開弁よりも早く排気弁を閉弁させることにより前記燃焼室を密閉することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン。
- 前記冷態制御手段は、前記エンジンのアイドル運転中に該エンジンの回転変動が大きくなったことを検出したとき、前記燃焼室密閉手段による前記排気弁の閉弁時期を排気上死点近傍まで遅角することを特徴とする請求項3に記載のエンジン。
Priority Applications (1)
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