図1は、本発明の一実施形態にかかる食器洗浄機の要部の構成を示す断面図である。
図1において、参照番号1は、本実施形態にかかる食器洗浄機の筐体を指し、筐体1の図中左側の面が食器洗浄機の正面であり、右側の面が食器洗浄機の背面である。筐体1内の底部に、洗浄水22を蓄えるための領域があり、その領域内に洗浄水22を加熱するための洗浄ヒータ2が設けられる。その領域の上方の筐体1内の大部分の領域は、食器19を洗浄したり乾燥したりするための洗浄槽18となっている。
洗浄槽18の底部には、食器19を置くための食器棚3が設けられる。食器棚3の直下に、洗浄水を洗浄槽18のほぼ全体領域に噴射するための噴射ノズル4が配置される。噴射ノズル4には、洗浄水を吸って吐出する洗浄ポンプ5の吐水口が接続される。洗浄ポンプ5の吸水口は、筐体1の底部の洗浄水22を蓄えるための領域内に開口する。洗浄水22の水位を測るための水位センサ7が、洗浄槽18の後壁の近傍に設けられる。
筐体1内には、また、外気を吸って乾燥風を吹き出す乾燥ファン10が設けられる。乾燥ファン10の吹出口の下流に、乾燥風を加熱する乾燥ヒータ11が設けられる。乾燥ファン10から吹き出される乾燥風は、乾燥ヒータ11で加熱された後、洗浄槽18の後方から洗浄槽18内へ供給されるようになっている。洗浄槽18の前面の上部に、排気口12が設けられる。筐体1の前壁には、洗浄槽18を開くためのドア13が設けられる。また、図1には示されていないが、筐体1内への洗浄水の給水を制御するための給水バルブ、筐体1内からの洗浄水の排水を制御するための排水バルブ、および、この食器洗浄機の状態をユーザに報知するための警報器なども、それぞれの適所に設けられる。
筐体1の外面の底部には操作パネル9が設けられ、そこには、ユーザにより操作可能な各種のボタンおよびそれらボタンの操作結果をユーザに知らせるための各種の表示器が設けられる。操作パネル9の背後に制御装置8が設けられる。制御装置8は、操作パネル9のボタン操作に応答して、上述した洗浄ヒータ2、洗浄ポンプ5、乾燥ファン10、乾燥ヒータ11、給水バルブ(図示省略)および排水バルブ(図示省略)などを制御して、食器洗浄動作および食器乾燥動作を制御する。
さらに、洗浄槽18の後壁の近傍に、洗浄水22の水位を測るための水位センサ7が設けられる。乾燥ヒータ11の下流には、乾燥風の温度を検出するための風温センサ15が設けられる。洗浄ヒータ2の近傍に、水・気温センサ16が設けられ、これは、食器洗浄時には洗浄水22の温度を検出し、他方、食器乾燥時には洗浄槽18の気温を測定する。ドア13の近傍には、ドア13の開閉状態を検出するドアスイッチ17が設けられる。水位センサ7、水・気温センサ16、風温センサ15およびドアスイッチ17の出力信号は、上述した制御装置8に入力され、そこで、食器洗浄動作および食器乾燥動作の制御に利用される。
図2は、この食器洗浄機の制御装置8の構成を示す。
図2に示されるように、制御装置8は、予めプログラムされ制御プログラム(図示省略)を実行するCPU30と、外部のデバイスと接続して信号を入出力するためのインタフェース回路31および32を有する。インタフェース回路31は、水位センサ7、風温センサ15、水・気温センサ16、ドアスイッチ17および操作パネル9に接続され、これらのデバイスから信号を入力し、入力信号に対応した検出データまたはユーザ要求をCPU30に出力する。CPU30は、制御プログラムを実行することにより、インタフェース回路31から検出データまたはユーザ要求を受け取り、それに応答して制御プログラムを実行することにより、食器洗浄動作および食器乾燥動作を制御するための制御指令または制御データをインタフェース回路32に出力する。インタフェース回路32は、乾燥ファン10、洗浄ポンプ(同ポンプを駆動するモータ)5、乾燥ヒータ11、洗浄ヒータ2、警報器33、給水バルブ34および排水バルブ35などに接続され、CPU30からの制御指令または制御データに応答して、これらのデバイスを駆動し制御する。
図3は、この食器洗浄機の操作パネル9に設けられる各種のボタンと表示器を示す。
図3に示すように、操作パネル9上に、この食器洗浄機の主電源を入れ切りするため電源ボタン41、この食器洗浄機の運転を開始したり一時停止したりするためのスタートボタン42、複数の洗浄コース中から任意のコースを選択するためのコースボタン43、静音性能に関するモード、すなわち、静音性能の高いサイレントモードとそうではない通常モードのいずれかを選択するためのサイレントボタン45、複数の乾燥コース中から任意のコースを選択するための乾燥ボタン47、食器洗浄の開始時刻を予約するための予約ボタン48、および、複数の換気コース中から任意のコースを選択するための換気ボタン50などが設けられる。
コースボタン43により、「短時間」、「洗剤なし」、「標準」、「ハイパワー」および「漂白」という5種類の洗浄コース中からユーザ所望のコースが選べる。洗浄コースが異なると、後に説明する本洗浄工程および/または予備洗浄工程の制御条件が異なってくるが、これについては後に詳述する。どの洗浄コースが選択されたかは、コース表示器44に表示される。また、「短時間」、「洗剤なし」、「標準」および「ハイパワー」中のいずれかの洗浄コースが選択された場合には、さらに、静音性に関してサイレントモードと通常モードのいずれかを、サイレントボタン45で選ぶことができる。サイレントモードが選択されているときには、サイレントボタン45が点灯し、通常モードのときには消灯する。同じ洗浄コースを選んだ場合でも、サイレントモードか通常モードかで制御条件が異なってくる。このモードの違いまで考慮すると、9種類の洗浄オプションが存在することになる。いずれかの洗浄コースが選択された場合、スタートボタン42が押されると直ちに、選択された洗浄コースが開始され、また、後述する予約コースが選択された場合には、予約設定時から設定された時間だけ経過した時点で、選択された洗浄コースの本洗浄工程(後述)が開始されるように、運転スケジュールの制御が行われる。
乾燥ボタン43により、「30分」、「60分」、「送風」および「高度」という4種類の乾燥コース中からユーザ所望のコースが選べる。「30分」および「60分」コースは、それぞれ、30分間および60分間だけ連続して、加熱された乾燥風を流すというコースである。「送風」コースは、加熱されていない常温の乾燥風を連続的に流すコースである。また、「高度乾燥」コースは、後に詳述するように、加熱された乾燥風を間欠的に流しながら、食器が高度に乾燥したか否かを判断して、高度に乾燥したと判断された時に乾燥運転を自動的に停止するというコースである。どの乾燥コースが選択されたかは、乾燥表示器46に表示される。
予約ボタン48により、「2時間後」と「4時間後」という2種類の待機時間をもつ予約が設定できる。「2時間後」と「4時間後」の予約は、それぞれ、制御装置8内の予約タイマー(図示せず)に2時間および4時間の待機時間がそれぞれ設定されるというコースである。いずれの予約が設定されたかは、予約表示器49に表示される。いずれかの洗浄コースの選択と予約の設定がなされると、予約設定時から設定待機時間が経過した時点で、選択された洗浄コースにおける本洗浄工程(後述)が開始されるように、運転スケジュールの制御が行われる。また、予約が設定されずにスタートボタン42が押された場合には、直ちに、選択された洗浄コースが開始されることになる。
換気ボタン50により、「連続」と「8時間」という2種類の換気コースが選択できる。「連続」コースは、電源が切られるまでまたは一時停止されるまで連続して洗浄槽18の換気を行うコースであり、「8時間」コースは、8時間だけ連続して換気を行うコースである。いずれの換気コースが選択されたかは、換気表示器51に表示される。
図4には、図3のものに代えて採用可能な、操作パネル9上のボタンと表示器の変形例を示す。
図4に示された変形例では、上述した5種類の洗浄コースに加えて、6種類目の洗浄コースとして「サイレント」コースが、コースボタン43により選択できるようになっている。ここでの「サイレント」コースは、他の5種類の洗浄コースよりも静音性が向上するように、洗浄の制御条件が設定される。
次に、本実施形態にかかる食器洗浄機の動作について説明する。以下の説明では、図3に示した構成の操作パネル9を用いて、洗浄コースの選択、サイレントモードと通常モードの選択、乾燥モードの選択、および予約の設定が行われ得る場合を想定する。
まず、洗浄コースの動作について説明する。
洗浄コースは、基本的に、この順序で逐次に実行される「給湯工程」と「予備洗浄工程」と「本洗浄工程」と「排水工程」という4つの工程から構成される。ただし、後に詳述するように、予備洗浄工程は省略される場合がある。
最初の「給湯工程」では、所定量の所定温度(例えば摂氏60度)の湯(洗浄水)が食器洗浄機内に導入されて筐体1内に蓄えられる。図1に示すように、洗浄ヒータ2と洗浄ポンプ5の吸水口は、筐体1内の洗浄水22下に没する。
続く「予備洗浄工程」では、筐体1内の洗浄水22を洗浄ヒータ2で加熱して洗浄水22の温度を所定の目標温度(摂氏60〜65度程度、例えば摂氏65度)になるように制御しつつ、洗浄ポンプ5を間欠的に駆動して噴射ノズル4から洗浄水を間欠的に噴射するという間欠噴射動作が所定サイクル数だけ行われる。予備洗浄工程の基本的な役割は、まず食器19に付着した野菜屑などの大きい汚れ片を除去した後、食器19の表面のでんぷん類の汚れを高温化しかつ水分を与えて膨潤化することで、でんぷん類の汚れを除去し易い状態にすることにある。ここで、洗浄水の目標温度(摂氏60〜65度程度、例えば摂氏65度)は、たんぱく質類の汚れを固化させる温度(摂氏約70度)より低く、かつ、でんぷん類の汚れを膨潤化するのに適した温度(摂氏約60度以上)という観点から選ばれている。後に詳述するように、本実施形態における予備洗浄工程では、上記したその役割をできるだけ高速に短時間で達成するために、新規なやり方による間欠噴射動作が採用される。
続く「本洗浄工程」では、筐体1内の洗浄水22を洗浄ヒータ2で加熱して洗浄水22の温度を所定の目標温度(摂氏50〜55度程度、例えば摂氏55度)になるように制御しつつ、洗浄ポンプ5をほぼ連続的に駆動して噴射ノズル4から洗浄水をほぼ連続的に噴射するという連続噴射動作が行われる。本洗浄工程の役割は、でんぷん類、油類およびたんぱく質類などの全ての汚れを除去することにある。ここで、本洗浄工程での洗浄水の目標温度(摂氏50〜55度程度、例えば摂氏55度)は、洗剤が最も洗浄効果を発揮する温度(摂氏約50〜60度程度)(以下、「洗浄最適温度」という)の中から選ばれている。
最後の「排水工程」では、筐体1内の洗浄水22が、食器洗浄機外へ排出される。
以上が、洗浄コースの基本的な動作であるが、これとは異なる動作が行われる場合もある。すなわち、この食器洗浄機の制御装置8は、サイレント/通常モードの選択や予約設定の有無などに応じて、洗浄コースにおける種々の制御条件、例えば予備洗浄工程の有無、予備洗浄の間欠噴射動作のサイクル数、本洗浄工程の実行時間など)を変化させる。図5は、制御装置8により制御される各洗浄コースにおける制御条件テーブルを示している。
図5に示すように、通常と通常より静音の観点で性能を高めたサイレントという2種類の静音性能に関するモードを切換えることができるようになっており、各静音性モードにおいて、標準、ハイパワー、洗剤なし、短時間という4種類の洗浄コース(図3で説明した漂白コースは図5では省略されている)を選択可能に構成され、計8種類の洗浄オプションが存在する。図5における「基本の制御条件」欄には、予約設定がなされていないときに、それぞれの洗浄オプションで採用される制御条件が示され、「予約時の制御条件の補正」欄には、予約設定がなされたときに、それぞれの洗浄オプションで採用される制御条件の「基本の制御条件」からの補正点(相違点)が示されている。
ここで、標準コースは、標準的な洗浄力を発揮するコースである。ハイパワーコースは、最も高い洗浄力を発揮するコースであり、本洗浄工程の実行時間が標準コースより大幅に長く(例えば2倍に)設定される。洗剤なしコースは、洗剤を使用せずに本洗浄工程を行うコースであり、洗剤を使わないことによる洗浄力の低下を補うために、本洗浄工程の実行時間が標準コースより若干長く(例えば2倍に)設定される。短時間コースは、洗浄力が最も弱い代わりに非常に短時間で洗浄コースを完了するというコースであり、予備洗浄工程が省略され、本洗浄工程の実行時間は標準コースより大幅に短く(例えば3分の1に)設定される。
図5の「基本の制御条件」欄から分かるように、サイレントモードにおいては、通常モードより静音性能を向上させるために、いずれの洗浄コースにおいても、予備洗浄工程が省略される。予備洗浄工程では間欠的な洗浄水噴射が行われるため、連続的な洗浄水噴射が行われる本洗浄工程に比べて、洗浄ポンプ5の断続や噴射水の食器への間欠衝突などによる騒音が大きいからである。さらに、サイレントモードでは、図5には示されてないが、洗浄ポンプ5のモータの出力パワーを通常モードより低下させる(例えば半減する)ことで、本洗浄工程においても静音性を向上させる。加えて、サイレントモードでは、静音性を向上させたことによる洗浄能力の低下を補償するために、本洗浄の洗浄時間を通常モードより長く設定する(例えば、基本的に2倍にするとともに、短時間時間コース以外のコースでは、コースに応じた延長時間を更に追加する)。
ところで、短時間コースについては、汚れの非常に軽い食器に適用されるべきコースであり、かつ、コースを短時間で終了することが望まれるため、コース所要時間を長くすることになる予備洗浄工程が省略され、かつ、サイレントモードのときの追加の延長時間もない。
図5の「予約時の制御条件の補正」欄から分かるように、予約設定がなされた場合には、大部分のコースにおいて、予備洗浄工程が省略され、かつ、予約設定がなされない場合に比べて本洗浄の実行時間が所定時間だけ延長される。予約設定がなされた場合に予備洗浄工程が省略される理由は、ユーザは起床時に洗浄コースと乾燥コースが完了するよう就寝前に予約設定をすることが多いので、深夜の就寝中における予備洗浄工程による騒音を防止して静音性を確保するためである。また、本洗浄の時間が延長される理由は、予備洗浄の省略による洗浄能力の低下と、設定時間だけ待機することによる汚れの固着の進行とを補償するためである。それゆえ、この場合の延長時間は、予備洗浄の省略を補償するための延長時間(すなわち、予約設定がなされない場合のサイレントモードの場合の延長時間)に、さらに、待機による汚れの固着を補償するための延長時間を加算した値に設定される。ここで、待機による汚れの固着を補償するための延長時間は、待機時間が長いほど長い値に設定される。その理由は、待機時間が長いほど汚れがより強く固着してしまうからである。
ところで、ハイパワーコースの場合には、予約設定がなされても予備洗浄工程は省略されず、返って、予備洗浄工程の間欠噴射のサイクル数が、予約設定がなされない場合のそれよりも多く(例えば2倍)に設定される。その理由は、ハイパワーコースでは、静音性を高めることよりも、高い洗浄能力を確保することが重視するというポリシーが採用されるからである。そのため、待機時間中に汚れが強く固着しても確実にこれを膨潤化して除去できるよう、十分な数のサイクル数が予備洗浄工程のために設定される。
図6は、洗浄コースの給湯、予備洗浄および本洗浄の工程における洗浄水の温度と噴射の制御のやり方を示すタイミングチャートである。
図6A(制御工程)に示すように、洗浄コースでは、最初に給湯工程が行われ、次に予備洗浄工程が行われ、次に本洗浄工程が行われる。ここで、予備洗浄工程は、この順序で逐次に行われる「初期洗浄工程」と「高速蒸らし工程」という2つのサブ工程から構成される。初期洗浄工程は、食器上の大きい汚れ片(例えば、野菜片や肉片などの食べ残し屑)を除去するための工程である。高速蒸らし工程は、大きい汚れ片を除去することで露わになった食器表面に付着した汚れのうち、特に最も厄介なでんぷん類の汚れを膨潤化して除去し易くするための工程である。
図6B(給水バルブ)に示すように、最初の給湯工程にて、給水バルブ34がオンされ(開かれ)、所定温度(例えば摂氏約60度)の洗浄水が食器洗浄機内に導入される。ここで導入された洗浄水は、以後、予備洗浄工程および本洗浄工程を通じて食器洗浄機内に保持される。
図6C(洗浄水目標温度)に示すように、予備洗浄工程と本洗浄工程において、洗浄ヒータ2による洗浄水の加熱は行われる。この洗浄水加熱制御で使用される洗浄水の目標温度は、予備洗浄工程では摂氏60〜65度程度、例えば摂氏65度であり、本洗浄工程では摂氏50〜55度程度、例えば摂氏55度である。予備洗浄工程の例えば摂氏65度のような目標温度は、でんぷん類の汚れを膨潤化することができ(摂氏約60度以上)、かつ、たんぱく質類の汚れを固化させない(摂氏約70度以下)という観点から選ばれた温度である。他方、本洗浄工程の例えば摂氏55度のような目標温度は、洗剤の能力を最も良く活かすことができる洗浄最適温度(摂氏約50〜60度)から選ばれた温度である。
図6D(洗浄ポンプ)に示すように、予備洗浄工程と本洗浄工程において洗浄ポンプ5が運転されて洗浄水の噴射が行われる。本洗浄工程では、実質的に、連続して洗浄ポンプ5が運転されて連続して洗浄水の噴射動作が行われる。ただし、数十秒程度(例えば30秒)の時間置きに、それに比較して非常に短い時間(例えば1秒)の休止が入る。この時々の短時間の休止は、筐体1内の洗浄水22の水位が低下し過ぎて洗浄ポンプ5が空気を吸い込んでしまう、という事態の発生を避けるために、噴射された水が落ちて来て水位が上昇するのを待つためである。ところで、参照番号56は、本洗浄工程の開始時刻を示しており、予約設定がなされた場合には、「2時間後」または「4時間後」という予約された時点は、この本洗浄開始時刻56を指す。
他方、予備洗浄工程においては、洗浄ポンプ5が間欠的に駆動されて洗浄水の間欠的な噴射動作が行われる。そして、特に蒸らし工程においては、この間欠的な噴射動作は、長い周期の間欠噴射動作と、それに比べて非常に短い周期の間欠噴射動作とが組み合わされた二重の間欠噴射動作となっている。すなわち、図6Dに示すように、蒸らし工程では、長い第1の噴射時間(30秒以内であり、例えば20秒)54の間噴射動作が行われ、その後に、第1の噴射時間54より大幅に長い第1の停止時間(90秒以上であり、例えば2分)55の間、噴射が停止される。そして、1回の第1の噴射時間54の噴射と1回の第1の停止時間55の噴射停止とのセットを、間欠噴射動作の1サイクルとして、複数サイクルが繰り返し実行される。
そして、上述した第1の噴射時間54内において、非常に短い周期の間欠噴射動作が行われる。すなわち、図7にその詳細が示されているように、上記第1の噴射時間54より大幅に短い第2の噴射時間(1秒以内であり、例えば0.6秒)57の間、洗浄ポンプ5がパルス的に駆動されてパルス的な洗浄水噴射動作が行われ、その後に同じく第1の噴射時間54より大幅に短い第2の停止時間(1秒以内であり、例えば0.8秒)58の間、洗浄ポンプ5が停止される。この第2の噴射時間57のパルス噴射と第2の停止時間58の噴射停止とのセットが、第1の噴射時間54にわたって多数回繰り返される。
再び図6Dを参照する。上述した高速蒸らし工程に先行する初期洗浄工程においても、高速蒸らし工程におけるそれと類似する二重間欠噴射動作が行われる。ただし、初期洗浄工程での二重間欠噴射動作は、本実施形態では1サイクルだけ行われ、かつ、長い方の噴射時間52と停止時間53は、それぞれ、高速蒸らし工程における長い方の噴射時間54と停止時間55よりも長く設定される。すなわち、初期洗浄工程では、第1の噴射時間54より長い第3の噴射時間(例えば40秒)の間、非常に短い周期の間欠噴射動作が行われ、その後に、第1の停止時間55より長い第3の停止時間(例えば2分30秒)53の間、噴射が停止される。そして、第3の噴射時間54内での非常に短い周期の間欠噴射動作は、高速蒸らし工程のそれとは異なる時間設定によるものであってもよいが、本実施形態では、高速蒸らし工程のそれと同様の動作、すなわち、図7に示した第2の噴射時間57のパルス噴射と第2の停止時間58の噴射停止とを多数回にわたり繰り返す動作である。
上述した時間設定による二重間欠噴射動作を採用することで、高速蒸らし工程では、でんぷん類の汚れの膨潤化に適した温度領域(例えば摂氏60度程度)まで高温化するという目的を、従来技術より高速に短時間に達成することが可能になる。また、それと類似の二重間欠噴射動作が初期洗浄工程でも実行されるので、初期洗浄工程は、洗浄水量を増やし食器に付着した大きい汚れ片である残菜等を洗い流すという本来の目的を達成するだけでなく、高速蒸らし工程の目的である、でんぷん類の汚れの膨潤化を短時間で達成することにも寄与する。その意味で、初期洗浄工程は高速蒸らし工程の延長であるともいえる。因みに、図5に示したサイクル数は、初期洗浄工程と高速蒸らし工程とを繋げた予備洗浄工程の全体を通じての、二重間欠噴射動作の繰り返しサイクル数を意味する。
上述した時間設定による二重間欠噴射動作が上記の効果を生む理由は、次の通りである。すなわち、この二重間欠噴射動作によると、噴射される洗浄水量が少ないため食器19に触れて食器19と熱交換される水量も少なくなることから、食器に触れて温度が下がった洗浄水が洗浄槽内の洗浄水貯留室に帰還する量も少なくなるため、洗浄水の温度降下が抑制されることになる。よって、噴射される洗浄水の温度を高温に維持できるため、洗浄水の噴射に伴って温度上昇する洗浄槽18内の雰囲気温度も高温にすることができる。
また、噴射量を少なくする一方で、連続噴射ではなく間欠噴射することで噴射力を高めているため、噴射された洗浄水が食器に衝突した際に勢いよく水滴となって飛散する。そのため、少ない洗浄水量であっても食器全体を濡らすことができるとともに、洗浄水が飛散することによって多くの細かい水滴となることから表面積が増え、蒸発速度を高めることができることから多くの高温の水蒸気を発生させることができる。よって洗浄槽18内の雰囲気温度を短時間で上昇させることができるものである。また、言うまでも無く洗浄水の噴射によって高温化しているため、雰囲気の湿度も温度の上昇とともに高速に短時間で飽和状態にできるとともに、洗浄水自体の温度も短時間で目標温度(例えば摂氏65度)の近傍にまで到達させることができるものである。その結果、高速に短時間で、でんぷん類の汚れを膨潤化するのに適した温度にまで到達させることができる。
以上のことから明確な通り、食器19へ熱を与えていないため食器19の特に内部温度は低くても洗浄槽18内の雰囲気が十分に高温かつ多湿な状態にできていることから食器19の表面に付着したでんぷん類等の汚れは、食器から熱をもらわなくても、洗浄槽18内の高温多湿の空気に触れることによって短時間で確実に膨潤化させることができるものである。
図8は、上述したような二重間欠噴射動作と従来技術に従う噴射動作をそれぞれ実施した場合の洗浄槽18内の雰囲気の温度上昇について発明者らが調べた実験結果を示す。
この実験では、或る食器洗浄機に、そのほぼ最大搭載量に相当する62個の食器を詰め込み、かつ摂氏60度の洗浄水を貯めた状態で、上述した二重間欠噴射動作と、従来技術に従う単純な間欠噴射に基づく予備洗浄動作を実施させたものである。二重間欠噴射動作は、第1の噴射時間54が20秒、第1の停止時間55が2分、第2の噴射時間が0.6秒、第2の停止時間0.8秒という制御条件の下で実行された。他方、従来技術に従う噴射動作は、数十秒程度の長さの噴射後に、数十秒程度の長さの停止を繰り返す方法で行われた。なお、従来技術は、今回一般的な間欠噴射にしたが、連続噴射させる従来技術の方式でも同じような傾向になる。
図8において、実線グラフ60は、上記制御条件で二重間欠噴射動作を8分間(4サイクル)行ったときの洗浄槽18の雰囲気温度の変化を示す。他方、破線グラフ62は、従来技術に従う噴射動作を行ったときの温度変化の傾向を示す。実線グラフ60に示すように、二重間欠噴射動作では、洗浄槽18の雰囲気温度は、最初給湯温度の60℃から低下するが、噴射量が少なく、また噴射されない時間が非常に長いため温度の低下量が従来技術より大幅に少ない事が理解できる。また、第1の噴射時間54の間欠噴射が行われる都度に急激に上昇し、その後、次の噴射が行われるまでの間温度は除々に降下する。また、サイクルが後半になるほど噴射する洗浄水の温度も確実にヒータの作用で高温になるため、図に示すとおり階段状に洗浄槽18内の雰囲気温度は上昇していく。そして、8分経過した時点で、摂氏55度に達した。これに対し、従来の噴射動作によると、水量が多く食器との熱交換が大きいため洗浄水は食器の温度近くまで急激に低下してしまう。よって噴射される洗浄水の温度が低く雰囲気温度は高くならない。また、ヒータによって洗浄水を加熱しながらも食器によって冷やされた洗浄水が洗浄槽18内の洗浄水貯留室に帰還するため洗浄水の温度上昇は急激には高まらない。よって、破線グラフ62に示すように、二重間欠噴射動作の場合より温度上昇率が低く、8分経過した時点で摂氏46度(つまり、二重間欠噴射動作の場合の同時点の温度より約9度低い)までしか達することができなかった。二重間欠噴射動作の場合の8分経過時の温度に到達するためには、14分程度の運転時間が必要であった。
この違いを端的に言えば、本件発明は、新たに見出した二重間欠噴射によって、食器19の外表面は洗浄水と同じになったとしても、食器19の内部までは温めないようにすることで洗浄水の温度低下を抑制し、さらに、この噴射手法によって蒸発速度を高めて、高温の水蒸気の発生量を増やし、洗浄槽18の雰囲気温度を急激に高めることに成功したものである。これに対して従来技術は、洗浄水温度、食器の外表面だけでなく内部温度まで含めた食器の温度、洗浄槽内すべてが実質的に同じ温度になっているものであり、食器を暖める分洗浄槽内の温度上昇が遅れているものである。
以上、この実験により、二重間欠噴射動作により、洗浄槽18の雰囲気の温度を従来技術より高速に上昇させ得ることが確認できた。ところで、この実験では、ほぼ最大搭載量に相当する食器が食器洗浄機に詰め込まれたが、現実の使用状況では、食器搭載数はそれよりかなり少ないと推定される。従って、現実の使用状況では、二重間欠噴射動作を8分程度あるいは4サイクル程度実行することで、摂氏60度程度あるいはそれ以上の温度まで洗浄槽18の雰囲気を上昇させて、よって、食器表面のでんぷん類の汚れを良好に膨潤化させ得ると考えられる。
また、上述した二重間欠噴射動作を所定数サイクル繰り返すという予備洗浄工程(高速蒸らし工程)が完了した時点で、洗浄水自体の温度は、予備洗浄工程での目標温度(例えば摂氏65度)の近傍の温度に到達しており、この温度は、次の本洗浄工程での目標温度つまり洗浄最適温度より高いかそれにほぼ相当する温度である。そのため、本実施形態では、予備洗浄工程完了時の洗浄水を引き続き使って(つまり、洗浄水を交換せずに)、本洗浄工程に移行するように制御が行われる。本洗浄工程を開始した当初は、本件発明では、先にも述べたが食器19の内部は温度上昇していないため、本洗浄工程の連続的な噴射により洗浄水の熱量が食器19に多く奪われるため、洗浄水の温度が低下する。しかし、上記のように、本洗浄工程の開始時点で既に、洗浄水の温度が洗浄最適温度より高いかそれにほぼ相当する温度に到達しているため、洗浄水の温度は速やかに洗浄最適温度に到達することができる。因みに、図8の破線グラフ62で示したような従来技術に従う噴射動作を、予備洗浄工程で採用したとすると、予備洗浄工程が非常に長く行われない限り、予備洗浄工程の完了時点で、洗浄水の温度が洗浄最適温度より低い可能性が高く、そのため古い洗浄水をいったん排出して、摂氏約60度程度の新しい洗浄水を導入してから、本洗浄工程を開始しないと、期待された洗浄の威力が発揮できない虞がある。このように予備洗浄工程(高速蒸らし工程)から本洗浄工程への移行の際に、洗浄水を交換する必要がないという点においても、二重間欠噴射動作を採用した本実施形態の予備洗浄工程(高速蒸らし工程)は、短時間で所望の洗浄効果を得るために貢献する。
さらに、予備洗浄工程における二重間欠噴射動作は、でんぷん類の汚れを短時間に膨潤化するだけでなく、追加の利点として、本洗浄工程のときよりも強い噴射力で汚れを剥ぎ取るという効果も奏することができる。この効果は、特に、洗浄ポンプ5として、始動初期の吐出圧の立ち上がり時に吐出圧がオーバーシュートする特性をもつポンプ、つまり、初期吐出圧が定常運転時の吐出圧よりも高くなる領域をもつポンプを使用した場合に得ることができる。このようなオーバーシュート特性をもち、かつ食器洗浄機への適用に適したポンプの典型例には、食器洗浄機では一般的に多く使われているコンデンサ始動式単相誘導モータ駆動の遠心ポンプがある。このような特性をもつ洗浄ポンプ5を用いる場合、図7に示した短周期間欠噴射動作における第2の噴射時間(例えば0.6秒)のパルス噴射のときに、初期吐出圧の定常時より高い領域が有効に利用されるので、連続的に噴射する場合よりも高い噴射力を得ることができる。
図9は、このように洗浄ポンプ5の初期吐出圧の高い領域を活用する原理を示している。
図9に示すように、洗浄ポンプ5の吐出圧は、洗浄ポンプ5が起動するとグラフ70のように変化し、初期吐出圧が領域62でオーバーシュートする(定常吐出圧より高くなる)。そして、予備洗浄工程での短周期間欠噴射動作における第2の噴射時間(例えば0.6秒)57は、初期吐出圧の高い領域62の主要部分とオーバラップするか、その領域6を包含するように設定される。そのため、第2の噴射時間(例えば0.6秒)57のパルス噴射では、定常吐出圧より高い吐出圧による強い噴射力が得られ、噴射された洗浄水の食器19への衝突力が向上する。この強い衝突力によって、汚れを食器表面から剥ぎ取る能力が向上する。さらに、間欠噴射による衝撃力の増加に加え、このポンプ特性によって更に強い衝撃力を得ることができるようになった場合は、食器に衝突して飛散する量も多くなり水滴も一層小さくなるため蒸発速度が高まり、高温の水蒸気の発生を一層多くすることができ洗浄槽18内の雰囲気温度を一層早く上昇させることができる。
以上のように、二重間欠噴射動作を行う予備洗浄工程の採用により、従来技術に従う場合より短い時間で同等の洗浄能力を得ることができ、また、従来技術に従う場合と同等の時間を洗浄費やせば、より高い洗浄能力を得ることができる。ただし、二重間欠噴射動作、とりわけ図7に示したような短周期の間欠噴射動作では、洗浄ポンプ5のオンオフが短周期で頻繁に行われるため、静音性において問題がある。そこで、既に図5を参照して説明したように、静音性が重視される所定の洗浄オプションが選択された場合に、予備洗浄工程を省略することにより、静音性が確保される。なお、変形例として、予備洗浄工程を省略することに代えて、予備洗浄工程の噴射動作の方法を、二重間欠噴射動作より静音性の高い方法(例えば、ポンプモータの出力パワーを下げる、第1の噴射時間54では短周期の間欠噴射に代えて連続噴射を行う、など)に変更するようにしてもよい。
次に、乾燥コースの動作について説明する。図3を参照して既に説明したように、乾燥コースには、「30分」、「60分」、「送風」および「高度」コースがある。
図10は、「60分」乾燥コースにおける乾燥ヒータ11と乾燥ファン10の制御のやり方および洗浄槽18の気温変化を示す。図10に示すように、「60分」乾燥コースでは、60分の間、乾燥ファン10が連続して駆動されるとともに、乾燥ヒータ11の連続的に駆動されて乾燥風を加熱して、洗浄槽18の気温は所定の目標温度でほぼ一定に維持される。「30分」コースも、実行時間以外の動作は同様である。「送風」コースでは、乾燥ヒータ11は駆動されない。これらのコースの制御では、食器19が乾燥程度は全く考慮されない。
他方、「高度」乾燥コースでは、食器19が高度に乾燥したかどうかを周期的に判定し、判定結果が否定的であれば、乾燥コースを更に継続し、判定結果が肯定的であれば、その時点で乾燥コースを自動的に終了する、という制御が行われる。以下、この「高度」乾燥コースの制御について、詳細に説明する。
図11は、「高度」乾燥コースにおける乾燥ヒータ11と乾燥ファン10の制御のやり方および洗浄槽18の気温変化を示す。
図11に示すように、乾燥ファン10は連続的に駆動され連続的に乾燥風が吹き出される。これと並行して、所定の加熱時間(例えば28分)80の間、乾燥ヒータ11が連続的に駆動されて、洗浄槽18の気温を所定の目標温度に制御し、その後に、所定の加熱停止時間(例えば2分)82の間、乾燥ヒータ11が停止されて、乾燥風の加熱が停止されるという、間欠的な乾燥動作が行われる。そして、1回の加熱時間80の加熱動作と、1回の加熱停止時間82の加熱停止動作とのセットを、間欠乾燥動作の1サイクルとして、複数サイクルが繰り返し実行される。
洗浄槽18の気温は、グラフ84に示すように、加熱時間80の間はほぼ一定に保持されるが、加熱停止時間82の間は、時間経過に伴って単調に降下する。ここで、加熱停止時間82における洗浄槽18の気温の降下は、加熱停止時間82での食器19の温度の降下に対応したものと考えられる。後のサイクルになるほど、加熱停止時間82における温度低下量ΔH1、ΔH2、ΔH3は単調に小さくなっていく。その理由を、図12を参照して説明する。
図12は、間欠乾燥動作のサイクルの繰り返しに伴う食器19とこれに付着した水の熱容量の変化を示す。
図12に示されるように、食器19自体の熱容量92は不変であるが、食器19に付着している水の量が、後のサイクルに行くほど減っていくので、付着水の熱容量90は、後のサイクルに行くほど減っていく。従って、付着水を含めた食器19の実質的な熱容量は、後のサイクルに行くほど減っていく。そのため、図11に示したように、後のサイクルに行くほど、加熱停止時間82における洗浄槽18の気温の低下量ΔH1、ΔH2、ΔH3が小さくなる。
図12で第4と第5のサイクルに例示されているように、食器19が高度に乾燥して付着水が殆ど無くなると、上述した熱容量の減少は最早生じない。その結果、後のサイクルになっても、加熱停止時間82における洗浄槽18の気温の降下量は殆ど変化しなくなる。そこで、本実施形態では、制御装置8は、間欠乾燥動作の複数のサイクル中の所定のサイクル(例えば、2サイクル目以降の各サイクル)において、加熱停止時間82における洗浄槽18の気温の降下量(一定時間区間中の温度降下幅、または、温度降下速度、など)を、前サイクルのそれと比較し、両サイクルの温度降下量の差が所定の閾値以内になるか否かを判定し、その判定結果が否定的であれば、更に1サイクルを追加して乾燥コースを続行し、その判定結果が肯定的であれば、その時点で乾燥コースを終了する、という制御を行う。この制御により、食器19が高度に乾燥したか否かを従来技術よりも精度よく判断して、高度に乾燥した時点で、余計な乾燥コースを更に続けることなく、乾燥コースを終了させることができる。
図13は、制御装置8が行う高度乾燥コースの制御の詳細な流れを示す。
図13に示すように、「高度」乾燥コースが選択されているかがチェックされ(ステップS1)、その判定結果がイエスであれば、乾燥ヒータ11と乾燥ファン10がターンオンされて、n回目(最初はn=1)のサイクルの加熱動作が開始される(S2)。加熱動作の開始と同時に第1タイマT1が時間カウントを開始し、その後、第1タイマT1が所定の加熱時間(例えば28分)80をカウントすると(S3でイエス)、乾燥ヒータ11がターンオフされる(乾燥ファン10はオンのままである)。これにより、n回目のサイクルにおける加熱動作が終了する(S4)。
加熱動作の終了と同時に、洗浄槽18の気温値H1が読み込まれる(S57)。また、加熱動作の終了と同時に、第2タイマT2と第3タイマT3が時間カウントを開始し、その後、第2タイマT2が所定の中間チェック時間(例えば30秒)をカウントすると(S5でイエス)、洗浄槽18の気温値H2が読み込まれる(S7)。ところで、洗浄槽18の気温値は、例えば、図1に示された水・気温センサ16の出力信号から得ることができる。水・気温センサ16は、洗浄コースの時には洗浄水22内に水没していて洗浄水22の温度測定に使用されるが、乾燥コースの時には、筐体1内に洗浄水22が存在しないために、洗浄槽18の雰囲気中に存在するからである。このように、水・気温センサ16を洗浄水の温度測定と洗浄槽18の気温測定に両用することで、食器洗浄機のコストを下げることができる。もちろん、洗浄槽18の他の箇所や排気口12などに、別途に温度センサを設けて、その温度センサを使って、或いは、その温度センサと水・気温センサ16とを使って、洗浄槽18の気温を測定してもよい。
さて、上記ステップS7で中間チェック時間経過後の気温値H2が読み込まれた後、中間チェック時間経過前の気温値H1と経過後の気温値H2との差H1−H2が計算され、その温度差H1−H2が、予め設定されている直接風影響判断閾値Hcより大きいかがチェックされる(S8)。そのチェックの結果がイエスである場合には、乾燥風が食器19に直接当たっていて、無風状態で自然に食器19が冷える場合より高速に食器19が冷えている(以下、「直接風の影響がある」という)ことを意味し、この場合には制御はステップS16へ進む。他方、直接風の影響が無いと判断された場合(S8でノー)には、制御はステップS9へ進む。
ステップS9では、第3タイマT3が所定の加熱停止時間(例えば2分)82をカウントしたかがチェックされ、その加熱停止時間が経過した時に(S9でイエス)、洗浄槽18の気温値H3が読み込まれる(S10)。そして、加熱停止時間(例えば2分)82の経過前の気温値H1と経過後の気温値H3との差、つまり、加熱停止時間82中の温度降下量ΔHn(=H1−H3)が計算され、記憶される(S11)。そして、現在のサイクルが前述した所定回目のサイクル(例えば2回目以降の各サイクル)である場合には、制御はステップS12へ進み、ここで、前回のサイクルで計算された温度降下量ΔHn-1と、今回のサイクルに対応した所定乾燥完了判定閾値Hanとが読み込まれる。そして、前回と今回のサイクルにおける温度降下量ΔHn-1とΔHnの差ΔHn-1−ΔHnが計算され、この温度降下量差ΔHn-1−ΔHnの絶対値が、乾燥完了判定閾値Hanより大きいかがチェックされる(S13)。
ここで、乾燥完了判定閾値Hanとは、前回と今回のサイクルにおける温度降下量ΔHn-1とΔHnの差ΔHn-1−ΔHnが、この乾燥完了判定閾値Han以内であれば、食器19が高度に乾燥しているとみなすことができるという基準値である。図14は、乾燥完了判定閾値Hanの例を示している。図14に示すように、乾燥完了判定閾値Hanは、それが適用されるサイクルによって異なり、より前のサイクルほどより小さい値に、より後のサイクルほどより大きい値に設定されている。その理由は、より前のサイクルほど、食器19が高度な乾燥する可能性が低く、より後のサイクルほどその可能性が高いので、乾燥完了と判定する条件を、より前のサイクルほど厳しく、より後のサイクルほど甘くするためである。変形例として、最初の乾燥完了判定閾値Hanだけを、他の乾燥完了判定閾値Hanより小さくしても良いし、或いは、どのサイクルについても同一値の乾燥完了判定閾値Hanを適用してもよい。
さて、上述したステップS13のチェックの結果がイエスであった場合には、まだ食器19が高度に乾燥していないことを意味する。その場合には、現在のサイクルの回目数が所定の最大回数N(例えば6回)に達したかをチェックし(S14)、その結果がイエスであれば、乾燥コースを終了するが(S23)、そうでなければ、間欠乾燥動作のサイクルを1つ追加して(S15)、制御をステッS1に戻すことにより、乾燥コースを続行する。他方、上述したステップS13のチェックの結果がノーであった場合には、食器19が高度に乾燥したことを意味するので、制御はステップS23へ進んで、乾燥コースを終了する。
なお、図示してないが、今回のサイクルが前述した所定回目のサイクル(例えば2回目以降の各サイクル)でない場合には、上述したステップS11で今回のサイクルの温度降下量ΔHnを記憶した後に、制御は、上述したステップS12とS13の温度降下量差の判定をパスして、上述したステップS14へジャンプすることになる。
さて、上述したステップS8のチェックの結果、直接風の影響があると判定された場合(S8でイエス)には、制御はステップS16へ進んで、第3タイマが加熱停止時間(例えば2分)82より短い所定時間(例えば2分より20秒短い100秒)をカウントしたかがチェックされ、そして、その所定時間がカウントされると(S16でイエス)、乾燥ヒータ11だけでなく乾燥ファン10も停止して、直接風の影響を無くす(S17)。その後、直接風の影響がない状態が所定時間(例えば20秒)続いて、直接風の影響が是正された後に、加熱停止時間82が経過することになる(S18でイエス)。この加熱停止時間82が経過時点で、洗浄槽18の気温値H4が読み込まれ(S19)、そして、加熱停止時間82の経過前の気温値H1と経過後の気温値H4とから、加熱停止時間82中の温度降下量ΔHn(=H1−H4)が計算され記憶される(S20)。そして、現在のサイクルが前述した所定回目のサイクル(例えば2回目以降の各サイクル)である場合には、制御はステップS21へ進み、ここで、前回のサイクルで計算された温度降下量ΔHn-1と、今回のサイクルに対応した直接風影響時の所定乾燥完了判定閾値Hbnとが読み込まれる。そして、前回と今回のサイクルにおける温度降下量ΔHn-1とΔHnの差ΔHn-1−ΔHnが計算され、この温度降下量差ΔHn-1−ΔHnの絶対値が、直接風影響時の乾燥完了判定閾値Hbnより大きいかがチェックされる(S22)。
ここで、直接風影響時の乾燥完了判定閾値Hbnとは、既に説明した乾燥完了判定閾値Hanと同様の意味を持つ基準値であるが、図15に例示するように、図14に例示された乾燥完了判定閾値Hanよりも小さい値に設定されている。その理由は、直接風の影響が出る場合というのは、食器洗浄機内の食器19の量が少なくて隙間が大きい場合であり、それゆえに、食器19に付着する水の量が少ないので、サイクル間の温度降下量差も小さいからである。
さて、上述したステップS22のチェックの結果がイエスであった場合には、まだ食器19が高度に乾燥していないことを意味するので、制御は前述したステップS14に進む。他方、上述したステップS22のチェックの結果がノーであった場合には、食器19が高度に乾燥したことを意味するので、制御はステップS23へ進んで、乾燥コースを終了する。なお、図示してないが、今回のサイクルが前述した所定回目のサイクル(例えば2回目以降の各サイクル)でない場合には、上述したステップS20で今回のサイクルの温度降下量ΔHnを記憶した後に、制御は、上述したステップS21とS22の温度降下量差の判定をパスして、上述したステップS14へジャンプすることになる。
以上が高度乾燥コースの制御の流れである。変形例として、乾燥コースの初期の所定複数回のサイクル(例えば1回目と2回目のサイクル)は必ず実行することとし、それ以降のサイクルで(例えば3回目以降のサイクルで)、乾燥完了か否かを上記フローのようにして判定して乾燥コースの終了/継続を判断するようにしてもよい。その場合には、乾燥判定閾値Han(またはHbn)として、図16に例示するように、例えば3回目以降のサイクルに対する値だけが設定されていればよい。
また、別の変形例として、高度乾燥コースの実行時間は、最低でも、「30分」や「60分」コースのような設定時間で終了するコースより長くなるように制御してもよい。それにより、ユーザとしては、食器の乾燥度合いより時間を重視する場合には、設定時間で終了するコースを選択し、食器の乾燥度合いを終重視する場合には、高度乾燥コースを選択するというように、コース選択の判断が容易になる。
また、別の変形例として、加熱停止時間中は、乾燥ファン10も必ず停止するようにして、直接風の影響が全くでないようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。