JP4200842B2 - 車両およびその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両およびその制御装置に関し、詳しくは、少なくとも車軸に駆動力を出力可能な原動機を備える駆動装置を搭載した車両およびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の車両としては、電動機を制動駆動から力行駆動する際に指令速度の変化率を変更して電動機を駆動制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、電動機に印加する電流値が所定値を超えるまでは比較的小さな変化率で指令速度を変化させ、電流値が所定値を超えたときには比較的大きな変化率で指令値を変化させて電動機を駆動する。これにより、滑らかに加速することができる、とされている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−50420号公報(第4頁,第5頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした車両では、電動機が制動駆動しているときに操作者が大きな加速度での力行駆動を要求しても、電流値が所定値を超えるまでは比較的小さな変化率で指令速度を変化させて電動機を駆動制御するから、操作者の要求を反映することができないものとなる。
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、車両の制動状態から駆動状態への移行を滑らかに行なうことを目的の一つとする。また、本発明の車両およびその制御方法は、操作者の要求をより反映することを目的の一つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の車両およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の車両は、
少なくとも車軸に駆動力を出力可能な原動機を備える駆動装置を搭載した車両であって、
操作者による駆動力要求操作に基づいて要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内のときは該現在駆動力と前記設定した要求駆動力との駆動力偏差と該現在駆動力の時間的な変化とに基づいて該駆動装置から出力する駆動力の変化許容値を設定し、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲外のときは所定値をもって前記変化許容値を設定する変化許容値設定手段と、
前記設定された要求駆動力を前記設定された変化許容値の範囲内で制限することにより前記駆動装置から出力すべき目標駆動力を設定する目標駆動力設定手段と、
該設定された目標駆動力が出力されるよう前記駆動装置を制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の車両では、少なくとも車軸に駆動力を出力可能な原動機を備える駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内のときはこの現在駆動力と操作者による駆動力要求操作に基づいて設定される要求駆動力との駆動力偏差と現在駆動力の時間的な変化とに基づいて駆動装置から出力する駆動力の変化許容値を設定し、現在駆動力が所定駆動力範囲外のときは所定値をもって変化許容値を設定する。そして、設定した要求駆動力をこの設定した変化許容値の範囲内で制限することにより駆動装置から出力すべき目標駆動力を設定し、この設定した目標駆動力が出力されるよう駆動装置を制御する。したがって、駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内か否かに応じてより適切な制御を行なうことができる。この結果、車両の制動状態から駆動状態への移行を滑らかに行なうことができると共に操作者の要求をより反映したものとすることができる。ここで、「駆動力」には、正の駆動力と負の駆動力(制動力)とが含まれる。また、「現在駆動力の時間的な変化」には、短時間前から現在までの現在駆動力の変化軌跡)や現在から短時間後に推定される現在駆動力の変化(推定される軌跡)などが含まれる。
【0009】
こうした本発明の車両において、前記変化許容値設定手段は、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲内のときであり、且つ、前記現在駆動力の時間的な変化が値0を跨いで変化するときであり、且つ、前記動力偏差が所定偏差未満のときには、該現在駆動力が値0に近いほど小さくなる傾向に前記変化許容値を設定し、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲内のときであっても前記現在駆動力の時間的な変化が値0を跨いで変化しないとき又は前記動力偏差が所定偏差以上のときには、前記所定値をもって前記変化許容値を設定する手段であるものとすることもできる。即ち、操作者の加減速要求が比較的穏やかで車両に作用する駆動力が値0を跨いで変化する場合であって、現在駆動力が値0に近い所定駆動力範囲内のときには、現在駆動力が値0に近いほど小さくなる傾向に変化許容値を設定し、これ以外のとき、例えば操作者の加減速要求が比較的急峻なときなどには変化許容値に所定値を設定するのである。これにより、比較的穏やかな加減速要求により駆動力が値0を超える際には車両の加減速を滑らかに行なうことができると共に比較的急峻な加減速要求に対しては操作者の要求をより的確に反映することができる。ここで、「現在駆動力の時間的な変化が値0を跨いで変化するとき」とは、現在駆動力がこれから値0を跨ごうとするときや現在駆動力が値0を跨いできたときが含まれる。
【0010】
この比較的穏やかな加減速要求と比較的急峻な加減速要求に対応する態様の本発明の車両において、前記変化許容値設定手段は、前記現在駆動力の変化に対して略滑らかな変化をもって前記変化許容値を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、車両の加減速をより滑らかに行なうことができる。
【0011】
また、比較的穏やかな加減速要求と比較的急峻な加減速要求に対応する態様の本発明の車両において、前記駆動力要求操作の操作速度および/または車速に基づいて前記所定偏差を設定する所定偏差設定手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、駆動力要求操作の操作速度や車速に応じた車両の加減速を行なうことができる。この場合、前記所定偏差設定手段は、前記駆動力要求操作の操作速度が大きいほど小さくなる傾向に及び/又は前記車速が大きいほど小さくなる傾向に前記所定偏差を設定する手段であるものとすることもできる。これは、駆動力要求操作の操作速度が大きいほど操作者による加減速要求が急峻なものであることや、車速が大きいほど加減速の滑らかさが乗員に与える影響が小さいことに基づく。
【0012】
本発明の車両において、前記現在駆動力は前記要求駆動力設定手段により前記要求駆動力を設定する際に設定されている目標駆動力であるものとすることもできる。こうすれば、現在駆動力を検出する必要がない。
【0013】
本発明の車両において、前記原動機は電動機であるものとすることもできる。この場合、前記駆動装置は、内燃機関と、該内燃機関の動力の少なくとも一部を用いて発電可能な発電手段と、該発電手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段とを備えるものとするこもできる。
【0014】
この駆動装置が発電手段を備える態様の本発明の車両において、前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記車軸に連結された駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する手段であるものとすることもできる。この場合、前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機とを備える手段であるものとすることもできるし、前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを有し該第1の回転子と該第2の回転子との電磁作用による電力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する対回転子電動機であるものとすることもできる。
【0015】
本発明の車両の制御方法は、
少なくとも車軸に駆動力を出力可能な原動機を備える駆動装置を搭載した車両の制御方法であって、
(a)操作者による駆動力要求操作に基づいて要求駆動力を設定し、
(b)前記駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内のときは該現在駆動力と前記設定した要求駆動力との駆動力偏差と該現在駆動力の時間的な変化とに基づいて該駆動装置から出力する駆動力の変化許容値を設定し、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲外のときは所定値をもって前記変化許容値を設定し、
(c)前記設定した要求駆動力を前記設定した変化許容値の範囲内で制限することにより前記駆動装置から出力すべき目標駆動力を設定し、
(d)該設定した目標駆動力が出力されるよう前記駆動装置を制御する
ことを要旨とする。
【0016】
この本発明の車両の制御方法では、少なくとも車軸に駆動力を出力可能な原動機を備える駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内のときはこの現在駆動力と操作者による駆動力要求操作に基づいて設定される要求駆動力との駆動力偏差と現在駆動力の時間的な変化とに基づいて駆動装置から出力する駆動力の変化許容値を設定し、現在駆動力が所定駆動力範囲外のときは所定値をもって変化許容値を設定する。そして、設定した要求駆動力をこの設定した変化許容値の範囲内で制限することにより駆動装置から出力すべき目標駆動力を設定し、この設定した目標駆動力が出力されるよう駆動装置を制御する。したがって、駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内か否かに応じてより適切な制御を行なうことができる。この結果、車両の制動状態から駆動状態への移行を滑らかに行なうことができると共に操作者の要求をより反映したものとすることができる。ここで、「駆動力」には、正の駆動力と負の駆動力(制動力)とが含まれる。また、「現在駆動力の時間的な変化」には、短時間前から現在までの現在駆動力の変化軌跡)や現在から短時間後に推定される現在駆動力の変化(推定される軌跡)などが含まれる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0018】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0020】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0021】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば,バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0022】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に駆動軸としてのリングギヤ軸32aに作用させるトルクが値0を跨いで変化する際の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば8msec毎)に繰り返し実行される。
【0025】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accやブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、温度センサ51により検出されたバッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。ここで、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じて入出力制限Win,Woutを設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
【0026】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPと車速Vとに基づいてドライバが車両に要求するトルクとしてのドライバ要求トルクTd*を設定する(ステップS110)。ドライバ要求トルクTd*は、実施例では、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPと車速Vとドライバ要求トルクTd*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応するドライバ要求トルクTd*を導出して設定するものとした。図5に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0027】
続いて、設定したドライバ要求トルクTd*と前回このルーチンが実行されたときに設定された実行トルクT*とのトルク偏差ΔTを計算し(ステップS120)、計算したトルク偏差ΔTとアクセル開度Accと車速Vとに基づいて実行トルクT*の変化に対する緩変化処理の実行の要請を判定する(ステップS130)。この緩変化処理の実行の要請の判定は、実施例では、次のように行なわれる。まず、図6と図7に例示する判定値設定マップを用いて車速Vに対する判定値Tj1とアクセル変化速度ΔAccに対する判定値Tj2とを導出し、両判定値Tj1,Tj2のうち小さい方の判定値Tjとトルク偏差ΔTの絶対値とを比較する。そして、トルク偏差ΔTの絶対値が判定値Tj以上のときには緩変化処理の実行の要請は不要と判断して判定フラグF1に値0を設定し、トルク偏差ΔTの絶対値が判定値Tj未満のときには緩変化処理の実行の要請が必要と判断して判定フラグF1に値1を設定する。ここで、アクセル変化速度ΔAccは運転者によるアクセルペダル83の踏み込みの変化速度であり、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accの差分により計算することができる。車速Vに対する判定値Tj1を設定する判定値設定マップは、図6に示すように、実施例では、車速Vが大きくなるほど小さな判定値Tj1が導出されるよう設定されている。これは、車速Vが大きいほど加減速の影響を運転者に感じさせることに基づく。アクセル変化速度ΔAccに対する判定値Tj2を設定する判定値設定マップは、図7に示すように、実施例では、アクセル変化速度ΔAccが大きくなるほど小さな判定値Tj2が導出されるよう設定されている。これは、アクセル変化速度ΔAccが大きいほど加減速の影響を運転者に感じさせることに基づく。
【0028】
次に、所定時間(例えば0.1秒や0.2秒など)前から現時点までに実行トルクT*が値0を跨いだか否かの判定(ステップS140)と、実行トルクT*が所定時間(例えば0.1秒や0.2秒など)後までに値0を跨ぐか否かの推定の判定(ステップS150)とを行なう。所定時間前から現時点までに実行トルクT*が値0を跨いだか否かは、所定時間前の実行トルクT*の符号と現時点の実行トルクT*の符号とを比較することにより判定することができる。即ち、符号が同一のときは値0を跨いでいないと判定し、符号が異なるときは値0を跨いだと判定するのである。実施例では、値0を跨いでいないと判定したときには判定フラグF2に値0を設定し、値0を跨いだと判定したときには判定フラグF2に値1を設定する。実行トルクT*が所定時間後までに値0を跨ぐか否かの推定は、例えば所定時間前からの実行トルクT*の時間変化に基づいて所定時間後の実行トルクT*を推定し、推定した実行トルクT*の符号と現時点の実行トルクT*の符号とを比較することにより判定することができる。即ち、符号が同一のときは値0を跨がないと判定し、符号が異なるときは値0を跨ぐと判定するのである。実施例では、値0を跨がない判定したときには判定フラグF3に値0を設定し、値0を跨ぐと判定したときには判定フラグF3に値1を設定する。
【0029】
こうして判定フラグF1,F2,F3を設定すると、設定した判定フラグF1,F2,F3と実行トルクT*とに基づいて実行トルクT*の変化許容量Tlimを設定する(ステップS170〜S210)。判定フラグF1が値1であり、実行トルクT*の絶対値が閾値Tref未満であり、判定フラグF2か判定フラグF3のいずれかが値1のときには、即ち、緩変化処理の実行の要請がなされており、実行トルクT*が値0近傍に設定された範囲内にあり、所定時間前から現在までに実行トルクT*が値0を跨いだか所定時間後までに実行トルクT*が値0を跨ぐのを推定したときには、図8に例示する緩変化用マップを用いて変化許容量Tlimを設定する(ステップS200)。図8の緩変化用マップに示すように、実施例では、実行トルクT*が値0に近づくに連れて2段に小さくなる値Tlim1,Tlim2を変化許容量Tlimに設定する。このように設定する理由については後述する。ここで、閾値Trefは、実行トルクT*が値0を跨ぐ際の緩変化処理を実行する範囲を設定するものであり、車両の特性などにより設定することができる。一方、判定フラグF1が値0のときや、実行トルクT*の絶対値が閾値Tref以上のときや、判定フラグF2と判定フラグF3が共に値0のときには、即ち、緩変化処理の実行の要請がなされていないときや、実行トルクT*が値0近傍に設定された範囲外のときや、所定時間前から現在までに実行トルクT*は値0を跨いでおらず所定時間後までに実行トルクT*が値0を跨がないのを推定したときには、所定変化量Tlimsetを変化許容量Tlimに設定する(ステップS210)。ここで、所定変化量Tlimsetは、駆動制御ルーチンの起動間隔で実行トルクT*を変更可能な上限値近傍の値として設定されるものであり、エンジン22の応答性やモータMG1,MG2の性能,バッテリ50の容量などにより設定することができる。
【0030】
こうして変化許容量Tlimを設定すると、トルク偏差ΔTを値0と比較し(ステップS220)、トルク偏差ΔTが値0より大きいときには前回設定された実行トルクT*に変化許容量Tlimを加えた値とドライバ要求トルクTd*とを比較して小さい方を実行トルクT*として設定し(ステップS230)、トルク偏差ΔTが値0以下のときには前回設定された実行トルクT*から変化許容量Tlimを減じた値とドライバ要求トルクTd*とを比較して大きい方を実行トルクT*として設定する(ステップS240)。即ち、ドライバ要求トルクTd*を変化の方向に変化許容量Tlimの範囲内で制限した値を実行トルクT*に設定するのである。
【0031】
実行トルクT*を設定すると、この設定した実行トルクT*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和を計算してエンジン22から出力すべき要求パワーPe*として設定する(ステップS250)。ここで、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めることができる。そして、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS260)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図9に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0032】
続いて、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS270)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図10に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2に減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、エンジン22を目標回転数Ne*および目標トルクTe*の運転ポイントで定常運転したときにエンジン22から出力されるトルクTe*がリングギヤ軸32aに伝達されるトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2*が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0033】
【数1】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ−Nm2/(Gr・ρ) …(1)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*−Nm1)+k2∫(Nm1*−Nm1)dt …(2)
【0034】
こうしてモータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmax,Tminを次式(3),(4)により計算すると共に(ステップS280)、実行トルクT*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを式(5)により計算し(ステップS290)、計算したトルク制限Tmax,Tminの範囲内で仮モータトルクTm2tmpを制限した値をモータMG2のトルク指令Tm2*として設定する(ステップS300)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する実行トルクT*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、式(5)は、前述した図10の共線図から容易に導き出すことができる。
【0035】
【数2】
Tmax=(Wout−Tm1*・Nm1)/Nm2 …(3)
Tmin=(Win−Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tm2tmp=(T*+Tm1*/ρ)/Gr …(5)
【0036】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS310)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0037】
図11は、ブレーキペダル85を踏み込んで制動している状態からブレーキペダル85の踏み込みを止めてアクセルペダル83を踏み込んだときの実行トルクT*の時間的な変化の一例を示す説明図である。図中、直線Aはアクセルペダル83を大きく踏み込んだときの実行トルクT*の時間変化を示し、折線Bはアクセルペダル83を軽く踏み込んだときの実行トルクT*の時間変化を示す。アクセルペダル83を大きく踏み込んだとき(図中直線Aのとき)には、ドライバ要求トルクTd*に大きな値が設定されるから(ステップS110)、トルク偏差ΔTは大きな値となり、判定フラグF1には値0がセットされる(ステップS130)。このため、実行トルクT*の値に拘わらず、変化許容量Tlimには所定変化量Tlimsetが設定される(ステップS210)。したがって、駆動制御ルーチンの起動間隔あたり所定変化量Tlimsetの変化量として実行トルクT*が設定されるから、実行トルクT*は直線Aに示すように迅速に大きくなる。この場合、実行トルクT*が値0を跨ぐときにギヤの当接部位が変更される際に若干のショックが生じるが、運転者の要求が急加速であることから、そのショックは許容されるものとなる。
【0038】
一方、アクセルペダル83を軽く踏み込んだとき(図中折線Bのとき)には、ドライバ要求トルクTd*に小さな値が設定されるから(ステップS110)、トルク偏差ΔTも比較的小さな値となり、判定フラグF1には値1がセットされる(ステップS130)。実行トルクT*が閾値−Trefに至るまでは、変化許容量Tlimには所定変化量Tlimsetが設定されるから(ステップS180,S210)、アクセルペダル83を大きく踏み込んだときと同様に駆動制御ルーチンの起動間隔あたり所定変化量Tlimsetの変化量として実行トルクT*が設定される。実行トルクT*が閾値−Trefに至ると、実行トルクT*が値0を跨ぐまでは所定時間後までに実行トルクT*が値0を跨ぐと推定されて判定フラグF3に値1がセットされ(ステップS150)、実行トルクT*が値0を跨いだ後は所定時間前までに実行トルクT*が値0を跨いだと判定されて判定フラグF2に値1がセットされるから(ステップS140)、変化許容量Tlimには実行トルクT*が値0に近いほど小さな値を導出する緩変化用マップにより変化許容量Tlimが設定される(ステップS200)。したがって、実行トルクT*が閾値−Trefから閾値Trefに至るまでに変化許容量Tlimには値Tlim1,Tlim2,Tlim1の順に設定され、駆動制御ルーチンの起動間隔あたり値Tlim1,Tlim2,Tlim1の変化量として実行トルクT*は設定される。このため、実行トルクT*が値0近傍になると、実行トルクT*は、アクセルペダル83を大きく踏み込んだときに比して緩やかに変化する。このように実行トルクT*を緩やかに変化させることにより、実行トルクT*が値0を跨ぐときにギヤの当接部位が変更される際に生じ得る若干のショックをより小さなものとし、運転者に違和感を与えないようにすることができる。なお、実行トルクT*が閾値Trefを超えると、変化許容量Tlimには所定許容量Tlimsetが設定されるから、実行トルクT*にはアクセルペダル83を大きく踏み込んだときと同様に駆動制御ルーチンの起動間隔あたり所定変化量Tlimsetの変化量が加えられて設定される。
【0039】
以上、ブレーキペダル85を踏み込んで制動している状態からブレーキペダル85の踏み込みを止めてアクセルペダル83を踏み込んだときの実行トルクT*の時間的な変化について説明したが、逆に、アクセルペダル83を踏み込んで加速している状態からアクセルペダル83の踏み込みを止めてブレーキペダル85を踏み込んだときには、折線Bにおける時間変化を逆に時間が遡るように変化させればよいことになる。
【0040】
図12は、アクセルペダル83を踏み込んだ状態からアクセルペダル83を開放し、実行トルクT*が値0を跨ぐ直前にアクセルペダル83を再び踏み込んだときの実行トルクT*の時間変化の一例を示す説明図である。折線Cに示すように、実行トルクT*が値0に至る直前までは、図11の折線Bの逆の時間変化として実行トルクT*は変化する。開放されたアクセルペダル83が再び踏み込まれると、実行トルクT*は閾値−Trefから閾値Trefの間にあるが、所定時間前までに実行トルクT*は値0を跨いでいない判定されて判定フラグF2に値0がセットされ(ステップS140)、所定時間後までに実行トルクT*は値0を跨がないと推定されて判定フラグF3に値0がセットされるから(ステップS150)、変化許容量Tlimには所定許容量Tlimsetが設定される。したがって、実行トルクT*は駆動制御ルーチンの起動間隔あたり所定変化量Tlimsetの変化量として設定されるから、緩変化することなく迅速に実行トルクT*を上昇させることができる。
【0041】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、制動状態で運転者がアクセルペダル83を軽く踏み込んだときのように運転者が加減速に対してあまり大きな変化を望まない程度で実行トルクT*が値0を跨ぐ際には、実行トルクT*が値0近傍では緩やかに実行トルクT*を変更するから、実行トルクT*が値0を跨ぐときにギヤの当接部位が変更される際に生じ得る若干のショックをより小さなものとし、運転者に違和感を与えないようにすることができる。即ち、制動状態から駆動状態へ滑らかに移行させることができるのである。一方、制動状態で運転者がアクセルペダル83を大きく踏み込んだときのように運転者が加減速に対して大きな変化を望む場合に実行トルクT*が値0を跨ぐ際には、実行トルクT*が値0近傍でも緩変化処理を実行することなく実行トルクT*を変更するから、運転者の意思を迅速に反映することができる。
【0042】
また、実施例のハイブリッド自動車20によれば、所定時間前までに実行トルクT*が値0を跨いだか否かの判定や所定時間後までに実行トルクT*が値0を跨ぐか否かの推定に基づいて緩変化処理を実行するから、スアクセルペダル83を踏み込んだ状態からアクセルペダル83を開放し、実行トルクT*が値0を跨ぐ直前にアクセルペダル83を再び踏み込んだときには、緩変化処理を実行することなく、運転者の意思を迅速に反映することができる。さらに、実施例のハイブリッド自動車20によれば、緩変化処理の実行の要請を車速Vやアクセル変化速度ΔAccに基づいて判定するから、車速Vや運転者のアクセルワークに応じた加減速を行なうことができる。即ち運転者の意思により反映したものとすることができる。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、緩変化用マップとして図8に例示するように実行トルクT*が値0に近づくに連れて2段に変化許容量Tlimを変化させるものとしたが、変化許容量Tlimの変化の段数は、1段でもよいし2段以上としてもよい。また、無段に変化させるものとしてもよい。例えば、図13の変形例の緩変化用マップに示すように、滑らかな曲線をもって実行トルクT*が値0に近づくほど小さな変化許容量Tlimが設定されるようにしてもよい。この場合の加速時における実行トルクT*の変化の様子を図14に示す。図中、折曲線Cは滑らかな曲線をもって変化許容量Tlimを設定した場合の実行トルクT*の時間変化を示す。図示するように、実行トルクT*は滑らかに変化するから、実行トルクT*が値0を跨ぐときに生じ得る若干のショックをより小さなものにすることができる。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、所定時間前までに実行トルクT*が値0を跨いだか否かの判定や所定時間後までに実行トルクT*が値0を跨ぐか否かの推定に基づいて緩変化処理を実行するものとしたが、実行トルクT*が閾値−Trefから閾値Trefであれば、所定時間前までに実行トルクT*が値0を跨いだか否かや所定時間後までに実行トルクT*が値0を跨ぐか否かに拘わらず、緩変化処理を実行するものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、車速Vやアクセル変化速度ΔAccに基づいて設定された判定値Tjとトルク偏差ΔTとにより緩変化処理の実行の要請を判定するものとしたが、アクセル変化速度ΔAccは考慮せずに車速Vだけに基づいて判定値Tjを設定して緩変化処理の実行の要請を判定するものとしたり、逆に車速Vは考慮せずにアクセル変化速度ΔAccだけに基づいて判定値Tjを設定して緩変化処理の実行の要請を判定するものとしてもよく、車速Vもアクセル変化速度ΔAccも考慮せず、所定値として設定された判定値Tjとトルク偏差ΔTとにより緩変化処理の実行の要請を判定するものとしてもよい。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図15の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図15における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図16の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0048】
このように、本発明は、内燃機関からの動力と電動機からの動力とを駆動軸に出力可能なハイブリッド自動車に適用することができるが、こうしたハイブリッド自動車に限定されるものではなく、内燃機関からの動力だけで走行する自動車や電動機からの動力だけで走行する自動車にも適用することができる。また、自動車以外の車両、例えば列車などにも適用することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】 バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】 バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】 要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】 車速Vに対する判定値Tj1を設定する判定値設定マップの一例を示す説明図である。
【図7】 アクセル変化速度ΔAccに対する判定値Tj2を設定する判定値設定マップの一例を示す説明図である。
【図8】 緩変化用マップの一例を示す説明図である。
【図9】 動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を示す説明図である。
【図10】 エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する様子を示す説明図である。
【図11】 制動状態から加速状態に至る際の実行トルクT*の時間的な変化の一例を示す説明図である。
【図12】 加速状態から減速し実行トルクT*が値0を跨ぐ直前に加速状態とされたときの実行トルクT*の時間変化の一例を示す説明図である。
【図13】 変形例の緩変化用マップの一例を示す説明図である。
【図14】 変形例の緩変化用マップを用いたときの制動状態から加速状態に至る際の実行トルクT*の時間的な変化の一例を示す説明図である。
【図15】 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図16】 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35,減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b,64a,64b 駆動輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。
Claims (12)
- 少なくとも車軸に駆動力を出力可能な原動機を備える駆動装置を搭載した車両であって、
操作者による駆動力要求操作に基づいて要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内のときは該現在駆動力と前記設定した要求駆動力との駆動力偏差と該現在駆動力の時間的な変化とに基づいて該駆動装置から出力する駆動力の変化許容値を設定し、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲外のときは所定値をもって前記変化許容値を設定する変化許容値設定手段と、
前記設定された要求駆動力を前記設定された変化許容値の範囲内で制限することにより前記駆動装置から出力すべき目標駆動力を設定する目標駆動力設定手段と、
該設定された目標駆動力が出力されるよう前記駆動装置を制御する制御手段と、
を備える車両。 - 前記変化許容値設定手段は、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲内のときであり、且つ、前記現在駆動力の時間的な変化が値0を跨いで変化するときであり、且つ、前記動力偏差が所定偏差未満のときには、該現在駆動力が値0に近いほど小さくなる傾向に前記変化許容値を設定し、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲内のときであっても前記現在駆動力の時間的な変化が値0を跨いで変化しないとき又は前記動力偏差が所定偏差以上のときには、前記所定値をもって前記変化許容値を設定する手段である請求項1記載の車両。
- 前記変化許容値設定手段は、前記現在駆動力の変化に対して略滑らかな変化をもって前記変化許容値を設定する手段である請求項2記載の車両。
- 前記駆動力要求操作の操作速度および/または車速に基づいて前記所定偏差を設定する所定偏差設定手段を備える請求項2または3記載の車両。
- 前記所定偏差設定手段は、前記駆動力要求操作の操作速度が大きいほど小さくなる傾向に及び/又は前記車速が大きいほど小さくなる傾向に前記所定偏差を設定する手段である請求項4記載の車両。
- 前記現在駆動力は前記要求駆動力設定手段により前記要求駆動力を設定する際に設定されている目標駆動力である請求項1ないし5いずれか記載の車両。
- 前記原動機は電動機である請求項1ないし6いずれか記載の車両。
- 前記駆動装置は、内燃機関と、該内燃機関の動力の少なくとも一部を用いて発電可能な発電手段と、該発電手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段とを備える請求項7記載の車両。
- 前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記車軸に連結された駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する手段である請求項8記載の車両。
- 前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機とを備える手段である請求項9記載の車両。
- 前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを有し該第1の回転子と該第2の回転子との電磁作用による電力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する対回転子電動機である請求項9記載の車両。
- 少なくとも車軸に駆動力を出力可能な原動機を備える駆動装置を搭載した車両の制御方法であって、
(a)操作者による駆動力要求操作に基づいて要求駆動力を設定し、
(b)前記駆動装置から現在出力している現在駆動力が値0を含む所定駆動力範囲内のときは該現在駆動力と前記設定した要求駆動力との駆動力偏差と該現在駆動力の時間的な変化とに基づいて該駆動装置から出力する駆動力の変化許容値を設定し、前記現在駆動力が前記所定駆動力範囲外のときは所定値をもって前記変化許容値を設定し、
(c)前記設定した要求駆動力を前記設定した変化許容値の範囲内で制限することにより前記駆動装置から出力すべき目標駆動力を設定し、
(d)該設定した目標駆動力が出力されるよう前記駆動装置を制御する
車両の制御方法。
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