JP4196457B2 - Il−6レセプター・il−6融合蛋白質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質をコードする遺伝子を含む発現ベクターにより形質転換されたピキア・パストリス種の酵母、及び、該酵母を培養することからなる、サイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質の製造方法に関するものである(以下、本明細書では、IL−6レセプターを単にIL−6Rと略する)。
【0002】
【従来の技術】
IL−6Rは、IL−6(インターロイキンー6)の標的細胞膜上に発現するレセプター蛋白質として発見された(Yamasakiら、Science、241巻、825、1988年)。IL−6Rは、シグナル領域、細胞外領域、膜貫通領域及び細胞内領域からなるが、膜貫通領域及び細胞内領域を欠失したリコンビナント可溶性IL−6Rであっても、細胞膜上に発現したIL−6R同様に、IL−6と結合した後標的細胞膜上に発現したgp130蛋白質と結合してIL−6の刺激を伝達することが明らかになっている(Tagaら、Cell、58巻、573頁、1989年;Yasukawaら、J.Biochem.、108巻、673頁、1990年)。
【0003】
IL−6は重要な働きを担うサイトカインであるが、IL−6Rを全く発現しないか又は少量しか発現しない標的細胞にその刺激を伝達するためには、IL−6のみならず可溶性IL−6R(細胞外領域のみからなるIL−6R)を共存させる必要がある。
【0004】
IL−6Rの細胞外領域の薬効が種々調査されてきたが、これまで報告されたものの中でも、骨髄幹細胞増幅効果と血小板増多効果は、特に医薬品としての用途開発が期待される薬効である(Suiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、p2859、1995年、中畑ら、特願平8−316649号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
遺伝子工学的手法を用いることにより、天然ではそれぞれ別の蛋白質として存在する2種類の蛋白質を、1本のポリペプチド鎖から成る融合蛋白質として発現させることが可能となる。例えば、天然では別の蛋白質として存在する抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を融合蛋白質として発現させる例が報告されている(Houstonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、p5879、1988年)。
【0006】
前記のように、それぞれ別の蛋白質として存在するが、両者が結合して生理活性を発現するような2種類の蛋白質については、融合蛋白質として発現させると、解離が起こりにくいため、当該生理活性を安定的に発揮し易いという利点がある。そして、IL−6RとIL−6も、両者が結合した後にgp130蛋白質と結合することから、これらを融合蛋白質として発現させることにより、前記と同様の効果が期待される。
【0007】
IL−6RとIL−6の融合蛋白質についても既に報告(Fischerら、Nature Biotech.、15、p142、1997年)があり、この結果、配列番号1のような、適当なリンカー配列を利用することにより、両者を結合し得ることが知られるようになった。なおこの報告では、リンカー配列を介して結合されたIL−6RとIL−6の融合蛋白質は、可溶性IL−6RとIL−6を共存させた場合に比較して、1000倍近い生理活性を有するとされている。
【0008】
ところで、ヒトIL−6Rでは、N末端1番目のメチオニン残基から19番目のアラニン残基までがシグナル領域、20番目のロイシン残基から358番目までが細胞外領域、359番目のセリン残基から386番目のアスパラギン残基までが膜貫通領域、そして、387番目のアルギニン残基から468番目のアルギニン残基までが細胞内領域と考えられている。そして、細胞外領域は更にイムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域からなり、前者はN末端20番目のロイシン残基から111番目のアスパラギン酸残基まで、後者は112番目のバリン残基から323番目のアラニン残基と考えられている(Yawataら、EMBO J.、12,p1705、1993年)。そして、IL−6Rの細胞外領域のうち、IL−6との結合に必須なのはサイトカインレセプター領域であり、イムノグロブリン様領域は不要であることが知られている。
【0009】
これまでに、リコンビナント可溶性IL−6Rを製造する方法として、動物細胞であるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)やサルの腎臓細胞(COS細胞)を用いた方法やピキア・パストリス種の酵母を用いた方法が報告されている。これらの方法で製造されたIL−6Rは、いずれもIL−6と結合し得ることが報告されており(Yasukawaら、J.Biochem.、108,p673、1990年、Yawataら、EMBO.J.、12、1705、1993年)、前記報告と併せれば、動物細胞を用いることで、サイトカインレセプター領域を有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質を発現し得ることが理解できる。
【0010】
しかし、これら報告では、発現されたリコンビナント可溶性IL−6RはIL−6と結合する性質を保持していたものの(Yasukawaら、J.Biochem. 、108巻、673頁、1990年;Yawataら、EMBO J.、12巻、1705頁、1993年)、IL−6との融合蛋白質ではなかった。しかも、ピキア・パストリス種の酵母を宿主細胞として用いた報告では、イムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域の両方を有する可溶性IL−6Rは発現しないとされている(Vollmerら、J.Immunol.Method、199巻、47頁、1996年)。この理由については、ピキア・パストリス種の酵母で、イムノグロブリン様領域を含むIL−6Rを発現させると、イムノグロブリン様領域への糖鎖の付加の様式が、動物細胞の糖鎖の付加の様式とは異なるため、IL−6R分子全体が本来の高次構造をとれなくなるためと考えられる。また別の理由として、ピキア・パストリス種の酵母でイムノグロブリン様領域を含むIL−6Rを発現させるときに選択し、発現対象としたIL−6Rのアミノ酸配列、シグナルペプチドの種類又はその3’末端側の遺伝子配列等が不適当であった可能性もある。
【0011】
また更には、IL−6RとIL−6の融合蛋白質に関する前記報告では、両者をリンカー配列を介して結合させていることから、これを医薬品等として人体に投与する場合に、当該リンカー配列の抗原性等の問題が生じる恐れがある。
【0012】
そこで本発明の目的は、サイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質をコードする遺伝子を含む発現ベクターにより形質転換されたピキア・パストリス(Pichia Pastoris)種の酵母を提供することにある。なお該酵母は、メタノールを唯一の炭素源として生育できる酵母であり、CHO細胞のような動物細胞と比較して経済的に培養できるという利点を有するものである。
【0013】
また本発明の他の目的は、かかる酵母を培養し、培養物からサイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質を分離することを特徴とする、サイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために成された本発明は、サイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質をコードする遺伝子を含む発現ベクターにより形質転換されたピキア・パストリス(Pichia Pastoris)種の酵母である。
【0015】
また本発明は、前記形質転換された酵母を培養し、培養物からサイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質を分離することを特徴とする、サイトカインレセプター領域を有するIL−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質の融合蛋白質の製造方法である。以下、ヒトIL−6RとヒトIL−6の融合蛋白質について本発明を詳細に説明するが、IL−6RやIL−6はヒト以外の哺乳動物にも存在し、その一次構造はマウス等では既に報告されている。従って、本発明をヒト以外の哺乳動物に由来するIL−6RとIL−6の製造に適用する場合にも、以下の説明を参考とすることにより、遺伝子の配列や遺伝子を発現するための配列を適宜変更・選択することで、容易に本発明と同等の効果を達成することが可能となる。
【0016】
ヒトIL−6Rでは、イムノグロブリン様領域はN末端20番目のロイシン残基から111番目のアスパラギン酸残基までであり、サイトカインレセプター領域はN末端112番目のバリン残基から323番目のアラニン残基までである。本発明では、サイトカインレセプター域のみを有するIL−6Rをコードする遺伝子、又は、イムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域の両方を有するIL−6Rをコードする遺伝子のいずれを使用しても良い。
【0017】
より具体的には、例えば前者であればIL−6RのN末端112番目のバリン残基から323番目のアラニン酸残基までをコードする塩基配列を含んでいれば良い。また例えば後者であれば、IL−6RのN末端20番目のロイシン残基から323番目のアラニン残基までをコードする塩基配列を含んでいれば良い。いずれの場合にもその5’側には、前記以外に、例えばIL−6RのN末端1番目から19番目のアミノ酸残基をコードする部分等があっても良いが、3’側にはIL−6Rの膜貫通領域に構成するアミノ酸残基をコードする部分を多く含まないことが好ましい。具体的な例として、後の実施例に示すように、IL−6RのN末端344番目のロイシン残基までをコードする遺伝子を用いることを例示できる。IL−6RのN末端何番目までのアミノ酸残基を発現させるかについては、例えばYawataらの報告(EMBO J.、12巻、1705頁、1993年)を参照して適宜決定することができる。
【0018】
前記以外に、IL−6Rをコードする遺伝子は、サイトカインレセプター領域やイムノグロブリン様領域を構成するアミノ酸残基の全てを有している必要はなく、その一部が欠失していたり、他のアミノ酸残基が付加されていたり、他のアミノ酸残基で置換されていても良い。例えば、両領域を有する遺伝子においては、IL−6RのN末端20番目のロイシン残基から323番目のアラニン残基までの全てのアミノ酸残基を有する必要はなく、その一部が欠失していたり、他のアミノ酸残基が付加されていたり、他のアミノ酸残基で置換されていても良い。しかしながら、欠失や置換等を生じさせることにより、IL−6R本来のIL−6との結合能が影響を受ける恐れがある場合には、当該領域の全て、例えば両領域を有するIL−6Rをコードする遺伝子として、IL−6RのN末端20番目のロイシン残基から323番目のアラニン残基までの全てのアミノ酸残基を正確にコードする遺伝子を用いることが好ましい。
【0019】
前記遺伝子の5’末端、即ち発現されるIL−6RのN末端の上流側には、IL−6R以外の蛋白質等をコードする塩基配列を追加することができる。例えば発現したIL−6Rを細胞外に分泌させる働きを有するシグナルペプチドをコードする遺伝子を追加することが例示できる。シグナルペプチドとしては特に制限されないが、前記したIL−6R本来のシグナルペプチドのほか、発現量の高いα因子のシグナルペプチドが特に好ましく例示できる。
【0020】
IL−6との結合性のみであれば、サイトカインレセプター領域を有するIL−6Rをコードする遺伝子を使用すれば良いが、本発明により種々の融合蛋白質が提供されれば、将来、医薬品として有効なものをこれらの中から選択することが可能となる。血液や尿中に可溶性IL−6Rが存在することが報告されているが、これらは細胞膜に結合したIL−6Rがプロテアーゼの作用を受けて切断され、可溶化したもので、サイトカインレセプター領域に加えてイムノグロブリン様領域も含んでいる。従って、本発明により提供される、イムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域の両方を有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質は、より抗原性が低く、安定性が高いことが予想される等、サイトカインレセプター領域のみを有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質に比較して好ましいことが予想される。更に加えれば、後の実施例でも示したように、イムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域の両方を有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質は、サイトカインレセプター領域のみを有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質に比較してピキア・パストリス種の酵母における発現量が高い、という、付加的な効果も達成される。
【0021】
IL−6Rをコードする遺伝子の3’側に接続されるIL−6遺伝子は、活性を発現し得るIL−6をコードする遺伝子であれば特に制限はないが、例えば、後の実施例に示したように、N末端28番目のアラニン残基から212番目のメチオニン残基までをコードする遺伝子を例示できる。
【0022】
IL−6R遺伝子とIL−6遺伝子は、リンカーとなるアミノ酸配列をコードする遺伝子を介して結合しても良いが、抗原性を低減するという効果を達成するため、これらを直接に結合することが特に好ましい。即ち、IL−6Rの末端をコードする遺伝子の3’側に、IL−6をコードする遺伝子を結合させるのである。本発明者らの知見によれば、両者を直接結合させても、溶液中でのIL−6RとIL−6の動きが制限され、結合し得なくなるという事態は生じない。
【0023】
本発明のIL−6RとIL−6の融合蛋白質をコードする好ましい遺伝子として、具体的に、IL−6RのN末端20番目のロイシン残基から323番目のアラニン残基までをコードする遺伝子の3’側にIL−6のN末端28番目のアラニン残基から212番目のメチオニン残基までをコードする遺伝子を結合させたもの、 IL−6RのN末端20番目のロイシン残基から333番目のアラニン残基までをコードする遺伝子の3’側にIL−6のN末端28番目のアラニン残基から212番目のメチオニン残基までをコードする遺伝子を結合させたもの、そして、 IL−6RのN末端20番目のロイシン残基から344番目のロイシン残基までをコードする遺伝子の3’側にIL−6のN末端28番目のアラニン残基から212番目のメチオニン残基までをコードする遺伝子を結合させたもの、を例示できる。
【0024】
前記遺伝子の3’末端、即ち発現されるIL−6のC末端をコードする塩基の下流側には、ターミネータ等を配置して、当該部分でmRNAへの転写が終了するようにする。
【0025】
結合された、IL−6Rをコードする遺伝子とIL−6をコードする遺伝子を含む発現ベクターは、該遺伝子を導入し、ピキア・パストリス種の酵母を形質転換し、該酵母中で増殖し、かつ、該酵母中で前記遺伝子を発現せしめることが可能なものであれば特に制限はない。好ましくは、形質転換酵母を選択可能とする指標となる遺伝子を有していると良い。前記遺伝子を導入するためにはアルコールオキシダーゼ遺伝子の上流配列と下流配列を有していることが好ましく例示でき、形質転換酵母の選択のための指標としてはヒスチジン合成遺伝子を有していることが好ましく例示でき、前記遺伝子を発現せしめるためにはアルコールオキシダーゼ遺伝子のプロモーター配列を有することが好ましく例示できる。このような好ましい発現ベクターの一例として、市販のベクター(pPIC9、インビトロジェン社製)を例示することができる。
【0026】
形質転換操作は、通常の方法に従うことができる。操作を終えた酵母は、ヒスチジン合成遺伝子の働き等を指標として形質転換されたものとそうでないものを分けた後、培養することによりIL−6RとIL−6の融合蛋白質を発現することが可能となる。形質転換されたピキア・パストリス種の酵母を培養する操作は、ジャーファーメンターを用いる通常の操作のほか、本出願人による特許出願(特願平9−359838号、特願平10−1478号)に記載された方法を採用することができる。培養操作を継続する中で、発現用ベクター中の遺伝子が発現し、培養液中にIL−6RとIL−6の融合蛋白質が蓄積される。培養液から発現された融合蛋白質を取得するには、通常の蛋白質の分離・精製方法を適用すれば良いが、処理能力の高さや操作に要する時間が短いという利点を有することから、ゲル濾過、疎水クロマト等の複数種の液体クロマトグラフィー操作を組み合わせることが特に好ましい(特願平9−323195号)。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明するために実施例を記載するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例 1
5’末端から順に、IL−6RのN末端20番目のロイシン残基から344番目のロイシン残基までの合計325アミノ酸残基をコードする遺伝子、配列番号2の5アミノ酸残基からなるリンカー配列をコードする遺伝子、そしてIL−6のN末端28番目のアラニン残基から212番目のメチオニン残基までの合計185アミノ酸残基をコードする遺伝子、を含む発現プラスミドpPIC9−A20LL6を以下のようにして調製した。
【0029】
プライマーp6RAB20L(配列番号3)とプライマーP344FUF(配列番号4)を用いて、IL−6RのcDNAをPCRにより増幅した。増幅したDNAをXbaIで切断した後、予めXhoI切断し、末端をクレノウフラグメントで平滑化し、更にAvrIIで切断したピキア・パストリス種の酵母用の市販の発現プラスミド(pPIC9、インビトロジェン社製)に挿入し、プラスミドpPIC9−A20LLFUを得た。
【0030】
次に、プライマーpIL6B(配列番号5)とプライマーpIL6F(配列番号6)を用いて、IL−6のcDNAをPCRにより増幅した。増幅したDNAをXhoIとNotIで切断した後、XhoIとNotIで切断したプラスミドpPIC9−A20LLFUに挿入して、IL−6Rをコードする遺伝子とIL−6をコードする遺伝子が配列番号2のアミノ酸配列をコードする遺伝子を介して結合した遺伝子を含む、発現プラスミドpPIC9−A20LL6を得た。得られたpPIC9−A20LL6の構造を図1に示す。なお、得られたpPIC9−A20LL6中の、IL−6RとIL−6を含む融合蛋白質のアミノ酸一次構造及びこれをコードする遺伝子は配列番号7に記載した通りである。配列番号7において、5’末端の976番目のTから990番目のTが前記リンカー配列をコードする遺伝子である(N末端の326番目から330番目)。
【0031】
実施例 2
市販のピキア・パストリス種の酵母(GS115株、インビトロジェン社)から、通常の方法(Creggら、Mol.Cell.Biol.、5巻、3376頁、1985年;特開平2−104920号)に従ってスフェロプラストを調製し、BglIIによって線状化したpPIC9−A20LL6を用いてこれを形質転換した。
【0032】
まずGS115株を30℃条件下、YPD培地50ml中でOD600が1になるまで振とう培養した後、集菌し、スフェロプラストを作製し、pPIC9−A20LL6を導入した。形質転換菌は最小栄養培地で培養し、ヒスチジン要求性を失った形質転換菌を選択した。
【0033】
選択した形質転換菌を、30℃条件下、試験管に入れた3mlの、5%のメタノールを含むBMGY培地(1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)ペプトン、1%(w/v)グリセロール、1.34%(w/v)YNB wo AA(Yeast Nitrogen Base Without amino acid)、0.4mg/lビオチン、100mMリン酸カリウム(pH6.0))中で96から120時間培養後、上清を集めた。
【0034】
実施例 3
BAF130細胞を用いた生物活性評価法により、実施例2における形質転換酵母4種のクローンの培養上清と、サイトカインレセプター領域のみを有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質をコードする発現プラスミド(pPIC9−A116EL6、特願平10−2921号参照)で形質転換された4種の酵母のクローンの培養上清中の融合蛋白質の活性を測定した。BAF130細胞は、本来ヒトgp130蛋白質を発現していないマウス細胞BAFにヒトgp130蛋白質をコードする遣伝子を導入して形質転換させ、当該蛋白質を発現させた細胞であり、IL−6及びIL−6Rの共存下で増殖する性質を有する細胞である(Hatakeyamaら、Cell、63巻、154頁、1989年)。
【0035】
BAF130細胞の懸濁液を、96穴プレートに2×104細胞/穴となるように加え、各種濃度に希釈した培養上清をそれぞれ添加した。2日後、BAF130細胞の増殖を、市販の試薬キット(Cell Counting Kit、和光純薬工業製)を用いて調べた。
【0036】
結果を図2に示す。図2から明らかなように、pPIC9−A20LL6で形質転換されたピキア・パストリス種の酵母の培養上清中の融合蛋白質は、pPIC9−A116EL6で形質転換された酵母の培養上清中の融合蛋白質に比較して、より強いBAF130細胞増殖効果が観察された。これは、イムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域の両方を有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質が、サイトカインレセプター領域のみを有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質に比較して同等以上に機能すること、及び、両領域を有するIL−6Rを含む融合蛋白質が、サイトカインレセプター領域のみを有するIL−6R含む融合蛋白質よりもピキア・パストリス種の酵母において発現量が高いことを示唆している。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、IL−6RとIL−6が直接又はリンカー配列を介して結合された遺伝子を含む発現ベクターで形質転換されたピキア・パストリス種の酵母と、該酵母を培養することによるIL−6RとIL−6の融合蛋白質の製造方法が提供される。
【0038】
IL−6RとIL−6は、両者が結合して初めてgp130蛋白質と結合し得るものであるため、両者を融合蛋白質として発現させることで、解離が起こり難くし、生理活性を安定的に発揮させることが可能となる。特にIL−6RとIL−6を直接結合した融合蛋白質では、医薬品等として人体に投与する場合に、当該リンカー配列の抗原性等の問題が生じる恐れが小さいという効果もある。
【0039】
また本発明において、イムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域の両方を有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質をコード遺伝子を用いる場合には、サイトカインレセプター領域のみを有するIL−6RとIL−6の融合蛋白質をコードする遺伝子を用いる場合に比較して、形質転換酵母における融合蛋白質の発現量を高めるという効果を達成することもできる。このイムノグロブリン様領域とサイトカインレセプター領域の両方を有するIL−6R部分は、血液や尿中に存在する可溶性IL−6Rと同様の領域を有している。従って、かかる融合蛋白質においては、イムノグロブリン様領域を有していないIL−6R部分を有する融合蛋白質に比較して、より抗原性が低く、かつ、安定性が高い、という効果が予想される。
【0040】
【0041】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で調製した発現ベクターpPIC9−A20LL6の構造を示す図である。図中ampはアンピシリン耐性遺伝子を、oriは転写開始部位を、3’AOX1はアルコールオキシダーゼ遺伝子の下流配列を、HIS4はヒスチジン合成遺伝子を、3’AOXTTはターミネーターを、IL−6はIL−6遺伝子を、IL−6RはIL−6R遺伝子を、Sはシグナル配列をコードする遺伝子を、そして5’AOX1はプロモーター配列を含むアルコールオキシダーゼ遺伝子の上流配列をそれぞれ示す。
【図2】図2は、実施例3の結果を示す図であり、参照波長を600nmとしたときの405nmの吸光度を示すものである。図中、白丸、白四角、白三角及び白菱形は、発現プラスミドpPIC9−A20LL6で形質転換された任意の4種のクローンについての、黒丸、黒四角、黒三角及び黒菱形は、プラスミドpPIC9−A116EL6で形質転換された任意の4種のクローンについての、培養上清中の融合蛋白質によるBAF130の増殖効果の結果を示すものである。
Claims (2)
- 天然配列におけるN末端20番目のロイシン残基から344番目のロイシン残基までの一次配列を有するインターロイキン−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質が配列番号2のリンカー配列を介して融合した融合蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターにより形質転換されたピキア・パストリス(Pihia Pastoris)種の酵母。
- 請求項1の酵母を培養し、培養物から天然配列におけるN末端20番目のロイシン残基から344番目のロイシン残基までの一次配列を有するインターロイキン−6レセプター蛋白質とIL−6蛋白質が配列番号2のリンカー配列を介して融合した融合蛋白質を分離することを特徴とする、当該融合蛋白質の製造方法。
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