JP4196273B2 - 既設建築物下部への山留め壁形成方法 - Google Patents

既設建築物下部への山留め壁形成方法 Download PDF

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本発明は、地下階増築のために既設建築物の下に山留め壁を形成する方法に関するものである。
この種の山留め壁の形成方法としては、例えば図5に示したように、既設建築物1の残存させた地下外壁15それ自体または地下外壁15の外側などに適宜の間隔で開設する図示しない改良剤注入穴から高圧ジェットグラウトなどの工法によりセメントやモルタルなどの地盤改良剤(硬化剤)を掘削予定底面16より深い位置まで注入し、それを硬化させて地下外壁15の下に山留め壁2を地下外壁15より幅広く形成する方法(特許文献1)がある。
特許文献1記載の山留め壁形成方法を利用した地下階の増築は、既設地下階を全て解体して一旦埋め戻し、その後に山留め壁を構築して地下階を増築する従来工法に比較すると、1)騒音・振動・粉塵の発生が少ない、2)産業廃棄物(コンクリートがら)の発生量が少ない、3)埋め戻し土の手配・転圧・締固めなどの工事が不要となり、費用の大幅な削減と工期の大幅な短縮が図れる、4)原位置地盤の撹乱に伴う土圧の増加が少ない、などと云った顕著な効果がある。
特開2002−115260号公報
しかし、特許文献1記載の山留め壁形成方法は、改良剤注入穴から高圧ジェットグラウトなどの工法によりセメントやモルタルなどの地盤改良剤を地中に注入し、それを硬化させて地下外壁の下に山留め壁を形成する方法であるので、敷地境界線ギリギリに既設建築物があるときには、地中に注入する硬化剤が敷地の外側まで拡散するので、工法そのものが採用できないと云った問題点がある。
また、特許文献1記載の山留め壁形成方法は、山留め壁を横方向にも縦方向にも均質に形成することが困難であると云った問題点があった。すなわち、セメントやモルタルなどの地盤改良剤は改良剤注入穴近傍には多量、換言すると高濃度で注入されるが、改良剤注入穴から離れるほど地盤改良剤の注入量は減少し低濃度となるので、形成する山留め壁の強度は横方向にも上下方向にもばらつくと云った問題点があった。
そのため、既設建築物が敷地境界線ギリギリに建てられているときにもその下側に山留め壁を形成することができ、しかも強度変動の少ない山留め壁が形成できるようにする必要があった。
本発明は、既設建築物の底盤部に列設した掘削機設置穴を介してその下方の地山に設けた掘削手段挿入穴に、カッターポストとカッターチェーンを備えて構成されるチェーンソー状の掘削手段が支持台に支柱を介して上下動と鉛直面内での回動が可能に垂設された掘削機の前記掘削手段をその長手方向を上下方向に向けた状態で挿入し、隣接する掘削機設置穴下方の掘削手段挿入穴側に掘削手段が回動可能に支持台を底盤部分に固定し、カッターチェーンを動作させた状態で掘削手段を隣接する掘削手段挿入穴側に回動して掘削手段の長手方向を水平方向に変更し、掘削手段を降下若しくは上下動させて隣接する掘削手段挿入穴との間の地山を掘削手段により掘削・攪拌すると共に、掘削手段に設けた噴出口から硬化剤を噴出して掘削・攪拌土と硬化剤とを混合し、掘削手段の長手方向を上下方向に向け直して掘削手段挿入穴と掘削機設置穴とから掘削手段を抜出する工程を繰り返し行って、底盤下方の地山に連続した硬化壁を形成する既設建築物下部への山留め壁形成方法であって、前記掘削手段が抜出された掘削機設置穴と、隣接する掘削機設置穴同士の間の底盤に列設された芯材挿入穴とを介して高剛性芯材を掘削・攪拌土と硬化剤との混合部分に挿入して前記硬化壁の壁部に配設し、前記高剛性芯材の頂部を既設建築物と一体にすることを最も主要な特徴とする。
本発明の山留め壁形成方法は、既設建築物の地上階と地下階の大半を残して地下階を増築する方法であるので、既設建築物の地上階と地下階の全てを解体して一旦埋め戻し、その後に地下階を構築する従来工法に比べ、1)居住者や備品の大半は転居したり、移設する必要がないので、賃料や引越し費用の無駄がない、2)騒音・振動・粉塵の発生が少ない、3)産業廃棄物(コンクリートがら)の発生量が少ない、4)埋め戻し土の手配・転圧・締固めなどの工事が不要となり、費用の大幅な削減と工期の大幅な短縮が図れる、5)原位置地盤の撹乱に伴う土圧の増加が少ない、などと云った顕著な効果がある。
しかも、既設建築物が敷地境界線ぎりぎりに建っているときにも山留め壁を構築することが可能であり、また、強度の安定した山留め壁を構築することができる。
既設建築物の基礎底盤に列設した掘削機設置穴直下の地山に設けた掘削手段挿入穴に、掘削機のチェーンソー状の掘削手段を上下方向に向けた状態で挿入し、隣接する掘削機設置穴直下の掘削手段挿入穴側に掘削手段が回動可能に支持台を底盤部分に固定し、カッターチェーンを動作させた状態で掘削手段を隣接する掘削手段挿入穴側に回動して掘削手段の向きを水平方向に変更し、掘削手段を上下動させて隣接する掘削手段挿入穴との間の地山を掘削・攪拌すると共に、掘削手段から硬化剤を噴出して掘削・攪拌土と硬化剤とを混合し、掘削手段を上下方向に向け直して掘削手段挿入穴と掘削機設置穴とから掘削手段を抜出する工程を繰り返し行って、底盤下方の地山に連続した硬化壁を形成する。
以下、図1、図2に示す地下2階建ての既設建築物1の下側に地下階を増築する際に必要となる山留め壁2を形成する例を挙げて本発明の形態を説明する。
図示しない地上階には手を一切加えることなく、最下階である地下2階のスラブ3、底盤4それぞれに、掘削機設置穴5、6を所定の間隔、すなわち後述する掘削機21のプーリ30、31の部分を含むカッターポスト27の長さを超えない寸法間隔で列設する。
既設建築物1の床面積と同程度の床面積の地下階を増築しようとるときには、掘削機設置穴5、6は底盤4の縁部(外周基礎)に沿って開設する。そして、底盤4下方の地山7にも、掘削機設置穴5、6それぞれの直下に掘削手段挿入穴8を設ける。
本発明で使用する掘削機21は、動力手段としてのエンジンモータ22が添設された支持台23と、その支持台23に上下移動可能に装着された支柱24と、その支柱24に支軸25を介して鉛直面内での回動が可能に垂設された掘削手段26とを備えている。
掘削手段26は、例えば特開平05−156639号公報、特開平07−305343号公報などに提案されている掘削機と略同様に設けられたカッターポスト27、カッターチェーン28を備えている。すなわち、掘削手段26は無端のカッターチェーン28がカッターポスト27の周囲に回転可能に巻装されてチェーンソー状に形成されている。そして、カッターポスト27が支柱24に支軸25を介して鉛直面内での回動が可能に垂設されて、掘削手段26をその長手方向を水平方向に向けて設置することが可能になっている。
また、プーリ29、30間に張設された2本のベルト32によりプーリ30がエンジンモータ22の回転動力により回転し、そのプーリ30とプーリ31との間に張設されてカッターポスト27の周囲に巻装されたカッターチェーン28が回転し、カッターチェーン28に装着されたカッタービット28Aが主にカッターポスト27の軸方向に移動して地山7を掘削するように構成されている。
また、掘削手段26のカッターポスト27は、一端がカッターポスト27に固定され、他端が支柱24に固定された2本のジャッキ33の伸張・収縮により回動するように構成されている。すなわち、ジャッキ33を伸張させるとカッターポスト27、換言すると掘削手段26は鉛直状態から支軸25を支点に回動して水平状態になり、ジャッキ33を収縮させると水平状態から支軸25を支点に回動して鉛直状態になるように構成されている。
さらに、掘削機21にはカッターポスト27近傍に設けた硬化剤噴出口から適宜セメントミルクなどの硬化剤を噴出することができるように構成されている。
そして、ジャッキ33を収縮させて掘削機21の掘削手段26を上下方向に向けた状態で、例えば一番端に位置する掘削機設置穴5、6からその直下の掘削手段挿入穴8に、支柱24を支持台23に対して降下させて支軸25が掘削手段挿入穴8の上端近傍に位置するように挿入し、掘削手段26が隣接する掘削手段挿入穴8の側に回動可能に向けて、支持台23の部分を底盤4などに固定する(地下2階の天井部分などを有効に活用することもできる)。
その後、エンジンモータ22を起動してカッターチェーン28を回転させ、ジャッキ33を伸張させてカッターチェーン28に装着されたカッタービット28Aを地山7に押し付けると、カッタービット28Aが押し付けられた地山7は掘削され、掘削手段26が回動可能になるので、掘削手段26は支軸25を支点に先端部が隣接する掘削手段挿入穴8の側に回動し、カッターポスト27より上側に位置するカッタービット28Aが地山7から上方に突出した状態で水平に保持される。
その状態で、支柱24を支持台23に対して下降させることにより、掘削手段26が降下し、掘削手段26が挿入された掘削手段挿入穴8と、隣接する掘削手段挿入穴8との間の地山7がカッターチェーン28に装着されたカッタービット28Aにより掘削される。
そして、カッタービット28Aにより掘削された掘削土は、カッターチェーン28の張設方向、すなわちカッタービット28Aが主として移動している水平方向に搬送されるので、掘削機21の掘削手段26が挿入された掘削手段挿入穴8と、隣接する掘削手段挿入穴8との間の地山7にあって掘削された土は硬化剤と共に攪拌され、その範囲内で均質化する。また、掘削手段26がゆっくりと降下することにより掘削土は上下方向にも攪拌され、均質化される。
この水平方向と上下方向の両方向に攪拌され、均質化される掘削土と、降下中の掘削手段26のカッターポスト27近傍に設けた図示しない噴出口から噴出させるセメントミルクなどの硬化剤とを混合し、掘削手段26が挿入された掘削手段挿入穴8と、隣接する掘削手段挿入穴8との間の地山7に硬化し得る硬化可能土9を形成する(掘削手段26は上下動を複数回繰り返して、硬化可能土9の混合・攪拌作用を高めることも可能である。)。
そして、ジャッキ33を収縮させて掘削手段26を上下方向に向け直し、その状態で支柱24を支持台23に対して上昇させて掘削手段26を掘削機設置穴5、6、掘削手段挿入穴8から抜き取り、掘削機設置穴5、6と、掘削機設置穴同士の間に所定の間隔で列設した芯材挿入孔10、11から、剛性の大きいH型鋼12を山留め壁2の補強芯材として硬化可能土9の部分に挿入し、硬化可能土9を硬化させて、掘削手段26が挿入された掘削手段挿入穴8と、隣接する掘削手段挿入穴8との間の地山7に補強芯材が配設された山留め壁2を形成する。
上下方向に向け直して掘削機設置穴5、6、掘削手段挿入穴8から抜取した掘削機21の掘削手段26を、隣接する掘削機設置穴5、6からその直下の掘削手段挿入穴8に挿入して上記と同様の工程を順次繰り返し、隣接する掘削手段挿入穴8同士の間に山留め壁2を形成して、底盤4の下方に連続した長い山留め壁2を形成する。
上記工程により形成される山留め壁2は、厚さが均一であると共に、セメントミルクなどの硬化剤を含む壁成分は水平方向にも上下方向にも攪拌されて均されるので、地山7に形成される山留め壁2は均質化が図られ、安定した強度が得られると云った特長がある。
また、掘削機21は支持台23により設置階の床と天井との間に固定されて、掘削手段26を水平に保持してカッタービット28Aを地山7に強く押圧して地山7を掘削するときの反力は既設建築物1の巨大な質量と剛性により受け止められので、掘削機21が転倒防止のために搭載しなければならない重錘の質量を小さくすることが可能であり、それにより掘削機21自体の小型化が図れると云った特長がある。
なお、基礎梁の下には高剛性芯材のH型鋼12などは挿入・設置し難いので、その部分の両側ではH型鋼12の設置間隔を狭めて強度アップを図ると共に、硬化可能土9から突出している頂部は後打ちコンクリートにより底盤4と一体化させて躯体切梁としての機能を回復させるように構成する。この構成により、芯材頂部の腹越しが不要になる上に、既設躯体を使用するので仮設材使用量を削減することができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではないので、特許請求の範囲に記載の趣旨から逸脱しない範囲で各種の変形実施が可能である。
例えば、掘削機21、H型鋼12、不要な掘削土などは、既設建築物1の適宜の部位に開設した機材搬出入口から搬出入するようにして良い。
また、増築する地下階が深いときには、1)切梁を設ける、2)逆打ちによる躯体切梁を採用する、などして安全性を高めて所望の深度まで掘削することができる。
また、既設躯体に杭があるときには、それを耐震補強で実績がある噛み合せ継手などを用いる鋼管巻きで補強し、増築部の柱として使用することも可能である。鋼管巻きで補強することとにより、軸力と剪断力に対する耐力を大幅に増大させることが可能であるので、従来工法では基準法を満足することができない、いわゆる既存不適格な場合でも、現行の基準を十分に満足する性能を付与することができる。
また、増築部の質量が大きく、既設杭では支持力が不足するときには、増し杭を行う施工法を併用することも可能である。また、高剛性芯材にスタッドなどのシアキーを設け、後打ちとなる地下外壁と一体化して合成壁構造とすることも可能である。
また、高剛性芯材にスタッドを設けて地下外壁と一体化する合成壁とし、壁厚を薄くすることが可能であるので、増築する地下階の内部空間を大きく取ることができる。また、山留め壁先端が堅固な地盤に到達するときには、本発明の施工方法で形成する山留め壁を杭として用いることも可能である。
本発明の山留め壁の形成方法は、地下階がない既設建築物の下に地下階を増築するための山留め壁を形成するときにも適用することができる。また、底盤の一部の下方に山留め壁を形成するときにも適用することができる。
本発明の山留め壁形成方法を示す説明図である。 図1におけるa−a断面部分の説明図である。 本発明の山留め壁形成方法の工程を示す説明図である。 本発明の山留め壁形成方法において使用する掘削機の説明図であり、(A)は側面図、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)はそれぞれは(A)におけるa−a断面の説明図、b−b断面の説明図、c−c断面の説明図、d−d断面の説明図、e−e断面の説明図である。 従来技術を示す説明図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
符号の説明
1 既設建造物
2 山留め壁
3 スラブ
4 底盤
5、6 掘削機設置穴
7 地山
8 掘削手段挿入穴
9 硬化可能土
10、11 骨材挿入孔
12 H型鋼
13 基礎梁
15 地下外壁
16 掘削予定底面
21 掘削機
22 エンジンモータ
23 支持台
24 支柱
25 支軸
26 掘削手段
27 カッターポスト
28 カッターチェーン
28A カッタービット
29、30、31 プーリ
32 ベルト
33 ジャッキ

Claims (2)

  1. 既設建築物の底盤部に列設した掘削機設置穴を介してその下方の地山に設けた掘削手段挿入穴に、カッターポストとカッターチェーンを備えて構成されるチェーンソー状の掘削手段が支持台に支柱を介して上下動と鉛直面内での回動が可能に垂設された掘削機の前記掘削手段をその長手方向を上下方向に向けた状態で挿入し、隣接する掘削機設置穴下方の掘削手段挿入穴側に掘削手段が回動可能に支持台を底盤部分に固定し、カッターチェーンを動作させた状態で掘削手段を隣接する掘削手段挿入穴側に回動して掘削手段の長手方向を水平方向に変更し、掘削手段を降下若しくは上下動させて隣接する掘削手段挿入穴との間の地山を掘削手段により掘削・攪拌すると共に、掘削手段に設けた噴出口から硬化剤を噴出して掘削・攪拌土と硬化剤とを混合し、掘削手段の長手方向を上下方向に向け直して掘削手段挿入穴と掘削機設置穴とから掘削手段を抜出する工程を繰り返し行って、底盤下方の地山に連続した硬化壁を形成する既設建築物下部への山留め壁形成方法であって、
    前記掘削手段が抜出された掘削機設置穴と、隣接する掘削機設置穴同士の間の底盤に列設された芯材挿入穴とを介して高剛性芯材を掘削・攪拌土と硬化剤との混合部分に挿入して前記硬化壁の壁部に配設し、前記高剛性芯材の頂部を既設建築物と一体にすることを特徴とする既設建築物下部への山留め壁形成方法。
  2. 高剛性芯材がH型鋼であることを特徴とする請求項記載の既設建築物下部への山留め壁形成方法。
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