JP4194715B2 - 6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体 - Google Patents

6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬として有用な6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体に関し、更に詳しくは、例えば精神分裂病、不安及びその関連疾患、うつ病、二極性障害、てんかん等の精神医学的障害、更に薬物依存症、認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋硬直に伴う運動障害、脳虚血、脳不全、脊髄障害、頭部障害等の神経学的疾患の治療及び予防に有用な新規2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、グルタミン酸受容体遺伝子のクローニングが相次ぎ、グルタミン酸受容体には驚異的な数のサブタイプが存在することが明かとなった。現在、グルタミン酸受容体は、受容体がイオンチャネル型構造を持つ「イオノトロピック型」、及び、受容体がG−タンパク質と共役している「メタボトロピック型」の2つに大きく分類されている。更に、イオノトロピック受容体は薬理学的にN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチルイソキサゾ−ル−4−プロピオネート(AMPA)及びカイネ−トの3種類に分類され(Science, 258, 597-603, 1992)、メタボトロピック受容体はタイプ1〜タイプ8の8種類に分類されている(J.Neurosci., 13, 1372-1378, 1993; Neuropharmacol., 34, 1-26, 1995)。
【0003】
また、メタボトロピックグルタミン酸受容体は薬理学的には3つのグループに分類される。この中で、グループ2(mGluR2/mGluR3)は、アデニルサイクラーゼと結合し、サイクリックアデノシン1リン酸(cAMP)のホルスコリン刺激性の蓄積を抑制する(Trends Pharmacol. Sci., 14, 13(1993))ことから、グループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体に作用する化合物は、急性及び慢性の精神医学的疾患及び神経学的疾患の治療又は予防に有効なはずである。そして、グループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体に作用する物質としては、特開平8−188561号公報に(+)−(1S,2S,5R,6S)−2−アミノビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸が、また、EP878,463号公報に(1S*,2S*,5R*,6R*)−2−アミノ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸、(1S*,2S*,4S*,5R*,6R*)−2−アミノ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸及び(1S*,2R*,4S*,5S*,6S*)−2−アミノ−4−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸が開示されている。
【0004】
ところで、フッ素原子は強い電子吸引性と高い脂溶性を付与する傾向を有しており、フッ素原子の導入された化合物は物性を大きく変える。このため、フッ素原子の導入は化合物の吸収性、代謝的安定性及び薬理作用に大きく影響を及ぼす可能性がある。しかし、フッ素原子の導入は決して容易なことではない。実際に、特開平8−188561号公報において、(+)−(1S,2S,5R,6S)−2−アミノビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸へのフッ素原子の導入は全く検討されていない。更に、EP878,463号公報に開示される(1S*,2R*,4S*,5S*,6S*)−2−アミノ−4−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸は、(1S*,2S*,4S*,5R*,6R*)−2−アミノ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の水酸基を通常用いるフッ素化試薬を用いて単にフッ素原子で置換したにすぎない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記した背景技術の現状に鑑み、例えば、精神分裂病、不安及びその関連疾患、うつ病、二極性障害、てんかん等の精神医学的障害、並びに、薬物依存症、認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋硬直に伴う運動障害、脳虚血、脳不全、脊髄障害、頭部障害等の神経学的疾患の治療効果及び予防効果を有する薬物であって、特に経口投与でグループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体に作用することのできる薬物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、(+)−(1S,2S,5R,6S)−2−アミノビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸、(1S*,2S*,5R*,6R*)−2−アミノ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸及び(1S*,2S*,4S*,5R*,6R*)−2−アミノ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の6位にフッ素原子を導入した2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体について鋭意検討した結果、グループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体に経口投与で影響を及ぼすことのできる新規2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、式[I]
【化6】
Figure 0004194715
[式中、
及びRは同一若しくは異なって水素原子、C1−10アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−5アルキル基を示し、
及びY共に水素原子、又は、同一若しくは異なって1−10アルキルチオ基、C3−8シクロアルキルチオ基、C3−8シクロアルキルC1−5アルキルチオ基、C1−5アルコキシ基、C3−8シクロアルコキシ基又はC3−8シクロアルキルC1−5アルコキシ基を示すか、一方が水素原子を示し他方が水酸基、 1−10 アルキルチオ基、C 3−8 シクロアルキルチオ基、C 3−8 シクロアルキルC 1−5 アルキルチオ基、1−5アルコキシ基、C3−8シクロアルコキシ基又はC3−8シクロアルキルC1−5アルコキシ基を示すか、或いは及びYは一緒になって酸素原子若しくは−X(CH)X−基(Xは酸素原子又は硫黄原子:nは2又は3)を示す。]
で表される6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物である。
【0008】
本発明において、C1-10アルキル基とは直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−エチルブチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などである。C3-8シクロアルキル基とは、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などである。C3-8シクロアルキルC1-5アルキル基とは、例えばシクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基などである。C1-10アルキルチオ基とは直鎖状又は分岐鎖状のアルキルチオ基を示し、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、1−エチルプロピルチオ基、ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基、1−エチルブチルチオ基、ヘプチルチオ基、イソヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基などである。C3-8シクロアルキルチオ基とは、例えばシクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基などである。C3-8シクロアルキルC1-5アルキルチオ基とは、例えばシクロプロピルメチルチオ基、シクロブチルメチルチオ基、シクロペンチルメチルチオ基、シクロヘキシルメチルチオ基などである。C1-5アルコキシ基とは直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を示し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、1−エチルプロポキシ基などである。C3-8シクロアルコキシ基とは、例えばシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペントキシ基などである。C3-8シクロアルキルC1-5アルコキシ基とは、例えばシクロプロピルメトキシ基、シクロブチルメトキシ基、シクロプロピルエトキシ基などである。
【0009】
また、本発明における医薬上許容される塩とは、例えば硫酸、塩酸、燐酸などの鉱酸との塩、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマール酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩、トリメチルアミン、メチルアミンなどのアミンとの塩、又はナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどの金属イオンとの塩などを挙げることができる。なお、本発明化合物は、各種の溶媒和物として存在し得るが、医薬としての適応性の面からは水和物が好ましい。
【0010】
式[I]で示される化合物の中でY1及びY2が共に水素原子、一緒になって酸素原子若しくは−X(CH2)nX−基(Xは酸素原子又は硫黄原子:nは2又は3)を示すか、又は共に同一のC1-10アルキルチオ基、C3-8シクロアルキルチオ基、C3-8シクロアルキルC1-5アルキルチオ基、C1-5アルコキシ基、C3-8シクロアルコキシ基若しくはC3-8シクロアルキルC1-5アルコキシ基を示す場合、1、2、5及び6位に不斉炭素原子が存在する。したがって、この場合の本発明化合物は、光学活性体、そのエナンチオマー又はそのラセミ体として存在できる。
【0011】
更に、Y及びYが異なって1−10アルキルチオ基、C3−8シクロアルキルチオ基、C3−8シクロアルキルC1−5アルキルチオ基、C1−5アルコキシ基、C3−8シクロアルコキシ基若しくはC3−8シクロアルキルC1−5アルコキシ基を示すか、又はY及びYの一方が水素原子を示し他方が水酸基、 1−10 アルキルチオ基、C 3−8 シクロアルキルチオ基、C 3−8 シクロアルキルC 1−5 アルキルチオ基、1−5アルコキシ基、C3−8シクロアルコキシ基若しくはC3−8シクロアルキルC1−5アルコキシ基を示す場合、1、2、4、5及び6位に不斉炭素原子が存在する。したがって、この場合の本発明化合物は光学活性体、そのエナンチオマー、そのラセミ体、又は4位のYとYに基づくジアステレオマー混合物として存在できる。
【0012】
式[I]に示す化合物は、式[I’]で示される下記の相対立体配置を有することが好ましい。
【化7】
Figure 0004194715
【0013】
式[I’]において特に好ましい化合物としては、具体的には、(+)又は(−)−(1R*,2S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−置換ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸が挙げられる。
【0014】
式[I]に示す化合物において好ましい別のY1及びY2の組合せは、共に水素原子、一緒になって酸素原子、又は一方が水素原子で他方が水酸基である場合であり、それぞれ、下記の式[II]、[III]及び[IV]で示すことができる。
【化8】
Figure 0004194715
【0015】
【化9】
Figure 0004194715
【0016】
【化10】
Figure 0004194715
【0017】
なお、式[II]、[III]及び[IV]に示す化合物は、それぞれ、式[II’]、[III’]及び[IV’]で示される下記の相対立体配置を有することが更に好ましい。
【化11】
Figure 0004194715
【0018】
【化12】
Figure 0004194715
【0019】
【化13】
Figure 0004194715
【0020】
式[II’]、[III’]及び[IV’]において特に好ましい化合物としては、それぞれ、光学活性体である、(−)−(1R*,2S*,5R*,6R*)−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸、(+)−(1R*,2S*,5S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸、及び、(+)又は(−)−(1R*,2S*,4S*,5S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸が挙げられる。
【0021】
式[I]、[II]、[III]及び[IV](式[I’]、[II’]、[III’]及び[IV’]の場合を含む)においてR1とR2の片方又は両方が水素原子以外を示す場合、すなわちエステル体はグループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体に影響を及ぼさない。しかし、このエステル体は生体内で加水分解され、グループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体に影響を及ぼすカルボン酸に変化する。このように、本発明化合物に含まれるエステル体はプロドラッグとして機能するため、極めて有用な化合物である。
【0022】
【発明の実施の形態】
式[I]の化合物は、以下に示す反応に従って製造することができる。以下の反応式中、R1、R2、Y1、Y2は前記と同様であり、R3及びR4はそれぞれ水素原子を除くR2とR1を示す。X’は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。Y3及びY4は一緒になって−X(CH2)nX−基(Xは酸素原子又は硫黄原子:nは2又は3を示す)を示すか、或いは、同一又は異なってC1-10アルキルチオ基、C3-8シクロアルキルチオ基、C3-8シクロアルキルC1-5アルキルチオ基、C1-5アルコキシ基、C3-8シクロアルコキシ基又はC3-8シクロアルキルC1-5アルコキシ基を示す。Arはフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基等のアリール基を示す。Z1は一般的な水酸基の保護基を示し、Z2は一般的な水酸基の保護基又は水素原子を示し、Z3は一般的なアミノ基の保護基を示す。水酸基及びアミノ基の一般的保護基については、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,THEODORA W. GREENE and PETER G. M. WUTS著に詳細に記載されており、この文献の開示は本明細書に組み込まれる。
【0023】
【化14】
Figure 0004194715
まず、上記反応式に示されるように、フルオロアクリル酸誘導体のZ体(1)、E体(2)又は両者の混合物のカルボン酸部位を活性体とし、ジアゾメタンと反応させた後、金属触媒の存在下、不活性溶媒中にて反応させることによってラセミのケトン体(3)、ラセミのケトン体(4)又は両者のジアステレオマー混合物を得ることができる。
【0024】
ここで、カルボン酸部位の活性体とは、酸ハライド又は混合酸無水物を示す。酸ハライドは、例えばチオニルクロライド、オギザリルクロライド、四塩化炭素−トリフェニルホスフィン等の、カルボン酸の水酸基の一般的なハロゲン化試薬をフルオロアクリル酸誘導体のZ体(1)、E体(2)又は両者の混合物に反応させることによって得ることができる。混合酸無水物は、例えばクロロ炭酸イソブチル、クロロ炭酸エチル等のハロ炭酸エステル、又は例えば無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸等の有機酸無水物を、例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類又は例えば炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基類の存在下又は非存在下、フルオロアクリル酸誘導体のZ体(1)、E体(2)又は両者の混合物に反応させることによって得ることができる。
【0025】
また、金属触媒としては、例えばヨウ化銅(I)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、ビス(アセチルアセトナート)銅(II)、ビス(N−t−ブチルサリチラルジイミダート)銅(II)などの銅試薬、例えば酢酸ロジウム(II)、トリフルオロ酢酸ロジウム(II)などのロジウム試薬、例えば酢酸パラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)などのパラジウム試薬等を使用することができる。不活性溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、例えばトルエン、ベンゼンなどの炭化水素類、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【0026】
ラセミのケトン体(3)又はラセミのケトン体(4)は、例えばセルロースカルバメート誘導体、アミロースカルバメート誘導体などのキラル担体を用いたHPLC法にて直接光学分割することができる。更に、ラセミのケトン体(3)又はラセミのケトン体(4)のエステル部位を通常の加水分解条件にてカルボン酸に導いた後、例えば(+)又は(−)−1−フェニルエチルアミン、(+)又は(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)又は(−)−アラニノール、ブルシン、シンコニジン、シンコニン、キニン、キニジン、デヒドロアビエチルアミン等の光学活性なアミン類との塩とすることによっても光学分割することができる。更に、例えば(+)又は(−)−1−フェニルエチルアミン、(+)又は(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)又は(−)−アラニノールなどの1級又は2級の光学活性アミン類と、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の一般的なアミド化試薬を用いてアミド体として分割することも可能である。
【0027】
【化15】
Figure 0004194715
上記反応式に示されるように、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体として存在するケトン体(3)は、例えば塩基の存在下シリル化剤と反応させてシリルエノールエーテル体とした後、例えば酢酸パラジウム(II)と反応させることによって、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体であるエノン体(5)に導くことができる。エノン体(5)は、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、m−クロロ過安息香酸等の過酸化物と反応させてエポキシ体(6)とした後、例えばチオール類の存在下ジフェニルジセレニド(J. Org.Chem. 59,5179-5183(1994))にて還元し、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体であるケト−アルコール体(7)に導くことができる。
【0028】
ここで、塩基としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類、例えばリチウムジイソプロピルアミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアミド塩基類、例えば水素化ナトリウム等の無機塩基類等を使用することができる。シリル化剤としては、例えば塩化トリメチルシラン、ヨウ化トリメチルシラン、塩化t−ブチルジメチルシラン等のシラン化合物を使用することができる。反応溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の不活性溶媒が挙げられる。
【0029】
光学活性体、エナンチオマー若しくはラセミ体であるケト−アルコール体(7)は、そのまま、あるいは必要に応じてケト−アルコール体(7)の水酸基を一般的な水酸基の保護基で保護して光学活性体、エナンチオマー若しくはラセミ体のケトン体(ケト−アルコール体(7)及びその水酸基保護タイプを併せて式(8)で示す)とした後に、例えば三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等のルイス酸の存在下、例えばアルコール又はチオールと反応させて化合物(9)とすることができる。その後、Z2が一般的な水酸基の保護基の場合は脱保護することによって、Z2が水素原子である光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体のケタール又はチオケタール体(9)に導くことができる。Z2が水素原子であるケタール又はチオケタール体(9)は、水酸基の酸化により光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体である化合物(10)に導かれる。
【0030】
ここで水酸基の保護及び脱保護、並びにカルボニル基のケタール化及びチオケタール化については、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,THEODORA W. GREENE and PETER G. M. WUTS著に記載の方法を用いることができる。また、酸化とは、例えばJones酸化やCollins酸化などに代表されるクロム系酸化剤、例えば過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン等のマンガン系酸化剤、例えばオギザリルクロライド、無水酢酸、五酸化二リン、スルファートリオキサイド−ピリジン、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等を活性化剤として用いるジメチルスルホキシド系酸化剤、例えば硝酸二アンモニウムセリウム、硫酸セリウム等のセリウム系酸化剤、例えば過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム、酸化ルテニウム等のルテニウム系酸化剤、Dess−Martin試薬等(OXIDATIONS IN ORGANIC CHEMISTRY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,WASHINGTON,DC,1990,MILOS HUDLICKY著 参照)による酸化、或いは、例えばパラジウム、白金等を触媒として用いる酸素酸化を挙げることができ、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、例えばトルエン、ベンゼンなどの炭化水素類、例えばジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、例えばアセトン、エチルメチルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、ピリジン、水、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中で行うことができる。
【0031】
ラセミ体の(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は(10)は、例えばセルロースカルバメート誘導体、アミロースカルバメート誘導体などのキラル担体を用いたHPLC法にて直接光学分割することができる。また、ラセミ体の(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は(10)のエステル部位を一般的な塩基性条件下又は酸性条件下のエステル加水分解条件により加水分解してカルボン酸とした後、例えば(+)又は(−)−1−フェニルエチルアミン、(+)又は(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)又は(−)−アラニノール、ブルシン、シンコニジン、シンコニン、キニン、キニジン、デヒドロアビエチルアミン等の光学活性なアミン類との塩にすることによっても光学分割することができる。更に、例えば(+)又は(−)−1−フェニルエチルアミン、(+)又は(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)又は(−)−アラニノールなどの1級又は2級の光学活性アミン類と、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の一般的なアミド化試薬を用いてアミド体として光学分割することも可能である。
【0032】
【化16】
Figure 0004194715
化合物(3)、(7)及び(10)を含むケトン体(11)は本発明化合物の合成のための中間体として有用である。すなわち、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体のケトン体(11)は、ストレッカーアミノ酸合成(Strecker Amino Acid Synthesis)(Ann.,75,27(1850);91,349(1850))、ブッヘラー−ベルグス反応(Bucherer-Bergs Reaction)(J.Prakt.Chem.,140,69(1934))又はこれらの変法によって、ヒダントイン誘導体(12)又はアミノシアニド誘導体(13)とすることができる。
【0033】
ヒダントイン誘導体(12)及びアミノシアニド誘導体(13)は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等を用いた塩基性条件下での加水分解によって、本発明化合物である、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体としての4−置換−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸(14)に導くことができる。
【0034】
すなわち、例えば、ヒダントイン誘導体(12)又はアミノシアニド誘導体(13)のY1とY2が−S(CH2)nS−基を示すか、同一又は異なってC1-10アルキルチオ基、C3-8シクロアルキルチオ基又はC3-8シクロアルキルC1-5アルキルチオ基を示す場合は、化合物(12)又は(13)に対して水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等を用いた塩基性条件での加水分解を施すことによって、本発明化合物(14)の一つである、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体の2−アミノ−6−フルオロ−4,4−ジアルキルチオビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸に導くことができる。一方、ヒダントイン誘導体(12)及びアミノシアニド誘導体(13)は、例えば硫酸等を用いた酸性条件下での加水分解によって、本発明化合物(14)の一つである、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体としての2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸に導くことができる。なお、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体の2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸は、例えば、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体の2−アミノ−6−フルオロ−4,4−ジアルキルチオビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸からのジアルキルチオ基の除去(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,THEODORA W. GREENE and PETER G. M. WUTS著 参照)によっても得ることができる。また、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体の2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸は、例えば光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体の2−アミノ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の水酸基の酸化(OXIDATIONS IN ORGANIC CHEMISTRY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,WASHINGTON,DC,1990,MILOS HUDLICKY著 参照)によっても得ることができる。この際、化合物(14)のカルボキシル基及びアミノ基は必要に応じ保護( Protecting Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene著、 John Wilely & Sons Inc.)参照)することが好ましい。
【0035】
【化17】
Figure 0004194715
式(15)のラセミ体は、例えばセルロースカルバメート誘導体、アミロースカルバメート誘導体などのキラル担体を用いたHPLC法にて直接光学分割することができる。また、ラセミ体の(15)は、一般的な塩基性条件下又は酸性条件下のエステル加水分解条件によりエステルを加水分解してカルボン酸(16)とした後、例えば(+)又は(−)−1−フェニルエチルアミン、(+)又は(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)又は(−)−アラニノール、ブルシン、シンコニジン、シンコニン、キニン、キニジン、デヒドロアビエチルアミン等の光学活性なアミン類との塩にすることによっても光学分割することができる。更に、例えば(+)又は(−)−1−フェニルエチルアミン、(+)又は(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)又は(−)−アラニノールなどの1級又は2級の光学活性アミン類と、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の一般的なアミド化試薬を用いてアミド体として光学分割することも可能である。
【0036】
【化18】
Figure 0004194715
上記反応式に示されるように、本発明化合物である、光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体の4−置換−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸(14)は、R3−OH又はR4−OHで示されるアルコールを用いた一般的な方法にてエステル化するか、若しくは、アミノ基をZ3で示される保護基で保護して式(18)の化合物とした後にR3−X’又はR4−X’で示されるアルキルハライド、もしくはR3−OH又はR4−OHで示されるアルコールを用いた一般的な方法にてエステル化して式(19)で示される化合物に変換し、ついでアミノ基の保護基Z3を除去することによって、式(17)で示される、本発明化合物である光学活性体、エナンチオマー又はラセミ体の4−置換−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸のエステル体に誘導される。
【0037】
ここで、アミノ基の保護、エステル化及びアミノ基の脱保護は一般的方法(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,THEODORA W. GREENE and PETER G. M.WUTS著 参照)で実施することができる。
【0038】
式(17)の化合物がラセミ体である場合は、酸性キラル分割剤を用いた一般的な光学分割方法によって光学分割することができ、式(18)の化合物がラセミ体の場合は塩基性キラル分割剤を用いた一般的な光学分割方法によって光学分割することができる。
【0039】
ここで、酸性キラル分割剤としては、例えば(+)又は(−)−ジ−p−トルオルイル酒石酸、(+)又は(−)−ジベンゾイル酒石酸、(+)又は(−)−酒石酸、(+)又は(−)−マンデル酸、(+)又は(−)−しょうのう酸、又は(+)又は(−)−しょうのうスルホン酸等の光学活性な有機酸類を使用することが可能であり、塩基性分割剤としは、例えば(+)又は(−)−1−フェニルエチルアミン、(+)又は(−)−2−アミノ−1−ブタノール、(+)又は(−)−アラニノール、ブルシン、シンコニジン、シンコニン、キニン、キニジン、デヒドロアビエチルアミン等の光学活性なアミン類を使用することができる。
【0040】
【化19】
Figure 0004194715
ところで、上記反応式に示されるように、フルオロアクリル酸誘導体のZ体(1)、E体(2)又は式(23)で示されるZ体とE体の混合物は、γ−ブチロラクトール(20)にホスホノ酢酸誘導体(21)を反応させて式(22)の化合物とし、更に、水酸基を直接又は水酸基を保護した後にカルボン酸に酸化することによって得ることができる。
【0041】
ここで、水酸基の保護は、一般的な水酸基の保護方法(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,THEODORA W. GREENE and PETER G. M. WUTS著 参照)で実施することができる。また、酸化の具体的な形態として、例えば、Jones酸化、ピリジニウムジクロメート(PDC)などのクロム系酸化剤や例えば過マンガン酸カリウムなどのマンガン系酸化剤を用いた直接的なカルボン酸への酸化、あるいは例えばSwern酸化などのジメチルスルホキシド酸化などにより、アルデヒドとした後、例えば亜塩素酸ナトリウムなどによりカルボン酸へと酸化する段階的な酸化(OXIDATIONS IN ORGANIC CHEMISTRY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,WASHINGTON,DC,1990,MILOS HUDLICKY著 参照)を挙げることができる。
【0042】
また、Z2が例えばt−ブチルジメチルシリル基やt−ブチルジフェニルシリル基等である場合の化合物(22)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等によりZ体とE体の2つの異性体を分離することができる。
【0043】
【化20】
Figure 0004194715
また、上記反応式に示すように、フルオロアクリル酸誘導体のZ体(1)は、式(24)で示されるハライド体にスルホキシド誘導体(25)を反応させて式(26)の化合物とした後、水酸基の保護基Z1を脱保護した後又は水酸基を保護したまま、酸化することによっても得ることができる。
【0044】
ここで、保護基Z1の脱保護は、一般的方法(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,THEODORA W. GREENE and PETER G. M. WUTS著 参照)で実施することができる。また、酸化の具体的な形態としては、例えばJones酸化、ピリジニウムジクロメート(PDC)などのクロム系酸化剤や例えば過マンガン酸カリウムなどのマンガン系酸化剤を用いた直接的なカルボン酸への酸化、あるいは例えばSwern酸化などのジメチルスルホキシド酸化等により、アルデヒドとした後、例えば亜塩素酸ナトリウム等によりカルボン酸へと酸化する段階的な酸化を挙げることができる。
【0045】
本発明化合物は1つ又はそれ以上の医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合せて医薬的製剤とすることができる。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例には、水、糖乳、デキストロース、フラクトース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、でんぷん、ガム、ゼラチン、アルギネート、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルキルパラヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリン、ゴマ油、オリーブ油、大豆油などが含まれる。
【0046】
本発明化合物は、これらの担体、賦形剤又は希釈剤、そして、必要に応じて一般に使用される増量剤、結合剤、崩壊剤、pH調整剤、溶解剤などの添加剤が混合された上で、常用の製剤技術によって錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、液剤、乳剤、懸濁剤、軟膏剤、注射剤、皮膚貼付剤などの経口又は非経口用医薬、特にグループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体作用薬、或いは、精神疾患又は神経疾患の治療乃至予防剤として調製することができる。本発明の化合物は、成人患者に対して0.01〜500mgを1日1回又は数回に分けて経口又は非経口で投与することが可能である。なお、この投与量は治療対象となる疾病の具体的な種類、患者の年齢、体重、症状などにより適宜増減することが可能である。
【0047】
【実施例】
以下、実施例及び試験例を示し本発明を具体的に説明する。ただし、それによって本発明がこれらの例のみに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0049】
(1)窒素気流下、ジエチルホスホノフルオロ酢酸エチル18.9gのテトラヒドロフラン75ml溶液に、氷冷下、1.00Mナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン溶液78.0mlを40分間かけて滴下し、更に45分間撹拌した。この反応溶液に、予め調製したγ−ブチロラクトールの溶液(窒素気流下、−78℃にて、γ−ブチロラクトン6.1gのテトラヒドロフラン75ml溶液に1.01M水素化ジイソブチルアルミニウムのトルエン溶液70.3mlを1.5時間かけて滴下し、この温度のまま、更に1.5時間撹拌した。)を30分間かけて滴下し、滴下終了後、氷浴を外した。反応液を室温にて2時間、更に30℃にて3時間撹拌後、6規定塩酸120mlにてクエンチした。反応液を酢酸エチルにて2回抽出し、有機層を併せて飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=4:1〜2:1)にて精製し、エチル 2−フルオロ−6−ヒドロキシ−2−ヘキセノエートをZ体とE体の約1:3の混合物として7.9g得た。得られた化合物のプロトンNMRのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm);1.34(3H×1/4,t,J=7.1Hz), 1.36(3H×3/4,t,J=7.1Hz), 1.73(2H,quint.,J=6.6Hz), 2.01(1H,br.s), 2.30-2.41(2H×1/4,m), 2.56-2.68(2H×3/4,m), 3.63-3.73(2H,m), 4.30(2H×1/4,q,J=7.1Hz), 4.32(2H×3/4,q,J=7.1Hz), 5.94(1H×3/4,dt,J=21.3,8.7Hz), 6.16(1H×1/4,dt,J=33.2,8.1Hz)
【0050】
(2)エチル 2−フルオロ−6−ヒドロキシ−2−ヘキセノエートのZ体とE体の約1:3の混合物7.8gとt−ブチルジフェニルクロロシラン14.6gをN,N−ジメチルホルムアミド40mlに溶解し、氷冷下、イミダゾール4.5gを加えた。反応液を室温まで昇温後、酢酸エチルにて希釈した。有機層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮した。残渣を カラムクロマトグラフィー(シリカゲル:MSG D−40−60A(洞海化学社製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=50:1)にて幾何異性体を分離・精製し、エチル 2−フルオロ−6−t−ブチルジフェニルシリルオキシ−2(Z)−ヘキセノエート2.4g、及び、エチル2−フルオロ−6−t−ブチルジフェニルシリルオキシ−2(E)−ヘキセノエート7.1gをそれぞれ得た。
【0051】
エチル 2−フルオロ−6−t−ブチルジフェニルシリルオキシ−2(Z)−ヘキセノエートのプロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.05(9H,s), 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 1.61-1.76(2H,m), 2.31-2.43(2H,m), 3.68(2H,t,J=6.2Hz), 4.27(2H,q,J=7.1Hz), 6.14(1H,dt,J=33.4,7.8Hz), 7.33-7.48(6H,m), 7.62-7.70(4H,m)
MS(CI)(Pos)m/e; 415(M++1), 357(M+-57), 337(M+-77,100%)
【0052】
エチル 2−フルオロ−6−t−ブチルジフェニルシリルオキシ−2(E)−ヘキセノエートのプロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.05(9H,s), 1.32(3H,t,J=7.1Hz), 1.61-1.77(2H,m), 2.56-2.69(2H,m), 3.69(2H,t,J=6.3Hz), 4.28(2H,q,J=7.1Hz), 5.92(1H,dt,J=21.8,8.1Hz), 7.33-7.48(6H,m), 7.62-7.70(4H,m)
MS(CI)(Pos)m/e; 415(M++1), 357(M+-57), 337(M+-77,100%)
【0053】
(3)エチル 2−フルオロ−6−t−ブチルジフェニルシリルオキシ−2(Z)−ヘキセノエート2.3gをアセトン12mlに溶解し、氷冷下、8規定Jones試薬9mlを加えた。反応液を室温にて2.5時間撹拌後、氷冷下、反応液に2−プロパノールを加えて過剰の試薬をクエンチした。反応混合物を酢酸エチルにて希釈し、水で洗浄した。水層を酢酸エチルにて抽出し、有機層を併せて水2回及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=3:1)にて精製し、エチル 2−フルオロ−5−カルボキシ−2(Z)−ペンテノエート970mgを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.34(3H,t,J=7.1Hz), 2.46-2.60(4H,m), 4.29(2H,q,J=7.1Hz), 6.03-6.27(1H,m)
MS(CI)(Pos)m/e; 191(M++1,100%)
【0054】
同様にして、エチル 2−フルオロ−5−カルボキシ−2(E)−ペンテノエートを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.36(3H,t,J=7.1Hz), 2.54(2H,t,J=7.3Hz), 2.78-2.90(2H,m), 4.32(2H,q,J=7.1Hz), 5.98(1H,dt,J=20.5,8.2Hz)
MS(CI)(Pos)m/e; 191(M++1), 173(M+-17,100%)
【0055】
(4)エチル 2−フルオロ−5−カルボキシ−2(Z)−ペンテノエート920mgとオギザリルクロライド1.3mlをヘキサン中3時間加熱還流した。反応液を減圧下濃縮し、真空ポンプにて乾燥した。得られた残渣に、氷冷下、過剰量のジアゾメタンのエーテル溶液を滴下後、室温にて1時間撹拌した。反応液を濾過し、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣をベンゼン10mlに溶解し、ビス(N−t−ブチルサリチラルジイミダート)銅(II)40mgのベンゼン120ml溶液に、加熱還流下、30分かけて滴下した。反応液を室温まで冷却し、減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−アセトン=9:1)にて精製し、(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート263mgを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 2.05-2.55(4H,m), 2.59(1H,d,J=6.6Hz), 2.70-2.77(1H,m), 4.30(2H,q,J=7.1Hz)
MS(IonSpray)(Pos)m/e; 187(M++1), 204(M++18), 209(M++23,100%)
【0056】
同様にして、(1RS,5RS,6SR)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.36(3H,t,J=7.1Hz), 2.00-2.80(6H,m), 4.32(2H,q,J=7.1Hz)
MS(IonSpray)(Pos)m/e; 187(M++1,100%)
【0057】
実施例2
(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0058】
(1)60%水素化ナトリウム(油性)3.7gをN,N−ジメチルホルムアミド85mlに懸濁し、氷冷下、これにフェニルスルフィニルフルオロ酢酸エチル19.6gのN,N−ジメチルホルムアミド35ml溶液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、氷冷のまま30分間撹拌し、ついで室温にて30分間撹拌した。氷冷下、1−ブロモ−4−テトラヒドロピラニルオキシブタン20.2gを一度に加えた後、室温にて4時間、95−110℃にて1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、氷中に注ぎ、10%ヘキサン−酢酸エチルにて抽出した。有機層を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=15:1)ついで(シリカゲル:MSG D−40−60A(洞海化学社製)、展開溶媒:ヘキサン−アセトン=20:1)にて精製し、エチル 2−フルオロ−6−テトラヒドロピラニルオキシ−2(Z)−ヘキセノエート7.4gを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 1.46-1.90(8H,m), 2.30-2.41(2H,m), 3.33-3.57(2H,m), 3.72-3.90(2H,m), 4.28(2H,q,J=7.1Hz), 4.57-4.60(1H,m), 6.17(1H,dt,J=33.3,7.8Hz)
MS(CI)(Pos)m/e; 261(M++1), 85(M+-175,100%)
【0059】
(2)実施例1の(3)と同様にして、エチル 2−フルオロ−5−カルボキシ−2(Z)−ペンテノエート4.7gを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.34(3H,t,J=7.1Hz), 2.46-2.60(4H,m), 4.29(2H,q,J=7.1Hz), 6.03-6.27(1H,m)
MS(CI)(Pos)m/e; 191(M++1,100%)
【0060】
(3)実施例1の(4)と同様にして、(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート2.8gを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 2.05-2.55(4H,m), 2.59(1H,d,J=6.6Hz), 2.70-2.77(1H,m), 4.30(2H,q,J=7.1Hz)
MS(IonSpray)(Pos)m/e; 187(M++1), 204(M++18), 209(M++23,100%)
【0061】
実施例3
(1R*,5R*,6R*)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0062】
実施例1の(4)と同様にして得た、(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート919mgをCHIRALPAK AD(ダイセル化学工業、2.0X25cm、Eluent:n−ヘキサン/2−プロパノール=3:1、Flow Rate:5.0ml/min、Temp.:室温、Detect:UV210nm)を用いたHPLCにより分割し、(+)−(1R*,5R*,6R*)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート423mg及び(−)−(1R*,5R*,6R*)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート405mgを得た。
【0063】
(+)−(1R*,5R*,6R*)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 2.05-2.55(4H,m), 2.59(1H,d,J=6.6Hz), 2.70-2.77(1H,m), 4.30(2H,q,J=7.1Hz)
MS(IonSpray)(Pos)m/e; 187(M++1), 204(M++18), 209(M++23,100%)
R=5.65min(CHIRALPAK AD 0.46×25cm, Eluent:n-Hexane/2-Propanol=3:1, Flow rate:1.0mL/min, Temp.;rt., Detect:UV210nm)
[α]D 27=+27.98(c=0.13、CHCl3)
【0064】
(−)−(1R*,5R*,6R*)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 2.05-2.55(4H,m), 2.59(1H,d,J=6.6Hz), 2.70-2.77(1H,m), 4.30(2H,q,J=7.1Hz)
MS(IonSpray)(Pos)m/e; 187(M++1), 204(M++18), 209(M++23,100%)
R=9.13minCHIRALPAK AD 0.46×25cm, Eluent:n-Hexane/2-Propanol=3:1, Flow rate:1.0mL/min, Temp.;rt., Detect:UV210nm)
[α]D 27=−30.33(c=0.16、CHCl3)
【0065】
実施例4
(1RS,2SR,5RS,6RS)−2−スピロ−5´−ヒダントイン−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸の合成
【0066】
(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート256mgをエタノール2.5mlに溶解し、氷冷下、1規定水酸化ナトリウム水溶液1.4mlを滴下し、この温度のまま10分間撹拌した。反応液を1規定塩酸にて酸性(pH 1)とした後、酢酸エチルにて希釈し、飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。水層を酢酸エチルにて2回抽出し、有機層を併せて無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣を水−エタノール(1:1)の混合溶液2mlに溶解し、炭酸アンモニウム796mgとシアン化カリウム277mgを加え55℃で8.5時間撹拌した。反応混合物を氷冷し、濃塩酸を加えて反応液を中和した。イオン交換クロマトグラフィー(AG50W−X8 陽イオン交換樹脂(Bio−Rad)、展開溶媒:水)で精製し、(1RS,2SR,5RS,6RS)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸320mgを得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(DMSO-d6)δ(ppm); 1.49-1.70(1H,m), 1.93-2.40(5H,m), 8.08(1H,s), 10.71(1H,s)
MS(CI)(Pos)m/e; 229(M++1,100%)
【0067】
同様にして下記の化合物を得た。それぞれ、物性データを併せて示す。
(1RS,2SR,5RS,6SR)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸
1H−NMR(DMSO-d6)δ(ppm); 1.80-2.38(6H,m), 7.34(1H,s), 10.74(1H,s)
MS(CI)(Pos)m/e; 229(M++1,100%)
【0068】
(+)−(1R*,2S*,5R*,6R*)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸
1H−NMR(DMSO-d6)δ(ppm); 1.49-1.70(1H,m), 1.93-2.40(5H,m), 8.08(1H,s), 10.71(1H,s)
MS(CI)(Pos)m/e; 229(M++1,100%)
[α]D 25.5=+77.87(c=0.43、1N NaOH)
【0069】
(−)−(1R*,2S*,5R*,6R*)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸
1H−NMR(DMSO-d6)δ(ppm); 1.49-1.70(1H,m), 1.93-2.40(5H,m), 8.08(1H,s), 10.71(1H,s)
MS(CI)(Pos)m/e; 229(M++1,100%)
[α]D 25.5=−77.30(c=0.41、1N NaOH)
【0070】
実施例5
(1RS,2SR,5RS,6RS)−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の合成
【0071】
(1RS,2SR,5RS,6RS)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸200mgを60%硫酸3.0ml中、140℃にて6日間撹拌した。反応溶液を氷冷し、5規定水酸化ナトリウム水溶液にて中和した後、イオン交換クロマトグラフィー(AG50W−X8 陽イオン交換樹脂(Bio−Rad)、展開溶媒:水−50%THF/水−10%ピリジン/水)で精製し、(1RS,2SR,5RS,6RS)−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸を61mg得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm); 2.15-2.28(1H,m), 2.57(1H,dd,J=13.5,8.6Hz), 2.67-2.94(4H,m)
MS(IonSpray)(Nega)m/e; 202(M+-1,100%)
【0072】
同様にして下記の化合物を得た。それぞれ、物性データを併せて示す。
(1RS,2SR,5RS,6SR)−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm); 2.36-2.54(2H,m), 2.58-2.87(4H,m)
MS(IonSpray)(Nega)m/e; 202(M+-1,100%)
【0073】
(−)−(1R*,2S*,5R*,6R*)−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm);2.15-2.28(1H,m), 2.57(1H,dd,J=13.5,8.6Hz), 2.67-2.94(4H,m)
MS(IonSpray)(Nega)m/e; 202(M+-1,100%)
[α]D 26=−58.81(c=0.14、H2O)
【0074】
(+)−(1R*,2S*,5R*,6R*)−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm); 2.15-2.28(1H,m), 2.57(1H,dd,J=13.5,8.6Hz), 2.67-2.94(4H,m)
MS(IonSpray)(Nega)m/e; 202(M+-1,100%)
[α]D 26=+57.49(c=0.16、H2O)
【0075】
実施例6
(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキス−3−エン−6−カルボキシレートの合成
【0076】
窒素雰囲気下、n−ブチルリチウム78ml(1.61Mヘキサン溶液)と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン20.3gから調整したリチウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラヒドロフラン230ml中に、−78℃でテトラヒドロフラン230mlに溶解した(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート19.5gを滴下した。この温度で1時間撹拌した後、クロロトリメチルシラン19.8mlを加え、室温で1.5時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮後、残渣に無水ヘキサンを加え、無機塩を濾別し、濾液を減圧下濃縮した。残渣をアセトニトリル240mlに溶解し、酢酸パラジウム25.9gを加え、室温で一昼夜撹拌した。反応液をジエチルエーテル240mlで希釈し、セライトを用いパラジウムを濾別し、濾液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=9:1〜5:1)にて精製し、(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキス−3−エン−6−カルボキシレート17.1gを得た。プロトンNMRとマススペクトルデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.34(3H,t,J=7.3Hz), 2.78(1H,dt,J=0.6,5.8Hz), 3.22(1H,dd,J=2.9,5.8Hz), 4.31(2H,q,J=7.3Hz), 6.07(1H,dd,J=0.6,5.6Hz), 7.42(1H,ddd,J=0.6,2.9,5.6Hz)
MS(CI)(Pos)m/e; 185(M++1,100%)
【0077】
実施例7
(1RS,3RS,4RS,5SR,6RS)エチル 3,4−エポキシ−6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0078】
(1RS,5RS,6RS)エチル 6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキス−3−エン−6−カルボキシレート16.9gをトルエン100mlに溶解し、70%t−ブチルヒドロペルオキシド水溶液30.6mlと10%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド/メタノール溶液11.5mlを加え、室温で4時間撹拌した。反応液を水中に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出し、有機層を併せて飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=8:1〜6:1)にて精製し、(1RS,3RS,4RS,5SR,6RS)エチル 3,4−エポキシ−6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート13.4gを得た。プロトンNMRとマススペクトルデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.34(3H,t,J=7.3Hz), 2.50(1H,ddt,J=0.8,2.4,6.0Hz), 3.19(1H,dt,J=0.8,6.0Hz), 3.53(1H,dt,J=0.8,2.4Hz), 4.02(1H,tt,J=0.8,2.4Hz), 4.32(2H,q,J=7.3Hz)
MS(EI)(Pos)m/e; 99(M+-101,100%), 200(M+)
【0079】
実施例8
(1RS,4SR,5SR,6RS)エチル 6−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0080】
窒素雰囲気下、N−アセチル−L−システイン23.2g、四ほう酸ナトリウム十水和物54.3g及びジフェニルジセレニド0.7gを脱気した水−エタノール(1:1)混合溶液450mlに懸濁し、テトラヒドロフラン225mlに溶解した(1RS,3RS,4RS,5SR,6RS)エチル 3,4−エポキシ−6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート9.5gを加え、室温で一昼夜、38℃で12時間、85℃で5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、水に注ぎ、ジエチルエーテルで3回抽出し、有機層を併せて無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=3:1〜1:1)にて精製し、(1RS,4SR,5SR,6RS)エチル 6−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート3.9gを得た。プロトンNMRとマススペクトルデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.34(3H,t,J=7.1Hz), 2.05(1H,d,J=5.1Hz), 2.30(1H,dd,J=3.5,19.2Hz), 2.63(1H,dt,J=5.9,19.2Hz), 2.72(1H,d,J=5.9Hz), 2.85(1H,dd,J=2.1,5.9Hz), 4.31(2H,q,J=7.1Hz), 4.76(1H,t,J=5.1Hz)
MS(EI)(Pos)m/e; 129(M+-73,100%), 202(M+)
【0081】
実施例9
(1RS,4SR,5SR,6RS)エチル 6−フルオロ−4−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0082】
(1RS,4SR,5SR,6RS)エチル 6−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート2.8gとt−ブチルジメチルクロロシラン2.5gをN,N−ジメチルホルムアミド14mlに溶解し、氷冷下、イミダゾール1.0gを加え、室温で一昼夜撹拌した。反応液を水に注ぎ、n−ヘキサン−酢酸エチル(1:9)で抽出し、有機層を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=15:1)にて精製し、(1RS,4SR,5SR,6RS)エチル 6−フルオロ−4−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート3.8gを得た。プロトンNMRとマススペクトルデータを示す。 1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 0.11(3H,s), 0.13(3H,s), 0.90(9H,s), 1.33(3H,t,J=7.1Hz), 2.21(1H,dd,J=4.0,19.1Hz), 2.57(1H,dt,J=5.6,19.1Hz), 2.60-2.72(4H,m), 4.31(2H,q,J=7.1Hz), 4.66(1H,d,J=5.6Hz)
MS(CI)(Pos)m/e; 259(M+-57,100%), 317(M++1)
【0083】
実施例10
(1RS,4RS,5RS,6SR)エチル 2,2−エチレンジチオ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0084】
(1RS,4SR,5SR,6RS)エチル 6−フルオロ−4−t−ブチルジメチルシリルオキシ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート3.7gと1,2−エタンジチオール1.2mlをクロロホルム37mlに溶解し、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を滴下し、室温で一昼夜撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=2:1)にて精製し、(1RS,4RS,5RS,6SR)エチル 2,2−エチレンジチオ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート3.2gを得た。プロトンNMRとマススペクトルデータを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.32(3H,t,J=7.1Hz), 2.07(1H,d,J=7.1Hz), 2.38-2.69(4H,m), 3.33-3.45(4H,m), 4.27(2H,q,J=7.1Hz), 4.50(1H,dd,J=5.5,7.1Hz)
MS(EI)(Pos)m/e; 131(M+-147,100%), 278(M+)
【0085】
実施例11
(1RS,5RS,6SR)エチル 4,4−エチレンジチオ−6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0086】
(1RS,4RS,5RS,6SR)エチル 2,2−エチレンジチオ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート3.1gとジシクロヘキシルカルボジイミド9.0gをジメチルスルホキシド116mlに溶解し、ピリジン1.2ml及びトリフルオロ酢酸0.6mlを順次滴下し、室温で一昼夜撹拌した。生じた尿素を濾別し、酢酸エチルで洗浄後、濾液を酢酸エチルで希釈し、水で三回及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=5:1)にて精製し、(1RS,5RS,6SR)エチル 4,4−エチレンジチオ−6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート2.6gを得た。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm); 1.35(3H,t,J=7.1Hz), 2.79(1H,d,J=6.3Hz), 2.86-3.08(2H,m), 3.18(1H,dd,J=1.9,6.3Hz), 3.38-3.53(4H,m), 4.31(2H,q,J=7.1Hz)
MS(EI)(Pos)m/e; 131(M+-145,100%), 276(M+)
【0087】
実施例12
(1R*,2S*,5R*,6S*)−2−スピロ−5'−ヒダントイン− 4,4−エチレンジチオ−6−フルオロ−N−((R)−1−フェニルエチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシアミドの合成
【0088】
(1)(1RS,5RS,6SR)エチル 4,4−エチレンジチオ−6−フルオロ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート1.3gをエタノール5.0mlに溶解し、氷冷下、1規定水酸化ナトリウム水溶液5.0mlを滴下し、この温度のまま15分間撹拌した。反応液を室温に昇温後、炭酸アンモニウム1.1gとシアン化カリウム350mgを加え37℃で3日間撹拌した。反応混合物を氷冷し、濃塩酸を加えて反応液のpHを1に調整した後、エタノール5mlを加え、この温度で1時間撹拌した。生じた結晶を濾別し、エタノール−水(2:1)混合溶液で洗浄後、80℃で乾燥し(1RS,2SR,5RS,6SR)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−4,4−エチレンジチオ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸1.1gを得た。プロトンNMRとマススペクトルデータを示す。
1H−NMR(DMSO-d6)δ(ppm); 2.37-2.50(2H,m), 2.68(1H,dd,J=1.9,6.9Hz), 2.76(1H,dd,J=4.2,15.4Hz), 3.28-3.50(4H,m), 8.10(1H,s), 10.78(1H,s)
MS(ES)(Nega)m/e; 317(M+-1,100%)
【0089】
(2)(1RS,2SR,5RS,6SR)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−4,4−エチレンジチオ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸5.7gと(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン2.6gをジメチルホルムアミド240mlに溶解し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物3.4gと1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩4.1gを氷冷下加え、室温で一夜撹拌した。1規定塩酸に反応溶液を加え、酢酸エチルで4回抽出後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を濾別後、減圧下濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル:MSG D−40−60A(洞海化学社製)、展開溶媒:クロロホルム−メタノール=50:1)に付し、(1R*,2S*,5R*,6S*)−2−スピロ−5'−ヒダントイン− 4,4−エチレンジチオ−6−フルオロ−N−((R)−1−フェニルエチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシアミドの低極性ジアステレオマー(Rf値0.74(TLC:シリカゲル 60 F254(メルク製)、展開溶媒:クロロホルム−メタノール=9:1))3.5gと(1R*,2S*,5R*,6S*)−2−スピロ−5'−ヒダントイン− 4,4−エチレンジチオ−6−フルオロ−N−((R)−1−フェニルエチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシアミドの極性ジアステレオマー(Rf値0.69(TLC:シリカゲル 60 F254(メルク製)、展開溶媒:クロロホルム−メタノール=9:1))3.5gを得た。それぞれの化合物の融点及び比旋光度を示す。
【0090】
低極性ジアステレオマー
m.p. 288−289℃
[α]D 26=+62.55(c=0.21、MeOH)
【0091】
極性ジアステレオマー
m.p. 315−316℃
[α]D 26=+52.58(c=0.24、MeOH)
【0092】
実施例13
(1RS,2SR,5SR,6SR)−2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の合成
【0093】
(1RS,2SR,5RS,6SR)−2−スピロ−5’−ヒダントイン−4,4−エチレンジチオ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸500mgを60%硫酸(W/V%)12ml中、145℃にて4日間撹拌した。反応溶液を氷冷し、5規定水酸化ナトリウム水溶液にて中和した後、イオン交換クロマトグラフィー(AG50W−X8 陽イオン交換樹脂(Bio−Rad)、H+型、展開溶媒:水−50%THF/水−水−10%ピリジン/水)で精製後、得られた結晶をテトラヒドロフラン−水混合溶液で洗浄し、(1RS,2SR,5SR,6SR)−2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸を41mg得た。プロトンNMRとマススペクトルのデータを示す。
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm); 3.16(1H,dd,J=4.6,19.5Hz), 3.45(1H,dd,J=4.6,19.5Hz), 3.46(1H,d,J=6.6Hz), 3.67(1H,d,J=6.6Hz)
MS(ES)(Nega)m/e; 216(M+-1)
【0094】
同様にして、(1R*,2S*,5R*,6S*)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−4,4−エチレンジチオ−6−フルオロ−N−((R)−1−フェニルエチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシアミドの低極性ジアステレオマー及び極性ジアステレオマーより下記化合物を得た。それぞれの化合物の物性データを示す。
【0095】
(−)−(1R*,2S*,5S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
m.p. 175℃(分解)
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm); 3.16(1H,dd,J=4.6,19.5Hz), 3.45(1H,dd,J=4.6,19.5Hz), 3.46(1H,d,J=6.6Hz), 3.67(1H,d,J=6.6Hz)
MS(ES)(Nega)m/e; 216(M+-1)
[α]D 26=−97.01(c=0.16、H2O)
【0096】
(+)−(1R*,2S*,5S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
m.p. 175℃(分解)
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm); 3.16(1H,dd,J=4.6,19.5Hz), 3.45(1H,dd,J=4.6,19.5Hz), 3.46(1H,d,J=6.6Hz), 3.67(1H,d,J=6.6Hz)
MS(ES)(Nega)m/e; 216(M+-1)
[α]D 26=+99.84(c=0.13、H2O)
【0097】
実施例14
(1RS,2SR,5RS,6SR)− 2−アミノ−4,4−エチレンジチオ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の合成
【0098】
(1RS,2SR,5RS,6SR)−2−スピロ−5'−ヒダントイン− 4,4−エチレンジチオ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸120mgを2規定水酸化ナトリウム1.4ml中、1.5日間加熱還流した。反応溶液を放冷した後、イオン交換クロマトグラフィー(AG50W−X8 陽イオン交換樹脂(Bio−Rad)、H+型、展開溶媒:水−50%THF/水−水−10%ピリジン/水)で精製し、(1RS,2SR,5RS,6SR)− 2−アミノ−4,4−エチレンジチオ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸を75mg得た。物性データを示す。
m.p. 230℃(分解)
1H−NMR(TFA-d)δ(ppm); 3.07(1H,dd,J=5.5,16.1Hz), 3.16(1H,d,J=5.5Hz), 3.25(1H,dd,J=2.7,7.1Hz), 3.38-3.51(5H,m)
MS(ES)(Nega)m/e; 292(M+-1,100%)
【0099】
実施例15
(1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)エチル 2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレートの合成
【0100】
(1RS,4SR,5SR,6RS)エチル 6−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート1.3gをエタノール3.7mlに溶解し、氷冷下、1規定水酸化ナトリウム水溶液3.7mlを滴下し、この温度のまま15分間撹拌した。反応液を室温に昇温後、炭酸アンモニウム860mgとシアン化カリウム260mgを加え37℃で3日間撹拌した。反応混合物を氷冷し、濃塩酸を加えて反応液のpHを1に調整した。この溶液を、イオン交換クロマトグラフィー(AG50W−X8 陽イオン交換樹脂(Bio−Rad)、H+型、展開溶媒:水)に付し粗の(1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)−2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸450mgを得た。この(1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)−2−スピロ−5’−ヒダントイン−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸450mg、エタノール90mg及び4−ジメチルアミノピリジン20mgをジメチルホルムアミド3.9mlに溶解し、氷冷下、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩380mgを加え、一昼夜撹拌した。反応液を1規定塩酸に注ぎ、クロロホルムで6回抽出し、有機層を併せて無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:MSG D75−60A(洞海化学社製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=50:1)にて精製し、(1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)エチル 2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート198mgを得た。プロトンNMRとマススペクトルデータを示す。
1H−NMR(DMSO-d6)δ(ppm); 1.21(3H,t,J=7.2), 1.90-2.08(2H,m), 2.26(1H,dd,J=1.8,7.2Hz), 2.45(1H,dd,J=1.8,7.2Hz), 4.17(2H,q,J=7.2Hz), 4.33(1H,dd,J=5.6,8.8Hz), 4.75(1H,d,J=8.8Hz), 8.13(1H,s), 11.00(1H,s)
MS(ES)(Nega)m/e; 271(M+-1,100%)
【0101】
実施例16
(1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)− 2−アミノ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の合成
【0102】
(1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)エチル 2−スピロ−5'−ヒダントイン−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボキシレート140mgを60%硫酸(W/V%)4ml中、145℃にて2.5日間撹拌した。反応溶液を氷冷し、5規定水酸化ナトリウム水溶液にて中和した後、イオン交換クロマトグラフィー(AG50W−X8 陽イオン交換樹脂(Bio−Rad)、H+型、展開溶媒:水−50%THF/水−水−10%ピリジン/水)で精製後、得られた結晶をアセトン−テトラヒドロフラン混合溶液で洗浄し、(1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)− 2−アミノ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸を17mg得た。物性データを示す。
m.p. 220℃(分解)
1H−NMR(pyridine-d6/D2O=1/1)δ(ppm); 2.56-2.75(3H,m), 2.92(1H,dd,J=1.2,6.9), 4.56(1H,d,J=5.4Hz)
MS(ES)(Nega)m/e; 218(M+-1,100%)
【0103】
試験例[被検薬のcAMP蓄積に及ぼす効果]
代謝型グルタメート受容体 mGluR2安定発現CHO細胞を、10%透析馬胎児血清含有ダルベッコ改変イーグル培地[1% Proline、50 units/ml Penicillin、50μg/ml Streptomycin、2mM L-glutamine(用時添加)]を用いて1.26×104cells/well/0.32cm2/150μlの割合で96穴プレートに播種し,37℃、5%CO2下で2日間培養を行った。その後、L-Glutamine free培地に交換し、4時間後に上清を吸引除去し、150μl PBS(+)−IBMX(10mM PBS(−),1mM MgCl2,1mM CaCl2,1mM IBMX)を添加して、20分間、37℃、5% CO2存在下でインキュベーションを行った。再び上清を吸引除去し、60μl 10−5M Forskolin、10−10〜10−4Mの被検体を含有したPBS(+)−IBMXを添加して15分間、37℃で5%CO2存在下インキュベーションを行い、Forskolin刺激cAMP蓄積量に対するアゴニストの抑制効果の検討を行った(コントロールは、Forskolinと化合物無添加の条件とした。(Tanabe et al,Neuron,8,169-179(1992)))。100μlの氷冷エタノールを添加して反応停止し、上清を別のプレートに全量回収した後、エバポレーターで常温乾固し、−20℃で保存した。乾固したサンプルは、cAMP EIA kit(アマシャム社)を用いてcAMP量を定量した。各cAMP量からコントロールの値を差し引いた。10−5M Forskolinで刺激を行ったときのcAMP蓄積を50%抑制する被検薬の濃度をED50値を求めた。結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0004194715
Comp.1: (1RS,2SR,5RS,6RS)−2−アミノ−6−フルオロビ シクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
Comp.2: (−)−(1R*,2S*,5R*,6R*)−2−アミノ−6−フルオロ ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
Comp.3: (1RS,2SR,5SR,6SR)−2−アミノ−6−フルオロ− 4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
Comp.4: (+)−(1R*,2S*,5S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ −4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン 酸
Comp.5: (1RS,2SR,4SR,5SR,6SR)−2−アミノ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6− ジカルボン酸 LY354740:(+)−(1S,2S,5R,6S)−2−アミノビシクロ[3.1. 0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸
DCGIV: (2S,1'R,2'R,3'R)−2−(2',3'−ジカルボキシシク ロプロピル)グリシン
(1S,3R)ACPD:(1S,3R)−1−アミノシクロペンタン−1,3−ジカ ルボン酸
L−CCG−I:(2S,1'S,2'S)−2−(カルボキシシクロプロピル)グリシン
【0104】
【発明の効果】
本発明の6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体は医薬として有用であり、特にメタボトロピックグルタミン酸受容体の作動薬として有用である。したがって、本発明は、例えば精神分裂病、不安及びその関連疾患、うつ病、二極性障害、てんかん等の精神医学的障害、例えば薬物依存症、認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋硬直に伴う運動障害、脳虚血、脳不全、脊髄障害、頭部障害等の神経学的疾患の治療及び予防に使用することができる。

Claims (13)

  1. 式[I]
    Figure 0004194715
    [式[I]中、
    及びRは同一若しくは異なって水素原子、C1−10アルキル基、C3−8シクロアルキル基又はC3−8シクロアルキルC1−5アルキル基を示し、
    及びY共に水素原子、又は、同一若しくは異なって1−10アルキルチオ基、C3−8シクロアルキルチオ基、C3−8シクロアルキルC1−5アルキルチオ基、C1−5アルコキシ基、C3−8シクロアルコキシ基又はC3−8シクロアルキルC1−5アルコキシ基を示すか、一方が水素原子を示し他方が水酸基、 1−10 アルキルチオ基、C 3−8 シクロアルキルチオ基、C 3−8 シクロアルキルC 1−5 アルキルチオ基、1−5アルコキシ基、C3−8シクロアルコキシ基又はC3−8シクロアルキルC1−5アルコキシ基を示すか、或いは及びYは一緒になって酸素原子、−X(CH)X−基(Xは酸素原子又は硫黄原子:nは2又は3)を示す]
    で表される6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  2. 式[I’]
    Figure 0004194715
    [式[I’]中、R1及びR2、並びに、Y1及びY2は前記式[I]の場合と同様である]で表される相対立体配置を有する請求項1記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  3. (+)又は(−)−(1R*,2S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−置換ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸である請求項2記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  4. 式[II’]
    Figure 0004194715
    [式[II’]中、R1及びR2は前記式[I]の場合と同様である]で表される相対立体配置を有する請求項1記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  5. (−)−(1R*,2S*,5R*,6R*)−2−アミノ−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸である請求項4記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  6. 式[III’]
    Figure 0004194715
    [式[III’]中、R1及びR2は前記式[I]の場合と同様である]で表される相対立体配置を有する請求項1記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  7. (+)−(1R*,2S*,5S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−オキソビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸である請求項6記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  8. 式[IV’]
    Figure 0004194715
    [式[IV’]中、R1及びR2は前記式[I]の場合と同様である]で表される相対立体配置を有する請求項1記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  9. (+)又は(−)−(1R*,2S*,4S*,5S*,6S*)−2−アミノ−6−フルオロ−4−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸である請求項8記載の誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
  10. 1つ又はそれ以上の医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わされた請求項1〜9のいずれかに記載の化合物を含有してなる医薬的製剤。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の化合物を有効成分とする医薬。
  12. グループ2メタボトロピックグルタミン酸受容体作用薬である請求項11記載の医薬。
  13. 精神疾患又は神経疾患の治療乃至予防剤である請求項11又は12記載の医薬。
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