JP4193293B2 - 回転ヘッド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録テープに対していわゆるヘリカルスキャンを行うことにより情報信号の記録を行う回転ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転操作される円柱状の回転ドラムとこの回転ドラム上に取付けられた記録ヘッドチップとを有して構成され、該回転ドラムに対して所定のラップ角に亘って巻回されて走行操作される記録テープに対し、情報信号の記録を行う回転ヘッド装置が提案されている。記録テープは、例えば磁気テープであって、回転ドラムに対して、斜めに、すわなち、螺旋(ヘリックス)形状に巻回されることによって、記録ヘッドチップによるいわゆるヘリカルスキャンをなされて、記録トラックを形成される。
【0003】
このような回転ヘッドにおいては、回転ドラム上に互いにアジマス角の異なる複数の記録ヘッドチップを設け、記録トラック同士間のいわゆるガードバンドを無くして、隣接する記録トラックを互いに密接させることにより、情報信号の記録密度を向上させたものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のような回転ヘッド装置において、さらに情報信号の記録密度を向上させ、記録テープの体積あたりの記録可能な情報量を増大させるには、記録波長の短波長化を図ること、記録トラックピッチの幅狭化を図ること、記録テープの薄型化を図ることなどが必要である。
【0005】
これらのうち、記録波長の短波長化及び記録トラックピッチの幅狭化については、再生出力レベルと相反関係にあり、記録波長の短波長化や記録トラックピッチの幅狭化を図ることによって再生出力レベルが低下し、再生信号の質が劣化してしまうという問題がある。そして、記録テープの薄型化については、記録テープを薄型化すると、この記録テープの剛性が低下して走行が不安定となり、信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
さらに、一対の記録ヘッドチップが回転ドラムの中心軸回りの180°を隔てて取付けられている場合においては、回転ドラムの回転精度の影響を受けて、記録テープ上に形成される記録トラックに曲がり(変形)が生ずるという問題がある。
【0007】
このような現状においては、記録テープ上における記録波長は0.4μm程度、記録トラックピッチは7μm程度が最小限界となっている。
【0008】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、再生出力レベルの劣化や記録テープの剛性の低下を招来することなく、記録テープ上における記録波長をより短いものとし、また、記録トラックピッチをより狭いものとすることを可能とする回転ヘッド装置を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、本発明に係る回転ヘッド装置は、下ドラム上に設けられたフランジ上に設けられ、一定速度で送り操作される記録テープが所定のラッピング角に亘って巻回され、当該下ドラムに対して、当該フランジとともに一定速度で回転操作される上ドラムと、上記上ドラムの下面部に取付けられ、記録テープに記録信号を書き込む互いにアジマス角の異なる複数の記録ヘッドチップと、上記上ドラムの下面部に取付けられた磁気抵抗型薄膜ヘッドでなり、記録テープより再生信号を読み出す複数の再生ヘッドチップと、上記上ドラムの上面部に取付けられ、上記再生ヘッドチップにより読み出された再生信号を増幅する電気回路と、上記フランジの下面部及び上記下ドラムの上面部に設けられ、上記フランジ及び上記下ドラムとの間で上記各種信号及び上記電気回路の駆動電力の授受を行うロータリートランスと、上記再生ヘッドチップと上記電気回路とを電気的に接続させる第1の中継ピンと、上記ロータリートランスと上記電気回路とを電気的に接続させる第2の中継ピンと、上記フランジに設けられ、上記ロータリートランスと電気的に接続される端子部と、互いに対向された一対の挟持部で着脱可能に上記第2の中継ピンを挟持して上記第2の中継ピンと着脱可能に電気的に接続されるコネクタ部とを有し、上記ロータリートランスと上記第2の中継ピンとを電気的に接続させるコネクタとを備え、上記ロータリートランスと上記各記録ヘッドチップとの電気的な接続は、上記フランジに設けられ、上記ロータリートランスと電気的に接続されるとともに上記各記録ヘッドチップに圧接させて上記各記録ヘッドチップと着脱可能に電気的に接続される端子板を介して行われ、上記各記録ヘッドチップは、上記上ドラムの下面部の回転軸回りの90°以下の角度範囲に取付けられており、上記記録テープ上に、順次密接して隣接するヘリカルトラックを形成して、上記下ドラムから上記ロータリートランス及び上記端子板を介して供給された記録信号を記録し、上記第1の中継ピンは、上記各再生ヘッドチップによって上記記録テープから読み出した再生信号を上記電気回路へ出力し、上記第2の中継ピンは、上端側が上記電気回路と電気的に接続されるとともに、下端側が上記挟持部間に差し込まれ、当該下端側が着脱可能に上記挟持部により両側より挟み込まれて圧接され、上記コネクタと着脱可能に電気的に接続され、上記下ドラムから上記ロータリートランス及び上記コネクタを介して供給された駆動電力を上記電気回路に電送するとともに、上記電気回路で増幅された上記再生信号を上記コネクタを介してロータリートランスへ出力する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
本発明に係る回転ヘッド装置は、記録テープである磁気テープを記録媒体としてデジタル情報信号の記録再生を行う記録再生装置において、該磁気テープに対し、いわゆるヘリカルスキャンを行って、デジタル情報信号の書き込み及び読出しを行う装置である。
【0013】
この回転ヘッド装置は、図1に示すように、記録再生装置の図示しないシャーシ上に固定して配設される略々円柱状の下ドラム1を有している。この下ドラム1は、例えばアルミニウムの如き金属により形成されている。この下ドラム1の外周面部には、記録再生装置において走行操作される磁気テープをガイドするためのリードが形成されている。磁気テープは、このリードに沿って走行されることにより、下ドラム1の外周面上に、所定角度範囲に亘って、斜めに、すなわち、螺旋(ヘリックス)形状に巻回された状態で走行される。なお、この実施の形態においては、図2に示すように、磁気テープは、下ドラム1の外周面上に、174°に亘って巻回される。
【0014】
下ドラム1の中心部分には、図1に示すように、中心部に回転軸2aを有する軸受け(ダイレクトベアリング)2が、いわゆる焼きばめによって、隙間なく組み付けられている。すなわち、この軸受け2は、回転軸2aを複数の鋼球2cを介して回転可能に支持している外環部2bを、下ドラム1の中心部に形成された孔1aに嵌入されて固定され、回転軸2aを下ドラム1に対して回転可能としている。この回転軸2aは、下ドラム1の上方側及び下方側に突出している。
【0015】
軸受け2の回転軸2aには、下ドラム1の上方側に突出した部分において、略々円盤形状のフランジ3が取付けられている。このフランジ3は、中心部分に孔を有し、この孔に回転軸2aを圧入させ、さらに、この回転軸2aに接着されることにより、該回転軸2aに取付けられている。
【0016】
そして、このフランジ3上には、回転ドラムとなる上ドラム4が取付けられている。この上ドラム4は、アルミニウムの如き金属材料により、下ドラム1と同一径の円柱状に形成されている。この上ドラム4は、下ドラム1に対して同軸状に支持され、フランジ3及び回転軸2aとともに、中心軸回りに回転可能となされている。
【0017】
上ドラム4の下面部には、この上ドラム4とフランジ3との間に位置して、複数の記録ヘッドチップ5が、それぞれネジ6によって取付けられている。この回転ヘッド装置においては、複数の記録ヘッドチップ5は、図3に示すように、上ドラム4において、できるだけ近接されて、すなわち、上ドラム4の回転軸回りの90°以下の角度範囲に取付けられている。この実施の形態においては、記録ヘッドチップ5の数は2個としている。また、この実施の形態においては、記録ヘッドチップ5のなす角度θは、50°程度となっている。
【0018】
そして、上ドラム4の下面部には、複数の再生ヘッドチップ7が、それぞれネジ8によって取付けられている。これら再生ヘッドチップ7は、磁気抵抗型薄膜ヘッド、いわゆるMRヘッドである。この実施の形態においては、再生ヘッドチップ7の数は2個としている。
【0019】
さらに、上ドラム4の上面部、すなわち、記録ヘッドチップ5及び再生ヘッドチップ7が取付けられた面の反対側の面には、図1に示すように、再生ヘッド駆動用及び再生信号増幅用の電気回路9が取付けられている。この電気回路9は、基板10と、この基板10の下面部に取付けられた電子部品群11とから構成されている。すなわち、電子部品群11は、基板10と上ドラム4との間に位置している。この電気回路9は、再生ヘッドチップ7が磁気抵抗型薄膜ヘッドであることによって必要となるものである。
【0020】
そして、下ドラム1とフランジ3との間には、該下ドラム1側と、記録ヘッドチップ5及び電気回路9側との間での、電気信号及び電力の授受を行うためのロータリートランス12が設けられている。このロータリートランス12は、下ドラム1の上面部に固定されたステータ(固定側)コイル板12aと、フランジ3の下面部に接着されたロータ(回転側)コイル板12bとから構成されている。これらステータコイル板12a及びロータコイル板12bは、それぞれ円盤状に形成され、複数の同心円状に形成されたコイル巻回溝を有している。これらコイル巻回溝内には、それぞれ巻線が設けられている。これらステータコイル板12a及びロータコイル板12bは、互いに微小な間隔を隔てて平行に対向され、対応する巻線同士を対向させている。
【0021】
電気回路9の駆動電源は、ロータリートランス12のステータコイル板12a及びロータコイル板12bのそれぞれのうちの電源供給用巻線を介して、電送されて供給される。また、記録ヘッドチップ5へ供給される記録信号及び電気回路9より出力される再生信号は、ロータリートランス12のステータコイル板12a及びロータコイル板12bのそれぞれのうちの情報信号用巻線を介して電送される。
【0022】
上ドラム4及びフランジ3を含む回転体においては、ロータリートランス12のロータコイル板12bの巻線、各記録ヘッドチップ5、各再生ヘッドチップ7及び電気回路9間は、図1及び図3に示すように、端子板13、中継基板(フレキシブル基板)14、基板10上の導体パターン、コネクタ付き端子板15、中継ピン16、コネクタ17を介して、図4に示すように、所定の接続をなされている。端子板13、コネクタ付き端子板15及びコネクタ17は、合成樹脂材料からなる略々リング状の端子板支持部材18とともにアウトサート成型されることによりこの端子板支持部材18により支持されており、端子部分、端子部分及びコネクタ部分、または、コネクタ部分を外方側に臨ませている。端子板支持部材18は、端子板13及びコネクタ付き端子板15の端子部分に対応する透孔を有している。すなわち、これら端子部分は、端子板支持部材18の上方側及び下方側の両方に臨んでいる。この端子板支持部材18は、フランジ3の上面部に貼り付けられ、このフランジ3と上ドラム4との間に位置する。中継基板14は、フランジ3の上面部に貼り付けられており、このフランジ3と端子板支持部材18との間に位置している。
【0023】
各記録ヘッドチップ5は、図4に示すように、それぞれ一対の端子板13,13を介して、中継基板14の所定の導体パターンに接続される。これら端子板13は、図3に示すように、それぞれ2本の端子部を有しており、図5に示すように、上方側に屈曲された一方の端子部が記録ヘッドチップ5の電極部に圧接されて接続され、下方側に屈曲された他方の端子部が中継基板14の所定の導体パターンに接触される。この中継基板14の導体パターンには、ロータコイル板12bの所定の巻線のリード線が半田付けにより接続されている。このような接続により、ロータコイル板12bの所定の巻線のリード線から、各記録ヘッドチップ5に対して、磁気テープへの書き込みを行う情報信号の供給が行われる。
【0024】
この実施の形態においては、記録ヘッドチップ5の数が2個なので、これら記録ヘッドチップ5,5に対応するものとして、端子板13を4枚使用する。
【0025】
また、各再生ヘッドチップ7は、図1及び図3に示すように、それぞれ一対のコネクタ付き端子板15,15及び一対の中継ピン16,16を介して、基板10上の所定の導体パターンに接続され、図4に示すように、電気回路9に接続される。これらコネクタ付き端子板15は、図6及び図7に示すように、それぞれ1本の端子部とコネクタ部とを有しており、上方側に屈曲された端子部が再生ヘッドチップ7の電極部に圧接されて接続される。
【0026】
中継ピン16は、図1に示すように、上ドラム4に取付けられており、上端側が基板10上の所定の導体パターンに接続され、下端側がコネクタ付き端子板15のコネクタ部に圧接されて接続される。コネクタ付き端子板15のコネクタ部は、図8に示すように、互いに対向された一対の挟持部15a,15bからなり、中継ピン16の下端側が該各挟持部間に差し込まれると、図9に示すように、この下端側を両側より挟み込み、該下端側の両側部に該各挟持部を圧接させる。このような接続により、各再生ヘッドチップ7から、磁気テープより読み出した情報信号の電気回路9への入力が行われる。
【0027】
この実施の形態においては、再生ヘッドチップ7の数が2個なので、これら再生ヘッドチップ7,7から電気回路9への入力のためには、コネクタ付き端子板15を4枚、中継ピン16を4本使用する。なお、中継ピン16は、図10及び図11に示すように、2本ずつが1個の合成樹脂製のホルダ16aに支持されている。
【0028】
さらに、基板10上の所定の導体パターンは、図1に示すように、中継ピン16及びコネクタ17を介して、ロータコイル板12bの所定の巻線のリード線に接続されている。すなわち、上端側が基板10上の所定の導体パターンに接続された複数の中継ピン16の下端側は、それぞれコネクタ17に圧接されて接続される。コネクタ17は、図12に示すように、互いに対向された一対の挟持部を有し、中継ピン16の下端側が該各挟持部間に差し込まれると、この下端側を両側より挟み込み、該下端側の両側部に該各挟持部を圧接させる。これらコネクタ17には、ロータコイル板12bの所定の巻線のリード線が半田付けによりそれぞれ接続されている。このような接続により、電気回路9において増幅された情報信号の出力と、該電気回路9への電源供給が行われる。
【0029】
この実施の形態においては、再生ヘッドチップ7の数が2個なので、電気回路9からの出力のためには、中継ピン16を4本、コネクタ17を4個使用する。また、電気回路9への電源供給のためには、中継ピン16を2本、コネクタ17を2個使用する。
【0030】
この回転ヘッド装置においては、上ドラム4をフランジ3から外したときには、各記録ヘッドチップ5、各再生ヘッドチップ7及び各中継ピン16が、該上ドラム4とともにフランジ3より離間される。このとき、各中継ピン16の下端側は、コネクタ付き端子板15のコネクタ部及びコネクタ17より抜き取られる。そして、上ドラム4をフランジ3上に装着したときには、各中継ピン16の下端側は、コネクタ付き端子板15のコネクタ部及びコネクタ17に差し込まれる。このように、この回転ヘッド装置においては、完成後の分解やメインテナンスが容易に行え、かつ、各接続部について高い信頼性が実現されている。
【0031】
また、上ドラム4の回転中において、再生ヘッドチップ7が軸受け2内の潤滑グリス等によってシャーシ及び下ドラム1に対して電気的に浮いてしまう虞れがあるので、該再生ヘッドチップ7を下ドラム1に接地させるために、軸アース部材19が設けられている。この軸アース部材19は、基端側が下ドラム1に接触されて接地されており、先端側を軸受け2の回転軸2aの上端面に接触させている。
【0032】
そして、上ドラム4を回転駆動するためのモータ20が、軸受け2の回転軸2aの下端側、すなわち、上ドラム4の取付け部の反対側に取付けられている。このモータ20は、回転軸2aに取付けられたロータ21と、下ドラム1に取付けられたステータコイル基板22とから構成されている。ロータ21は、透磁性材料により略々円盤状に形成され中心部の透孔に回転軸2aを嵌入させて該回転軸2aに取付けられた基材部を有している。このロータ21は、基材部に取付けられたマグネット23及びヨーク24を有している。このロータ21において、基材部、マグネット23及びヨーク24は、磁気回路を構成している。ステータコイル基板22は、中央部分に透孔を有する円盤形状の基板にステータコイルが取付けられて構成されており、該ステータコイルを、ロータ21の基材部、マグネット23及びヨーク24が構成する磁気回路中に位置させて、下ドラム1に取付けられている。
【0033】
このモータ20においては、ステータコイル基板22のステータコイルに所定の駆動電流が供給されることにより、ロータ21が回転操作される。ロータ21が回転操作されると、回転軸2a及び上ドラム4が、該ロータ21とともに回転操作される。
【0034】
このモータ20においては、ステータコイル基板22は、図1及び図13に示すように、下ドラム1に対して、Cリング25によって取付けられている。このCリング25は、弾性を有する金属材料により、1箇所に欠損を有する円環形状に形成されている。下ドラム1の下端側は、内周側にステータコイル基板22が挿入され得る円筒状となされている。この円筒状の部分の内周部には、図14に示すように、ステータコイル基板22の外周縁部及びCリング25が嵌合される溝部26が全周に亘って円環状に形成されている。この溝部26は、下側の縁部が、下ドラム1の下方側に向けて傾斜された傾斜面(円錐面)となされている。そして、Cリング25は、外周側の下縁部が、溝部26の傾斜面に対応した傾斜面(円錐面)となされている。このCリング25は、自然状態においては、溝部26がなす円環よりも大径の円環をなしている。
【0035】
下ドラム1にステータコイル基板22を取付けるときには、まず、このステータコイル基板22を下ドラム1の下端側の円筒状部分内に挿入し、外周縁部を溝部26内に嵌入させる。このとき、ステータコイル基板22の位相位置(回転位置)は、図15に示すように、このステータコイル基板22の外周部に設けられた突片部27を下ドラム1の下端側に設けられた欠損部28に合致させて嵌合させることにより、位置決めされる。なお、突片部27には、ステータコイル基板22上に設けられたステータコイルに駆動電流を供給するためのフレキシブル基板34が取付けられている。
【0036】
そして、Cリング25は、外力により弾性変形されて溝部26がなす円環よりも小径化された状態で、下ドラム1の下端側の円筒状部分内に挿入され、該外力から開放されることによって自然状態に復帰しようとする力で、該溝部26内に進入する。このとき、Cリング25は、傾斜面を溝部26の傾斜面に当接させた状態で外方側に拡径しようとするので、下ドラム1に対して上方側に移動しようとすることとなり、ステータコイル基板22を溝部26の上側の縁部に押し付ける。このように、Cリング25がステータコイル基板22を上方側に押し付けることにより、ネジ止めにより固定する場合に比して下ドラム1の歪みや変形が少なく、また、構成の小型化が可能でありながら、該ステータコイル基板22の正確な位置決めを行うことができる。
【0037】
この回転ヘッド装置においては、記録再生装置によって磁気テープが下ドラム1及び上ドラム4の外周面を経て走行され、該上ドラム4が回転操作されることにより、各記録ヘッドチップ5は、図16に示すように、該磁気テープ上に、順次密接して隣接するヘリカルトラックTr0、Tr1・・・を形成してデジタル信号を記録する。
【0038】
ところで、この回転ヘッド装置においては、電気回路9上に取り付けてある回転バランス調整用リング30とモータ20のロータ21の2箇所において、回転バランスを調整し、上ドラム4の回転に伴う振動の低減を図っている。また、上ドラム4においては、各記録ヘッドチップ5の反対側となる位置に、バランスウェイト29が取付けられている。
【0039】
回転バランス調整用リング30は、合成樹脂の如き材料により、図1及び図17に示すように、複数の孔31を有して形成されている。この回転バランス調整用リング30においては、孔31に金属球32を圧入することによって、半田や接着材を付着させることによってバランス調整を行っていた従来の回転ヘッド装置におけるよりも容易に、回転バランスを適切な値に調整することができる。例えば、金属球32としてφ1mmの鋼球を使用した場合には、その重量wは1個あたり4mgであり、それによる回転バランス調整感度eは、以下の式で示される。
【0040】
e=r・w/W
ここで、rは金属球32が圧入された位置の半径、Wは回転体全体の重量を示す。r=4.5mm、W=12gのときの回転バランス調整感度eは、鋼球1個あたり、3μmとなる。この調整感度は、半径rと重量wを選択することによって、任意に設定することができる。また、重量の異なる複数種類の球体が挿入できるようにすれば、より高精度なバランス調整を行うことができる。
【0041】
回転バランス調整用リング30の孔31は、貫通孔であるが、電気回路9の基板10によって、底部を閉蓋されている。すなわち、基板10は、孔31に金属球32が圧入されたときのこの金属球32の受け板を兼ねている。
【0042】
この回転ヘッド装置においては、上述のような構成を有し、特に、複数の記録ヘッドチップ5が上ドラム4においてできるだけ近接されて、すなわち、上ドラム4の回転軸回りの90°以下の角度範囲に取付けられているため、上ドラム4の偏芯の各記録ヘッドチップ5に対する影響の違いが少ないため、磁気テープ上における記録トラックピッチを4μm程度とし、最短記録波長を0.28μm程度として、上ドラムの回転数が毎分6000回転以上において記録周波数を23MHz程度とすることが可能となっている。
【0043】
なお、回転バランスの調整は、図18及び図19に示すように、電気回路9上に複数の回転バランス調整用端子33を円環状に配列させて配設しておき、これら回転バランス調整用端子33の一部のものを切断することによっても、行うことができる。この場合の調整感度については、上述の金属球を使用する場合と同様に、回転バランス調整用端子33の長さや太さを設定することによって、任意に設定することができる。さらに、回転バランス調整用端子33を切断する長さを変えることによって、より高精度なバランス調整が可能となる。この場合においては、電気回路9の基板10は、回転バランス調整用端子33の支持板を兼ねている。
【0044】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る回転ヘッド装置は、一定速度で送り操作される記録テープが所定のラッピング角に亘って巻回され、一定速度で回転操作される上ドラムが下ドラム上に設けられた回転ドラムと、上ドラムの下面部に取付けられた複数の記録ヘッドチップと、上ドラムの下面部に取付けられた磁気抵抗型薄膜ヘッドでなる複数の再生ヘッドチップと、上ドラムの上面部に取付けられた電気回路と、上ドラムの下面部及び下ドラムの上面部に設けられたロータリートランスと、再生ヘッドチップと電気回路とを電気的に接続させるとともにロータリートランスと電気回路とを電気的に接続させる中継ピンとを備えるものであって、各記録ヘッドチップが、回転ドラムの回転軸回りの90°以下の角度範囲に取付けられている。
【0045】
そのため、この回転ヘッド装置においては、回転ドラムの偏芯の各記録ヘッドチップに対する影響の違いが少なく、記録テープ上における記録波長を短くし、また、記録トラックピッチを狭くすることができる。
【0046】
すなわち、本発明に係る回転ヘッド装置は、再生出力レベルの劣化や記録テープの剛性の低下を招来することなく、記録テープ上における記録波長をより短いものとし、また、記録トラックピッチをより狭いものとすることを可能とする。
また、本発明に係る回転ヘッド装置は、中継ピンによって、下ドラムからロータリートランスを介して供給された駆動電力を電気回路に電送するとともに、各再生ヘッドチップによって記録テープから読み出した再生信号を電気回路へ出力し、電気回路で増幅された再生信号を上ドラムの下面部に設けられたロータリートランスへ出力することができる。
また、本発明に係る回転ヘッド装置は、各記録ヘッドチップ、各再生ヘッドチップ及び各中継ピンを、上ドラムとともにフランジより離間させ、このとき、各中継ピンの下端側を、コネクタより抜き取ることで、上ドラムをフランジから外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転ヘッド装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】上記回転ヘッド装置に記録テープが巻回された状態を示す平面図である。
【図3】上記回転ヘッド装置の要部の構成を示す平面図である。
【図4】上記回転ヘッド装置における電気的接続を示す配線図である。
【図5】上記回転ヘッド装置における端子板の形状を示す側面図である。
【図6】上記回転ヘッド装置におけるコネクタ付き端子板の形状を示す側面図である。
【図7】上記回転ヘッド装置におけるコネクタ付き端子板の形状を示す平面図である。
【図8】上記回転ヘッド装置におけるコネクタ付き端子板のコネクタ部の形状を示す斜視図である。
【図9】上記コネクタ部に中継ピンが挿入された状態を示す斜視図である。
【図10】上記回転ヘッド装置における中継ピンの形状を示す側面図である。
【図11】上記回転ヘッド装置における中継ピンの形状を示す平面図である。
【図12】上記回転ヘッド装置におけるコネクタの形状を示す平面図である。
【図13】上記回転ヘッド装置の構成を示す底面図である。
【図14】上記回転ヘッド装置におけるモータのステータコイル基板の取付け部分の構成を示す拡大縦断面図である。
【図15】上記回転ヘッド装置におけるモータのステータコイル基板の取付け部分の構成を示す拡大底面図である。
【図16】上記回転ヘッド装置により記録テープ上に形成される記録トラックの状態を示す平面図である。
【図17】上記回転ヘッド装置の構成を示す平面図である。
【図18】上記回転ヘッド装置の構成の他の形態を示す平面図である。
【図19】上記回転ヘッド装置の構成の他の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 下ドラム、2 軸受け、3 フランジ、4 上ドラム、5 記録ヘッドチップ、7 再生ヘッドチップ、9 電気回路、10 基板、11 電子部品群、12 ロータリーエンコーダ、13、端子板、14 中継基板、15 コネクタ付き端子板、16 中継ピン、17 コネクタ、18 端子板支持部材、20 モータ、21 ロータ、22 ステータコイル基板、25 Cリング、30 回転バランス調整用リング、32 金属球、33 回転バランス調整用端子
Claims (1)
- 下ドラム上に設けられたフランジ上に設けられ、一定速度で送り操作される記録テープが所定のラッピング角に亘って巻回され、当該下ドラムに対して、当該フランジとともに一定速度で回転操作される上ドラムと、
上記上ドラムの下面部に取付けられ、記録テープに記録信号を書き込む互いにアジマス角の異なる複数の記録ヘッドチップと、
上記上ドラムの下面部に取付けられた磁気抵抗型薄膜ヘッドでなり、記録テープより再生信号を読み出す複数の再生ヘッドチップと、
上記上ドラムの上面部に取付けられ、上記再生ヘッドチップにより読み出された再生信号を増幅する電気回路と、
上記フランジの下面部及び上記下ドラムの上面部に設けられ、上記フランジ及び上記下ドラムとの間で上記各種信号及び上記電気回路の駆動電力の授受を行うロータリートランスと、
上記再生ヘッドチップと上記電気回路とを電気的に接続させる第1の中継ピンと、
上記ロータリートランスと上記電気回路とを電気的に接続させる第2の中継ピンと、
上記フランジに設けられ、上記ロータリートランスと電気的に接続される端子部と、互いに対向された一対の挟持部で着脱可能に上記第2の中継ピンを挟持して上記第2の中継ピンと着脱可能に電気的に接続されるコネクタ部とを有し、上記ロータリートランスと上記第2の中継ピンとを電気的に接続させるコネクタとを備え、
上記ロータリートランスと上記各記録ヘッドチップとの電気的な接続は、上記フランジに設けられ、上記ロータリートランスと電気的に接続されるとともに上記各記録ヘッドチップに圧接させて上記各記録ヘッドチップと着脱可能に電気的に接続される端子板を介して行われ、
上記各記録ヘッドチップは、上記上ドラムの下面部の回転軸回りの90°以下の角度範囲に取付けられており、上記記録テープ上に、順次密接して隣接するヘリカルトラックを形成して、上記下ドラムから上記ロータリートランス及び上記端子板を介して供給された記録信号を記録し、
上記第1の中継ピンは、上記各再生ヘッドチップによって上記記録テープから読み出した再生信号を上記電気回路へ出力し、
上記第2の中継ピンは、上端側が上記電気回路と電気的に接続されるとともに、下端側が上記挟持部間に差し込まれ、当該下端側が着脱可能に上記挟持部により両側より挟み込まれて圧接され、上記コネクタと着脱可能に電気的に接続され、上記下ドラムから上記ロータリートランス及び上記コネクタを介して供給された駆動電力を上記電気回路に電送するとともに、上記電気回路で増幅された上記再生信号を上記コネクタを介してロータリートランスへ出力する回転ヘッド装置。
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