JP4192676B2 - 無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)のように複数の無線局間で相互に通信を行なう無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、端末同士が非同期で直接通信(ランダム・アクセス)を行なうことにより無線ネットワークが運営される無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、制御局となる装置を特に配置せずにアドホック(Ad−hoc)通信により無線ネットワークが構築される無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、各通信局のトラフィックやネットワーク全体のスループットを考慮して新規の通信局を参入させる無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
【0003】
【従来の技術】
複数のコンピュータを接続してLANを構成することにより、ファイルやデータなどの情報の共有化、プリンタなどの周辺機器の共有化を図ったり、電子メールやデータ・コンテンツの転送などの情報の交換を行なったりすることができる。従来は有線でLAN接続することが一般的であったが、この場合、回線敷設工事が必要であり、手軽にネットワークを構築することが難しく、LAN構築後も、機器の移動範囲がケーブル長によって制限されるため、不便であった。
【0004】
有線方式によるLAN配線からユーザを解放するシステムとして、無線LANが注目されている。無線LANによれば、オフィスなどの作業空間において、有線ケーブルの大半を省略することができるので、パーソナル・コンピュータ(PC)などの通信端末を比較的容易に移動させることができる。近年では、無線LANシステムの高速化、低価格化に伴い、その需要が著しく増加してきている。特に最近では、人の身の回りに存在する複数の電子機器間で小規模な無線ネットワークを構築して情報通信を行なうために、パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)の導入の検討が行なわれている。
【0005】
例えば、2.4GHz帯や、5GHz帯など、監督官庁の免許が不要な周波数帯域を利用して、異なった無線通信システムが規定されている。無線ネットワークに関する標準的な規格の1つにIEEE(The Institute ofElectrical and Electronics Engineers)802.11やIEEE802.15.3を挙げることができる。IEEE802.11規格については、無線通信方式や使用する周波数帯域の違いなどにより、IEEE802.11a規格、IEEE802.11b規格‥‥などの各種無線通信方式が存在する。
【0006】
また、最近では、「ウルトラ・ワイド・バンド(UWB)通信」と呼ばれる、きわめて微弱なインパルス列に情報を載せて無線通信を行なう方式が、近距離超高速伝送を実現する無線通信システムとして注目され、その実用化が期待されている。
【0007】
UWB伝送方式には、DSの情報信号の拡散速度を極限まで高くしたDS−UWB方式と、数100ピコ秒程度の非常に短い周期のインパルス信号列を用いて情報信号を構成して、この信号列の送受信を行なうインパルス−UWB方式など、様々な物理的信号形式の利用が検討されている。どの方式も例えば3GHzから10GHzという超高帯域な周波数帯域を利用し、この周波数帯域内に例えば拡散処理をして送受信を行なうことにより高速データ伝送を実現する。その占有帯域幅は、占有帯域幅をその中心周波数(例えば1GHz〜10GHz)で割った値がほぼ1になるようなGHzオーダの帯域であり、いわゆるW−CDMAやcdma2000方式、並びにSS(Spread Spectrum)やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を用いた無線LANにおいて通常使用される帯域幅と比較しても超広帯域なものとなっている。
【0008】
例えば、IEEE802.15.3の標準化作業において、例えばウルトラ・ワイド・バンド無線通信を行なう無線通信装置の間でピコネットを形成して通信を行なう方法が規格化されつつある。
【0009】
無線技術を用いてローカル・エリア・ネットワークを構成するために、エリア内に「アクセス・ポイント」又は「コーディネータ」と呼ばれる制御局となる装置を1台設けて、この制御局の統括的な制御下でネットワークを形成する方法が一般的に用いられている。
【0010】
アクセス・ポイントを配置した無線ネットワークでは、ある通信装置から情報伝送を行なう場合に、まずその情報伝送に必要な帯域をアクセス・ポイントに予約し、他の通信装置における情報伝送と衝突が生じないように伝送路の利用を行なうという、帯域予約に基づくアクセス制御方法が広く採用されている。すなわち、アクセス・ポイントを配置することによって、無線ネットワーク内の通信装置が互いに同期をとるという同期的な無線通信を行なう。
【0011】
ところが、アクセス・ポイントが存在する無線通信システムで、送信側と受信側の通信装置間で非同期通信を行なう場合には、必ずアクセス・ポイントを介した無線通信が必要になるため、伝送路の利用効率が半減してしまうという問題がある。
【0012】
これに対し、無線ネットワークを構成する他の方法として、端末同士が直接非同期的に無線通信を行なう「アドホック(Ad−hoc)通信」が考案されている。とりわけ近隣に位置する比較的少数のクライアントで構成される小規模無線ネットワークにおいては、特定のアクセス・ポイントを利用せずに、任意の端末同士が直接非同期の無線通信を行なうことができるアドホック通信が適当であると思料される。
【0013】
ここで、IEEE802.11を例にとって、従来の無線ネットワーキングの詳細について説明する。
【0014】
IEEE802.11におけるネットワーキングは、BSS(Basic Service Set)の概念に基づいている。BSSは、AP(Access Point:制御局)のようなマスタが存在するインフラ・モードで定義されるBSSと、複数のMT(Mobile Terminal:移動局)のみにより構成されるアドホック・モードで定義されるIBSS(IndependentBSS)の2種類で構成される。
【0015】
インフラ・モード:
インフラ・モード時のIEEE802.11の動作について、図26を参照しながら説明する。インフラ・モードのBSSにおいては、無線通信システム内にコーディネイションを行なうAPが必須である。
【0016】
APは、自局周辺で電波の到達する範囲をBSSと1つにまとめ、いわゆるセルラ・システムで言うところの「セル」を構成する。AP近隣に存在するMTは、APに収容され、BSSのメンバとしてネットワークに参入する。すなわち、APは適当な時間間隔でビーコンと呼ばれる制御信号を送信し、このビーコンを受信可能であるMTはAPが近隣に存在することを認識し、さらにAPとの間でコネクション確立を行なう。
【0017】
図26に示す例では、通信局STA0がAPとして動作し、他の通信局STA1並びSTA2がMTとして動作している。ここで、APとしての通信局STA0は、同図右側のチャートに記したように、一定の時間間隔でビーコン(Beacon)を送信する。次回のビーコンの送信時刻は、ターゲット・ビーコン送信時刻(TBTT:Target Beacon Transmit Time)というパラメータの形式によりビーコン内で報知されている。そして、時刻がTBTTに到来すると、APはビーコン送信手順を動作させている。
【0018】
また、周辺MTは、ビーコンを受信することにより、内部のTBTTフィールドをデコードすることにより次回のビーコン送信時刻を認識することが可能であるから、場合によっては(受信の必要がない場合には)、次回あるいは複数回先のTBTTまで受信機の電源を落としスリープ状態に入ることもある。
【0019】
アドホック・モード:
もう一方のアドホック・モード時のIEEE802.11の動作について、図27並びに図28を参照しながら説明する。
【0020】
アドホック・モードのIBSSにおいては、MTは複数のMT同士でネゴシエーションを行なった後に自律的にIBSSを定義する。IBSSが定義されると、MT群は、ネゴシエーションの末に、一定間隔毎にTBTTを定める。各MTは自局内のクロックを参照することによりTBTTが到来したことを認識すると、ランダム時間の遅延の後、未だ誰もビーコンを送信していないと認識した場合にはビーコンを送信する。
【0021】
図27に示すでは、2台のMTがIBBSを構成する様子を示している。この場合、ビーコンはIBSSに属するいずれか一方のMTが、TBTTが訪れる毎にビーコンを送信することになる。また、ビーコンが衝突する場合も存在している。
【0022】
また、IBSSにおいても、MTは必要に応じて送受信機の電源を落とすスリープ状態に入ることがある。図28には、この場合の信号送受信手順について示している。
【0023】
IEEE802.11においては、IBSSでスリープ・モードが適用されている場合には、TBTTからしばらくの時間帯がATIM(Announcement Traffic Indication Message) Windowとして定義されている。ATIM Windowの時間帯は、IBSSに属するすべてのMTは受信処理を動作させている。この時間帯であれば、基本的にはスリープ・モードで動作しているMTも受信が可能である。
【0024】
各MTは、自局が誰か宛ての情報を有している場合には、このATIM Windowの時間帯においてビーコンが送信された後に、上記の誰か宛にATIMパケットを送信することにより、自局が上記の誰か宛ての情報を保持していることを受信側に通達する。ATIMパケットを受信したMTは、ATIMパケットを送信した局からの受信が終了するまで、受信機を動作させておく。
【0025】
図28に示す例では、STA1、STA2、STA3の3台のMTがIBSS内に存在している。同図において、TBTTに到来すると、STA1、STA2、STA3の各MTは、ランダム時間にわたりメディア状態を監視しながらバックオフのタイマを動作させる。図示の例では、STA1のタイマが最も早期に消滅し、STA1がビーコンを送信した場合を示している。STA1がビーコンを送信したため、これを受信したSTA2並びにSTA3はビーコンを送信しない。
【0026】
また、図28に示す例では、STA1がSTA2宛ての送信情報を保持しており、且つ、STA2がSTA3への送信情報を保持している。このとき、STA1とSTA2は、ビーコンを送信/受信した後に、再度ランダム時間にわたり各々メディア状態を監視しながらバックオフのタイマを動作させる。図示の例では、STA2のタイマが先に消滅したため、まずSTA2からATIMメッセージがSTA3に宛てて送信される。STA3は、ATIMメッセージを受信すると、受信した旨をACK(Acknowledge)パケットを送信することによりSTA2にフィードバックする。STA3からのACKが送信し終えると、STA1はさらにランダム時間にわたり各々メディア状態を監視しながらバックオフのタイマを動作させる。そして、タイマが消滅すると、STA1はATIMパケットをSTA2に宛てて送信する。STA2はこれを受信した旨のACKパケットを返送することによりSTA1にフィードバックする。
【0027】
これらATIMパケットとACKパケットのやりとりがATIM Window内で行なわれると、その後の区間においても、STA3はSTA2からの情報を受信するために受信機を動作させ、STA2はSTA1からの情報を受信するために受信機を動作させる。
【0028】
上記の手順において、ATIM Window内でATIMパケットを受信しない、又は誰宛ての送信情報も保持していない通信局は、次のTBTTまで送受信機の電源を落とし、消費電力を削減することが可能となる。
【0029】
ところで、パーソナル・コンピュータ(PC)などの情報機器が普及し、オフィス内に多数の機器が混在する作業環境下では、通信局が散乱し、複数のネットワークが重なり合って構築されていることが想定される。このような状況下では、端末同士の通信が競合しないようにアクセス制御が必要とされている。
【0030】
通信要求がランダム的でバースト性の高いパケット通信などでは、複数の端末局が同一の周波数チャネルを共有するチャネル共有方式が多く採用されている。このチャネル共有方式では、端末局からの通信要求がランダム的に行なわれるため、複数の端末局からの信号が衝突(すなわち、同一時間帯での送信)するという事態が起き易く、通信品質を劣化させてしまう。衝突を回避するための方法として、比較的単純なメカニズムで構成することができるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance:キャリア検出多重接続/衝突回避)方式が幅広く採用されている。
【0031】
CSMA/CD方式は、自ら情報送信した信号を受信することで他の通信装置の情報送信との衝突の有無を検出する方式であり(Collision Detection:衝突検出)、主に有線通信において採用されている。これに対し、無線通信では自ら情報送信した信号を受信することが困難であることから、CDMA/CA方式により、他の通信装置の情報送信がないことを確認してから、自らの情報送信を開始することによって、衝突を回避する。CSMA/CAに基づくアクセス制御方式によれば、同じ無線伝送路を複数の端末が共有して、互いに通信することができる。
【0032】
上述したアドホック通信システムにおいても、自己の送信型の送信を衝突しないことを検出するためにCSMA/CAに基づくアクセス手順に従い直接非同期的に情報を伝送する方式が適用される。
【0033】
他方、複数の通信局でネットワークが構成される場合、一部の通信局にトラフィックが集中するという現象が発生することがある。例えば、自己の通信範囲内により多くの通信局を収容する通信局や、他の通信局からリクエストを受ける機会が多い通信局においては、トラフィックが集中し易いと考えられる。
【0034】
このような場合、ランダム・アクセスに基づいて各通信局に均等若しくは任意に通信の機会を与えると、トラフィックが集中している機器に対して十分な送信時間が与えられなくなり、ネットワーク全体としてはスループットが低下してしまう可能性がある。
【0035】
CSMA/CA方式の無線ネットワーク上で送信優先度の機能を提案しているものもある(例えば、特許文献1を参照のこと)。すなわち、無線データ通信装置のバッファに蓄積されるパケット量に応じて送信優先度を高めることによって、バッファ溢れや伝送速度が低下するのを回避するようになっている。しかしながら、CSMA/CA方式の無線ネットワークではそもそも優先送信区間が設定されていないため、パケット・フィルタやバッファ管理などの機構が別途必要にとなる。
【0036】
【特許文献】
特開平9−205431号公報
【0037】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、制御局となる装置を特に配置せずにアドホック通信により無線ネットワークを好適に構築することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0038】
本発明のさらなる目的は、制御局を配置しないアドホック通信環境下において、各通信局のトラフィックやネットワーク全体のスループットを考慮して新規の通信局を参入させる優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【0039】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、制御局を配置せずに複数の無線通信装置によりアドホック通信に基づくネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、他の通信局から受信したビーコン情報とアプリケーション情報に基づいてビーコン送信位置を決定して、所定のフレーム周期でビーコンを送出する、
ことを特徴とする無線通信システムである。
【0040】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0041】
本発明に係る無線通信システムにおいては、コーディネータを特に配置しない。各通信局はビーコン情報を報知することにより、近隣(すなわち通信範囲内)の他の通信局に自己の存在を知らしめるとともに、ネットワーク構成を通知する。また、ある通信局の通信範囲に新規に参入する通信局は、ビーコン信号を受信することにより、通信範囲に突入したことを検知するとともに、ビーコンに記載されている情報を解読することによりネットワーク構成を知ることができる。
【0042】
周辺に通信局がいない場合、通信局は適当なタイミングでビーコンを送信し始めることができる。以降、通信範囲内に新規に参入する通信局は、既存のビーコン配置と衝突しないように、自己のビーコン送信タイミングを設定する。このとき、各通信局はビーコン送信の直後に優先利用領域を獲得することから、既存の通信局が設定したビーコン間隔のほぼ真中のタイミングで新規参入局のビーコン送信タイミングを順次設定していくというアルゴリズムに従って、ビーコン配置が行なわれる。
【0043】
各通信局は、自己のビーコン受信タイミングをビーコン中の近隣ビーコン情報フィールドに記載し、自己のビーコン受信タイミングと受信ビーコン中の近隣ビーコン情報フィールド(NBOI:Neighboring Beacon Offset Information)の記載に基づいてフレーム周期内で近隣に存在する通信局のビーコン配置に関する隣接局リストを作成してネットワークを管理する。
【0044】
NBOIフィールドの記述に基づくビーコンの衝突回避機能により、隠れ端末すなわち2つ先の隣接局のビーコン位置を把握しビーコンの衝突を回避することができる。
【0045】
ここで、複数の通信局でネットワークが構成される場合、一部の通信局にトラフィックが集中するという現象が発生することがある。例えば、自己の通信範囲内により多くの通信局を収容する通信局や、他の通信局からリクエストを受ける機会が多い通信局においては、トラフィックが集中し易いと考えられる。このため、ネットワークに新規の通信局が参入してくる際に、スーパーフレーム周期内で均等若しくは任意の場所にそのビーコン位置を逐次配置していく場合、自己のビーコン位置と次のビーコン位置との間に優先利用領域が確保されるという仕組みにおいては、トラフィックが集中している機器に対して十分な送信時間が与えられなくなる可能性がある。そして、ネットワーク全体としてはスループットが低下してしまう可能性がある。
【0046】
そこで、本発明係る無線通信システムにおいては、新規の通信局がネットワークに参入する際、通信局間のトポロジや通信局が持つバッファ・サイズ、伝送能力などのアプリケーション情報を考慮することによって、ビーコン送出時刻又はタイミングを決定し、同時に通信局へ割り当てる優先送信時間を可変にすることとした。
【0047】
したがって、本発明によれば、限られた無線帯域(チャネル占有時間)を有効に活用することができる。また、同じデータ量を送信するのに必要な帯域が減少することから、省電力化にも貢献することができる。
【0048】
通信局は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンする。そして、他の通信局が存在しないことを検出した場合には任意のタイミングでビーコン送信位置を決定する。
【0049】
一方、他の通信局からのビーコンを検出した場合には、検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求める。
【0050】
ここで、ビーコン送信位置の候補がある場合には、アプリケーション情報に基づいてビーコン送信位置を一意に決定する。
【0051】
アプリケーション情報として、まず通信局の空間的な配置を考慮する。すなわち、各通信局の空間的配置により、トラフィックが集中することが予測される通信局については、優先送信区間を長く確保したいので、このような通信局のビーコン送信位置の後では次の通信局のビーコン送信位置までのビーコン間隔が長くなるように、新規参入局のビーコン送信位置を決定する。
【0052】
また、アプリケーション情報として、通信局が中継すべき端末数を考慮する。すなわち、中継端末が多ければその分だけトラフィックが増大し、優先送信区間を長く確保したいので、中継端末が多い通信局のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるように、新規参入局のビーコン送信位置を決定する。
【0053】
あるいは、アプリケーション情報として、通信局の機能又は機器種別を考慮する。すなわち、機器が扱うデータ・サイズが大きいとその分だけトラフィックが増大し、優先送信区間を長く確保したいので、扱うデータ・サイズが多い通信局のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるように、新規参入局のビーコン送信位置を決定する。
【0054】
あるいは、アプリケーション情報として、通信局が有する通信バッファ・サイズを考慮する。すなわち、通信局が有する通信バッファのサイズは、当該通信局において扱うことが想定されているデータ・サイズに比例すると考えられ、バッファ・サイズが大きい分だけトラフィックが増大し、優先送信区間を長く確保したいので、バッファ・サイズが多い通信局のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるように、新規参入局のビーコン送信位置を決定する。
【0055】
あるいは、アプリケーション情報として、通信局が有する伝送能力を考慮する。すなわち、伝送能力の低い(若しくは伝送速度の遅い)物理層を持つ通信局は、その分だけトラフィックが増大し、同じデータ量を送るためにはより長い優先送信区間を確保することが相当であることから、伝送能力の低い通信局のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるように、新規参入局のビーコン送信位置を決定する。
【0056】
また、新規に参入する通信局は、アプリケーション情報の優先度を勘案して、それぞれ重み付けしてもよい。上述の各項目を例えば設計段階で優先度付けし、その重み関数の値などによって、ビーコンの送信位置決めの判断基準に用いる。
【0057】
また、本発明の第2の側面は、特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、
他の通信局から受信したビーコン情報とアプリケーション情報に基づいて自己のビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御ステップと、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知ステップと、
を具備することを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
【0058】
本発明の第2の側面に係るコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・システム上で所定の処理を実現するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムを定義したものである。換言すれば、本発明の第2の側面に係るコンピュータ・プログラムをコンピュータ・システムにインストールすることによってコンピュータ・システム上では協働的作用が発揮され、無線通信装置として動作する。このような無線通信装置を複数起動して無線ネットワークを構築することによって、本発明の第1の側面に係る無線通信システムと同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0061】
本発明において想定している通信の伝播路は無線であり、且つ単一の伝送媒体(周波数チャネルによりリンクが分離されていない場合)を用いて、複数の通信局間でネットワークを構築する。但し、複数の周波数チャネルが伝送媒体として存在する場合であっても、同様に本発明の効果を奏することができる。また、本発明で想定している通信は蓄積交換型のトラヒックであり、パケット単位で情報が転送される。
【0062】
本発明に係る無線ネットワーク・システムは、コーディネータを配置しないシステム構成であり、各通信局は、基本的にはCSMA(Carrier Sense Multiple Access:キャリア検出多重接続)に基づくアクセス手順に従い直接非同期的に情報を伝送するアドホック通信などを行なう。
【0063】
このようにコーディネータを特に配置しない無線通信システムでは、各通信局はビーコン情報を報知することにより、近隣(すなわち通信範囲内)の他の通信局に自己の存在を知らしめるとともに、ネットワーク構成を通知する。また、ある通信局の通信範囲に新規に参入する通信局は、他の通信局からのビーコン信号を受信することにより、その通信範囲に突入したことを検知するとともに、ビーコンに記載されている情報を解読することによりネットワーク構成を知ることができる。
【0064】
以下に説明する各通信局での処理は、基本的にネットワークに参入する全通信局で実行される処理である。但し、場合によっては、ネットワークを構成するすべての通信局が、以下に説明する処理を実行するとは限らない。
【0065】
図1には、本発明に係る無線ネットワークにおいて通信局として動作することができる無線通信装置の機能構成を模式的に示している。
【0066】
同図に示す無線通信装置では、アンテナ1がアンテナ共用器2を介して受信処理部3と送信処理部4に接続してあり、受信処理部3及び送信処理部4は、ベースバンド部5に接続してある。受信処理部3での受信処理方式や、送信処理部4での受信処理方式については、例えば無線LANに適用可能な、比較的近距離の通信に適した各種通信方式を適用することができる。具体的には、UWB方式、OFDM方式、CDMA方式などを適用することができる。
【0067】
ベースバンド部5は、インターフェース部6とMAC(メディア・アクセス・コントロール)部7とDLC(データリンク・コントロール)部8などを備えて、それぞれの処理部で、この通信システムに実装されるアクセス制御方式における各通信プロトコル層における処理が実行される。
【0068】
次いで、無線通信装置が本発明に係る無線ネットワーク・システムにおいて実行する動作について説明する。コーディネータが存在しない無線通信環境において、各通信局は、自己の存在を周辺(すなわち自己の通信範囲内)に知らせたりする目的で、周期的にビーコンを送信する。各通信局は、ビーコンを送信した直後の所定の時間間隔を、自己が優先して情報の伝送(送信及び/又は受信)に利用することができる優先利用領域として獲得することができる。
【0069】
ビーコンの送信で区切られる期間を「スーパーフレーム周期」と呼ぶ。本実施形態では、通信局におけるビーコンの送信周期を40ミリ秒に設定し、40ミリ秒毎にビーコンを送信するものとするが、スーパーフレーム周期を40ミリ秒に限定している訳ではない。
【0070】
本実施形態に係る各通信局のビーコン送信手順について、図2を参照しながら説明する。
【0071】
ビーコンで送信される情報が100バイトであるとすると、送信に要する時間は18マイクロ秒となる。40ミリ秒に1回の送信なので、通信局毎のビーコンのメディア占有率は2222分の1と十分小さい。
【0072】
各通信局STAは、周辺で発信されるビーコンを聞きながら、ゆるやかに同期する。新規に通信局が現われた場合、新規通信局は既存の通信局のビーコン送信タイミングと衝突しないように、自分のビーコン送信タイミングを設定する。
【0073】
周辺に通信局がいない場合、通信局01は適当なタイミングでビーコンを送信し始めることができる。ビーコンの送信間隔は40ミリ秒である(前述)。図2の最上段に示す例では、B01が通信局01から送信されるビーコンを示している。
【0074】
以降、通信範囲内に新規に参入する通信局は、既存のビーコン配置と衝突しないように、自己のビーコン送信タイミングを設定する。このとき、各通信局はビーコン送信の直後に優先利用領域を獲得することから、各通信局のビーコン送信タイミングは密集しているよりもスーパーフレーム周期内で均等に分散している方が伝送効率上より好ましい。したがって、本実施形態では、基本的に自身が聞こえる範囲でビーコン間隔が最も長い時間帯のほぼ真中でビーコンの送信を開始するようにしている。
【0075】
例えば、図2最上段に示すように、通信局01のみが存在するネットワーク状態において、新たな通信局02が現われたとする。このとき、通信局02は、通信局01からのビーコンを受信することによりその存在とビーコン位置を認識し、図2の第2段目に示すように、通信局01のビーコン間隔のほぼ真中に自己のビーコン送信タイミングを設定して、ビーコンの送信を開始する。
【0076】
さらに、新たな通信局03が現われたとする。このとき、通信局03は、通信局01並びに通信局02のそれぞれから送信されるビーコンの少なくとも一方を受信し、これら既存の通信局の存在を認識する。そして、図2の第3段に示すように、通信局01及び通信局02のビーコン間隔においてほぼ真中のタイミングで送信を開始する。
【0077】
以下、同様のアルゴリズムに従って近隣で通信局が新規参入する度に、ビーコン間隔が狭まっていく。例えば、図2の最下段に示すように、次に現われる通信局04は、通信局02及び通信局01のビーコン間隔においてほぼ真中のタイミングでビーコン送信タイミングを設定し、さらにその次に現われる通信局05は、通信局02及び通信局04のビーコン間隔においてほぼ真中のタイミングでビーコン送信タイミングを設定する。
【0078】
但し、帯域(スーパーフレーム周期)内がビーコンで溢れないように、ミニマムのビーコン間隔Bminを規定しておく。例えば、ミニマムのビーコン間隔Bminを625マイクロ秒に規定した場合、電波の届く範囲内では最大で64台の通信局までしか収容できないことになる。
【0079】
図3には、ビーコン送信タイミングの一例を示している。但し、同図に示す例では、40ミリ秒からなるスーパーフレーム周期における時間の経過を、円環上で時針が右回りで運針する時計のように表している。
【0080】
図3に示す例では、通信局0から通信局Fまでの合計16台の通信局がネットワークのノードとして構成されている。図2を参照しながら説明したように、既存の通信局が設定したビーコン間隔のほぼ真中のタイミングで新規参入局のビーコン送信タイミングを順次設定していくというアルゴリズムに従って、ビーコン配置が行なわれたものとする。Bminを5ミリ秒と規定した場合には、これ以上の通信局は該ネットワークに参入できない。上述したような処理手順で各通信局のビーコンを配置しビーコンの送信を開始するフェーズを、以下では「ステップ1」と呼ぶことにする。ビーコン送信位置決定の詳細な手順については、後述に譲る。
【0081】
本実施形態に係る無線ネットワークでは、基本的には従来と同様にCSMAに基づくアクセス手順を採用し、送信前にメディアがクリアであることを確認した後に送信を行なうことを想定している。但し、各通信局は、近隣の他の通信局に事故の存在を知らしめるためのビーコン信号を送出した後、優先的に情報伝送を行なうことができる優先利用領域が確保される。
【0082】
IEEE802.11方式などの場合と同様に、本実施形態においても複数のパケット間隔を定義する。ここでのパケット間隔の定義を、図4を参照して説明する。ここでのパケット間隔は、Short Inter Frame Space(SIFS) とLong Inter Frame Space(LIFS)を定義する。プライオリティが与えられたパケットに限りSIFSのパケット間隔で送信を許容し、それ以外のパケットはLIFS+ランダムに値を得るランダムバックオフのパケット間隔だけメディアがクリアであることを確認した後に送信を許容する。ランダムバックオフ値の計算方法は既存技術で知られている方法を適用する。
【0083】
さらに本実施形態においては、上述したパケット間隔である「SIFS」と「LIFS+バックオフ」の他、「LIFS」と「FIFS+ バックオフ」(FIFS:Far Inter Frame Space)を定義する。通常は「SIFS」と「LIFS+バックオフ」のパケット間隔を適用するが、ある通信局に送信の優先権が与えられている時間帯においては、他局は「FIFS+バックオフ」のパケット間隔を用い、優先権が与えられている局はSIFSあるいはLIFSでのパケット間隔を用いるというものである。
【0084】
各通信局はビーコンを一定間隔で送信しているが、ビーコンを送信した後しばらくの間は、該ビーコンを送信した局に送信の優先権を与えられる。図5には、ビーコン送信局に優先権が与えられる様子を示している。この優先区間をTransmission Guaranteed Period(TGP)と定義する。また、TGP以外の区間をFairly Access Period(FAP)と定義する。図6には、スーパーフレーム周期の構成を示している。同図に示すように、各通信局からのビーコンの送信に続いて、そのビーコンを送信した通信局のTGPが割り当てられ、TGPの長さ分だけ時間が経過するとFAP になり、次の通信局からのビーコンの送信でFAPが終わる。なお、ここではビーコンの送信直後からTGPが開始する例を示したが、これには限定されるものではなく、例えば、ビーコンの送信時刻から相対位置(時刻)でTGPの開始時刻を設定してもよい。
【0085】
ここで、パケット間隔について再度考察すると、下記のようになる。各通信局は、FAPにおいてはLIFS+バックオフの間隔での送信を行なう。また、ビーコン並び自局のTGP内でのパケットの送信に関しては、SIFS間隔での送信を許容する。また、自局のTGP内でのパケットの送信に関してはLIFSの間隔での送信をも許容する。さらに、他局のTGP内でのパケットの送信に関してはFIFS+バックオフの間隔での送信とするということになる。IEEE802.11方式においては、常にパケット間隔としてFIFS+バックオフがとられていたが、本例の構成によれば、この間隔を詰めることができて、より効果的なパケット伝送が可能となる。
【0086】
上記では、TGP中の通信局にのみ優先送信権が与えられるという説明を行なったが、TGP中の通信局に呼び出された通信局にも優先送信権を与える。基本的にTGPにおいては、送信を優先するが、自通信局内に送信するものはないが、他局が自局宛てに送信したい情報を保持していることがわかっている場合には、その「他局」宛てにページング(Paging)メッセージあるいはポーリング(Polling) メッセージを投げたりしてもよい。
【0087】
逆に、ビーコンを送信したものの、自局には何も送信するものがない場合でかつ他局が自局宛てに送信したい情報を保持していることを知らない場合、このような通信局は、何もせず、TGPで与えられた送信優先権を放棄し、何も送信しない。すると、LIFS+バックオフあるいはFIFS+バックオフ経過後に他局がこの時間帯でも送信を開始する。
【0088】
図6に示したようにビーコンの直後にTGPが続くという構成を考慮すると、各通信局のビーコン送信タイミングは密集しているよりもスーパーフレーム周期内で均等に分散している方が伝送効率上より好ましい。したがって、本実施形態では、基本的に自身が聞こえる範囲でビーコン間隔が最も長い時間帯のほぼ真中でビーコンの送信を開始するようにしている。
【0089】
図7には、本発明の一実施形態に係る無線ネットワーク・システムにおけるパケット・フォーマットの構成例を示している。
【0090】
パケットの先頭には、パケットの存在を知らしめる目的で、ユニーク・ワードで構成されるプリアンブルが付加されている。
【0091】
プリアンブルの直後に送信されるヘディング領域には、このパケットの属性、長さ、送信電力、またPHYがマルチ伝送レートモードならペイロード部伝送レートが格納されている。ヘディング領域は、ペイロード部に比べ所要SNRが数dB程度低くて済むように伝送速度を落とす。このヘディング領域は、いわゆるMACヘッダとは相違する。図示の例では、MACヘッダはペイロード部に含まれている。
【0092】
ペイロード部は、PSDU(PHY Service Data Unit)と示されている部分であり、制御信号や情報を含むベアラビット列が格納される。PSDUは、MACヘッダとMSDU(MAC Service Data Unit)により構成されており、MSDU部に上位レイヤから渡されたデータ列が格納される。
【0093】
以下では、説明を具体的に行なうために、プリアンブルの長さは8マイクロ秒であり、ペイロード部のビットレートは100Mbpsで伝送され、ヘディング領域は3バイトで構成され12Mbpsで伝送される場合を想定する。すなわち、1つのPSDUを送受信する際には、10マイクロ秒(プリアンブル8マイクロ秒+ヘディング2マイクロ秒)のオーバーヘッドが生じている。
【0094】
図8には、ビーコン信号フォーマットの構成例を示している。同図に示すように、ビーコン信号は、当該信号の存在を知らしめるためのプリアンブルに、ヘディング、ペイロード部PSDUが続いている。ヘディング領域において、該パケットがビーコンである旨を示す情報が掲載されている。また、PSDU内にはビーコンで報知したい以下の情報が記載されている。
【0095】
TX.ADDR:送信局(TX)のMAC アドレス
TOI:TBTTオフセット・インジケータ(TBTT Offset Indicator )
NBOI:近隣ビーコンのオフセット情報(Neighbor Beacon Offset Information)
TIM:トラフィック・インジケーション・マップ(Traffic Indication Map)
PAGE:ページング(Paging)
【0096】
TIMとは、現在この通信局がどの通信局宛てに情報を有しているかの報知情報であり、TIMを参照することにより、受信局は自分が受信を行なわなければならないことを認識することができる。また、Pagingは、TIMに掲載されている受信局のうち、直後のTGP において送信を予定していることを示すフィールドであり、このフィールドで指定された通信局はTGPでの受信に備えなければならない。また、その他のフィールド(ETCフィールド)も用意されている。
【0097】
NBOIは、近隣の通信局のビーコン配置を記述した情報である。本実施形態では、スーパーフレーム周期内に最大16個のビーコンを配置することができることから、NBOIを各ビーコン位置に相当する16ビット長のフィールドとして構成し、受信できたビーコンの配置に関する情報をビットマップ形式で記述する。そして、自局のビーコン送信タイミングを基準として、各通信局からのビーコン受信タイミングの相対位置に対応するビットに1を書き込み、ビーコンを受信しないタイミングの相対位置に対応するビット位置は0のままとする。
【0098】
図9には、NBOIの記述例を示している。同図に示す例では、図3に示した通信局0が、「通信局1並びに通信局9からのビーコンが受信可能である」旨を伝えるNBOIフィールドが示されている。受信可能なビーコンの相対位置に対応するビットに関し、ビーコンが受信されている場合にはマーク、受信されていない場合にはスペースを割り当てる。なお、これ以外の目的で、ビーコンが受信されていないタイミングに対応するビットに関してマークを行なうようにしてもよい。
【0099】
本実施形態では、各通信局はお互いのビーコン信号を受信し、その中に含まれるNBOIの記述に基づいてビーコンの衝突を回避することができる。
【0100】
図10には、NBOIの記述に基づいて通信局がビーコンの衝突を回避する様子を示している。同図の各段では、通信局STA0〜STA2の参入状態を表している。そして、各段の左側には各通信局の配置状態を示し、その右側には各局から送信されるビーコンの配置を示している。
【0101】
図10上段では、通信局STA0のみが存在している場合を示している。このとき、STA0はビーコン受信を試みるが受信されないため、適当なビーコン送信タイミングを設定して、このタイミングの到来に応答してビーコンの送信を開始することができる。ビーコンは40ミリ秒毎に送信されている。このとき、STA0から送信されるビーコンに記載されているNBOIフィールドのすべてのビットが0である。
【0102】
図10中段には、通信局STA0の通信範囲内でSTA1が参入してきた様子を示している。STA1は、ビーコンの受信を試みるとSTA0のビーコンが受信される。さらにSTA0のビーコンのNBOIフィールドは自局の送信タイミングを示すビット以外のビットはすべて0であることから、上記ステップ1に従ってSTA0のビーコン間隔のほぼ真中に自己のビーコン送信タイミングを設定する。
【0103】
STA1が送信するビーコンのNBOIフィールドは、自局の送信タイミングを示すビットとSTA0からのビーコン受信タイミングを示すビットに1が設定され、それ以外のビットはすべて0である。また、STA0も、STA1からのビーコンを認識すると、NBOIフィールドの該当するビット位置に1を設定する。
【0104】
図10の最下段には、さらにその後、通信局STA1の通信範囲にSTA2が参入してきた様子を示している。図示の例では、STA0はSTA2にとって隠れ端末となっている。このため、STA2は、STA1がSTA0からのビーコンを受信していることを認識できず、右側に示すように、STA0と同じタイミングでビーコンを送信し衝突が生じてしまう可能性がある。
【0105】
NBOIフィールドはこの現象を回避するために用いられる。まず、STA1のビーコンのNBOIフィールドは自局の送信タイミングを示すビットに加え、STA0がビーコンを送信しているタイミングを示すビットにも1が設定されている。そこで、STA2は、STA0が送信するビーコンを直接受信はできないが、STA0がビーコンを送信するタイミングをSTA1から受信したビーコンに基づいて認識し、このタイミングでのビーコン送信を避ける。そして、図11に示すように、このときSTA2は、STA0とSTA1のビーコン間隔のほぼ真中にビーコン送信タイミングを定める。勿論、STA2の送信ビーコン中のNBOIでは、STA2とSTA1のビーコン送信タイミングを示すビットを1に設定する。
【0106】
上述したようなNBOIフィールドの記述に基づくビーコンの衝突回避機能により、隠れ端末すなわち2つ先の隣接局のビーコン位置を把握しビーコンの衝突を回避することができる。
【0107】
このように、本実施形態に係る無線通信システムでは、各通信局はビーコン情報を報知することにより、他の通信局に自己の存在を知らしめるとともにネットワーク構成を通知することができ、新規に参入する通信局は、ビーコン信号を受信することにより、通信範囲に突入したことを検知するとともに、ビーコンに記載されている情報を解読して、既存のビーコン信号との衝突を避けてビーコン送出することにより新たなネットワークを構築することができる。さらに、各通信局は、ビーコンを送信した直後の所定の時間間隔を、自己が優先して情報の伝送(送信及び/又は受信)に利用することができる優先利用領域として獲得することができる。
【0108】
ここで、複数の通信局でネットワークが構成される場合、一部の通信局にトラフィックが集中するという現象が発生することがある。例えば、自己の通信範囲内により多くの通信局を収容する通信局や、他の通信局からリクエストを受ける機会が多い通信局においては、トラフィックが集中し易いと考えられる。
【0109】
このような場合、ネットワークに新規の通信局が参入してくる際に、スーパーフレーム周期内で均等若しくは任意の場所にそのビーコン位置を逐次配置していくと、自己のビーコン位置と次のビーコン位置との間に優先利用領域が確保されるという仕組みにおいては、トラフィックが集中している機器に対して十分な送信時間が与えられなくなる可能性がある。そして、ネットワーク全体としてはスループットが低下してしまう可能性がある。
【0110】
新規に上記ネットワークに参入したい通信局は、ネットワーク中の既存の通信局が送出するビーコンを受信し、ビーコンに記載されているNBOIやNBAIを解釈して、既にネットワークに参入している通信局のビーコン送出タイミングと衝突しないようにビーコンの送信を開始する。ネットワークに参入する通信局数が増加するに従い、ビーコン間隔は狭くなっていくが、スーパーフレーム周期内における最小ビーコン間隔Bminが規定されており、収容可能なノード数には上限がある(図3を参照のこと)。以下では、新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置に関して言及する。
【0111】
図12には、ある通信局#0が,近接に通信局が存在するかどうかビーコンをスキャンした結果、ビーコンを検出しなかったため、任意の時刻でビーコンを送信し始めた様子を示している。
【0112】
図13には、続いて通信局#1がこのネットワークへの参入を試みた様子を示している。通信局#1がビーコンのスキャンを行なった結果、既存の通信局#0のビーコンが検出されたため、そのビーコンの内容をデコードする。そして、ビーコン中のNBOI及びNBAIの記載内容に基づいて、通信局#0以外の通信局が周辺に存在しないことを確認する。この状況では、通信局はまだ2台しかないので、スーパーフレーム周期内でビーコン位置が等間隔すなわちスーパーフレーム周期(T_SF)の2分の1になるように送信位置を決定し、通信局#1はビーコンを送信開始する。
【0113】
すなわち、図13に示すように、ビーコンB0及びB1はほぼ互い違いに配置され、約40ミリ秒間隔のタイミング関係になる。通信局#0と通信局#1の送信データ量がそれほど多くない場合、通信局#0からの送信信号は通信局#0からのビーコンの送信を皮切りに開始され、しばらく後に送信が終わる。通信局#1からの送信信号も同様であり、送信情報量がビーコンの間隔よりも短い時間で終了すれば、通信局#0と通信局#1の送信要求が衝突することはない筈である。
【0114】
さらに続いて通信局#2がこのネットワークへの参入を試みたとする。この場合、通信局#2は、通信局#0並びに通信局#1のビーコンを検出することができる。そして、これらのビーコンに記載されているNBOI及びNBAIに基づいて、これら2台の通信局以外は存在しないことを確認し、フレーム中のビーコン間隔が等しくなるように送信位置を決定する。
【0115】
ここで、図13に示したビーコン配置がなされた状態で、新規の通信局#2がネットワークに参入する場合、そのビーコンの配置方法として、図14並びに図15に示すように、スーパーフレーム周期の開始から当該周期の4分の1(20ミリ秒)が経過した位置とスーパーフレーム周期の開始から当該周期の4分の3(60ミリ秒)が経過した位置の2通りが考えられる。この状況下でのビーコン送出位置決定方法に関して、空間的位置(トポロジ)で分類する。
【0116】
ここで注意しておきたいのが、空間的に中心に位置する通信局からのビーコン情報によって互いにノードの存在は判るものの、無線伝搬距離の関係上、直接通信できない関係の通信局が存在する可能性があるという点である。これを本明細書中では「隠れ端末」と呼ぶことにする。
【0117】
例えば、図16に示すように、通信局#0、通信局#1、通信局#2の順で各通信局が配置された空間的位置関係で、さらに両端となる通信局#0と通信局#2が互いに隠れ端末となる関係にある場合、以下の手順により各通信局のビーコン位置が決定される。
【0118】
ステップ1:
通信局#0が参入し、ビーコンをスキャンする。
【0119】
ステップ2:
他の通信局が存在しないことを検出し、通信局#0が任意のタイミングでビーコン送信位置を決定し、ビーコン送信を開始する(図12を参照のこと)。
【0120】
ステップ3:
通信局#1が参入し、ビーコンをスキャンする。
【0121】
ステップ4:
通信局#1は、通信局#0のビーコンを検出し、ビーコンに記載されているNBOI及びNAOIに基づいて、通信局#0以外の通信局が周辺に存在しないことを確認する。
【0122】
ステップ5:
通信局#1は、スーパーフレーム中のビーコン位置が等間隔になるように、ビーコン送信位置を決定し、ビーコンの送信を開始する(図13を参照のこと)。
【0123】
ステップ6:
通信局#2が参入し、ビーコンをスキャンする。
【0124】
ステップ7:
通信局#2と通信局#0は隠れ端末であることから(図16を参照のこと)、通信局#2は、通信局#1のビーコンのみを検出する。そして、ビーコン中のNBOI及びNAOIの記述に基づいて、通信局#0と通信局#1以外の通信局が存在しないことを確認する。
【0125】
ステップ8:
これらの参入通信局からトラフィックが一様に発生することを想定すると、これらの空間的な配置(図16を参照のこと)により、両端の通信局#0及び通信局#2に挟まれている通信局#1にトラフィックが集中すると考えられる。したがって、通信局#1の他の通信局への狙い撃ち区間や優先送信区間が極力長くとれるよう、通信局#0よりも通信局#1のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるよう、通信局#2のビーコン送信位置をスーパーフレーム周期(T_SF)の開始から当該周期の4分の1が経過した位置(図14を参照のこと)に決定する。
【0126】
なお、本実施形態に係る無線ネットワークにおいて各通信局が公平にアクセスが許容されているといっても、ある特定の通信局にデータを送信したい場合には、優先送信区間TGPを用いて通信局の狙い撃ちを行なうよりも、コンテンツ・アクセス区間FAPを用いて送信する方が、スループットは向上するものと思われる。
【0127】
また、図17に示すように、通信局#1、通信局#0、通信局#2の順で各通信局が配置された空間的位置関係で、さらに両端となる通信局#1と通信局#2が互いに隠れ端末となる関係にある場合、以下の手順により各通信局のビーコン位置が決定される。
【0128】
ステップ1:
通信局#0が参入し、ビーコンをスキャンする。
【0129】
ステップ2:
他の通信局が存在しないことを検出し、通信局#0が任意のタイミングでビーコン送信位置を決定し、ビーコン送信を開始する(図12を参照のこと)。
【0130】
ステップ3:
通信局#1が参入し、ビーコンをスキャンする。
【0131】
ステップ4:
通信局#1は、通信局#0のビーコンを検出し、ビーコンに記載されているNBOI及びNAOIに基づいて、通信局#0以外の通信局が周辺に存在しないことを確認する。
【0132】
ステップ5:
通信局#1は、スーパーフレーム中のビーコン位置が等間隔になるように、ビーコン送信位置を決定し、ビーコンの送信を開始する(図13を参照のこと)。
【0133】
ステップ6:
通信局#2が参入し、ビーコンをスキャンする。
【0134】
ステップ7:
通信局#2と通信局#1は隠れ端末であることから(図17を参照のこと)、通信局#2は、通信局#1のビーコンのみを検出する。そして、ビーコン中のNBOI及びNAOIの記述に基づいて、通信局#0と通信局#1以外の通信局が存在しないことを確認する。
【0135】
ステップ8:
これらの参入通信局からトラフィックが一様に発生することを想定すると、これらの空間的な配置(図17を参照のこと)により、両端の通信局#1及び通信局#2に挟まれている通信局#0にトラフィックが集中すると考えられる。したがって、通信局#0の他の通信局への狙い撃ち区間や優先送信区間が極力長くとれるよう、通信局#1よりも通信局#0のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるよう、通信局#2のビーコン送信位置をスーパーフレーム周期(T_SF)の開始から当該周期の4分の3が経過した位置(図15を参照のこと)に決定する。
【0136】
また、図18に示すように隠れ端末が存在しないように各通信局が空間的に配置されている場合には、最後に参入する通信局#2のビーコン送信位置を図14又は図15のうちどちらか適当な位置に割り当ててやればよい。
【0137】
図25には、通信局がネットワークに参入し、ビーコンの送信位置を決定するための処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0138】
通信局は、起動すると、まずビーコンのスキャンを行なう(ステップS1)。
【0139】
ここで、検出したビーコン信号に基づいて、周辺に通信局が存在し、ネットワークにまだ参入することができるかどうかを判断する(ステップS2)。既に多くの通信局がネットワークに参入した後で、もはやスーパーフレーム周期内にビーコンの送信位置を配置することができず、ネットワークに参入することができなければ、参入できるようになるまで待機する(ステップS6)。
【0140】
一方、通信局がネットワークに参入することができる場合には、スーパーフレーム周期内に挿入することができるビーコン送信位置を割り出す(ステップS3)。ここで、唯一のビーコン送信位置の候補が見つかった場合には、この送信位置にてビーコン送信を行なうようにする(ステップS7)。
【0141】
複数のビーコン送信位置の候補が見つかった場合には、参入するネットワーク上に隠れ端末が存在するかどうかを、受信ビーコンに記載されているNBOIやNAOIに基づいて判断する(ステップS4)。
【0142】
そして、隠れ端末が存在しないと判断された場合には、通信局は、任意の位置でビーコンの送信を行なう。また、隠れ端末が存在する場合には、各通信局間の空間的配置関係を考慮して、自己のビーコン送信位置を決定する(ステップS5)。
【0143】
上述したような空間的トポロジを勘案する方法以外にも、優先送信区間が極力長く取れるようにビーコンの位置を決定する際の判断基準として、以下のものが考えられる。
【0144】
(1)通信局がネットワーク内に有する中継端末数
中継端末が多ければその分だけトラフィックが増大するので、優先送信区間を長く確保したい。
【0145】
例えば、通信局#0、通信局#1、通信局#2の順でネットワークに参入し、通信局#2は、ビーコンをスキャンし、受信したビーコン中のNBOI及びNAOIの記述に基づいて、通信局#0よりも、通信局#1の方が中継する通信局の数が多いことを確認する(図19を参照のこと)。
【0146】
これらの参入通信局からトラフィックが一様に発生することを想定すると、通信局#1の方が中継端末数の多い分だけトラフィックが増大する。したがって、通信局#1の優先送信区間が極力長くとれるよう、通信局#0よりも通信局#1のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるよう、通信局#2のビーコン送信位置をスーパーフレーム周期(T_SF)の開始から当該周期の4分の1が経過した位置に決定する(図20を参照のこと)。
【0147】
(2)通信局がどのような機器であるか
通信局が、例えばPDAのような小型の通信端末であれば扱うデータ・サイズにはある程度制限があると考えられるが、TV受像機又はリッチ・コンテンツを処理するその他の大型の情報機器である場合には扱うデータ・サイズが大きいことが予測されるので、優先送信区間を長く確保したい。
【0148】
例えば、通信局#0、通信局#1、通信局#2の順でネットワークに参入し、通信局#2は、ビーコンをスキャンし、受信したビーコン中のNBOI及びNAOIの記述に基づいて、通信局#0と通信局#1以外の通信局が存在しないことを確認する。さらに、ビーコンの記載内容などに基づいて、通信局#0がTV受像機、通信局#1がPDAであることを確認する。
【0149】
これらの参入通信局からトラフィックが一様に発生することを想定すると、通信局#0の方が扱うデータ・サイズが多い分だけトラフィックが増大する。したがって、通信局#0の優先送信区間が極力長くとれるよう、通信局#1よりも通信局#0のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるよう、通信局#2のビーコン送信位置をスーパーフレーム周期(T_SF)の開始から当該周期の4分の3が経過した位置に決定する(図21を参照のこと)。
【0150】
(3)通信局が有する通信バッファのサイズ
通信局が有する通信バッファのサイズは、当該通信局において扱うことが想定されているデータ・サイズに比例すると考えられる。したがって、より大きなバッファ・サイズを持つ通信局に対してより長い優先送信区間を確保することが相当である。
【0151】
例えば、通信局#0、通信局#1、通信局#2の順でネットワークに参入し、通信局#2は、ビーコンをスキャンし、受信したビーコン中のNBOI及びNAOIの記述に基づいて、通信局#0と通信局#1以外の通信局が存在しないことを確認する。さらに、ビーコンの記載内容などに基づいて、通信局#0よりも通信局#1の方がより大きな通信バッファを備えていることを確認する。
【0152】
これらの参入通信局からトラフィックが一様に発生することを想定すると、通信局#1の方が扱うデータ・サイズが多い分だけトラフィックが増大すると考えられることから、通信局#1の優先送信区間が極力長くとれるよう、通信局#0よりも通信局#1のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるよう、通信局#2のビーコン送信位置をスーパーフレーム周期(T_SF)の開始から当該周期の4分の1が経過した位置に決定する(図22を参照のこと)。
【0153】
(4)通信局が有する伝送能力
伝送能力の低い(若しくは伝送速度の遅い)物理層を持つ通信局は、同じデータ量を送るためにはより長い優先送信区間を確保することが相当である。
【0154】
例えば、通信局#0、通信局#1、通信局#2の順でネットワークに参入し、通信局#2は、ビーコンをスキャンし、受信したビーコン中のNBOI及びNAOIの記述に基づいて、通信局#0と通信局#1以外の通信局が存在しないことを確認する。さらに、ビーコンの記載内容などに基づいて、通信局#0のデータ転送速度が10Mbpsであるのに対し、通信局#1のデータ通信速度が40Mbpsであることを確認する。
【0155】
これらの参入通信局からトラフィックが一様に発生することを想定すると、通信局#0のデータ伝送速度が遅い分だけトラフィックが増大すると考えられることから、通信局#0の優先送信区間が極力長くとれるよう、通信局#1よりも通信局#0のビーコン送信位置の後ではビーコン間隔が長くなるよう、通信局#2のビーコン送信位置をスーパーフレーム周期(T_SF)の開始から当該周期の4分の3が経過した位置に決定する(図23を参照のこと)。
【0156】
(5)アプリケーション情報の優先度
新規に参入する通信局は、アプリケーション情報の優先度を勘案して、それぞれ重み付けしてもよい。上述の(1)〜(4)の各項目を例えば設計段階で優先度付けし、その重み関数の値などによって、ビーコンの送信位置決めの判断基準に用いる。
【0157】
例えば、通信局#0、通信局#1、通信局#2の順でネットワークに参入し、通信局#2は、ビーコンをスキャンし、受信したビーコン中のNBOI及びNAOIの記述に基づいて、通信局#0と通信局#1以外の通信局が存在しないことを確認する。さらに、アプリケーション情報の優先度を勘案して、それぞれ重み付けし、通信局#0よりも通信局#1のデータ通信の優先度が高いことが判ったとする。
【0158】
これらの参入通信局からトラフィックが一様に発生することを想定すると、通信局#1のトラフィックの優先度が高いことから、通信局#1の優先送信区間が極力長くとれるよう、通信局#0よりも通信局#1のビーコン送信位置の後のビーコン間隔が長くなるよう、通信局#2のビーコン送信位置をスーパーフレーム周期(T_SF)の4分の1の位置に決定する(図24を参照のこと)。
【0159】
[追補]
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0160】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、制御局となる装置を特に配置せずにアドホック通信により無線ネットワークを好適に構築することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0161】
また、本発明によれば、制御局を配置しないアドホック通信環境下において、各通信局のトラフィックやネットワーク全体のスループットを考慮して新規の通信局を参入させる優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
【0162】
本発明によれば、限られた無線帯域(チャネル占有時間)を有効に活用することができ、同じデータ量を送信するのに必要な帯域が減少することから、省電力化にも貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無線ネットワークにおいて通信局として動作することができる無線通信装置の機能構成を模式的に示した図である。
【図2】各通信局のビーコン送信手順を説明するための図である。
【図3】ビーコン送信タイミングの一例を示した図である。
【図4】パケット間隔の規定を示した図である。
【図5】ビーコンを送信した局に送信優先権が与えられる様子を示した図である。
【図6】スーパーフレーム周期内の送信優先区間と競合送信区間を示した図である。
【図7】パケット・フォーマットの構成例を示した図である。
【図8】ビーコン信号フォーマットの構成例を示した図である。
【図9】NBOIの記述例を示した図である。
【図10】NBOIを利用してビーコンの衝突を回避する仕組みを説明するための図である。
【図11】新規参入した通信局STA2のビーコン送信タイミングをSTA0とSTA1のビーコン間隔のほぼ真中に定める様子を示した図である。
【図12】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図13】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図14】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図15】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図16】通信局の空間的配置の例を示した図である。
【図17】通信局の空間的配置の例を示した図である。
【図18】通信局の空間的配置の例を示した図である。
【図19】通信局の空間的配置の例を示した図である。
【図20】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図21】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図22】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図23】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図24】新規に通信局が参入する際のビーコン送出位置を説明するための図である。
【図25】本発明の実施形態に係るネットワーク参入並びにビーコン送信の手順を示したフローチャートである。
【図26】インフラ・モード時のIEEE802.11の無線ネットワーキング動作を説明するための図である。
【図27】アドホック・モード時のIEEE802.11の無線ネットワーキング動作を説明するための図である。
【図28】アドホック・モード時のIEEE802.11の無線ネットワーキング動作を説明するための図である。
【符号の説明】
1…アンテナ
2…アンテナ共用器
3…受信処理部
4…送信処理部
5…ベースバンド部
6…インターフェース部
7…MAC部
8…DLC部
Claims (25)
- 制御局と被制御局の関係を有しない複数の無線通信装置によりネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、該ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の空間的な配置を考慮して自己のビーコン送信位置を決定して、所定のフレーム周期でビーコンを送出する、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 制御局と被制御局の関係を有しない複数の無線通信装置によりネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が中継すべき端末数を考慮してビーコン送信位置を決定して、所定のフレーム周期でビーコンを送出する、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 制御局と被制御局の関係を有しない複数の無線通信装置によりネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の機能又は機器種別を考慮してビーコン送信位置を決定して、所定のフレーム周期でビーコンを送出する、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 制御局と被制御局の関係を有しない複数の無線通信装置によりネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する通信バッファ・サイズを考慮してビーコン送信位置を決定して、所定のフレーム周期でビーコンを送出する、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 制御局と被制御局の関係を有しない複数の無線通信装置によりネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する伝送能力を考慮してビーコン送信位置を決定して、所定のフレーム周期でビーコンを送出する、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 制御局と被制御局の関係を有しない複数の無線通信装置によりネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、複数のアプリケーション情報の各々を重み付けして考慮してビーコン送信位置を決定して、所定のフレーム周期でビーコンを送出する、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作する無線通信装置であって、
無線データを送受信する通信手段と、
前記通信手段による無線データの送受信動作を制御する制御手段と、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、該ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の空間的な配置を考慮して自己のビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手段と、
前記通信手段による通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作する無線通信装置であって、
無線データを送受信する通信手段と、
前記通信手段による無線データの送受信動作を制御する制御手段と、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が中継すべき端末数を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手段と、
前記通信手段による通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作する無線通信装置であって、
無線データを送受信する通信手段と、
前記通信手段による無線データの送受信動作を制御する制御手段と、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の機能又は機器種別を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手段と、
前記通信手段による通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作する無線通信装置であって、
無線データを送受信する通信手段と、
前記通信手段による無線データの送受信動作を制御する制御手段と、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する通信バッファ・サイズを考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手段と、
前記通信手段による通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作する無線通信装置であって、
無線データを送受信する通信手段と、
前記通信手段による無線データの送受信動作を制御する制御手段と、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する伝送能力を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコ ン送信位置制御手段と、
前記通信手段による通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作する無線通信装置であって、
無線データを送受信する通信手段と、
前記通信手段による無線データの送受信動作を制御する制御手段と、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、複数のアプリケーション情報の各々を重み付けして考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手段と、
前記通信手段による通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手段と、
を具備することを特徴とする無線通信装置。 - 前記ビーコン送信位置制御手段は、参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づき、他の通信局が存在しないことを検出した場合には任意のタイミングでビーコン送信位置を決定する、
ことを特徴とする請求項7乃至12のいずれかに記載の無線通信装置。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための無線通信方法であって、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、該ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の空間的な配置を考慮して自己のビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御ステップと、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための無線通信方法であって、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が中継すべき端末数を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御ステップと、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための無線通信方法であって、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の機能又は機器種別を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御ステップと、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための無線通信方法であって、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコ ン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する通信バッファ・サイズを考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御ステップと、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための無線通信方法であって、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する伝送能力を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御ステップと、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための無線通信方法であって、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、複数のアプリケーション情報の各々を重み付けして考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御ステップと、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための処理をコンピュータ上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータに対し、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、該ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の空間的な配置を考慮して自己のビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手順と、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための処理をコンピュータ上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータに対し、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となる自己のビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が中継すべき端末数を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手順と、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための処理をコンピュータ上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータに対し、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局の機能又は機器種別を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手順と、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための処理をコンピュータ上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータに対し、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する通信バッファ・サイズを考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手順と、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための処理をコンピュータ上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータに対し、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、通信局が有する伝送能力を考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手順と、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。 - 特定の制御局を配置しない無線通信環境下で動作するための処理をコンピュータ上で実行するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータに対し、
参入時に他の通信局からのビーコンをスキャンした結果に基づいて検出された各ビーコン位置から略等間隔となるビーコン送信位置の候補を求め、ビーコン送信位置の候補が複数ある場合には、複数のアプリケーション情報の各々を重み付けして考慮してビーコン送信位置を決定するビーコン送信位置制御手順と、
所定の通信範囲内において所定のフレーム周期毎にビーコン信号を報知するビーコン信号報知手順と、
を実行させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。
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