JP4191870B2 - 分布定数フィルタ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は移動体通信機等のRF段等に妨害信号や雑音の除去のために帯域通過フィルタとして使用される分布定数フィルタに関し、詳しくは通過帯域の振幅特性および群遅延特性が同時平坦特性でかつ阻止帯域に伝送零点を有し、構造を簡素化し損失を抑えて性能を改善した帯域通過フィルタを構成するのに好適な分布定数フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アナログあるいはデジタル携帯電話や無線電話をはじめとする移動体通信機等の送信回路および受信回路のRF段等の高周波回路部には、例えば同一のアンテナを送信回路と受信回路で共用する場合に送信周波数帯域と受信周波数帯域を分離するため、あるいは増幅回路の非直線性に基づいて発生する高調波を減衰させるため、希望の信号波以外の妨害波・側帯波等の不要信号波を排除するためなどに、帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ:BPF)がよく使われる。
【0003】
一般に、理想特性のフィルタは、希望信号を歪み無く選択し、帯域外の妨害信号を十分に抑圧する特性を有するものである。この特性は、図2(a)にフィルタの振幅特性を、同図(b)にフィルタの群遅延特性をそれぞれ線図で示すように、通過帯域の振幅特性および群遅延特性が同時平坦特性で、かつ阻止帯域に伝送零点である減衰極を有する特性である。従来、こうしたフィルタを実現するには複雑な回路構成が必要であった。
【0004】
また、このような特性の帯域通過フィルタを明確な設計理論で直接構成する手法は従来知られておらず、種々の工夫をして経験的にフィルタを構成することが行なわれていた。
【0005】
一方、このような通信機用フィルタとしての帯域通過フィルタは、一般に種々の回路素子により構成された直列共振回路や並列共振回路を複数段接続することにより所望の帯域特性を有するフィルタ回路として実現されて構成されているが、フィルタ回路部が小型にできることや高周波回路としての電気特性が良好であることなどから、結合マイクロストリップ線路やパッチ共振器等の不平衡分布定数線路によりフィルタ回路部が構成されることが多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、結合マイクロストリップ線路を用いれば、減衰極を持たない特性の帯域通過フィルタを容易に実現できる。一般のλ/4(1/4波長)結合マイクロストリップ線路による複数の共振器を結合させる構造のフィルタは、結合構造が画一的で自由度が少なく、後述する正あるいは負の結合リアクタンス素子の符号を自由には選ぶことができない。例えば、並列素子と直列素子とからなる梯子型のフィルタを、実現しやすい並列型の素子のみに結合回路に相当する虚ジャイレータを用いて変換する例を図3に示す。図3(a)は3次フィルタの例を示す回路図であり、同図(b)はそれと厳密に等価な、虚ジャイレータを用いた3次フィルタの例を示す回路図である。
【0007】
この場合、図3(a)から(b)への等価変換を正確に行なうと、2つの虚ジャイレータの符号は互いの正負を逆にしなければならない。すなわち、厳密には結合リアクタンス素子の符号は正と負の2種類必要となる。これに相当するλ/4結合マイクロストリップ線路の結合構造を得ることは困難である。
【0008】
しかし、減衰極を持たない単純な特性のフィルタでは、フィルタ回路中に飛び越し結合が無いために伝送特性の正負の正確な管理の必要は無く、虚ジャイレータの符号は正のみあるいは負のみでよく、あるいは正負を入れ替えても差し支えない。その結果、λ/4結合マイクロストリップ線路による複数の共振器を同じ方式で順次結合させる構造でも所望のフィルタ回路を問題なく実現できる。
【0009】
一方、フィルタ特性に減衰極を持ったり、群遅延特性と振幅特性を制御しなければならない複雑な特性のフィルタでは、フィルタ回路中に飛び越し結合の構造が必要となり、伝送特性の正負の位相の正確な制御が必要となる。このため、伝送特性の正負の位相の制御ができないλ/4結合マイクロストリップ線路をフィルタ回路を構成する回路要素として使用することが困難であり、λ/4結合マイクロストリップ線路を用いてフィルタ回路を構成した分布定数フィルタにおいて、所望の減衰極を作ったり、振幅や群遅延時間の補正回路を形成することが困難であった。
【0010】
これに対し、本発明者は特願平11−236068号において、フィルタ理論に忠実であり、複数の共振器を負あるいは正のリアクタンス素子で順次結合あるいは飛び越し結合する形をしており、負の結合リアクタンス素子として容量を、正の結合リアクタンス素子としてインダクタを用いた分布定数フィルタを提案した。
【0011】
しかし、この分布定数フィルタにおいても、分布定数回路で負の結合リアクタンス素子に相当する容量と正の結合リアクタンス素子に相当するインダクタとを形成するには、異なった形状のパターンあるいはスルーホール等を用いる異なった構造が必要であるため、これらを同程度の精度・複雑さで実現することが困難であるという改善すべき点を有していた。
【0012】
また、従来より、伝送特性の正負の位相を配慮しなくても特性上支障のないフィルタ回路を構成するのに適しているλ/4結合マイクロストリップ線路回路を、伝送特性の正負の位相を正確に合わせることができる結合マイクロストリップ線路として分布定数フィルタに使用しようとする試みが行なわれている。
【0013】
しかしながら、このλ/4結合マイクロストリップ線路回路を用いた分布定数フィルタでは、所望のフィルタ特性を得るためのフィルタ合成の正確な設計手法が知られていないため、設計が近似的であることから近似的な特性しか得られず、特性が不十分であるという問題点があった。
【0014】
本発明は以上の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、伝送特性の正負の位相を正確に合わせることで設計値通りの飛び越し結合を実現することができて、それによって帯域特性に減衰極を作ったり振幅や群遅延時間の補正を行なうことができ、その結果、通過帯域特性において振幅特性と群遅延特性とが同時平坦特性であり、かつ阻止帯域に伝送零点を持つ帯域通過特性を有し、正確な設計手法により設計し簡単な回路で構成して実現することができるとともに、低素子感度で低損失な特性の分布定数フィルタを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の分布定数フィルタは、通過帯域の中心周波数に対応する1/4波長結合マイクロストリップ線路をn(nは3以上の整数)個、それぞれ一方の対角の各ポートを接続ポートとし、他方の対角の各ポートを開放として順次、縦続接続し、隣接する前記1/4波長結合マイクロストリップ線路間で前記接続ポート同士が接続されて成るマイクロストリップ線路共振器を形成するとともに、この共振器のうち少なくとも1個以上の共振器長を1波長とし、残りの共振器の共振器長を1/2波長としたことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の分布定数フィルタによれば、縦続接続したn個の1/4波長マイクロストリップ線路により構成したマイクロストリップ線路共振器のうち、少なくとも1個以上の共振器長を1波長とし、残りの共振器の共振器長を1/2波長としたことから、伝送特性の正および負の位相の切り替えをほとんど同じ回路構成で実現することができる。
【0018】
また、本発明の分布定数フィルタにおいて、少なくとも2個以上の1/4波長結合マイクロストリップ線路を飛び越したポート間に電界結合あるいは磁界結合による飛び越し結合回路を接続すると、この飛び越し結合回路で共振器間の伝送特性の位相を制御することにより、同じ形態の飛び越し結合回路のみで所望の減衰極を作ったり、振幅や群遅延時間を補正することができ、所望のフィルタ特性を有する分布定数フィルタを容易に実現することができる。これらの飛び越し結合は、2重あるいは3重のようにマルチ飛び越し結合の形、あるいは飛び越し結合を含む複数の多共振器形フィルタをカスケードに接続した形でも実現できる。
【0019】
このような本発明の分布定数フィルタによれば、設計理論上では、伝達関数を示す回路網関数の分子有理多項式の実根または虚根に相当する回路部を上記構成の多共振子フィルタで実現するものとなることから、理論的に正確に、かつフィルタの構造を簡素化し損失を抑えて性能を改善して、所望のフィルタ特性を有するフィルタ回路を分布定数素子によって構成し実現することができる。なお、以後の説明では、次の数1に示すように、回路網関数をsパラメータを用いて示すものとする。
【0020】
【数1】
【0021】
以下、本発明の分布定数フィルタの実施の形態の一例として、通過帯域で振幅特性と群遅延特性が同時平坦で、かつ阻止帯域で伝送零点(減衰極)を有するフィルタの設計例を示す。
【0022】
このフィルタの例として、フィルタの伝達特性を表す回路網関数s21の分子有理多項式f(s)は4次、分母有理多項式g(s)は8次とする。
【0023】
フィルタが無損失とすると、Sマトリクスはユニタリマトリクスとなり、残りの多項式h(s)が定まる。これより入力インピーダンスあるいは入力アドミタンスが定まり、これらをはしご形回路に展開することで基準化低域通過フィルタが定まる。その例を図4に回路図で示す。
【0024】
ここで、分母有理多項式g(s)の次数がはしご形回路の段数に相当し、この例では8次8段である。分子有理多項式の根のペアの数が、伝送零点(減衰極)ができるよう並列あるいは直列に接続された共振回路の数であり、この例では2である。
【0025】
この基準化低域通過フィルタを虚ジャイレータを用いて等価変換すると、図5に回路図で示すような、基準化低域通過フィルタを得る。なお、図5において虚ジャイレータの符号を示していないのは、この場合は虚ジャイレータの符号を指定することに意味が無いか、または正負の両方を取り得ることを示している。以下の図でも同様な表記を行なうものとする。
【0026】
図5の2つの並列共振回路はs21の分子有理多項式f(s)の根に相当する。さらに、図5の点線で囲まれた部分を図6(a)に示す回路から同図(b)に示す飛び越し結合を含む回路へ等価変換を行なう。この図6の等価変換においては、実軸上の根のペアの場合と虚軸上の根のペアの場合とでは虚ジャイレータの符号が異なることとなる。この図6の等価変換を図5の回路に適用して等価変換した基準化低域通過フィルタの例を、図7に回路図で示す。
【0027】
さらに、図7中のインダクタを虚ジャイレータを用いて容量に等価変換を行なう。この等価変換後の基準化低域通過フィルタの回路図を図8に示す。
【0028】
図8においては、この場合の虚ジャイレータの符号の選び方には自由度がある。この例では順次結合回路の虚ジャイレータの符号を負に揃えてあり、飛び越し結合回路の虚ジャイレータの符号が互いに異なっている。
【0029】
次に、このままでは飛び越し結合回路の虚ジャイレータの符号が異なり、実際の回路にした場合に実現しにくいため、さらに以下の変換を行なう。
【0030】
まず、順次結合回路の虚ジャイレータを、等価変換を行なって、できるだけ同じ符号で揃える。この例ではできるだけ正に揃えてある。また、飛び越し結合の虚ジャイレータの符号を揃える。この例では正に揃えてある。
【0031】
なお、虚ジャイレータの符号を考慮すると、図9(a)に示す虚ジャイレータは、同図(b)に示す定リアクタンス素子のπ型等価回路で実現できる。
【0032】
ここで周波数変換してこの基準化低域通過フィルタを帯域通過フィルタに変換すると、図10に回路図で示すような帯域通過フィルタとなる。この例では、入力ポートと出力ポートの形の対称性を良くする目的で、各入力ポートに虚ジャイレータを加えてある。この場合、入力インピーダンスは入力アドミタンスに変換されることとなるが、フィルタの伝送特性は変らない。この帯域通過フィルタでは、8個の共振器が虚ジャイレータにより順次結合されており、さらに2つの飛び越し結合回路で伝送零点が実現されている。なお、飛び越し結合回路の役割をする虚ジャイレータの符号は正に揃えてある。
【0033】
図10の回路は、数値は異なるが、回路図における右半分と左半分とは同様な構成となっており、順次結合の真ん中の虚ジャイレータの符号のみが異なったものとなっている。従って、このような回路構成の帯域通過フィルタにおいては、順次結合の中間部に虚ジャイレータの符号を反転させるのに相当する回路を加えれば、右半分の回路と左半分の回路とは同様の回路で構成することができる。このため、飛び越し結合回路の部分を同じ構造の回路とすることができ、実際の回路を実現することが容易となる。
【0034】
このように、本発明の分布定数フィルタによれば、順次結合で構成される分布定数フィルタの中央部に伝送特性の位相反転機能を有する回路を加えて、帯域通過フィルタの伝送特性の位相を制御することができる。また、正のリアクタンス素子による飛び越し結合回路を接続することにより、減衰極・振幅・群遅延時間を制御することができるものとなる。
【0035】
次に、図10の回路図における右半分の順次結合の回路と左半分の順次結合の回路とを、中央部で位相反転する回路のみ異なる構成の回路で構成することを考える。
【0036】
ここで、図11に平面図で示すように、マイクロストリップ線路共振器を構成する1組のλ/4結合マイクロストリップ線路について、接続ポートとなる一方の対角のポートをポート1およびポート3、他方の対角のポートをポート2およびポート4とする。この1組のλ/4結合マイクロストリップ線路においては、ポート2およびポート4は開放となっており、ポート1とポート2とを1つの2ポートと見る。また、Zc,jとkiは、それぞれ特性インピーダンスと結合係数である。すると、ポート1とポート3間のFマトリクスは、数2に示すものとなる。
【0037】
【数2】
【0038】
一方、このFマトリクスに対する等価回路の例として、図12に回路図で示すような、λ/4結合マイクロストリップ線路の狭帯域近似等価回路がある。この図12に示す回路のFマトリクスは、数3に示すものとなる。
【0039】
【数3】
【0040】
次に、基準化低域通過フィルタにおいてyi=jω・piとし、さらに、中心周波数ω0、帯域幅Δの帯域通過フィルタへ周波数変換を行なう。すなわち、図8の並列容量を図10の並列共振回路へ変換することとなる。この条件を直接に数2と数3に適用して、両者のマトリクス成分を狭帯域近似すると、次の数4および数5として示される結合係数および特性インピーダンスが定まる。
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
ここで着目しなければならないのは、kiおよびZc,jが実現可能な正の値になるためには、図12中の虚ジャイレータの符号が正でなければならないことである。そして、図12に示される虚ジャイレータの符号が正である限り、それと等価な図11に示されるλ/4結合マイクロストリップ線路を順次、縦続接続(カスケードに接続)することにより分布定数フィルタによる帯域通過フィルタを構成することができる。そして、図10の回路の中で、右半分の部分の順次結合による回路部分は、図13に平面図で示すようなλ/4結合マイクロストリップ線路によるマイクロストリップ線路共振器によって実現できる。
【0044】
この例では、説明を容易にするために2次の帯域通過フィルタの両端にインピーダンス変換用の虚ジャイレータを接続した3段接続の構成としており、虚ジャイレータの符号はいずれも正である。各段の特性インピーダンスZc,j、結合係数kiは次の数6〜数9に示す条件で定められる。
【0045】
【数6】
【0046】
【数7】
【0047】
【数8】
【0048】
【数9】
【0049】
そして、さらに両端に回路を付け足すことにより、飛び越し結合が可能な回路構成となる。
【0050】
しかし、図10の回路の中で、左半分の部分の順次結合による回路部分は中央の虚ジャイレータの符号のみ異なり負となっているため、λ/4結合マイクロストリップ線路を順次カスケードに接続する方式では実際の回路が実現できないこととなる。本発明はこの問題点を解決すべく提案されたものである。
【0051】
まず、図12に示されるλ/4結合マイクロストリップ線路の等価回路において虚ジャイレータの符号が負であるとする。ここで、図13との整合性を考慮して、2次の帯域通過フィルタの両端にインピーダンス変換用の虚ジャイレータを接続した3段接続の構成とする。図13との相違点は、虚ジャイレータのうち1つの符号が負である点である。これによる本発明の分布定数フィルタの回路の実現例を図1に示す。図1は、負の虚ジャイレータを1個含む回路としての実現例であり、3個のλ/4結合マイクロストリップ線路M1〜M3が順次、縦続接続されて成るマイクロストリップ線路共振器O1・O2のうち、共振器O2の中央部にλ/2の長さの線路部分を挿入することにより1波長(λ)とし、残りの共振器O1の共振器長を1/2波長(λ/2)としている。この分布定数フィルタの各回路定数は、図13の例と同様に、次の数10〜数13で与えられる。
【0052】
【数10】
【0053】
【数11】
【0054】
【数12】
【0055】
【数13】
【0056】
ただし、ZLはλ/2長さのマイクロストリップ線路の特性インピーダンスである。数10から数13による各パラメータによる図1の回路は、数6から数9による各パラメータによる図13の回路に対して、伝送特性の位相が逆転している以外は、反射係数・振幅および群遅延時間の伝送特性は全く等しいものとなる。
【0057】
このようにして複数のマイクロストリップ線路共振器を順次結合あるいは飛び越し結合させて、分布定数フィルタによる多共振器型帯域通過フィルタを構成することにより、本発明の分布定数フィルタを実現することができる。
【0058】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更・改良を加えることは何ら差し支えない。例えば、ヘアピン型のマイクロストリップ線路を結合させて構成してもよい。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明の分布定数フィルタによれば、通過帯域の中心周波数に対応する1/4波長結合マイクロストリップ線路をn(nは3以上の整数)個、それぞれ一方の対角の各ポートを接続ポートとし、他方の対角の各ポートを開放として順次、縦続接続し、隣接する1/4波長結合マイクロストリップ線路間で接続ポート同士が接続されて成るマイクロストリップ線路共振器を形成するとともに、この共振器のうち少なくとも1個以上の共振器長を1波長とし、残りの共振器の共振器長を1/2波長としたことから、帯域通過フィルタの他の回路特性を全く変化させること無く、伝送特性の位相を容易に反転させることができる。これにより、比較的単純な回路パターンで伝送特性の位相反転を行なうことができる。
【0060】
さらに、この性質を利用して、少なくとも2個以上の1/4波長結合マイクロストリップ線路を飛び越したポート間に飛び越し結合回路を接続して、共振器間の結合・接続に飛び越し結合を加えることにより、伝達関数の虚軸上の零点に相当する伝送零点を実現したり、伝達関数の実軸上の零点に相当する振幅の補正を行なう際に必要となる正確な伝達特性の位相の制御を簡単な回路の変更のみで行なえるために、虚軸上の零点と実軸上の零点を実現する飛び越し結合回路を、伝送特性の位相反転を行なってもほぼ同じ構成で実現できる。
【0061】
その結果、本発明の分布定数フィルタによれば、簡単な構造の回路構成でもって通過帯域で振幅特性および群遅延特性が同時平坦特性で、かつ阻止帯域に伝送零点(減衰極)を有する帯域通過フィルタとしての分布定数フィルタを実現することができる。
【0062】
また、回路構成が共用でき、単純であることから、低素子感度で低損失な特性の分布定数フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分布定数フィルタの実施の形態における、負の虚ジャイレータを1個含む回路の実現例を示す平面図である。
【図2】(a)および(b)は,それぞれ帯域通過フィルタの通過帯域における振幅特性および群遅延特性を示す線図である。
【図3】(a)は3次フィルタの例を示す回路図、(b)は虚ジャイレータを用いた(a)と等価な3次フィルタを示す回路図である。
【図4】8次の基準化低域通過フィルタの例を示す回路図である。
【図5】図4に示す基準化低域通過フィルタの等価変換の例を示す回路図である。
【図6】(a)の回路を(b)の飛び越し結合を含む形へ等価変換する例を示す回路図である。
【図7】図5に示す回路を図6に示す飛び越し結合を含む回路へ等価変換した基準化低域通過フィルタの例を示す回路図である。
【図8】図7に示す回路のインダクタを容量に等価変換した基準化低域通過フィルタの例を示す回路図である。
【図9】(a)の虚ジャイレータを(b)の定リアクタンス素子のπ型等価回路へ等価変換する例を示す回路図である。
【図10】基準化低域通過フィルタを帯域通過フィルタへ等価変換した例を示す回路図である。
【図11】マイクロストリップ線路共振器を構成する1組のλ/4結合マイクロストリップ線路を示す平面図である。
【図12】λ/4結合マイクロストリップ線路の狭帯域等価回路を示す回路図である。
【図13】λ/4結合マイクロストリップ線路によるマイクロストリップ線路共振器によって構成された帯域通過フィルタとしての分布定数フィルタの例を示す平面図である。
【符号の説明】
1、3・・・・・一方の対角のポート(接続ポート)
2、4・・・・・他方の対角のポート
M1〜M3・・・λ/4結合マイクロストリップ線路
O1、O2・・・マイクロストリップ線路共振器
Claims (1)
- 通過帯域の中心周波数に対応する1/4波長結合マイクロストリップ線路をn(nは3以上の整数)個、それぞれ一方の対角の各ポートを接続ポートとし、他方の対角の各ポートを開放として順次、縦続接続し、隣接する前記1/4波長結合マイクロストリップ線路間で前記接続ポート同士が接続されて成るマイクロストリップ線路共振器を形成するとともに、該共振器のうち少なくとも1個以上の共振器長を1波長とし、残りの共振器の共振器長を1/2波長としたことを特徴とする分布定数フィルタ。
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