JP3921303B2 - 分布定数フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は移動体通信機等のRF段等に妨害信号や雑音の除去のために帯域通過フィルタとして使用される分布定数フィルタに関し、詳しくは通過帯域の振幅特性および群遅延特性が同時平坦特性でかつ阻止帯域に伝送零点を有し、構造を簡素化し損失を抑えて性能を改善した分布定数フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アナログあるいはデジタル携帯電話や無線電話をはじめとする移動体通信機等の送信回路および受信回路のRF段等の高周波回路部には、例えば同一のアンテナを送信回路と受信回路で共用する場合に送信周波数帯域と受信周波数帯域を分離するため、あるいは増幅回路の非直線性に基づいて発生する高調波を減衰させるため、希望の信号波以外の妨害波・側波等の不要信号波を除去するためなどに、帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ:BPF)がよく用いられる。
【0003】
このような通信機用フィルタとしての帯域通過フィルタは、一般に種々の回路素子により構成された直列共振回路や並列共振回路を複数段接続することにより所望の帯域特性を有するフィルタ回路として実現され構成されているが、フィルタ回路部が小型にできることや高周波回路としての電気的特性が良好であること等から、マイクロストリップ線路やストリップ線路等の不平衡分布定数線路によりフィルタ回路部が構成されることが多い。
【0004】
一般に、帯域通過特性のフィルタにおいて、図9(a)および(b)にそれぞれ線図で示すように通過帯域の振幅特性および群遅延特性が同時平坦特性で、かつ阻止帯域に伝送零点を作るには、複雑な回路構成が必要であった。
【0005】
このような特性の帯域通過フィルタを明確な設計理論で直接構成する手法は従来知られておらず、種々の工夫をして経験的にフィルタを構成することが行なわれていた。
【0006】
例えば、図10にブロック図で示すように、先ず振幅特性のみに着目して既に知られている構成のフィルタによって通過帯域の振幅特性が平坦でかつ阻止帯域で伝送零点を有する、希望の振幅特性は有するが群遅延特性は考慮されていない特性のフィルタ1を設計し、次いで、フィルタ1の群遅延特性を補って全体として希望の群遅延特性とするために、通過帯域の群遅延特性を平坦化する全域通過特性の位相等化器2をこれに付加するといった工夫がなされていた。この手法によれば、フィルタ1に位相等化器2を付け足しながら位相あるいは群遅延特性を改善していくというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般にそのような位相等化や補正は効果が少なく、十分な補正効果が得られないという問題点があった。また、本来必要とする数以上の数の回路素子による構成となるため回路構成に無駄が多いため、逆に、位相等化器2の不完全な全域通過特性に起因する振幅特性への悪影響や回路の複雑化による損失の増加等の弊害が大きいという問題点があった。
【0008】
一方、従来より、フィルタの阻止帯域における伝送零点を実現するには、主に2つの手法が知られていた。1つはフィルタの内部に直列にあるいは並列に並列共振器あるいは直列共振器を挿入し、あるいはそれらの組合せで伝送零点を実現するものである。例えば、図11に回路図で示すように、共振器3・4による帯域通過特性のフィルタに対して並列共振器と直列共振器との組合せ5により通過帯域の両外側の阻止帯域に伝送零点を形成するというものである。
【0009】
また、もう1つの手法は、伝送路を2つに分岐し、それぞれの経路の振幅を同じとし、位相を逆にして合成することによって伝送零点を実現するものである。
【0010】
例えば、図12にブロック図で示すように、回路を2つに分岐して、ある周波数において互いに出力の振幅が同じで位相が180 度異なる関係となっている2ポート6と2ポート7とに導くことにより、それらの出力を合成して得られた出力はその周波数で伝送零点となるというものである。
【0011】
一般的には、後者の手法の方が実現が容易で実際に損失の少ない回路構成でフィルタを実現することができる。
【0012】
さらに、後者の変形として、単純なリアクタンスの帰還路による手法も知られているが、この手法においては目的の回路網関数からそのフィルタを合成する正確な設計理論や手法は知られておらず、近似的または経験的な使われ方がされている。例えば、図13に回路図で示すように、通常のフィルタであるフィルタ部8と、分岐回路あるいは帰還路に相当する結合回路9とにより伝送零点が形成されるというものである。
【0013】
しかしながら、この手法によれば、回路の簡素化による損失低減の効果はあるが、フィルタ合成の正確な設計手法が知られていないため、設計が近似的であることから近似的な特性しか得られず、特性が不十分であるという問題点があった。
【0014】
また、従来より、はしご型構成の回路とこれらの伝送零点を作る手法とを組み合わせて、その後に、位相等化器により群遅延の補正を行なうという手法も知られていた。このような構成による通過帯域の振幅特性と群遅延特性が同時平坦でかつ阻止帯域に伝送零点を有する従来の帯域通過特性のフィルタが得られるというものである。
【0015】
しかしながら、この手法によっても、設計が近似的であることから正確な特性が得られず、また、回路構成が複雑であるという問題点があった。さらに、このようなフィルタには、伝送損失が増加する、あるいは近似的で不十分な特性しか得られないという問題点もあり、特にマイクロストリップ回路等の分布定数フィルタで構成した場合の損失が顕著であった。
【0016】
本発明は上記従来技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、通過帯域特性において振幅特性と群遅延特性とが同時平坦特性であり、かつ阻止帯域に伝送零点を持つ帯域通過特性を有し、正確な設計手法により設計して簡単な回路で構成して実現することができるとともに、低素子感度で低損失な特性の分布定数フィルタを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の分布定数フィルタは、複素周波数sの偶関数であって少なくとも1組の実根および少なくとも1組の虚根を持つ分母有理多項式と複素周波数sのフルビッツ多項式である分子有理多項式とから成る回路網関数で伝達関数が表わされた基準化低域通過フィルタを周波数変換することにより得られ、不平衡分布定数回路で実現された、周波数帯域通過特性を有する分布定数フィルタであって、前記分母有理多項式の実根または虚根に相当する回路部は、誘電体基板上の円形の導体パターンで形成され、外周の周りに90度おきに電界結合ができる電界最大点があり、これら電界最大点の中間点の位置に磁界結合ができる磁界最大点がある第1および第2共振子と、前記第1共振子とその外側の回路とをカスケード結合する第1結合回路と、前記第1共振子と第2共振子とをカスケード結合する第2結合回路と、前記第2共振子とその外側の回路とをカスケード結合する第3結合回路と、前記第1結合回路と第3結合回路の外側をブリッジ結合により結合する第4結合回路とから成る単位結合回路部を2つ以上有する多共振子フィルタで実現されており、前記実根に相当する前記単位結合回路部は、前記第2結合回路および第4結合回路がそれぞれ同符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の同種の結合回路から成るとともに、前記虚根に相当する前記単位結合回路部は、前記第2結合回路および第4結合回路がそれぞれ異符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の異種の結合回路から成ることを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の分布定数フィルタによれば、回路網関数の分母有理多項式の実根または虚根に相当する回路部を上記構成の単位結合回路部を2つ以上有する多共振子フィルタで実現することから、理論的に正確に、かつフィルタの構造を簡素化し損失を抑えて性能を改善して、回路を構成し実現することができる。
【0019】
ここで、分母有理多項式の次数は少なくとも1組以上の実根と虚根とを有する4次以上であり、それぞれの根の組がそれぞれの結合回路部の形成に割り当てられる。また、分子有理多項式のフルビッツ多項式の次数は分母有理多項式の次数より3次以上大きな次数(分母の次数+3≦分子の次数)であり、それぞれの単位結合回路部の形成に3次ないしは4次以上の次数が割り当てられる。そして、第2結合回路と第4結合回路が異符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の異種の結合である単位結合回路部の形成には分母有理多項式の虚根の組が割り当てられ、同様に、第2結合回路と第4結合回路が同符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の同種の結合である単位結合回路部の形成には分母有理多項式の実根の組が割り当てられている。
【0020】
本発明の分布定数フィルタは不平衡分布定数回路で実現されるものであるが、このようなそれぞれの単位結合回路部の第4結合回路は、例えば集中定数のリアクタンス素子、あるいは単位結合回路部の両端の共振器上の電荷と電界あるいは電流と磁界の結合によっても実現することができる。
【0021】
また、本発明の分布定数フィルタによれば、基準化低域通過フィルタの伝達関数を表わす回路網関数を複素周波数sの偶関数であって少なくとも1組の実根および少なくとも1組の虚根を持つ分母有理多項式と複素周波数sのフルビッツ多項式である分子有理多項式とから成るものとしたことから、振幅の通過帯域特性を分母有理多項式の1組の実根で補正された平坦なものとすることができるとともにその通過帯域の近傍に1組の虚根でその周波数が与えられる伝送零点である減衰極を生じさせることができるので、フィルタの通過帯域特性に対して振幅特性と位相特性とに個別に条件を課して振幅特性と群遅延特性とに所望の同時平坦特性を確保しつつ、阻止帯域において伝送零点により十分な減衰を確保した帯域通過特性を有するフィルタを得ることができる。
【0022】
そして、マイクロストリップ回路等の不平衡分布定数回路を用いることにより理想トランスやジャイレータが容易に実現でき、直列共振回路・並列共振回路も容易に実現できるので、上記のような所望の周波数帯域通過特性を有する、不平衡分布定数回路で構成された簡素化された回路構成の分布定数フィルタを得ることができる。
【0023】
本発明の分布定数フィルタを実現するには、基準化低域フィルタの特性について、まず分子有理多項式である位相直線特性を有するフルビッツ多項式により位相特性を定め、次に分母有理多項式である複素周波数sの偶関数の虚根を所望の周波数に伝送零点を配置するように指定し、分母有理多項式の実根を通過帯域で振幅特性が平坦となるように定める。
【0024】
次に、この分母有理多項式と分子有理多項式とから成る回路網関数より、これを伝達関数とする基準化低域フィルタを合成する。
【0025】
次に、等価変換により負の値の素子を実在する正の値の素子に変換し、帯域通過特性に周波数変換の後、不平衡の分布定数回路に等価変換して分布定数フィルタを実現する。
【0026】
以下、本発明の分布定数フィルタについて詳細に説明する。
【0027】
本発明の分布定数フィルタの最少の次数の実現例として、分母有理多項式を1組の実根と虚根を有する4次の多項式f(s)とし、分子有理多項式を7次のフルビッツ多項式g(s)とすると、回路網関数は複素周波数s=jωの関数として、
【0028】
【数1】
【0029】
と表わされる。ここで、分子有理多項式g(s)は群遅延特性が平坦である多項式とし、例えばベッセルの多項式等とする。
【0030】
次に、この分子有理多項式の振幅特性を、群遅延特性に悪影響を与えることなく分母有理多項式で補正するとともに、分子有理多項式の虚根の組により、阻止帯域に伝送零点を設ける。さらに、振幅特性が通過帯域でできるだけ平坦となるように、分母有理多項式の実根の組で振幅特性の補正を行なう。このようにして、分子有理多項式および目的とするフィルタ特性に対応して、分母有理多項式が定まる。
【0031】
そして、このようにして定まった多項式から、図1に回路図の例を示すような、基準化低域通過フィルタが定まる。この基準化低域通過フィルタにおいては、並列あるいは直列のはしご型の接続の段数がフルビッツの多項式の次数に相当し、この例では7段である。また、並列に接続された2つの直列共振回路は、分母有理多項式のそれぞれ実根および虚根の組に相当する回路部である。
【0032】
これら実根および虚根の組に相当する回路部のうち、虚根の組に相当する直列共振回路の回路素子はともに正の値であり、実際の回路で実現可能である。一方、実根の組に相当する直列共振回路の回路素子はどちらか一方が負の値となり、このままでは実際の回路として実現することができない。
【0033】
そこで、次に、単位結合回路部への等価変換を行なう。すなわち、図1に示した回路を、虚ジャイレータを用いて図2に示すような回路への等価変換を行なう。そして、この図2に示した回路を中程の理想トランスの前後の2つの部分に分けて扱うこととする。
【0034】
まず、その左側の部分の回路に着目して、図3(a)に示すような回路を扱う。この回路に対して、同図(b)に示すように、虚ジャイレータを2つ含む回路を考えると、これら(a)および(b)に示した回路は、互いのパラメータを適切に置き換えることにより両者が等価となることが分かる。なお、図3(b)中のLおよびCはそれぞれ回路素子がインダクタンスおよび容量であることを示し、その値は示していない。また同様に、jはジャイレータを示し、その値は示していない。これらは以下の図4〜11においても同様である。
【0035】
また、図2に示した回路の右側の部分に着目し、同様の処理を行なうことにより、この部分の等価回路が得られる。これらの結果、図1に示した基準化低域通過フィルタは、図2および図3の等価変換を経て、図4に示すような等価な基準化低域通過フィルタに変換される。
【0036】
この図4に示す等価な基準化低域通過フィルタに、さらに虚ジャイレータと理想トランスを導入し、回路素子をすべて並列の同じ値の容量に等価変換することにより、図5に示すような等価基準化低域通過フィルタが得られる。この図5に示す等価基準化低域通過フィルタは、図1に示した基準化低域通過フィルタと厳密に全く等価なものである。
【0037】
次に、この基準化低域通過フィルタを、周波数変換およびインピーダンス変換して、目的の帯域通過特性を有する帯域通過フィルタへ変換する。このとき、図5の回路中の容量は周波数変換により並列共振回路となるが、虚ジャイレータは変化せずにそのままとなる。そして、虚ジャイレータをπ型の定リアクタンス素子の接続で実現すると、目的の帯域通過フィルタは図6に示すような回路構成となる。この帯域通過フィルタにおいて、結合回路の定リアクタンス素子は、通過帯域近辺での狭帯域近似により、容量もしくは電界結合、またはインダクタンスもしくは磁界結合で実現できる。
【0038】
次に、図6に示す回路において、まず中央の理想トランスから左側の回路に着目する。ここで、同図中の10・11・12・13の4個の結合回路の定リアクタンス素子と、18・19・20・21の4つの共振回路(共振子)とを1つの単位結合回路部とする。また、10は第1共振子19とその外側の回路とをカスケード結合する第1結合回路、11は第1共振子19と第2共振子20とをカスケード結合する第2結合回路、12は第2共振子20とその外側の回路とをカスケード結合する第3結合回路、13は第1結合回路10と第3結合回路12の外側をブリッジ結合により結合する第4結合回路である。そして、それぞれの結合回路の定リアクタンス素子の符号は任意であるが、第2結合回路11と第4結合回路13との符号の間には、分母有理多項式の根の状態によって条件がつくこととなる。
【0039】
すなわち、図1の基準化低域通過フィルタにおいて並列に接続されている直列共振回路の回路素子の符号がともに正の値のとき、すなわち分母有理多項式f(s)の虚根の組に対応する回路素子である場合は、第2結合回路11と第4結合回路13の符号は逆すなわち異符号となり、どちらかが容量結合あるいは電界結合となるとともに、他方はインダクタンス結合あるいは磁界結合となって異種の結合となる。さらに、この部分で伝送零点が形成されることとなる。
【0040】
他方、図1の基準化低域通過フィルタにおいて並列に接続されている直列共振回路の回路素子の符号が異なり、一方が正で他方が負の値のとき、すなわち分母有理多項式f(s)の実根の組に対応する回路素子である場合は、第2結合回路11と第4結合回路13の符号は同じすなわち同符号となり、ともに容量結合もしくは電界結合であるか、インダクタンス結合もしくは磁界結合となって同種の結合となる。さらに、この部分で通過帯域の振幅特性が平坦に補正されることとなる。
【0041】
次に、図6において中央の理想トランスより右側の回路に着目する。同図に示すように14を第1結合回路、15を第2結合回路、16を第3結合回路、17を第4結合回路とすると、前述の理想トランスの左側の回路と全く同じ扱いができる。なお、22〜24は共振子であり、22が第1共振子、23が第2共振子である。
【0042】
例えば、理想トランスの左側の回路を分母有理多項式f(s)の実根の組に、右側の回路を分母有理多項式f(s)の虚根の組に対応させるものとする。また、回路実現の容易さから、各結合回路はできるだけ同符号の結合回路とするものとし、できるだけ容量結合もしくは電界結合とする。すると、各結合回路10〜17のうち第4結合回路17以外はすべて容量結合もしくは電界結合となり、第4結合回路17のみインダクタンス結合もしくは磁界結合となる。
【0043】
このようにして狭帯域近似を行なった結果得られた帯域通過フィルタ回路の実施例の回路図を図7に示す。
【0044】
そして、本発明の分布定数フィルタについて、図7に示した狭帯域近似の実施例を分布定数フィルタで実現した構成例を図8に平面図で示す。
【0045】
図8に示す本発明の分布定数フィルタの構成例は誘電体基板上に分布定数回路素子としての導体パターンで形成されており、この例においては、7個の円形の共振子33〜39が電界結合25〜31により結合されて接続されている。また、共振子36と共振子39とは、両端を誘電体基板の裏面の接地導体に貫通導体等を介して接地された短いストリップ線路32を介して磁界結合により結合されて接続されている。なお、40および41はいずれもこのフィルタに接続される外部端子である。なお、各共振子33〜39中には、それぞれ電界および磁界の向きを示している。
【0046】
このような本発明の分布定数フィルタにおいて、図8中の結合部25〜28は図6中の第1の単位結合回路部の結合回路10〜13に、図8中の共振子33〜36は図6中の共振回路(共振子)18〜21にそれぞれ対応するものである。また同様に、図8中の結合部29〜32は図6中の第2の単位結合回路部の結合回路14〜17に、図8中の共振子37〜39は図6中の共振回路(共振子)22〜24にそれぞれ対応するものである。そして、各共振子33〜39の共振モードがE210 モードの場合、図8中に示すように、それぞれの共振子の外周の周りに90度おきに電界最大点があり、この部分で電界結合もしくは容量結合ができる。また、電界最大点の中間点すなわち電界最大点から45度ずつずれた点の位置に磁界最大点があり、この部分で磁界結合もしくはインダクタンス結合ができる。このような配置を利用して、図8に示すように、7つの共振子33〜39を結合させた目的の帯域通過フィルタとしての分布定数フィルタを構成することができる。
【0047】
このような本発明の分布定数フィルタによれば、図7に示したような正確な等価回路の帯域通過フィルタを各素子ごとに正確に図8に示した導体パターンとして実現できることから、正確な設計手法により設計して簡単な回路で構成して実現することができるとともに、与えられた特性に対して最少の素子数・パターン数でフィルタを構成できることから、低素子感度で低損失な特性の分布定数フィルタとなる。
【0048】
なお、以上はあくまで本発明の実施の形態の例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や改良を加えることは何ら差し支えない。例えば、他の形状の共振器パターンを用いてもよく、共振器間で直接に磁界結合を行なってもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上により、本発明によれば、複素周波数sのフルビッツの多項式を分子有理多項式とし、複素周波数sの偶関数であって少なくとも1組の実根および少なくとも1組の虚根を持つ多項式を分母有理多項式とする回路網関数の伝達関数により特性が決定される周波数帯域通過特性を有する分布定数フィルタであって、この分母有理多項式の根に相当する回路部を形成する手段として、誘電体基板上の円形の導体パターンで形成され、外周の周りに90度おきに電界結合ができる電界最大点があり、これら電界最大点の中間点の位置に磁界結合ができる磁界最大点がある第1および第2共振子と、第1共振子とその外側の回路とをカスケード結合する第1結合回路と、第1共振子と第2共振子とをカスケード結合する第2結合回路と、第2共振子とその外側の回路とをカスケード結合する第3結合回路と、第1結合回路と第3結合回路の外側をブリッジ結合により結合する第4結合回路とから成る単位結合回路部を2つ以上有する多共振子フィルタで実現し、実根に相当する単位結合回路部を第2結合回路および第4結合回路がそれぞれ同符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の同種の結合回路から成るものとするとともに、虚根に相当する単位結合回路部を第2結合回路および第4結合回路がそれぞれ異符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の異種の結合回路から成るものとしたことにより、通過帯域の振幅特性および群遅延特性が同時平坦特性で、かつ阻止帯域に伝送零点を持つ周波数帯域通過特性を有し、正確な設計手法により設計して簡単な回路で構成して実現することができるとともに、低素子感度で低損失な特性の分布定数フィルタを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における基準化低域通過フィルタの例を示す回路図である。
【図2】本発明における等価変換した基準化低域通過フィルタの例を示す回路図である。
【図3】(a)および(b)は本発明における基準化低域通過フィルタに対する等価変換の例を示す回路図である。
【図4】本発明における等価変換した基準化低域通過フィルタの例を示す回路図である。
【図5】本発明における等価変換した基準化低域通過フィルタの例を示す回路図である。
【図6】本発明による帯域通過フィルタの構成例を示す回路図である。
【図7】本発明による帯域通過フィルタの実施例を示す回路図である。
【図8】図7の帯域通過フィルタの実施例を分布定数フィルタで実現した構成例を示す平面図である。
【図9】(a)および(b)は、それぞれ帯域通過フィルタの通過帯域における振幅特性および群遅延特性を示す線図である。
【図10】従来の帯域通過フィルタの構成例を示すブロック図である。
【図11】従来のフィルタの阻止帯域における伝送零点を実現するための構成例を示す回路図である。
【図12】従来のフィルタの阻止帯域における伝送零点を実現するための構成例を示すブロック図である。
【図13】従来のフィルタの阻止帯域における伝送零点を実現するための構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
10、14、25、29・・・・・第1結合回路
11、15、26、30・・・・・第2結合回路
12、16、27、31・・・・・第3結合回路
13、17、28、32・・・・・第4結合回路
19、22、34、37・・・・・第1共振子
20、23、35、38・・・・・第2共振子
Claims (1)
- 複素周波数sの偶関数であって少なくとも1組の実根および少なくとも1組の虚根を持つ分母有理多項式と複素周波数sのフルビッツ多項式である分子有理多項式とから成る回路網関数で伝達関数が表わされた基準化低域通過フィルタを周波数変換することにより得られ、不平衡分布定数回路で実現された、周波数帯域通過特性を有する分布定数フィルタであって、
前記分母有理多項式の実根または虚根に相当する回路部は、誘電体基板上の円形の導体パターンで形成され、外周の周りに90度おきに電界結合ができる電界最大点があり、これら電界最大点の中間点の位置に磁界結合ができる磁界最大点がある第1および第2共振子と、前記第1共振子とその外側の回路とをカスケード結合する第1結合回路と、前記第1共振子と第2共振子とをカスケード結合する第2結合回路と、前記第2共振子とその外側の回路とをカスケード結合する第3結合回路と、前記第1結合回路と第3結合回路の外側をブリッジ結合により結合する第4結合回路とから成る単位結合回路部を2つ以上有する多共振子フィルタで実現されており、
前記実根に相当する前記単位結合回路部は、前記第2結合回路および第4結合回路がそれぞれ同符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の同種の結合回路から成るとともに、
前記虚根に相当する前記単位結合回路部は、前記第2結合回路および第4結合回路がそれぞれ異符号のリアクタンス素子または電界結合もしくは磁界結合の異種の結合回路から成ることを特徴とする分布定数フィルタ。
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