JP4191069B2 - 絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板および製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、電池缶,飲料缶,容器,ケースなど、絞りしごき加工により製造される物品の素材に適した絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板、およびその製造法に関する。なお、本発明における「鋼板」には「鋼帯」が含まれる。
従来、電池缶,飲料缶など、鋼板から一体成形して作られる底の深い円筒容器は多段絞り加工により製造されることが多かった。しかし最近では、コスト低減や生産速度向上のため、まず絞り加工により円筒容器を作り、これにしごき加工を施して底の深い薄肉容器に成形する「絞りしごき加工」が注目されている。
また、最近、電池分野では性能向上のために電解液の強酸性化あるいは強アルカリ化が検討されており、電池缶にはより一層の高耐食化が求められる。耐食性や絞り加工性の観点からはオーステナイト系ステンレス鋼が有利であるが、素材コストの面から安易に同系鋼を採用するわけにはいかず、フェライト系ステンレス鋼で耐食性の良い薄肉容器を低コストで製造する技術が望まれている。
このような要求に対応するため、下記特許文献1にはNiめっきを施したフェライト系ステンレス鋼の容器をしごき加工する技術が記載されている。この場合、Niめっき層が潤滑剤として作用し、しごきダイスと素材鋼板との「焼付き」や「かじり」が防止されるという(段落0008)。
一方、フェライト系ステンレス鋼の加工性改善の観点から、素材鋼板の集合組織に着目した検討もなされている。例えば特許文献2には(222)面と(310)面のX線積分強度比(222)/(310)を35以上として耐リジング性や深絞り性やr値の面内異方性を改善したフェライト系ステンレス鋼板が記載されている。特許文献3には同様にX線積分強度比(222)/(200)を15以上として深絞り性(r値)を向上させたフェライト系ステンレス鋼板が記載されている。特許文献4および5には、それぞれ、積分強度比(I(222)/I0(222))/(I(200)/I0(200))を2.0以上としたフェライト系ステンレス鋼板、および積分強度比[I(211)/I0(211)]/[I(200)/I0(200)]を1.2以上として、深絞り性や張出し成形性を改善したフェライト系ステンレス鋼板が記載されている。ここでI0は無方向性試料のX線積分強度、Iは鋼板のX線積分強度である。
特開2000−285874号公報 特開平10−121205号公報 特開2002−285300号公報 特開2002−194507号公報 特開2002−194508号公報
前記特許文献1の電池缶は、ステンレス鋼にNiめっきを施す必要がある点で多大なコスト上昇が避けられない。Niめっきを施さなくても、しごき加工時に「缶ちぎれ」や「焼付き」等のトラブルを起こさず、かつ「かじり」や「しわ」等の成形不良による問題を回避できるようなフェライト系ステンレス鋼板素材の出現が待たれる。
一方、特許文献2〜5に示されるように、鋼板の集合組織をコントロールすることでフェライト系ステンレス鋼板の加工性が改善されることが知られている。しかし、「絞りしごき加工」という特殊な加工工程を想定して集合組織を検討した例は見当たらない。上記文献に教示される集合組織に調整されたフェライト系ステンレス鋼板(すなわち深絞り性等の加工性が改善された鋼板)であっても、「絞りしごき加工性」に関しては十分な改善効果が得られないのが現状である。したがって、絞りしごき加工性の向上を意図するならば、それに適した組織状態の鋼板を新たに開発しなければならない。
本発明は、このような現状に鑑み、鋼板素材自体に優れた「絞りしごき加工性」を付与した新たなフェライト系ステンレス鋼板を開発し提供することを目的とする。
発明者らは、ある特殊な工程で冷間圧延を行ったとき、フェライト系ステンレス鋼板の「絞りしごき加工性」が顕著に改善されることを発見した。すなわち、仕上げ焼鈍前に行う冷間圧延の前半に、圧延方向が一方向となる複数パスの圧下を行うことにより、鋼板素材自体に優れた絞りしごき加工性を付与することができるのである。その後の詳細な研究により、絞りしごき加工性の改善に有効な鋼板の組織状態が特定され、また、そのような組織状態を安定して実現するための冷間圧延手法が見出された。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち、上記目的を達成するために、質量%で、C:0.05%以下,Si:1.0%以下,Mn:1.5%以下,P:0.05%以下,S:0.01%以下,Cr:11.0〜23.0%,Al:0.5%以下,N:0.05%以下,Ti:0〜0.5%,Nb:0〜0.5%であり、必要に応じて更にNi:0.5%以下,Mo:3.0%以下,Cu:2.0%以下,V:0.3%以下,Zr:0.3%以下およびB:0.01%以下のうち1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、板面に平行な面におけるX線積分強度比I{211}/I{110}が30〜500である絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板が提供される。また、その表面に樹脂塗膜を有するものが提供される。
ここで、Ti,Nbの下限値0%は、当該元素の含有量が鉄鋼製造現場における通常の分析手法で測定限界以下である場合を意味する。I{211}は結晶の{211}面のX線積分強度、I{110}は結晶の{110}面のX線積分強度である。X線積分強度は、当該鋼板の板厚の1/4厚位置の面(すなわち当該鋼板の表面を板厚の1/4深さまで研磨した面)について測定した値が採用できる。X線源としてはMokα線を使用することが望ましい。
また、鋼板の製造法として、上記化学組成を有する焼鈍鋼板に、圧延方向が同一となる複数パスの圧下を合計圧延率が少なくとも40%以上となるまで付与し(一方向冷延工程)、次いで中間焼鈍せずに1パス目の圧下が前記と反対の圧延方向から始まる複数パスの圧下を1パスごとに圧延方向が逆転するように付与し(双方向冷延工程)、前記一方向冷延工程と双方向冷延工程の合計圧延率が87〜93%となるように冷間圧延を終了し、その後、仕上げ焼鈍を施すことによって、板面に平行な面におけるX線積分強度比I{211}/I{110}を30〜500に調整する絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板の製造法が提供される。特に、前記一方向冷延工程をタンデム式圧延機を用いて行い、前記双方向圧延工程をリバース式圧延機を用いて行う製造法が提供される。
ここで、1パスとは、1対のワークロールの間を1回通すことをいう。
本発明に係る鋼板は絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板として最適であり、とくに以下のメリットを有する。
[1] 「絞りしごき加工性」が顕著に改善されたことにより、ステンレス鋼を用いた底の深い薄肉容器の製造分野において、設計自由度の拡大に寄与できる。
[2] 鋼板素材自体が「絞りしごき加工」に極めて有利な組織状態を有するので、Niめっきを施すことなく「絞りしごき加工性」に優れた鋼板素材が提供できる。
[3] 適用可能な化学組成範囲が広いため、高耐食性の鋼種を使用することが可能であり、電池缶をはじめとする各種用途において容器の長寿命化に寄与できる。
[4] 一般的なステンレス鋼板製造設備を用いて製造可能であるため、特別な設備投資を必要とせず、実施化が容易である。
本発明では合金元素の含有量を以下のように調整したフェライト系ステンレス鋼板が使用できる。
Cは、含有量が多くなると絞りしごき加工性を低下させる。また、炭化物析出に起因して耐食性を低下させる。このため、本発明ではできるだけC含有量の低い鋼を使用することが望ましい。種々検討の結果、C含有量は0.05質量%以下に制限することが望ましい。0.015質量%以下とすることがより好ましい。
Siは、脱酸剤として有効な元素であるが、固溶強化能が大きく、過剰に添加すると材質が硬化して延性低下を招くので、1.0質量%以下に制限される。
Mnは、脱酸剤として有効であり、固溶強化能も比較的小さいので材質を硬化させる影響も少ないが、多量に含有させると溶接時にMn系ヒュームが生成する等の弊害を生じるため、1.5質量%以下に制限される。
Pは、熱間加工性等に有害な元素であるため、0.05質量%以下に制限される。
Sは、結晶粒界に偏析して粒界脆化を招く等、有害な元素であるため、0.01質量%以下に制限される。
Crは、耐食性を確保するために少なくとも11.0質量%以上の含有が必要である。一般的にCr含有量が多くなるほど耐食性は向上するが、多量に添加すると靱性や加工性の劣化を招くようになる。種々検討の結果、本発明においてCr含有量は23.0質量%以下の範囲に抑えることが望ましい。
Alは、脱酸剤として有効な元素であるが、過剰のAl含有は介在物を増加させ靱性低下や表面欠陥の原因となるため、Al含有量は0.5質量%以下に制限される。0.05質量%以下とすることが好ましく、0.03質量%以下とすることが一層好ましい。
Nは、Cと同様の作用を呈し、本発明では0.05質量%以下に制限される。0.02質量%以下とすることが一層好ましい。
TiおよびNbは、C,Nを固定し、絞りしごき加工性あるいは更に耐食性の向上に有効である。ただし、Tiの過剰添加はTi系介在物による表面欠陥の増大を招き、Nbの過剰添加は靱性低下を招く等、弊害も生じやすい。このため、Tiを添加する場合は0.5質量%以下、Nbを添加する場合も0.5質量%以下の含有量範囲とする必要がある。絞りしごき加工性の観点から、Ti:0.5質量%以下およびNb:0.5質量%以下の1種または2種を含有させることが好ましい。
Niは、熱延板の靱性改善に有効であり、また耐食性の改善にも有効である。しかし、原料コストの増大や硬質化を招くため、Niを添加する場合は0.5質量%以下の範囲で行う。
Moは、耐食性改善に非常に有効である。Moは高価な元素であり、また多量添加は熱間加工性の低下を招くため、Moを添加する場合は3.0質量%以下の範囲で行う。
Cuは、過剰に含有させると靱性や熱間加工性の低下を招くので、Cuを含有させる場合は2.0質量%以下の含有量に制限される。
Vは、固溶Cを酸化物として析出させる作用を有し、加工性や靱性改善に有効である。しかし、多量に添加すると製造性が劣化するので、Zrを添加する場合は0.3質量%以下の範囲で行う。
Zrは、鋼中の酸素を酸化物として捕らえる作用を有するので、加工性や靱性改善に有効である。しかし、多量に添加すると製造性が劣化するので、Zrを添加する場合は0.3質量%以下の範囲で行う。
Bは、Nを固定し耐食性や加工性の改善に寄与する。また、熱間加工性の改善効果もある。しかし、多量に添加すると却って熱間加工性が低下し、溶接性も低下するようになる。このため、Bを添加する場合は0.01質量%以下の範囲で行う。
なお、上記以外に、例えばCa,Mg,Coなどは原料のスクラップから混入することがあるが、特に多量に含まれる場合を除き、絞りしごき加工性にはほとんど影響しない。
発明者らは上記の成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼板において、板面に平行な面におけるX線積分強度比I{211}/I{110}を30〜500にコントロールしたとき、顕著な絞りしごき加工性向上効果が得られることを見出した。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、{211}面と{110}面は圧延方向と45°方向のr値に関与していると考えられ、そのX線積分強度比が上記の範囲にあるとき45°方向のr値が向上することにより異方性が低減し、絞り加工段階でのカップの耳高さが低くなって、続くしごき加工段階での変形の均一性向上に寄与するものと考えられる。一方、しごき加工自体はr値と関連付けられる深絞り加工とはまったく異なった加工方法である。しごき加工時のダイス直下における変形挙動には鋼板の集合組織が大きく影響すると考えられることから、上記のX線積分強度比にコントロールされた集合組織は、しごき加工段階での「缶ちぎれ」,「焼付き」,「かじり」の防止にも直接寄与しているものと推察される。
板面に平行な面におけるX線積分強度比I{211}/I{110}が30よりも小さいと、しごき加工段階において「缶ちぎれ」,「焼付き」,「かじり」が生じやすくなる。上記X線積分強度比が500を超えると、絞り加工段階で「しわ」が発生しやすく、続くしごき加工段階で「缶ちぎれ」を誘発する。
前記X線積分強度比I{211}/I{110}を30〜500にコントロールするには、冷間圧延方法を工夫する必要がある。
発明者らの詳細な研究によれば、第1に、仕上げ焼鈍前の冷間圧延率(焼鈍状態からの積算)を合計で87%以上と大きくする必要がある。第2に、当該冷間圧延の初期に圧延方向が同一となる複数パスの圧下を合計圧延率が40%以上となるまで付与することが必要である。
初期の段階で40%以上の一方向冷延を行うことによって、表面の剪断的な変形を小さく維持しながら板厚中心部まで十分に圧延歪が付与され、いわゆるシャープな集合組織が形成されると考えられる。このような一方向の冷間圧延を行うには、直列に複数の圧延スタンドを持つ「タンデム式」の冷間圧延機を用いると好都合である。タンデム式圧延機は直径200mm以上の大径ワークロールを備えるものが多いが、加工硬化の大きいステンレス鋼板を圧延するには1パス(1スタンド)の圧下率を大きくできる小径ワークロールを備えたタイプが有利である。ただし、一方向冷延工程の圧延率を40%以上確保できるならば、直径200mm以上の大径タイプと直径100mm以下の小径タイプで、絞りしごき加工性にほとんど差は無かったことから、特にワークロール径は規定しなくてよい。
なお、単スタンドのリバース式圧延機で一方向冷延を行う場合は、1パスごとに巻き戻せばよい。
次いで、前記一方向冷延工程を含めた合計圧延率が87%以上になるまで中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を続行する。合計圧延率が87%未満ではX線積分強度比I{211}/I{110}を安定して30以上にすることが困難であり、結果的に、絞りしごき加工性を安定して改善することができない。一方、合計圧延率が93%を超えると、集合組織が過度に発達し、ほとんどの場合、X線積分強度比I{211}/I{110}が500を超えてしまう。この場合、前述のように絞り加工段階で「しわ」が生じやすく、絞りしごき加工性の安定的な改善が見込めない。したがって、仕上げ焼鈍前の冷間圧延率は合計87〜93%に規定する。
一方向冷延工程後の冷間圧延は、1パスごとに圧延方向を逆転する「双方向冷延」とすることが望ましい。この場合、一方向冷延工程と逆方向の圧延を最初に行う圧延パスが、双方向冷延工程の1パス目となる。双方向冷延工程は単スタンドのリバース式圧延機を用いて行えばよい。
なお、最終的な板厚は0.2〜0.5mm程度とすることが望ましい。
冷間圧延後には通常の条件で仕上げ焼鈍を行い、酸洗すればよい。
さらに、このステンレス鋼板の表面に樹脂塗膜を形成することで、成形加工時の材料の滑り込み性が向上するとともに、下地のステンレス鋼を保護する作用が発揮され、絞りしごき加工性を一層向上させることができる。この樹脂塗膜としてはウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリオレフィン樹脂,エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも塗膜の延性・強度バランスに優れたウレタン樹脂が好適である。また、主樹脂にエポキシ樹脂を配合させることで、エポキシ樹脂が基材との界面に濃化し塗膜の密着性を更に高めることができる。
前記の樹脂塗膜に固形潤滑粒子を分散させると、加工時の滑り込み性が一層向上し、絞りしごき性の改善効果が大きい。固形潤滑粒子としてはフッ素樹脂,ポリオレフィン樹脂,スチレン樹脂,塩化ビニル樹脂等の合成樹脂粉末を用いることが望ましい。これらの樹脂粒子を2種以上混合して用いてもよい。塗膜の主樹脂と相溶しない樹脂粉末を固形潤滑粒子として分散させ、その粒子の一部分を樹脂塗膜より突出させると、厳しい絞り加工を行う際に「かじり」の発生を低減する効果が大きくなる。合成樹脂粉末の分散量が樹脂組成物に対して1質量%に満たないと、樹脂塗膜だけの場合と比べ潤滑性向上効果はほとんど向上しない。逆に20質量%を超える過剰量の合成樹脂粉末を配合すると処理液中の分散性が悪くなる。このため、合成樹脂粉末を固体潤滑粒子として樹脂塗膜中に分散させる場合は、その配合量を1〜20質量%とすることが望ましい。
樹脂塗膜は、加工後に皮膜をアルカリ洗浄により溶解除去可能なアルカリ可溶タイプや、加工後も皮膜を残存させ耐初期錆性や耐指紋性を付与できる非脱膜タイプが、用途に応じて使用可能である。アルカリ可溶タイプにするには、塗膜中にカルボキシル基を多く導入することで皮膜の耐水性を弱め、短時間のアルカリ洗浄で溶解できるようにするのがよい。塗膜中のカルボキシル基の量は酸価で40〜90の範囲に調整することが好ましい。酸価が40未満では塗膜の溶解性が不十分であり、90を超えると塗膜が脆弱になって耐しごき性の改善効果が得られない。
樹脂塗膜の厚さは0.2〜10μmの範囲に調整することが好ましい。膜厚が0.2μmの場合、高面圧下での絞り加工時に「かじり」が発生しやすい。逆に10μmを超えると下地のステンレス鋼に追従することで生じる塗膜の内部応力が大きくなって塗膜が剥離しやすくなる。
なお、樹脂塗膜の密着性を向上させるには、ステンレス鋼板表面に化成処理などの前処理を施すことが効果的である。
表1に示す化学組成のフェライト系ステンレス鋼を溶製し、熱間圧延にて板厚6.0mm,5.5mm,4.0mm,3.5mmおよび3.0mmの熱延鋼帯を得た。各熱延鋼帯を連続焼鈍酸洗ラインに通板して950℃での熱延板焼鈍および酸洗を行い、次いで4スタンドのタンデム式圧延機(ワークロール径:80mm)による一方向冷延と単スタンドのリバース式圧延機による双方向冷延を組み合わせて0.4mm厚の冷延鋼板を製造した。その後、連続焼鈍酸洗ラインに通板して950〜1050℃の仕上げ焼鈍および酸洗を施した。一部の鋼板については表面に樹脂塗膜を形成した。樹脂塗膜はウレタン樹脂にに固形潤滑粒子として合成樹脂粉末(フッ素樹脂とポリオレフィン樹脂の混合樹脂粉末)を10質量%配合したものとし、膜厚は1μmとした。
Figure 0004191069
前記の仕上げ焼鈍・酸洗済みの鋼板を用いて集合組織を調べた。板面に平行な板厚の1/4厚位置の面を表面に持つ試料を調製し、Mokα線によるX線回折を行い、X線積分強度比I{211}/I{110}を求めた。
また、前記の仕上げ焼鈍・酸洗済み鋼板あるいはその表面に樹脂塗膜を形成した鋼板について、絞りしごき加工性を調べた。上記鋼板から直径70mmのブランクを打ち抜き、直径40mmのポンチで絞る「絞り工程」(絞り比1.75)と、その後、直径33mmのポンチで再度絞る「再絞り工程」(絞り比1.21)を実施した。得られたカップを3段のしごき加工ダイスからなるしごき成形装置を用いて、缶径33mm,缶の壁上部の厚さ0.2mmの絞りしごき缶に成形加工した。
絞りしごき性の評価は、得られた絞りしごき缶を目視により調査し、以下の3段階評価とした。
◎:かじりの発生が認められない。
○:かじりの発生がわずかに認められるが、所定形状への成形が可能。
△:かじりが発生し、所定形状への成形が不可能。
×:缶ちぎれが発生。
○評価の場合でも多くの用途で十分使用可能であると判断されるため、○評価以上を合格と判定した。
結果を表2に示す。
Figure 0004191069
X線積分強度比I{211}/I{110}が30〜500となるよう、適正な条件で製造された本発明例のものは、いずれも優れた絞りしごき加工性を呈した。
これに対し、比較例であるNo.1〜5,9,12,15,16,21および24はタンデム圧延機による一方向冷延の圧延率が不足し、またNo.10は合計圧延率が不足したため、いずれもX線積分強度比I{211}/I{110}が30未満となり絞りしごき加工性の改善が不十分であった。No.11は合計圧延率が大きすぎたため、X線積分強度比I{211}/I{110}が500を超えるまで集合組織が過剰に発達し、絞りしごき加工性の改善が不十分であった。No.25はC含有量が高く、またNo.26はCr含有量が高いため、いずれも鋼が硬質になり、X線積分強度比I{211}/I{110}が適正範囲であっても絞りしごき加工性は改善できなかった。
また、樹脂塗膜を形成することにより絞りしごき加工性が一層向上した(No.6と7、No.13と14、No.17と18参照)。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.05%以下,Si:1.0%以下,Mn:1.5%以下,P:0.05%以下,S:0.01%以下,Cr:11.0〜23.0%,Al:0.5%以下,N:0.05%以下,Ti:0〜0.5%,Nb:0〜0.5%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、板面に平行な面におけるX線積分強度比I{211}/I{110}が30〜500である絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板。
  2. 質量%で、C:0.05%以下,Si:1.0%以下,Mn:1.5%以下,P:0.05%以下,S:0.01%以下,Cr:11.0〜23.0%,Al:0.5%以下,N:0.05%以下,Ti:0〜0.5%,Nb:0〜0.5%であり、且つNi:0.5%以下,Mo:3.0%以下,Cu:2.0%以下,V:0.3%以下,Zr:0.3%以下およびB:0.01%以下のうち1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、板面に平行な面におけるX線積分強度比I{211}/I{110}が30〜500である絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の鋼板表面に樹脂塗膜を有する絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板。
  4. 質量%で、C:0.05%以下,Si:1.0%以下,Mn:1.5%以下,P:0.05%以下,S:0.01%以下,Cr:11.0〜23.0%,Al:0.5%以下,N:0.05%以下,Ti:0〜0.5%,Nb:0〜0.5%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成の焼鈍鋼板に、圧延方向が同一となる複数パスの圧下を合計圧延率が少なくとも40%以上となるまで付与し(一方向冷延工程)、次いで中間焼鈍せずに1パス目の圧下が前記と反対の圧延方向から始まる複数パスの圧下を1パスごとに圧延方向が逆転するように付与し(双方向冷延工程)、前記一方向冷延工程と双方向冷延工程の合計圧延率が87〜93%となるように冷間圧延を終了し、その後、仕上げ焼鈍を施すことによって、板面に平行な面におけるX線積分強度比I{211}/I{110}を30〜500に調整する絞りしごき加工用フェライト系ステンレス鋼板の製造法。
  5. 前記一方向冷延工程をタンデム式圧延機を用いて行い、前記双方向圧延工程をリバース式圧延機を用いて行う請求項に記載の製造法。
  6. 一方向圧延工程に供する焼鈍鋼板が、質量%で、C:0.05%以下,Si:1.0%以下,Mn:1.5%以下,P:0.05%以下,S:0.01%以下,Cr:11.0〜23.0%,Al:0.5%以下,N:0.05%以下,Ti:0〜0.5%,Nb:0〜0.5%であり、且つNi:0.5%以下,Mo:3.0%以下,Cu:2.0%以下,V:0.3%以下,Zr:0.3%以下およびB:0.01%以下のうち1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有するものである請求項4または5に記載の製造法。
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