JP4189873B2 - 穀粒中の混合品種の有無および混合された品種の判別方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、穀粒中の混合品種の有無および混合された品種の判別方法に関するものである。たとえば、良食味米への混米の有無およびその品種の判定を行うためのDNA品種判別方法に関し、より詳しくは米、小麦、トウモロコシ、大麦等の穀粒あるいはそれらの加工品から抽出したDNAを鋳型とし、適当な対合プライマー群の存在下にマルチプレックスPCRを行うことによって、増幅したDNAのバンドパターンから混入されている品種を判別する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、穀粒の価格は、穀粒の加工適性や食味に応じて決定され、良質の穀粒ほど高価格で取り引きされている。たとえば米において、平成12年度におけるわが国の作付け上位4品種である「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」および「あきたこまち」に代表される良食味米は、消費者の良食味米志向を受けて高値で取り引きされている。
しかし、一部では、これらの良食味品種以外の米を混米しながら、表示を偽って販売されている不正混米が行われ、問題となっている。平成13年4月から施行される改正JAS法のもとでは、米の包装での品種、産地、産年の表示が義務づけられており、内容と表示が一致しているかどうかを科学的に検査する技術の開発が必要とされている。
【0003】
従来、米等の穀物の品種については、植物体の草型、穀粒の粒型、葉や米の酵素多型などによって識別されてきた。しかし、現在のように、わが国の米における「コシヒカリ」とその類縁系統が全体の7割を越えるような近縁系統の多い状況下では、前述の方法によって品種混合の有無を識別することは不可能である。
本発明者らは、これまでに、RAPD法やSTS化プライマー法等のDNAによって品種を判別する技術を開発し、日本食品科学工学会誌46巻3号(p.117-122)、特許第3048149号明細書および特開2001−95589号公報に開示してきた。
しかし、これらの技術では、単一品種同士の米の品種識別は明瞭に行うことができるものの、たとえば「コシヒカリ」にその識別バンドが重なる場合、「コシヒカリ」よりも発現する識別バンド数の少ない異品種の米を1〜3割程度混米した場合や複数の品種を混米した場合に、これらを検出することが困難であった。
【0004】
また、3〜4種類のプライマーセットによる混米の有無の判定では、たとえ混米特有のDNAバンドが現れなかったとしても、その品種が良食味米のような対象品種である確率は88〜94%(=1−(0.5)3 〜 4 )に過ぎず、十分に高い確率とは言えないのが現状である。
さらに、混米特有のバンドが現れたとしても、実際には混米の品種の同定が必要とされる場合が多い。このため、対象品種に現れる筈のない識別バンドが現れたのみでは混米品種の同定のためには情報が不十分であり、混米品種の同定のためにはさらなるPCRを行う必要がある。
したがって、これまでの公知の技術では、穀粒の品種混合の有無および混合された品種を簡易迅速、かつ正確に判定することは不可能であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、「コシヒカリ」等の良質穀粒に対する他の品種の混合の有無および混合された品種を簡易迅速、かつ正確に判定する方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、穀粒試料から抽出したDNAを鋳型とするPCR増幅を行うに際し、対象の良質品種には現れずに他の品種のみに特有に現れるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いて第1次のマルチプレックスPCRを行い、発現したバンドパターンによっては対合プライマーを選択的に用いた第2次のマルチプレックスPCRを行うことにより増幅したDNAの多型を検出することによって、穀類試料が対象品種であることを確認し、さらには品種混合の有無および混合された品種の同定を簡易迅速、かつ正確に行うことができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明に到達したものである。
【0007】
請求項1記載の本発明は、穀粒にイネ品種「コシヒカリ」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「コシヒカリ」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法である。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)B7F22(配列番号19)およびB7R17(配列番号20)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96)
【0008】
請求項2記載の本発明は、さらに、以下の5)〜8)に示す4種の対合プライマーからなる対合プライマー群を用いて第2次のマルチプレックスPCR法を行い、発現したDNAバンドパターンによってイネ品種「コシヒカリ」であることを確認することを特徴とする請求項1記載のイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法である。
5)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
6)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
7)M11F20(配列番号67)およびM11R20(配列番号68)
8)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96)
請求項3記載の本発明は、第2次のマルチプレックスPCR法において、さらに以下の9)に示す対合プライマーを用いることを特徴とする請求項1または2記載のイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法である。
9)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
【0009】
請求項4記載の本発明は、穀粒にイネ品種「ひとめぼれ」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「ひとめぼれ」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別方法である。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
4)S13F25(配列番号83)およびS13R24(配列番号84)
【0010】
請求項5記載の本発明は、さらに、以下の5)〜9)に示す5種の対合プライマーからなる対合プライマー群を用いて第2次のマルチプレックスPCR法を行い、発現したDNAバンドパターンによってイネ品種「ひとめぼれ」であることを確認することを特徴とする請求項4記載のイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別方法である。
5)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
6)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
7)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
8)P5F20(配列番号75)およびP5R25(配列番号76)
9)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96)
【0011】
請求項6記載の本発明は、穀粒にイネ品種「ヒノヒカリ」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「ヒノヒカリ」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「ヒノヒカリ」のDNA品種判別方法である。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)G28F17(配列番号55)およびG28R28(配列番号56)
4)T16F30(配列番号89)およびT16R30(配列番号90)
【0012】
請求項7記載の本発明は、穀粒にイネ品種「あきたこまち」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「あきたこまち」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜5)に示す5種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「あきたこまち」のDNA品種判別方法である。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
5)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
【0013】
請求項8記載の本発明は、試料米が米飯である請求項1〜7のいずれかに記載のDNA品種判別方法である。
請求項9記載の本発明は、混入した試料米を各1粒ずつ検定することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のDNA品種判別方法である。
【0014】
請求項10記載の本発明は、以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別用キットである。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)B7F22(配列番号19)およびB7R17(配列番号20)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96)
【0015】
請求項11記載の本発明は、以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別用キットである。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
3)M11F20(配列番号67)およびM11R20(配列番号68)
4)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96)
請求項12記載の本発明は、さらに以下の5)に示す対合プライマーを含むことを特徴とする請求項11記載のイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法である。
5)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
【0016】
請求項13記載の本発明は、以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別用キットである。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
4)S13F25(配列番号83)およびS13R24(配列番号84)
請求項14記載の本発明は、以下の1)〜5)に示す5種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別用キットである。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
3)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
4)P5F20(配列番号75)およびP5R25(配列番号76)
5)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96)
【0017】
請求項15記載の本発明は、以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「ヒノヒカリ」のDNA品種判別用キットである。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)G28F17(配列番号55)およびG28R28(配列番号56)
4)T16F30(配列番号89)およびT16R30(配列番号90)
【0018】
請求項16記載の本発明は、以下の1)〜5)に示す5種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「あきたこまち」のDNA品種判別用キットである。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
5)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
【0019】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明を詳細に説明する。
本発明における穀類とは、稲科植物の種子を指し、たとえば米、小麦、トウモロコシ、大麦、ソルガム等があり、これらの加工品も含まれる。また、試料米とは、精米、玄米、精米粉、玄米粉、米飯、餅等を意味する。
【0020】
また、本発明において対象品種とは、穀類中の主流をなす品種、たとえば米では「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「あきたこまち」、「ササニシキ」等の良食味米を意味し、大麦の場合は、「イチバンボシ」、「サンシュウ」、「大系HK64」等、トウモロコシの場合は、「ハニーバンダム」、「ピーターコーン」、「ワキシーコーン」等を意味する。
これらの穀類は、穀粒自体を試料とする他、必要に応じて適当な粉砕機器、たとえば超遠心粉砕機(レッチェ社製)、サイクロンミル(ユーディ社製)、ミルサー(イワタニ製)、乳鉢等によって粉砕し、粉末として用いる。
【0021】
穀類試料からのゲノムDNAの抽出には、公知のDNA抽出法を適用することができ、たとえばフェノール抽出法、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)法、アルカリSDS法などが挙げられる。本発明においては、後記の実施例で示すように、CTAB法を用いるのが好ましい。
たとえば、試料にCTAB溶液(0.1M トリス塩酸、2mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、1.4M NaCl(pH8.0))を加えて攪拌し、恒温槽に入れた後、再びCTAB溶液を加え、所定時間静置して抽出することにより、ゲノムDNAを得ることができる。
【0022】
また、試料が米飯や餅等の場合には、特許第3048149号明細書に記載されているように、粉末試料を耐熱性アミラーゼによって処理した後にゲノム遺伝子を抽出する酵素法によって抽出することもできる。
DNAの抽出後、必要に応じてクロロホルム/イソアミルアルコール処理、イソプロパノール沈殿、フェノール/クロロホルムによる除蛋白、エタノール沈殿等の精製工程を加えてもよい。これらの工程の中では、クロロホルム/イソアミルアルコール処理が好ましい。この処理は、たとえばDNA抽出液にクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を加えて攪拌、遠心分離して得られる上清に、DNA沈殿液を加えてさらにDNAを沈殿させた後、遠心分離を行って得られたDNA沈殿物を1M NaClで抽出し、イソプロピルアルコール、エタノールによる洗浄、沈殿の後、TE緩衝液に溶解するもので、これによりDNA試料液を得ることができる。
【0023】
続いて、ランダムプライマーの共存下に、上記の操作により得られるゲノムDNAを鋳型とするPCR法を行う。これは、ゲノムDNAのうち、次のPCR用の対合プライマー設計の基となる品種間の識別性を有する塩基配列を増幅させるために行うものである。
ここで、本発明におけるPCR法とは、DNAポリメラーゼによるDNA複製の連鎖反応を指す。すなわち、鋳型となるDNAに耐熱性DNAポリメラーゼおよびプライマーの共存下で約90〜96℃の高温処理過程(変性)、約30〜75℃のプライマー・DNA結合過程(アニーリング)、約70〜75℃のDNA複製過程(伸長)の3過程を20〜60サイクル繰り返すことにより、約100万倍〜10億倍に増加させる(増幅)反応をいう。
また、マルチプレックスPCR法とは、複数の対合プライマーを組み合わせて行うPCR法を意味し、この方法には互いにプライマーダイマーを生成したり、識別バンドが互いに干渉したり、重複したりすることがない、融解温度の近い複数の対合プライマー(8〜30量体)を選定して用いる。その結果、PCR回数および電気泳動・染色回数を減らすことができる。
【0024】
対合プライマーとは、品種間の識別性の現れる塩基配列を増幅させることができる1対のプライマーであり、前記したように、RAPD法に基づき、上記穀類試料より得られるDNAからPCR法を行って得られる品種間に識別性のあるバンド部分の塩基配列を基に設計されるものである。すなわち、対象とする穀類のゲノムDNAを鋳型とし、ランダムプライマー存在下で行うPCR法によって識別バンドとして得られたDNAの塩基配列を決定し、そのうちランダムプライマー部分のフォワード側およびリバース側の15〜29残基を1対のプライマーとして、対象穀類の鋳型DNAと共に品種識別のために行うPCR法に使用するものを指す。
対合プライマーを選定することにより、ランダムプライマーが鋳型DNAに結合する複数個所のうち、品種識別のために行うPCR法においては、識別に有用な識別バンドとなる塩基配列部分のみに選択的に結合することになる。
【0025】
本発明におけるランダムプライマーとは、穀類試料から抽出したゲノムDNAを鋳型DNAとしてPCR法で増幅する際に、変性して一本鎖に分かれたゲノムDNAに相補的に結合して二本鎖構造を形成し、鋳型DNA複製の開始点となるプライマーを指す。通常は8〜50量体のヌクレオチドであり、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)を無作為の配列に結合させた合成プライマーのことであり、たとえば市販されている10量体ランダムプライマー(オペロン社製)やDNAオリゴマーセット(12量体)(和光純薬社製)等が挙げられる。
【0026】
続いて、PCRで得られる増幅DNAの電気泳動を行う。これは、増幅産物のうち、目的とする対合プライマーを設計するための基となる、品種間の識別性の現れる塩基配列であることを示すバンドを検出するためである。
ここで電気泳動とは、PCR法によって増幅されたDNAが、アガロースやポリアクリルアミドのゲル中を直流電荷に引かれて移動する際に、DNAの分子量の差によって分離され、臭化エチジウムによって帯状に染色されてバンドとして増幅DNAの相違が検出される操作をいう。
【0027】
このようにして検出された品種間の識別性の現れたバンドから、次のようにして1対の対合プライマーを作製する。
すなわち、当該識別性の現れたバンドを前記ゲルから切り出してDNAを抽出、回収し、これを大腸菌に組み込んで増殖させる。次いで、アルカリミニプレップ法等でプラスミドを抽出し、これを鋳型DNAとするPCR法で増幅し、DNA自動シークエンサーにより塩基配列を決定する。
決定された塩基配列から、対合プライマーの設計を行う。先のランダムプライマーによるPCR法において、鋳型DNAである穀類試料由来のDNAのうちランダムプライマーが結合した部位は、当該ランダムプライマーと同一あるいは相補的な(相同な)配列を有している筈である。つまり、この鋳型DNAから切り出して抽出した品種識別性の高いDNA塩基配列(これがPCR法における対合プライマーの母体となる)は、両端にランダムプライマーと同一あるいは相同な配列を有していることになる。
したがって、この識別性の高いDNA塩基配列のフォワード側およびリバース側のそれぞれから、適当な配列と長さを有する穀類の品種判定に有用な対合プライマーを設計することができる。
【0028】
本発明における対合プライマーは、互いに同一配列あるいは相同配列を有していることが望ましい。
また、対合プライマーのサイズは、好ましくは10〜40塩基、より好ましくは13〜29塩基の範囲内であることが必要である。プライマーがこの範囲を超える場合は、鋳型DNAとの結合性および結合後の解離が悪くなり、PCR後にも識別バンドが検出されず、品種識別が困難になるため好ましくない。また、この範囲を下回る場合は、非特異的な結合によるミスマッチ等が起こり、識別バンド以外のバンドの発現頻度が高くなるため、品種識別が困難になる他、複数のプライマーの併用によるPCRの簡易迅速化が困難になるため好ましくない。
【0029】
本発明者らは、上記のPCRを行った結果、各種品種間に識別性の現れる数種のバンドを得た。米における識別バンドと品種識別性の関係を表1に示す。
【0030】
【表1】
+:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現することを示す。
−:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現しないことを示す。
【0031】
【表2】
+:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現することを示す。
−:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現しないことを示す。
【0032】
【表3】
+:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現することを示す。
−:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現しないことを示す。
【0033】
【表4】
+:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現することを示す。
−:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現しないことを示す。
【0034】
トウモロコシおよび大麦における識別バンドと品種識別性の関係を、表2に示す。
【0035】
【表5】
+:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現することを示す。
−:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現しないことを示す。
【0036】
【表6】
+:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現することを示す。
−:PCR後の電気泳動において、識別バンドが発現しないことを示す。
【0037】
各バンドに由来して、種々の対合プライマーを得た。
(1)識別バンドA7(0.7kbp)
このバンドは、「コシヒカリ」や「あきたこまち」等の品種から抽出したDNAを増幅することにより得られるが、「日本晴」や「朝の光」では特異的に見られない。このA7から、1対のプライマーA7F30(配列表の配列番号5)およびA7R30(配列表の配列番号6)を設計した。
続いて、上記のプライマーの3’側から所定数の塩基を切除し、本発明の対合プライマーであるA7F19(配列表の配列番号7)およびA7R16(配列表の配列番号8)を得た。
【0038】
(2)識別バンドB43(0.9kbp)
このバンドは、「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」や「ササニシキ」から抽出したDNAを増幅することにより得られるが、「きらら397」や「朝の光」では見られない。このB43から、1対のプライマーB43F30(配列表の配列番号25)およびB43R30(配列表の配列番号26)を設計した。
続いて、上記のプライマーの3’側から所定数の塩基を切除し、本発明の対合プライマーであるB43F17(配列表の配列番号27)およびB43R18(配列表の配列番号28)を得た。
【0039】
(3)識別バンドE30(0.85kbp)
このバンドは、「ひとめぼれ」や「むつほまれ」等の品種から抽出したDNAを増幅することにより得られるが、「コシヒカリ」や「あきたこまち」では見られない。このE30から、1対のプライマーE30F30(配列表の配列番号37)およびE30R30(配列表の配列番号38)を設計した。
続いて、上記のプライマーから塩基を切除し、本発明の対合プライマーであるE30F28(配列表の配列番号39)およびE30R24(配列表の配列番号40)を得た。
【0040】
(4)識別バンドJ6(0.9kbp)
このバンドは、「コシヒカリ」や「きらら397」から抽出したDNAを増幅することにより得られるが、「ササニシキ」では見られない。このJ6から、1対のプライマーJ6F30(配列表の配列番号57)およびJ6R30(配列表の配列番号58)を設計した。
続いて、上記のプライマーから塩基を切除し、本発明の対合プライマーであるJ6F18(配列表の配列番号59)およびJ6R20(配列表の配列番号60)を得た。
【0041】
(5)識別バンドM2CG(1.2kbp)
このバンドは、10量体ランダムプライマーに2残基添加したもので、「ひとめぼれ」や「日本晴」から抽出したDNAを増幅することにより得られるが、「コシヒカリ」や「キヌヒカリ」では見られない。このM2CGから、1対のプライマーM2CGF30(配列表の配列番号61)およびM2CGR30(配列表の配列番号62)を設計した。
続いて、上記のプライマーから塩基を切除し、本発明の対合プライマーであるM2CGF16(配列表の配列番号63)およびM2CGR15(配列表の配列番号64)を得た。
【0042】
(6)識別バンドS13(1.8kbp)
このバンドは、「きらら397」や「ほしのゆめ」から抽出したDNAを増幅することにより得られるが、「日本晴」や「朝の光」では特異的に見られない。このS13から、1対のプライマーS13F30(配列表の配列番号81)およびS13R30(配列表の配列番号82)を設計した。
続いて、上記のプライマーから塩基を切除し、本発明の対合プライマーであるS13F25(配列表の配列番号83)およびS13R24(配列表の配列番号84)を得た。
【0043】
(7)識別バンドWK9(1.6kbp)
このバンドは、「ひとめぼれ」や「あきたこまち」から抽出したDNAを増幅することにより得られるが、「こしひかり」や「ササニシキ」では見られない。このWK9から、1対のプライマーWK9F30(配列表の配列番号93)およびWK9R30(配列表の配列番号94)を設計した。
続いて、上記のプライマーから塩基を切除し、本発明の対合プライマーであるWK9F20(配列表の配列番号95)およびWK9R20(配列表の配列番号96)を得た。
【0044】
上記のプライマーは米を基にして設計したものであるが、その多くは同じイネ科に属するトウモロコシや大麦等の識別にも利用できる。
本発明の対合プライマーを得るために行う塩基の切除とは、穀類試料より抽出した鋳型DNAを増幅し、これを基に設計された1対のプライマーの3’側の1〜17個の塩基を切除し、13〜29個の塩基とすることをいう。
塩基を切除する方法としては、好適な制限酵素を用いて行う常法によって実施すればよい。
【0045】
具体的には、1対のプライマーであるA6F30(配列表の配列番号1)およびA6R30(配列表の配列番号2)、A7F30(配列表の配列番号5)およびA7R30(配列表の配列番号6)、A52F30(配列表の配列番号9)およびA52R30(配列表の配列番号10)、B1F30(配列表の配列番号13)およびB1R30(配列表の配列番号14)、B7F30(配列表の配列番号17)およびB7R30(配列表の配列番号18)、B18F30(配列表の配列番号21)およびB18R30(配列表の配列番号22)、B43F30(配列表の配列番号25)およびB43R30(配列表の配列番号26)、D4F30(配列表の配列番号29)およびD4R30(配列表の配列番号30)、E22F30(配列表の配列番号33)およびE22R30(配列表の配列番号34)、E30F30(配列表の配列番号37)およびE30R30(配列表の配列番号38)、F6F30(配列表の配列番号41)およびF6R30(配列表の配列番号42)、G4F30(配列表の配列番号45)およびG4R30(配列表の配列番号46)、G22F30(配列表の配列番号49)およびG22R30(配列表の配列番号50)、G28F30(配列表の配列番号53)およびG28R30(配列表の配列番号54)、J6F30(配列表の配列番号57)およびJ6R30(配列表の配列番号58)、M2CGF30(配列表の配列番号61)およびM2CGR30(配列表の配列番号62)、M11F30(配列表の配列番号65)およびM11R30(配列表の配列番号66)、P3F30(配列表の配列番号69)およびP3R30(配列表の配列番号70)、P5F30(配列表の配列番号73)およびP5R30(配列表の配列番号74)、Q16F30(配列表の配列番号77)およびQ16R30(配列表の配列番号78)、S13F30(配列表の配列番号81)およびS13R30(配列表の配列番号82)、T8F30(配列表の配列番号85)およびT8R30(配列表の配列番号86)、T16F30(配列表の配列番号89)およびT16R30(配列表の配列番号90)、WK9F30(配列表の配列番号93)およびWK9R30(配列表の配列番号94)から、上記の方法によって、3’側の1〜17個の塩基を切除した13〜29個の塩基からなる対合プライマーからなる群より選ばれた2種以上の対合プライマーを用いることができる。
【0046】
すなわち、対合プライマーとしては、A6F21(配列表の配列番号3)およびA6R22(配列表の配列番号4)、A7F19(配列表の配列番号7)およびA7R16(配列表の配列番号8)、A52F29(配列表の配列番号11)およびA52R21(配列表の配列番号12)、B1F25(配列表の配列番号15)およびB1R20(配列表の配列番号16)、B7F22(配列表の配列番号19)およびB7R17(配列表の配列番号20)、B18F15(配列表の配列番号23)およびB18R21(配列表の配列番号24)、B43F17(配列表の配列番号27)およびB43R18(配列表の配列番号28)、D4F23(配列表の配列番号31)およびD4R21(配列表の配列番号32)、E22F20(配列表の配列番号35)およびE22R21(配列表の配列番号36)、E30F28(配列表の配列番号39)およびE30R24(配列表の配列番号40)、F6F25(配列表の配列番号43)およびF6R22(配列表の配列番号44)、G4F18(配列表の配列番号47)およびG4R24(配列表の配列番号48)、G22F27(配列表の配列番号51)およびG22R23(配列表の配列番号52)、G28F17(配列表の配列番号55)およびG28R28(配列表の配列番号56)、J6F18(配列表の配列番号59)およびJ6R20(配列表の配列番号60)、M2CGF16(配列表の配列番号63)およびM2CGR15(配列表の配列番号64)、M11F20(配列表の配列番号67)およびM11R20(配列表の配列番号68)、P3F20(配列表の配列番号71)およびP3R15(配列表の配列番号72)、P5F20(配列表の配列番号75)およびP5R25(配列表の配列番号76)、Q16F25(配列表の配列番号79)およびQ16R20(配列表の配列番号80)、S13F25(配列表の配列番号83)およびS13R24(配列表の配列番号84)、T8F22(配列表の配列番号87)およびT8R25(配列表の配列番号88)、T16F24(配列表の配列番号91)およびT16R26(配列表の配列番号92)、WK9F20(配列表の配列番号95)およびWK9R20 (配列表の配列番号96)からなる群より選ばれた2種あるいはそれ以上の組み合わせからなるオリゴヌクレオチドを用いることができる。
【0047】
本発明で用いる対合プライマーについては、上記した対合プライマーのみに限定されるものではなく、識別性や融解温度(Tm)等の点で使用可能な対合プライマーを新たに設計して使用することもできる。
ここで、Tmとは、DNAの2本鎖がそれぞれの1本鎖に分離する温度のことであり、PCRのアニーリング温度は、通常、使用するプライマーのTm付近が適している。本発明においては、対合プライマーの併用に際し、Tmの類似した対合プライマー同士を選択して使用し、Tmに近い適正なアニーリング温度を選定することによって、各対合プライマーを単独で使用した場合に得られる識別バンドを1回あるいは数回のPCRで得ることができる。
【0048】
具体的には、使用する対合プライマーのTmの平均値と、各対合プライマーのTmとの差が15℃(±15℃)以内で、かつPCRのアニーリング温度もその範囲内とすることが好ましい。
アニーリング温度を対合プライマーのTmの平均値よりも15℃以上低い温度としてPCRを行う場合には、本来識別バンドが現れない品種にも識別バンドが現れる恐れがあるため、好ましくない。一方、Tmの平均値よりも15℃以上高い温度としてPCRを行う場合には、本来発現していた識別バンドが消えてしまうことがあり、好ましくない。
【0049】
本発明では、対合プライマーを用いて、先に抽出した鋳型DNAと共にマルチプレックスPCRを行う。
対合プライマーを適切に選定することにより、PCRにおいて、品種の識別に有用な識別バンドとなる塩基配列部位のみに選択的に結合する。その結果、本発明の目的とする穀類の判別が可能となるのである。
本発明において、対合プライマーのうちの1種類あるいは2種類以上の組み合わせを混合使用することが可能である。
本発明における対合プライマーの混合使用とは、選択した複数の対合プライマーを、品種の識別を行うためのPCRにおいて、同一反応に併用することを意味する。従来のRAPD法では、識別バンド以外に多数の共通バンドが発現するため、複数のプライマーを同時に使用することが困難であった。本発明では、適切な対合プライマーの組み合わせ(プライマーセット)を用いることにより、それぞれのプライマーに対応する識別バンドのみが電気泳動で発現することになるため、混合使用が可能である。
【0050】
調製した対合プライマーは、全てが混合使用できるものではなく、各プライマー間で相互のプライマーダイマー生成が起こらないこと、識別バンドが重ならないこと等に注意しながら好適な組み合わせおよび配合割合を選定することが必要である。各種の好適な対合プライマーを混合使用することにより、プライマー毎にPCRを行う必要がなくなり、1回のPCRで多くの品種を正確、かつ簡便に識別することができるため、品種判別に要する労力、時間や費用を大幅に減少させることができる。
【0051】
本発明において、対象品種のみに特異的に発現するポジティブバンドとは、対象品種のみに発現する特異的なバンドパターンであり、対象品種独自のパターンを示すものである。
たとえば、対象品種として「コシヒカリ」、対合プライマーとしてWK9、M11、B43およびG22の4種からなる対合プライマーセットを用いた場合、穀類試料が「コシヒカリ」であればWK9の識別バンドは発現しないが、M11、B43およびG22の3本の識別バンドは発現する。この識別バンドパターンは、他の品種では示すものはなく、対象品種である「コシヒカリ」に独自のバンドパターンを示すものである。
また、対象品種のみに特異的に発現するポジティブバンド識別用対合プライマーセットまたは対象品種のみに発現しないネガティブバンド識別用対合プライマーセットとは、上記のような対象品種独特のバンドパターンとなるプライマーセットのことである。
【0052】
上記の場合、穀類試料が対象品種である「コシヒカリ」であると推定できる各率について検討してみる。すなわち、各識別バンドの発現確率を発現/非発現の0.5と仮定すると、「コシヒカリ」以外のある品種が偶然に4種類の識別バンドの全てにおいて対象品種である「コシヒカリ」と一致する確率は(0.5)4 であることから、0.0625となる。
このことから、未知の穀類試料の4種類のバンドパターンが、全て対象品種と一致した場合には、90%以上の確率で対象品種と同じ品種であると推定することができる。
【0053】
また、対象品種では識別バンドの発現しないネガティブバンドとは、他の品種には識別バンドが発現するが、対象品種には特異的に発現しないバンドパターンを示すものである。
たとえば、対象品種として「コシヒカリ」、対合プライマーとしてWK9F20(配列表の配列番号95)およびWK9R20(配列表の配列番号96)、F6F25(配列表の配列番号43)およびF6R22(配列表の配列番号44)、B7F22(配列表の配列番号19)およびB7R17(配列表の配列番号20)、A6F21(配列表の配列番号3)およびA6R22(配列表の配列番号4)の4種類からなる対合プライマーセットを用いた場合、穀類試料が「コシヒカリ」であればPCR後の増幅DNAバンドが全く発現しない。
一方、穀類試料が他の品種である場合には、いずれかの識別バンドが発現する、すなわち他の品種が「きらら397」である場合は、識別バンドWK9、「キヌヒカリ」の場合は、識別バンドWK9およびB7、「むつほまれ」である場合は、識別バンドB7が発現するというバンドパターンを示すものである。
【0054】
上記において、ネガティブバンド識別用対合プライマーを用いて第1次PCRを行ったとき識別バンドが発現せず、さらに第1表〜第2表に記載の他の対合プライマーを用いて第2次のPCRを行ったとき発現した識別バンドパターンについても、対象品種である「コシヒカリ」と一致した場合、穀物試料は「コシヒカリ」である確率が非常に高いと判定される。
たとえば、対象品種では識別バンドの発現しないネガティブバンド識別用対合プライマー群および対象品種に特異的に発現するポジティブバンドまたは対象品種のみに発現しないネガティブバンド識別用対合プライマー群が、それぞれ4種類であって、前者で識別バンドが全く発現せずに、後者で識別バンドパターンが一致した場合には、穀類試料が「コシヒカリ」ではない確率Pは、(1/2)4 ×(1/2)4 =0.0039であり、0.01以下である。
【0055】
したがって、対象品種では識別バンドが発現しないネガティブバンド識別用対合プライマー群によるPCRで識別バンドが全く発現せず、かつ対象品種に特異的に発現するポジティブバンドまたは対象品種のみに発現しないネガティブバンド識別用対合プライマー群による識別バンドパターンも一致する場合には、当該穀物試料は99.9%以上の確率で「コシヒカリ」であると推定することができる。
【0056】
次に、穀類試料が対象品種に他の品種が混入されたものである場合、その混合品種を同定する方法について説明する。
たとえば、米の品種である「むつほまれ」と「コシヒカリ」の混米の場合、対象品種に特異的に発現するポジティブバンド識別用対合プライマー群として、WK9、M11、G22およびB43の4種類の対合プライマーセットを用いることにより、単一品種同士の比較では、「コシヒカリ」では識別バンドの発現するM11およびG22において、「むつほまれ」では識別バンドが発現しないことから、両者の識別が可能である。
【0057】
しかし、「むつほまれ」を「コシヒカリ」に少量混米した場合には、識別バンドM11およびG22では識別バンドが発現しないという「むつほまれ」のネガティブ性が、「コシヒカリ」の多量に発現するポジティブバンドに隠れてしまうために、混米の検知が不可能である。
したがって、混米中の混入品種の同定においては、単一品種同士の識別を目的とした特開2001−95589号公報に記載されている対合プライマー群のみでは不十分であり、新たに対象品種では識別バンドが現れないが他の品種では識別バンドの現れるネガティブバンド識別用対合プライマー群が必要となる。
【0058】
前記したように、本発明は穀類のDNA品種判別方法を提供すると共に、当該方法に使用されるキットを提供する。当該キットは、対象品種では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現するネガティブバンド識別用対合プライマー群を含有することを特徴とする。好適には、さらに対象品種のみに特異的に発現するポジティブバンド識別用対合プライマー群および/または対象品種のみに特異的に発現しないネガティブバンド識別用対合プライマー群を含有するキットが挙げられる。
本発明のキットに含有される対合プライマー群としては、前記の各種プライマー群を使用することができる。さらに、本発明のキットは、PCR法に使用される試薬類、例えばDNAポリメラーゼや反応用緩衝液等を含んでいてもよい。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1(識別用ネガティブバンドDNA群による「コシヒカリ」への混米の検出例)
わが国の平成11年度における作付け上位20品種である「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「きらら397」、「キヌヒカリ」、「ほしのゆめ」、「はえぬき」、「むつほまれ」、「日本晴」、「ササニシキ」、「つがるロマン」、「ハナエチゼン」、「夢つくし」、「ハツシモ」、「朝の光」、「月の光」、「あいちのかおり」、「祭り晴」、「アキホ」の玄米を試料とし、試験用精米機(山本製作所製、ライスパルVP31T )を用いて歩留まり90%に精白した。
精米試料をレッチェ社製超遠心粉砕機を用いて粉砕し、その6gからCTAB法によってゲノムDNAを抽出した。すなわち、70℃の2%CTAB溶液(0.1M トリス塩酸、2mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、1.4M NaCl、pH8.0)6mlを加えて撹拌し、55℃の恒温槽に入れ、次いで上記CTAB溶液(1%溶液)6mlを加えて30分間DNAを抽出した。
【0060】
その後、DNA抽出液にクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を加えて撹拌した後、遠心分離して上清をとり、DNA沈殿液(1%CTAB、20mM トリス塩酸、10mM EDTA、pH8.0)を加えて4 ℃で一晩静置してDNAを沈殿させた。次に、遠心分離して得られたDNA沈殿物から1MNaClによって抽出し、イソプロピルアルコール、エタノールによる洗浄、沈殿の後、TE緩衝液(10mM トリス塩酸、1mM EDTA、pH8.0)200μlに溶解してDNA試料液とした。
PCRの反応液組成は、滅菌水11.74μl、ポリメラーゼ(宝酒造(株)製、Taq polymerase(5U/μl)0.2μl、反応用緩衝液(12mM トリス塩酸、60mM KCl、pH8.3)2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA 200ng/1μl、dNTPs(100μM)1μlを混合して調製し、PCRに用いる対合プライマーとして、配列番号95および96のWK9F20およびWK9R20各0.6μl、配列番号43および44のF6F25およびF6R22各0.5μl、配列番号19および20のB7F22およびB7R17各0.5μlおよび配列番号3および4のA6F21およびA6R22各0.4μlを使用して合計22.44μlとした。
【0061】
反応装置は宝酒造(株)製PCRサーマルサイクラーMPを使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(62℃、1分)、伸長(72℃、2分)を35サイクル反応させた。増幅DNAの電気泳動はコスモバイオ(株)製ミューピッドIIを使用し、2%アガロースゲルで40分間泳動し、臭化エチジウム染色後の紫外線照射によりバンドパターンを検出した。検出結果を表3および図1に示す。
【0062】
この結果、「コシヒカリ」以外の19品種の場合には、全て何らかのポジティブバンドが発現し、混米を検出できることが明らかになった。
一方、特開2001−95589号公報の実施例10において、M2CG、WK9およびB7の3種類のプライマー併用の場合は、「コシヒカリ」と「ハツシモ」の両者が識別バンドが発現しないので、「ハツシモ」を「コシヒカリ」に混米しても検出できない。このことから、本発明の方法が優れていることが明らかである。
【0063】
【表7】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0064】
実施例2(識別用ネガティブ/ポジティブバンドDNA群による識別例)
平成11年度のわが国の作付け上位20品種、すなわち、「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「きらら397」、「キヌヒカリ」、「ほしのゆめ」、「はえぬき」、「むつほまれ」、「日本晴」、「ササニシキ」、「つがるロマン」、「ハナエチゼン」、「夢つくし」、「ハツシモ」、「朝の光」、「月の光」、「あいちのかおり」、「祭り晴」、「アキホ」の玄米を試験用精米機(山本製作所製、ライスパルVP31T )を用いて歩留まり90%に精白した。これらの精米各1粒を乳鉢で粉砕して試料とし、DNA抽出キットであるISOPLANT II によってゲノムDNAを抽出した。
【0065】
PCRの反応液組成は、滅菌水10.4μl、ポリメラーゼ(宝酒造(株)製、Taq polymerase(5U/μl)0.2μl、反応用緩衝液(12mM トリス塩酸、60mM KCl、pH8.3)2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA 200ng/μlを1μl、dNTPs(100μM)1μlを混合して調製し、PCRに用いる対合プライマーとして、配列番号95および96のプライマーWK9F20およびWK9R20各0.6μl、配列番号67および68のプライマーM11F20およびM11R20各0.3μl、配列番号51および52のプライマーG22F27およびG22R23各0.3μl、配列番号27および28のプライマーB43F17およびB43R18各0.1μl、配列番号71および72のプライマーP3F20およびP3R15各0.3μlの合計20.3μlとした。
【0066】
反応装置は宝酒造(株)製、PCRサーマルサイクラーMPを使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(62℃、1分)、伸長(72℃、2分)を35サイクル反応させた。
増幅DNAの電気泳動は、コスモバイオ(株)製ミューピッドIIを使用し、2%アガロースゲルで40分間泳動し、臭化エチジウム染色後の紫外線照射によりバンドパターンを検出した。検出結果を表4および図2に示す。
【0067】
【表8】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0068】
この結果、実施例1で用いた4種類のプライマーであるWK9、F6、A6およびB7に、本実施例で用いたM11、G22、B43およびP3の4種類の対合プライマーセットを併用することにより、作付け上位20品種のうち、「ほしのゆめ」と「アキホ」の識別を除く全てを互いに識別することが可能である。
従って、実施例1と実施例2の組み合わせにより、「コシヒカリ」に対する混米の有無の判定に加えて、混米された品種の同定もほとんどが可能であることが示された。
【0069】
実施例3(3種類の識別用ネガティブバンドDNA群による混米の検出例)
わが国の平成11年度における作付け上位20品種である「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「きらら397」、「キヌヒカリ」、「ほしのゆめ」、「はえぬき」、「むつほまれ」、「日本晴」、「ササニシキ」、「つがるロマン」、「ハナエチゼン」、「夢つくし」、「ハツシモ」、「朝の光」、「月の光」、「あいちのかおり」、「祭り晴」、「アキホ」の玄米を試料とし、実施例1と同様にして精米粉末から鋳型DNAを調製した。
「コシヒカリ」に他品種を少量混米した場合を想定して、「コシヒカリ」のDNAを80%、他の品種のDNAを20%混合して鋳型DNAとし、配列番号83および84のプライマーS13F25およびS13R24各0.08μl、配列番号39および40のプライマーE30F28およびE30R24各0.05μl、配列番号63および64のプライマーM2CGF16およびM2CGR22各1.0μlを加えてPCRを行った。結果を表5および図3に示す。
【0070】
【表9】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0071】
表5から明らかなように、「コシヒカリ」への混米判別用プライマーセットの場合、上位20品種のうち、「あきたこまち」、「キヌヒカリ」、「つがるロマン」、「夢つくし」、「朝の光」、「祭り晴」、「月の光」以外の全てがポジティブバンドを有しており、「コシヒカリ」に対する混米の検出に有用である。
これら3種類のプライマーを、実施例1および2で示した9種類のプライマーセットと併用すると、実施例2では識別できなかった「ほしのゆめ」と「アキホ」の識別も可能となり、混米の同定に有効である。
なお、特開2001−95589号公報の実施例1のM2CGとS13のみのPCRの場合は、表3から明らかなように、「コシヒカリ」と「日本晴」、「きらら397」の識別は可能であるが、「あきたこまち」、「キヌヒカリ」、「ササニシキ」、「つがるロマン」、「夢つくし」、「朝の光」、「月の光」、「祭り晴」の8品種は「コシヒカリ」と同様に識別バンドを全く生じないので混米されても検出が不可能であり、混米検出の点で明らかに劣っている。
【0072】
実施例4(ネガティブバンド群およびネガティブ/ポジティブバンド群の併用による米飯試料の混米の検出および混米品種の同定例)
「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「きらら397」、「キヌヒカリ」、「ほしのゆめ」、「はえぬき」、「むつほまれ」、「日本晴」の作付け上位10品種を含む20品種の玄米を試料とし、試験用精米機(山本製作所製、ライスパル VP31T)を用いて歩留まり90%に精白した。
精米試料を1粒ずつプラスチックチューブ(アシスト、1.5ml容)に取り、脱イオン水35μlを加え、スタンドに立てて1時間浸漬した後、開封状態で電気炊飯器(東芝製、RC-183、外釜に脱イオン水75ml添加)にて15分間炊飯し、15分間蒸らし、米飯試料とした。この試料からのDNAの抽出は下記のように行った。
【0073】
試料米飯各1粒をマイクロチューブに取り、トリス/塩酸緩衝液(100mM、pH8.0、100mM NaCl含有)300μlを加え、ペレットミキサーで粉砕した。次いで、耐熱性アミラーゼ(シグマ製、α−アミラーゼ、790U/mg solid,1mg/ml)を5μl添加し、60℃で1時間反応させた。次いで、トリチラチウム・アルブム(Tritirachium album)由来のプロテアーゼK(オンコー製、20mg/ml)を5μl添加し、37℃で2時間反応させた。
酵素反応終了後、−20℃に冷却したエタノール1mlを添加し、−20℃で15分間静置した後、微量遠心機で遠心分離(15000G、4℃、15分間、以下同様)を行って沈殿を得た。この沈殿を300μlのTE(10mM トリス/塩酸、pH8.0、1mM EDTA)に溶解し、フェノール400μlを加え、回転撹拌機で30分間DNAを抽出した。
次いで、遠心分離を行って上清を採取し、等量のPCI(フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール:25/24/1)を加え、30分間抽出したのち、遠心分離を行って上清を得た。この上清に5M NaClを6ml添加し、冷却したエタノール400μlを加え、遠心分離して得た沈殿を70%エタノールで2回洗浄し、最後の沈殿を40μlの10倍希釈TEに溶解してDNA試料液とした。PCRは以下のように行った。
【0074】
前述の方法で米飯から調製したDNAを鋳型として、PCRによるDNAの増幅を行った。DNAポリメラーゼとして東洋紡績(株)製Taq polymeraseを使用し、PCRの反応液組成は、滅菌水10μl、ポリメラーゼ0.2μl 、反応用緩衝液2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA3μl、dNTPs(2.5mM)1μlを混合し、配列番号83および84のプライマーS13F25およびS13R24各0.1μl、配列番号43および44のプライマーF6F25およびF6R22各0.2μl、配列番号3および4のプライマーA6F21およびA6R22各0.1μl、配列番号71および72のプライマーP3F20およびP3R15各0.25μl合計20.0μlとした。
反応装置は宝酒造(株)製PCRサーマルサイクラーMPを使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(60℃、1分)、伸長(72℃、2分)の条件で45サイクル反応させた。PCRで増幅したDNAの電気泳動および染色は、実施例1と同様にして行った。PCRを行った結果を表6に示す。
【0075】
【表10】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0076】
表6に示すように、4つの識別バンドが全てネガティブとなるのは、「ひとめぼれ」、「あきたこまち」、「ササニシキ」の3品種のみであるので、これらの3品種に、他の17品種のいずれかを混米した場合、第1次PCRにより識別バンドがポジティブに発現するので、混米されていることを確実に検出できることが示された。
【0077】
対象品種(この場合は「ひとめぼれ」と「あきたこまち」)の識別バンドが全てネガティブになる前述の第1次PCRに続いて、第2次のPCRを行った。第2次PCRでは、配列番号95および96のプライマーWK9F20およびWK9R20各0.5μl、配列番号39および40のプライマーE30F28およびE30R24各0.05μl、配列番号51および52のプライマーG22F27およびG22R23各0.2μl、配列番号75および76のプライマーP5F20およびP5R25各0.3μl、配列番号27および28のプライマーB43F17およびB43R18各0.25μlを用いたこと以外は全て本実施例の第1次PCRと同様に行った。
第2次PCRで増幅したDNAを電気泳動して染色した結果を表7および図4に示す。
【0078】
【表11】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0079】
第2次PCRの結果から、第1次PCRで全てネガティブであった「ひとめぼれ」、「あきたこまち」および「ササニシキ」の3品種を互いに識別することが可能であることが示された。
また、第1次PCRでポジティブバンドが発現する17品種も加えて、表6と表7を合わせて比較することにより、作付け上位20品種を全て識別することが可能であることが示された。
したがって、対象品種である「ひとめぼれ」あるいは「あきたこまち」に対する混米の有無は、これらがネガティブバンドとなる第1次PCRによってこれら3品種以外の17品種で可能であり、ネガティブな3品種同士も第2次PCRで識別が可能であった。さらに、第1次PCRでポジティブバンドの現れる17品種の場合も、1粒の米飯試料による第2次PCRの結果を加えることによって全て識別できることが示された。
【0080】
実施例5(ネガティブバンドDNA群の併用による混米の検出および混米品種の同定例)
平成12年度のわが国の作付け上位20品種、すなわち「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「きらら397」、「キヌヒカリ」、「ほしのゆめ」、「はえぬき」、「むつほまれ」、「日本晴」、「ササニシキ」、「つがるロマン」、「ハナエチゼン」、「夢つくし」、「ハツシモ」、「朝の光」、「月の光」、「あいちのかおり」、「祭り晴」、「アキホ」の20品種の玄米を試料とし、実施例1と同様にして精白、粉砕、ゲノムDNA抽出およびPCRを行った。
【0081】
PCRの反応液組成は、滅菌水10μl、ポリメラーゼ(宝酒造(株)製、Taq polymerase(5U/μl))0.2μl、反応用緩衝液(12mM トリス塩酸、60mM KCl、pH8.3)2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA 25ng(1μl)、dNTPs(100μM)1μlを混合し、PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマーとして、「ヒノヒカリ」に対する混米を検出するために、B43、G28、F6、T16のプライマーセット、「あきたこまち」に対する混米を検出するために、A6、E30、F6、G22、P3のプライマーセットを調製し、配列番号27および28のプライマーB43F17およびB43R18各0.05μl、配列番号55および56のプライマーG28F17およびG28R28各0.4μl、配列番号43および44のプライマーF6F25およびF6R22各0.3μl、配列番号89および90のプライマーT16F30およびT16R30各0.4μlの合計19.0μlとした。また、配列番号3および4のプライマーA6F21およびA6R22各0.5μl、配列番号71および72のプライマーP3F20およびP3R15各2μl、配列番号39および40のプライマーE30F28およびE30R24各0.3μl、配列番号43および44のプライマーF6F25およびF6R22各0.3μl、配列番号51および52のプライマーG22F27およびG22R23各0.3μlの合計23.5μlとした。
【0082】
反応装置は宝酒造(株)製、PCRサーマルサイクラーMPを使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(61℃、1分)、伸長(72℃、2分)を35サイクル反応させた。
増幅DNAの電気泳動および染色は実施例1と同様に行った。検出結果を表8に示す。
【0083】
【表12】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0084】
表8の結果から、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」ともに、それぞれのネガティブプライマーセットによる「対象品種には現れずに他の品種のみに特有に現れる識別用DNAの群」を用いて、上位20品種の全ての他品種の混米を検出できることが明らかとなった。
さらに、表8の9種類のプライマーによるPCR結果を総合すると、作付け上位20品種を全て互いに識別することが可能であり、ネガティブプライマーセットでポジティブバンドの発現した混米の場合に、一粒ずつDNAを抽出して鋳型DNAとし、上記9種類のプライマーで検定することによって混米された品種を同定することが可能であることが示された。
【0085】
実施例6(大麦における品種混合の検出および混合品種の判別例)
3品種の大麦、すなわち「サンシュウ」、「イチバンボシ」および「大系HK64」の種子を、研削式精麦機により、歩留まり60%に搗精した。これらの精麦をレッチェ社製超遠心粉砕機によって粉砕して粉末試料を得た。
これらの粉末試料6gを秤り取り、実施例1と同様にCTAB法によってDNAを抽出・精製し、鋳型DNAとした。
【0086】
PCRの反応液組成は、ポリメラーゼ(宝酒造(株)製、Taq polymerase(5U/μl))0.2μl、反応用緩衝液(12mM トリス塩酸、60mM KCl、pH8.3)2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA200ng/1μl、dNTPs(100μM)1μlを混合し、PCRに用いる対合プライマーとして、第1次PCRでは配列番号59および60のJ6F18およびJ6R20各0.6μl、配列番号7および8のA7F19およびA7R16各0.5μl、配列番号19および20のB7F22およびB7R17各0.5μlおよび配列番号39および40のE30F28およびE30R24各0.4μlの4種類の対合プライマーを使用し、滅菌水を加えて合計20.7μlとした。また、第2次のPCRでは配列番号47および48のG4F18およびG4R24各0.5μl、配列番号43および44のF6F25およびF6R22各0.5μl、配列番号63および64のM2CGF16およびM2CGR15各0.5μl、配列番号95および96のWK9F20およびWK9R20各0.4μlの4種類の対合プライマーを使用して反応液総量を合計20.7μlとした。
【0087】
反応装置は宝酒造(株)製、PCRサーマルサイクラーMPを使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(62℃、1分)、伸長(72℃、2分)を35サイクル反応させた。増幅DNAの電気泳動はコスモバイオ(株)製、ミューピッドIIを使用し、2%アガロースゲルで40分間泳動し、臭化エチジウム染色後の紫外線照射によりバンドパターンを検出した。検出結果を表9に示す。
この結果、品種混合検出のための第1次PCRにおいて、「イチバンボシ」のみが4種類の対合プライマー全てにおいて識別バンドが発現しないのに対し、「サンシュウ」および「大系HK64」ではJ6の場合に識別バンドが発現するので、これらの品種を「イチバンボシ」に混合した場合に検出が可能である。
さらに、混合された品種の判定のための第2次PCRの結果、「サンシュウ」の場合には全てマイナスであるのに対し、「イチバンボシ」の場合はM2CG、「大系HK64」の場合にはG4およびM2CGの場合に識別バンドが発現するので、第1次PCRの結果とも総合して、これら「サンシュウ」と「大系HK64」の判別が可能であった。
【0088】
【表13】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0089】
実施例7(トウモロコシにおける品種混合の検出および混合品種の判別例)
3品種のトウモロコシ、すなわち「ピーターコーン」、「ハニーバンタム」および「ワキシーコーン」の種子をアイラ製凍結乾燥機FD200によって凍結乾燥した後、イワタニ製コーヒーミルサーによって粉砕して粉末試料を得た。これらの粉末試料6gを秤り取り、実施例1と同様にCTAB法によってDNAを抽出・精製し、鋳型DNAとした。
【0090】
PCRの反応液組成は、滅菌水11.74μl、ポリメラーゼ(宝酒造(株)製、Taq polymerase(5U/μl))0.2μl、反応用緩衝液(12mM トリス塩酸、60mM KCl、pH8.3)2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA 200ng/1μl、dNTPs(100μM)1μlを混合し、PCRに用いる対合プライマーとして、第1次PCRでは配列番号7および8のA7F19およびA7R16各0.6μl、配列番号39および40のE30F28およびE30R24各0.5μl、配列番号43および44のF6F25およびF6R22各0.5μlおよび配列番号83および84のS13F25およびS13R24各0.4μlの4種類の対合プライマーを使用して合計22.44μlとした。
【0091】
また、第2次のPCRでは配列番号3および4のA6F21およびA6R22各0.5μl、配列番号47および48のG4F18およびG4R24各0.5μlおよび配列番号59および60のJ6F18およびJ6R20各0.4μl、配列番号63および64のM2CGF16およびM2CGR15各0.3μlの4種類の対合プライマーを使用して合計20.7μlとした。
反応装置はアステック(株)製温度コントロールシステムPC700を使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(62℃、1分)、伸長(72℃、2分)を35サイクル反応させた。増幅DNAの電気泳動はコスモバイオ(株)製ミューピッドIIを使用し、2%アガロースゲルで40分間泳動し、臭化エチジウム染色後の紫外線照射によりバンドパターンを検出した。検出結果を表10に示す。
【0092】
【表14】
(+:識別バンドが発現する −:識別バンドが発現しない)
【0093】
この結果、品種混合検出のための第1次PCRにおいて、「ハニーバンタム」および「ピーターコンーン」が4種類の対合プライマー全てにおいて識別バンドが発現しないのに対し、「ワキシーコーン」ではA7、E30、F6、S13の場合に識別バンドが発現するので、「ワキシーコーン」を「ハニーバンタム」あるいは「ピーターコーン」に混合した場合に検出が可能である。
さらに、混合品種判定のための第2次PCRの結果、「ハニーバンタム」の場合にはA6およびM2CG、「ピーターコーン」の場合にはJ6、「ワキシーコーン」の場合にはA6、G4、J6、M2CGの場合に識別バンドが発現するので、第1次PCRの結果とも総合してこれら3品種の判別が可能であった。
【0094】
実施例8(プライマーの長さの範囲規定)
「コシヒカリ」および「ほしのゆめ」の2品種の試料玄米を用いた。
試験用精米機(山本製作所製、ライスパル VP31T)を用いて歩留まり90%に精白した。各精米試料をレッチェ社製超遠心粉砕機を用いて粉砕し、その6gからCTAB法によってゲノムDNAを抽出した。紫外吸収法(260nm)によって測定したDNA濃度が約400μg/mlとなるように各試料DNAの濃度を調整してPCRに供した。
【0095】
PCRに用いるオリゴヌクレオチドプライマーとして、配列表の配列番号97および98の40残基の配列を有する長い対合プライマー、配列番号83(25量体)および配列番号84(24量体)からなる対合プライマー、配列番号99(12量体)および配列番号100(12量体) からなる対合プライマーの3種類の対合プライマーをそれぞれ単独で使用した。
【0096】
DNAポリメラーゼは東洋紡(株)製、Taq polymerase(5U/μl)を使用した。PCRの反応液組成は、滅菌水10μl、ポリメラーゼ0.2μl、反応用緩衝液2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA3μl、dNTPs(2.5mM)1.0μlを混合し、対合プライマー各1.0μl(合計2.0μl)の合計20.7μlとした。
反応装置は宝酒造(株)製、PCRサーマルサイクラーMPを使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(38℃、1分)、伸長(72℃、2分)の条件で45サイクル反応させた。
【0097】
増幅DNAの電気泳動はコスモバイオ(株)製ミューピッドIIを使用し、2%アガロースゲルで40分間泳動し、臭化エチジウム染色後の紫外線照射によりバンドパターンを検出した。その結果、40残基の長い対合プライマーの場合はバンドが現れず、12残基の短い対合プライマーの場合は多数のバンドが発現し、いずれの場合も本発明の目的とする正確な識別のためには不適当であった。
これに対して、25量体と24量体からなる対合プライマーの場合は、1.8kbpの識別バンドが「ほしのゆめ」で現れ、「コシヒカリ」で現れず、品種の識別が可能であった。
【0098】
実施例9( 外国産米の米飯試料による識別例)
「コシヒカリ」(日本)、「一品」(韓国)、「バンニシキ」(中国)、「アマルー」(オーストラリア)、「タマキ」(米国)、「カオドークマリ105」(タイ)、「モトボイ」(ベトナム)の7種類の玄米各10gをケット科学研究所製のパーレストによって歩留まり90%に精白し、精米試料を1粒ずつプラスチックチューブ(アシスト、1.5ml容)に取り、脱イオン水35μlを加え、スタンドに立てて1時間浸漬した後、開封状態で電気炊飯器(東芝製、RC-183、外釜に脱イオン水75ml添加)にて15分間炊飯し、15分間蒸らし、米飯試料とした。DNAの抽出は下記のように行った。
【0099】
試料米飯各1粒をマイクロチューブに取り、トリス/塩酸緩衝液(100mM、pH8.0、100mM NaCl含有)300μlを加え、ペレットミキサーで粉砕した。次いで、耐熱性アミラーゼ(シグマ製、α−アミラーゼ、790U/mg solid,1mg/ml)を5μl添加し、60℃で1時間反応させた。次いでトリチラチウム・アルバム(Tritirachium album)由来のプロテアーゼK(オンコー製、20mg/ml)を5μl添加し、37℃で2時間反応させた。
酵素反応終了後、−20℃に冷却したエタノール1mlを添加し、−20℃で15分間静置した後、微量遠心機で遠心分離(15000G、4℃、15分間、以下同様)を行って沈殿を得た。この沈殿を300μlのTE(10mM トリス/塩酸、pH8.0、1mM EDTA)に溶解し、フェノール400μlを加え、回転撹拌機で30分間DNAを抽出した。
次いで、遠心分離を行って上清を採取し、等量のPCI(フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール:25/24/1)を加え、30分間抽出し、遠心分離して得た上清に5M NaClを6ml添加し、冷却したエタノール400μlを加え、遠心分離して得た沈殿を70%エタノールで2回洗浄し、最後の沈殿を40μlの10倍希釈TEに溶解してDNA試料溶液とした。
PCRは以下のようにして行った。
【0100】
前述の方法で精米から調製したDNAを鋳型として、DNAの増幅を行った。DNAポリメラーゼとして東洋紡績(株)製、Taq polymeraseを使用し、PCRの反応液組成は、滅菌水10μl、ポリメラーゼ0.2μl、反応用緩衝液2.5μl、MgCl2 2.0μl、鋳型DNA3μl、dNTPs(2.5mM)1.0μlを混合し、配列番号95および96のプライマーWK9F20およびWK9R20各0.25μl、配列番号7および8のプライマーA7F19およびA7R16各0.25μl、配列番号83および84のプライマーS13F25およびS13R24各0.25μl、配列番号59および60のプライマーJ6F18およびJ6R20各0.25μl合計20.7μlとした。
反応装置は宝酒造(株)製PCRサーマルサイクラーMPを使用し、変性(94℃、1分)、アニーリング(60℃、1分)、伸長(72℃、2分)の条件で45サイクル反応させた。
PCRで増幅したDNAの電気泳動は実施例1と同様にして行った。作付け上位7品種の米飯から抽出したDNAを鋳型としてPCRを行った結果を表11に示す。
【0101】
表から明らかなように、本発明方法は外国産米から調製した米飯試料の場合にも適用が可能であることが示された。対合プライマーWKA9およびS13のみの使用の場合には、「バンニシキ」と「モトボイ」の2品種、「アマルー」、「タマキ」、「カオドークマリ105」の3品種の識別が不可能であった。これに対し、A7およびJ6の2種類の対合プライマーを加えることにより、上記2品種および上記3品種の識別も可能となり、使用した7品種すべての識別が可能となった。
【0102】
【表15】
【0103】
実施例10(その他のプライマー群の有用性)
試料玄米として「コシヒカリ」、「ヒノヒカリ」、「あきたこまち」、「キヌヒカリ」、「はえぬき」、「日本晴」、「ササニシキ」を用い、対合プライマーとして、配列番号15および16のB1F25およびB1R20、配列番号35および36のE22F20およびE22R21、配列番号79および80のQ16F25およびQ16R20、配列番号87および88のT8F22およびT8R25、配列番号23および24のB18F15およびB18R21を用いたこと以外は実施例1と同じ方法でPCRおよび電気泳動を行った。試験結果を表12に示す。
表から明らかなように、これらの対合プライマーにより、7品種間の識別が全て可能となった。
【0104】
【表16】
【0105】
【発明の効果】
本発明によれば、米、小麦、トウモロコシ、大麦等の穀粒に他の品種の穀粒が混合していることを、穀粒から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCRを用いて判別することができ、かつ混入している穀粒の品種を識別することができる。すなわち、第1次PCRによって、簡易迅速に品種混合の有無を判定することができ、少量でも他の品種が混合していれば、判別できる。さらに、第2次PCRによって、当該混合品種を同定することができる。
【0106】
特に、本発明では識別性の高い対合プライマーによるPCRを行うために、目的とする識別バンド以外のバンドが消失し、たとえば対象が「コシヒカリ」系統のような近縁種の場合にも、正確な品種判別が可能である。
しかも、本発明においては、PCRを、対合プライマーを混合して併用するマルチプレックス法で行うために、PCRの回数や電気泳動・染色回数を減らすことができ、品種判別を短時間、かつ低コストで実施することができる。
【0107】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 識別用ネガティブバンドDNA群による「コシヒカリ」への混米の検出のためのPCRの結果を示す泳動写真である。
【符号の説明】
Mは分子量マーカー、1は「コシヒカリ」、2は「ひとめぼれ」、3は「ヒノヒカリ」、4は「あきたこまち」、5は「きらら397」、6は「キヌヒカリ」、7は「ほしのゆめ」、8は「はえぬき」、9は「むつほまれ」、10は「日本晴」、11は「ササニシキ」、12は「つがるロマン」、13は「ハナエチゼン」、14は「夢つくし」、15は「ハツシモ」、16は「朝の光」、17は「月の光」、18は「あいちのかおり」、19は「祭り晴」、20は「アキホ」をそれぞれ示す。
【図2】 識別用ネガティブバンド/ポジティブバンドDNA群による「コシヒカリ」への混米の検出のためのPCRの結果を示す泳動写真である。
【符号の説明】
Mは分子量マーカー、1は「コシヒカリ」、2は「ひとめぼれ」、3は「ヒノヒカリ」、4は「あきたこまち」、5は「きらら397」、6は「キヌヒカリ」、7は「ほしのゆめ」、8は「はえぬき」、9は「むつほまれ」、10は「日本晴」、11は「ササニシキ」、12は「つがるロマン」、13は「ハナエチゼン」、14は「夢つくし」、15は「ハツシモ」、16は「朝の光」、17は「月の光」、18は「あいちのかおり」、19は「祭り晴」、20は「アキホ」をそれぞれ示す。
【図3】 識別用ネガティブバンドDNA群による「コシヒカリ」への混米の検出のためのPCRの結果を示す泳動写真である。
【符号の説明】
Mは分子量マーカー、1は「コシヒカリ」、2は「ひとめぼれ」、3は「ヒノヒカリ」、4は「あきたこまち」、5は「きらら397」、6は「キヌヒカリ」、7は「ほしのゆめ」、8は「はえぬき」、9は「むつほまれ」、10は「日本晴」、11は「ササニシキ」、12は「つがるロマン」、13は「ハナエチゼン」、14は「夢つくし」、15は「ハツシモ」、16は「朝の光」、17は「月の光」、18は「あいちのかおり」、19は「祭り晴」、20は「アキホ」をそれぞれ示す。
【図4】 5種類のプライマーによる第2次PCRの結果を示す泳動写真である。
【符号の説明】
Mは分子量マーカー、1は「コシヒカリ」、2は「ひとめぼれ」、3は「ヒノヒカリ」、4は「あきたこまち」、5は「きらら397」、6は「キヌヒカリ」、7は「ほしのゆめ」、8は「はえぬき」、9は「むつほまれ」、10は「日本晴」、11は「ササニシキ」、12は「つがるロマン」、13は「ハナエチゼン」、14は「夢つくし」、15は「ハツシモ」、16は「朝の光」、17は「月の光」、18は「あいちのかおり」、19は「祭り晴」、20は「アキホ」をそれぞれ示す。
Claims (16)
- 穀粒にイネ品種「コシヒカリ」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「コシヒカリ」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)B7F22(配列番号19)およびB7R17(配列番号20)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96) - さらに、以下の5)〜8)に示す4種の対合プライマーからなる対合プライマー群を用いて第2次のマルチプレックスPCR法を行い、発現したDNAバンドパターンによってイネ品種「コシヒカリ」であることを確認することを特徴とする請求項1記載のイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法。
5)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
6)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
7)M11F20(配列番号67)およびM11R20(配列番号68)
8)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96) - 第2次のマルチプレックスPCR法において、さらに以下の9)に示す対合プライマーを用いることを特徴とする請求項1または2記載のイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法。
9)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72) - 穀粒にイネ品種「ひとめぼれ」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「ひとめぼれ」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別方法。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
4)S13F25(配列番号83)およびS13R24(配列番号84) - さらに、以下の5)〜9)に示す5種の対合プライマーからなる対合プライマー群を用いて第2次のマルチプレックスPCR法を行い、発現したDNAバンドパターンによってイネ品種「ひとめぼれ」であることを確認することを特徴とする請求項4記載のイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別方法。
5)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
6)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
7)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
8)P5F20(配列番号75)およびP5R25(配列番号76)
9)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96) - 穀粒にイネ品種「ヒノヒカリ」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「ヒノヒカリ」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「ヒノヒカリ」のDNA品種判別方法。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)G28F17(配列番号55)およびG28R28(配列番号56)
4)T16F30(配列番号89)およびT16R30(配列番号90) - 穀粒にイネ品種「あきたこまち」以外の品種の穀粒が混合しているか否かを、当該穀粒もしくはその加工品から抽出したDNAを鋳型とするマルチプレックスPCR法を用いて判別するに際し、イネ品種「あきたこまち」では識別バンドを発現せず、混合品種のみに選択的に発現する以下の1)〜5)に示す5種の対合プライマーからなるネガティブバンド識別用対合プライマー群を用いることを特徴とするイネ品種「あきたこまち」のDNA品種判別方法。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
5)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72) - 試料米が米飯である請求項1〜7のいずれかに記載のDNA品種判別方法。
- 混入した試料米を各1粒ずつ検定することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のDNA品種判別方法。
- 以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別用キット。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)B7F22(配列番号19)およびB7R17(配列番号20)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96) - 以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別用キット。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
3)M11F20(配列番号67)およびM11R20(配列番号68)
4)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96) - さらに以下の5)に示す対合プライマーを含むことを特徴とする請求項11記載のイネ品種「コシヒカリ」のDNA品種判別方法。
5)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72) - 以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別用キット。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
4)S13F25(配列番号83)およびS13R24(配列番号84) - 以下の1)〜5)に示す5種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「ひとめぼれ」のDNA品種判別用キット。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
3)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
4)P5F20(配列番号75)およびP5R25(配列番号76)
5)WK9F20(配列番号95)およびWK9R20(配列番号96) - 以下の1)〜4)に示す4種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「ヒノヒカリ」のDNA品種判別用キット。
1)B43F17(配列番号27)およびB43R18(配列番号28)
2)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
3)G28F17(配列番号55)およびG28R28(配列番号56)
4)T16F30(配列番号89)およびT16R30(配列番号90) - 以下の1)〜5)に示す5種の対合プライマーを含むことを特徴とするイネ品種「あきたこまち」のDNA品種判別用キット。
1)A6F21(配列番号3)およびA6R22(配列番号4)
2)E30F28(配列番号39)およびE30R24(配列番号40)
3)F6F25(配列番号43)およびF6R22(配列番号44)
4)G22F27(配列番号51)およびG22R23(配列番号52)
5)P3F20(配列番号71)およびP3R15(配列番号72)
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