JP4189868B2 - 引開き兼用建具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、引戸と開き戸の両方の機能を兼ね備えた引開き兼用建具に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近では、バリアフリーで代表されるように、高齢者や身障者に配慮された住宅を求めるニーズが高くなってきており、建具一つについてもより高い利便性が要求されるようになってきた。
【0003】
一方、住宅の室内における建具は、場所に応じて開き戸や引戸が適宜使い分けられ、典型的には、洋室と廊下とは開き戸で仕切り、リビングとダイニング、あるいはダイニングとキッチンとは引戸で仕切られることが多かった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、設計の時点で開き戸か引戸かの二者択一になってしまうことは、居住者にとっては少なからず利便性を欠くものであり、上述した高齢者や身障者への配慮をはじめ、将来的に居住環境が変化したり居室の用途が変更されたりすることがあることに鑑みれば、もっと汎用性の高い建具の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、引戸としても開き戸としても使用可能な引開き兼用建具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る引開き兼用建具は請求項1に記載したように、上枠に取り付けられたC字断面状のハンガーレールに水平走行自在に取り付けられた横材と該横材の端部から鉛直下方に延びる縦材とからなるほぼ逆L字状の扉支持体と、該縦材にヒンジ接合された扉本体と、該扉本体の正面及び背面に設けられた把持部と、前記扉本体を前記横材及び前記縦材を含む鉛直面内に保持するラッチ機構とからなる引開き兼用建具であって、前記横材を、前記ハンガーレール内に収められハンガー車輪が取り付けられた上段横材と、前記ハンガーレールの下方に配置され該ハンガーレールのスリットに通された連結ボルトによって前記上段横材に連結された下段横材とで構成するとともに、前記下段横材の下面と前記扉本体の上面との間に前記ラッチ機構を設けたものである。
【0007】
また、本発明に係る引開き兼用建具は、前記連結ボルトを前記下段横材の下面から廻すことで前記上段横材と下段横材との間隔を調整自在に構成したものである。
【0011】
本発明に係る引開き兼用建具においては、扉本体が横材及び縦材を含む扉支持体の鉛直面内に保持された状態にあるとき、扉本体を扉支持体とともに上枠に取り付けられたハンガーレールに沿って水平方向に走行させる、すなわち扉本体を吊りタイプの引戸として用いることができる。なお、かかる状態においては、扉本体の正面及び背面に設けられた把持部は、引手として機能する。
【0012】
一方、扉本体及び扉支持体が引き出された状態にあるとき、把持部に手を掛けて扉本体を扉支持体の廻りに回動させる、すなわち扉本体を開き戸として用いることができる。なお、ラッチ機構は、扉本体の開き操作で自動的に係止状態が解除され、閉じる方向に戻せば自動的に係止状態となる。
【0013】
なお、扉支持体の縦材には、扉本体から鉛直荷重のみならず曲げモーメントも作用するが、該曲げモーメント作用位置から水平方向に適宜離間した位置にて扉支持体の横材がハンガーレールから鉛直方向反力をもらうことができるため、上述した鉛直荷重及び曲げモーメントは、横材にて確実に支持され、扉支持体ひいては扉本体が曲げモーメントによって回転してしまうおそれはない。
【0014】
横材と縦材とは、上述したように縦材に作用する鉛直荷重及び曲げモーメントを横材に作用するハンガーレールからの鉛直方向反力で釣り合わせるという構造を採用している関係上、両者の間で曲げモーメントが伝達可能な状態にしておく必要があるとともに、それぞれ所定の曲げ剛性を有することを必要とするが、別部材として互いに連結する構成とするか一体形成するかは任意である。
【0015】
横材は、ハンガーレール内に収められハンガー車輪が取り付けられた上段横材と、ハンガーレールの下方に配置され該ハンガーレールのスリットに通された連結ボルトによって上段横材に連結された下段横材とで構成する。
【0017】
扉本体を引戸として機能させる場合において該扉本体を完全に閉じたとき、その状態を保持させる機構を設けるかどうかは任意であるが、前記横材の先端とそれに対向する縦枠にキャッチ機構を設けた場合においては、引戸を閉じた状態にて確実に保持することが可能となる。
【0018】
把持部をどのように構成するかは任意であるが、かかる把持部を前記扉本体側に可倒自在なレバーハンドルで構成した場合においては、開き戸として用いる際にはレバーハンドルを手前に起こし、かかる状態で従来と同様にレバーハンドルを廻して使用すればよいし、引戸としての収納位置に押し込むときには、予めレバーハンドルを扉本体側に倒すようにすればよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る引開き兼用建具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0020】
図1は本実施形態に係る引開き兼用建具を示した全体正面図、図2は、同じく建具開口の上枠近傍を示した詳細正面図、図3は図2のA―A線に沿う詳細断面図、図4は図2のB―B線方向から見た詳細断面図である。
【0021】
これらの図でわかるように、本実施形態に係る引開き兼用建具1は、建具開口の上枠2に取り付けられたC字断面状のハンガーレール3に水平走行自在に取り付けられた横材4と該横材の端部(図1では左端)から鉛直下方に延びる縦材5とからなるほぼ逆L字状の扉支持体6と、蝶番13を介して縦材5にヒンジ接合された扉本体7と、該扉本体の正面に設けられた把持部としてのレバーハンドル8と、扉本体7を横材4及び縦材5を含む鉛直面内に保持するラッチ機構9とから概ね構成してある。
【0022】
横材4は、ハンガーレール3内に収められた上段横材4aとハンガーレール3の下方に配置され該ハンガーレールのスリット12に通された連結ボルト11によって上段横材4aに連結された下段横材4bとからなり、上段横材4aにはハンガー車輪10を取り付けてある。したがって、上段横材4a及び下段横材4bは、両者一体となってハンガーレール3に対し走行自在な構造となり、扉支持体6及び扉本体7は、ハンガー車輪10によって水平走行自在にハンガーレール3に吊持されることとなる。
【0023】
ここで、図2でわかるように連結ボルト11を下段横材4bの下面からドライバーで廻すことにより、若しくはカバー14を外した上、縦材5の側面から六角レンチで廻すことにより、上段横材4aと下段横材4bとの間隔、すなわち扉支持体6及び扉本体7の吊持高さを微調整することができる。
【0024】
ラッチ機構9は、ラッチ本体15とそれを上方に押し出す押出しバネ16とからなり、横材4の一部である下段横材4bの下面に形成された嵌合穴17にラッチ本体15の先端が嵌め込まれることにより、扉本体7を横材4及び縦材5を含む鉛直面内に保持できるようになっている。
【0025】
一方、図4でよくわかるように、横材4の一部である上段横材4aの先端に被嵌合突起18を設けるとともに、建具開口の縁部に配置された縦枠19に嵌合本体20を取り付けてあり、被嵌合突起18及び嵌合本体20は、被嵌合突起18が嵌合本体20の対向位置に形成された嵌合片21,21の間に嵌め込まれることによって、扉支持体6及び扉本体7の水平移動を拘束するキャッチ機構として機能する。
【0026】
なお、図1でわかるように、床面にはガイド用突起22を立設してあり、該ガイド用突起が扉本体7の下面に形成されたガイド溝24及び扉支持体6の縦材5の下面に形成されたガイド溝23に案内されることによって、扉本体7及び扉支持体6を水平移動させるときの揺動が防止されるようになっている。
【0027】
レバーハンドル8は、図5でよくわかるように連動軸32を介して反対側の把持部であるレバーハンドル31に連結してあるとともに、該連動軸を錠33に設けられた進退機構(図示せず)の貫通孔37に貫通させてあり、レバーハンドル8を押し下げることによって錠33の進退機構を駆動し、ラッチボルト34を縦枠側に設けられた受座から抜いて係止状態を解除するようになっている。
【0028】
ここで、レバーハンドル8は、扉本体7の側に可倒自在となるように連動軸32に連結してあり、該レバーハンドルを同図矢印方向に倒すことによってハンドル収納部35の凹部36に取っ手部分を収めることができるようになっている(図6)。
【0029】
本実施形態に係る引開き兼用建具1においては、扉本体7が横材4及び縦材5を含む扉支持体6の鉛直面内に保持された状態にあるとき(図7)、扉本体7を扉支持体6とともに上枠2に取り付けられたハンガーレール3に沿って水平方向に走行させる(図8)、すなわち扉本体7を吊りタイプの引戸として用いることができる。
【0030】
この場合、レバーハンドル8が壁にぶつかることがないよう、予め該レバーハンドルを扉本体7の側に倒すことにより、取っ手部分をハンドル収納部35の凹部36に収めておく。また、扉本体7の正面及び背面に設けられた把持部としてのレバーハンドル8,31及びハンドル収納部35は、それぞれ引手として機能する。
【0031】
なお、ラッチ機構9の作用により、引戸として使用している際に扉本体7が自然に開いてしまうおそれはない。
【0032】
一方、扉本体6及び扉支持体7が引き出された状態にあるとき(図7)、把持部であるレバーハンドル8,31に手を掛けて廻せば、図9に示すように、扉本体7を扉支持体6の廻りに回動させる、すなわち扉本体7を開き戸として用いることが可能となる。なお、ラッチ機構9は、扉本体7の開き操作で自動的に係止状態が解除され、閉じる方向に戻せば自動的に係止状態となる。
【0033】
ところで、扉支持体6の縦材5には、扉本体7から鉛直荷重のみならず曲げモーメントも作用するが、該曲げモーメント作用位置から水平方向に適宜離間した位置にて扉支持体6の横材4の一部である上段横材4aがハンガーレール3から鉛直方向反力をもらうことができるため、上述した鉛直荷重及び曲げモーメントは、上段横材4aにて確実に支持され、扉支持体6ひいては扉本体7が曲げモーメントによって回転してしまうおそれはない。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る引開き兼用建具1によれば、扉本体7を扉支持体6とともに上枠2に取り付けられたハンガーレール3に沿って水平方向に走行させることにより、該扉本体を吊りタイプの引戸として用いることができるとともに、扉本体7を扉支持体6の廻りに回動させることにより、該扉本体を開き戸として用いることも可能となる。
【0035】
したがって、設計の時点で開き戸か引戸かを決定する必要がなくなり、将来にわたる居住環境の変化や居室の用途変更に柔軟に対応することができるとともに、日常的にも扉付近の障害物の状況に応じて居住者が自由に使い分けることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態に係る引開き兼用建具1によれば、横材4を上段横材4aと下段横材4bに分離形成した上、該下段横材をハンガーレール3の下方に配置し、下段横材4bの下面と扉本体7の上面との間にラッチ機構9を設けたので、比較的簡易な構造でラッチ機構を構成することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態に係る引開き兼用建具1によれば、横材4のうち、横材4aの先端とそれに対向する縦枠に被嵌合突起18及び嵌合本体20からなるキャッチ機構を設けたので、扉本体7を確実に閉じた状態にて保持し、自然に水平移動するのを防止することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態に係る引開き兼用建具1によれば、扉本体7の側に可倒自在なレバーハンドル8を設けて把持部としたので、引戸としての収納位置に押し込む際、予め扉本体7側に倒すことで壁との干渉を防止することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、横材を上段横材4a及び下段横材4bからなる横材4としたが、参考発明としては、単体で構成されたものをハンガーレール内に収める、同じく単体で構成されたものをハンガーレールの下方に配置して該ハンガーレールから吊持するなどの構成が考えられる。
【0040】
図10は、ハンガーレール3内に単体で構成された横材41を収めた例を示したものであり、横材41は、連結ボルト11を介して縦材5に連結してある。
【0041】
かかる構成によれば、横材41が室内に露出しないので、外観をすっきりさせることができる。
【0042】
なお、本参考発明では、下段横材4bを省略するとともにそれに伴って該下段横材と上段横材との連結ボルトを省略し、ラッチ機構9に代えてレバーハンドル8の回動操作に連動して昇降するラッチロッド42を採用することで、その上昇位置では先端がハンガーレール3のスリット12に係止されて扉本体7の開閉を防止するようにした点を除けば、上述の実施形態と同様の構成であるので、詳細な説明についてはここでは省略する。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に係る本発明の引開き兼用建具によれば、扉本体を扉支持体とともに上枠に取り付けられたハンガーレールに沿って水平方向に走行させることにより、該扉本体を吊りタイプの引戸として用いることができるとともに、扉本体を扉支持体の廻りに回動させることにより、該扉本体を開き戸として用いることも可能となる。
【0044】
したがって、設計の時点で開き戸か引戸かを決定する必要がなくなり、将来にわたる居住環境の変化や居室の用途変更に柔軟に対応することができるとともに、日常的にも扉付近の障害物の状況に応じて居住者が自由に使い分けることが可能となる。
【0045】
また、請求項2に係る本発明の引開き兼用建具によれば、上段横材と下段横材との間隔、すなわち扉支持体及び扉本体の吊持高さを微調整することが可能となる。
【0049】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る引開き兼用建具を示した全体正面図。
【図2】同じく建具開口の上枠近傍を示した詳細正面図。
【図3】図2のA―A線に沿う詳細断面図。
【図4】図2のB―B線方向から見た詳細断面図。
【図5】レバーハンドル8周辺の分解斜視図。
【図6】レバーハンドル8を扉本体7側に倒した様子を示した斜視図。
【図7】扉本体7を横材4及び縦材5を含む扉支持体6の鉛直面内に保持した状態を示した水平断面図。
【図8】図7の状態から引戸として利用する際の作用を示した水平断面図。
【図9】図7の状態から開き戸として利用する際の作用を示した水平断面図。
【図10】変形例に係る引開き兼用建具を示した詳細正面図。
【符号の説明】
1 引開き兼用建具
2 上枠
3 ハンガーレール
4 横枠
4a 上段横枠
4b 下段横枠
5 縦材
6 扉支持体
7 扉本体
8 レバーハンドル(把持部)
9 ラッチ機構
18 被嵌合突起(キャッチ機構)
20 嵌合本体(キャッチ機構)
41 横材
42 ラッチロッド(ラッチ機構)
Claims (2)
- 上枠に取り付けられたC字断面状のハンガーレールに水平走行自在に取り付けられた横材と該横材の端部から鉛直下方に延びる縦材とからなるほぼ逆L字状の扉支持体と、該縦材にヒンジ接合された扉本体と、該扉本体の正面及び背面に設けられた把持部と、前記扉本体を前記横材及び前記縦材を含む鉛直面内に保持するラッチ機構とからなる引開き兼用建具であって、前記横材を、前記ハンガーレール内に収められハンガー車輪が取り付けられた上段横材と、前記ハンガーレールの下方に配置され該ハンガーレールのスリットに通された連結ボルトによって前記上段横材に連結された下段横材とで構成するとともに、前記下段横材の下面と前記扉本体の上面との間に前記ラッチ機構を設けたことを特徴とする引開き兼用建具。
- 前記連結ボルトを前記下段横材の下面から廻すことで前記上段横材と下段横材との間隔を調整自在に構成した請求項1記載の引開き兼用建具。
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