JP4189476B2 - パーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器及び粗化方法 - Google Patents

パーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器及び粗化方法 Download PDF

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Description

本発明は、スパッタリングターゲット表面の再付着(リデポ)膜の堆積する非エロージョン部分、又はスパッタ装置内部の堆積(デポ)膜が不要に形成される部分及びその周辺等に、放電加工により粗化処理するか又は放電加工及び化学的エッチングにより粗化処理することにより、前記リデポ膜又はデポ膜の剥離を防止し、パーティクルの発生を抑制したパーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の部材及び放電加工による粗化方法に関する。
近年、膜厚や成分を容易に制御できるスパッタリング法が、電子・電気部品用材料の成膜法の一つとして多く使用されている。
このスパッタリング法は正の電極と負の電極とからなる基板とターゲットとを対向させ、不活性ガス等の雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
このスパッタリング法による薄膜の形成に際し、パーティクルの発生という問題が大きく取り上げられるようになってきた。このパーティクルは、例えばスパッタリング法におけるターゲット起因のものについて説明すると、ターゲットをスパッタリングした場合、薄膜は基板以外に薄膜形成装置の内壁や内部にある部材等のいたるところに堆積する。
ターゲットのエロージョン部以外の面及び側面も例外ではなく、スパッタ粒子が堆積しているのが観察される。そしてこのような薄膜形成装置内にある部材等から剥離した薄片が直接基板表面に飛散して付着することがパーティクル発生の大きな原因の一つであると考えられている。
最近では、LSI半導体デバイスの集積度が上がる(64Mビット、256Mビットさらには1Gビット)一方、配線幅ルールが0.2μm以下になるなどにより微細化されつつあるので、上記のようなパーティクルによる配線の断線や短絡と言った問題が、より頻発するようになった。
このように、電子デバイス回路の高集積度化や微細化が進むにつれてパーティクルの発生は一層大きな問題となってきた。
一般に、スパッタリングターゲットはそれよりも寸法が大きいバッキングプレートに溶接、拡散接合あるいははんだ付け等の手段により接合されるが、スパッタリングの安定性から、バッキングプレートに接合するスパッタリングターゲットの側面が該バッキングプレートに向かって、通常末広がりの傾斜面を持つように形成されていることが多い。
既に知られているように、バッキングプレートは背面が冷却材と接触してターゲットを冷却する役目を持っており、熱伝導性の良いアルミニウムや銅又はこれらの合金等の材料が使用されている。
スパッタリングターゲットの側面は、スパッタリングによるエロージョンを受ける(侵食)箇所ではない。しかし、ターゲットのエロージョン面に近接しているので、スパッタリング中に飛来するスパッタ粒子が付着し、より堆積するという傾向がある。
一般に、スパッタリングターゲットのエロージョン面は旋盤加工により平滑面としており、また前記傾斜している側面も同様に旋盤加工されている。ところが、このような傾斜側面等から、一旦付着したスパッタ粒子(堆積物)が再び剥離し、それが浮遊してパーティクル発生の原因となることが分かった。
上記のように電子デバイス回路の高集積度化や微細化の要請から、このようなパーティクル発生を防止するために、ターゲット、バッキングプレートさらにはスパッタ装置内の機器の表面を、ブラスト処理(例えば、特許文献1参照)、溶射皮膜の形成(例えば、特許文献2参照)、ナーリング処理(例えば、特許文献3参照)、エッチング処理、放電加工(例えば、特許文献4参照)等により粗面化して付着力を向上させ、堆積したスパッタ粒子の再剥離を防止する提案がなされている。
しかし、例えばターゲット、バッキングプレートさらにはスパッタ装置内の機器の表面をブラスト処理し、アンカー効果により付着力を向上させようとする場合にはブラスト材の残留による製品への汚染の問題がある。例えば通常ブラスト材として使用されているアルミナ、ジルコニア、SiC等のビーズなどは電気伝導性が悪く、チャージアップによる異常放電の原因となり、またそれ自体が落下して製品を汚染することがあった。
そして、このような残留ブラスト材上に堆積した付着粒子は密着性が低下し、剥離し易くなるという問題があり、さらには付着膜の選択的かつ不均一な成長による剥離の問題が新たに生じ、根本的解決にはならなかった。
このようなことから、本発明者らは先にスパッタリングターゲット側面等に、中心線平均粗さRa10〜20μm の溶射皮膜を備えたパーティクル発生の少ないスパッタリングターゲットを提案した(特許文献5参照)。
この技術自体は従来の方法に比べはるかに付着膜の剥離を防止し、パーティクル発生を抑制できる効果があった。しかし、この溶射による表面処理の場合では、溶射皮膜の厚みの制御が困難であることや、溶射膜が被処理物から剥離し製品を汚染するという問題がある。
また、ナーリングによる表面粗化の場合は、ナーリング治具からの金属汚染の可能性があり、さらにナーリング処理を施した部材へ再び重ねてナーリング処理を施すことが困難であるため装置用部材などを再使用できないという問題がある。
さらに、エッチングによる粗化処理の場合は大きな表面粗さは得られる
が、複雑な三次元形状への適用が困難であることや、強固なアンカーとなる俯角の形成が原理的に困難であるという問題がある。
この点、放電加工による粗化処理の場合はおよそ解決できる可能性がある。しかし、放電加工による粗化処理の一番の問題は、通常の放電加工では堆積膜の耐剥離性が十分でないという点であった。
特開平9−176843 特開平9−176842 特開平10−330971 特開平11−131224 特願2000−314778
本発明は、上記のような問題から、放電加工皮膜の改善を図り、より効果的にターゲット、バッキングプレートその他のスパッタリング装置内機器の不要な膜が堆積する面から発生する該堆積物の剥離・飛散を直接的に防止できるパーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器及び放電加工による粗化方法を得ることを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行なった結果、放電加工により形成された表面の改善により、成膜中のパーティクル発生を効率良く抑制できるとの知見を得た。
本発明は、この知見に基づき、
1.スパッタリング中の不要な膜が堆積する面に放電加工痕を形成したスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器であって、前記放電加工痕は90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起からなり、剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上であることを特徴とするパーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器
2.スパッタリング中の不要な膜が堆積する面に放電加工痕を形成したスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器であって、前記放電加工痕は90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起からなり、剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上である放電加工処理部に、さらに化学的エッチング処理が施されることにより、空洞部を備えた突起の外殻が破壊され、該空洞部と外部空間が連通した前記放電加工痕であることを特徴とするパーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器
3.スパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面を放電加工し、放電加工面に90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起を形成し、該突起は剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上であることを特徴とするスパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面の放電加工による粗化方法
4.スパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面を放電加工し、放電加工面に90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起である放電加工痕を形成し、該突起は剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上であり、これらの放電加工処理部にさらに化学的エッチング処理を施して突起の外殻を破壊し、該突起に存在する空洞部と外部空間を連通させることを特徴とするパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面の放電加工及び化学的エッチング処理による粗化方法
5.純水又は超純水の加工液中で放電加工することを特徴とする請求の範囲第4項又は第5項に記載の粗化方法、を提供する。
放電加工皮膜の改善により、またさらに放電加工及び化学的エッチング処理により、ターゲット、バッキングプレート、スパッタリング装置内の機器等の、不要な膜が堆積する面から発生する該堆積物の剥離・飛散を直接的にかつ効果的に防止でき、パーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器及び放電加工による粗化方法又は放電加工及び化学的エッチング処理による粗化方法を得ることができるという優れた効果を有する。
一般に、放電加工は金属等の被加工物に穴あけや切断等を行う加工方法であり、通常白灯油等の加工液に被加工物を浸漬し、近接させた電極に電圧を印加して被加工物の微小突起との間に生じる放電に伴う熱と加工液の蒸気圧との作用により、突起部又は突出部の除去を繰り返しながら、所定の形状に加工するものである。
したがって、放電加工面は微小な突起又は突出部が形成されている。本発明は、このような微小凹凸のアンカー効果を利用してスパッタリング中に形成されるデポ膜又はリデポ膜の剥離を減少させるものである。
放電加工による粗化処理は、通常の放電加工機を使用して行うことができる。加工電源には通常パルス電源を使用し、電圧、電流、パルス波形、放電時間、加工液、電極材質等を調節して必要な加工形態を得る。
電極には通常、銅、黄銅、炭素の他に、電極からの汚染を考慮して、被加工材と同一の金属等を使用し、加工液は上記の白灯油、水、水ガラス等を使用することができる。被加工物は通常、導電体であることが必要であり、金属や導電性セラミックスを使用するが、電解液を加工液として使用する場合には、非導電性材料も放電加工による粗面とすることができる。
一般に、放電加工面の粗化面は、なだらかな丘状の起伏を有しているが、被加工物の材料に応じて、放電加工条件を適宜選択することにより、本発明の90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起からなる放電加工痕を形成することができる。
通常形成されるなだらかな丘状の起伏をもつ粗化面では、前記ブラスト処理による凹凸形成にアンカー効果に比して著しく劣ることが分かっているが、本発明の放電加工痕は、前記ブラスト処理によるアンカー効果よりも一段と優れたものである。
また、本発明はこの放電加工処理部に化学的エッチング処理を施してアンカー効果をさらに改善するものである。
図1は一般的に行われている放電加工によって形成された加工痕の概念図を示す。放電加工痕に現れる多数の突起は図1に示すように、その俯角すなわち母材表面と突起とのなす角θは90°を超える傾斜面を有する。
図2は高純度Tiの一般的に行われている放電加工によって形成された加工痕の表面のSEM写真であるが、放電加工痕に現れる突起はなだらかな傾斜面をもつ円錐型の形状を呈している。このような円錐型の突起はアンカー効果が小さいことが分かる。 なお、この場合の放電加工条件は後述する図4の放電加工痕(本発明の)を形成する条件とは電極の極性を反転させて加工した場合である。
これに対し、90°未満の俯角を有する傾斜した突起からなる本発明の放電加工痕の概念図を図3及び図4に示す。
これらの図3及び図4に示すように、突起の俯角すなわち母材表面と突起の一部又は全周の側面とのなす角θが90°未満の傾斜面を有する。
図5はカーボン電極を使用し、白灯油の加工液中で、パルス電流6.5A、パルス継続時間5μsecの条件で、高純度Tiを2分40秒間放電加工した表面のSEM写真である。これによると、前記図4に示す俯角を有する傾斜した突出部(りんご型の)からなる放電加工痕が形成されている。この場合、パルス継続時間を長くすれば、さらにこのようなりんご型の物体が形成されやすくなった。
放電加工は加工液中で処理を行うため、母材への加工液の残留が考えられる。したがって、不純物が少ない加工液を使用することが必要であり、汚染の状況や用途に応じて不純物のない超純水を使用したり、新規に液交換をすることが望ましい。
以上から、加工液としては、純水さらに好ましくは超純水を使用することが望ましく、例えば被加工材であるターゲットの不純物レベル以下の純水又は超純水を使用することができる。加工液として使用する純水は供給口で1MΩ・cm以上のものを使用できる。超純水は、一般に超純水と言われているもので良いが、例えば供給口で全シリカ100wtppb(10−9)以下、比抵抗14MΩ・cm以上、重金属10wtppt(10−12)以下のものを使用できる。なお、放電加工中はTiイオン、Ti微粒子の増加により、比抵抗は通常低下する。
このような90°未満の俯角を有する傾斜した突起は、被加工材の種類によって、適宜放電加工の条件を調整することにより達成できるが、加工油が気化し膨らんだ状態が急激に冷却されたことにより形成される球状の塊が母材表面に付着している個所とアーキングによって形成されたクレーター状凹部の外輪部でオーバーハングしている個所に主として見られる。
このような俯角は放電加工された表面に堆積したスパッタ膜が母材から熱応力により剥離しようとするときに母材側に押し付ける向きの応力を発生し、剥離を防止することができる。放電加工痕を有する表面の最大表面粗さRyが30μm以上であることが望ましい。
また、このような形態の放電加工痕を得るためには、それ自身が高融点で加工速度が速い材質の電極を採用し、さらにパルス電流の極性とその大きさ及びパルス継続時間を調整する必要がある。このような放電加工痕は通常の放電加工処理条件では実現できないと言える。
以上の放電加工による表面性状の改善により、ターゲット、バッキングプレートその他のスパッタリング装置内機器の不要な膜が堆積する面から発生する該堆積物の剥離・飛散を直接的かつ効果的に防止でき、パーティクル発生を著しく減少させるという優れた特長を有する。
上記本発明の放電加工痕は、放電加工特有の利点がある。それは、母材表面が荒れていたり、またデポ膜が残留していたとしても、初めて放電加工処理を施す部材と同様に、繰り返し放電加工処理が可能であるということである。
これはスパッタ装置(真空装置)内部の機器の耐用時間を大幅に延長することができることを意味し、実用的に極めて重要である。但し、母材を削り取っているため、無限に放電加工を繰り返すことはできないという制限はある。
また、加工前の下地処理はラフであってもよく、機械加工を大幅に軽減できる特長を有する。さらに、放電加工の際の電極形状や加工工程を工夫することにより、溶射、ナーリング、エッチング処理では困難である三次元の複雑な形状の場合にも、デポ膜又はリデポ膜の剥離を防止できる放電加工痕を表面に形成できるという著しい利点がある。
本発明は上記に加えて、放電加工部にさらに化学的エッチング処理を施すことにより、アンカー効果をさらに改善することもできる。
放電による熱で加工液が気化し、膨張した状態が急激に冷却されることで形成される前記球状(りんご型)の突起物の内部はしばしば空洞であり、その表面は溶けて滑らかな状態となっている。
これらの空洞を外部空間から仕切る外殻は非常に薄くなっている部分がある。図6の模式図に示すように、エッチングによりこのような外殻部の薄くなった部分が破られ、空洞内部と連通し、複雑な形状となってアンカー効果がさらに増す。
また、このような外殻が破られない放電加工跡の球状(りんご型)の突起物はエッチングにより図7に示すように微細な多数の凹凸が該突起物の表面に形成され同様にアンカー効果が増大する。
図8は、先に示した図5の形状が実現される条件にて放電加工処理した純Ti製の試料をフッ酸と硝酸の混合水溶液中に10秒間浸漬した状態の表面SEM像である。
図6の模式図で示したように、球状突起物の側面の一部に貫通孔(矢印)が開いている様子が見える。
このように放電加工された結晶組織はエッチング液に侵されやすいために、微細な凹凸が形成されやすく、容易にエッチングが可能であり、しかも飛躍的にアンカー効果を増大させることができるという著しい特長を有する。
本発明の放電加工による処理又は放電加工及びエッチングによる処理は、例えばターゲットに適応する場合、矩形、円形、その他の形状のターゲットにも適用できる。この場合、非エロージョン部であるターゲットの側面に加工することも効果的である。
ターゲット側面は傾斜面とすることが多いが、垂直な面あるいはこれらの面に継続した平面を持つ構造のスパッタリングターゲットにも適用できる。本発明はこれらを全て含むものである。
特に、ターゲット側面からのパーティクル発生については、看過されがちであるが、スパッタリングターゲットの傾斜側面から、一旦付着したスパッタ粒子(堆積物)が再び剥離し、それが浮遊してパーティクル発生の原因となることが観察される。
しかも、このような堆積物の剥離が平坦な周辺のエロージョン面近傍よりもむしろ、そこから離れている箇所からの方が、堆積物の剥離が多くなっている。したがって、このような側面への適用が極めて容易であり、かつパーティクル発生を効果的に抑制できるメリットがある。
また、バッキングプレート材としては、通常使用されている銅、銅合金系、アルミニウム、アルミニウム合金系等を使用でき、これらに特に制限はない。スパッタ装置内の機器については、特に材料を特定する必要はなくステンレスその他の材料表面に施すことができる。
スパッタリングターゲットの側面が傾斜面である場合、特にバッキングプレートに接合するスパッタリングターゲットの側面が該バッキングプレートに向かって末広がりの傾斜面を持つスパッタリングターゲットにも使用できる。
特に、本発明は、スパッタリングターゲットの側面及びバッキングプレートの面に亘って連続的に本発明の放電加工又は放電加工及びエッチングが施されているのが望ましい。
上記の通り、ターゲット側面及びバッキングプレートとの間には材質的な相違やそれによる熱膨張の差異、さらには材料間で明確な段差が生じ、パーティクル発生の原因となるが、この部位により強固なアンカー効果を有する放電加工又は放電加工及びエッチングを施すことにより、パーティクル発生を効果的に防止できる。
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。なお、実施例はあくまで本発明の一例であり、この実施例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく、変形や他の態様は全て本発明に包含される。
(実施例1、2及び比較例1〜4)
〔耐剥離性試験〕
放電加工(EDM)、ショットブラスト及びバフ研磨した純チタン製試料を作製し、到達真空度1.3×10Pa以下の雰囲気で、20vol%Arと80vol%Nの混合ガスが0.8Paの圧力雰囲気中でチタンターゲットをスパッタリングし、試料上にTi−N膜を総厚で約10μm成膜した。EDMの加工条件は、カーボン電極を使用し、白灯油の加工液中で、パルス電流6.5A、パルス継続時間5μsecで高純度Tiを2分40秒間とした。
実施例1及び実施例2については、放電加工による表面形態が本発明の範囲の90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起からなる(りんご型の)もので、粗面がそれぞれRy69μm及びRy35μmであるもの、比較例1はRy55μmで、表面形態が円錐型とりんご型が混在したもの、比較例2はRy28μmで、表面形態が円錐型であるもの、比較例3はSiC#30によるブラスト処理したもの(Ryは21μm)、比較例4はバフ研磨したもの(Ryは2μm)である。
剥離試験の結果を、表1に示す。
Figure 0004189476
表1に示すように、実施例1及び実施例2では剥離が認められなかった。これに対し、比較例1の表面形態が円錐型とりんご型が混在したものでは一部剥離があり、また比較例2の図2に示す円錐型の放電加工痕では大きく剥離し、単に放電加工面による粗面を形成しただけでは、デポ膜又はリデポ膜の剥離が生じてしまうことが分かった。また、比較例3はSiCの残留が見られ、この残留した大きなSiCの表面から剥離するという問題を生じた。さらに、バフ研磨した比較例4では鏡面状を呈しているが、膜厚5μmで大部分が剥離してしまった。
以上から、本発明のりんご型の放電加工痕はデポ膜又はリデポ膜の耐剥離性に著しく優れていることが分かる。
(実施例3及び比較例5)
〔パーティクル発生量比較試験〕
ターゲット側面に対して上記実施例1の条件で放電加工を施した。このターゲットを用いてスパッタリングを実施し、0.2μm以上のパーティクル発生数の変化を積算電力量応じて測定した。
また同時に、比較例3の条件で同様にターゲット側面に対してブラスト処理した場合のパーティクル発生数をカウントした。
この結果を、表2に示す。表2に示す個数は8インチウエハーでの個数を表す。
この表2に示すように、ブラスト処理した比較例5は0〜250kWhまで0.2μm以上での平均で16.2個/ウェハーのパーティクル発生が見られるが、実施例2では同12.1個/ウェハーと約25%の減少が見られる。
以上から、本発明の放電加工痕はパーティクル発生を抑制する効果が著しいことが分かる。
Figure 0004189476
(実施例4及び比較例6〜9)
〔耐剥離性試験〕
球状(りんご型)の突起形態を有する放電加工(EDM)処理された純チタン製試料を使用し、エッチング処理をしたもの(実施例4)、無処理のもの(比較例6)、ショットブラスト処理(SiC#30(比較例7)、SiC#100(比較例8))及びバフ研磨した(比較例9)ものを示す。
各例について、到達真空度1.3×10Pa以下で、20vol%Arと80vol%Nの混合ガスが0.8Paの圧力雰囲気中、チタンターゲットをスパッタリングし、試料上にTi−N膜を総厚で約100μm成膜した。EDMの加工条件は、カーボン電極を使用し、白灯油の加工液中で、パルス電流6.5A、パルス継続時間5μsecで高純度Tiを2分40秒間とした。
剥離試験の結果を、表3に示す。表中Ryは最大表面粗さ(μm)を示す。
Figure 0004189476
表3に示すように、比較例6の球状(りんご型)の突起形態を有する放電加工(EDM)処理された純チタン製試料は、剥離試験で良好な結果を示すが、それでも32μmほど成膜するとTi−N膜の剥離が見られた。
これに対し、本発明の実施例4における放電加工(EDM)処理後エッチング処理したものは、100μmまでTi−N膜の剥離がなく、優れた耐剥離性が認められた。なお、この比較例6はエッチング処理の効果を見るためのものであり、本発明の放電加工処理及びこれによる著しい効果を否定するものではない。
因みに、ショットブラスト処理した比較例7及び比較例8は試料に突き刺さった形でブラスト材であるSiCの残留が見られ、この残留したSiCの表面からTi−N膜がミクロに剥離する現象が見られ、また比較例8では55μmで大きな面積で剥離した。また、バフ研磨で仕上げした比較例9では、膜厚5μmで殆ど剥離してしまった。以上から、本発明のりんご型の放電加工痕を有する放電加工及びエッチング処理した面は、デポ膜又はリデポ膜の耐剥離性に著しく優れていることが分かる。
(実施例5及び比較例10)
被加工材と同様の純チタン電極を使用し、超純水の加工液中で高純度純チタンに放電加工を実施した。その結果を実施例5とし、また対比のために、白灯油を用いて放電加工を実施した場合を比較例10とした。
放電加工条件は、パルス電流6.5A、パルス継続時間8μsecで4分間とした。
放電加工による表面形態を図9に示す。この図9に示すように、本発明の範囲である90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起(りんご型の)が観察された。しかも、粗面が一層乱れて複雑である。
また、超純水の加工液を使用した場合は、表4に示すように、白灯油を使用する場合よりもはるかに不純物が少なく、被加工材を汚染しないという特徴を有している。なお、Oについては、いずれの場合も検出されているが、実施例5での検出強度は比較例10よりもはるかに弱かった。
このように、本実施例5において、超純水の加工液中で放電加工する場合には、汚染が少なくさらに堆積膜の付着力を向上できるという著しい効果を確認できた。
また、この試料に対し、実施例4と同様なエッチング処理を施した場合、耐剥離性は一層向上した。
Figure 0004189476
放電加工皮膜の改善により、またさらに放電加工及び化学的エッチング処理により、ターゲット、バッキングプレート、スパッタリング装置内の機器等の、不要な膜が堆積する面から発生する該堆積物の剥離・飛散を直接的にかつ効果的に防止でき、パーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器及び放電加工による粗化方法又は放電加工及び化学的エッチング処理による粗化に有用である
一般的に行われている放電加工によって形成された加工痕の概念図である。 高純度Tiの一般的に行われている放電加工によって形成された表面の加工痕を示すSEM写真である。 一部(片側)が90°未満の俯角を有する傾斜した突起からなる本発明の放電加工痕の概念図である。 全周が90°未満の俯角を有するりんご状の突起からなる本発明の放電加工痕の概念図である。 本発明の放電加工を施した表面の加工痕を示すSEM写真である。 本発明の90°未満の俯角を有するりんご状の突起からなる放電加工痕とその後に化学的エッチング処理した例を示す模式図である。 本発明の90°未満の俯角を有するりんご状の突起からなる放電加工痕とその後に化学的エッチング処理した他の例を示す模式図である。 本発明の放電加工処理した後に化学的エッチング処理した状態の表面SEM像の一例である。 放電加工液に超純水を使用して、本発明の放電加工を施した場合の表面の加工痕を示すSEM写真である。

Claims (5)

  1. スパッタリング中の不要な膜が堆積する面に放電加工痕を形成したスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器であって、前記放電加工痕は90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起からなり、剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上であることを特徴とするパーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器。
  2. スパッタリング中の不要な膜が堆積する面に放電加工痕を形成したスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器であって、前記放電加工痕は90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起からなり、剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上である放電加工処理部に、さらに化学的エッチング処理が施されることにより、空洞部を備えた突起の外殻が破壊され、該空洞部と外部空間が連通した前記放電加工痕であることを特徴とするパーティクル発生の少ないスパッタリングターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器。
  3. スパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面を放電加工し、放電加工面に90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起を形成し、該突起は剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上であることを特徴とするスパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面の放電加工による粗化方法。
  4. スパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面を放電加工し、放電加工面に90°未満の俯角を有する傾斜した多数の突起である放電加工痕を形成し、該突起は剥離の原因となる円錐型突起を含んでおらず、かつ最大表面粗さRyが30μm以上であり、これらの放電加工処理部にさらに化学的エッチング処理を施して突起の外殻を破壊し、該突起に存在する空洞部と外部空間を連通させることを特徴とするパッタリング中に形成されるターゲット、バッキングプレート又はスパッタリング装置内の機器の不要な膜が堆積する面の放電加工及び化学的エッチング処理による粗化方法。
  5. 純水又は超純水の加工液中で放電加工することを特徴とする請求の範囲第4項又は第5項に記載の粗化方法。
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