JP4189104B2 - プレッシャフットを用いる加工方法および加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工部周辺のワーク表面をプレッシャフットで押え、工具保持手段に着脱自在に保持させた工具により前記ワークを加工するプレッシャフットを用いる加工方法および加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平1−188207号には、工具を回転自在に保持し、工具の軸方向に移動自在のスピンドルヘッドと、このスピンドルヘッドに支持されて加工時にテーブル上に載置されたプリント基板を押えるプレッシャフットとを備えたプリント基板の加工装置に、プレッシャフットのスピンドルヘッドに対する移動量を検出する第1の検出手段と、スピンドルヘッドを所定量移動させたとき、プレッシャフットを受け、工具先端の到達位置を検出する第2の検出手段とを設け、第1の検出手段により検出された移動量と第2の検出手段により検出された工具先端の到達位置に基づいて、スピンドルヘッドに保持された工具の先端位置からプレッシャフット先端位置までの距離を求め、求めた距離と予め設定された加工深さとの和を加工に必要なスピンドルヘッドの送り量とするプリント基板加工装置が開示されている。
【0003】
上記の従来技術によれば、工具であるドリルは、プレッシャフットがプリント基板を押えた状態でプリント基板に切り込むと共に、プレッシャフットがプリント基板を押えた状態でプリント基板から抜け出すから、ドリルが折れたり、プリント基板にばり等が発生することがない。また、スピンドルヘッドが水平方向に移動する際には、ドリルの先端がスピンドルヘッドの内側に位置決めされているため、ドリルがプリント基板の表面に当たることもない。しかも、表面からの穴の深さを精度良く加工することができた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プリント基板を傷つけないようにするため、プレッシャフットの先端には、耐摩耗性に優れる材質の合成樹脂製のブッシュが交換可能に固定されている。しかし、穴明け速度が毎分300個所を超える場合、ブッシュは短時間で摩耗する。上記従来技術の場合、プレッシャフットはシリンダで駆動され、移動距離は固定である。また、スピンドルヘッド先端からドリル先端までの距離は一定である。したがって、ブッシュが摩耗するとドリル先端がプレッシャフットの先端に近づく。ドリル先端がプレッシャフットの先端に近づくと、ドリルがプリント基板に切り込むときの押えが不十分になり、加工位置がずれたり、ドリルが折れたりする。また、ドリルをプリント基板から抜き出す際、プリント基板の表面にばりや返りが発生したり、ドリルが折れることがある。このため、定期的に装置を停止させてブッシュを交換する必要があり、加工能率が低下した。また、長時間にわたる無人運転ができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術における課題を解決し、プレッシャフットが摩耗等により寸法が変化しても確実にワークを押えることができ、加工品質を維持しながら、加工能率を向上させることができるプレッシャフットを用いる加工方法および加工装置を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、プレッシャフットと工具を着脱自在に保持する工具保持手段とを備え、前記プレッシャフットにより前記工具の周囲を押えながら加工する加工装置において、前記工具を保持したスピンドルの移動量を検出するエンコーダと、前記工具の先端位置を検出する工具先端検出装置と、前記プレッシャフットのブッシュの下面に当接して前記プレッシャフットを位置決めする基準ステーションと、スピンドルを回転自在に保持したスピンドルユニットに対する前記プレッシャフットの位置を検出するセンサと、前記工具先端検出装置と前記基準ステーションが配置されているテーブルと、NC装置とを備え、前記工具先端検出装置が前記工具の先端を検出したときの前記スピンドルの移動原点からの移動距離17dを前記エンコーダで測定して距離17dとし、下端にある前記プレッシャフットが上方に移動して前記センサをオンさせるまでの距離を距離nとすると共に、このとき前記スピンドルの下端から前記デーブルまでの距離L7と前記テーブルから前記工具先端検出装置の検出位置までの距離L22、前記デーブルから前記基準ステーションの上面までの距離L23、前記工具の先端から予め定める距離kの位置から前記工具のカラーの上面までの距離tを予め測定して前記NC装置に入力しておき、前記移動距離17dと前記距離L7及び前記距離L22から、前記スピンドルの先端から前記工具の先端までの実際の長さk1 ( =L7−17d−L22 ) を求め、前記距離17bと前記距離L7と前記距離L23、前記距離n及び前記長さk1から、前記ブッシュの下面から前記工具の先端までの距離a[= ( L7−17b−k1 ) − ( L23−n ) ]を求める処理ステップ ( S100〜S140 ) と、予め設定してある判定用の設定値pと公差αを用いて距離aを判定し、判定結果が「a≧p−α」になり、且つ「a≧p+α」になったときは、現在、前記スピンドルに保持されている工具による加工を実行させる処理ステップ ( S150、S160 ) と、距離aについての判定結果が「a≧p−α」にならなかったときは、更に「a−p≦t」を判定し、結果がY ( 肯定 ) のときは工具の保持位置の変更を行なう処理ステップ ( S170、S180 ) と、距離aについての判定結果が「a≧p+α」にならなかったときは、更に工具の保持長さの許容値として設定してある許容値qを用いて「a−p≦q」を判定し、結果がY ( 肯定 ) のときは工具の保持位置の変更を行なう処理ステップ ( S210、S220 ) とが、前記NC装置により実行されるように構成したことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、距離aについて「a−p≦t」を判定したとき、結果がN ( 否定 ) になったときは工具を交換する処理ステップ ( S170、S190〜S200 ) と、距離aについて「a−p≦q」を判定したとき、結果がN ( 否定 ) のときは工具を交換する処理ステップ ( S210、S190〜S200 ) とが、前記NC装置により実行されるようにしたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0009】
図1は、本発明に係るプリント基板加工機の要部正面図である。クロススライド1は、図示を省略するフレームにY方向(図の左右方向)に移動自在に支持されている。サドル2は、クロススライド1上をZ方向(図の上下方向)に移動自在に支持され、図示を省略するナットが送りねじ3に螺合している。送りねじ3はクロススライド1に固定されたモータ4により回転駆動される。モータ4にはロータリーエンコーダ5が設けられている。
【0010】
サドル2の中心部には、スピンドル7を回転自在に支持するスピンドルユニット8が固定されている。スピンドル7の先端には図示を省略するコレットチャックが設けられており、ドリル9を着脱自在に保持している。ドリル9の外周には後述するカラー10が配置されている。また、サドル2の外周部には1対のエアシリンダ11が固定されている。エアシリンダ11は、スピンドルユニット8の先端部に嵌合するプレッシャフット12を支持している。プレッシャフット12の先端にはブッシュ13が固定され、側面には、サドル2の側面に固定されたセンサ14に対向するようにしてドッグ15が固定されている。
【0011】
テーブル20は、図示を省略するフレームにX方向(図の紙面と垂直の方向)に移動自在に支持されている。テーブル20には、ドリルポスト21と、ドリル先端検出装置22と、基準ステーション23が配置されている。なお、ドリルポスト21はドリル9毎に設けられ、テーブル20上に多数が配置されている。
【0012】
カラー10は、図3に示すように、ドリル9の先端から2点鎖線で示す位置Aまでの距離がkになるようにしてドリル9に位置決めされている。そして、ドリル9は、ドリルポスト21に設けられた穴21bにより径方向に位置決めされ、カラー10の下面10aがドリルポスト21の上面21aに当接することによりZ方向に位置決めされている。なお、位置Aからカラー10の上面10bまでの距離はtである。そして、テーブル20の上面20aから上面21aまでの距離L21、上面20aから点線で示すドリル先端検出装置22の検出位置22aまでの距離L22および上面20aから基準ステーション23の上面23aまでの距離L23は予め測定されてNC装置24に入力されている。また、上面20aからサドル2を移動原点に置いたときのスピンドル7の先端までの距離L7と、プレッシャフット12を下端に移動させたとき(図1の状態)のドッグ15がセンサ14をオンさせるまでの距離n、および距離tが予めNC装置24に入力されている。
【0013】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0014】
図3は本発明の動作を示すフローチャートである。まず、サドル2を移動原点におき、エアシリンダ11を動作させ、プレッシャフット12を上昇させる(手順S100)。この状態で、ドリル9を保持する(手順S110)。すなわち、クロススライド1とテーブル20を相対的に移動させ、スピンドル7の軸心をドリルポスト21の軸心に位置決めし、コレットチャックを開いた状態でサドル2を下降させ、スピンドル7の先端を位置Aに位置決めする。そして、コレットチャックを閉じてドリル9を保持した後、予め定める位置まで上昇させる。次に、ドリルの先端位置を測定する(手順S120)。すなわち、クロススライド1とテーブル20を相対的に移動させ、スピンドル7の軸心をドリル先端検出装置22に位置決めし、サドル2を下降させる。そして、ドリル先端検出装置22がドリル9の先端を検出した時のスピンドル7の移動原点からの移動距離l7dをロータリーエンコーダ5で測定し、予め知られている距離L7、L22とから、スピンドル7の先端からドリル9の先端までの実際の長さk1を、k1=L7−l7d−L22として求め、サドル2を予め定める位置まで上昇させる。
【0015】
次に、エアシリンダ11を動作させ、プレッシャフット12を下降させる(手順S130)。すると、ドリル9の先端は、図1に示すように、ブッシュ13の内側に入る。この状態で、ドリル9先端とブッシュ13の下面との距離aを算出する(手順S140)。すなわち、クロススライド1とテーブル20を相対的に移動させ、ブッシュ13の下面を基準ステーション23に対向する位置に位置決めし、サドル2を下降させる。ブッシュ13の下面が基準ステーション23の上面23aに当接するとプレッシャフット12は移動を停止する。一方、サドル2は下降を継続するため、ドッグ15がセンサ14に対して相対的に上昇する。センサ14がドッグ15を検出したら、その時のスピンドル7の移動原点からの移動距離l7bと、距離L7、距離L23、距離nおよび長さk1とから、ブッシュ13の下面からドリル9先端までの距離aを、a=(L7−l7b−k1)−(L22−n)として求める。
【0016】
次に、求めた距離aが予め定めた設定値pの公差±α内にあるかどうかを確認する。すなわち、先ず、距離aと(p−α)を比較し(手順S150)、a≧p−αの場合は、手順S160の処理を行い、a<p−αの場合は手順S170の処理を行う。手順S160では、距離aと(p+α)を比較し、a≦p+αの場合は加工を開始し、a>p+αの場合は手順S210の処理を行う。
【0017】
手順S170では、ドリル9先端がブッシュ13の下面に近すぎるので、(a−p)とtを比較し、a−p≦tの場合は修正が効くから、ドリル9をドリルポスト21に戻し、スピンドル7の先端を位置Aからa−pだけ下方に修正してドリル9を保持し直してから(手順S180)、加工を開始する。また、a−p>tの場合は、修正が効かないから、当該のドリル9をドリルポスト21に戻し(手順S190)、同径のドリル9が用意されている場合には、他のドリルポスト21に移動して(手順S200)、手順S100の処理を行う。また、手順S210では、a>p+α、すなわちドリル9先端がブッシュ13の下面から内側に入り過ぎであるから、(a−p)とドリル9の保持長さ(くわえ長さ)の許容値qとを比較し、a−p≦qの場合は修正が効くから、ドリル9をドリルポスト21に戻し、スピンドル7の先端を位置Aからa−p上方に修正してドリル9を保持し直してから(手順S220)、加工を開始する。また、a−p>qの場合は、ドリル9の保持長が短くなり、ドリル9を確実に保持できないから、手順S190の処理を行う。
【0018】
なお、上記では手順200において他のドリル9に交換するようにしたが、アラームを出すようにしてもよい。また、手順S170、手順S190においてドリル9を保持し直すようにしたが、アラームを出すようにしてもよい。また、手順S180および手順S220において直ちに加工を開始するようにしたが、手順S100に戻るようにすると、距離aの管理がよりより確実になる。
【0019】
また、上記ではドリル9をカラー10を用いて高さ方向に位置決めしたが、カラー10を用いず、例えばドリル9の先端で位置決めするようにしてもよい。
【0020】
また、上記ではプリント基板に穴明けをする場合について説明したが、プレッシャフットを備える加工機、例えばプリント基板の外形加工機にも適用することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加工部周辺のワーク表面をプレッシャフットで押え、工具保持手段に着脱自在に保持させた工具により前記ワークを加工するプレッシャフットを用いる加工方法において、プレッシャフットの押え面と工具先端との距離が予め定める範囲から外れている場合は、工具の保持位置を変更し、前記距離を前記範囲に納めるように修正するから、ブッシュが摩耗等により寸法変化した場合も確実にワークを押えることができ、加工品質を維持しながら、加工能率を向上させることができる。また、プレッシャフットの押え面と工具先端との距離を最小限のものにすることができるため、加工速度も速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプリント基板加工機の要部正面図である。
【図2】本発明の動作を示すフローチャートである。
【図3】ドリルポストの断面図である。
【符号の説明】
9 ドリル
12 プレッシャフット
13 ブッシュ
a 距離
p 設定値
α 公差
Claims (2)
- プレッシャフットと工具を着脱自在に保持する工具保持手段とを備え、前記プレッシャフットにより前記工具の周囲を押えながら加工する加工装置において、
前記工具を保持したスピンドルの移動量を検出するエンコーダと、前記工具の先端位置を検出する工具先端検出装置と、前記プレッシャフットのブッシュの下面に当接して前記プレッシャフットを位置決めする基準ステーションと、スピンドルを回転自在に保持したスピンドルユニットに対する前記プレッシャフットの位置を検出するセンサと、前記工具先端検出装置と前記基準ステーションが配置されているテーブルと、NC装置とを備え、
前記工具先端検出装置が前記工具の先端を検出したときの前記スピンドルの移動原点からの移動距離17dを前記エンコーダで測定して距離17dとし、下端にある前記プレッシャフットが上方に移動して前記センサをオンさせるまでの距離を距離nとすると共に、このとき前記スピンドルの下端から前記デーブルまでの距離L7と前記テーブルから前記工具先端検出装置の検出位置までの距離L22、前記デーブルから前記基準ステーションの上面までの距離L23、前記工具の先端から予め定める距離kの位置から前記工具のカラーの上面までの距離tを予め測定して前記NC装置に入力しておき、
前記移動距離17dと前記距離L7及び前記距離L22から、前記スピンドルの先端から前記工具の先端までの実際の長さk1 ( =L7−17d−L22 ) を求め、前記距離17bと前記距離L7と前記距離L23、前記距離n及び前記長さk1から、前記ブッシュの下面から前記工具の先端までの距離a[= ( L7−17b−k1 ) − ( L23−n ) ]を求める処理ステップ ( S100〜S140 ) と、
予め設定してある判定用の設定値pと公差αを用いて距離aを判定し、判定結果が「a≧p−α」になり、且つ「a≧p+α」になったときは、現在、前記スピンドルに保持されている工具による加工を実行させる処理ステップ ( S150、S160 ) と、
距離aについての判定結果が「a≧p−α」にならなかったときは、更に「a−p≦t」を判定し、結果がY ( 肯定 ) のときは工具の保持位置の変更を行なう処理ステップ ( S170、S180 ) と、
距離aについての判定結果が「a≧p+α」にならなかったときは、更に工具の保持長さの許容値として設定してある許容値qを用いて「a−p≦q」を判定し、結果がY ( 肯定 ) のときは工具の保持位置の変更を行なう処理ステップ ( S210、S220 ) とが、
前記NC装置により実行されるように構成したことを特徴とする加工装置。 - 距離aについて「a−p≦t」を判定したとき、結果がN ( 否定 ) になったときは工具を交換する処理ステップ ( S170、S190〜S200 ) と、
距離aについて「a−p≦q」を判定したとき、結果がN ( 否定 ) のときは工具を交換する処理ステップ ( S210、S190〜S200 ) とが、
前記NC装置により実行されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
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