以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1実施形態を図1〜図14により説明する。
図1は、本実施形態のエンジン過給システムの全体概略構成を表すシステム構成図である。この図1において、エンジン101には燃料噴射弁113が、エンジン101のシリンダ101aに直接燃料を噴射するように取り付けられている。
エンジン101は、その吸気行程では吸気弁(図示しない)が開き、ピストン(図示しない)が下降して上記空気が吸入される。ここで、均質燃焼を行なおうとする場合には、このタイミングで燃料が噴射され、次の圧縮行程を経て十分にシリンダ内の燃料と空気の混合が促進されるため、空気の利用率が高く、高いトルクを発生させることができる。続いて圧縮行程では、吸気弁が閉じ、ピストンが上昇してシリンダ内空気が圧縮される。ここで、成層燃焼を行なおうとする場合には、このタイミングで燃料を噴射し、点火プラグ(図示しない)の近傍に空燃比の濃い領域を作り、全体として薄い空燃比であっても良好に燃焼できるようにする。空気量が多いのでポンピングロスが少なくなり、また混合気からシリンダに逃げる熱が減少する、すなわち冷却損失が減るので、部分負荷域で同じトルクを出す場合に、空気量を絞って均質燃焼させた場合よりも燃費が向上するようになっている。
エンジン101の燃焼のために吸入された空気は、エアクリーナ109を通り、エアフローメータ110で吸入空気量を計測し、第1ターボ過給機104のタービン(以下第1タービン)104a、または第2ターボ過給機105のタービン(以下第2タービン)105aにそれぞれ連結しているコンプレッサ104b,105bによって圧縮された後、インタークーラ111によって冷却され、電子制御スロットル112で流量を調整した後、吸気管102を通ってエンジン101に送られる。
一方、エンジン101から出た排気は、排気管103を通り、第1タービン104a、または第2タービン105aに送られる。この経路を選択するために、第1排気制御弁106及び第2排気制御弁107(詳細構造は後述の図3参照)が設けられている。
吸気管102と排気管103の間には小容量の前記第1タービン104a、およびこれに比較して大容量の前記第2タービン105aが取り付けられており、吸気または排気に対して並列に配置されている。ここで、排気管103の、第1タービン104aの取り付けられる部分は、第2タービン105aの取り付けられる部分より細くする。
第1タービン104aの容量は、第2タービン105aの容量に対して1/2〜1/5になるように構成する。また第2タービン105aの本体とハウジング(ケース)とのクリアランスは、第1タービンの少なくとも1.5倍以上に設定する。第2タービン105aを使用しない場合は、第2排気制御弁107により第2タービン105aへの排気通路は閉じられており、また、後述するタービン予回転などを用いることにより、第2タービンの精度が低くても十分な過給を行なうことができる。
第1タービン104aの下流には補助触媒115が取り付けられており、また、第1タービン104aと第2タービン105aの経路が合流した下流部分に、主触媒108が取り付けられている。
このとき、114は例えばコンピュータからなるコントローラであり、エンジン101の水温、回転数、エアフローメータ110からの吸入空気量、排気温度センサ116からの排気温度などの情報をもとに、燃料噴射弁113の作動信号を出したり、点火コイル(図示しない)に点火信号を送ったり、第1タービン104aの排気制御弁106、第2タービン105aの排気制御弁107を開閉する信号を出すようになっている。
図2は、このコントローラ114によるエンジン101、第1排気制御弁116、及び第2排気制御弁117の制御手順を表すフローチャートである。なお、以下は、説明の便宜上、典型的な一例として、エンジン101の排気量が2リッターの場合を例にとって説明する。
図2において、コントローラ114は、最初にステップ201において、エンジン101の回転数、電子制御スロットル112を制御するための図示しないアクセルの開度、エンジン101の冷却水の水温、吸入空気の圧力、排気の温度、ギヤ操作位置、車速などの運転操作に係わる状態量情報を、図示しない各情報に対応する検出手段から取り込み、ステップ202にてこの種のものとして公知の方法によって目標トルクを演算する。またそれら取り込んだ検出情報は、後述の運転者の意図を判断する材料としても用いられる。
そして、この目標トルクを基にして、ステップ203において、燃料噴射量、具体的には、燃料噴射弁113の開弁パルス幅を決定する。また、電子制御スロットル112に開閉動作信号を送り、吸入空気量を調節する。また、シリンダ101a内の点火プラグ(図示しない)の概ねの点火時期を決定する。
さらにステップ204において、エンジン101の回転数や要求トルクの履歴、上記したアクセル開度などの運転操作に係わる状態量情報等を元に、運転者が要求しているトルクが大きいのか、小さいのかを判断し、要求トルクが大きい場合は応答性重視のモードに、要求トルクが小さく、かつその変化が小さい場合には、燃費重視のモードになるようにする(運転者の意図を判断する判断手段に相当)。なお、これは、運転席に別に設けられた選択手段としてのモード切替えスイッチによりモード切り換えを行うようにしても良い。
次にステップ205において、排気温度センサ116によって検出した排気温度Tが、ある一定温度T1以下であるかどうかを判定する。
(1)低温時T≦T1の場合(低温時、例えばエンジン101の暖機運転前の場合)には、主触媒108、補助触媒115が活性化していないので、ステップ206に移り、第1排気制御弁106、第2排気制御弁107をそれぞれバイパス側に開口させ、熱容量の大きな第1タービン104aと第2タービン105a(特に第2タービン105a)をバイパスし、補助触媒115を通るように排気通路を切替える。
図3は、このときの第1及び第2排気制御弁106,107の作動状態を表す詳細図である。図3において、第1排気制御弁106は、第1主バルブ201、第1補助バルブ202、第1リリーフバルブ203により構成され、これらは、それぞれアクチュエータ211、212、および213に内蔵されたスプリングの力で閉弁側に付勢されている。これと同様に、第2排気制御弁107は、第2主バルブ204、第2補助バルブ205、第2リリーフバルブ206により構成され、これらは、それぞれアクチュエータ214、215、および216に内蔵されたスプリングの力で閉弁側に付勢されている。それぞれのアクチュエータ211〜216の作動に必要な負圧は、エンジン101の吸気管102に接続したサージタンク(図示しない)により供給されている。低温時の場合には、コントローラ114からの制御信号に基づき第1及び第2リリーフバルブ203,206のアクチュエータ213,216に負圧が供給され、第1及び第2リリーフバルブ203,206を通じて排気ガスを主触媒108側にバイパスさせる。これにより、熱容量の大きいタービン104a,105aに排気ガスの熱エネルギーを吸収されることなく、直接、主触媒108を暖機することができ、主触媒108の早期昇温を行なって排気ガスの浄化を図ることができる。
その後、ステップ207でステップ206の制御に対応して詳細な燃料噴射時期を決定し、ステップ208に燃料噴射弁113に制御信号を出力して燃料噴射を行わせると共にステップ209において点火プラグに制御信号を出力して点火を行わせ、エンジン101を着火燃焼させ、このフローを調整する。
なお、先のステップ205の判定が満たされた場合、ステップ210に移り、排気温度センサ116によって検出した排気温度Tが所定温度T2以下であるかどうかを参照する。ここで、このT2は、前述のT1と、完全暖機後の排気温度T3とに対し、T1<T2<T3の関係が成り立つような温度である。T≦T2の場合(例えばエンジン101の暖機運転中の場合)には、排気管103の上流に設けられた補助触媒115は活性化しているので、これを用いて排気有害成分の浄化を図れる。そこで、ステップ211に移り第2排気制御弁107を閉じ、さらにステップ212で第1排気制御弁106を開く。図4は、このときの第1及び第2排気制御弁106,107の作動状態を表す詳細図である。図4において、まず、コントローラ114からの信号で、第1補助バルブ202のアクチュエータ212に負圧が供給され、第1補助バルブ202が開く。第1補助バルブ202はその開口面積が小さいので、比較的小さな力で開閉を行なうことができる。つぎに第1主バルブ201のアクチュエータ211に負圧を供給し、第1主バルブ201を開く。第1補助バルブ202が開いているので、バルブの前後の圧力差が小さく、比較的小さな力で主バルブ201を開閉できる。こうしてエンジン101からの排気ガスが第1過給機104の第1タービン104aに供給されて過給が行われ、これによって完全に暖機が終了していなくても低速域で十分なトルクを得ることができる。過給圧が所定の設定値例えば150kPaに達すると、アクチュエータ213に負圧が供給され、第1リリーフバルブ203が開く。バルブ203の開度は、吸気管圧力をモニターし、これが一定圧力に達するようにアクチュエータ213により制御される。このようにして第1タービン104aまたは第1リリーフバルブ203を通った排気ガスは、その下流に設けられた補助触媒115を通り、低温時であっても既に補助触媒115が活性化されているので、排気ガスの浄化をはかることができる。
ステップ212が終了した後は、前述のステップ207へ移り、以降は上記同様の制御となる。
(2)低速運転時一方、先のステップ210の判定が満たされない場合、ステップ213に移り、例えば図示しないエンジン回転数センサによって検出したエンジン回転数Nが低回転数側の所定の回転数例えば例えば、毎分2000回転未満であるかどうかを判定する。N<2000rpmである場合には判定が満たされ、ステップ300の低速制御手順に移る。
図5は、このステップ300の詳細手順を表すフローチャートである。図5において、まず、ステップ301において、前述したステップ204と同様、エンジン101の回転数や要求トルクの履歴、アクセル開度などの情報を元に、運転者が要求しているトルクが大きいのか、小さいのかを判定する。
要求トルクが中程度(例えば2リッターエンジンにおいては100Nm程度)以上であるときはステップ302及びステップ303において、第1排気制御弁106を小容量の第1タービン104a側に開口させ、第2排気制御弁107を閉じる。このときの動作状態は前述の図4に示したものとほぼ同様となるので詳細な説明は省略する。上記動作により第1タービン104aが回転し、吸気管112の過給圧を高める。第1タービン104aの容量が小さいので、アイドル回転またはこれに近い低速の排気ガス流量が少ない領域でも、十分にタービン104aを回転させることができ、応答性良く過給を行なうことができる。
その後、ステップ304において、予め設定過給圧(例えば150kPa)に達したかどうかを判定し、判定が満たされたらステップ305に移り、第1排気制御弁106から排気の一部をバイパス通路に流し、過給圧が過度に上昇することを防ぐ。
その後、ステップ306に移り、要求トルクが140Nm以上であるかどうかを判定する。要求トルクが100〜140Nmであればこの判定が満たされず、ステップ307に移って圧縮行程噴射に設定する。そして、ステップ308においてエンジン1のシリンダ1aの圧縮行程に燃料噴射を行ってエンジン101のシリンダ101a内に成層混合気を生成し、ステップ309で点火プラグよりシリンダ101a内に点火してターボ成層燃焼を行なわせることで、燃費を向上させることができる。
要求トルクが140Nm以上であるときはステップ306の判定が満たされ、ステップ310で吸気行程噴射に設定し、ステップ311にて電子制御スロットル112に制御信号を出力して空気量の制御を行った後、ステップ308及びステップ309を経てシリンダ101a内にターボ均質燃焼を行わせ、高いトルクを得ることができる。なお、前述のステップ301において要求トルクが例えば100Nm未満であった場合には、ステップ312において排気制御弁106,107を現状維持のままとし、そのままステップ311以降へと進む。
(3)中速運転時一方、先に図2に示したステップ213での判定が満たされない場合、ステップ214に移り、エンジン回転数Nが中回転数領域の所定の上限値例えば、毎分4000回転以下であるかどうかを判定する。N≦4000rpmである場合(言い換えればいわゆる中速運転領域である場合)、判定が満たされ、ステップ400の中速制御手順に移る。
図6は、このステップ400の詳細手順を表すフローチャートである。図6において、まず、ステップ401において、先にステップ204で判定した運転モードを参照した後、ステップ402に移り、要求トルクが中程度(例えば100Nm)以上であるかどうかを判定する。
判定が満たされたらステップ403へ移る。ここで、中速運転時では第1タービン104aと第2タービン105aのどちらでも使える領域が生ずる。一般に小容量の第1タービン104aを使うと、第2タービン105aを使った場合と比較して排圧が高くなり燃費が悪化するが応答性は高く、第2タービン105aを使用すると逆に燃費は良く、応答性は第1タービン104aを使った場合に比べて劣る。そこで、ステップ403では、運転者の意図から燃費重視、または応答性重視のどちらかに応じて制御を異なるものとする(主として第1タービン104aまたは第2タービン105aのどちらかを使用するかを決定し排気制御弁106および107により経路を選択する)ために、ステップ401で参照した運転モードが応答性重視モード(言い換えれば加速重視モード)であるかどうかを判定する。
(3−1)応答性重視モード(加速重視モード)時運転モードが応答性(加速性)重視であれば、ステップ403の判定が満たされ、ステップ404及びステップ405にて第1排気制御弁106を第1タービン104a側に開口させ、第2制御弁107を閉じる。この動作により、第1タービン104aが回転し、吸気管112の過給圧を高める。その後、ステップ406において、予め設定した過給圧(例えば140kPa)に達したかどうかを判定し、判定が満たされたらステップ407に移り、第2排気制御弁107から排気の一部を第2タービン105aに流し、第2タービン105aを予回転させながら、第1タービン104aの過給圧が過度に上昇することを防ぐ。ここで予回転とは、実際に過給を行なわない程度にタービンをあらかじめ回転させておき、タービンの応答性を良くしておくことと定義する。
図7は、このときの第1及び第2排気制御弁106,107の作動状態を表す詳細図である。図7において、まず、コントローラ114からの信号で、第1補助バルブ202のアクチュエータ212に負圧が供給され、第1補助バルブ202が開く。第1補助バルブ202はその開口面積が小さいので、比較的小さな力で開閉を行なうことができる。ここで第1主バルブ201のアクチュエータ211に負圧を供給し、第1主バルブ201を開く。第1補助バルブ202が開いているので、バルブの前後の圧力差が小さく、比較的小さな力で主バルブ201を開閉できる。こうしてエンジン101からの排気ガスが第1過給機104の第1タービン104aに供給されて過給が行われ、十分なトルクを得ることができる。過給圧が所定の設定値例えば140kPaに達すると、第2補助バルブ205のアクチュエータ215に負圧が供給され、第2補助バルブ205が開く。これにより、第2タービン105aを予回転させて応答性を高めることができる。
なお、さらに排気ガス量が多い場合には、アクチュエータ213(又は216でもよい。以下同様)を作動させて第1リリーフバルブ203(又は第2リリーフバルブ206)を開き、過給圧の過度の上昇を防ぐ。リリーフバルブ203(又は206)の開度は、吸気管圧力をモニターし、これが一定圧力に達するようにアクチュエータ213(又は216)により制御される。
その後、ステップ408に移り、要求トルクが160Nm以上であるかどうかを判定する。要求トルクが160Nm未満であればこの判定が満たされず、ステップ409に移って圧縮行程噴射に設定する。そして、ステップ410にて電子制御スロットル112に制御信号を出力して空気量の制御を行った後、ステップ411においてエンジン101のシリンダ101aの圧縮行程に燃料噴射を行ってエンジン101のシリンダ101a内に成層混合気を生成し、ステップ412で点火プラグよりシリンダ101a内に点火してターボ成層燃焼を行なわせることで、燃費を向上させることができる。
要求トルクが160Nm以上であるときはステップ408の判定が満たされ、ステップ413で吸気行程噴射に設定し、ステップ410にて電子制御スロットル112に制御信号を出力して空気量の制御を行った後、ステップ411及びステップ412を経てシリンダ101a内にターボ均質燃焼を行わせ、高いトルクを得ることができる。
(3−2)燃費重視モード時一方、運転モードが燃費重視であれば、ステップ403の判定が満たされず、ステップ414にて第1排気制御弁106を閉じ、第2排気制御弁107を第2タービン105a側に開口させる。この動作により、第2タービン105aが回転し、吸気管112の過給圧を高める。その後、予め設定した過給圧(例えば140kPa)に達したら、ステップ415に移り、第1排気制御弁106から排気の一部を第1タービン104aに流し、第1タービン104aを予回転させながら、過給圧が過度に上昇することを防ぐ。
図8は、このときの第1及び第2排気制御弁106,107の作動状態を表す詳細図である。図8において、まず、コントローラ114からの信号で、第2補助バルブ205のアクチュエータ215に負圧が供給され、第2補助バルブ205が開く。第2補助バルブ205はその開口面積が小さいので、比較的小さな力で開閉を行なうことができる。つぎに第2主バルブ204のアクチュエータ214に負圧を供給し、第2主バルブ204を開く。第1補助バルブ205が開いているので、バルブの前後の圧力差が小さく、比較的小さな力で主バルブ204を開閉できる。こうしてエンジン101からの排気ガスが第2過給機105の第2タービン105aに供給されて過給が行われ、十分なトルクを得ることができる。過給圧が所定の設定値例えば140kPaに達すると、第1補助バルブ202のアクチュエータ212に負圧が供給され、第1補助バルブ202が開く。これにより、第1タービン104aを予回転させて応答性を高めることができる。
なお、さらに排気ガス量が多い場合には、アクチュエータ216(又は213でもよい。以下同様)を作動させて第2リリーフバルブ206(又は第1リリーフバルブ203)を開き、過給圧の過度の上昇を防ぐ。リリーフバルブ206(又は203)の開度は、吸気管圧力をモニターし、これが一定圧力を保つようにアクチュエータ216(又は213)により制御される。
その後、ステップ416に移り、要求トルクが180Nm以上であるかどうかを判定する。要求トルクが180Nm未満であればこの判定が満たされず、ステップ409に移って前述と同様に圧縮行程噴射に設定し、ステップ410にて空気量の制御を行った後、ステップ411において圧縮行程噴射を行い、ステップ412でターボ成層燃焼を行なわせ、燃費を向上させることができる。このとき、この燃費重視モードでは、ステップ416で説明したように、応答性重視モードの場合と比べ、ターボ成層燃焼するトルクの上限を引き上げている(160Nm→180Nm)ので、燃費向上範囲が応答性重視モードの場合より広く、より燃費が向上できる。
要求トルクが180Nm以上であるときはステップ416の判定が満たされ、ステップ413に移って上記同様吸気行程噴射に設定し、ステップ410にて空気量の制御を行った後、ステップ411及びステップ412を経てシリンダ101a内にターボ均質燃焼を行わせ、高いトルクを得ることができる。
なお、以上説明した中速運転時のステップ402において要求トルクが例えば100Nm未満であった場合には、ステップ417において排気制御弁106,107を現状維持のままとし、そのままステップ410以降へと進む。
(4)高速運転時一方、先に図2に示したステップ214での判定が満たされない場合、エンジン回転数Nがいわゆる高速運転領域(例えばN≧4000rpm)である場合、ステップ500の高速制御手順に移る。高速運転では第1タービン104aのみでは飽和するので、主として第2タービン105aを用いて過給を行なう。
図9は、このステップ500の詳細手順を表すフローチャートである。図9において、まず、ステップ501において、低回転時および中回転時同様、要求トルクが中程度(例えば100Nm)以上であるかどうかを判定する。
判定が満たされたらステップ502へ移り、第1制御弁106を閉じるとともにステップ503で第2排気制御弁107を第2タービン106側に開口させる。この動作により、第2タービン105aが回転し、吸気管112の過給圧を高める。その後、ステップ504において、予め設定した過給圧(例えば140kPa)に達したかどうかを判定し、判定が満たされたらステップ505に移り第1排気制御弁106から排気の一部を第1タービン104aに流し、第1タービンを予回転させながら、過給圧が過度に上昇することを防ぐ。さらに排気ガス量が多い場合には、ステップ506にて第2排気制御弁106からバイパス通路側に排気の一部を流して過給圧の過度の上昇を防ぐ。なお、このときの動作状態は前述の図8に示したものとほぼ同様となるので詳細な説明は省略する。
その後、中速運転時で応答性重視モードである場合と同様、ステップ507に移り、要求トルクが160Nm以上であるかどうかを判定する。要求トルクが160Nm未満であればこの判定が満たされず、ステップ508に移って圧縮行程噴射に設定する。そして、ステップ509にて電子制御スロットル112に制御信号を出力して空気量の制御を行った後、ステップ510においてエンジン1のシリンダ1aの圧縮行程に燃料噴射を行ってエンジン101のシリンダ101a内に成層混合気を生成し、ステップ511で点火プラグよりシリンダ101a内に点火してターボ成層燃焼を行なわせることで、燃費を向上させることができる。
要求トルクが160Nm以上であるときはステップ507の判定が満たされ、ステップ512で吸気行程噴射に設定し、ステップ509にて電子制御スロットル112に制御信号を出力して空気量の制御を行った後、ステップ510及びステップ511を経てシリンダ101a内にターボ均質燃焼を行わせ、高いトルクを得ることができる。
なお、以上説明した高速運転時のステップ501において要求トルクが例えば100Nm未満であった場合には、ステップ513において排気制御弁106,107を現状維持のままとし、そのままステップ509以降へと進む。
以上説明したように、上記第1実施形態によれば、エンジン101の運転条件に応じ、弁制御手段としてのコントローラ114が複数(この例では2つ)の排気制御弁106,107を制御し第1及び第2ターボ過給機104,105に関連する排気通路の選択及び排気ガス流量の制御を行い、エンジン101のシリンダ01a内に所望の態様の燃焼(成層燃焼又は均質燃焼)を行わせる。
したがって、低速運転時においては、小容量タービン104aを備えた第1ターボ過給機104を主として用いることで排気ガス流量が少なくても十分にタービン104aを回転させて応答性よく過給を行い、特に低負荷の場合は圧縮行程噴射を行ってシリンダ101a内に成層燃焼を行わせ燃費向上を図るとともに高負荷の場合には吸気行程噴射を行ってシリンダ101a内に均質燃焼を行わせ出力向上を図れる。また、高速運転時においては、上記第1ターボ過給機104の小容量タービン104aが飽和することから、大容量タービン105aを備えた第2ターボ過給機105を主として用いて過給を行い、上記同様低負荷の場合にはシリンダ101a内に成層燃焼を行わせ燃費向上を図るとともに高負荷の場合にはシリンダ101a内に均質燃焼を行わせ通常のターボエンジンと同等の出力向上を図れる。さらに中速運転時においては、運転モードが応答性重視モードであるか燃費重視モードであるかに従い第1ターボ過給機104あるいは第2ターボ過給機105を主として用いて過給を行い、低負荷の場合は圧縮行程噴射を行って成層燃焼により燃費向上を図れ高負荷の場合には吸気行程噴射を行って均質燃焼により出力向上を図れる。
以上の効果を比較例を用いてさらに詳細に説明する。本実施形態に対する比較例として、従来の比較的大容量のタービンを1つ備えたターボ過給機を、シリンダ内に直接燃料を噴射する機構を備えた直噴型エンジンに適用した場合を考える。図10は、この比較例における回転数−トルクマップ上の運転領域を示した図である。
図10に示すように、この比較例では、高速(高回転数)領域では、十分な過給を行ってターボ成層燃焼による燃費向上効果とターボ均質燃焼による出力向上効果が得られることがわかるが、低速(低回転数)領域では、タービンの容量が大き過ぎて十分な過給ができないため、十分なターボ成層燃焼あるいはターボ均質燃焼が行えず、燃費向上効果や出力向上効果が得られない。
一方、図11及び図12は、それぞれ上記実施形態において応答性重視モード及び燃費重視モードとした場合の、回転数−トルクマップ上の運転領域を示した図である。
これら図11及び図12に示すように、本実施形態では、図10に示した比較例と比べて、低速(低回転数)領域でも第1タービン104aにより効率よく十分な過給を行ない、ターボ成層燃焼やターボ均質燃焼を行わせ燃費向上効果及び出力向上効果を得られることがわかり、特に、図12に示す燃費重視モードでは、第2タービン105aを使用する領域が広く、ターボ成層燃焼領域も大きくなっていることがわかる。
また、中速(低回転数)領域で見ると、図11に示す応答性重視モードでは第1タービン104aを用いかつターボ均質燃焼領域が比較的広くなっており、図12に示す燃費重視モードでは第2タービン105を用いかつターボ成層燃焼領域が比較的広くなっており、単一容量のタービンを用いる図10の比較例に比べ、応答性重視、燃費重視などの目的に合わせて最適なタービンが選択され最適な燃焼態様が行われていることがわかる。
以上のように、本実施形態によれば、エンジン101の低速運転時から中速運転時を経て高速運転時まで、いずれの場合にも過給機能を十分に発揮させ、かつ所望の態様の燃焼(成層燃焼又は均質燃焼)を行わせ、出力向上又は燃費向上を図ることができる。
また、上記比較例のように例えば1つのタービンで低回転領域から高回転領域までなるべく広い範囲をカバーしようとする場合、制御精度向上の観点から、そのタービンとハウジングのクリアランスを非常に小さく精度良く製作しなければならない。これに対し、本実施形態においては、上記したように、コントローラ114が排気制御弁106,107の開閉動作を制御し、エンジン101の運転条件に応じて主として用いるターボ過給機104,105を切り換えることにより、最適な所望の態様の燃焼を行わせることが可能である。したがって、比較的大容量の第2ターボ過給機105のタービン105aについては、ハウジングとの間のクリアランスを、第1ターボ過給機104のタービン104aとハウジングのクリアランスの1.5倍以上というように比較的低精度で製作しており、このような構成としても、十分な過給を行なうことができる。したがって、第2ターボ過給機105の製作精度を低下できる分、製作コストを低減できる効果がある。
さらに、本実施形態においては、第1タービン104aの容量は、第2タービン105aの容量に対して1/2〜1/5になるように構成している。このようにタービンを小型化することにより、第1タービンのコストを第2タービンの約2/3程度に抑えることができ、低コスト化を図ることができる。
なお、上記第1実施形態は上記の構成に限られず、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、その変形例を説明する。
図13は、上記第1実施形態の一の変形例の全体概略構成を表すシステム構成図であり、上述した図1に対応する図である。図13において、この変形例は、第1の実施形態と異なり、補助触媒115をエンジン101の直後の排気管103に取り付けたものである。このようにすることで、エンジン101と補助触媒115の距離を短くできるので、補助触媒115の昇温および活性化を早め、排気ガスの早期浄化促進を図ることができる。
図14は、上記第1実施形態の他の変形例の全体概略構成を表すシステム構成図であり、上述した図1に対応する図である。図14において、この変形例は、第1の実施形態と異なり、補助触媒115を排気管103の、第2タービン105aをバイパスする部分に取り付けたものである。
これにより、例えばエンジン101の暖機時においては第1排気制御弁106を閉じ第2排気制御弁107をバイパス通路側に開くようにすることで、エンジン101の排気ガスの持つエネルギーをタービン104a,105aに吸収させることなく補助触媒115を早期に昇温させ活性化を早めることができ、排気ガスの早期浄化促進を図ることができる。
また、上記第1実施形態では、2つの過給機すなわち第1ターボ過給機104及び第2ターボ過給機105の両方ともにターボ過給機としたが、これに限られず、例えば第1タービン104aに代えてスーパーチャージャーその他の過給機構(機械過給機)としてもよい。これらの場合も同様の効果を得る。
さらに、以上はタービンの数を2つとしたが、これにも限られるものでなく、エンジン101の大きさによっては3つ以上のタービンを設け、各排気制御弁を切り替えてそれらタービンを適宜選択的に作動させることで、既に述べたような効果をあげることも可能である。言い換えれば「容量の異なる2つ以上の過給機を略選択的に動作させる」という機能を備えていれば、排気管の接続形態や、排気制御弁の機能は必ずしも上記第1実施形態で説明したような形式には限定されるものではない。
また、本発明は2つ以上のタービンを備えるシステムにも限られず、例えば排気ガス量が少ない低速又は低負荷時からの加速応答性がよく、かつ高速時において排圧の過度な上昇がなく、吸入空気量が十分確保できれば、必ずしもタービンを2つ設けなくてもよい。以下、そのような実施形態を説明する。
本発明の第2の実施形態を図15〜図17により説明する。本実施形態は、比較的大容量のタービン1つを用いて、上記第1実施形態と同様の幅広い領域で良好な過給機能を得ようとする場合の実施形態である。
図15は、本実施形態のエンジン過給システムの全体概略構成を表す概念的システム構成図である。図1と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
この図15において、本実施形態は、上記第1実施形態における第1ターボ過給機104を省略して第2ターボ過給機105のみとなっている。またこれに応じて、第1排気制御弁106、補助触媒115も省略されている。
図16は、本実施形態に備えられる噴射制御手段としてのコントローラ114によるエンジン101及び第2排気制御弁117の制御手順を表すフローチャートであり、上記第1実施形態の図2に相当する図である。
図16において、コントローラ114は、まず最初にステップ601において、上記第1実施形態のステップ201及びステップ202と同様に、エンジン101の回転数、アクセルの開度、エンジン101の冷却水の水温、吸入空気の圧力、排気の温度、ギヤ操作位置、車速などの運転操作に係わる状態量情報を検出手段から取り込み、ステップ602にて目標トルクを演算する。その後、ステップ603において、上記第1実施形態のステップ204と同様に、運転者が要求しているトルクの大小を判断し、要求トルクが大きい場合は応答性重視のモードに、要求トルクが小さく、かつその変化が小さい場合には、燃費重視のモードになるようにする(モード切替えスイッチでも良い)。そして、ステップ604において、上記ステップ603で判定した運転モードを参照した後、そのモードが応答性重視モード(言い換えれば加速重視モード)であるかどうかを判定する。
運転モードが応答性(加速性)重視であれば、ステップ604の判定が満たされ、ステップ605において、要求トルクを満たす範囲で、成層燃焼を行なうことのできる最大の空気量をシリンダに取り入れられるように、図1の電子制御スロットル112を調節する。
その後、ステップ606において、上記空気量に見合うような第1回の燃料噴射量を決定した後、残りの空気を使って燃焼できる燃料量を、第2回の燃料噴射量として設定する。例えば、均質燃焼における理想混合の場合の空燃比は約14.7であるが、要求トルクを満たすような第1回の噴射量の結果の空燃比が約29.4だったとすれば、第2回の燃料噴射でも同じ量の燃料噴射を行ない、第1回と第2回の合計の空燃比が約14.7になるようにする。
そして、ステップ607で圧縮行程となるのを待って、ステップ608においてエンジン101のシリンダに第1回目の燃料噴射を行ってシリンダ内に成層混合気を生成し、ステップ609で点火プラグよりシリンダ内に点火してターボ成層燃焼を行わせ、エンジントルクを得る。
その後、ステップ610で膨張行程(または排気行程)となるのを待って、ステップ611においてエンジン101のシリンダに第2回の燃料噴射を行なう。上記手順を終えたら、このフローを終了する。なお、このような制御を、毎サイクルあるいは所定サイクル数をおいて間欠的に行う。
なお、前述のステップ604において運転モードが燃費重視モードであった場合には、ステップ605〜ステップ611における2回噴射制御を行わず、ステップ612において通常の制御を行う。
以上のように構成した本実施形態の作用効果を以下に説明する。
上記第1実施形態において前述したように、一般に、小容量のタービンを使うと低速運転時の応答性は良くなるが高速運転時に排圧が高くなって燃費が悪化し、大容量のタービンを使用すると低速運転時の応答性が小容量タービンに比べて劣る。
そこで、本実施形態においては、1つの大容量のタービン105aを用いるとともに、さらにコントローラ114で、シリンダの圧縮行程において第1回目の燃料噴射を行わせてエンジントルクを得た後、シリンダの膨張行程(または排気行程)において第2回目の燃料噴射を行わせる。この第2回目に噴射された燃料はエンジントルクとはならないが、高温のシリンダ内(または排気管)において燃焼し、排気ガスのエネルギーを増す働きを持つことにより、タービン105aの回転数の上昇を早めることができるので、上記のように大容量タービンを用いる場合でも、低速運転時における応答性を向上させることができ、また、走行におけるターボ成層燃焼の機会を多くすることができる。
以上のような制御の結果実現可能な回転数−トルク特性の一例を回転数−トルクマップ上の運転領域として示した図を図17に示す(なお併せて加速時のCVTの変速曲線を示している)。この図17は、第1実施形態における前述の図11にほぼ相当する図である。
図17に示すように、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様、低速運転低負荷の場合は圧縮行程噴射を行ってシリンダ内に成層燃焼を行わせ燃費向上を図るとともに、高負荷の場合には吸気行程噴射を行ってシリンダ内に均質燃焼を行わせ出力向上を図ることが可能となり、高速運転低負荷の場合はシリンダ内に成層燃焼を行わせ燃費向上を図るとともに高負荷の場合にはシリンダ内に均質燃焼を行わせ出力向上を図ることが可能となる。すなわち、エンジンの低速運転時及び高速運転時のいずれにも過給機能を十分に発揮させ、出力向上又は燃費向上を図ることができる。