JP4187866B2 - 光ファイバセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不安定地層や変位の可能性のある岩石等である監視対象物の、監視基準側である安定地盤に対する変位を観測する光ファイバセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、岩盤崩落や地滑りや落石等の防災対策としては、担当職員による日常、非常時の点検、巡視によっていることが一般的である。この点検、巡視は、地盤斜面や崖等の亀裂の発生や、岩盤や特定の岩石の変位等である、災害の予兆現象の有無を監視することを目的とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような点検、巡視による監視では、
▲1▼広範な監視領域全体の常時監視が困難であり、現場移動による対応の遅れを生じる可能性がある、
▲2▼悪天候や夜間等の状況下では、点検、巡視自体が困難であり、点検、巡視作業自体に危険が伴う、
▲3▼地震等の広域災害時には、点検、巡視を行うべき危険箇所が多数発生するにも関わらず、人員の確保が困難となり、迅速な情報収集ができない、
▲4▼危険箇所への立ち入り自体が出来ず、点検、巡視が不可能な場合がある
といった問題がある。
また、近年では、光ファイバを利用した各種センシング技術が開発、実用化され、様々な用途に応用されつつあり、これを監視領域内の岩盤や岩石等の常時監視に応用することが期待されている。しかし、自然の土砂や岩盤の変位、歪み等を効率的に計測できる適切な光ファイバセンサはこれまでに無く、その開発が求められていた。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、土砂や岩盤の変位、歪み等を効率的に計測でき、岩盤崩落や斜面崩壊等の危険箇所を常時監視して災害の予兆現象を迅速に把握でき、防災に役立てることができる光ファイバセンサを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、崩壊の可能性のある不安定地層や変位の可能性のある岩石等である監視対象物の、監視基準側である安定地盤に対する変位を観測する光ファイバセンサであって、前記監視対象物と前記安定地盤との間に配置したセンサユニットに、前記安定地盤側に連結されたユニット本体と、前記監視対象物側に一体変位可能に取り付けられ且つ前記ユニット本体に対して相対変位可能になっている可動部材と、当該センサユニット内に余長を確保して収納された光ファイバが配線される複数の光ファイバ配線部と、前記可動部材と連動して駆動されることにより前記複数の光ファイバ配線部を順次移動して、前記光ファイバを当該光ファイバに接続された光パルス試験器から遠い箇所から順に破断させる破断手段とを備えることを特徴とする光ファイバセンサを前記課題の解決手段とした。この発明によれば、不安定地層(すなわち、地滑りが発生しやすい地層)や変位の可能性のある岩石等(すなわち、例えば、動きやすく落下可能性のある一塊の岩石や岩盤)である監視対象物の、監視基準側である安定地盤(すなわち、動きにくく、地滑りや、部分的な崩壊、落下等が発生しにくい安定な地層や、安定岩盤)に対する変位によって、可動部材が変位し、これと連動して変位した破断手段が、複数の光ファイバ配線部を順次移動しつつ、各光ファイバ配線部に配線されている光ファイバを光パルス試験器(いわゆるOTDR)から遠い箇所から順に破断させていく。この時、光パルス試験器では、切断箇所から先の光ファイバからの戻り光(後方散乱光。光ファイバ先端からの反射光や光ファイバ内で生じるレイリー散乱光)が観測されなくなることから、断線位置(破断箇所)の変化を把握でき、これにより、現場から離れた所からでも、監視対象物の変位を検出できる。
【0006】
破断手段による光ファイバの破断が、光ファイバの光パルス試験器から遠い箇所から順になされ、監視対象物の変位量の増大に伴って、光ファイバの破断箇所が光パルス試験器側へ移動すると、光パルス試験器では戻り時間の長い戻り光が順次観測されなくなることから、破断箇所の移動を把握できる。これにより、光パルス試験器での戻り光の観測結果から、監視対象物の変位量の変化をリアルタイムで観測することが可能である。
【0007】
ところで、光ファイバの長手方向の歪み量の連続的な分布を高精度に観測する方法として、非線形現象の一つであるブリルアン散乱光の周波数シフト量が光ファイバの歪みに依存することを利用した手法が開発されている。すなわち、歪みが与えられた光ファイバに試験光を入射した時に生じる後方散乱光の一つであるブリルアン散乱光の波長は、光ファイバに入射した試験光の波長からずれており、この周波数シフト量から、光ファイバの歪み量を把握することができる。また、試験光の入射後、ブリルアン散乱光が受光、観測されるまでの時間により、光ファイバの歪み発生位置の概略を把握することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、ブリルアン散乱光を受光、観測することで、監視領域に存在する崩壊の可能性のある不安定地層や変位の可能性のある岩石等である監視対象物の、監視基準側である安定地盤に対する変位を観測する光ファイバセンサであって、前記監視領域と前記安定地盤との境界に沿って、光パルス試験器と接続された光ファイバを延在配置し、この光ファイバの長手方向の互いに離間された複数箇所を光ファイバ引留部材により前記安定地盤側に引き留め、隣り合う光ファイバ引留部材間の光ファイバを、前記監視対象物に一体変位可能に連結したことを特徴とする光ファイバセンサを前記課題の解決手段とした。この発明によれば、監視領域に存在する不安定地層(すなわち、地滑りが発生しやすい地層)や変位の可能性のある岩石等(すなわち、例えば、動きやすく落下可能性のある一塊の岩石や岩盤)である監視対象物の安定地盤に対する変位によって、光ファイバ引留部材間の光ファイバに張力が作用し、光ファイバに伸び歪みが印加されると、光パルス試験器(いわゆるBOTDR)から前記光ファイバへ入射された試験光が前記伸び歪み発生箇所にて散乱されたブリルアン散乱光の後方散乱光が光パルス試験器に戻ってくる。このブリルアン散乱光の後方散乱光の光パルス試験器への戻り時間を計測することで、前記伸び歪みを生じた箇所を把握できる。また、光パルス試験器にて観測されたブリルアン散乱光の周波数シフト量から、光ファイバの歪み量を計測することで、監視対象物の変位量を把握することもできる。この光ファイバセンサでは、監視領域に布設した光ファイバの適宜箇所を監視対象物と連結して、監視対象物の変位によって光ファイバに伸び歪みが与えられるようにしておくだけで設置できるので、施工が簡単である。しかも、光ファイバは監視領域と安定地盤との境界に沿って布設されるので、監視領域が広範であっても前記境界の全長にわたって光ファイバセンサを設置することが容易であり、監視領域全体について変位を監視できる。なお、監視基準側の安定地盤としては、動きにくく、地滑りや、部分的な崩壊、落下等が発生しにくい安定な地層や、安定岩盤に限定されず、監視対象物に比べて相対的に地滑りや、部分的な崩壊、落下等が発生しにくい地層や岩盤であれば良い。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光ファイバセンサにおいて、前記監視対象物に一体変位可能として取り付けた光ファイバに、安定地盤側の光ファイバを光コネクタを介して着脱可能に接続することで、安定地盤側の光ファイバを介して監視対象物側の光ファイバと光パルス試験器とを接続し、安定地盤側光ファイバの監視対象物側光ファイバに対して接続される先端近傍を、固定手段によって前記安定地盤側に固定したことを特徴とする光ファイバセンサを前記課題の解決手段とした。
この発明によれば、不安定地層(すなわち、地滑りが発生しやすい地層)や変位の可能性のある岩石等(すなわち、例えば、動きやすく落下可能性のある一塊の岩石や岩盤)である監視対象物の、監視基準側である安定地盤(すなわち、動きにくく、地滑りや、部分的な崩壊、落下等が発生しにくい安定な地層や、安定岩盤)に対する変位によって、監視対象物側の光ファイバと安定地盤側の光ファイバとの間を接続していた光コネクタが切り離されるようになっている。この時、光パルス試験器から光ファイバへの入射光の戻り光(例えばレイリー散乱光の後方散乱光等)の観測結果から、光コネクタが切り離されたことを把握でき、これにより、現場から離れた所からでも、監視対象物の変位を安全に監視できる。
【0010】
周知の通り、光ファイバに光を入射すると、当該光ファイバの断線箇所やコネクタ接続箇所での反射光や、光ファイバの密度等の微妙な変化による光の散乱(レイリー散乱)によって生じた後方散乱光が光ファイバの入射端に戻ってくることが知られており、光パルス試験器(いわゆるOTDR)から光ファイバへ試験光を入射してから戻り光を受光するまでの時間(以下、「戻り時間」)を計測することで、断線位置(光パルス試験器からの距離)を把握できる。監視対象物側の光ファイバと安定地盤側の光ファイバとが光コネクタによって接続されている状態では、光パルス試験器によって観測される断線位置は、前記光コネクタから監視対象物側へ延びる光ファイバ先端(終端)であり、光パルス試験器から前記光ファイバ先端に至る光ファイバの全長にわたって生じるレイリー散乱光の後方散乱光や、光ファイバ終端にて生じる反射光等の戻り光が観測される。しかし、監視対象物側、安定地盤側の両光ファイバ間の光コネクタによる接続が解除されると、監視対象物側の光ファイバからの戻り光が観測されなくなることから、これにより、光パルス試験器での戻り光の観測結果から、光ファイバ同士のコネクタ接続が解除されたことを把握できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の光ファイバセンサの実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施例)
まず、本発明の第1実施例を図1および図2を参照して説明する。
この実施例では、地山1の斜面2における地滑りや落石等の監視システムへの適用例を説明する。
【0013】
図1および図2において、この光ファイバセンサ4は、斜面2に露出した監視対象物5(崩落可能性のある岩石、岩盤)に余長を確保して取り付けた光ファイバ6(光ケーブル等)に、地滑り等の可能性の少ない監視基準側である安定地盤7(安定岩盤)側の光ファイバ8(光ケーブル)を光コネクタ9a、9bを介して着脱可能に接続することで、安定地盤7側の光ファイバ8を介して監視対象物5側の光ファイバ6と光パルス試験器10(OTDR)とを接続して構成されている。監視対象物5側の光ファイバ6は、斜面2に露出する監視対象物5である岩石に取り付けたセンサユニット11に余長を湾曲収納し、このセンサユニット11から引き出された先端の光コネクタ9aを、安定地盤7である安定岩盤側の光ファイバ8先端と着脱可能にコネクタ接続する。センサユニット11では、具体的には、例えば、監視対象物5である岩石に取り付けたリール11aに光ファイバ6の余長を巻付け吸収する。センサユニット11では、図示しないカバーによって、光ファイバ6を防水性を確保して収納する。また、光コネクタ9a、9bも、カバー等によって防水性を確保しておく。
【0014】
安定地盤7側の光ファイバ8は、監視対象物5側の光ファイバ6とコネクタ接続される先端(光コネクタ9b)近傍が、固定手段12(アンカー)によって、監視対象物5近傍の前記安定地盤7側の安定岩盤に固定されている。監視対象物5側の光ファイバ6は、センサユニット11から引出不可能に引き留めておき、このセンサユニット11と固定手段12との間では、光コネクタ9a、9bによって接続された光ファイバ6、8を直線状に緊張させておく。
【0015】
図1において、安定地盤7側の光ファイバ8は、安定地盤7側に配置された光成端箱13を介して、光パルス試験器10側の光ファイバ14(光ケーブル)と接続されている。この光ファイバ8の余長8aは、光成端箱13内あるいは光成端箱13と固定手段12との間にて、湾曲吸収される。
なお、光成端箱13では、内蔵した光カプラを介して、光パルス試験器10側の光ファイバ14を、複数本の光ファイバ8と光スプリッタにより分岐接続しても良い。また、光成端箱13では、光パルス試験器10側の光ケーブル14から引き出した複数本の光ファイバを、光カプラを介さずに、複数本の光ファイバ8と直接接続しても良い。
【0016】
光パルス試験器10は、光ファイバ14を介して光ファイバ6、8へ試験光を入射し、その戻り光を受光、観測することで、光ファイバ6の断線位置を随時監視する。監視対象物5側の光ファイバ6と安定地盤側7の光ファイバ8とが光コネクタ9a、9bによって接続されている状態では、光パルス試験器10によって観測される断線位置は、前記光コネクタ9a、9bから監視対象物5側へ延びる光ファイバ6先端(終端)である。光パルス試験器10からの入射光の戻り光(レイリー散乱光の後方散乱光等)の戻り時間(試験光入射から戻り光の受光までの経過時間)が、光ファイバセンサ4の設置当初から変化しなければ、光パルス試験器10から光ファイバ6終端までの光線路の長さ(光パルス試験器10からの距離)に変化が無く、光線路の途中に断線は生じていない。しかし、光パルス試験器10にて観測される戻り光の戻り時間が、本来の光ファイバ6終端からの戻り光の戻り時間よりも短ければ、光パルス試験器10から光ファイバ6終端までの光線路の途中に断線が存在することとなる。この断線は、監視対象物5の移動による光コネクタ9a、9b間の接続解除の他、光成端箱13内での光ファイバ同士の接続不良、人為的あるいは自然災害等による光ファイバ8、14の切断(例えば、土木工事や落石等による光ファイバ8、14の切断)等によっても発生する。光パルス試験器10での戻り光の観測によって、光ファイバセンサ4の光線路全体の故障の有無をも随時監視でき、しかも、光線路の断線位置は、戻り光の戻り時間から特定できるから、復旧作業を迅速に行うことができる。
【0017】
監視対象物5が下方へ変位すると、監視対象物5側の光ファイバ6が当該監視対象物7と一体的に下方へ変位し、その引張力の作用によって、両光ファイバ6、8間を接続していた光コネクタ9a、9bが切り離される。この時、光パルス試験器10では、強いフレネル反射が観測され、監視対象物側光ファイバ6からの戻り光が観測されなくなり、安定地盤側光ファイバ8の監視対象物側光ファイバ6に対してコネクタ接続される先端(光ファイバ8終端)が断線位置として観測されることで、光ファイバ6、8同士のコネクタ接続が解除されたことを把握できる。
これにより、現場から離れた所からでも、監視対象物5の変位(下方への傾斜等)を監視でき、監視対象物5としての岩石の落下や岩盤の崩落等の予兆現象を把握することで、防災に役立てることができる。
【0018】
この光ファイバセンサ4によれば、特定の監視対象物5に対して光ファイバ6を一体変位可能に設けることで構成される構造であるので、監視対象物5として特に落下の危険性の高い特定の岩石や崩落の危険性の高い岩盤等を個別に監視できる。また、監視対象物5から離れた遠隔地から、監視対象物5の変位を監視でき、人が監視対象物5に近付いて直接、点検、巡視することに比べて、安全性を確保できるとともに、光パルス試験器10による随時監視が可能であるため、監視対象物5の変位が確認された際の対策を迅速にとることができるといった利点がある。
光成端箱13にて光ファイバ14と接続した光ファイバ8を複数本引き出せば、一台の光パルス試験器10によって、複数の岩石の変位や、監視対象物5の複数箇所の変位を一括して監視できる。この場合では、例えば、斜面2の広範囲に亘って総合的に変位を監視することができ、より詳細かつ効果的な防災計画を立てることが可能となる。
【0019】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を図3から図6(a)、(b)を参照して説明する。
なお、図中、図1および図2と同一の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
図3および図4に示すように、光ファイバセンサ20は、監視対象物5(崩落可能性のある岩石、岩盤)と地滑り等の可能性の少ない監視基準側である安定地盤7(安定岩盤)との間に配置したセンサユニット21a、21b、21cを備えている。これらセンサユニット21a、21b、21cには、安定地盤7側の光ファイバ8が引き込まれている。
また、光成端箱13内には光ファイバ8の余長が湾曲収納されている。
センサユニット21a、21bは、斜面2から上方へ突き出している観測対象物5と、この観測対象物5の突き出し位置よりも上側の斜面2を形成する安定地盤7との間を連結するようにして配置され、センサユニット21cは、逆に、観測対象物5と、この観測対象物5よりも下側の斜面2を形成する安定地盤7との間を連結するようにして配置されている。
【0020】
図5(a)、(b)は、センサユニット21a、21bの内部構造を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正断面図である。
図5(a)、(b)において、このセンサユニット21a、21bは、前記安定地盤7側に連結されたユニット本体22と、前記監視対象物5側に一体変位可能に取り付けられ且つ前記ユニット本体22に対して相対変位可能になっている可動部材23と、当該センサユニット21a、21b内に余長24aを確保して収納された光ファイバ24が配線される複数の光ファイバ配線部25と、前記可動部材23と連動して駆動されることにより前記複数の光ファイバ配線部25を順次移動して、この光ファイバ配線部25内の光ファイバ8を破断させる破断手段26(光ファイバ切断部材)とを備えている。
【0021】
光ファイバ24は、センサユニット21a、21b内に取り出し可能に収納されるケース状のモジュール27内に湾曲収納される。より具体的には、この光ファイバ24は、モジュール27内のリール27aに巻き付けられるとともに、前記モジュール27内にてリール27aから離間させた所に突設された複数の湾曲壁27b上に形成された溝状の光ファイバ配線部25に湾曲配線されることで、余長が吸収される。前記湾曲壁27bは、モジュール27内に設けられた配線領域27c内にて互いに並行させて複数連設され、これら湾曲壁27b上の光ファイバ配線部25は、それぞれ、前記配線領域27cの底板27dに形成されたスリット27eを横切っている。スリット27eは、各湾曲壁27bにも連続して形成されている。
【0022】
配線領域底板27dは、モジュール27の底板27fから底上げして形成されており、この底板27dの下側(図5(b)中下側)に形成された可動部材収納室27gには、前記可動部材23が当該可動部材収納室27gの内外へ移動自在(図5(a)、(b)中左右へ移動自在)に収納される。また、配線領域27c内には、可動部材23に立設されたカッター状の破断手段26がスリット27eを介して突出されている。可動部材23の移動は、ユニット本体22に設けられたガイド部28によりスリット27eと平行とされている。可動部材23が移動すると、破断手段26も可動部材23と一体的に、スリット27e内を移動することで、各光ファイバ配線部25を横切る。
【0023】
なお、モジュール底板27fと配線領域底板27dとの間にわたって配線する光ファイバ24は、モジュール底板27fと配線領域底板27dとの間に設けられている傾斜部27hに配線することで、急激に曲げられること無く、緩やかに湾曲しつつ配線される。また、モジュール底板27f上では、リール27aの周囲、あるいは、このリール27a近傍のモジュール側壁部27iから複数突設された舌片27jによって、光ファイバ24が安定に押えられるようになっている。
【0024】
光ファイバ24は、モジュール27側部に取り付けられた光コネクタ29(光コネクタアダプタ)を介して、光パルス試験器10側に接続された光ファイバ8と着脱可能にコネクタ接続される。光ファイバ8、24先端は、光コネクタ29に着脱可能の光コネクタプラグ29a、29bによりコネクタ接続可能に成端されている。
光ファイバ24は、リール27a等を利用することで、各光ファイバ配線部25への収納部分間に十分な余長24bが確保されるようにして湾曲収納し、好ましくは、各光ファイバ配線部25への収納部分間に数mの余長25bを確保する。また、光パルス試験器10から近い部分を、最も監視対象物5寄り(図5(a)、(b)中左側)の光ファイバ配線部25に配線収納し、以下、順次、より光パルス試験器10から遠い先端(終端)側の部分を、安定地盤7側の光ファイバ収納部25へ配線収納する。
【0025】
図5(a)中、符号30はガイド片であり、ユニット本体22内面側へ突出するようにして設けられている。モジュール27は、ユニット本体22内にて光ファイバ8が引き込まれる光ファイバ収納空間31側から前記ガイド片30に添わせるようにして、ユニット本体22内のモジュール収納部32に挿入、収納される。また、モジュール27は、モジュール収納部32から引き出すようにすることで、簡単に取り出せるようになっている(矢印A参照)。
なお、ユニット本体22からモジュール27を取り出して、別のモジュール27を収納し、この新規に収納したモジュール27の光コネクタ29へ光ファイバ8の接続を切り替えてモジュール27内の光ファイバ24と接続すると、センサユニット21a、21b内に収納するモジュール27を簡単に交換できる。
ユニット本体22内部への光ファイバ8の引込口は、防水継手33によって防水されており、しかも、ユニット本体22には着脱自在の図示しない蓋が装着されるようになっているので、センサユニット21a、21b内部には防水性が確保される。
【0026】
図2および図4において、各センサユニット21a、21b、21cのユニット本体22は連結部材34によって安定地盤7に連結され、可動部材23は連結部材35によって監視対象物5である岩石に連結されている。図4において、ユニット本体22から突設された連結片22aと連結部材34との間、並びに、可動部材23と連結部材35との間は、いずれも、連結部34a、35aの水平ピンを介して回転自在に枢着されているので、適宜屈曲するようにして連結角度を調整することで、監視対象物5や安定地盤7に対するセンサユニット21a、21bの取り付けを効率良く行うことができる。また、監視対象物5である岩石の下方への変位に追従して連結部34a、35aにおける連結角度が変化することで、センサユニット21a、21bの傾斜角度が変更され、ユニット本体22からの可動部材23の引き出し方向が監視対象物5の変位方向と一致されるため、可動部材23のユニット本体22に対する移動が円滑になされる。
【0027】
なお、連結部34a、35aとしては、前述の構成に限定されず、ユニット本体22に対する可動部材23の移動方向を監視対象物5の変位方向と一致させることが可能な構成であれば、例えば、連結角度を略360度変更可能な自在継手等、各種構成の採用が可能である。自在継手の場合、監視対象物5の変位方向が斜面2下方への直線的な移動で無く、水平方向への変位を含む斜めへの移動であっても、これに対応した連結角度の変化によって、ユニット本体22に対する可動部材23の移動方向を監視対象物5の変位方向と一致させることができる。
但し、センサユニット21a、21b、21c側は、戻り光の観測信頼性を維持するべく、内蔵した光ファイバ24に与える振動や、外から引き込まれた光ファイバ8の移動を防止する必要があるため、変位や向きの変化を極力抑えるようにする。
【0028】
監視対象物5が下方へ変位し、安定地盤7から離間すると、センサユニット21a、21bに対して可動部材23が監視対象物5と一体的に変位してセンサユニット21a、21bから引き出され(図5(a)、(b)中左側への移動)、当初、配線領域27cの最も安定地盤7寄りに在った破断手段26が、可動部材23と連動して一体的に移動して、スリット27eに沿って複数の光ファイバ配線部25を順次、横切るようにして監視対象物5側へ移動し、各光ファイバ配線部25に配線されている光ファイバ24を破断(切断)していく。複数の光ファイバ配線部25に収納される光ファイバ24は、安定地盤7側の光ファイバ配線部25から監視対象物5側の光ファイバ配線部25へ行くに従って、順次、光パルス試験器10寄りとなるので、当初、配線領域27cの最も安定地盤7寄りに在った破断手段26が監視対象物5方向へ移動することで、光ファイバ24が、光パルス試験器10から遠い終端に近い箇所から順次、光パルス試験器10寄りの部分へ向かって破断されていく。ここで、光パルス試験器10により観測される戻り光(レイリー散乱光の後方散乱光等)が、光パルス試験器10から遠い順から観測されなくなることから、断線位置(破断箇所)の変化を把握でき、これにより、現場から離れた所からでも、監視対象物の変位を把握できる。
【0029】
光パルス試験器10による光ファイバ24断線位置の把握は、第1実施例の光ファイバセンサ4と同様に、戻り光の戻り時間の計測によりなされる。この光ファイバセンサ20の設置当初は、光ファイバ24の光パルス試験器10から最も離間した先端(終端)が断線位置として検出されているが、監視対象物5の安定地盤7に対する変位によって破断手段26が光ファイバ24を破断させると、光パルス試験器10にて把握される光ファイバ24終端位置が変化し(観測される終端位置が、光パルス試験器10から近くなる)、監視対象物5が変位したことを把握できる。破断手段26による光ファイバ24の破断は、光ファイバ24の光パルス試験器10から遠い箇所から順になされ、監視対象物5の変位量の増大に伴って、光ファイバ24の破断箇所を光パルス試験器10側へ移動していくので、光パルス試験器10にて光ファイバ24終端位置の変化を観測することで、監視対象物5の変位量を把握できる。また、監視対象物5の移動が継続しており、破断手段26による光ファイバ24の破断が刻々と進行していく場合では、時間の経過に伴う、光パルス試験器10にて観測される光ファイバ24断線位置の変化から、監視対象物5の移動速度等を算出することも可能である。
ここで、光ファイバ24には、隣接する光ファイバ配線部25へ配線収納される部分の間に数m(好ましくは2m以上)の余長24bを確保することで、各光ファイバ配線部25の光ファイバ24から光パルス試験器10への戻り光の戻り時間の差を確保できるので、光ファイバ配線部25単位での断線位置の変化をより明瞭に把握することができる。
【0030】
岩石5の斜面2下側にて、この岩石5と安定地盤7との間に配置したセンサユニット21cは、安定地盤7側にユニット本体22が連結され、安定地盤7の上側の岩石5に可動部材23が連結される。図6(a)、(b)に示すように、このセンサユニット21cの構成は、センサユニット21a、21bとほぼ同じであり、センサユニット21a、21bと異なる点は、内部での光ファイバ24の配線方法や、可動部材23の初期設定位置、可動部材23に取り付ける破断手段26a等である。
図6(a)、(b)において、このセンサユニット21cでは、当初は当該センサユニット21cから突出状態に設定されている可動部材23が、監視対象物5である岩石の斜面2下方への変位によって、センサユニット21c内に押し込まれ、当初はガイド部28側にあった破断手段26aがスリット27e内を光ファイバ収納空間31側へ移動しつつ、各光ファイバ配線部25に配線された光ファイバ24を光パルス試験器10から遠い箇所から順に切断して破断させて行く。複数の光ファイバ配線部25への光ファイバ24の配線は、監視対象物5に最も近い光ファイバ配線部25に光パルス試験器10から遠い箇所を配線し、以下、より監視対象物5から遠い光ファイバ配線部25へ、順次、光パルス試験器10に近い箇所を配線する。したがって、監視対象物5の下方への変位量が小さければ、監視対象物5側の光ファイバ配線部25に配線された光ファイバ24が破断手段26aにより切断され、光ファイバ24の光パルス試験器10から遠い箇所のみが破断され、監視対象物5の下方への変位量が大きければ、より安定地盤7側の光ファイバ配線部25に配線された光ファイバ24をも破断される。これにより、光パルス試験器10にて観測される光ファイバ24終端位置が変化することで、監視対象物5の変位を把握できる。
【0031】
この光ファイバセンサ20によれば、センサユニット21a、21b、21cの光ファイバ配線部25の配列ピッチ単位で、監視対象物5の位置が把握されるから光ファイバ配線部25の配列ピッチを細かくすると、監視対象物5の変位をより詳細に把握することができる。破断手段26、26aによる光ファイバ24破断箇所の変化を経時的に把握すると、監視対象物5の変位速度や、変位の様子(例えば、当初は変位速度が速いが、一定時間経過後は殆ど変位しない等)等をも把握することができる。
また、この光ファイバセンサ20では、第1実施例の光ファイバセンサ4と同様に、例えば、落下危険のある岩石等の監視対象物5の変位を直接監視でき、しかも、この監視を、監視対象物5から離れた所から安全に行うことができる。さらに、監視対象物5の常時監視が可能であり、災害発生の予兆現象が観測されたなら、迅速に防災計画を立てることができる。また、光成端箱13から複数本の光ファイバ8を引き出して、複数の監視対象物5や、同一の監視対象物5の複数箇所を同時に常時監視することも可能である。
また、この光ファイバセンサ20では、モジュール27が交換可能であるから、例えば監視対象物5の落下とは関係の無い落石の衝突といった何らかの原因の誤作動等により可動部材23が作動して、光ファイバ配線部25の光ファイバ24を切断してしまった場合でも、モジュール27を交換することで、容易に復旧することができる。使用後のセンサユニット21a、21b、21cも、モジュール27の交換により再使用できるので、低コスト化できる。
【0032】
なお、この光ファイバセンサ20のセンサユニットや、このセンサユニット内に取り出し可能に収納されるモジュール等は、前述の構成に限定されず、適宜設計変更可能であることは言うまでも無い。
例えば、センサユニットとしては、モジュールを収納せず、ユニット本体内部に直接設けられた湾曲壁によって、光ファイバ配線部を形成する構成等、各種構成が採用可能である。
モジュールとしては、湾曲壁27bに形成した溝状の光ファイバ配線部25を有する構成に限定されず、湾曲壁の間の隙間を光ファイバ配線部とする構成等も採用可能である。
破断手段としては、光ファイバをカッター状の部材で切断する構成に限定されず、例えば、光ファイバを折り曲げて破断させる構成等、各種構成が採用可能である。
【0033】
(第3実施例)
以下、本発明の第3実施例を図7から図10を参照して説明する。
図7において、符号51は監視基準側である安定地盤(安定岩盤)、52は監視対象物としての不安定地層(地滑り等の可能性が高い表土層)、53は光ファイバセンサである。光ファイバセンサ53を構成する光ケーブル55は、安定地盤51の上部露出部である安定地盤露出部54と、該安定地盤露出部54の下側にて地山斜面に沿って延在する監視領域を形成する不安定地層52との間のほぼ水平に延在する境界に沿って延在配置されている。この光ケーブル55の長手方向には、複数のセンシング部56a、56b、56cが連続的に設けられている。
図7においては、センシング部56a、56b、56cは、光ケーブル55の長手方向に沿って互いに当接させて隙間無く連続的に配設されているが、必要箇所にのみ配設することも可能である。また、センシング部56a、56b、56cでは、連結用線状体63aの連結対象が異なる。すなわち、センシング部56aの連結用線状体63aは不安定地層52に打ち込んだアンカーに連結され、センシング部56bの連結用線状体63aはその先端の検出可動体60を谷部65底部の土砂上に食い込ませて一体移動可能とされ、センシング部56cの連結用線状体63aは不安定地層52上の岩石52aに連結されている。
前記光ケーブル55に収納されている光ファイバ(主として、光ファイバ心線)には、光ファイバへの入射光のブリルアン散乱光を観測可能な光パルス試験器57(BOTDR)が接続され、この光パルス試験器57から試験光を入射可能になっている。
【0034】
図8および図9はセンシング部56bを示す図であり、図8は平面図、図9は側断面図である。
図8および図9に示すように、前記センシング部56bは、安定地盤露出部54と不安定地層52との境界近傍にて安定地盤露出部54に固定される固定フレーム58と、一定の離間距離を以て光ケーブル55の長手方向の互いに離間した2カ所を把持固定する光ファイバ把持部品である一対の光ファイバ引留部材59と、この光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55に連結された変位量増幅部64と、この変位量増幅部64に連結された連結用線状体63aと、光ケーブル55や光ファイバ引留部材59を外側から覆うケーブルダクト61とを備える。前記ケーブルダクト61は、固定部品61aによって固定フレーム58に固定され、光ケーブル55の全長を覆うように設けられている。一対の光ファイバ引留部材59は、固定フレーム58に固定することで、一定の離間距離が確保されている。
なお、固定フレーム58は、必要に応じて設置される。
【0035】
連結用線状体63aの、光ケーブル55に向けて上方へ向けられた端部は、変位量増幅部64の受圧プーリ64aに巻き掛けられている。一方、一対の光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55の長手方向中央部には、連結金具62を介して、連結具として連結用線状体63b(ワイヤ等)が取り付けられている。この連結用線状体63bの不安定地層52へ向けて引き落とされた下端は、前記変位量増幅部64の増幅プーリ64bに巻き出し可能に巻き掛けられている。
【0036】
図8および図10に示すように、前記変位量増幅部64は、図示しない固定部品によって固定フレーム58に固定された筐体64c内に、前記受圧プーリ64aと増幅プーリ64bとを収納した構造になっている。受圧プーリ64aおよび増幅プーリ64bは、筐体64c内の定位置に支持された同一の軸64dを以って一体回転自在に連結されている。但し、増幅プーリ64bは、受圧プーリ64aよりも径が大きい(例えば2〜3倍程度)ので、これらプーリ64a、64bの回転時には、増幅プーリ64bの連結用線状体63bが巻き掛けられている外周部の周速度が受圧プーリ64a外周部の周速度よりも大きい。また、受圧プーリ64aと増幅プーリ64bとで、外周部への連結用線状体63a、63bの巻き掛け方向は逆になっている。
図8、図10中、符号64e、64fは、連結用線状体63a、63bをガイドするガイド部材である。
【0037】
前記連結用線状体63bは、ケーブルダクト61に開口した図示しないワイヤ穴に挿通している。また、連結用線状体63a、63bは、光ケーブル55に伸び歪みを与えない程度の張力を以て緊張させておく。この連結用線状体63a、63bの緊張状態は、プーリ64a、64bへの巻き掛け長の調整によって容易に得られる。
一対の光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55も、弛みを生じず、かつ、検出可動体60の変位検出に影響する程度の伸び歪みが与えられない範囲の張力を以って張設しておくことが、検出精度の向上の面でより好ましい。
【0038】
連結用線状体63a下端に連結された検出可動体60は、全体としてプレート状であり、下面に突設された多数の固定突起60aを不安定地層52の土砂に食い込ませることで、不安定地層52と一体的に変位するようになっている。図7において、検出可動体60は、土砂の流出により不安定地層52に形成された谷部65内に設置され、この谷部65内の土砂の流れと一体的に変位するようになっている。この検出可動体60の設置場所は、谷部65に限定されず、谷部65以外の不安定地層52上であっても良い。
また、検出可動体60としては、不安定地層60の土砂と一体変位可能な構成であれば、各種構成の採用が可能であり、例えば、土砂内に埋設される構成等も採用可能である。
【0039】
図7に示すように、連結用線状体63a、63bを介して光ケーブル55に連結する検出可動体60の数は、一つに限定されず、複数であっても良い。
各センシング部56a、56b、56cでは、連結用線状体63a、63bの長さや、連結用線状体63aへの検出可動体60の取り付け位置等を調整するだけで、不安定地層52や岩石52a等の目的の監視対象物に対する連結を簡便に行うことができる。
センシング部56a、56cの連結用線状体63a下端の不安定地層52や岩石52aへの連結は、アンカー等の固定部品によりなされているが、これに限定されず、不安定地層52に対しては検出可動体60の使用、岩石52aに対しては結束等により連結しても良い。
【0040】
不安定地層52は、下方への地滑りを生じる前に、下方への微小な変位を生じることが知られており、この変位によって、安定地盤露出部54と不安定地層52との間や、不安定地層52斜面の途中に亀裂66が生じる。
例えば、センシング部56aでは、不安定地層52の下方への微小な変位が生じると、この不安定地層52に連結されている連結用線状体63aが下方へ引っ張られる。一方、不安定地層52よりも上部の安定地盤露出部54に配設されている光ケーブル55は変位しない。したがって、連結用線状体63aから作用する引張力は、連結用線状体63a、63b並びに変位量増幅部64を介して、一対の光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55に引張力を作用させることとなり、これにより、光ケーブル55に伸び歪みが印加される。
他のセンシング部56b、56cでも、同様に、監視対象物52、52aの下方への変位は、連結用線状体64からの引張力となって作用し、一対の光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55に伸び歪みを与える。
図12に示すように、光ケーブル55は、PVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂製の外被55a内に単心の光ファイバ心線55bを収納し、さらに、外被55aと光ファイバ心線55bとの間に抗張力体55c(ケブラ)を収納した構造になっている。ここで、光ケーブル55は、通常の屋外布設用の光ケーブルにて一般的であるテンションメンバ(金属ワイヤ等から形成される)を有するものでは無く、繊維状の抗張力体55cのみに張力負担を頼るものであり、一般的屋外布設用の光ケーブルに比べて伸び歪みが印加されやすくなっている。外被55bとしては優れた防水性並びに耐久性を有するものを適用する。
なお、光ケーブル55としては、前述の構成に限定されず、伸び歪みが印加されやすい構成であれば、各種構成の採用が可能である。
【0041】
ここで、光ケーブル55の光ファイバに、光パルス試験器57から試験光を入射してブリルアン散乱光(ブリルアン散乱光の後方散乱光)を検出すると、光ケーブル55の伸び歪みが検出され、これにより、不安定地層52自体の変位を検出でき、不安定地層52の崩壊、地滑りの危険を察知することができる。
なお、光ケーブル55の光ファイバへの試験光の入射からブリルアン散乱光の受光までの経過時間によって、光ケーブル55の伸び歪みを生じた箇所をセンシング部56a、56b、56c単位で特定できるので、これにより、安定地盤露出部54から下方へ広がる監視領域全体にわたって不安定地層52の歪みの生じた箇所を特定できる。
【0042】
例えば、センシング部56aでは、不安定地層52に対する連結用線状体63aの設置位置が、亀裂66よりも上方であると、不安定地層52の部分的な変位が検出されない可能性が生じる。監視領域全体にわたって確実に不安定地層52の変位を検出には、出来るだけ多くのセンシング部56a、56b、56cを不安定地層52の各所と連結することがより好ましい。
【0043】
前記変位量増幅部64は、連結用線状体63aの変位量を増幅して、前記光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55に伝達するようになっているから、この光ファイバセンサ53の歪み測定精度を向上できる。
具体的には、光ケーブル55から離間する方向へ連結用線状体63aが変位すると、予め、受圧プーリ64aに確保しておいた連結用線状体63aの巻き出し余長が巻き出されて受圧プーリ64aが回転し、この受圧プーリ64aの回転に伴って増幅プーリ64bが一体的に従動回転することで、連結用線状体63bを巻き取って光ケーブル55を側方へ引っ張り、伸び歪みを印加する。但し、増幅プーリ64bの外周部の周速度は受圧プーリ64aよりも大きいため、受圧プーリ64aからの連結用線状体63aの巻き出し量に比べて、増幅プーリ64bによる連結用線状体63bの巻き取り量の方が多く、その結果、連結用線状体63bからの引張力による光ケーブル55の変位量は、連結用線状体63aの変位量よりも大きくなる。これにより、監視対象物52、52aの変位量が、変位量増幅部64によって増幅されて光ケーブル55に伝達され、伸び歪みの形成により有効に機能する。
【0044】
例えば、受圧プーリ64aの連結用線状体63aが巻き掛けられる外周部径に対する、増幅プーリ64bの連結用線状体63bが巻き掛けられる外周部径(これをプーリ比とする)が2倍であると、光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55の長手方向中央部に、監視対象物52、52aの変位量の2倍の変位量が与えられることとなる。したがって、プーリ64a、64b間のプーリ比が十分に大きければ、監視対象物52、52aの変位量が微小であっても、光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55に十分な伸び歪みを与えることができ、その結果、歪み測定精度を向上できる。プーリ64a、64bの連結用線状体63a、63bが巻き掛けられる外周部径を調整して、プーリ比を変更するだけで、歪み測定精度を向上できる。理論的には、プーリ比がn倍であると、従来±0.02%である歪み測定精度(誤差)をn分の1にすることができる(例えば、プーリ比2倍であると歪み測定精度(誤差)が2分の1)。
【0045】
前述の結果、本発明に係る光ファイバセンサ53によれば、優れた歪み測定精度が得られるため、光パルス試験器57の一般的な読み取り分解能である0.001%(誤差)を十分に活かすことができ、監視対象物52、52aの微小な変位を検出することができる。光パルス試験器57の読み取り分解能である0.001%(誤差)は、光ファイバ引留部材59間に2m確保した光ケーブル55の伸び歪みに換算すると0.01mmであり、この値は、光ケーブルに対して変位量増幅部64を介さずにワイヤで直結された移動部の変位量4.47mmに相当する。本発明に係る光ファイバセンサ53では、監視対象物52、52aの変位量を変位量増幅部64によって増幅して光ケーブル55に作用させるので、監視対象物52、52aの変位量が数mmであっても、光パルス試験器57の読み取り分解能を越える伸び歪みを光ケーブル55に与えることができ、監視対象物52、52aの微小な変位をも正確に検出できるのである。
【0046】
ところで、ブリルアン散乱光の入射光に対する周波数のシフト量は、光ケーブル55内の光ファイバが無歪みの場合でも、約1MHz/℃程度の温度依存性を有するため、数十℃にわたる大きい温度変化が生じる場合には計測データを補正する必要がある。光ケーブル55は、布設場所の状況や環境により、例えば日照や火山地帯の地熱等により、常温よりも数十℃、あるいはそれ以上高い温度に加熱される可能性があるから、より精度の高い監視を行うにはブリルアン散乱光の計測データの温度補正が不可欠である。このことを考慮して、例えば、光ケーブル55に、伸び歪みが印加される光ファイバとは別に、温度補正用の光ファイバを収納し、この温度補正用の光ファイバへの入射光のラマン散乱光の後方散乱光を光パルス試験器にて受光観測したデータから、ブリルアン散乱光の計測データを補正する手法が採用される。温度補正用の光ファイバとしては、SM形光ファイバが一般的である。温度補正用光ファイバへの光の入射により観測されるラマン散乱光の後方散乱光は、当該温度補正用光ファイバの温度により強度が変化するから、観測されるラマン散乱光の後方散乱光の強度は、光ファイバの部分的な温度の違いに対応して異なることとなる。そして、観測波形(ストークス光と反ストークス光のOTDR波形)の散乱光強度から両者の強度比を取り、所定の理論式から温度を求める。
なお、温度補正用の光ファイバは、無歪み状態を維持する必要があるため、例えば、光ケーブル55の途中の適宜箇所に設置した成端箱内等に、この温度補正用光ファイバの余長を確保しておき、光ケーブル55に伸び歪みが与えられたときには、ブリルアン散乱光検出用の光ファイバには伸び歪みが与えられる一方、温度補正用光ファイバは前記余長が光ケーブル55に引き込まれることで無歪み状態が維持される構成等が採用可能である。
【0047】
したがって、この光ファイバセンサ53によれば、ブリルアン散乱光の観測によって、不安定地層52や岩石52aの微小な変位を検出して監視できるため、この検出箇所の不安定地層52の崩壊や岩石52aの落下の危険を早期に察知することができ、付近住民の避難等に役立てることができる。また、監視領域から離間した遠隔地から監視を行うことができ、監視作業の安全性を確保できる。
【0048】
この光ファイバセンサ53では、安定地盤露出部54と不安定地層52との間の境界に沿って光ケーブル55を延在配設し、この光ケーブル55に沿って複数のセンシング部56a、56b、56cを連設しているので、複数箇所を同時に監視でき、複数の点検ポイントや監視ポイント間の移動時間等は不要であり、不安定地層52の崩壊や岩石52aの落下の予兆現象が検出されたなら、対策を迅速に立てることができる。しかも、光パルス試験器57にて得られる観測データから、広範囲の監視領域の複数箇所の変位の有無を同時に監視できることから、この監視領域全体の挙動を総合的に把握して、不安定地層52の具体的な崩壊範囲の把握等から、効果的な対策を立てることができる。
【0049】
また、この光ファイバセンサ53は、ITV等の高価な設備を多数設置する場合に比べて、大幅な低コスト化が可能であり、広範囲の監視を安価で実現できる。しかも、この光ファイバセンサ53は、光パルス試験器57以外には、電気的作動部が無く、落雷等による誘導電流の影響を受ける心配が無いため、光パルス試験器57やその付属の計器等のみ、誘導電流の影響を受けないように保護しておけば、落雷の可能性の大きい山間部等に設置しても、監視性能を損なうことは無く、設置場所の自由度が大幅に向上する。
光パルス試験器57には、互いに隣接する別の監視領域に設置した光ファイバセンサ53の光ケーブル55を接続しても良く、これにより、例えば、地山全体の変形挙動等を把握することも可能であり、より広範囲の監視が可能となる。
【0050】
なお、光パルス試験器57から光ケーブル55に試験光を入射した時に、光パルス試験器57から離間された光ケーブル55終端や、光線路途中のコネクタ接続箇所等以外から、フレネル反射光が検出されたならば、光ケーブル55の破断を検出している。試験光の入射からフレネル反射光の受光までの経過時間によって光ケーブル55の破断点の位置を概略特定できるので、例えば工事等によって誤って切断された光ケーブル55の切断箇所を容易に発見でき、補修作業時間等を短縮できる。
このように、この光ファイバセンサ53によれば、随時、光パルス試験器57による試験を行うことで、光伝送系に係る故障の監視をも行うことができる。
【0051】
センシング部56a、56b、56cは、連結用線状体63a、63bや検出可動体60等を含めて全体をカバー等で覆う等の簡単な対策により、人や動物等が誤って連結用線状体63a、63bに接触して、誤作動することを防止できる。また、変位量増幅部64は、筐体64c内に収納されている構造であるため、強固に構成することができる。
工事等により人や工具が連結用線状体63a、63bに接触すること等によって、誤って光ケーブル55に伸び歪みが印加された時には、一対の光ファイバ引留部材59間の光ケーブル55の伸び歪みを解消することで、簡単に復旧することができる。この場合も、試験光の入射からブリルアン散乱光の受光までの経過時間から、誤作動箇所を簡単に特定することができる。
【0052】
(第4実施例)
以下、本発明の第4実施例を図11を参照して説明する。
なお、図中、図7と同一の構成部分には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0053】
図11において、本実施例の光ファイバセンサ70では、監視領域としての不安定地層52と該不安定地層52の上方に存在する前記安定地盤露出部54との境界に沿って、光パルス試験器57と接続された光ケーブル55を不安定地層52上に延在配置し、この光ケーブル55の長手方向の互いに離間された複数箇所にセンシング部71a、71b、71cを連設している。光ケーブル55は、光ファイバ引留部材72(ワイヤ)により前記安定地盤露出部54側に引き留めている。
【0054】
センシング部71aでは、光ファイバ引留部材72を光ケーブル55に連結した一対の連結部72a間から光ケーブル55を引き出した引出部73を形成し、この引出部73先端にて光ケーブル55を折り返すようにして湾曲させた折返部74を、不安定地層52に一体変位可能に連結している。
光ケーブル55に形成した折返部74の不安定地層52に対する連結は、図11においては、不安定地層52に打ち込んだアンカー75への連結によってなされているが、これに限定されず、例えば、不安定地層52の土砂に食い込ませて一体変位可能とした検出可動体60への連結等により行っても良い。引出部73は、その両側の光ファイバ引留部材72と光ケーブル55との連結部72aから、不安定地層52への連結位置(アンカー75)までの間に、不安定地層52の想定される変位方向に沿って直線状に配設することが好ましく、これにより、不安定地層52が下方へ変位した時に、引出部73の光ケーブル55に伸び歪みを効率良く与えることができる。折返部74から両側の光ケーブル55は、それぞれ、不安定地層52の想定変位方向に沿って、互いに平行に延びることがより好ましい。
なお、引出部73の連結対象は、不安定地層52に打ち込んだアンカー75以外、例えば、不安定地層52から露出する岩石52a等であっても良い。いずれの場合でも、引出部73の光ケーブル55(詳細には、折返部74から両連結部72aまでの光ケーブル55)には、不安定地層52の下方への変位が発生すると、この変位量に相当する伸び歪みが印加される。
【0055】
センシング部71bでは、一対の連結部72a間から光ケーブル55を引き出した引出部76中央部の折返部76aに連結した検出可動体60を、不安定地層52の土砂に食い込ませて一体変位可能としている。図11においては、検出可動体60は、不安定地層52の上下方向へ延在する谷部65に設置されている。この検出可動体60は、底面側の多数の固定突起60aを不安定地層52に食い込ませることで、不安定地層52の土砂と一体変位可能に設置されるので、特に土砂の流動性が大きい谷部65への設置に適している。
引出部76を形成する光ケーブル55は、谷部65底部へ向けて引き込まれ、検出可動体60と連結された折返部76aと、その両側の連結部72aとの間にて緊張されている。図11においては、引出部76は、その両側の連結部72a間の光ケーブル55中央部を谷部65底部へ向けて引き下げて「く」字状に屈曲した形状になっているが、これに限定されず、例えば、折返部76aを連結部72aよりも谷部65下流側へ引き落とし、当該引出部76を谷部65内の土砂の変位方向とほぼ平行に延在させることも可能である。
【0056】
センシング部71cでは、岩石52aに連結された引出部77は、不安定地層52に打ち込まれた一対のアンカー78間から引き出した光ケーブル55によって形成されている。この引出部77先端の折返部79の岩石52aへの連結は、例えば、岩石52aに打ち込んだアンカー80への連結や、岩石52aへの縛り付け等によりなされる。
【0057】
なお、各センシング部71a、71b、71cの引出部73、76、77は、前述の構成に限定されず、例えば、監視対象物52、52aと一体変位可能の複数の連結用治具(アンカーや、検出可動体60等)間に、光ファイバ引留部材との連結部間から引き出した光ケーブル55を掛けるようにして布設する構成も採用可能である。この場合、光ケーブル55は、光ファイバ引留部材との連結部と、連結用治具との間にて、監視対象物52、52aの変位方向と平行に延在させることがより好ましい。また、光ファイバ引留部材が連結された複数の連結部と、複数の連結用治具との間でジグザグに光ケーブル55を布設することも可能である。この場合も、光ケーブル55は、監視対象物52、52aの変位方向と平行に延在する部分を多数形成することがより好ましい。
【0058】
地滑り等の予兆現象である不安定地層52の下方への微小な変位が生じると、センシング部71aでは、不安定地層52と一体的にアンカー75が下方へ変位し、このアンカー75に連結された光ケーブル引出部73に、この不安定地層52の変位量に相当する伸び歪みが印加される。光パルス試験器57にて、前記光ケーブル引出部73にて生じたブリルアン散乱光の後方散乱光が観測されることで、光ケーブル引出部73の伸び歪みが検出される。ここで、光ケーブル引出部73に印加される伸び歪みは、不安定地層52の変位量に相当するから、第3実施例にて示した光ファイバセンサ53のセンシング部56に比べて、不安定地層52の変位量によって与えられる光ケーブル55の伸び歪みは格段に大きく、このため、センシング部71aでは、別途、変位量増幅用の機構を設けなくても、十分な検出精度(感度)確保でき、不安定地層52の微小な変位であっても検出できる。但し、折返部74とアンカー75との間に変位量増幅用の機構を介在配置して、検出精度を向上することも可能であることは言うまでも無い。また、このセンシング部71aは、構成が単純であるので、不安定地層52の目的位置での組み立てが容易であり、また、組み立てに要する資材の現場への搬入量も少なくて済むため施工性に優れるといった利点がある。
【0059】
センシング部71bでは、不安定地層52の谷部65の土砂と一体的に移動した検出可動体60によって、光ファイバ引留部材72が連結された一対の連結部72a間の光ケーブル55の長手方向中央部が、地山斜面に沿った下方へ引っ張られて、連結部72a間の光ケーブル55に伸び歪みが印加される。光パルス試験器57にて、センシング部71bの引出部76にて生じたブリルアン散乱光の後方散乱光が観測することで、光ケーブル55の伸び歪みが検出される。検出可動体60と光ケーブル55との間には、変位量増幅用の機構を介在配置することがより好ましい。
【0060】
センシング部71cでは、岩石52aの変位を直接的に検出する。不安定地層52上にて、岩石52aの落下の予兆現象である下方への微小な変位が生じると、この岩石52aの変位量に相当する伸び歪みが光ケーブル引出部77に印加される。したがって、光パルス試験器56から光ケーブル55へ試験光を入射し、光ケーブル引出部77にて生じたブリルアン散乱光の後方散乱光の有無を観測することで、岩石52aの変位の有無を監視できる。
【0061】
ところで、不安定地層52上の岩石52aは、軟弱な不安定地層52上での姿勢が安定しない等の原因から、不安定地層52とは別に単独で変位、落下する危険がある。このため、この岩石52aに連結する光ケーブル引出部77は、不安定地層52に引き留めるようにしても、その監視効果を十分に発揮する。なお、不安定地層52の下方への変位と一体的に岩石52aも変位してしまうと、センシング71cでは何も異常が検出されないが、この場合には、センシング部71cに隣接のセンシング部71a、71bにより不安定地層52の変位が検出されたり、このセンシング部71cにて光ケーブル55を引き留めるアンカー78と隣接のセンシング部71bの連結部72aとの間にて光ケーブル55に伸び歪みが与えられたことが検出されて、不安定地層52自体の変位が把握される。
また、このセンシング部71cでは、不安定地層52上にて、光ケーブル55を引き回すことで、この不安定地層52上の複数の岩石52aに光ケーブル引出部77を容易に連結できるから、監視領域内に点在する複数の監視対象物(岩石52a等)に対する個別監視を効率良く行うことができる。例えば、センシング部71a、71b間に複数のセンシング部71cを設けることも可能である。
【0062】
この光ファイバセンサ70によれば、監視領域である不安定地層52と安定地盤露出部54との境界に沿って布設した光ケーブル55の適宜箇所に、引出部73、76、77を形成して監視対象物52、52aに連結するだけで簡単に組み立てることができ、優れた施工性が得られる。また、不安定地層52と安定地盤51との間の境界に例えば湾曲部や屈曲部が存在したり、途中に谷部65等の陥没部が存在していても、光ケーブル55は前記境界に沿って湾曲させたり陥没部を迂回させて布設すれば良く、しかも、光ケーブル55に形成する引出部73、76、77の引出長等を調整するだけで該光ケーブル55と監視対象物52、52aとの連結を自由に行えるから、この光ファイバセンサ70は、監視領域の地形等によらず何処にでも容易に施工できる利点がある。
なお、光パルス試験器57におけるブリルアン散乱光の戻り時間から、不安定地層52の変位箇所や、変位を生じた岩石52a等を特定できること、並びに、フレネル反射光等の後方散乱光を観測することで、この光ファイバセンサ70の光線路系の故障箇所を容易に把握できること等の効果は、第3実施例の光ファイバセンサと同様である。
また、この光ファイバセンサ70においても、光ファイバ光ケーブル55に無歪み状態を維持可能に組み込んだ温度補正用の光ファイバのラマン散乱光の観測データを利用して、ブリルアン散乱光の観測データを温度補正することがより好ましい。
【0063】
本発明は、前記実施の形態に限定されず、例えば、光ファイバセンサ部の構造等は適宜変更可能であることは言うまでもない。
また、監視領域と安定地盤との境界に沿って延在配設される光ファイバとしては、光ケーブルに限定されず、例えば、光コード等も採用可能である。光ケーブルの場合でも、光ファイバセンサ部にて伸び歪みが印加される部分のみ、変形しやすい光コード等を採用することも可能である。
前記各実施例では、地山斜面の地滑りや落石等の監視システムへの適用例を示したが、本発明はこれに限定されず、平坦地における安定地盤に対する軟弱地盤の変位等の監視等に適用することも可能である。
また、第3実施例、第4実施例では、例えば、監視領域を取り囲むようにして、光ケーブルを布設して光ファイバセンサを構築することも可能である。
本発明に係る光ファイバセンサは、例えば、光パルス試験器での観測データから監視対象物の変位の有無を判定する判定手段と、監視対象物の変位を検出した時に警報を発する警報手段とを備えた構成も採用可能である。
【0064】
【発明の効果】
請求項1記載の光ファイバセンサによれば、不安定地層や変位の可能性のある岩石等である監視対象物の安定地盤に対する変位によって、前記監視対象物と一体変位した光ファイバと安定地盤側の光ファイバとの間のコネクタ接続が切り離されたことを光パルス試験器にて観測することで、監視対象物から離れた安全な所から、監視対象物の変位の有無を監視できる。この監視は、光パルス試験器により常時行うことが可能であり、しかも、監視対象物の変位をリアルタイムで把握できるので、地滑りや落石等に対する防災対策に役立てることができるといった優れた効果を奏する。
【0065】
請求項2記載の光ファイバセンサによれば、不安定地層や変位の可能性のある岩石等である監視対象物の安定地盤に対する変位によって、前記監視対象物に一体変位可能に取り付けられた可動部材が変位し、これと連動して変位した破断手段が、複数の光ファイバ配線部を順次移動しつつ、各光ファイバ配線部に配線されている光ファイバを光パルス試験器から遠い箇所から順に破断させていくので、光パルス試験器にて観測される光ファイバ破断位置の変化から、監視対象物の変位量を容易に把握することができ、地滑りや落石等の災害発生の危険をより詳細に把握することができ、より詳細な防災対策を立てることができるといった優れた効果を奏する。
【0066】
請求項3記載の光ファイバセンサによれば、地山斜面の監視領域と該監視領域の上方に存在する安定地盤との境界に沿って延在配置した光ファイバに伸び歪みが印加されたことを、光パルス試験器でのブリルアン散乱光の観測により把握することで、監視対象物の変位を監視できる構成であり、布設した光ファイバを、監視領域の複数箇所にて監視対象物に対して、当該監視対象物の変位により伸び歪みが印加され得るように連結することで、簡単に施工できる。しかも、光ファイバを、監視領域の複数箇所にて監視対象物に対して連結することで、監視領域全体の面的な監視が可能であり、より効果的な防災計画の策定に役立てることができるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例の光ファイバセンサを示す全体図である。
【図2】 図1の光ファイバセンサのセンサユニット近傍を示す全体図である。
【図3】 本発明の第2実施例の光ファイバセンサを示す正面図である。
【図4】 図3の光ファイバセンサのセンサユニット近傍を示す正面図である。
【図5】 図4のセンサユニットの内、落下可能性のある監視対象物の上側に設置されるセンサユニットの内部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正断面図である。
【図6】 図4のセンサユニットの内、落下可能性のある監視対象物の下側に設置されるセンサユニットの内部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正断面図である。
【図7】 本発明の第3実施例の光ファイバセンサを示す斜視図である。
【図8】 図7の光ファイバセンサのセンシング部を示す平面図である。
【図9】 図8のセンシング部を示す側断面図である。
【図10】 図8のセンシング部に設けられる変位量増幅部を示す正断面図である。
【図11】 本発明の第4実施例の光ファイバセンサを示す斜視図である。
【図12】 第3実施例、第4実施例の光ファイバセンサを構成する光ケーブル内に収納される光ファイバの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
4…光ファイバセンサ、5…監視対象物(岩石)、6…光ファイバ(光ケーブル)、7…安定地盤(安定岩盤)、8…光ファイバ(光ケーブル)、9a,9b…光コネクタ、10…光パルス試験器(OTDR)、12…固定手段(アンカー)、20…光ファイバセンサ、21a,21b,21c…センサユニット、22…ユニット本体、23…可動部材、24…光ファイバ、24a,24b…余長、25…光ファイバ配線部、26,26a…破断手段、51…安定地盤(安定岩盤)、52…監視対象物,不安定地層(表土層)、52a…監視対象物,岩石、53…光ファイバセンサ、55…光ファイバ(光ケーブル)、57…光パルス試験器(BOTDR)、59…光ファイバ引留部材(光ファイバ把持部品)、70…光ファイバセンサ、72…光ファイバ引留部材(ワイヤ)、73,76,77…光ファイバ引留部材間の光ファイバ(引出部)。
Claims (3)
- 崩壊の可能性のある不安定地層や変位の可能性のある岩石または岩盤である監視対象物(5)の、監視基準側である安定地盤(7)に対する変位を観測する光ファイバセンサであって、
前記監視対象物と前記安定地盤との間に配置したセンサユニット(21a、21b、21c)に、前記安定地盤側に連結されたユニット本体(22)と、前記監視対象物側に一体変位可能に取り付けられ且つ前記ユニット本体に対して相対変位可能になっている可動部材(23)と、
当該センサユニット内に余長(24a、24b)を確保して収納された光ファイバ(24)が配線される複数の光ファイバ配線部(25)と、
前記可動部材と連動して駆動されることにより前記複数の光ファイバ配線部を順次移動して、前記光ファイバを当該光ファイバに接続された光パルス試験器(10)から遠い箇所から順に破断させる破断手段(26、26a)とを備えることを特徴とする光ファイバセンサ(20)。 - 監視領域に存在する崩壊の可能性のある不安定地層(52)や変位の可能性のある岩石(52a)または岩盤である監視対象物の、監視基準側である安定地盤(51、54)に対する変位を観測する光ファイバセンサであって、
前記監視領域と前記安定地盤との境界に沿って、光パルス試験器(57)と接続された光ファイバ(55)を延在配置し、この光ファイバの長手方向の互いに離間された複数箇所を光ファイバ引留部材(59、72)により前記安定地盤側に引き留め、隣り合う光ファイバ引留部材間の光ファイバ(55、73、76、77)を、前記監視対象物に一体変位可能に連結したことを特徴とする光ファイバセンサ(53、70)。 - 請求項1または2記載の光ファイバセンサにおいて、
前記監視対象物に一体変位可能として取り付けた光ファイバ(6)に、安定地盤側の光ファイバ(8)を光コネクタ(9a、9b)を介して着脱可能に接続することで、安定地盤側の光ファイバを介して監視対象物側の光ファイバと光パルス試験器(10)とを接続し、安定地盤側光ファイバの監視対象物側光ファイバに対して接続される先端近傍を、固定手段(12)によって前記安定地盤側に固定したことを特徴とする光ファイバセンサ(4)。
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