JP4186430B2 - 円筒型リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム二次電池に係り、特に、所定圧で内圧を開放する内圧低減機構を有する電池容器内に、正極活物質にリチウムマンガン複酸化物を用いた正極と負極活物質に炭素材を用いた負極とをセパレータを介して捲回した電極群と、この電極群を浸潤する非水電解液と、を収容した円筒型リチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、再充電可能な二次電池の分野では、鉛電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池等の水溶液系電池が主流であった。しかしながら、電気機器の小型化、軽量化が進むにつれ、高エネルギー密度を有するリチウム二次電池が着目され、その研究、開発及び商品化が急速に進められた結果、現在では、携帯電話やノートパソコン向けに小型民生用リチウム二次電池が広く普及している。
【0003】
一方、地球温暖化や枯渇燃料の問題から電気自動車(EV)や駆動の一部を電気モーターで補助するハイブリッド電気自動車(HEV)が各自動車メーカーで開発され、その電源に用いられる電池には、より高容量で高出力な二次電池が求められるようになってきた。このような要求に合致する電源として、高電圧を有する非水溶液系のリチウム二次電池が注目されている。
【0004】
リチウム二次電池の負極材には一般的に炭素材が用いられる。炭素材には、天然黒鉛や鱗片状、塊状等の人造黒鉛、メソフェーズピッチ系黒鉛等の黒鉛系材料とフルフリルアルコール等のフラン樹脂等を焼成した非晶質炭素材料が用いられている。
【0005】
また、正極材には一般的にリチウム遷移金属酸化物が用いられており、中でも容量やサイクル特性等のバランスからコバルト酸リチウムが広く用いられているが、原料であるコバルトは資源量が少なくコスト高となることから、電気自動車用やハイブリッド電気自動車用電池の正極材としてはマンガン酸リチウム等のリチウムマンガン複酸化物が有望視され開発が進められている。
【0006】
更に、セパレータには、一般的にリチウムイオンの通過を許容するポリオレフィン系の多孔質膜、例えば、ポリエチレン(PE)等の単層膜が使用されている。セパレータは、捲回方向(高さ方向)及び捲回方向に垂直な幅方向に、正極及び負極より長く調製されており、両極端部の接触による短絡が防止されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リチウム二次電池の場合、電池の高容量化、高出力化に伴い安全性が重視される傾向にあり、特に電気自動車やハイブリッド電気自動車用の電源に用いられるような高容量、高出力の二次電池ともなると、大電流充電、大電流放電が行われるので、小型民生用リチウム二次電池で一般に採用されているような、異常時の電池内圧上昇に応じて電気的に作動する電流遮断機構を電池構造内に設けることは難しい。
【0008】
人を乗せて走行する電気自動車やハイブリッド電気自動車では、充放電制御システムが故障してしまった場合の過充電時、不慮の衝突事故の場合に遭遇する可能性のある電池のクラッシュ時、異物突き刺し時、外部短絡時等の電池異常時に電池自体の安全性を確保することは、最低限必要かつ非常に重要な電池特性である。ここでいう電池の安全性とは、電池が異常な状態にさらされたときの電池挙動が、人体に被害を与えないことは当然のことながら、車両への損害を最小限に抑えることを意味する。
【0009】
例えば電池が過充電状態に陥ると、発熱により電池の温度は徐々に上昇し、セパレータが破断して内部短絡が生じ、その短絡電流によって電池温度が急上昇する。このときの発熱量によっては正極活物質の熱暴走反応が生ずる。特に、内部短絡箇所が電極群中心部の場合には、電極群中心部から離れた内圧低減機構側で内部短絡が生ずる場合に比べ、内部短絡箇所周辺に正極活物質が多く存在するので、熱暴走反応を引き起こす可能性が高い。このような場合でも、電池を穏やかに使用不能状態とすることができれば、電池の安全性が確保される。
【0010】
本発明は上記事案に鑑み、高容量、高出力でありながらも、極めて安全性の高い円筒型リチウム二次電池を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、所定圧で内圧を開放する内圧低減機構を有する電池容器内に、正極活物質にリチウムマンガン複酸化物を用いた正極と負極活物質に炭素材を用いた負極とをセパレータを介して捲回した電極群と、この電極群を浸潤する非水電解液と、を収容した円筒型リチウム二次電池において、前記負極の端から前記内圧低減機構側にはみ出したセパレータのはみ出し量Aが、80゜C以上におけるセパレータの幅方向の熱収縮量Bに対しA<2Bであることを特徴とする。
【0012】
本発明では、負極の端から内圧低減機構側にはみ出したセパレータのはみ出し量Aを、80゜C以上におけるセパレータの幅方向の熱収縮量Bに対しA<2Bとしたので、電池異常時に電池温度が80゜C以上になると、セパレータの熱収縮によりセパレータのはみ出し量Aが減少して、電極群の内圧低減機構側の端部で内部短絡が生じ易くなる。このため、電極群中心部での短絡による正極活物質の熱暴走反応が事前に防止され、穏やかに電池を使用不能状態とすることができる。このとき、80゜C以下の温度で熱収縮を開始してしまうセパレータでは、例えばハイブリッド電気自動車での使用を考慮した場合に頻繁な充放電による発熱のため電池異常でないときにも内部短縮が早期に生じてしまい、また、180゜Cを超える温度で熱収縮を開始するセパレータでは内部短絡位置を内圧低減機構側に偏倚させても正極活物質の熱暴走反応が生じてしまう場合があるので、熱収縮量Bが1mm以上となる熱収縮開始温度が80゜C以上180゜C以下のセパレータを用いることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明をハイブリッド電気自動車(HEV)に搭載される円筒型リチウム二次電池に適用した実施の形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の円筒型リチウム二次電池20は、中空円筒状の軸芯14の周りに、正極2及び負極3をセパレータ1を介して捲回した電極群15を備えている。
【0015】
正極2は、リチウムマンガン複酸化物として代表的なマンガン酸リチウム(LiMn)を正極活物質とし、正極活物質90重量部に対して、導電剤として鱗片状黒鉛10重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5重量部と、を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドンを添加、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、プレス、裁断して得られたものである。
【0016】
一方、負極3は、負極活物質の炭素材として非晶質炭素粉末90重量部に、結着剤としてポリフッ化ビニリデン10重量部を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドンを添加、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔の両面に塗布し、乾燥させた後、プレス、裁断して得られたものである。正極2及び負極3の一側は、等間隔かつ矩形状に切り欠かれており、短冊状の正極タブ2a、負極タブ3aが形成されている。なお、負極3は正極2に比べ若干幅長とされている。
【0017】
セパレータ1には、厚さ40μmのポリエチレン(以下、PEという。)製微多孔膜が用いられている。このポリエチレン製微多孔膜は熱によって1mm以上の収縮を開始する熱収縮開始温度が80゜C以上180゜C以下に設定されている。ここで、セパレータの熱収縮量は、JIS C2330に示される加熱収縮率試験に準拠し、試験片(セパレータ)の幅方向の長さを電池で用いる絶対量とし、恒温槽の温度を種々の温度に変化させて幅方向の熱収縮量(長さ)Bを測定し、熱収縮量Bが1mmとなるときの温度を熱収縮開始温度とした。
【0018】
正極タブ2a及び負極タブ3aは、それぞれ電極群15の互いに反対側の両端面に位置するように配置されている。図2に示すように、電極群15の上端側では、負極3の端部からセパレータ1がはみ出している。このはみ出し量A(mm)は、熱収縮量B(mm)との関係がA<2Bとなるように設定されている。同様に、電極群15の下端側でも、はみ出し量A(mm)が熱収縮量B(mm)との関係がA<2Bとなるように設定されている。
【0019】
図1に示すように、正極タブ2a及び負極タブ3aは円環状の集電体13、17の周面にそれぞれ溶接されており、電極群15は有底円筒状の電池缶16に挿入されている。電池缶16内には非水電解液が所定量注入されており、上蓋12と電池缶16とがカシメ封口されることにより円筒型リチウム二次電池20が組み立てられている。上蓋12は電池内部の圧力が所定圧力に達するとガスを放出する内圧低減機構としての安全弁11を有して構成されている。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で1:1:1に混合した混合有機溶媒中に、電解質として6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットル溶解したものが用いられている。また、安全弁11の破断(開放)圧は10Pa程度に設定されている。
【0020】
本実施形態では、セパレータ1に熱収縮開始温度が80゜C以上のPE製微多孔膜を用いて、はみ出し量A(mm)及び熱収縮量B(mm)の関係をA<2Bとなるように、はみ出し量Aを調整して電極群15を作製することで、セパレータ1の温度が熱収縮開始温度80゜Cになったときに、セパレータ1の熱収縮によりセパレータのはみ出し部が収縮し負極3端部より短くなる。このため、安全弁11近傍に内部短絡箇所を偏倚させることが可能となるので、電極群15内部での短絡による正極活物質の熱暴走反応への移行前に安全弁11が破断して電池内のガスを外部へ逃がし、穏やかに電池を使用不能状態にすることができる。また、回生電力によるによる充電が頻繁に行われ電池温度の上昇を伴うHEVでの電池使用状況を考慮した場合、熱収縮開始温度が80゜C以上のセパレータ1を使用することで、充電等による発熱で電池異常状態でないときに、電極群15の安全弁11側で内部短絡が発生することもない。
【0021】
また、電池異常時に安全弁11近傍に内部短絡箇所を偏倚させるようにしたので、万一電池内圧が急上昇したときでも、速やかに電池内圧を低減させることが可能である。
【0022】
更に、本実施形態では、負極3は正極2に比べ若干幅長とされており、電極群15の上端側では、正極2端部と負極3端部との位置が異なるため(図2参照)、電池異常時には、セパレータ1の熱収縮により負極3端部側面と正極2端部側面とが内部短絡を起こすので、確実かつ穏やかに電池を使用不能状態にすることができる。従って、正極活物質の熱暴走反応を確実に抑制でき、極めて安全性の高い電池を実現することができる。
【0023】
一方、電極群15の温度が180゜Cを超えると、内部短絡箇所を安全弁11近傍に偏倚させても、正極活物質の熱暴走反応を抑えることが困難となる場合があるので、熱収縮開始温度を180゜C以下のセパレータ1を使用することが好ましく、セパレータ1の温度を180゜C以下で熱収縮させ、熱暴走反応への移行が生じる前に、穏やかに電池を使用不能状態にして、安全性を確保している。
【0024】
以上のように、本実施形態の円筒型リチウム二次電池20では、セパレータ1のはみ出し量Aを80゜C以上における熱収縮量Bに対してA<2Bとしたので、高容量、高出力でありながらも電池異常時の安全性の高い電池とすることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、セパレータとしてPE製微多孔膜を用いた例を示したが、一般的にポリオレフィン系の多孔質膜、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の単層膜やこれらの多層膜、例えば、PE、PTFE、PEをこの順に積層した三層膜を用るようにしてもよい。また、セパレータの厚さが40μmのものを用いた例を示したが、厚さもこれに限定されるものではなく、一般的に数十μmのセパレータを用いることができる。
【0026】
また、本実施形態では、非水電解液に、ECとDMCとDECとを体積比で1:1:1に混合した混合有機溶媒中に、電解質としてLiPFを1モル/リットル溶解したものを用いたが、用いられるリチウム塩や有機溶媒は特に制限されるものはなく、例えば、電解質としては、LiClO、LiAsF,LiPF,LiBF,LiB(C)、CHSOLi,CFSOLi等やこれらの混合物を用いることができる。また、有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロビオニトリル等またはこれらの2種類以上の混合溶媒を用いることができる。
【0027】
【実施例】
次に、上記実施形態に従って作製した実施例の電池について説明する。なお、比較のために作製した比較例の電池についても併記する。
【0028】
(実施例1)
下表1に示すように、実施例1では、セパレータ1に、はみ出し量Aが3(mm)、収縮量2Bが6(mm)(熱収縮量B=3mm)、熱収縮開始温度が80(゜C)、材質がPE製の微多孔膜を用いて、容量4.0Ahの円筒型リチウム二次電池を作製した。
【0029】
【表1】
Figure 0004186430
【0030】
(実施例2、3)
表1に示すように、実施例2及び実施例3では、セパレータ1のはみ出し量Aをそれぞれ4(mm)、5(mm)とした以外は実施例1と同様に円筒型リチウム二次電池を作製した。
【0031】
(実施例4)
表1に示すように、実施例4では、セパレータ1のはみ出し量Aを5(mm)、収縮量2Bを8(mm)(熱収縮量B=4mm)とした以外は実施例1と同様に円筒型リチウム二次電池を作製した。
【0032】
(実施例5〜7)
表1に示すように、実施例5〜実施例7では、セパレータ1の熱収縮開始温度をそれぞれ120、180、200(゜C)、材質をそれぞれPP、PE/PTFE/PE、PEとした以外は実施例1と同様に円筒型リチウム二次電池を作製した。ここで、PE/PTFE/PEとは、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンをこの順に積層した三層膜である。
【0033】
(比較例1、2)
表1に示すように、比較例1及び比較例2では、セパレータ1のはみ出し量Aを共に3(mm)、収縮量2Bをそれぞれ2(mm)、3(mm)(熱収縮量B=1.0、1.5mm)とした以外は実施例1と同様に円筒型リチウム二次電池を作製した。
【0034】
<試験・評価>
以上のように作製した実施例及び比較例の電池について、過充電試験を実施し、そのときの現象と電池缶表面の最高到達温度についての比較した。過充電試験は、初期安定化運転後に満充電状態から1時間率(1C)で定電流充電し、現象発生まで充電する条件とした。下表2に過充電試験の試験結果を示す。
【0035】
【表2】
Figure 0004186430
【0036】
熱収縮開始温度が80゜Cでセパレータ1のはみ出し量Aと熱収縮量BとがA<2Bの関係にある実施例1〜3の電池では、現象発生時の電池表面の最高到達温度は120゜C以下であり、現象も僅かに白煙が発生するのみで、いずれも安全性に優れた電池であった。また、熱収縮開始温度が高くなった場合においてもA<2Bであれば最高到達温度は僅かに上昇するものの、正極活物質であるマンガン酸リチウムの熱暴走反応が生じずに穏やかに使用不能となった(実施例4〜7)。しかしながら、A=2B及びA>2Bの関係にある比較例1〜2の電池は、現象発生時の電池表面の最高到達温度が380〜400゜Cに達し、内圧低減機構の開裂口から激しく白煙と共に内容物を噴出した。
【0037】
以上の結果から、セパレータはみ出し量Aを80゜C以上における熱収縮量Bに対しA<2Bとした実施例1〜7の電池の場合、過充電時における電池の最高到達温度を低く抑え、現象も穏やかな、安全性に優れた電池とすることができることが分かった。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、負極の端から内圧低減機構側にはみ出したセパレータのはみ出し量Aを、80゜C以上におけるセパレータの幅方向の熱収縮量Bに対し、A<2Bとしたので、電池異常時に電池温度が80゜C以上になると、セパレータの収縮によりセパレータはみ出し量Aが減少して、電極群の内圧低減機構側の端部で内部短絡が生じ易くなり、電極群中心部での短絡による正極活物質の熱暴走反応が事前に防止され、穏やかに電池を使用不能状態とすることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の円筒型リチウム二次電池の断面図である。
【図2】図1のC部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 セパレータ
2 正極
3 負極
11 安全弁(内圧低減機構)
12 上蓋(電池容器の一部)
15 電極群
16 電池缶(電池容器の一部)
20 円筒型リチウム二次電池

Claims (2)

  1. 所定圧で内圧を開放する内圧低減機構を有する電池容器内に、正極活物質にリチウムマンガン複酸化物を用いた正極と負極活物質に炭素材を用いた負極とをセパレータを介して捲回した電極群と、この電極群を浸潤する非水電解液と、を収容した円筒型リチウム二次電池において、前記負極の端から前記内圧低減機構側にはみ出したセパレータのはみ出し量Aが、80゜C以上におけるセパレータの幅方向の熱収縮量Bに対しA<2Bであることを特徴とする円筒型リチウム二次電池。
  2. 前記熱収縮量Bが1mm以上となる熱収縮開始温度が80゜C以上180゜C以下であることを特徴とする請求項1に記載の円筒型リチウム二次電池。
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