JP2007095421A - 大型リチウムイオン二次電池及び蓄電システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、リチウムイオン二次電池を大型化した場合、その安全性を飛躍的に高める手段を提案することを目的とする。
【解決手段】 本発明のリチウムイオン二次電池は、放電レートが大きくなると、放電容量が急激に小さくなる。よって、短絡時に電流が急激に流れることを抑制し、初期の発熱の原因である抵抗発熱による発熱速度を抑えることでき、小型のリチウムイオン二次電池で用いられてきたセパレータによるシャットダウン機能などの安全性対策を、有効に機能させることが可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明のリチウムイオン二次電池は、放電レートが大きくなると、放電容量が急激に小さくなる。よって、短絡時に電流が急激に流れることを抑制し、初期の発熱の原因である抵抗発熱による発熱速度を抑えることでき、小型のリチウムイオン二次電池で用いられてきたセパレータによるシャットダウン機能などの安全性対策を、有効に機能させることが可能となる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、充放電可能な二次電池に関するもので、特に非水系の電解質を用いる大型のリチウムイオン二次電池に関するものである。
正極に金属酸化物、電解質には有機電解液、負極に黒鉛などの炭素材料を用いるリチウムイオン二次電池は1991年に始めて製品化されて以来、そのエネルギー密度の高さから小型、軽量化が進むビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコン、ミニディスクなどの携帯用電子機器の電源として既に実用化されている。
上述したようにリチウムイオン二次電池は電解質として有機電解液を用いているため、安全性に関しては、いくつかの対策が施されており、過酷な使用条件においても破裂や発火などの事故に至らないように設計されている。例えば、保護回路をつけることで、過充電、過放電による事故が回避されるように設計されており、また、電池の温度が上昇した場合の安全対策として、端子から電池内部への導電経路の一部に、温度がある値を越えると電気抵抗がほぼ無限大にまで大きくなるPTC(Positive Temperature Coefficient)素子を用いることによって安全性が確保されている。
しかしながら、そのように安全対策された電池であっても、外部からの要因(例えば釘が刺さった場合など)、内部短絡によって、短絡箇所に電流が集中して流れ、抵抗発熱により発熱し、その熱によって電池の中の活物質や電解液の化学反応を引き起こすといったいわゆる「熱暴走」が起こり、最終的には破裂、発火に至るといった問題がある。その対策のひとつとしては、小型のリチウムイオン二次電池では、電池温度が上昇した場合には、セパレータが溶融することによって、セパレータの穴が塞がり、電流を流れにくくする、いわゆる「シャットダウン機能」などの安全性を確保する機能が備えられている。また、内圧が異常に上昇した場合に、電池が破裂しないよう、安全弁などが設けられている。
又、リチウムイオン二次電池は充放電におけるエネルギー効率(電力効率)が鉛蓄電池やニッケル水素に比べ高いため、電気自動車や電力貯蔵用途としても可能性があり、中型、大型化への開発が積極的に進められている。最近では自動車用への応用の開発が活発化しており、また、中型のリチウムイオン二次電池は電動アシスト付き自転車などの用途で一部実用化されている。これら中型から大型電池への開発は、これまで小型で進められた開発によって得られた電池構造を踏襲することによって、推進されている。
しかしながら、リチウムイオン二次電池は上述したように有機電解液などの可燃性の電解質を含むため、電池が大型化された場合、当然電池の中に保持されている電解質も多くなり、その危険性は高くなる。よって、リチウムイオン二次電池を大型化する場合、最大の課題が安全性対策である。その対策の一つとして、材料面の改良によってその安全性を確保しようとする手法がある。例えば、正極材料をコバルト酸化物からマンガン酸化物に変更したり、電解液に不燃性の有機溶媒を加えたり、電解液にポリマー材料を加えて電解質をゲル状にするなどの対策がとられている。又、外部からの異常な電圧や、過電流については、何重もの保護回路を設けるなどの安全性対策が挙げられている。
しかしながら、そのような対策を施したリチウムイオン二次電池であっても、従来の小型のリチウムイオン二次電池の構造を踏襲して、単に大型化が図られて作製された大型のリチウムイオン二次電池では、上述の小型のリチウムイオン二次電池に適用されていた安全性対策では不充分な場合がある。特に外部要因による短絡(釘さしなど)、あるいは電池内部での短絡などの原因により電池が短絡した場合、過度の温度上昇や、最悪の場合は破裂、発火にいたるといった危険性が残っている。
これに対して、正極、負極、セパレータおよびリチウム塩を含む非水系電解質を電池容器内に収容した厚さが12mm未満の扁平形状の非水系二次電池であって、そのエネルギー容量が30Wh以上且つ体積エネルギー密度が180Wh/l以上のものが開示されている。このような非水系二次電池に対して、電池容器内の圧力を大気圧未満にした状態で封口フィルムより注液口を封口する技術や(特許文献1参照)、その他には、少なくとも一回充電した後に電池容器内の圧力を大気圧未満にした状態で、封口フィルムより注液口を封口する技術(特許文献2参照)が提案されている。これらの技術は、電池を独特の形状(扁平形状)とすることにより、蓄熱に起因する信頼性および安全性に関わる問題点を解決し、実用化への障害を解消しようとしている。
特開2000−251940号公報
特開2000−251941号公報
上述した、従来技術による非水系二次電池の一つであるリチウムイオン二次電池の性能を確認するために、その一例となるリチウムイオン二次電池を作製するとともに、作製されたリチウムイオン二次電池の充放電試験を行った。まず、作製されたリチウムイオン二次電池について、以下に説明する。正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用い、導電材としてケッチェンブラックを4重量部、結着材(バインダー)としてポリフッ化ビニリデン(以下PVdF)を5重量部加え、溶剤にN−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)を用い正極のペーストを作製した。得られたペーストを厚さ20μmのアルミ箔の両面に均一に塗布し、ロールプレスによって線圧300kg/cmの圧力でプレスした。このようにして得られたシートを、10cm×20cm(集電体溶接部を除く)となるように切断し、これを電極とした。このようにして得られた電極の面積あたりの活物質量は17.5mg/cm2(片面)であった。尚、本明細書において「重量部」とは、正極活物質の重量に対する重量比を、%表示で表した値とする。
負極活物質に中国産の天然黒鉛(平均粒径15μm、d002=0.3357nm、BET比表面積3m2/g)を用い、バインダーとしてPVDFを8重量部加え、溶剤にNMPを用い負極のペーストを作製した。得られたペーストを厚さ15μmの銅箔上に塗布し、正極同様ロールプレスによって線圧300kg/cmの圧力にてプレスを行った。このようにして得られたシートを、10.2cm×20.2cm(集電体溶接部除く)となるように切断し、それを電極とした。電極の面積あたりの活物質量は7.8mg/cm2(片面)であった。尚、本明細書において「d002」とは、層状な結晶構造を有する黒鉛で、隣接する層と層の間隔((002)面間の間隔)とする。又、「BET比表面積」とは、単分子層吸着理論を多分子層に拡張したBET式を用いて求められた77Kにおいて窒素が吸着可能な孔隙の重量当たりの面積とする。
上述のようにして得られた正極、負極、それぞれ厚さ25μmのポリプロピレン製の微多孔膜の袋に電極を挿入したのち、正極6枚、負極7枚を積層し、袋状のアルミラミネートに挿入した。
電解液はエチレンカーボネート(EC)とヂメチルカーボネート(DMC)を体積比で1:1になるように混合した溶媒に1.5mol/lのLiBF4を溶解したものを用い、電極の積層体をいれたラミネートを減圧下に保持し、内部に電解液を注液した。その後、大気圧に戻し、熱融着により融着することによりラミネートを封止し、設計電池容量5Ahのリチウムイオン二次電池を作製した。
上述のようにして得られたリチウムイオン二次電池を、以下の条件にて充放電試験を行った。充電については、充電電流値0.5A(アンペア)で電圧が4.2Vになるまで充電し、その後電圧4.2Vで15時間経過するか、又は、充電電流値が10mAになると充電終了とする。放電については、充電が終了したリチウムイオン二次電池を放電電流値1A(放電レート:0.2C)で放電し、電池電圧が2.5Vになった時点で放電完了とする。この際、放電が完了するまでに放出された放電容量を測定する。このように、放電レート0.2Cで放電したときの放電容量を、本明細書では「電池容量」とする。尚、放電レートの単位「C」について、本明細書で1Cとは、「電池容量」と同じ数値の電流値をさす。即ち、例えば電池容量5Ahについて、放電レート1Cで放電するとは、電流値5A(アンペア)で放電することである。
このようにして放電が完了したリチウムイオン二次電池を、上述した条件と同じ条件で充電し、5A(1C)又は10A(2C)で電池電圧が2.5Vになるまで放電し、放電が完了するまでに放出された放電容量を測定する。
このようにして、放電電流が1A(0.2C)、5A(1C)、10A(2C)それぞれの場合における、放電容量の測定の結果により、図8のような関係が確認される。即ち、0.2Cのときの容量比に対する1.0Cのときの容量比が0.98となり、0.2Cのときの容量比に対する2.0Cのときの容量比が0.92となる。
又、この放電が終了したリチウムイオン二次電池を、更に、容量一杯まで充電し、満充電状態とするとともに、当該電池を横に寝かせた状態で、2.5mmφの釘を貫通させる釘刺し試験を実施した。その結果、図8に示すように、白煙が発生し危険な状態を招くこととなり、安全上に問題がある。
このように、本例に示すような5Ah程度の大型のリチウムイオン二次電池では、釘などによる短絡や電池内部での短絡が起こった際に、従来の小型のリチウムイオン二次電池に比べ、数倍以上の電流が流れ、従来の小型のリチウムイン二次電池の構造を踏襲して、単に大型化を図られて作製されたリチウムイオン二次電池では、小型のリチウムイオン二次電池では有効に機能していたセパレータによるシャットダウン機能が有効に働かない場合があることがわかった。これは、短絡によって発生した温度上昇が早過ぎて、セパレータが有効に機能する温度領域を通り過ぎて、一気にセパレータが溶融してしまい、短絡を助長するためであると推測される。
即ち、外部要因による短絡が起こった場合、その通常の使用における電池能力の限界を超える電流が短時間の間その短絡箇所に流れ、その抵抗発熱によってリチウムイオン二次電池の温度が上昇する。抵抗発熱による発熱量は電流の二乗に比例して大きくなるため、大型電池ではその発熱が顕著となり、電池容量が5Ah以上の電池で、例えば、10C(50A以上)程度の電流が短時間の間流れただけでも、充電状況によっては活物質と電解質が反応を開始する150℃付近の温度まで、数秒以下の時間で到達してしまう。よって、従来小型のリチウムイオン二次電池で用いていた安全性対策では不十分である。
更に、短絡により発生した熱がどのように放熱されるかを検討した結果、短絡によって発生した熱は、まず、電極の面方向に広がり、ついで厚み方向へ広がることがわかった。このことから、何層にも積層された電池では、電極群の間にある樹脂性のセパレータが断熱材として機能してしまうという課題がある。
本発明はこのような問題を鑑みて、リチウムイオン二次電池を大型化した場合、その安全性を飛躍的に高める手段を提案することを目的とする。
上記目的を達成するために、正極活物質を有する集電体を備えた正極と、負極活物質を有する集電体を備えた負極と、非水系の電解質と、を備え、且つ電池容量がX〔Ah〕(X≧5)以上であるリチウムイオン二次電池であって、当該リチウムイオン二次電池を、放電電流値0.2X〔A〕で放電した場合の第1放電容量に対する前記放電電流値X〔A〕で放電した場合の第2放電容量との第1の比の値が、0.7以下であることを特徴とする。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記放電電流値0.2X〔A〕で放電した場合の前記第1放電容量の対する前記放電電流値2.0X〔A〕で放電した場合の第3放電容量との第2の比の値が、前記第1の比の値の1/2以下であることを特徴とする。
このようなリチウムイオン二次電池では、前記放電電流(放電レート)が低い場合では、放電容量が十分に得られるが、放電レートが高くなると、急激に前記放電容量が低下する。このことによって、外部要因による短絡などが発生した場合でも、電流が急激に流れることが抑制され、急激な温度上昇を抑えることができ、大型のリチウムイオン二次電池における安全性を高めることができる。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記正極及び前記負極の少なくとも一方の面積当りの放電容量が、10mAh/cm2以上であることを特徴とする。
このようなリチウムイオン二次電池では、異常時において前記電解液中を流れる電流値は、リチウムイオンの前記電解液中での移動速度によって、律速される。このため、外部短絡などが起こった場合でも、急激に前記電解液中を電流が流れることがなく、過電流による温度上昇を防止できる。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記正極及び前記負極の少なくとも一方の厚みが、1mm以上10mm未満であることを特徴とする。
また、このようなリチウムイオン二次電池では、前記正極及び前記負極(電極)の厚みを10mm未満とするため、製造工程における前記電解質が十分に前記正極及び前記負極に浸透しなくなり、性能が維持されることが困難になることが防止される。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記負極及び前記セパレータを複数備えるとともに、前記セパレータを介して前記正極を挟むように前記正極の両側に前記負極を配置することを特徴とする。
このようなリチウムイオン二次電池では、前記正極を厚くすることにより、前記正極の両側に前記負極を配置する構造とし、厚型正極を、前記正極の略半分の容量をもつ前記負極で挟むという構造にすることにより、前記負極の分極を低減できるので、リチウム析出を回避できる。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記正極及び前記負極を複数層備え、前記正極と前記負極を交互に配置することを特徴とする。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記正極活物質がオリビン型LiFePO4であることを特徴とする。
このようなリチウムイオン二次電池において、LiFePO4は全ての酸素が強固な共有結合によって燐と結合しており、温度上昇による酸素の放出が非常に起こりにくく、前記電解液を燃焼させることもなく、安全性の観点から好ましい。また、燐を含んでいるため、前記正極が発熱し、前記電解液が漏れた際にも、消炎作用も期待できる。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記集電体が、複数の空孔を備える3次元構造の金属多孔体であることを特徴とする。
このようなリチウムイオン二次電池では、前記電極を構成する前記集電体に複数の前記空孔を備える前記3次元構造の金属多孔体を用いると、当該リチウムイオン二次電極内部に熱伝導度の優れた金属が前記電極全体にわたり均一に存在することにより、前記電極内の放熱性を高めることが可能となる。このことにより、前記電極内の温度を均一に保つことが可能となり、安全性を高めることだけではなく、大型のリチウムイオン二次電池の場合に問題となってくる局所的な温度分布に起因するサイクル特性(後述)の劣化を抑えることができる。更には、このような前記3次元構造体を前記集電体に用いた前記電極は、従来のように金属箔に塗布されていた電極とは異なり、多くの前記空孔を備えるため、裏から表へイオンが通り抜けることが可能となる。よって、両側に対極を配置することにより、両面からイオンが供給され、活物質が均一に利用され、サイクル特性が向上する。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記集電体を構成する前記金属多孔体の前記空孔の大きさが1mm以下であるとともに、前記集電体の空隙率が、75%以上98%以下であることを特徴とする。
このようなリチウムイオン二次電池では、前記集電体を構成する前記金属多孔体の前記空孔の大きさが1mmより大きいために、前記正極活物質及び前記負極活物質から前記集電体の前記空孔内壁までの距離が大きくなり、その結果、抵抗が大きくなることが防止される。更に、前記集電体の空隙率について、上述の範囲の値であれば、空隙率が低いために活物質が十分に充填できずに前記リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の低下を招くことが防止されるとともに、前記電解液が空隙中に入りやすいためにイオンの拡散パスが確保されやすい。逆に、空隙率が高いために前記電極の強度が弱くなり、又、放熱の効果が十分に得られなくなることが防止される。
又、本発明のリチウムイオン二次電池は、前記正極活物質又は前記負極活物質が金属繊維を備えることを特徴とする。
このようなリチウムイオン二次電池では、前記正極活物質又は前記負極活物質が前記金属繊維を備えることにより、前記正極活物質又は前記負極活物質間の導電性が向上するとともに、放熱性も向上する。
又、本発明の蓄電システムは、上述のリチウムイオン二次電池を複数個用いてなる蓄電池モジュールと、該充電池モジュールに対する充電動作を行う充電回路と、を有し、前記充電回路が電流値が0.5X〔A〕以下の充電電流制限機能を備えることを特徴とする。
このような蓄電システムとすることにすることによって、蓄電池のサイクル特性の向上ができ、長期にわたり使用できる蓄電システムとすることができる。
本発明によって、大型リチウムイオン二次電池の安全性を向上させることができる。即ち、本発明のリチウムイオン二次電池のような構成においては、放電レートが大きくなると、放電容量が急激に小さくなる。よって、短絡時に電流が急激に流れることを抑制し、初期の発熱の原因である抵抗発熱による発熱速度を抑えることでき、小型のリチウムイオン二次電池で用いられてきたセパレータによるシャットダウン機能などの安全性対策を、有効に機能させることが可能となる。
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図2は、本実施形態のリチウムイオン二次電池の概略断面図である。当該リチウムイオン二次電池は、バインダー、導電材など(図示せず)が混合されてペースト状物質とされる正極活物質1及び負極活物質2と、スポンジ状などの3次元に連なった金属多孔体である集電体3a、3bと、又、正極側と負極側が直接接触して短絡しないように集電体3a、3bとの間に設けられる2枚のセパレータ4と、集電体3a、3b及びセパレータ4を覆う外装材5と、外装材5内に封入されるホウフッ化リチウム(LiBF4)などの電解質塩(図示せず)が溶解した電解液6と、を備える。
このようなリチウムイオン二次電池において、集電体3aに正極活物質1が塗り込まれて正極が構成されるとともに、集電体3bに負極活物質2が塗り込まれて負極が構成される。セパレータ4が集電体3a、3bの間に設けられることで、正極側と負極側とが直接接触して、短絡することが防がれる。そして、充電時にはリチウムイオンが正極側から抜け出し負極に移動し、放電時には逆に負極側からリチウムイオンが抜け出して正極側に戻ってくる。即ち、リチウムイオンの正極と負極との間の移動によって、充放電動作が行われる。図2のように構成されるリチウムイオン二次電池の詳細について、以下に説明する。
(正極及び負極)
図2のような構成のリチウムイオン二次電池の正極に用いられる正極活物質1として、リチウムを含有した酸化物が用いられる。具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、LiMnO2、LiMn2O4、及び、これら材料の遷移金属を一部他の金属元素で置換したものが使用される。通常、正極が保有するリチウム量の80%以上を電池反応に利用している正極を用いることにより、過充電による事故や電池自身の安全性を高めることができる。このような正極活物質1としてはLiMn2O4などのスピネル構造を有するものや、LiMPO4(MはCo、Ni、Mn、Feから選ばれる少なくとも1種以上の元素)で表されるオリビン構造を有するものなどがある。オリビン構造を有するLiMPO4においては、LiMnPO4及びLiFePO4を用いることが好ましい。
図2のような構成のリチウムイオン二次電池の正極に用いられる正極活物質1として、リチウムを含有した酸化物が用いられる。具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、LiMnO2、LiMn2O4、及び、これら材料の遷移金属を一部他の金属元素で置換したものが使用される。通常、正極が保有するリチウム量の80%以上を電池反応に利用している正極を用いることにより、過充電による事故や電池自身の安全性を高めることができる。このような正極活物質1としてはLiMn2O4などのスピネル構造を有するものや、LiMPO4(MはCo、Ni、Mn、Feから選ばれる少なくとも1種以上の元素)で表されるオリビン構造を有するものなどがある。オリビン構造を有するLiMPO4においては、LiMnPO4及びLiFePO4を用いることが好ましい。
更に、安全性、及び充電電圧の観点からLiFePO4が好ましい。通常、温度上昇に伴い、正極活物質1が酸素を放出し、電解液6を燃焼させることによって更に激しく発熱するが、LiFePO4は全ての酸素が強固な共有結合によって燐と結合しており、温度上昇による酸素の放出が非常に起こりにくく、安全性の観点から好ましい。また、燐を含んでいるため、正極が発熱し、電解液6が漏れた際にも、消炎作用も期待できる。
又、LiFePO4を正極活物質1としたとき、その充電電圧が3.5V程度であり、3.8Vでほぼ充電が完了するため、通常、電解液6の分解を引き起こす電圧である4.5Vまでは、余裕がある。よって、電極の分極が大きい場合においても、充電電圧を高くすることにより充電が可能となり、好ましい。又、LiFePO4は、ほぼ充電が完了したときに電圧が急激に上昇するため、満充電状態の検出が容易である。このため、組み電池にした場合においても、電圧検出に高い精度が要求されないなどの利点も有する。尚、充電電圧が4.0V以上に達する正極材料を正極活物質1として用いる場合には、それ以上に充電電圧を上げると電解液6の分解が起こりやすくなる。よって、電極の分極が大きい場合に充電電圧を上げて充電すると、サイクル特性に影響を及ぼす場合などがあり、好ましくない。
又、負極活物質2としては、天然黒鉛、粒子状(鱗片状乃至塊状、繊維状、ウイスカー状、球状、破砕状など)の人造黒鉛、又は、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末等の黒鉛化品などに代表される高結晶性黒鉛、樹脂焼成炭などの難黒鉛化炭素、などを用いても構わなく、更には、これらを混合して用いても構わない。又、錫の酸化物、シリコン系の負極材料など、容量の大きい合金系の材料も使用しても構わない。
又、電極の面積当たりの放電容量を10mAh/cm2以上、又は20mAh/cm2以上とすると、通常用いられているリチウムイオン二次電池用の電解液では、電解液中を流れる電流は、リチウムイオンの電解液中での移動速度によって、律速される。このため、
外部短絡などが起こった場合でも、急激に電解液中を電流が流れることがなく、過電流による温度上昇を防止できる。このため、本実施形態において、正極活物質1と集電体3aとによる正極及び負極活物質2と集電体3bとによる負極の少なくとも一方の面積当りの放電容量が、10mAh/cm2以上、更に好ましくは20mAh/cm2以上とする。
外部短絡などが起こった場合でも、急激に電解液中を電流が流れることがなく、過電流による温度上昇を防止できる。このため、本実施形態において、正極活物質1と集電体3aとによる正極及び負極活物質2と集電体3bとによる負極の少なくとも一方の面積当りの放電容量が、10mAh/cm2以上、更に好ましくは20mAh/cm2以上とする。
又、正極活物質1と集電体3aとによる正極及び負極活物質2と集電体3bとによる負極の厚みについて、以下に述べる。この各電極の厚みが10mm以上であると、電解液6の浸透性が悪くなり、リチウムイオン二次電池の性能を維持することが困難となる場合がある。又、各電極の厚みが1mmより小さくなると、電極内部の空隙率が低くなり、また、電極活物質の重量が減少してしまい積層枚数が増えてしまう。又、各電極の厚みを1mm以上とすることにより、電池内部の積層数(捲回型の場合は捲回数に相当)を大幅に減らすことができる。その結果、厚み方向の熱伝導の妨げとなっていたセパレータ層の数を減らすことが可能となり、より良好な放熱性が確保される。このため、本実施形態において、正極及び負極の厚みは、その活物質の密度や混合するバインダー、導電材の種類や、電極のプレス圧などにもよるが、1mm以上10mm未満とする。
又、本実施形態で使用される正極か負極の厚みは、どちらか1方の電極を厚型電極とする場合には、正極側を厚くすることが好ましい。リチウムイオン二次電池では、負極が非常にリチウム金属に近い電位を示すため、負極の分極が大きくなると負極にリチウムが析出する恐れがあるためである。この問題は、厚い正極の両側に負極を配置する構造をとることにより、回避することができる。即ち、図4のように、3次元構造体の集電体3aを備えた厚型正極を、正極の約半分の容量をもつ集電体3bを備えた負極で両面から挟むという構造となる。
又、大型リチウムイオン二次電池における安全性は、その発熱挙動と放熱速度によって大きく左右される。大型リチウムイオン二次電池は、その電池サイズが大きいため、内部に熱がたまりやすい。しかしながら、電極に使用する集電体3a、3bに金属の3次元構造体を用いると、電極内部に熱伝導度の優れた金属が電極全体にわたり均一に存在するため、電極内の放熱性を高めることが可能となる。その結果、電極内の温度を均一に保つことが可能となり、大型のリチウムイオン二次電池の場合に問題となってくる局所的な温度分布に起因するサイクル劣化を抑えることができる。更には、このような3次元構造体を集電体3a、3bに用いた電極は、従来のように金属箔に塗布されていた電極とは異なり、多くの空孔を備えるため、裏から表へイオンが通り抜けることが可能となる。よって、両側に対極を配置することにより、両面からイオンが供給され、活物質が均一に利用され、サイクル特性が向上する。このため、本実施形態において、正極又は負極を構成する集電体3a、3bが、金属の3次元構造体からなるものとする。
尚、ここで「3次元構造体」とは、スポンジ状の金属構造体、金属繊維による不織布、金蔵粉末を燒結したもの、金属箔をハニカム構造に成型したものなどの金属多孔体を構成するものを指す。これらの3次元構造体はあらかじめ準備しても構わないし、焼結するなどの手段により電極と同時に形成しても構わない。
又、上述の集電体3a、3bに用いる3次元構造体に構成される空孔において、その大きさが1mmより大きいと、活物質から集電体の空孔内壁までの距離が大きくなり、その結果、抵抗が大きくなる。更に、この集電体3a、3bによる金属多孔体の空孔がサイズは1mm以下であると、空孔中にある正極活物質1又は負極活物質2が金属多孔体の空孔からはずれる可能性が低くなり、好ましい。このため、本実施形態において、集電体3a、3bに使用される3次元構造体の空孔のサイズを1mm以下とし、より好ましくは0.5mm以下とする。
又、上述の集電体3a、3bを構成する金属の3次元構造体の空隙率が小さい場合、正極活物質1又は負極活物質2が十分に充填できないため、電池のエネルギー密度の低下を招く。更に、電解質液が空隙中に入りにくいため、イオンの拡散パスを確保することが困難となるなどの理由から好ましくない。よって、3次元構造体の空隙率は、大きいほど好ましいが、電極の形状を維持すること、電極内の熱の拡散を確保することなどの理由から98%以下程度とすることが好ましい。このため、本実施形態では、3次元構造体の空隙率は75%以上98%以下、より好ましくは85%以上98%以下とする。
このように、本実施形態におけるリチウムイオン電池は基本的には電流特性を制御することによって安全性を向上しているが、この場合、充電電流にも同じことが言えるため、サイクル特性など本来の性能を十分に発揮するためには、充電電流を制限する必要がある。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池を用いて蓄電システムを構築する場合には、電流値が0.5X〔A〕以下となるような充電電流制限機能を有する充電回路を準備することが好ましい。
この充電電流制限機能を実現する方法としては電源電圧から適切な充電電圧に変更するDC/DCコンバーター部分の制御によって行う方法や、太陽電池などの有限の電力供給能力の電源を用いて電圧のみを制御するなどの方法が挙げられる。そして、太陽電池などと組み合わせる場合は、あらかじめシステム設計として、太陽電池の発電能力をPSkWとし、蓄電池容量をPBKWとした場合に2PS<PBとなるように設計することによって、電流を制限することが可能である。
又、本実施形態で使用される電極は、活物質間の導電性の向上、放熱性の向上のために、活物質中に金属繊維を分散させても構わない。金属繊維の長さは、集電体3a、3bとして用いる3次元構造体の空隙のサイズと同等程度の長さがあることが好ましい。
(電解液及び電解質塩)
本実施形態に用いられる電解液6は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル等が挙げられ、これらを用いることができる。又、電解液6に溶解する電解質塩として、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、リンフッ化リチウム(LiPF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF3COO)、トリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)等のリチウム塩が挙げられ、これらの1種以上を混合して用いても構わない。また上述した電解液6をポリマーマトリックス中に保持したゲル電解質なども用いても構わない。
本実施形態に用いられる電解液6は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル等が挙げられ、これらを用いることができる。又、電解液6に溶解する電解質塩として、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、リンフッ化リチウム(LiPF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF3COO)、トリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)等のリチウム塩が挙げられ、これらの1種以上を混合して用いても構わない。また上述した電解液6をポリマーマトリックス中に保持したゲル電解質なども用いても構わない。
(セパレータ)
セパレータ4としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの不織布や微多孔膜の中から適宜選択可能であるが、該セパレータがポリプロピレン、ポリエチレンの微多孔膜であるのが好ましい。これらは、電池温度が異常に上昇した場合に、セパレータ4が溶融して、セパレータ4の穴が塞がれ絶縁フィルムとなり電流が流れないようにする、いわゆる「シャットダウン機能」を有する。
セパレータ4としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの不織布や微多孔膜の中から適宜選択可能であるが、該セパレータがポリプロピレン、ポリエチレンの微多孔膜であるのが好ましい。これらは、電池温度が異常に上昇した場合に、セパレータ4が溶融して、セパレータ4の穴が塞がれ絶縁フィルムとなり電流が流れないようにする、いわゆる「シャットダウン機能」を有する。
(外装材)
又、本実施形態で使用されるリチウムイオン二次電池の外装材5は、金属製の缶、例えば鉄、ステンレススチール、アルミニウムなどから成る缶が好ましい。また、極薄のアルミを樹脂でラミネートしたフィルム状の袋としても構わない。
又、本実施形態で使用されるリチウムイオン二次電池の外装材5は、金属製の缶、例えば鉄、ステンレススチール、アルミニウムなどから成る缶が好ましい。また、極薄のアルミを樹脂でラミネートしたフィルム状の袋としても構わない。
このような構成から成る本実施形態のリチウムイオン二次電池は、図1に示すように、放電レート0.2Cのときに対する放電レート1.0Cのときの放電容量の比(1.0C放電容量/0.2C放電容量)が0.7以下、更に、当該リチウムイオン二次電池を放電レート0.2Cのときに対する放電レート2.0Cのときの放電容量の比(2.0C放電容量/0.2C放電容量)が、上述した比(1.0C放電容量/0.2C放電容量)の1/2以下として、作製される。このようにすると、放電レートが大きくなると、放電容量が急激に小さくなる。よって、短絡時に電流が急激に流れることを抑制し、初期の発熱の原因である抵抗発熱による発熱速度を抑えることでき、小型のリチウムイオン二次電池で用いられてきたセパレータによるシャットダウン機能などの安全性対策を、有効に機能させることが可能となる。
尚、本発明の実施形態のリチウムイオン二次電池は図2のような構成のものとしたが、図3のように、袋状のセパレータ4に正極と負極を挿入して積層した構成のものとして構わない。又、図4のように、負極活物質2及び集電体3bより成る負極が2つ、セパレータ4が4つ、それぞれ備えるものとしても構わない。尚、図3又は図4の構成の詳細については後述する。
以下に、本実施形態により作製したリチウムイオン二次電池の実施例1〜実施例4及び各実施例における評価結果について説明する。尚、それぞれ、実施例1は図2、実施例2は図3、実施例3及び実施例4は図4のような構成とした。
以下に、本実施形態において作製したリチウムイオン二次電池の試験・評価結果について説明する。
本実施例において、まず、正極活物質1にLiCoO2を用い、導電材としてケッチェンブラックを20重量部、バインダーとしてPVdFを10重量部加え、溶剤にNMPを用い正極のペーストを作製した。得られたペーストを集電体3aとして用いる発泡状アルミ(サイズ:10cm×20cm、厚み4mm、空隙率92%)に充填し、十分に乾燥した後、油圧プレスを用いてプレスし、厚さ3.1mmの電極を得た。得られた電極の面積あたりの活物質量は210mg/cm2であった。
負極活物質2に中国産の天然黒鉛(平均粒径15μm、d002=0.3357nm、BET比表面積3m2/g)を用い、バインダーとしてPVDFを12重量部加え、溶剤にNMPを用い負極のペーストを作製した。得られたペーストを集電体3bとして用いる銅の繊維による不織布(サイズ:10.2cm×20.2cm、厚み2.5mm、空隙率86%)に充填し、十分乾燥した後、油圧プレスを用いてプレスし、厚さ1.5mmの電極を得た。得られた電極の面積あたりの活物質量は95mg/cm2であった。
セパレータ4として厚さ25μmのポリプロピレン製の微多孔膜を2枚使用し、上述した方法で得られた電極を、2枚のセパレータ4を介して、正極1枚、負極1枚が対向するように積層し、外装材5として用いる袋状のアルミラミネートに、電極に挿入した。
電解液6はECとDMCを体積比で1:1になるように混合した溶媒に1.5mol/lのLiBF4を溶解したものを用い、電極の積層体をいれたラミネートを減圧下に保持し、内部に電解液6を注液後、大気圧に戻し、熱融着により融着することにより封止し、本実施形態による設計電池容量5Ahの電池を作製した。このようにして作製したリチウムイオン二次電池を試験した。尚、この試験及び試験結果については、後述する。
本実施例において、実施例1と同様に正極活物質1としてLiCoO2を用い、導電材としてケッチェンブラックを6重量部、バインダーとしてPVdFを8重量部加え、溶剤にNMPを用い正極のペーストを作製した。得られたペーストを集電体3aとして用いる厚さ20μmのアルミ箔の両面に均一に塗布し、ロールプレスを用い、線圧300kg/cmの圧力にてプレスを行った。得られたシートを10cm×20cm(集電体溶接部除く)となるように切断し、それを電極とした。電極の面積あたりの活物質量は36.2mg/cm2(片面)であった。
負極活物質2についても、実施例1と同様に中国産の天然黒鉛(平均粒径15μm、d002=0.3357nm、BET比表面積3m2/g)を用い、バインダーとしてPVdFを10重量部加え、溶剤にNMPを用い負極のペーストを作製した。得られたペーストを集電体3bとして用いる厚さ15μmの銅箔上に塗布し、正極と同様、ロールプレスによって線圧300kg/cmの圧力にてプレスを行った。得られたシートを10.2cm×20.2cm(集電体溶接部除く)となるように切断し、それを電極とした。電極の面積あたりの活物質量は16.3mg/cm2(片面)であった。
上述のようにして作製された正極活物質1と集電体3aとによる正極、及び負極活物質2と集電体3bとによる負極それぞれを、図3のように、セパレータ4として用いる厚さ25μmのポリプロピレン製の微多孔膜の袋に挿入する。このようにして7個のセパレータ4の中にそれぞれ挿入された正極3枚、負極4枚を、負極、正極、負極、正極、負極、正極、負極の順で、交互に積層し、外装材5として用いる袋状のアルミラミネートに挿入した。又、上述した実施例1と同様に、電解液6としてECとDMCを体積比で1:1になるように混合した溶媒に1.5mol/lのLiBF4を溶解したものを用いる。そして、電極の積層体が挿入された外装材5となるアルミラミネートを減圧下に保持し、内部に電解液6を注液する。その後、大気圧に戻して、熱融着により融着することにより封止する。このようにして、本実施形態による設計電池容量5Ahとする図3のような構成のリチウムイオン二次電池を作製した。このように作製されたリチウムイオン二次電池を実施例1と同様に試験を行った。この試験及び試験結果については、実施例1と同様、後述する。
上述の実施例1、実施例2で得られたリチウムイオン二次電池に対する試験及び試験結果について、以下に説明する。まず、この実施例1及び実施例2で作製されたリチウムイオン二次電池に対して、以下の条件で充放電試験を行った。充電については、充電電流が0.5Aで電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、電圧4.2Vで15時間経過するか、又は、充電電流が10mAになると充電終了とする。放電については、充電が終了したリチウムイオン二次電池を1A(0.2C)で電池電圧が2.5Vになるまで放電する。このとき、放電が完了するまでに放出された放電容量を測定する。上述したように、この1A(0.2C)で放電したときの放電容量を、「電池容量」とする。このようにして放電が完了したリチウムイオン二次電池を、上述した条件と同じ条件で充電する。放電については、充電が終了したリチウムイオン二次電池を、次は、5A(1C)で電池電圧が2.5Vになるまで放電する。このとき、放電が完了するまでに放出された放電容量を測定する。同様にして、再度、上述した同じ条件で充電を実施し、充電が終了したリチウムイオン二次電池を10A(2C)で電池電圧が2.5Vになるまで放電し、そのときの放電容量を測定する。
このようにして、放電電流が1A(0.2C)、5A(1C)、10A(2C)それぞれの場合において、放電容量を測定する。この放電が終了したリチウムイオン二次電池を、更に、容量一杯まで充電し、満充電状態とする。次に、当該電池を横に寝かせた状態で、2.5mmφの釘を貫通させる釘刺し試験を実施した。その結果を図5に示す。
図5より、実施例1、2それぞれのリチウムイオン二次電池は、放電レートが1.0Cのときの放電容量が、放電レート0.2Cのときの放電容量の略半分となり、更に、放電レート2.0Cのときの放電容量が、放電レート0.2Cのときの放電容量と比べて極めて小さな値となることが分かる。即ち、実施例1、2のように構成することによって、図1で示すような放電容量−放電レート特性をリチウムイオン二次電池に備えさせることができる。よって、外部要因による短絡などが発生した場合でも、電流が急激に流れることが抑制され、初期の発熱の原因である抵抗発熱による発熱速度を抑えることでき、小型のリチウムイオン二次電池で用いられてきたセパレータによるシャットダウン機能などの安全性対策を、有効に機能させることができた。又、釘刺し試験を行ったときの表面温度についても、実施例1では132℃、実施例2では174℃となり、従来技術によるリチウムイオン二次電池の532℃と比較して(図8参照)、極めて低い温度とすることができ、その安全性を確認することができた。
本実施例において、正極は、実施例1で作製したものと同じ正極を用いたので、その詳細な説明は実施例1を参照するものとして、省略する。又、負極活物質2に中国産の天然黒鉛(平均粒径15μm、d002=0.3357nm、BET比表面積3m2/g)を用い、バインダーとしてPVDFを12重量部加え、溶剤にNMPを用い負極のペーストを作製した。得られたペーストを集電体3bとして用いる発泡ニッケル((サイズ:10.2cm×20.2cm、厚み1.2mm、空隙率92%)に充填し、十分乾燥した後、油圧プレスを用いてプレスし、厚さ0.8mmの電極を得た。得られた電極の面積あたりの活物質量は46.2mg/cm2であった。
又、セパレータ4として厚さ25μmのポリプロピレン製の微多孔膜を使用し、図4に示すように、当該セパレータ4を正極活物質1と集電体3aとによる正極の両面の双方に各2枚づつ配置し、更に、その両側に上述した方法で作製された負極活物質2と集電体3bとによる負極を配置する。そして、外装材5として袋状に加工したアルミラミネートを用い、上述の正極及び負極とセパレータ4を挿入する。又、電解液6にはγ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートを体積比6:4となるように混合した溶媒に1mol/lのLiBF4を溶解した電解液を用い、外装材5内に封入することで、設計電池容量5Ahのリチウムイオン二次電池を作製した。このようにして作製されたリチウムイオン二次電池に対して、後述する試験を実施例1とともに実施した。
本実施例において、まず、正極活物質1として、LiFePO4を用い、導電材としてケッチェンブラックを30重量部、バインダーとしてPVdFを15重量部加え、溶剤にNMPを用い正極のペーストを作製した。得られたペーストを集電体3aとして用いるアルミ繊維による不織布(サイズ:10cm×20cm、厚み4.1mm、空隙率86%)に充填し、十分に乾燥した後、油圧プレスを用いてプレスし、厚さ3.5mmの電極を得た。得られた電極の面積あたりの活物質量は195mg/cm2であった。又、負極は実施例3で用いられたものと同じ電極を使用する。更に、実施例3と同様に、セパレータ4として厚さ25μmのポリプロピレン製の微多孔膜を使用し、図4のように、当該セパレータ4を正極の両面の双方に各2枚づつ配置し、更に、その両側に上述した方法で作製された負極を配置した。そして、外装材5として用いる袋状に加工したアルミラミネートに、電極及びセパレータ4を挿入した。又、電解液6にはγ-ブチロラクトンとエチレンカーボネートを体積比6:4となるように混合した溶媒に1mol/lのLiBF4を溶解した電解液を用い、設計電池容量5Ahのリチウムイオン二次電池を作製した。このようにして作製されたリチウムイオン二次電池に対して、後述する試験を実施例1及び実施例3とともに実施した。
実施例1、実施例3及び実施例4で作製されたリチウムイオン二次電池それぞれについて、以下の条件で充放電試験を行った。尚、以下において、充電終了時の電圧を充電終止電圧Vxとする。このとき、まず、充電については、充電電流が1.5A(0.3C)で電圧がVx(V)になるまで充電し、その後、電圧Vx(V)で8時間経過するか、又は、充電電流が10mAになると充電終了とする。放電については、放電電流が1A(0.2C)で電圧が2.5Vになるまで放電し、放電容量を測定する。このような条件で50回充放電を繰り返し、リチウムイオン二次電池の放電容量について、1回目と50回目を比較し、サイクル性能の試験を実施した。尚、この1回目と50回目の放電容量比が高い程、サイクル特性が良好であることを示す。
このような充放電試験を、実施例1及び実施例3で作製されたリチウムイオン二次電池については、上述の充放電試験を、充電終止電圧Vxが、V1=4.2(V)、V2=4.3(V)、V3=4.4(V)の、3つの場合について、実施した。又、実施例4で作製されたリチウムイオン二次電池については、上述の充放電試験を、充電終止電圧Vxが、V1=4.0(V)、V2=4.1(V)、V3=4.2(V)の、3つの場合について実施した。その結果を図6に示す。
図6に示すように、正極活物質1としてLiFePO4を用いた実施例4のリチウムイオン二次電池は、充電終止電圧Vxが変化しても、充放電容量の低下するサイクル特性劣化は、ほとんど無い。これと比較して、実施例1と実施例3のリチウムイオン二次電池では、充電終止電圧Vxが大きくなると、サイクル特性劣化が著しいことが分かる。この試験後、これら作製、試験したリチウムイオン二次電池を解体し電池内部を観察した結果、実施例1のリチウムイオン二次電池において、充電終止電圧Vxが、V3=4.4(V)にて充放電したリチウムイオン二次電池では、負極上にリチウムが析出していた。又、実施例3、実施例4におけるリチウムイオン二次電池は、目視では変化は観察されなかった。
このような結果から、実施例1のリチウムイオン二次電池では、負極へのリチウムの析出と、充電終止電圧Vxが高くなったことによる正極側での電解液6の分解による正極側の抵抗の増大とが、サイクル特性劣化の原因であると考えられる。又、実施例3のリチウムイオン二次電池では、正極側での電解液6の分解によって正極側の抵抗が増大したことが、サイクル特性劣化の原因であると考えられる。
上述の結果より、実施例1と比較して、実施例3及び実施例4のサイクル特性が良好であることが分かるので、実施例3及び実施例4のように正極を厚くし、その両側に負極を配置する構造とすることによって、リチウムイオン二次電池の充電性能が向上することが分かる。更に、実施例3と実施例4とを比較すると、実施例4のサイクル特性が良好であることが分かるので、実施例4のように正極活物質1としてLiFePO4を用いると、充電電圧を高めに設定することにより、さらに充放電性能の向上が可能である。又、実施例4におけるLiFePO4の充電電圧が低いため、通常の設定より充電終止電圧を高く設定しても、電解液6の分解などを引き起こすこともなく、良好なサイクル性能を維持できる。
又、実施例1、3、4で得られた電池を、充電電流を変更して充放電サイクル試験を行った。充電電流は2.5A(0.5C)、5A(1.0C)の2種類を設定し、充電終止の時間に関しては、電流値によって変更し、2.5Aの場合は電圧Vx(V)で3時間経過、5.0Aの場合は2時間とし、充電終止電圧は実施例1及び実施例3で作製されたリチウムイオン二次電池については、充電終止電圧4.2(V)、実施例4で得られたリチウムイオン二次電池については、充電終止電圧4.0(V)とした以外は前記と同様の条件にてサイクル試験を行った。このサイクル試験によって得られた結果を図7に示す。
図8に示す試験結果の比較から、本電池は充電電流を小さく規定することによって良好なサイクル特性が得られる。これは電流が大きくなることによって、負極側の分極が大きくなり、前述の充電電圧を変えた状況と類似の現象が負極がわに起こっていると考えられる。従って、本発明のリチウムイオン二次電池を用いて蓄電システムを作る場合には、充電回路に電流制限機能を追加することによって、良好なサイクル特性が得られる蓄電システムを作ることができる。
このように構成されるリチウムイオン二次電池は、電力貯蔵用途を想定した場合において、十分な性能を有し、また安全性が非常に高いことから、例えば家庭における電力貯蔵用途などに好適に用いることができる。又、放電レートが大きい高負荷の用途などに対しては、キャパシタと組み合わせることにより、適用することも可能である。即ち、キャパシタを用いることにより大電流を流すことが可能であるが、そのキャパシタがもつエネルギー密度が低く、又、電解液との反応性が低い材料を電極材料として用いることにより、外部要因による短絡が発生しても、安全対策は有効に機能する。よって、リチウムイオン二次電池とキャパシタとを組み合わせることで、安全性が高く、且つ、瞬間的な高負荷に適応可能な蓄電システムの構築が可能である。
1 正極活物質
2 負極活物質
3a 集電体
3b 集電体
4 セパレータ
5 外装材
6 電解液
2 負極活物質
3a 集電体
3b 集電体
4 セパレータ
5 外装材
6 電解液
Claims (9)
- 正極活物質を有する集電体を備えた正極と、負極活物質を有する集電体を備えた負極と、非水系の電解質と、を備え、且つ電池容量がX〔Ah〕(X≧5)以上であるリチウムイオン二次電池であって、
当該リチウムイオン二次電池を、放電電流値0.2X〔A〕で放電した場合の第1放電容量に対する前記放電電流値X〔A〕で放電した場合の第2放電容量との第1の比の値が、0.7以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - 前記放電電流値0.2X〔A〕で放電した場合の前記第1放電容量の対する前記放電電流値2.0X〔A〕で放電した場合の第3放電容量との第2の比の値が、前記第1の比の値の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記正極及び前記負極の少なくとも一方の面積当りの放電容量が、10mAh/cm2以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記正極及び前記負極の少なくとも一方の厚みが、1mm以上10mm未満であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記負極及び前記セパレータを複数備えるとともに、
前記セパレータを介して前記正極を挟むように前記正極の両側に前記負極を配置することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。 - 前記正極活物質がオリビン型LiFePO4であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記集電体が、複数の空孔を備える3次元構造の金属多孔体であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記集電体を構成する前記金属多孔体の前記空孔の大きさが1mm以下であるとともに、前記集電体の空隙率が、75%以上98%以下であることを特徴とする請求項8に記載のリチウムイオン二次電池。
- 請求項1〜請求項8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池を複数個用いてなる蓄電池モジュールと、
該充電池モジュールに対する充電動作を行う充電回路と、
を有し、
前記充電回路が電流値が0.5X〔A〕以下の充電電流制限機能を備えることを特徴とする蓄電システム。
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