JP4186348B2 - ハロゲン化銀写真感光材料、赤外線吸収要素、プラズマディスプレイパネルおよび染料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の染料を含有するハロゲン化銀写真感光材料、特定の構造の固体分散状染料、特定の構造の分子分散状染料、および特定の構造の染料を含有する赤外線吸収要素、および特定の染料に関する。詳しくは鮮鋭性が良好で、残色ステインが少なく更に超迅速処理、超低補充処理が可能なハロゲン化銀感光材料、熱現像処理が可能な熱現像ハロゲン化銀写真感光材料、および可視吸収が少なく、有機溶媒に対する溶解度が高い固体分散状染料、分子分散状染料、赤外線吸収要素、更に赤外領域に吸収を有し、可視領域の吸収が少ない、あるいは有機溶媒に対する溶解度が高い赤外線吸収染料に関する。
【0002】
更に本発明は、太陽光、発光機能を有する表示体等から発生する赤外線を吸収する赤外染料、該赤外染料を含有するプラズマディスプレイパネルに関する。
【0003】
【従来の技術】
写真感光材料の露光に際して、入射光がハロゲン化銀やその他の添加剤や、層界面によって反射、屈折し、これによって像がぼやけ、鮮鋭性が劣化する。これを防ぐためにいわゆるアンチハレーション(AH)染料やアンチイラジエーション(AI)染料が広く用いられてきた。従来、AH、AI染料に要求される性能は所望の波長の光を吸収すること、ハロゲン化銀乳剤に不要な影響を与えないこと、処理時に完全に脱色するか、流出することで、感材に着色を残さないこと、等であった。
【0004】
また、感光材料の位置を検出するための赤外センサーによる検出感度を向上させる目的で種々の赤外染料を用いることや、赤外センサーによるカブリを防止するために赤外染料を使うことが提案されているが、可視吸収が十分に小さく、分子量が小さく、有機溶媒に対する溶解度が高い赤外染料は知られていなかった。
近年、処理の迅速化やドライ化の傾向が著しく、処理後に染料由来の着色が残るいわゆる残色ステインの問題が大きくなり、その改良が強く求められていた。とりわけ、処理に水を全く用いない熱現像処理の場合には染料の流出が全く期待できず、残色ステインが大きくなりやすく、その改良が待たれていた。
【0005】
特殊な撮影効果を表現する為の撮影用ハロゲン化銀感光材料として、赤外用ハロゲン化銀白黒感光材料(赤外白黒ネガフィルム)がある。この感光材料の使用用途は、主に、科学写真、鑑定写真、考古学写真等の業務用途に重宝に用いられている。また、青空、海、木の葉や草の赤外光に対する反射率の違いによる写真に与える効果が幻想的な表現を醸し出すことから、風景写真や山岳写真を好むユーザーにも愛用され、更には人物の肌の反射率の違いによる効果を生かしたポートレート写真にも使用されている。この赤外白黒ネガフィルムは、一般用カラーフィルムとは異なる白黒ネガフィルム専用の現像処理を行い、また白黒ネガペーパーにプリントをしている為、現像・プリントに一般用カラー感材よりも長い時間と高い費用を要する欠点を持っている。
【0006】
これらの問題点の解決法として、特開平10−148919号には、ネガ−ポジシステムのカラー写真現像処理に適合し、高感度で、粒状性に優れ、かつ、印画紙へのプリントも容易であり、さらに、優れた赤外効果を持った再現画像を誰でも簡単に撮影が出来、かつ、モノクロームなプリントを容易に作製することが出来る撮影用白黒画像形成赤外用ハロゲン化銀感光材料が開示されている。
【0007】
しかしながら、ネガ−ポジシステムのカラー写真現像処理に適合する反面、これら感材の現像時に、自動現像機のセンサーによるカブリが発生することが明らかになっている。
現在の感材は、赤外センサーカブリ対策として、ハレーション防止層に黒色コロイド銀を含有させている場合が多い。この場合、乳剤の裏面からの赤外光照射に対応することができても、乳剤面側からの赤外光照射に対応することができないという問題点を有しており、近年では、黒色コロイド銀の代りに有機化合物、すなわち、赤外染料を用いることが求められている。
【0008】
ハロゲン化銀感材に適用されている赤外染料として最も有名なものではポリメチンシアニン染料が挙げられるが、このタイプの染料は一般に安定性が不充分である。また、ハレーション防止層以外に添加する必要が生じている今日の状況にあっては、副吸収が少なく可視光を吸収しない赤外染料が求められてきた。
Liebigs.Ann.Chem.1993,935−939には、いくつかのクロコニウム染料、スクアリリウム染料が記載されており、これらのいくつかは、副吸収の少ない染料として既に市販されている。また、これらの染料をハロゲン化銀感材に適用した例として、特開平7−219139号には、固体分散状のスクアリリウム染料、及びクロコニウム染料をハレーション防止層に用いることが提案されている。
【0009】
しかし、固体分散状での添加を行うことによって、染料の添加量が増え、固体での分散のために光が散乱し、鮮鋭性を劣化させるという問題点がある。また、固体分散を行うためのコストがかさむという問題点もあり、満足できる技術ではなかった。
以上の問題点を解決するために上記染料を分子分散状でハロゲン化銀感材に添加することは未だ知られていない。その原因の1つは、これらの赤外染料の有機溶剤に対する溶解度が低く分子分散状にすることが困難であったことにある。
【0010】
更に、スクアリリウム染料には固体分散状にした時に分光吸収特性が変化してしまうという問題点もあった。
特開平10−36695号、同10−104779号、同10−158253号、同10−24654号にはスクアリリウム染料を赤外染料に用いることが提案されているが、特開平10−36695号および同10−158253号に記載の染料は選択性良く合成することが困難であり、工業化することが難しかった。特開平10−104779号に記載の染料は有機溶媒に対する溶解度が不十分であり、原料も高価であり、満足できる染料ではなかった。特開平10−24654号に記載の染料S−9は分光吸収特性が好ましくなく、可視部の吸収が大きく、満足できる染料では無かった。特開平10−24654号に記載の染料S−1、S−2は有機溶媒にほとんど溶解せず、ハロゲン化銀写真感光材料に添加することが困難であり、また、可視部の吸収が大きく、満足できる染料では無かった。固体微粒子分散物にしても可視部の吸収が大きく、満足できる性能ではなかった。また、有機溶媒に対する溶解度が極めて低いため、オイル分散することもできなかった。
【0011】
太陽光線は紫外線が3%、可視光線が53%、赤外線が44%のエネルギーをもつといわれている。赤外線を有効に吸収カットできるフィルム、シートは、夏場の太陽からの厳しい日射を軽減でき、また屋内の冷房効率を向上させることが可能になることから、その用途として自動車などの車両や建築物の窓材があげられる。しかしながら、このようなフィルム、シートは、可視光領域の波長の透過率変化を主眼にしているのが大部分であり、可視光領域に吸収が無く、700nm以上の赤外領域を有効に吸収カットでき、さらに耐久性に優れる赤外線吸収要素は少ない。
【0012】
また、太陽光線以外にも発光機能を有する表示体等では赤外線の発生があり、赤外線による電気機器の遠隔操作及び通信に対して誤動作を与える等の問題がある。
近年、人間の視感度に合わせるためのCCDの赤外領域の感度のカット等、種々の目的で赤外線を吸収するフィルターが要望されている。CCDの赤外感度カット用フィルターの場合、赤外光を選択的に吸収し、可視光は吸収しないことが求められる。可視光を吸収するとCCDの感度低下、色再現性の劣化を招き、好ましく無い。ガラスに金属または金属酸化物を蒸着し、赤外光を吸収または反射し、可視部の吸収を小さくしたフィルターが市販され、CCD用赤外カットフィルターとして使用されているが、蒸着によってフィルターを作製するため生産性が低く、また、曲げることで蒸着物が剥がれやすいため、樹脂やフィルム状の柔らかい素材に加工することが難しく、フィルターとしては扱い難く、その改良が求められていた。即ち、近赤外線の吸収が大きく、可視部の吸収が実質的に無く、塗布方式で簡便に生産することが可能で安価な赤外線吸収要素は知られていなかった。
【0013】
加えて、近年、大型の薄型テレビ、薄型ディスプレイ用途等に、プラズマディスプレイが注目され、すでに市場に出始めている。しかしながら、プラズマディスプレイにおいては、そのプラズマ中の励起原子から放出される近赤外線光が、コードレスフォン等の周辺電子機器に作用して誤動作を引き起こすという問題が生じている。特に問題になる波長として、リモコンや伝送系光通信に使用されている820nmと880nm、980nmが挙げられる。そのため、近赤外領域である820〜1000nmの波長領域の光をカットする必要がある。
【0014】
プラズマディスプレー用フィルターとして、ディスプレーからでる近赤外線光をカットするためにディスプレーの前面に設置するため、可視光線の透過率が低いと、画像の鮮明さが低下してしまうので、フィルターの可視光線透過率は高い程良く、少なくとも40%以上、好ましくは50%以上必要である。
このように応用範囲の広い赤外線吸収フィルターとして従来からガラスに蒸着膜を施したフィルター、金属イオンを含んだリン酸塩ガラス製のフィルターが知られている。しかし、前者は干渉を利用しているため、反射光の障害や視感度との不一致などの問題が、後者は耐湿性の低さや製造工程の煩雑さによるコスト高などの問題がある。
【0015】
プラスチック製の赤外線吸収フィルターとして、赤外領域に特性吸収を有する多くの材料、例えばアントラキノン類、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クロム、コバルト金属錯塩化合物、六塩化タングステンと塩化スズをメチルメタクリレート(MMA)シロップに溶解させ重合させた材料、ジチオール系の金属錯体、スクアリリウム化合物、アセチレン系ポリマーに酸化剤を気相もしくは液相でドーピングした材料、チオ尿素に硫化第二銅を作用させた材料、イモニウム系材料などをプラスチック中に練り込み成形したものが提案されている。
【0016】
しかし、これらの多くには、可視光領域に大きな吸収を有すること、耐熱性、耐光性の点で不十分であること、合成が困難であること、また、一般的には溶剤に対する溶解性が低いという問題点が存在した。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、可視領域に吸収が少なく、合成が容易で、有機溶剤に対する溶解性に優れた赤外染料、およびそれを含有するハロゲン化銀写真感光材料、赤外線吸収要素、プラズマディスプレイパネルを提供することにある。また、処理の迅速化やドライ化熱現像処理でも残色ステインの小さい赤外染料、およびそれを含有するハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく鋭意検討の結果、可視光に吸収が少なく、溶解性に優れた赤外染料を見出した。また、上記の分子分散状のクロコニウム系赤外線吸収剤を支持体の少なくとも片面、または、支持体に対し乳剤を塗布した側のいずれかの層に塗布又は添加することにより、可視領域吸収が少ないハロゲン化銀写真感光材料が得られることを見出した。更に、クロコニウム系赤外線吸収剤が、可視光をよく透過し、赤外光を殆ど透過せず、これがプラズマディスプレイに適用可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明の上記目的は下記構成により達成される。
1.下記一般式(4)で表される染料を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0020】
【化6】
【0021】
〔式中、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基である。n41は0〜4の整数を表し、m41は0〜4の整数を表す。〕
2.前記一般式(4)で表される染料の分子分散状染料を含有することを特徴とする1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0029】
3.前記一般式(4)において、R41〜R46は置換基を表し、但しR41〜R46のうち少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基であることを特徴とする1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
4.前記ハロゲン化銀写真感光材料が赤外領域に分光感度を有することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
5.下記一般式(4)で表される染料を含有することを特徴とする赤外線吸収要素。
【化G】
〔式中、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基である。n41は0〜4の整数を表し、m41は0〜4の整数を表す。〕
6.下記一般式(4)で表される染料の高沸点溶剤分子分散物。
【化H】
〔式中、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基である。n41は0〜4の整数を表し、m41は0〜4の整数を表す。〕
7.下記一般式(4)で表される染料の分子分散状染料。
【化I】
〔式中、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基である。n41は0〜4の整数を表し、m41は0〜4の整数を表す。〕
8.下記一般式(4)で表される染料の固体分散状染料。
【化J】
〔式中、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基である。n41は0〜4の整数を表し、m41は0〜4の整数を表す。〕
9.下記一般式(4)で表されることを特徴とする染料。
【化K】
〔式中、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基である。n41は0〜4の整数を表し、m41は0〜4の整数を表す。〕
10.下記一般式(4)で表される染料を含有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【化L】
〔式中、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基である。n41は0〜4の整数を表し、m41は0〜4の整数を表す。〕
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する赤外線吸収能を有するクロコニウム化合物としては、例えばピリリウム化合物、アニリニウム化合物、インドリウム化合物、キノリニウム化合物等があげられる。このクロコニウム化合物の使用量は、要求される赤外線吸収能により適宜選択される。
【0031】
クロコニウム化合物としては、例えば前記一般式(1)〜(4)、〔I〕で示される染料が好ましい例として挙げられる。
前記一般式(1)において、Aは置換基、好ましくはアルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、芳香族アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基を示し、Bは「一価の陽電荷」を有する置換基を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0032】
前記一般式(2)において、R21、R22、R23、R24、R25は置換基を表し、但しR21〜R25のうち、少なくとも一つはアミノ基または置換アミノ基であるが、好ましくはアルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、アルキニル基等の置換基、またはヘテロ原子或はそれを有する置換基であって、R21〜R25のうち、少なくとも一つがアミノ基または置換アミノ基であることを示す。また、R26、R27、R28、R29、R30は置換基を表し、但しR26〜R30のうち、少なくとも一つはアミノ基または置換アミノ基であるが、好ましくはアルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、アルキニル基等の置換基、ヘテロ原子或はそれを有する置換基を示し、R26〜R30のうち、少なくとも一つがアミノ基または置換アミノ基であることを示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0033】
前記一般式(3)において、R31〜R36は置換基を表し、但しR31〜R36のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基であり、好ましくはR31〜R36は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基であり、より好ましくはアルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基である。より好ましくはR31〜R33、およびR34〜R36の各々少なくとも1つの炭素数が5以上60以下の置換基であり、0≦n≦4、0≦m≦4である。また、R33およびR36はヘテロ原子又はヘテロ原子を含む置換基であってもよいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
一般式(3)におけるR31〜R36において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ヘキサデシル基等のアルキル基が、置換アルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−アセトキシエチル基、カルボキメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルフェイトプロピル基、4−スルフェイトブチル基、N−(メチルスルホニル)カルバミルメチル基、3−(アセチルスルファミル)プロピル基、4−(アセチルスルファミル)ブチル基等が、環式アルキル基としては、例えばシクロヘキシル基等があげられる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
一般式(3)におけるヘテロ原子を含む基としてはヒドロキシル基、メルカプト基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等があげられる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
これら一般式(3)に示される化合物は、アニリン誘導体とクロコン酸をDyes and Pigments 9(1988),p85−107に記載の方法で反応させることにより容易に合成することが出来る。
【0036】
前記一般式(4)において、R41〜R46は置換基を表し、但しR41〜R46のうち、少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基であり、好ましくはR41〜R46は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基であり、より好ましくはアルキル基、置換アルキル基、環式アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基である。より好ましくはR41〜R43、およびR44〜R46の少なくとも1つの炭素数が5以上60以下の置換基であり、0≦n≦4、0≦m≦4である。また、R43およびR46はヘテロ原子又はヘテロ原子を含む置換基であってもよいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
一般式(4)におけるR41〜R46において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ヘキサデシル基等のアルキル基が、置換アルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−アセトキシエチル基、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルフェイトプロピル基、4−スルフェイトブチル基、N−(メチルスルホニル)カルバミルメチル基、3−(アセチルスルファミル)プロピル基、4−(アセチルスルファミル)ブチル基等が、環式アルキル基としては、例えばシクロヘキシル基等が挙げられる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
一般式(4)におけるヘテロ原子を含む基としてはヒドロキシル基、メルカプト基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記一般式〔I〕において、R11、R12はアルキル基、アリール基または複素環基を表すが、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基、メトキシエチル基、4−スルホブチル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ナフチル基等)または複素環基(例えば、2−ピリジル基、2−ピラニル基、2−フラニル基等)を表し、R13、R14は水素原子または置換基(例えば、メチル基、メトキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基等)を表し、R15、R16は置換基(例えば、メチル基、メトキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、ジメチルアミノ基等)を表し、n11、n12は0以上6以下の整数を表す。
【0039】
一般式〔I〕においてR11、R12はアルキル基であることが好ましく、2−ヘキシルオクチル基のように分岐したアルキル基であることがより好ましい。R13、R14は水素原子であることが好ましい。n11、n12は0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
以下に一般式(1)〜(4)、〔I〕で表される染料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
【化17】
【0047】
【化18】
【0048】
【化19】
【0049】
【化20】
【0050】
【化21】
【0051】
【化22】
【0052】
【化23】
【0053】
【化24】
【0054】
【化25】
【0055】
【化26】
【0056】
【化27】
【0057】
【化28】
【0058】
【化29】
【0059】
【化30】
【0060】
【化31】
【0061】
本発明において、固体分散状染料とは粒子の平均体積を同体積の球に換算したときの球の半径(以下、換算半径とも言う)が1000nm以下の染料を言う。光散乱が少ない点で換算半径が200nm以下であることが好ましく、換算半径が100nm以下であることが最も好ましい。
本発明において、分子分散状染料とは、固体状でなく、実質的に分子単位で独立に存在している染料を言い、透過型電子顕微鏡(TEM)で10万倍の倍率で観察しても染料の固体が検出されない状態に存在している染料のことをいう(段落番号[0062]参照)。溶液状や分子単位でバインダー、ラテックス等の分散媒に分散された状態を例に挙げることができる。染料を溶液状で本発明に用いる場合、溶媒は高沸点溶媒であることが好ましい。高沸点溶媒は沸点が100℃以上の溶媒であり、好ましくは沸点が120℃以上の溶媒であり、最も好ましくは沸点が140℃以上の溶媒である。分散媒には特に制限は無く、水やゼラチン、ポリビニルピロリドン等のポリマー、それらの混合物等を挙げることができる。
【0062】
一般式(1)〜(4)、〔I〕で表される染料は、ハロゲン化銀写真感光材料の感光性層または非感光性層に分子分散状で含まれることができる。ここで分子分散状とは、化合物が乳剤層やその他の親水性コロイド層に均一に溶解されて分散した状態であり、好ましくは透過型電子顕微鏡(TEM)で10万倍の倍率で観察しても染料の固体が検出されない状態のことをいう。
【0063】
本発明の染料の分散方法は以下の方法で可能であり、本発明の高沸点溶媒分散物は同様の方法で作製できる。
例えば化合物をオイル、すなわち実質的に水不溶で沸点が160℃以上の高沸点溶媒に溶解した液を親水性コロイド溶液に加えて分散する方法。この高沸点溶媒としては、米国特許第2,322,027号に記載されているような、例えばフタール酸アルキルエステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、リン酸エステル(ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジオクチルブチルフォスフェート)、クエン酸エステル(例えば、アセチルクエン酸トリブチル)、安息香酸エステル(例えば安息香酸オクチル)、アルキルアミド(例えば、ジエチルラウリルアミド)、脂肪酸エステル類(例えば、ジブトキシエチルサクシネート、ジエチルアゼレート)、トリメシン酸エステル類(例えば、トリメシン酸トリブチル)などが使用できる。また、沸点約30℃ないし約150℃の有機溶媒、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルの如き低級アルキルアセテート、プロピオン酸エチル、2級ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、β−エトキシエチルアセテート、メチルセロソルブアセテートや水に溶解しやすい溶媒、例えばメタノールやエタノール等のアルコールを用いて染料を溶解し、高沸点溶媒に添加することもできる。ここで、染料と高沸点溶媒との使用比率としては10〜1/10(重量比)が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
本発明に用いられる支持体としては、例えばプラスチック等のシート、フィルム、板等が挙げられるが、特に制限はない。プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。光学用途へ使用するためには透明なプラスチックが好ましい。またその屈折率は、好ましくは1.3〜1.75、より好ましくは1.45〜1.65程度のものが良い。支持体部の厚みは用途によって異なるが、25〜5000μmが好ましい。
【0065】
本発明中の赤外線吸収要素は、溶剤可溶性樹脂の溶剤溶解液中にクロコニウム化合物を溶解させたものを加工することによって得られる。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等のベンゼン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤があげられる。溶剤中の樹脂やクロコニウム化合物の量は目的に応じ適宜定められる。加工方式は特に限定されるものではないが、煉込み法、メイヤーバーコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ディップコート等が用いられる。
【0066】
本発明の赤外線吸収要素は種々の用途に使用可能であるが、好ましい用途の1つにプラズマディスプレイが挙げられる。プラズマディスプレイパネルは特開平5−299020に開示の方法を用いて製造することが可能である。プラズマディスプレイパネルに本発明の赤外線吸収要素を搭載する場合は、通常赤外線吸収要素を発光層より観察者からみて前面に設ける。設ける方法としては、例えば赤外線吸収要素をモジュールにはめ込む方法、粘着剤を用いてパネルの前面ガラス基板等に直接貼り合わせる方法等が採用しうる。
【0067】
本発明のプラズマディスプレイは、強度の近赤外線を発するため、近赤外領域である800〜1000nmの波長領域の光をカットする必要がある。例えば、少なくとも820nmにおける光線透過率を10%以下、さらに好ましくは5%以下にすることが好ましい。
近赤外線カットには、本発明の赤外線吸収要素を用いることができる。また、要素の厚みを制御することにより可視光線透過率、近赤外線の透過率、色目をある範囲で変化させることができる。可視光線透過率が低いと、ディスプレイ設置時に画像の鮮明さが低下するため、フィルターの可視光線透過率は高い程良く、少なくとも50%以上、好ましくは55%以上必要である。
【0068】
光学フィルターの色目は、ディスプレイのコントラスト等に大きく影響する。本発明の用途の光学フィルターにおいては、赤紫不透過による緑色は不適であり、ニュートラルグレー、または、赤黄不透過によるブルーであることが要求される。このための色目や、可視光線透過率、近赤外線の透過率の制御は、一般に多層積層である方が光学的に設計しやすい。
【0069】
本発明のハロゲン化銀感光材料に含有されるハロゲン化銀粒子はハロゲン化銀乳剤粒子内部のハロゲン化銀組成に特に制限はないが、沃臭化銀粒子の場合には、コア/シェル構造を有することが好ましい。コア相の沃化銀含有率は10mol%以上であることが好ましく、20mol%以上が更に好ましい。また、最外部のシェル層の沃化銀含有率は10mol%以下であることが好ましく、5mol%以下が更に好ましい。この様なハロゲン化銀粒子の組成を分析する方法としては、例えば特開平4−142531号に記載の方法を参考にできる。
【0070】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は粒子間の沃化銀含有率がより均一になっていることが好ましい。
写真業界で一般的に用いられるXMA法によって個々のハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率を測定したとき、測定値の相対標準偏差が20%以下であることが好ましい。更に好ましくは、15%以下、最も好ましくは5%以上〜12%以下である。
【0071】
ここに相対標準偏差とは、例えば少なくとも100個のハロゲン化銀乳剤の沃化銀含有率を測定した際の沃化銀含有率の標準偏差をそのときの平均沃化銀含有率で除した値×100である。
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、単分散性のハロゲン化銀乳剤であることが好ましい。
【0072】
本発明において、単分散性のハロゲン化銀乳剤とは、平均粒径dを中心に±20%の粒径範囲内に含まれるハロゲン化銀重量が全ハロゲン化銀重量の70%以上であるものが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上100%以下である。
ここに平均粒径dは、粒径diを有する粒子の頻度niとdi3との積ni×di3が最大になるときの粒径diと定義する(有効数字3桁、最小数字は4捨5入とする)。
【0073】
ここでいう粒径とは、粒子の投影像を同面積の円像に換算したときの直径である。粒径は、例えば前記粒子を電子顕微鏡で1万倍乃至5万倍に拡大して投影し、そのプリント上の粒子直径又は投影時の面積を測定することによって得ることができる(測定粒子個数は無差別に100個以上あることとする)。
本発明の特に好ましい高度の単分散乳剤は、
(粒径標準偏差/平均粒径)×100=分布の広さ(%)
によって定義した分布の広さが20%以下のものであり、更に好ましくは5%以上15%以下のものである。
【0074】
ここに粒径測定方法は前記の測定方法に従うものとし、平均粒径は算術平均とする。
平均粒径=Σdini/Σni
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤の平均粒径は0.1〜10.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.2〜5.0μm、最も好ましくは0.3〜3.0μmである。
【0075】
本発明に好ましく用いられるハロゲン化銀が平均アスペクト比2以上の平板状ハロゲン化銀粒子を含有することが好ましく、該平均アスペクト比は3以上20以下がより好ましい。
本発明でいう平均アスペクト比は乳剤粒子の平均直径と平均厚みの比として求められるものであり、その具体的な定義及び測定法は、特開昭63−106746号、同63−316847号、特開平2−193138号において開示されたものと同様である。
【0076】
又、上記ハロゲン化銀はAgBrIであることが好ましい。
本発明によるハロゲン化銀乳剤はハロゲン化銀粒子を生成、成長させる液相中のpAgとpH、温度と撹拌等を所定のパターンに制御すること、塩化ナトリウム、臭化カリウム、沃化カリウムなどのハロゲン化物、硝酸銀の添加を制御する、ダブルジェット法による乳剤製造装置により製造される。又、本発明においては実質的に非感光性のハロゲン化銀粒子(好ましくは平均径が0.01〜0.2μmの微粒子乳剤)を、保護層、中間層等に用いることによって効を奏する。特に感光材料の総塗布銀量に対する非感光性ハロゲン化銀の割合が、9%以上15%以下であることが好ましい。
【0077】
実質的に非感光性とは感光性乳剤層に存在する最低感度の粒子の1/50以下の感度を言う。
本発明において広い露光ラチチュードを得るために同一構成層内に粒径、或いはハロゲン化物組成の異なるハロゲン化銀乳剤を任意の割合で混合使用することができる。
【0078】
混合使用される粒径の異なるハロゲン化銀粒子としては、平均粒径が0.2〜2.0μmの最大平均粒径を有するハロゲン化銀粒子と平均粒径が0.05〜1.0μmの最小平均粒径を有するハロゲン化銀粒子の組み合わせが好ましく、更に中間の平均粒径を有するハロゲン化銀粒子を1種以上組み合わせてもよい。又、最大平均粒径のハロゲン化銀粒子の平均粒径が、最小平均粒径のハロゲン化銀粒子の平均粒径の1.5〜40倍であることが好ましい。
【0079】
本発明において、ガンマ値(階調度)は、各々、白色、分解露光後現像した試料をステータスMフィルターを用いて測定し、得られた特性曲線のDmin+0.3からΔlogE=1.0の露光域における傾きを求めて得ることができる。本発明における好ましいガンマ値は、0.70以上1.50以下であり、より好ましくは、0.85以上1.35以下である。
【0080】
本発明の感光材料において、非感光性層に可視光吸収染料を含有させてもよい。非感光性層に含有される可視光吸収染料は、水溶性染料、油溶性染料、アルカリ可溶性染料や、固体微粒子分散による方法で添加する染料等の他に、イエローコロイド銀やマゼンタコロイド銀等の微粒子コロイド銀でも良い。また、増感色素や増感色素を吸着させたハロゲン化銀粒子でも良く、上記の何れかの染料、コロイド銀等の内、少なくとも1つ、もしくは、それ以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0081】
本発明に用いられる水溶性染料としては、通常のカラー感光材料に用いられる公知のものが利用できる。中でもオキソノール系、メロシアニン系、ベンジリデン系、アントラキノン系、シアニン系、スチリル系、アゾ系、ヘミオキソノール系等の染料が好ましく、特にスルホ基、カルボキシル基等の酸性基を有するものが好ましい。
【0082】
更に本発明においては、水溶性染料の水溶液での極大吸収波長が420〜480nmあるいは520〜580nm、あるいは600〜680nmの範囲にあるものが好ましい。特に好ましい水溶性染料は、特開平10−148919に開示されている。
本発明の感光材料には種々の色素形成カプラーを使用することができる。
【0083】
本発明においてカプラーとは、未反応のものは実質的に色相をもたず、発色現像により、発色現像主薬の酸化体とのカップリングによってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の色素画像を形成するイエローカプラー、マゼンタカプラー、シアンカプラー、ブラックカプラー等が含まれる。具体的にはリサーチ・ディスクロージャー(RD)に記載の下記のものが挙げられる。
【0084】
本発明において黒色色素画像形成型カプラーとは、所謂ブラックカプラーとも呼ばれる、発色現像主薬の酸化体とのカップリングによって黒色色素画像を形成するものである。黒色色素画像形成型カプラーとしては、特開昭52−42725号、特公昭57−49891号、同58−9938号、同58−10737号等に示されるm−アミノフェノール化合物、特公昭57−49892号、同59−46378号に示されるピラゾロン化合物、特公昭63−59126号に示されるレゾルシン化合物、特公平3−369号に示されるレゾルシノール化合物、特開昭55−149943号に示されるヒドロキシナフタレン化合物等があり、これらのいずれも利用することができる。
【0085】
特に好ましい黒色色素画像形成型カプラーは、m−アミノフェノール化合物であり、特公昭57−49891号の例示化合物(1)〜(82)のものが有用である。
また本発明においては、ブラックカプラーによって、或いはイエロー、マゼンタ、シアンカプラーの混合によって白黒画像を得るほかに、レッド(赤発色)カプラーとブルー(青発色)カプラーの混合によって白黒画像を得ることもできる。レッドカプラーの具体例としては、活性メチレン基にシアノ基が結合したケトメチン型カプラーがあり、ブルーカプラーの具体例としては、6位にトリフロロメチル基、スルホニルメチル基のような電子吸引基を有するピラゾロアゾール型カプラーがある。
【0086】
本発明において、可視光から赤外光までに感光する様に色増感されたハロゲン化銀を用いることができる。これは、400nmより長波の可視光域(青光〜緑光〜赤光)および1000nmより短い近赤外光域に感度を有するハロゲン化銀乳剤である。これは赤外感性ハロゲン化銀乳剤単独でもよいし、青感性ハロゲン化銀乳剤、緑感性ハロゲン化銀乳剤、赤感性ハロゲン化銀乳剤をある比率で混合してもよい。また、一つのハロゲン化銀乳剤に対して、赤外感性増感色素の他に青感性増感色素、緑感性増感色素、赤感性増感色素を添加して赤外感性の他に可視光域の感度を高めたハロゲン化銀乳剤としてもよい。
【0087】
本発明において、ハロゲン化銀乳剤を色増感する増感色素については、青感性、緑感性、赤感性増感色素としては、RD308119 996 IV A,A−J、RD17643 23−24、RD18716 648−9等に記載されている通常のカラーネガ用増感色素が好ましいものとして挙げられる。
本発明に用いられる他のハロゲン化銀乳剤は、リサーチ・ディスクロージャー308119に記載されているものを用いることができる。
【0088】
以下に記載箇所を示す。
本発明においてハロゲン化銀乳剤は物理熟成、本発明による化学熟成、分光増感を行った乳剤を使用する。このような工程で使用される添加剤としてはRD17643、同18716、同308119に記載されている。以下に記載箇所を示す。
本発明には種々のカプラーを使用することができ、その具体例は前記RDに記載されている。以下に関連ある記載箇所を示す。
本発明に使用する添加剤は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することができる。本発明においては前述RD17643、28頁、RD18716、647〜8頁及びRD308119のXIXに記載されている支持体を使用することができる。
【0089】
本発明の感光材料には、前述RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることができる。
本発明の感光材料は、前述RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることができる。
本発明は、種々の感光材料に適用することができる。
【0090】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に特に制限は無いが、赤外光に分光増感されている場合に残色ステインが少ないという本発明の効果が特に顕著に得られる。本発明は近赤外領域に分光増感された感光材料に適用することが好ましく、分光増感極大波長が730〜830nmの近赤外感光性の感光材料に適用すると鮮鋭性を特に大幅に改良することができてより好ましい。
【0091】
本発明をレーザー光を用いて露光するハロゲン化銀写真感光材料に適用すると鮮鋭性が高く特に好ましい。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法には特に制限は無く、コダック社指定のC−41処理等の溶液を用いた処理でもよく、熱現像でもよい。処理液の作製、管理の手間がいらず、短時間で処理できる点で熱現像を適用することがより好ましい。本発明を支持体上に有機銀塩、バインダーを含有する熱現像ハロゲン化銀写真感光材料に適用すると、残色ステインが少ないという本発明の効果が特に顕著に得られて好ましい。
【0092】
溶液による処理を適用する場合、C−41処理の他、コニカ社製CPK−2−22処理等を好ましく適用することができる。現像は特に制限は無いが、タンク内の処理液に浸漬しても良いし、処理液を感光材料に吹き付けたり、塗り付けたりしても良い。一般式1で表される染料を含有するハロゲン化銀写真感光材料を二次露光しながら反転現像するハロゲン化銀写真感光材料の処理方法に適用すると、鮮鋭性の良好な画像が得られる他、安定な写真特性が得られて好ましい。
【0093】
本発明の染料を感光材料に添加する際は塗布によることが有利であり、固体分散状染料または分子分散状染料をゼラチンやポリマー等のバインダーと混合して塗布することが好ましい。固体分散状染料を用いると、鮮鋭性改良効果が特に大きく、かつ残色ステインが特に少なくて好ましい。とりわけ、液体の現像液を用いる現像処理を施す場合には残色ステインが少なくて好ましい。
【0094】
本発明を観賞用の感光材料に適用すると残色ステインが少なくて好ましい。
熱現像処理法を用いて写真画像を形成する熱現像感光材料は、例えば米国特許第3152904号、3457075号、及びD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)に開示されている。
【0095】
本発明は有機銀塩を含む感光材料に好ましく適用することができる。有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸塩及び含窒素複素環塩が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。好適な銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、次のものがある:有機酸の銀塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)と、ヒドロキシ置換芳香族カルボン酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸)とのポリマー反応生成物の銀錯体);チオエン類の銀塩又は錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−(チアゾリン−2−チオエン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオエン等の銀塩又は錯体);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,4−チアゾール、1−H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体また塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;及びメルカプチド類の銀塩。好ましい銀源はベヘン酸銀である。有機銀塩は好ましくは銀量として3g/m2以下で含有せしめる。更に好ましくは2g/m2以下である。
【0096】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物および銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。
ハロゲン化銀粒子には特に制限は無いが、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒子サイズが小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.20μm以下、より好ましくは0.03μm〜0.15μm、特に0.03μm〜0.11μmが好ましい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0097】
ハロゲン化銀粒子の形状については特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0098】
用いるハロゲン化銀粒子のハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、又可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよい。このハロゲン化銀はいかなる方法で画像形成層に添加されてもよく、このときハロゲン化銀は還元可能な銀源に近接するように配置する。又、ハロゲン化銀は有機酸銀とハロゲンイオンとの反応による有機酸銀中の銀の一部又は全部をハロゲン化銀に変換することによって調製してもよいし、ハロゲン化銀を予め調製しておき、これを有機銀塩を調製するための溶液に添加してもよく、又はこれらの方法の組み合わせも可能であるが、後者が好ましい。一般にハロゲン化銀は有機銀塩に対して0.75〜30重量%の量で含有することが好ましい。
【0099】
ハロゲン化銀には、元素周期律表の6族〜10族に属する金属のイオン又は錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
これらの金属のイオン又は錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属のイオン又は錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0100】
本発明は赤外感光材料に好ましく適用する事ができる。赤外感光材料は赤外領域のみに感度を有する物でもよく、赤外領域以外に可視の3原色に相当する1つ以上の領域に感度を有してもよい。本発明を赤外感光材料に適用すると製造工程や自現機中で赤外センサーによるカブリの発生を防止することができて好ましい。
【0101】
本発明は熱現像感光材料にも好適に適用できる。
本発明を熱現像感光材料に適用する場合には還元剤を内蔵させることが好ましい。好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号、及びResearch Disclosure第17029及び29963に記載されており、例えば次のものを挙げる事ができる。アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノリダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースリダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒド又はケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシン類;アジン類(例えば、脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ);ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ、リダクトン及び/又はヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,5−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチル)フェノール)、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体及び3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤はヒンダードフェノール類である。還元剤の使用量は好ましくは銀1モル当り1×10-2〜10モル、特に1×10-2〜1.5モルである。
【0102】
本発明の感光材料に好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。親水性でも非親水性でもよい。
【0103】
本発明においては、感光性層のバインダー量が1〜6g/m2であることが好ましい。さらに好ましくは1.7〜5g/m2である。
本発明においては、感光性層側にマット剤を含有することが好ましく、ポリマーマット剤又は無機マット剤を乳剤層側の全バインダーに対し、重量比で0.5〜10%含有することが好ましい。本発明において用いられるマット剤の材質は、有機物及び無機物のいずれでもよい。
【0104】
本発明を適用する感光材料にはヒドラジン化合物を含有させることが可能である。本発明に用いられる好ましいヒドラジン化合物としてはリサーチ・ディスクロージャー23516(1983年11月号、P.346)およびそこに引用された文献の他、米国特許第4,080,207号、同4,269,929号、同4,276,364号、同4,278,748号、同4,385,108号、同4,459,347号、同4,478,928号、同4,560,638号、同4,686,167号、同4,912,016号、同4,988,604号、同4,994,365号、同5,041,355号、同5,104,769号、英国特許第2,011,391B号、欧州特許第217,310号、同301,799号、同356,898号、特開昭60−179734号、同61−170733号、同61−270744号、同62−178246号、同62−270948号、同63−29751号、同63−32538号、同63−104047号、同63−121838号、同63−129337号、同63−223744号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号、同63−294552号、同63−306438号、同64−10233号、特開平1−90439号、同1−100530号、同1−105941号、同1−105943号、同1−276128号、同1−280747号、同1−283548号、同1−283549号、同1−285940号、同2−2541号、同2−77057号、同2−139538号、同2−196234号、同2−196235号、同2−198440号、同2−198441号、同2−198442号、同2−220042号、同2−221953号、同2−221954号、同2−285342号、同2−285343号、同2−289843号、同2−302750号、同2−304550号、同3−37642号、同3−54549号、同3−125134号、同3−184039号、同3−240036号、同3−240037号、同3−259240号、同3−280038号、同3−282536号、同4−51143号、同4−56842号、同4−84134号、同2−230233号、同4−96053号、同4−216544号、同5−45761号、同5−45762号、同5−45763号、同5−45764号、同5−45765号、同6−289524号、同9−160164号等に記載されたものを挙げることができる。
【0105】
本発明におけるヒドラジン化合物の添加量としては銀1モルあたり1×10-6モルないし1×10-1モル含有されるのが好ましく、特に1×10-5モルないし5×10-2モルの範囲が好ましい添加量である。
本発明の感光材料には、ヒドラジン化合物と併用して、アミン誘導体、オニウム塩化合物、ジスルフィド誘導体、およびヒドロキシアミン誘導体などの造核促進剤を添加することができる。
【0106】
本発明を熱現像感光材料に適用する場合には、感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃〜140℃)に加熱することで現像される。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光でハロゲン化銀に発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。この反応過程は、外部から水等の処理液を供給することなしで進行する。
【0107】
本発明の感光材料は支持体上に少なくとも一層の感光性層を有している。支持体の上に感光性層のみを形成しても良いが、感光性層の上に少なくとも1層の非感光性層を形成することが好ましい。感光性層は複数層にしても良く、また階調の調節のため感度を高感層/低感層又は低感層/高感層にしても良い。各種の添加剤は感光性層、非感光性層、又はその他の形成層のいずれに添加しても良い。本発明の感光材料には例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。
【0108】
本発明を熱現像感光材料に適用する場合には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はリサーチ・ディスクロージャー17029号に開示されている。好ましい色調剤としてはフタラゾン又はフタラジンである。
【0109】
【実施例】
以下実施例により本発明の効果を更に詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
実施例1
本発明の染料の合成
合成例1(染料例示化合物3−13の合成)
3−(N,N−ジオクチルアミノ)フェノール20.0gとクロコン酸4.3gをブタノール/トルエン(1/1)の混合溶媒中で加熱し、共沸温度を保ちながら1時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて化合物を大まかに分離した(ヘキサン/酢酸エチル)。分離したフラクションから赤外吸収を有する粗結晶を得た。この粗結晶をトルエンで溶解し、エタノールで再沈殿させ11.3gの染料例示化合物3−13を得た。収率48%。λmax:820nm(酢酸エチル)、mp.83−86℃。
【0110】
構造は、下記1H−NMR、MS測定の結果より確認した。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=9.03(1H),6.47(2H),6.13(2H),3.43(8H),1.67(8H),1.31(40H),0.88(12H)、MS(FAB MS)m/z774(M+1)。
合成例2(染料例示化合物3−15の合成)
3−クロロ−N,N−ジペンチルアニリン14.7gとクロコン酸3.9gをブタノール/トルエン(1/1)の混合溶媒中で加熱し、共沸温度を保ちながら3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後析出した結晶を濾取した。この粗結晶を酢酸エチルから再結晶し9.7gの染料例示化合物3−15を得た。収率55%。構造は、合成例1と同様の方法で確認した。
合成例3(染料例示化合物3−24の合成)
3−(N,N−ジヘキサデシルアミノ)フェノール20.0gとクロコン酸2.5gをブタノール/トルエン(1/1)の混合溶媒中で加熱し、共沸温度を保ちながら2.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて化合物を大まかに分離した(ヘキサン/酢酸エチル)。分離したフラクションから赤外吸収を有する粗結晶を得た。この粗結晶をトルエンで溶解し、アセトニトリルで再沈殿させ13.1gの染料例示化合物3−24を得た。収率61%。構造は、合成例1と同様の方法で決定した。
合成例4(本発明の染料例示化合物4−10の合成)
3−クロロ−5−メチル−N,N−ジペンチルアニリン18.5gとクロコン酸4.7gをブタノール/トルエン(1/1)の混合溶媒中で加熱し、共沸温度を保ちながら1.5時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後溶媒を除去し、アセトニトリルを用いて結晶を析出させた。この粗結晶をトルエンで溶解し、アセトニトリルで再沈殿させ9.0gの本発明の染料例示化合物4−10を得た。収率41%。構造は、合成例1と同様の方法で決定した。
合成例5(本発明の染料例示化合物4−15の合成)
3−ペンチル−5−(N,N−ジヘキサデシルアミノ)フェノール23.5gとクロコン酸2.6gをブタノール−トルエン(1:1)の混合溶媒中で加熱し、共沸温度を保ちながら1時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて化合物を大まかに分離した(ヘキサン/酢酸エチル)。分離したフラクションから赤外吸収を有する粗結晶を得た。この粗結晶をトルエンで溶解し、エタノールで再沈殿させ13.5gの本発明の染料例示化合物4−15を得た。収率53%。構造は、合成例1と同様の方法で決定した。
合成例6(染料例示化合物I−1の合成)
1−(2−へキシルデシル)−4−メチルキノリニウムブロマイド9.0g、スクエア酸1.14g、1−ブタノール300ml、トルエン300mlを混合し、6時間加熱還流する。放冷後反応液を30℃で2回水洗し、有機層の溶媒を減圧濃縮し、粗結晶を得る。粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、トルエン/エタノール混合溶媒から再結晶して染料例示化合物I−1の暗緑色結晶2.8gが得られた。収率35%、純度98.2%(HPLC単純面積比)。構造は合成例1と同様の方法によって確認した。融点100〜102℃、分光吸収極大波長835nm(酢酸エチル)。
【0111】
本発明の他の化合物も本実施例に準じて合成することができる。
合成例1で合成した染料例示化合物3−13の分光吸収スペクトルを図1に示す。
合成例6で合成した染料例示化合物I−1の分光吸収スペクトルを図2に示す。
実施例2
特開平10−148919号実施例1の多層ハロゲン化銀感光材料の試料101の作製における第3、4、5層の下記増感色素ZK−1を同公報記載の下記ZK−8に替えた他は同公報実施例1の方法と同じにして即ち下記の如くにして多層ハロゲン化銀感光材料比較の試料100を作製した。
【0112】
下引層を施した厚さ120μmの透明トリアセチルセルロース支持体上に下記に示すような組成の各層を順次、支持体側から形成して多層ハロゲン化銀感光材料比較の試料100を作製した。
なお、以下においては、特に断りが無い限り、塗布量はg/m2で、ハロゲン化銀は金属銀に換算して、増感色素は1モル当たりのモル数で示す。
第1層:ハレーション防止層
黒色コロイド銀 0.16
紫外線吸収剤(UV−1) 0.21
高沸点有機溶媒(Oil−1) 0.12
カラードカプラー(YCM−2) 0.20
カラードカプラー(MCC−1) 0.04
ゼラチン 1.53
第2層:中間層
ゼラチン 0.80
第3層:低感度乳剤層
沃臭化銀乳剤A(0.40μm、AgI 4モル%) 0.98
増感色素(ZK−8) 7.0×10-4
イエローカプラー(Y−1) 0.26
マゼンタカプラー(M−1) 0.21
シアンカプラー(C−1) 0.32
高沸点有機溶媒(Oil−2) 0.72
ゼラチン 2.10
第4層:中感度乳剤層
沃臭化銀乳剤B(0.60μm、AgI 7モル%) 1.50
増感色素(ZK−8) 6.0×10-4
イエローカプラー(Y−1) 0.20
マゼンタカプラー(M−1) 0.16
シアンカプラー(C−1) 0.24
高沸点有機溶媒(Oil−2) 0.55
ゼラチン 2.20
第5層:高感度乳剤層
沃臭化銀乳剤C(0.75μm、AgI 8モル%) 1.55
増感色素(ZK−8) 4.5×10-4
イエローカプラー(Y−1) 0.12
マゼンタカプラー(M−1) 0.08
シアンカプラー(C−1) 0.16
高沸点有機溶媒(Oil−2) 0.33
ゼラチン 1.60
第6層:第1保護層
沃臭化銀乳剤(平均粒径0.05μm、AgI 3モル%) 0.30
紫外線吸収剤(UV−1) 0.09
紫外線吸収剤(UV−2) 0.10
高沸点溶媒(Oil−1) 0.10
ゼラチン 1.44
第7層:第2保護層
アルカリ可溶性マット剤PM−1(平均粒径2μm) 0.15
ポリメチルメタクリレート(平均粒径3μm) 0.04
滑り剤(WAX−1) 0.02
ゼラチン 0.55
なお上記組成物の他に、塗布助剤SU−1、SU−2、SU−3、分散助剤SU−4、粘度調整剤V−1、安定剤ST−1、染料AI−1、AI−2、カブリ防止剤AF−1、重量平均分子量:10,000及び重量平均分子量:100,000の2種のポリビニルピロリドン(AF−2)、硬膜剤H−1、H−2及び防腐剤DI−1を添加した。
【0113】
尚、Oil−1はジオクチルフタレート、Oil−2はジブチルフタレートである。
【0114】
【化32】
【0115】
【化33】
【0116】
【化34】
【0117】
【化35】
【0118】
【化36】
【0119】
また、この比較の試料100のハレーション防止層の赤外線吸収体を黒色コロイド銀から特開昭59−14150号に記載の下記化合物1(比較の赤外線吸収染料)に置き換えようと試みたが、溶媒に対する溶解性が極端に悪く、実施には至らなかった。
比較の試料100のハレーション防止層の赤外線吸収体を本発明の染料3−13、3−15、4−10、4−15に変えた本発明の試料101、102、103、104をそれぞれ作製した。
【0120】
また、試料101〜104の第2保護層にも同じ染料を添加した試料105、106、107、108を作製した。ここで用いられたクロコニウム化合物の濃度は、分子分散状で1になるように付量を調整した。
さらに、特開平7−219139号記載の下記化合物1d−1(比較の赤外線吸収染料)を固体分散でハレーション防止層、および第2保護層に添加した比較の試料109を作製したが、本発明の染料の分子分散状態と同等の濃度に到達するためには5倍の付量を必要とした。
【0121】
【化37】
【0122】
以上のように作製した試料100〜109を通常の135サイズ24枚撮りの規格に裁断し、フィルムパトローネに収納した。そして、現在市販されている白黒赤外ネガフィルムであるコニカ(株)製“コニカ赤外750”フィルム135サイズ24枚撮りとともに、それぞれカメラ(キャノン(株)製EOS−1)に装填し、カメラレンズ前にイーストマンコダック社製ラッテンフィルター25番を装着してから一般的な風景写真の撮影をそれぞれ行った。各シーンの撮影に際しては、ピント調整はマニュアル設定の状態にセットし、通常のピント合わせの後、更に、赤外補正マークに位置変更を行うピント調整を各撮影シーン毎に行った。
【0123】
撮影済みの試料100〜108は、予め感光層側から自動現像機で用いる赤外センサーを照射した後、コニカミニラボNPS−858J TypeII(プリンター部はコニカLVシリーズのプリントレベルチャンネル設定済み)を用いて、コニカカラーネガフィルム用現像処理CNK−41−J1にて現像処理し、乾燥してモノクロームネガ画像を有する試料100〜109を得た。一方、“コニカ赤外750”フィルムも同様に赤外センサーを照射した後、市販されている白黒ネガフィルム用現像処理キットを用いて、下記現像処理工程を行い、白黒ネガ画像を得た。
《現像処理工程》
工程 処理時間 処理温度 処理液内容
現像 6分 20℃ コニカ(株)製コニカドールDP
停止 30秒 20℃前後 1.5%酢酸溶液
定着 3分 20℃前後 コニカ(株)製コニカフィックスラピッド水洗 20分 15〜25℃ 流水
水滴防止30秒 20℃前後 コニカ(株)製コニカダックス
その後、通風の良い、ほこりの無い場所で自然乾燥するか、フィルム乾燥機で乾燥させる。
【0124】
以上得られた試料およびコニカ赤外750のカブリ、及び感度を比較した。試料100のカブリ及び感度を100とした時の相対値で表1に示した。
以上の経過および結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
表1から明らかなように、比較例のコニカ赤外フィルム“コニカ赤外750”および試料100と比較して、ハレーション防止層のみに赤外線吸収体を添加した試料101〜104は裏面からの赤外線照射において、若干の優位性が見られたが、乳剤面側からの赤外線照射ではカブリが見られた。一方、ハレーション防止層と、保護層に赤外線吸収剤を添加した試料105〜108は効率よく乳剤表裏面からの赤外線を吸収するために、カブリが大幅に小さく、分光増感領域にはほとんど吸収を持たないために、感度も試料100同等という極めて良好な状態であった。一方、固体分散染料をハレーション防止層と、保護層に添加した比較試料109は、感度及びカブリともに本発明に劣るものであった。以上のことから、本発明の優位性が歴然と判明した。
実施例3
赤外線吸収フィルターの作製(比較例)
比較化合物として、フタロシアニン系近赤外吸収剤のTX−305A(日本触媒製)を、ユニチカ製ポリエチレンテレフタレートペレット1203と重量比0.02:1の割合で混合し、260〜280℃で溶融させ、押出機で厚み100μmのフィルムを作製した後、このフィルムを2軸延伸して厚み25μmの近赤外線吸収フィルター200(比較)を作製した。該フィルターの820nm光の透過率は11%であった。JIS−R−3106に従って、(株)島津製作所製分光光度計UV−3100でTV(可視光透過率)及びTE(日射透過率)を測定したところ、それぞれ68%、65%であった。
【0127】
同様にして染料3−13、3−15、4−10、4−15を、ユニチカ製ポリエチレンテレフタレートペレット1203と重量比0.02:1の割合で混合し、260〜280℃で溶融させ、押出機で厚み100μmのフィルムを作製した後、このフィルムを2軸延伸して厚み25μmの近赤外線吸収フィルター201〜204を作製した。該フィルターの820nm光の透過率とTV及びTEの測定結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2から明らかなように、本発明の試料は比較試料にくらべて可視光透過率が高く、日射透過率が低い、好ましい特性であることがわかる。
実施例4
プラズマディスプレイパネルの作製
特開平5−299020号に開示の方法を用いてプラズマディスプレイパネル300を作製した。また、ディスプレイの前面に、近赤外線吸収フィルター201〜204を貼り合わせたプラズマディスプレイパネル301〜304を作製した。
【0130】
これらのプラズマディスプレイパネル300〜304について、赤外線及び可視光の透過率を測定した。測定値は試料300の値を100とした時の相対値で表3に示した。
【0131】
【表3】
【0132】
表3から明らかなように、本発明の試料は比較試料にくらべて赤外光を効果的に吸収し、かつ可視光は吸収しない、好ましい特性であることがわかる。
実施例5
(ハロゲン化銀粒子の調製)
純水900ml中にゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(96/4)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調製して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、{100}面比率86%の立方体沃臭化銀粒子を得た。
【0133】
この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整した。その後に増感色素SD−1をハロゲン化銀1モルに対し5×10-5モル、2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸を0.44g/m2になるように添加した。その後60℃に昇温してチオ硫酸ナトリウムを2mg添加し100分間熟成した後に38℃に冷却して化学増感を終了し、ハロゲン化銀粒子を得た。
【0134】
【化38】
【0135】
(有機脂肪酸銀乳剤の調製)
水300ml中にベヘン酸10.6gを入れ90℃に加熱し、十分攪拌した状態で1Nの水酸化ナトリウム31.1mlを添加し、そのままの状態で1時間放置した。その後30℃に冷却し、1Nのリン酸7.0mlを添加して十分攪拌した状態でN−ブロモこはく酸イミド0.01gを添加した。その後、上記であらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をベヘン酸に対して銀量として10モル%となるように40℃に加温した状態で攪拌しながら添加した。さらに1N硝酸銀水溶液25mlを2分間かけて連続添加し、そのまま攪拌した状態で1時間放置した。
【0136】
この乳剤に酢酸エチルに溶解したポリビニルブチラールを添加して十分攪拌した後に静置し、ベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を含有する酢酸エチル相と水相に分離した。水相を除去した後、遠心分離にてベヘン酸銀粒子とハロゲン化銀粒子を採取した。その後東ソー(株)社製合成ゼオライトA−3(球状)20gとイソプロピルアルコール22mlを添加し1時間放置した後濾過した。更にポリビニルブチラール3.4gとイソプロピルアルコール23mlを添加し35℃にて高速で十分攪拌して分散し有機脂肪酸銀乳剤の調製を終了した。
(感光層組成)
有機脂肪酸銀乳剤 1.75g(銀で)/m2
ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド 0.07g/m2
臭化カルシウム 0.05g/m2
2−メルカプト−5−メチルイミダゾール 0.04g/m2
トリブロモメチルスルホニルキノリン 0.36g/m2
ヘキサメチレンジイソシアネート 0.16g/m2
フタラジン 0.30g/m2
4−メチルフタル酸 0.14g/m2
テトラクロロフタル酸 0.10g/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
(表面保護層組成)
表面保護層塗布液を下記のように調製した。
【0137】
セルロースアセテート 2.3g/m2
ポリメチルメタクリレート(粒径10μm) 0.02g/m2
1,1ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−3,5,5−トリメチルヘキサン 4.8×10−3mol/m 2
染料I−1 0.024g/m2
ベンゾトリアゾール 0.021g/m2
二酸化珪素(粒径2μm) 0.22g/m2
溶媒には、メチルエチルケトン、アセトン、メタノールを適宜用いた。
(バッキング層組成)
バッキング層塗布液を下記の如く調製した。
【0138】
セルロースアセテート 4g/m 2
染料I−1 0.019g/m2
ポリメチルメタクリレート(粒径10μm) 0.02g/m2
上記のような組成で、二軸延伸された厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、乾燥して試料402を作製した。
【0139】
試料402の染料I−1を表4に示す染料に変えた他は試料402と同様にして試料401、403〜405を作製した。染料の添加量は試料402の染料I−1と等モル添加とした。
作製した熱現像感光材料401〜405を半切サイズに加工し、810nmのレーザーダイオードを垂直面より13°傾いたビームで露光した。その後ヒートドラムを用いて120℃で15秒熱現像処理し、各々試料411〜415とした。
【0140】
【表4】
【0141】
【化39】
【0142】
熱現像後の画像試料の評価
「鮮鋭性の評価」
試料411〜415について、10本/mmにおけるMTFを測定し、試料411のMTF値を100とする相対値で示した。
「残色ステインの評価」
残色ステインは目視により比較した。評価は10名のモニターによる主観評価で行い、実用上問題がないレベルを3点、実用上問題があるが、妥協すれば使えるレベルを1点、実用に耐えないレベルを0点として合計の点数で比較した。
【0143】
以上の結果を表5に示す。
【0144】
【表5】
【0145】
表5から明らかなように、412〜415の試料は鮮鋭性が良好で、残色ステインが少ないことがわかる。比較有機染料を用いた試料では可視部の吸収が大きく、残色ステインが許容できなかった。
実施例6
染料に10倍の重量の酢酸エチルと同じく10倍重量のトリクレジルフォスフェート(TCP)を加え、減圧下酢酸エチルを除去しながら超音波分散し、平均粒径90nmの染料のオイル分散物を調製した。実施例5の感光材料401〜405の試料作製時に染料の溶液に代えて上記で調製した染料のオイル分散物を用いた以外は実施例5と同様にして熱現像感光材料試料501〜505を作製し、後実施例5と同様に熱現像処理して画像試料511〜515を得た。実施例5と同様に鮮鋭性、残色ステインを評価した。
【0146】
以上の結果を表6に示す。
【0147】
【表6】
【0148】
表6から明らかなように、比較試料がオイル分散によって鮮鋭性が劣化しているのに対し、512〜515の試料は驚くべきことにオイル分散しても鮮鋭性、残色ステイン共劣化しておらず、好ましい。
実施例6から、オイル分散にしたときに本発明はより顕著な効果を得られることが判る。また、本発明の染料は有機溶媒に対する溶解度が高いことが判る。
実施例7
染料とゼラチン水溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を混ぜてジルコニアビーズと共にボールミルを用いて24時間粉砕し、ビーズを除去して平均粒径80nmの染料の固体微粒子分散物を調製した。実施例5の熱現像感光材料401〜405の試料作製時に染料の溶液に代えてこの分散液を用いた以外は実施例5と同様に熱現像感光材料試料を作製し、実施例5と同様に熱現像処理して得た画像試料を各々試料611〜615とした。実施例5と同様に鮮鋭性、残色ステインを評価した。
【0149】
以上の結果を表7に示す。
【0150】
【表7】
【0151】
表7から明らかなように、比較試料が固体微粒子分散によって鮮鋭性が劣化しているのに対し、612〜615の試料は驚くべきことに固体微粒子分散しても鮮鋭性、残色ステイン共劣化しておらず、好ましい。
実施例8
実施例5において、バッキング層に添加していた染料I−1の添加をやめ、代りに単位面積あたりの付き量が等しくなるようにポリエステル支持体に添加した。染料の添加方法はポリエステルの二軸延伸のためにポリエステルを溶融した際に混合、混練し、これを実施例5と同様に二軸延伸して支持体を作製した。
【0152】
この支持体を用いた他は実施例5と同様にして熱現像感光材料701〜705を作製した。これらの試料を実施例5と同様に露光、熱現像し、画像試料を得て試料711〜715とした。実施例5と同様に残色ステイン、鮮鋭性を評価した。
以上の結果を表8に示す。
【0153】
【表8】
【0154】
表8から明らかなように、染料を支持体に添加した試料712〜715は、バッキング層に添加した試料412〜415(実施例5)よりも鮮鋭性が好ましく、残色ステインが劣化しないのに対し、比較試料では鮮鋭性がわずかに向上したものの、残色ステインが劣化しており、好ましくない。
比較試料711では比較試料411(実施例5)に比べて鮮鋭性がわずかに向上したものの、残色ステインが劣化しているが、何れにしても、比較試料では鮮鋭性がわずかに向上したものの鮮鋭性が悪いし、また残色ステインが悪く、好ましくない。
【0155】
実施例8から、本発明の技術は支持体に適用したときに格段の効果を示すことが判る。
実施例9
染料I−1 1.0gをメチルエチルケトン100mlに溶解し、二軸延伸された厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに840nmの透過濃度が1.0になるように塗布し、乾燥して赤外線フィルター試料801を作製した。試料801の染料を表2に示す染料に変えた他は試料801と同様にして試料802〜805を作製した。染料の塗布量は試料801の染料I−1と等モルとした。
【0156】
富士通製PDPディスプレーの赤外線フィルターを除去し、代わりに上記で作製した赤外線フィルター試料801〜805の1つを取り付けたPDPディスプレーから2mの距離にソニー製テレビKV−12HT−1型を対向して設置した。PDPディスプレーを1時間動作させ、テレビが誤動作するかどうかを試料801〜805各々について確認した。
【0157】
以上の経過および結果を表9に示す。
【0158】
【表9】
【0159】
表9から明らかなように、801〜804の赤外線フィルター試料は全く誤動作せず、また目視によってPDPディスプレーの色再現性を評価したが801〜804の赤外線フィルター試料の色再現性は赤外フィルター無しの場合と変わらず、本発明の赤外染料およびそれを含有する赤外線フィルター(赤外線吸収要素)は可視部の吸収を事実上持たない一方で赤外領域に強い吸収を有することが確認された。
【0160】
【発明の効果】
本発明により、溶解性に優れたクロコニウム化合物を効率よく提供することができる。また、分子分散状のクロコニウム系赤外線吸収剤を含有させた赤外線吸収層を乳剤面側設けることにより、良好に赤外センサーのカット、吸収を行えるハロゲン化銀写真感光材料が得られる。また、可視光を十分に透過し、赤外光をほとんど透過しない赤外線吸収要素、およびそれを用いたプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【0161】
以上、本発明により、可視領域に吸収が少なく、合成が容易で、有機溶剤に対する溶解性に優れた赤外染料、およびそれを含有するハロゲン化銀写真感光材料、赤外線吸収要素、プラズマディスプレイパネルを提供できた。また、処理の迅速化やドライ化熱現像処理でも残色ステインの小さい赤外染料、およびそれを含有するハロゲン化銀写真感光材料を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 合成例1で合成した染料例示化合物3−13の分光吸収スペクトルを示す図。
【図2】 合成例6で合成した染料例示化合物I−1の分光吸収スペクトルを示す図。
Claims (10)
- 前記一般式(4)で表される染料の分子分散状染料を含有することを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 前記一般式(4)において、R 41 〜R 46 は置換基を表し、但しR 41 〜R 46 のうち少なくとも一つは炭素数が5〜60の置換基であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 前記ハロゲン化銀写真感光材料が赤外領域に分光感度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
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