JP4182548B2 - シールドトンネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールド掘進機で掘削しながらセグメントを組み立てて構築されるシールドトンネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
土木工事のシールド工法において、シールド掘進機で掘削しながらセグメントを組み立ててシールドトンネルを構築するとき、構築場所によっては図10に示すように地下水流6の流れ方向と直交する方向にシールドトンネル1が透水土層2に構築されることがある。
【0003】
シールドトンネル1はトンネル内への地下水の浸入を防ぐために例えば、セグメントの外殻は水の浸入しない鋼材などで製作し、また、セグメントピース間やセグメントリング間には止水のためのシール材を介装して、止水構造としているため、透水土層2にシールドトンネル1が構築されると、該シールドトンネル1によって地下水流の流れが遮断される。図中3は不透水土層を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
シールドトンネル1によって地下水流6がせき止められると、シールドトンネル1が構築された場所よりも下流側に位置する地下水流6は、シールドトンネル1の構築前の水位Aよりもトンネル構築後の水位Bが低下し、その結果、この地域に設けてある井戸4などでは井戸枯れが発生したりするなどの不都合が生じる。
【0005】
他方、シールドトンネル1が構築された場所よりも上流側に位置する地下水流6は、以前の水位Aよりもトンネル構築後の水位Cが上昇し、その結果、この地域に構築されている建物5の地下室では漏水や浸水などが発生する。
【0006】
また、シールドトンネル1の覆工にも、シールドトンネル1に対して地下水流6の上流側と下流側では水位(水量)が異なるために、セグメントに偏土圧や偏水圧が発生する。このため、高強度(高耐力)のセグメントが必要となる。
【0007】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、地下水流の流れ方向と直交する方向にシールドトンネルが透水土層に築造される場合に、地下水流を遮断することなく、地下水位に変動が生じることを防止でき、周囲に影響を及ぼすおそれのないシールドトンネルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、第1に、シールド掘進機で掘削しながらセグメントを組み立てて構築されるシールドトンネルにおいて、セグメント外殻は耐圧性を有する構造部材で形成し、該構造部材のうちの坑内側の面板は止水性を有するもので形成して密閉構造とし、シールドトンネルが地下水流を遮断しないようにセグメントの内部に該セグメントにそって地下水が流れる透水手段として、セグメント内を地下水が通過可能なようにセグメントの外殻内に配設される縦リブや外殻の一部を構成する妻板などの構造部材に透水用の孔を設けたことを要旨とするものである。
【0009】
第2に、セグメントピースの地山側の外殻である構造部材を地山側に押出自在な蓋体で構成し、該蓋体のセグメントピース7内側に押出手段を取り付け、蓋体を地山の側に押し出すことでセグメントの地山側に突出する透水用の空洞部を設けることを要旨とするものである。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、地下水流の流れ方向と直交する方向にシールドトンネルが透水土層に築造された場合であっても、セグメント自体を透水性を有するものとして縦リブや外殻の一部を構成する妻板に透水用の孔を設けたから、透水用の孔からセグメント内に地下水を取り入れて、内部を流すことができ、地下水流の流れが妨げられることはない。よって、該シールドトンネルをはさんでトンネル構築後も地下水流の上流側と下流側で水位に変化が生じることがない。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、セグメントの地山側に突出する空洞部内を地下水が通過するから、効果的に地下水を通すことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のシールドトンネルの第1実施形態を示す正面図で、不透水土層3,3の間に透水土層2の存在する地層の、主として前記透水土層2の箇所で地下水流6の流れ方向に直交するように築造されるシールドトンネル1について説明する。
【0013】
シールドトンネル1は、周知のようにセグメントピース7をトンネルの周方向にリング状に接合するとともに、リング間も接合してトンネルとするものであるが、透水手段として第1実施形態ではセグメントピース7そのものを透水性を有するものに形成する。
【0014】
図2は第1実施形態を示すセグメントピース7間の継手部の縦断正面図、図3はセグメントピース7の縦断正面図で、図4にも示すように外殻を構成する構造部材8のうち、両端の妻板である継手板9と内部に配置する補強用の縦リブ10とに透水用の孔11を設けて、構造部材8の一部を透水性を有するものに形成した。図中12はセグメントピース7間およびリング間を接合するための箱抜きで形成したボルトボックス、13は結合用のボルトである。
【0015】
セグメントピース7は外殻内に透水物質14を充填せずに、構造部材8としての継手板9や縦リブ10に透水用の孔11を設けただけの構造として構造部材8だけで透水性を有するものとする。構造部材8の材料としては、例えば、鉄、鋳鉄、ステンレスなどの金属系材料、コンクリートなどの鉱物系材料、プラスチック、硬質ゴム、グラスファイバー、カーボンファイバー、アラミド繊維などの高分子系または新素材系材料があげられ、これらの材料を単体または複合体、もしくは加工体で使用する。
【0016】
かかるセグメントピース7を透水土層2に配設すれば、図1に示すように地下水流6はセグメントピース7の外殻の地山側からセグメントピース7の内部に浸入し、内部の透水物質14、縦リブ10や継手板9に設けた透水用の孔11を通過してセグメントピース7内を流れをせき止められることなく流れる。
【0017】
図5、図6はセグメントピース7そのものを透水性を有するものに形成する第1実施形態の他の例を示すもので、セグメントピース7の地山側の外殻である構造部材を地山側に押出自在な蓋体15で構成し、該蓋体15のセグメントピース7内側に押出手段16としてシリンダー、ジャッキ、エアバッグなどを取り付け、この押出手段16の周囲に伸延材注入用の空所17を形成する。
【0018】
セグメントピース7の坑内側の外殻に逆止弁を設けた伸延材注入口18を設け、該伸延材注入口18と前記空所17を注入管19で連結する。
【0019】
かかるセグメントピース7を透水土層2に配設する場合は、セグメント組立時には図5に示すように押出手段16を収縮させた状態として蓋体15は突出させないでおく。この状態から、このセグメントピース7に透水機能を付与するには、坑内側の伸延材注入口18から伸延材を空所17に注入し、該伸延材の注入圧で図6に示すように蓋体15を地山20の側に押し出す。
【0020】
これにより、セグメントピース7の他の部分と蓋体15との間に空洞21が形成されるから、この空洞21を地下水流6の透水部とする。
【0021】
前記伸延材の材質は、空気、水、油、プラスチック等の高分子材料、その他流動性を有する物質であれば全ての使用が可能である。
【0022】
また、このような蓋体15を有する特殊セグメントの外殻内に充填する内部材料としては、従来のようなコンクリートなどの不透水性材料でも、前記したような透水物質14でもよい。
【0023】
内部に充填する透水物質 14 としては、例えば、鉄、鋳鉄、ステンレスなどの金属系材料を例えばスリット状、パイプ状に加工した加工物、コンクリートなどの鉱物系材料を例えばパイプ状、多孔質状に加工した加工物、砂、砂利その他の類似形状物などの鉱物系材料、プラスチック、硬質ゴム、グラスファイバー、カーボンファイバー、アラミド繊維などの高分子系または新素材系材料の単体またはこれらをパイプ状、多孔質状、発砲状に加工した加工物などがあげられ、これらの材料を単体または複合体で使用する。
【0024】
なお、パイプ状の加工物の場合、パイプの断面形状は円形に限定されるものではなく、角パイプや異形パイプの使用も可能である。
【0025】
また、パイプ状の加工物の場合、セグメントピース7の継手板9の箇所に開口する端部の集水部は、スリットパイプ、専用の集水管を使用したり、パイプにスリット加工を施す。
【0026】
透水材料に砂などの鉱物系材料や多孔質材料、発砲体を使用する場合は、セグメントピース7の地山側に面する外殻の鋼材はスリットを形成したものを使用したり、あるいは、この箇所には外殻の鋼材を設けないこととして、地山側からの集水が阻害されないように する。
【0027】
不透水性材料を使用する場合は、図7に示すように地下水流6がセグメントピース7を通過して上流から下流へと流れるようにするには空洞21をセグメントリングの半周または全周にわたって設ける必要がある。
【0028】
他方、セグメントリングを構成する他のセグメント7の内部材料に透水物質14を使用する場合は、図8に示すように透水土層2に位置して地下水流6の集水口22と放流口23に位置するセグメントピース7にのみ蓋体15を有するものを使用し、この箇所にのみ空洞21を設ければ、ここから集水された地下水は他のセグメントピース7の内部の透水物質14を通過して放流口23から放流される。
【0029】
これらの透水性を有するセグメントピース7は、透水土層2の部分にのみ組立てられるものであるが、透水性のために組立時にこのセグメントピース7を介して地下水が地山20の側からシールド坑内に浸入するおそれがある。
【0030】
これに対処するため、図9に示すようにシールド掘進機のスキンプレート24のテールシール25が透水性のセグメントピース7の箇所を通過するまでの間、該セグメントピース7の外側を遮水のための鉄板などの遮水板26で蓋をしておき、テールシール25がこの透水性のセグメントピース7を通過した後、この遮水板26をジャッキやチェーンブロックなどを使用して引っ張り、セグメントピース7の地山側から除去して該セグメントピース7内に地下水が入るようにする。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のシールドトンネルは、地下水流の流れ方向と直交する方向にシールドトンネルが透水土層に築造された場合であっても、シールドトンネルに地下水流を遮断しないような透水手段を設けたから、この透水手段により地下水流はシールドトンネルにせき止められることなく、該トンネルを通過してトンネル構築前と同じ方向に流れる。よって、該シールドトンネルをはさんでトンネル構築後も地下水流の上流側と下流側で水位に変化が生じることがないから、シールド断面に対する偏土圧、偏水圧がなくなり、軽量で安価なセグメントでトンネル覆工を行うことができる。また、地下水流に影響されずに自由な位置にトンネルを施工できる。
【0032】
そして、セグメント自体を透水性を有するものとして縦リブや外殻の一部を構成する妻板などの構造部材に透水用の孔を設けたから、透水用の孔からセグメント内に地下水を取り入れて、内部を流すことができ、地下水流の流れが妨げられることはない。
【0033】
あるいは、セグメントの地山側に突出する空洞部内を地下水が通過するから、セグメントへの地下水の集水口や放水口の箇所にのみこの形態のセグメントを配置し、集水口から放水口への地下水の通過部にはセグメント自体が透水性を有するタイプのものを配置することで、効果的に地下水を通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のシールドトンネルの実施形態を示す正面図である。
【図2】 本発明のシールドトンネルの実施形態を示す要部の縦断正面図である。
【図3】 本発明のシールドトンネルの実施形態を示す要部のセグメントピースの縦断正面図である。
【図4】 本発明のシールドトンネルの実施形態を示す図2のA−A線断面図である。
【図5】 本発明のシールドトンネルの実施形態の他の例を示すセグメント組立時の縦断側面図である。
【図6】 本発明のシールドトンネルの実施形態の他の例を示す透水部完成時の縦断側面図である。
【図7】 本発明のシールドトンネルの実施形態の他の例を示す縦断正面図である。
【図8】 本発明のシールドトンネルの実施形態のさらに他の例を示す縦断正面図である。
【図9】 本発明のシールドトンネルの実施形態の施工状態を示す縦断側面図である。
【図10】 透水土層に築造されるシールドトンネルの説明図である。
【符号の説明】
1…シールドトンネル 2…透水土層
3…不透水土層 4…井戸
5…建物 6…地下水流
7…セグメントピース 8…構造部材
9…継手板 10…縦リブ
11…孔 12…ボルトボックス
13…ボルト 14…透水物質
15…蓋体 16…押出手段
17…空所 18…伸延材注入口
19…注入管 20…地山
21…空洞 22…集水口
23…放流口 24…スキンプレート
25…テールシール 26…遮水板
Claims (2)
- シールド掘進機で掘削しながらセグメントを組み立てて構築されるシールドトンネルにおいて、セグメント外殻は耐圧性を有する構造部材で形成し、該構造部材のうちの坑内側の面板は止水性を有するもので形成して密閉構造とし、シールドトンネルが地下水流を遮断しないようにセグメントの内部に該セグメントにそって地下水が流れる透水手段として、セグメント内を地下水が通過可能なようにセグメントの外殻内に配設される縦リブや外殻の一部を構成する妻板に透水用の孔を設けたことを特徴とするシールドトンネル。
- シールド掘進機で掘削しながらセグメントを組み立てて構築されるシールドトンネルにおいて、セグメント外殻は耐圧性を有する構造部材で形成し、該構造部材のうちの坑内側の面板は止水性を有するもので形成して密閉構造とし、シールドトンネルが地下水流を遮断しないようにセグメントの内部や外側などの箇所に該セグメントにそって地下水が流れる透水手段として、セグメントピースの地山側の外殻である構造部材を地山側に押出自在な蓋体で構成し、該蓋体のセグメントピース内側に押出手段を取り付け、蓋体を地山の側に押し出すことでセグメントの地山側に突出する透水用の空洞部を設けることを特徴とするシールドトンネル。
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