JP3846972B2 - トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非開削の状態での地中掘削に基づいて構築したトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造の構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地下水流動のある地盤において、道路用トンネル、鉄道用トンネル等の地下構造物を構築した場合、短期的あるいは長期的な地下水の流動阻害が生じ、これによる周辺地盤の沈下や井戸水確保の困難化などが問題となる。
【0003】
例えば図14に示すように、地下構造物100が透水層と難透水層または不透水層(以下、単に難透水層という)とに跨がって、地下水流動を堰き止める位置にある場合、地下水の流動が阻害される。図示の例では、地下構造物100を挟んで上流側の地下水面h1が当該地下構造物100の最上部を越える位置h2まで上昇する一方、下流側の地下水面h3はその上昇分だけ下方の位置h4まで下降することになる。このため、地下構造物100の地下水流動方向下流側において地盤沈下や井戸水確保の困難化を生ずる。
【0004】
また、地下構造物が透水層と難透水層または不透水層とに跨がっていなくとも、例えば地下構造物が地下水流動経路に位置する場合には、地下水の流動は阻害される。
【0005】
従来、地下構造物の構築を開削工法により行う場合には、図15に示すように、地下構造物110を挟んで上流側および下流側に集水用および放水用の縦坑111,112をそれぞれ形成し、これらを地下構造物110の下方側の難透水層に形成した横坑113により通じさせて、地下水の流動阻害を防止していた。また、地下構造物の外周に沿って通水管を設けたり同様に透水領域を形成することも行われていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、含水未固結地盤においては、一般にシールド工法等の地中掘削によってトンネルを構築する工法が採用されるにもかかわらず、かかる工法によって構築されたトンネルにより生ずる地下水の流動阻害を防止するための有効な提案はなかった。
【0007】
すなわち、開削工法により地下構造物を構築する際には、その地下構造物の外周に沿って通水管を設けたり透水領域を形成することは比較的容易であるが、これを非開削状態での地中掘削によりトンネルの構築を行う工法に適用することはできない。
【0008】
また、地中掘削によりトンネルの構築を行う場合であっても、前述した従来例のように通水のための縦坑および横坑を形成することはできるが、作業が大規模になるため好ましくない。
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、トンネルによる地下水の流動阻害を防止し、もって、周辺地盤の地下水環境の保全を図るとともに、地下水の流動阻害の防止を図る上での作業の簡素化を図ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
<請求項1項記載の発明>
非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
グラウトホールと、このグラウトホールを貫通して一方側の周方向連結面近傍から他方側の周方向連結面近傍まで延在するする単位通水管とを有するセグメントピースを用いて、地下水流動の上流側および下流側にグラウトホールが位置するようにセグメントリングを組み立てる工程と、
各グラウトホールを介してグラウト材を裏込注入した後、地下水流動の上流側のグラウトホールから集水管の長さに応じた深さまで削孔を行い、これによって形成した孔に集水管を嵌め込み、かつ地下水流動の下流側のグラウトホールから放水管の長さに応じた深さまで削孔を行い、これによって形成した孔に放水管を嵌め込むとともに、各グラウトホールにキャップをする工程と、
この工程に続いてまたは併行して、隣り合う単位通水管の端部同士を連結管を介して連結して、セグメントリングの周壁内部に、少なくともトンネルの下側を通り集水管および放水管に連通する一体的な通水管を構築する工程と、
を含むことを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
【0011】
<請求項2項記載の発明>
非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
グラウトホールを有するセグメントピースを用いてセグメントリングを組み立てる工程と、
各グラウトホールを介して透水性材料を裏込注入し、少なくともトンネルの下側を通る透水性材料層からなる通水路を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
【0012】
<請求項3項記載の発明>
非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
トンネル掘削面に対してコンクリート類の一次吹付及び二次吹付を行うことによりトンネルを構築するにあたり、
トンネル掘削面に対して一次吹付を行った後かつ二次吹付の前に、一次吹付面における地下水流動の上流側及び下流側に集水管および放水管の取付け孔をそれぞれ削孔し、これら取付け孔に集水管および放水管をそれぞれ取付けるとともに、少なくともトンネルの下側を通り集水管および放水管に連通する通水管をトンネル周方向に配置し、
しかる後に二次吹付を行うことにより、トンネルの周壁内部に通水管を設けることを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
【0013】
<請求項4項記載の発明>
非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
トンネル掘削面に対してコンクリート類の一次吹付及び二次吹付を行うことによりトンネルを構築するにあたり、
一次吹付に先立って、トンネル掘削面における地下水流動の上流側及び下流側に集水管および放水管の取付け孔をそれぞれ削孔し、これら取付け孔に集水管および放水管をそれぞれ取付けるとともに、少なくともトンネルの下側を通り集水管および放水管に連通する 通水管をトンネル周方向に配置し、
しかる後に一次吹付および二次吹付を行い、トンネルの周壁外面に埋め込まれた通水管を設けることを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
【0014】
<請求項5項記載の発明>
非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
トンネル掘削面に対してコンクリート類の一次吹付及び二次吹付を行うことによりトンネルを構築するにあたり、
一次吹付として、あるいは一次吹付の前の予備的な吹付として、透水性コンクリートを吹き付けることによって、トンネルの周壁の外側部分としてあるいはトンネルの周壁外側に、少なくともトンネルの下側を通る透水性コンクリート層からなる通水路を設けることを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
【0015】
<請求項6項記載の発明>
前記通水管にポンプを設置する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
【0016】
<請求項7項記載の発明>
前記通水管に、マノメータ、間隙水圧計、または流量計を設置する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明が対象とする地下水の流動阻害の防止構造について先に説明し、次いで本発明に係る構築方法の実施形態について説明する。
本発明が対象とする地下水の流動阻害の防止構造は、地中掘削に基づいて構築されるトンネルの一方側から他方側へ通じる通水路を形成したものであり、トンネル内に通水路を形成する態様およびトンネルの外側近傍に通水路を形成する態様が考えられる。
【0018】
トンネル内に通水路を形成するものとしては、図1に示すように、トンネル1Aの周壁内部に、周方向に延在して環状とされた通水管2Aを設ける態様(第1の態様)が考えられる。図示の例では、トンネル1Aの地下水流動方向で上流側に、通水管2Aに通じかつ地中内に突出する集水手段4,4が設けられ、その反対の下流側に通水管2Aに通じかつ地中内に突出する放水手段5,5が設けられている。この場合、トンネル1Aの上流側の地下水は、集水手段4,4により集水されて通水管2Aに導入された後、通水管2Aを介して放水手段5,5に達し、ここから下流側に放水される。
【0019】
この態様の変形例として、図2に示すように、トンネル1Bの内部空洞側に、周方向に延在して環状とされた通水管2Bを設ける態様(第2の態様)が考えられる。また、これとは逆に、図3に示すようにトンネル1Cの外側に環状の通水管2Cを設ける態様(第3の態様)も考えられる。これらの態様においても、トンネル1B(または1C)の上流側の地下水は、集水手段4,4、通水管2B(または2C)および放水手段5,5の順に通水されて下流側に放水される。尚、これら第2および第3の態様には、通水管をトンネルの周壁外面あるいは周壁内面に埋め込んだものも含まれる。
【0020】
また、内部空洞を横切る横断通水路を組み合わせる態様(第4の態様)も考えられる。例えば、図4に示すように、上記第2の態様に従って環状の通水管2B’をトンネル1B’の内部空洞側に設けるとともに、内部空洞を上下2段に分ける仕切壁6の内部に、通水管2B’における地下水の流動方向で上流側の部分および下流側の部分を結ぶ横断通水管7を設ける。この場合、横断通水管は仕切壁の外面に沿わせて設けても良い。また上記第1の態様および第3の態様に従って通水路を構築する場合、および次述する第5の態様に従って通水路を形成した場合であっても、ここにいう横断通水路を設けることができる。
【0021】
トンネルの外側近傍に通水路を形成する態様としては、図5に示すように、トンネル1Dの外側を囲んで、透水性材料からなる層2Dを設ける態様(第5の態様)が考えられる。透水性材料としては、山砂等の透水性の高い砂、透水性コンクリート等が考えられる。この場合、同図中に矢印で示すように、トンネル1Dの上流側の地下水は、透水性材料からなる層2Dを介して下流側に通水される。
【0022】
これら図示した態様では、トンネルの上側および下側の両方に通水路を形成しているが、本発明はこれに限定されず、例えばトンネルの下側のみに通水路を形成することもできる。ただし、本発明では、通水性の観点から、少なくともトンネルの下側には通水路を形成する。
また、上述のトンネルの下側のみに通水路を形成する態様等や、前述の第1〜第5の態様を、適宜、組み合わせることもできる。例えば、第1の態様(第2、第3または第4の態様)における通水管を設けるとともに第5の態様の透水性材料からなる層を形成したり、あるいは第1の態様における通水管を設けるとともに第2の態様(または第3の態様)の通水管を設けることができる。
尚、本発明では、地下水の流動方向と通水路の通水方向(通水路における集水部分と放水部分とを結ぶ方向)とのなす角度は適宜定めることができる。
【0023】
一方、本発明は、これらの構造態様を、シールド工法により構築されるシールドトンネルや、NATM工法等のコンクリート類吹付工法により構築されるトンネル等の、非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルに対して適用するための施工方法である。
そこで、次に、シールド工法により構築されるシールドトンネルに対して、上記第1の態様の通水路を形成する場合について、さらに具体的に説明する。
【0024】
先ず、通常のシールド工法と同様に、現場施工に先立ってセグメントピースを製造する。セグメントの種類としては、鉄筋コンクリート(RC)セグメント、合成セグメント、スチールセグメント、ダグタイルセグメントのいずれであっても良い。
【0025】
本発明に係るセグメントピース11は、図6および図7に示すように単位通水管13aを内装する。単位通水管13aは、略、セグメントピース11における一方側の周方向連結面から他方側の周方向連結面まで延在するが、その両端は各連結面には達しない。
【0026】
セグメントピース11は、単位通水管13a有する点以外は基本的には公知のものと異ならず、その略中央においてセグメント内空側および地山側に連通するグラウトホール22、周方向側面にあって他のセグメントピースとの連結を可能ならしめる周方向継手(いわゆるセグメント間継手)20,20…、およびトンネル延長方向側面にあって他のセグメントリングとの連結を可能ならしめるいわゆるリング間継手21,21…を備える。単位通水管13aは、グラウトホール22に通じるように設けられる。また、図8にも示すように、他のセグメントピースの単位通水管13aとの連結のため、両側の周方向側部には単位通水管13aの端部が露出するようにセグメント内空面に開口する連結ボックス23が設けられる。例えば、鉄筋コンクリートセグメントの場合、図9に示すように鉄筋Fの間に単位通水管13aを通せば良い。
【0027】
現場での施工においては、通常のシールド工法と同様に、このセグメントピース11をシールド機の後方に搬入し、各々の周方向継手20,20…を連結してセグメントリング12を構築する(図10参照)。本例では、集水管14,14および放水管15,15は、グラウトホール22,22…を利用して取付けるため、地下水流動の上流側および下流側の適宜の位置にグラウトホール22,22…がくるようにセグメントリング12を組み立てる。集水管14,14および放水管15,15の取付け孔は、グラルトホール22,22…とは別の任意の位置に設けることもできる。
【0028】
次に、図11にも示すように、各グラウトホール22,22…を介してグラウト材Gを裏込注入した後、各グラウトホール22,22…から集水管14,14(または放水管15,15)の長さに応じた深さにまで削孔機を用いて削孔する。この場合において、地質が岩の場合には削岩機を用いることができる。また必要に応じて手掘りで孔開けを行っても良い。これによって形成された孔には、集水管14,14(または放水管15,15)を嵌め込む。25,25…はキャップである。
【0029】
続いて(あるいは併行して)、隣合う単位通水管13a,13aの端部同士を連結して、セグメントリング12の周壁内部に、一体的な環状の通水管13を構築する。具体的には、図12および図13に詳しいように、連結ボックス23,23…内に突き出た単位通水管13a,13aの端部同士を、連結管24を介して連結する。連結を容易にするために、連結管24には可撓性の管を用いるのが好ましい。通水管同士の連結が終了したならば、連結ボックス23,23…内にモルタルを打設して連結部分を埋め殺す。
【0030】
さらに、内面の平滑化及び化粧、シールド施工時に生じた蛇行の修正、セグメントの補強、トンネルの防蝕等、必要に応じて、セグメント内面の二次覆工等を行う。以降、シールド機の掘進に伴って前述の作業を繰り返し行って、シールドトンネル10が完成する。
完成したシールドトンネル10は、その上流側の地下水が、集水管14,14によって通水管13に導かれた後、図示の場合には主に下側の通水管13を介して反対側の放水管15,15に達し、ここから再度地中に放出される。このため、前述した図1に示す例と同様に、シールドトンネル10が透水層と難透水層に跨がって位置している場合であっても、地下水の流動は阻害されない。またセグメントピース11には予め単位通水管13aが内装されているため、現場での作業の簡素化が図られる。
【0031】
ここでは、前述した第1の態様に従って、シールドトンネルの周壁内部に通水管を設けた例について説明した。前述の第2の態様および第3の態様に従って通水管を設ける場合でも略同様である。
【0032】
すなわち、図示しないが、通水管をセグメントピースの内面または外面に沿わせて設ければ良い。但し、通水管をセグメントピースの外面に沿わせて設ける場合には、セグメントピース組み立て時における通水管の連結のため、連結ボックスを地山側に開口させておく必要がある。また、通水管をセグメントピースの内面に沿わせて配する場合(内面に埋め込む場合を除く)には、連結ボックスは必要ない。
【0033】
第4の態様に従って横断通水路を併設する場合には、仕切壁を構築するに当たり、前もって仕切壁の内部に若しくは外面に沿わせて横断通水管を配設しておき、これを通水管や、集水手段、放水手段に連結すれば良い。また、仕切壁構築後に、仕切壁の外面に沿わせて横断通水管を配設し、これを通水管や集水手段、放水手段に連結しても良い(図示せず)。
【0034】
第5の態様に従って外面側に透水性材料からなる層を有するシールドトンネルを構築する場合には、通常のシールド工法と同様のセグメントピースを用いるとともに、通常用いられるグラウト剤の代わりに、山砂等の透水性の高い砂や、透水性コンクリートとなる注入剤を用い、通常のシールド工法と同様に裏込注入を行えば良い(図示せず)。
【0035】
他方、前述した地下水の流動阻害の防止構造を、NATM工法等のコンクリート類吹付工法に適用する場合については、次の施工方法が提案される。
【0036】
すなわち、コンクリート類吹付工法において第1の態様の通水路を構築するには、トンネル掘削面に対して一次吹付を行った後、かつ二次吹付の前において、一次吹付面の適宜の位置に集水管および放水管の取付け孔を削孔し、この取付け孔に集水管および放水管を取付けるとともに、これら集水管および放水管に連通する通水管をトンネル周方向に配置する。これによって、一次吹付面と二次吹付面との間、つまりトンネルの周壁内部に通水管を設けることができる。
【0037】
【0038】
第3の態様の通水路を構築するには、トンネル掘削面に対して、適宜の位置に集水管および放水管の取付け孔を削孔し、この取付け孔に集水管および放水管を取付けるとともに、これら集水管および放水管に連通する通水管をトンネル周方向に配置した後、通常の施工方法と同様にして一次吹付、および二次吹付等を行う。これによって、一次吹付面の外面側、つまりトンネルの周壁外面に埋め込まれた通水管を設けることができる。
【0039】
コンクリート類吹付工法において前述の第4の態様の通水路を構築する場合については、前述のシールドトンネルの場合と同様である。
【0040】
第5の態様の通水路を構築するには、トンネル掘削面に対する一次吹付として、あるいは一次吹付の前の予備的な吹付として、透水性コンクリートを吹き付けることによって、トンネルの周壁の外側部分としてあるいはトンネルの周壁外面側に透水性コンクリートからなる層を設けることができる。
【0041】
<その他>
(1)本発明にいう通水管としては、ゴム製のフレキシブルホース等の可撓性の管や、FRP、塩化ビニル樹脂等の非可撓性の管、ステンレス等の金属製の管等を用いることができる。これらのうちでも、酸や錆に強く経時劣化の少ないものが望ましい。尚、本発明にいう通水管には、これら部材としての管とは異なり、トンネルの周壁に設けた孔(すなわち内壁に周壁材料が露出する孔)により形成される管状路も含まれる。
【0042】
(2)本発明にいう集水管、放水管としては、管の周壁に多数の連通孔を有する、いわゆるストレナーパイプを用いることができる。
【0043】
(3)本発明では、通水管に砂等が流入したり、これによって目詰まりしたりするのを防止するために、集水管・放水管にフィルターを内装することができる。フィルターの材料としては、各種の、砂・活性炭・布(不織布等含む)等を用いることができる。
【0044】
(4)集水管・放水管にフィルターを内装する場合には、フィルターの目詰まりが生じることが想定される。このため、カートリッジ式のフィルターを用い、必要に応じて交換することができるようにするのが好ましい。
例えば、上記シールドトンネルの例において、カートリッジ式のフィルターを用いるとともに、キャップ25を着脱自在にする。特に二次覆工を行う場合には、キャップ25の部分は覆工しないでおく。これによって、フィルターが目詰まりしたときには、このキャップ25を外してフィルターを交換することが可能となる。
【0045】
(5)本発明では、通水路の適宜の位置、例えば上記シールドトンネルの例では、キャップ25によって蓋をされた通水管と集水管または放水管の連通部において、ポンプを設置して、強制的に通水を行うことができる。また、このポンプを利用して、地盤沈下防止、井戸水保護、および地下水流量の調整等のために集水側と同じ側に復水させることもできる。
【0046】
(6)本発明では、集水管・放水管にフィルターを内装した場合には、通水路の適宜の位置、前述(5)にいう連通部に、ポンプを設置して地下水を通水方向と反対に逆流させ、フィルターに目詰まりした砂を取り除くこともできる。
この場合、前述の強制通水・復水用のポンプを併用することもできる。
【0047】
(7)本発明では、通水路にマノメータ等を設置して、集水側と放水側の水頭を測定することができる。さらに、通水路に間隙水圧計や流量計を設ければ地下水の流量、流速等を測定できる。
また、特に前述した第2の態様のように、トンネルの内面に沿わせて通水管を配置する場合、透明な通水管を用いることによって、通水の確認および水質の観測を行うことができる。
【0049】
(8)本発明では、トンネルに対する通水経路および通水手段(通水管・透水性材料からなる層)の選定、集水管・放水管の設置の可否、フィルターの設置の可否、フィルターの目詰まり防止手段の設置の可否、ポンプの設置の可否等については、地山の土質条件(透水係数、地下水圧、地層構成、水質等)や、周辺環境(河川、井戸、湧水源に近接している等の他、トンネルと地下水の流動方向との位置関係も含む)によって適宜定めることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、地中掘削によって構築されるトンネルによる地下水の流動阻害を防止し、もって周辺地盤の地下水環境の保全を図ることができ、また、これに伴う作業の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の態様の説明図である。
【図2】 本発明の第2の態様の説明図である。
【図3】 本発明の第3の態様の説明図である。
【図4】 本発明の第4の態様の説明図である。
【図5】 本発明の第5の態様の説明図である。
【図6】 セグメントピースの平面および横断面を示す図である。
【図7】 セグメントピースの側面および縦断面を示す図である。
【図8】 図6のII−II矢視図である。
【図9】 図6のIII −III 断面図である。
【図10】 シールドトンネルの縦断面図である。
【図11】 図10のIV部拡大図である。
【図12】 図10のV部拡大図である。
【図13】 図12の平面図である。
【図14】 地下水の流動阻害の説明図である。
【図15】 従来例の説明図である。
【符号の説明】
1A〜1D…トンネル、2A〜2C…通水管、2D…透水性材料からなる層、4…集水手段、5…放水手段、6…仕切壁、7…横断通水管。
Claims (7)
- 非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
グラウトホールと、このグラウトホールを貫通して一方側の周方向連結面近傍から他方側の周方向連結面近傍まで延在するする単位通水管とを有するセグメントピースを用いて、地下水流動の上流側および下流側にグラウトホールが位置するようにセグメントリングを組み立てる工程と、
各グラウトホールを介してグラウト材を裏込注入した後、地下水流動の上流側のグラウトホールから集水管の長さに応じた深さまで削孔を行い、これによって形成した孔に集水管を嵌め込み、かつ地下水流動の下流側のグラウトホールから放水管の長さに応じた深さまで削孔を行い、これによって形成した孔に放水管を嵌め込むとともに、各グラウトホールにキャップをする工程と、
この工程に続いてまたは併行して、隣り合う単位通水管の端部同士を連結管を介して連結して、セグメントリングの周壁内部に、少なくともトンネルの下側を通り集水管および放水管に連通する一体的な通水管を構築する工程と、
を含むことを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。 - 非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
グラウトホールを有するセグメントピースを用いてセグメントリングを組み立てる工程と、
各グラウトホールを介して透水性材料を裏込注入し、少なくともトンネルの下側を通る透水性材料層からなる通水路を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。 - 非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
トンネル掘削面に対してコンクリート類の一次吹付及び二次吹付を行うことによりトンネルを構築するにあたり、
トンネル掘削面に対して一次吹付を行った後かつ二次吹付の前に、一次吹付面における地下水流動の上流側及び下流側に集水管および放水管の取付け孔をそれぞれ削孔し、これら取付け孔に集水管および放水管をそれぞれ取付けるとともに、少なくともトンネルの下側を通り集水管および放水管に連通する通水管をトンネル周方向に配置し、
しかる後に二次吹付を行うことにより、トンネルの周壁内部に通水管を設けることを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。 - 非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
トンネル掘削面に対してコンクリート類の一次吹付及び二次吹付を行うことによりトンネルを構築するにあたり、
一次吹付に先立って、トンネル掘削面における地下水流動の上流側及び下流側に集水管および放水管の取付け孔をそれぞれ削孔し、これら取付け孔に集水管および放水管をそれぞれ取付けるとともに、少なくともトンネルの下側を通り集水管および放水管に連通する通水管をトンネル周方向に配置し、
しかる後に一次吹付および二次吹付を行い、トンネルの周壁外面に埋め込まれた通水管を設けることを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。 - 非開削の状態での地中掘削に基づいて構築されるトンネルにおいて生ずる、地下水の流動阻害の防止構造を構築する方法であって、
トンネル掘削面に対してコンクリート類の一次吹付及び二次吹付を行うことによりトンネルを構築するにあたり、
一次吹付として、あるいは一次吹付の前の予備的な吹付として、透水性コンクリートを 吹き付けることによって、トンネルの周壁の外側部分としてあるいはトンネルの周壁外側に、少なくともトンネルの下側を通る透水性コンクリート層からなる通水路を設けることを特徴とする、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。 - 前記通水管にポンプを設置する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
- 前記通水管に、マノメータ、間隙水圧計、または流量計を設置する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の、トンネルにおける地下水の流動阻害防止構造の構築方法。
Priority Applications (1)
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